理 学 療 法 学 第15巻 第4号 329
〜
335頁 (1988年丿報
告
習
熟
理
論
の歩
行
へ の応
用
*福 井 勉
1)齋 藤
宏
1)梅 村 守
2) 要 旨 運 動 療 法におい て,
多 様 な治 療テ クニ ッ クが 開 発 されてきて いる現 在,
治 療 効 果の定 量 化 と客 観 的 記 述 法の確立は必 至である。
また,
工学におい て用い られて きた習熟の 概 念は多方 面で利 用 されて い る が,
リハ ビ リテー
シ ョ ン分 野での応用は例 を 見 ない。
そこで今回こ の工 学 的習熟理論を歩行 動 作に応 用し た ところ,
歩 行要素の大部分は習 熟理論に よっ て説 明でぎる経過を示し た。
この概念の利 用に よ り我々 は,
最 適 治 療 期 聞,
治 療 方 法の 比 較 検 討 等に応 用で ぎる と考 えてい る。
キー
ワー
ド 習 熟 曲線,
対数線形モ デル,
歩行1
.
序 論 近年,
リハ ビ リテー
シ ョ ン医 学の進歩に伴い, 運動療 法におい て も多様な治療テ クF ヅ クが 開発さ れ,
多くの 運 動 障 害に対して臨 床的 な治 療 効果の有 効性が 認 め ら れ てい る。 し かし,
医 学の うちで も特に治 療 医 学は経 験 的 要 素の 占め る部 分が多い た め に,
その基盤となる論理に 科 学性に欠 ける面のある の は否めない。
その中で, 特に 治 療 効 果の定 量 化と客 観 的 記述法の確 立が重 要であ り, そ れ らがさ らに運 動 療法を拡 大発展 さ せ る基 礎にな る と 考え られ る。
ところで臨 床 的に は治 療 開始に際して患 者の評 価 結 果 をもとに し て予 後を推 定し た り,
適当な治 療 期 間や治 療 回数の予測が可 能であ れば,
治療計画の設定,
治療の経 済効 率の面から極め て有 効 とな る。
工学 的 分 野, 特にIE
(lndustr三alEngineering
)に お い て は生産 効率の 向上 と 成 績の予測を 目的とし た 「習熟」の概念が多方面で応用 されて お り, 「動 作 要 素」,
「組 立 作 業」,
「機 械 加工 」,
「流 れ作業」等で破 究されてきて い るD。
この概 念は 「将来 の 予測」に関し て,
非 常に有益 な指 針と なっ て い る。
我々 はこ の工学 的 習 熟の概 念 を 歩 行 分 析に適 応して,
訓練回数の設定 等を検 討し た。
今回課 題とし た歩 行 動 作 * ApPl董cationof the learning curve in gait * *
東京都立 医療 技術 短 期 大 学
Tsutomu Fukui
,
RPT,
Hiroshi Saitou,
MD :Tokyotlaetropolltan College of Allied Medical Sciences ***
東京理科大 学
Ma エnoru Umemura :Science University of Tolcyo
〔受 付日 1987年10月17日) をこの工学 的 習 熟 理 論 を用い て分 析し たところ現 象の把 握 方 法とし て の有効性が認め られた の で報告 する
。
2.
