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タイポグラフィから情報デザインへ:

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Academic year: 2021

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(1)タイポグラフィから情報デザインへ:レンバーグ=ホルムとストナーの仕事. From typography to information design: On the work of Knud Lönberg-Holm and Ladislav Sutnar 伊原久裕. IHARA Hisayasu. 九州大学大学院芸術工学研究院. Faculty of Design, Kyushu University. はじめに. 者の視座からグラフィックデザインを捉え直そうとした「運. 筆者は,統計グラフやピクトグラム,地図など,いわゆる. 動」であった(注2)。それゆえ,この雑誌で取り上げられるのは. 「情報デザイン」として括られるデザイン領域の歴史研究に取. ダイアグラムや統計グラフ,地図にとどまらず,書式やタイポ. り組んでいる。文字言語を扱