習熟に 関する 語句の 説明 習熱と は 「同
一
の機能を果たすため の行 為の繰り返し に よ る効 果があると き習 熟があ る」と定義されてい る。 習 熟 現 象 を 曲線に 図示し た ものを 習 熟 曲 線 (!earning curve )と呼び,
横軸に繰り返し 回数をとり,
縦軸に習 熟度と し て一
回あた りの所 要時間を と る2》 。 ま た習熟現 象の表現には習 熟効果の測 定から数学 的モデルを作っ て い くこ とが多い。
最も一
般的な もの は対数線形 モデル(Leg Linear Model )で
,
次の式で表 わ される。
Ac
=
tVxn…………・
…・
・
………・
………・
一
〔1) Ac :あるパラ メー
タ の累計平 均 値 tl ; 1番初め の値 x :繰 り返し数 n r 習熟係数 (1)式よ り IogAc=−
n・
logx
十玉Qg tl・
……・
……・
…・
r…・
(2>式は両 対 数 グラフ上で直線と な り累計 平均習 熟曲線 と 言 われてい る。 個 別 習 熟 曲線は Tx で示 され Tx ≒t19(1
−
n )/xn・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
一・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
(3) となる (図1)1)。
対数線 形型習熟の 習熟係数π は, 両 対 数グラフ上での 直 線の勾 配である。
また対 数 線 形 型の習 熟 率をP で表し,
習熟係 数との問に次の関係 を持つ e P=
(1/2)n × 100 (%)・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
〔4)330 理 学療 法 学 第ユ5巻第
4
号 勒 2 tItlL
eJ=
A ア ・ 蝋右禰
丶
TI T3 垂 直床 反 力 T2 T4 T5 T6 T7 TB T9 → x leg 図 1 習熟曲線 (師 岡D に よ る) 図 2 歩 行 時 間に関する測 定 項目3.
方 法 対象は下肢に外傷な どの既 往歴のない健 常成入5名で ある。
各 対 象の年 齢,
身長,
体重 を表1に示 す。
実験課 題は健 常 者に意 図 的に脚長 差を おこ させたと きの異 常歩 行で,
歩行におけ る時聞 的空 間 的諸 要素の うち,
何れ が 習熟過 程と有意な連 関がある かを検 討し た.
実 験 手 順は 次の通 り である。
(1) 被 験者の左 足底に足底 板 (コ ル ク製,
ヒー
ル 高さ 3cm )を装着した。
床 埋め込み装置である床 反 力 計 (アニ マ 製 , 床反 力歩行自動解 析シス テ ム)か ら約1
.
5m の距 離に起 立さ せ る。 左足 か ら合図 と ともに 8 歩の自由歩行を行わせ,
中 間の 4歩につ い て床 反力計に よ る測 定を 行っtc。
こ の 様な歩 行を 遮続10回繰り返 した。
各歩行毎の歩行の要素を解析シス テム に よ り禹力 し た。
歩 行 要 素は次の通 りである。
歩 行 時 間に関する もの :ス bライ ドで 正規 化した もの T1〜
T9 (図2
) 力 線図に関 するもの : α 力 線図における面 積 S1,
S2 (図3) 表 1 対象被験者の年齢,
身長,
体 重 被 験 者睡
齢 (訓
賑 (酬
腫 (・・) 体 重比(%〕一
20 o 前 後 床 反 力 20 体 重 比(%) 図 3 α 力 線 図に おけ る S1,
S2 120θ
4戸
D Qゾ
7311 22222 16817715415715159,
569.
55LO55.
552.
5その 他 ;歩 隔(
SW
),
重 複 歩 (STR ),
歩 行率 (CAD
).
歩行速度 (SPD
) 習熟理論を応 用する手 法を以 下に示 す。
習 熟 現 象は一
般に所 要 時 間の減少で と ら え ら れるが,
歩 行 分 析に際し て は所 要時間の減少の み を 「習 熟」 とは 考えに く く,
歩 行 分 析に必 要なパ ラメー
タを 考 え,
その パ ラ メー
タ の変化量 が 減少してい くプ P セ スが重 要だ と 考えられる。
ま た そのパ ラメー
タ の絶 対 値が増 加して も 変 化 量が減 少し てい け ば 「習熱」 と考 えられる。
習 熱の 研 究は 工 学分 野で発達 し た が,
その現 象は い ろ いろ な領 域で観 察されるこ とか ら応 用に際し て の方 法が重 要であ る。 そこで従来の習熟理 論にな る べ く忠 実に従いかつそ の計 測パ ラ メー
タの累計平 均値の増 加の場 合につ い て は,
分析を 次の ように行っ た。
習熟理論の歩 行へ の応用 331 o
.
5(秒 ):
… o.
3 o ら突 施 lq 数
(回)
〔匝1) T2(被 験 者1)の実 施li」1数に対 する f圃耳1」グ){直の変 イヒ 。
.
5〔樹聟
・・
4 O,
3 e■
・
●
o, ●
・
11 側) (秒} o.
5 寸 o.
4e o.
3 (秒〕 O,
5 寸 O.
4 5 実 施 回 数 〔國) T2 (被験者1〕の奚 施回数に対 す る 累言[平 均の値の 変 化 図 4 減少して い く過 程習 熟効果は繰り返しの初 期 段 階に お い て は大 ぎな変化 量 を示し徐々にその害拾 を 小さくし てい く
.
通 常の習熟 効果は図4の様に示さ れ るが,
歩 行 分析で累計 平 均 値 が 増 加して い く場合には図 5の様な グラ フが考えられる。
そこで後者の よ うな場合,
従 来の 習 熟 理論を適 用 する た め に,
全体の平均 値 を2倍し そこか ら個々 の値を引い た 値をその繰 り返し 回数に おける値と し た。
こ の方 法に よ れば 累 計 平 均 値が 減少し て い く一
般 的な習熟 理 論が応 用 で き,
し かもその全 体の総 計 並びに平 均値に は変 化を 及 ぼさな い。
被 験 者 毎の各歩行 要 素の習熟率を算 出し
,
両 対数 グラ フ上で, 繰り返し数に対 する累計 平 均 値 の 回 帰直 線 の有 意性を検定し た。
5実 施 回 数
(回) T4(被験者4)の実施回 数 に 対 する 個別の値の変 化
4.
結 果分 析結果の
一
例 を 表2に示す。
また被 験 者 全員の結 果 か ら求め た習 熟 率を表 3に示 す。
本研 究における習 熱 率 は約96削99
%であ り,
歩 行 要素の大 部 分は習 熟理論によ っ て説明 がで き,
訓練回数の設定が 可能なこ とが示 唆さ れた。
・
,
o●
o●
o●
0.
3 D 5 10実 施 躍 数
(回) T4 (被
.
験 者4>の実 施 回 数に対 す る 累言†平 均 の値の変 化図 5 増加してい く過 程
5
.
考 察リハ ビ リテ
ー
シ ョ ン分 野にお ける歩 行分析で は異 常歩 行 を 対象とすることが多い。 その異 常である状 態か ら正 常歩行の範囲へ の過 程がいわば 運 動療法である と言 える が, 歩 行動 作 を分析する際のパ ラ Pt ・一
一
タ は あ ま りに も多 く,
どの観点か らの分析に も一
長一
短がある。 習熟理 論 に基づけ ば,
そこ で何等か のパ ラ メー
タ が習熟 曲線に の る わ け だ が,
その値 が増加 する か 減 少 するか は種々の要讖
〕 log 臼 0.
501 1 鬱1熟 莽‘ 98.
4% 弼 る:… ≒ 鷙 ≒き き.
.
馳
’
t’
:
”.
」
’
1:
毒1
魯 沸 聖−噛
・
ゆ
図 6 log IO (回〉 実 施 回 数 丁6
(被 験 老2)の習 熟 曲線332 理 学 療 法 学 第15巻第
4
号 表 2 分析結果 (被 験 者1)冨
一 一…
轡
_
11
ス トラ イ ドT1
ス ト ライ ド T2 ス トライ ド T3 ス bラ イ ド T4 ス ト ライ ドT5
ス ト ライ ド T6 ス トラ イ ドT7
羃
;
1
菖
訓
力線図 X−
Z 左S1 力 線 図X−
Z 左S2
力 線 図X−Z
右S1
力線図X−
Z 右S2SW
STR
CAD
SPD
0.
130,
48 0.
10 0.
45 0.
69 0,
57 0.
60 0.
66 1.
2613772866.
21134.
61017.
4
15124107.
1 64.
92
3 0.
11 0.
41 0.
11 0.
410.
63 0.
55 0,
55 0.
631.
181309.
3736,
61144.
6903
.
5 17125109.
168・
21 0,
13 0.
45 0.
11
0.
41 0.
65 0,
53 0.
570.
61 1,
181288
,
6786.
9994
.
51114.
5 15122103.
46321 4 0.
15 0,
41 0.
09 0.
43 0.
61
0.
53 0.
51 0.
63 1.
141221。
9860.
91141.
81025,
814124102
.
4 63.
55
6
7 0,
13 0.
41 D.
10 0.
40 0,
620 .
520 ,
53
0,
61 1.
141197.
0870,
91104.
5968.
7 16121105.
5 63,
7 0.
11 0.
40 0.
09 0.
42 0,
64 D.
560.
54
0.
66 1.
201069,
1810.
91075.
81009,
5 15115111.
1 63,
8 0.
110.
40 0.
09 0.
43謝
0.
540 .
67
1.
211105.
9745.
71126.
7871.
2 13122101,
8 62.
2.
日、
8
\.
一
〜_
回数 項目〜〜一
一一
一
.
一
一
一
.
ス ト ライ ド T1 ス トラ イ ド T2 ス ト ラ イ ド T3 ス トラ イ ドT4
ス ト ライ ドT5
ス ト ライ ド T6 ス ト ラ イ ド T7 ス トライ ド T8 ス ト ライ ド T9 力線 図X −Z
左S1
力 線 図X −Z
左S2
力 線 図X −Z
右Sl
力 線 図X−
Z 右S2SW
STRCAD
SPD
9
0.
11 0.
38 0.
08 0.
41 0.
63 0,
55 0.
52 0,
66
1,
18922
.
8776.
01013965.
2 15114110.
0 62.
8 0.
13 0.
41 0.
090.
410 .
630.
53
0.
53 0,
63 1.
161017.
9822,
01046.
4953.
0 13122101,
862.
2
10 合 計睡
大 最 少 平 均 標 準 偏 差 0.
ユ30.
400.
090.
4310.
620.
55』
0.
520,
651.
171113.
4760
.
71114.
2844、
715
工14120.
0 68.
2 1.
244.
150.
95、
4.
206
.
365.
465.
416,
4111
.
82 11623,
18036.
810896.
19673.
5 14812031072.
2 642,
7 0.
15 0.
48 0.
110.
45
0.
69
0.
57 0.
600.
67 1261377.
2870.
91144.
61114.
5 17125120 68.
2 。.
・・1
・.
・240
.
38i
O.
415 0.
08 0.
095 0.
40 0.
4220.
61
0,
6360.
52
0.
546
0.
51 0.
541 0.
61 0.
641 1.
ユ4 1.
182 922.
8 1工62.
31 736,
6 803.
68 994.
5844
.
713 ユ14101.
862.
2 1089.
61967,
35 14.
8 ユ20.
3107.
22 64.
27
0.
013 0.
0290.
010
0.
015 0.
022 0.
018 0.
0270,
022
0.
036141.
80150.
38354.
71880.
228 1,
229 4.
296 5,
6692.
219
備考
T1 〜
T9 :秒,
SW 及 び STR :cm , CAD :steps!rnin.
,
SPD
:m/min.
因に 左右される と考え られるが
,
現状では実 際に計 測し なけ れば不明で ある。
従っ て上記の方 法は運 動分析等時 間 要 素に限 らない場合に も適用で き,
しか も従 来の習 熟 理 論 を踏まえたもの であると考 えら れ るe 以 下に歩 行要 素ごと の考 察を 述べ る。
歩 行 時 間に関し て習 熟 曲 線 例を図6 に示 す
。
歩 行 時間に関 す る もの の 中 で累 計 平均値が最 も大 ぎ くなっ て いっ た要 素は T3 であ り最 も小 さ くなっ ていっ た の はT1
である。
この 2つの 要 素は左 右の 同 じ時 期である 踵接地 か ら反 対側下 肢 が足 尖離地する までの 問の時 間である。
相 対 的に長い左 足は,
徐々 に時 間が短 縮して い るの に対し,
短い 右足で は逆に 延 長 して い る。
この 様な傾向はT2 とT4 の間,
T5 とT8
の間にも見られ, 同様に左 下 肢が時 間 短 縮,
右 下 肢 が 時習 熟 理 論の歩 行へ の応 用 333 衷 3 習 熟 率
一
一
x 〜一一
一
一
_ 〜
被 験 者 項 目『1−一
一
ス ト ラ イ ド ス トライ ド ス ト ライド ス ト ライ ド ス ト ラ イ ド ス ト ライ ド ス ト ライ ド ス ト ライ ド ス トラ イ ド 力線図X−
Z 力線図X−
Z 力 線 図X−
Z 力 線 図X −
Z SWSTRCADSPDTlT2T3T4T5T6T7T8T9
左S1 左S2 右S1 右S2
1 2 3 4 5睡
均1
鮮 磁 99.
396.
0* 97.
698.
1* 97.
7* 98.
7* 97.
0*99.
298
.
1* 94.
6* 98.
898.
7* 99.
298,
699.
0
* 99.
699.
2*94,
3
* 99.
3* 94.
0* 99.
697.
3* 98.
4* 98.
1*97.
7* 97.
9
* 97.
0* 99.
095.
5* 94.
4* 98,
2*99.
794
,
8* 95.
1*96.
998.
8* 98.
499.
898.
9* 99.
4* 98.
5*99.
6* 99.
1* 99,
597.
1* 95.
9* 97.
7* 97.
9*98.
4
* 96.
5* 98.
0*97.
9* 99.
897.
3* 98.
5* 99.
999.
2* 99.
6*98.
9* 99.
6* 99.
796.
4* 96.
6* 96.
5* 99.
598.
5* 99.
598.
2*99.
899
.
4* 98.
3* 992 * 99.
4* 99.
4* 99.
6*99.
2
* 99.
4* 96.
9* 99,
0* 97.
7* 95.
6* 98.
7* 99.
596.
9* 96.
3* 97.
6498.
6697.
1299.
0498.
6499,
0298.
5698.
9298
.
8297.
5498.
0696,
8896.
6898
.
5899.
0297
.
4697.
36 2.
1901.
5291.
8050.
7231.
1080.
4491.
0970
.
7260.
7732,
1131.
2241.
3161.
857.
6060.
5812.
0651.
638 * 危険率5%で回帰 直 線 有 意 間 延長の傾 向である。T1
とT3
を比 較した 場 合,
デー
タ の絶 対 値はT1
が 常にT3
よ り大きい こ と か ら歩 行回数を 重ね るにつ れ 左 右の差 が小さくなっ て い る事が言え る。
これ らは左 右の立 脚 時 間の 差を小さ くするこ とに よ り筋 運 動 な どのニ ネル ギー
損失を少なくし てい く適 応の現れ であると考 え られる。
水井3》は , 成人先天性股 関節脱臼患者に対し ての歩 行 分 析を行い, 片 側完全脱臼例における接床時間には左 右 差があり患 側で は短 く健側で は長い こ と を示し て い る。
ま た盛合ら4)は, 健常人の片 側 股 関 節に可 動 域制限 装 具 を装着さ せ た と こ ろ, その側の腫 接 地に うつ る際の時聞 が延長することを 述べ た。
脚 長 差 を考 えるな らば,
これ らの報 告は本 研 究の結 果 と類 似してお りT1がT3 よ り大 きい こ と が納 得できる。
ま た前 者の報 告で は成人である こ とか らその歩 行が習 熟しきっ て い る と考え れ ば脱臼患 者のもつ 疼 痛が本 研 究で は無い こ とか ら右 下 肢が徐kI こ 立脚期を長く し てい っ た と考えられ る。 力線 図に関して 習熟曲線例 を図7に示 す。 α 力 線 図におい て歩 行 時 間 と同 様の こ とが結 果か ら分か る。
左の S1,
S2 はその面 積 を徐々 に減 少して い るの に対し右の Sl,
S2 は逆に増 加して いる。S1
は歩行にお け る駆動力を,
S
2は制 動 力 を表わ す と考えるな らば,
全体の傾 向と して右足 を徐々 に駆動,
制動の基礎に して い く傾 向が認め られ る。
宮田 ら5)・
6)は , 利 き足と床 反 力の研 究で, 利 き足の α 力 線 図は非利 ぎ足よ り大 ぎい こ とを示し てい る。 通 常は 右 足を利ぎ 足 とする者 が多い こ と か ら,
本 研究の場合,
一
時 的に患 側となっ た右 足 が本来の利き足の ペー
ス に戻 っ てい く過 程が観測された と考え ら れる。
S
た東 倉ら7) は, 変形性股 関節 症の患 者の 床 反 力につ い て検討し,
制動力が健常者に比べ て小さい こ とを示し た。 盛合ら 4) , 宮田 ら 5〕・
6〕も , 疾患側で 同様の こと を述 べてい る 。 変形性股関節症の主訴は関 節痛であることか ら患 側は な るべ く衝 撃の少ない よ うに足を着い てい る と 考 え られる。 本 研 究で は制動力と考え られ る S2 が右 下 肢で大 ぎ くなっ てい くのは関 節 痛が無く, 歩行時にエ ネ ルギー
消 費 量の少ない歩 行 様 式に習 熟し て い くもの と考 え られ る。
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log IO 〔回) 実 施 回 数 図 7 左SI (被 験者 2)の習 熟 曲 線334 理学 療 法学 第15巻 第4号 その 他に関して
一
般に,
多 くの筋 群の活動を 饗 する動作 も 上 達 してく ると必 要 最少 限の笏 活動で可能となる。
脚 長差 3cm と い うの は骨盤の代償 運 勤の 限界 をこえたものと考え られ るため,
初めの数回 は不 適性な筋活動による動 作と考え ら れ る。
事実,
被験 者全員が7〜8
回位の 歩行回数で 「楽になっ てきた 」と書っ ていることからもこの ことが う かが え る。
これ らは中枢 神 経によ る筋 運 動の コ ン ト P一
ル に対する運動 指令に も何等かの影響を及 ぼし たもの と 考え られる。 運 動技 能獲 得は一
般にパ フ ォー
マ ン スの時間の短縮,
正確さの向上,
誤 りの減少 と して と らえ られ,
ま た運 動 の獲 得は個人が 自分の運 勤に どれ だ け 注意し ている か に よ り左 右される8) 。 こ のため歩行動作を獲得してい く場 合も動機づけ,
フrf一
ドバ ッ ク は非常に重要な要素 とな る。 本研 究で は動機づ けに関し ては希薄であり,
歩 行 結 果のフ ィー
ドバ ッ ク を全く行わ なかっ たの にもか か わ ら ず, 運動の獲得が習 熟現 象と してと らえられた。
こ の こ と は運動 療法の訓練における効果判 定に お い ても習熟理 論が 応用出来る可能性を示 唆し ている と考え ら れ る。
次に治 療期 間の設定につ い て述べ る。
対 数線形習熟の 作業の習 熟係tw
を n と し,
X 回 目の所 要時間と 1回 目の 所要時間の比は Ψ=
tx/tl=
1/xn・
・
・
・
…
9・
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・
・
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…
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・
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…
(5) と な る。
これ を躍につ いて微分する と s;dv
/d= ;−
nx−
Cl+
n >…・
一 一………
とな り,
これは習熟 曲線上の勾配 量を表す。
これ を対数 変換 する と,
10gisi= logn
−
(1
十n)Iogx・
・
…・
・
…・
…・
……
(7〕となり両対 数グラフ上で表せ る
。
本 研究の 習熟率は約 96〜
99%であっ たe 図8に9896の ものを 示 す。
繰り返し 数が一
回増加 す る と きの縦軸の値の変化の初回 の瞳に対 する値を勾 配量と言 う1)が,
このグラフ は 繰り返し数と 勾 o.
Ol 配 量 o.
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OOOl 1 10 1eo 1000 実 施 回 数 (圓) 図 8 実施 回数と勾配量 (習 熟率98% )\
勾配量の関係を示し て い る。
このこ とにより治療 期 間の 予測ができ る。
例えばα力線図左S2
の颪積の よ うに,
習 熱係数が約O.
028の場合,
繰り返 し数100回で勾配 量 2.
5 × 10−
4,
10DO回 で は,
2.
3×10『
5 とな り逆に勾 配量 がユ/ 1000の時25.
6嗣,
1!10000の時240即 )繰り返 し数が必 要 と な る。
つ ま り勾配量に治療の ゴー
ル とい う臨 床上意 義 を も た せ る こ と に よって治療 効 果の把 握が可能になる わ けである。 同様に習熟率を求めるこ とに よっ て最適治療 期 間の予 測も可 能 とな る。
本研 究で は健 常人 を対象と し たkめ習熟 係数が小さくp
ば らつ ぎの観測が 主体になっ たように考え られ る。
し か し実際にはその状 況 下で も多くの要 素に習 熟現象が見ら れたことは, 習熟理 論が運動療 法に十分 応用できるもの で あ る と考え られ る。
6.
結 論 (1) 健 常者5名の左 足に 3cm の足底板 を装着し床反 力 計によっ て連 続10pmの歩 行 分析を行い,
種々 の歩行要 素の経過 を習 熟理 論を用い て検 討し た。 (2}歩行要 素の大部分は習 熟理論によっ て説明できる 経過を示し た,
本研 究の歩行要素の習熟率は約96〜
99%であっ た。
(4) 習 熟理 論は臨床上 十分 応用できると考 えられ,
勾 配量の設 定に より従来行われて いない 最適治 療期 間や回 撒の設定 等に効果 を発揮できると考え られる。
本研究 を終 わる にあた り.
御校 閲いただいた黒 木 良克 教授 (昭 和 大 学藤が 丘病院 整形外科)に感謝の意を表し ます。
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建1唱社,
pp.
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東 京,
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2)遠 藤健児 他編 :経営工学用語辞 典 (増補 版),
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3)水 井一
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4)盛 合徳 夫,
林 邦彦,
鈴 木堅二,
小住 兼弘:股 関 節 運動制 限 症例の歩行パ ター
・
ンにつ い て,
東北 整形 災害外 科 紀要,
14:27−
3工,
1970,
5) 宮 田 定倫,
吉良 秀 秋,
檎 林 好 隆,
鈴木 良 平 :利 き足 と床 反 力:整 形外科と災 害外科,
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6)宮 田定倫:床 反 力によ る正常者 の歩行 分 析,
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265,
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7>東倉 萃,
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8) 中村隆一,
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医歯薬 出版,
PP.
313−
328,
東京,
1978.
wrntvethD$fiF・xopwhM
335<Abstract>
'
Appiieation.of the Learnimg Curye in Gait
Tsutomu FUKUI,
RPT,
Hirosi
SAITOU,
MD
Tobyo Metropolitan
Collage
qf AlliedMedical SciencesMamoru
UMEMURA
Science
U)tiversityof
Tokyo'
According te the progressof therapeuticexercise, clinlcally available techniques
have
been
gaining
ground.
As a matter of
fact,
we wish we could evaluate the effectiveness rnore objectively.In
neering, especially inIE
(Industrial
Engineering),the concept of Learning Curve4as
applied tomanyproblems.
,
Log Linear
Model
whichhas
been
most widely used was shown asfollows.
IogAc =
-n
.
Iog
x+
log
ti
(Ac:curnulative
mean, ti:thefirst
time.x:nuinber of repetition, n:learning'factor)
'
Five
healthy
subjeets(two
males, threefemales,
aged 21 to 29),wearinghigh
heels
of corkin
their
Ieft
foot,
participatedinthe study. Subjectswalkedfreely
across aforce
pl'atewhich recordedthe three
dimensional
components of the ground reactignforce
offour
steps and otherkinematic
parameters.
We investigateclthe
learning
process by the cencept of Learning Curve. Almost everymeter of gait applied tothe equation of Log Linear Model, In this researeh,
learning
ratio,was
96 to 99 percent.We concluded that Learning Curve could
determine
'the
optimum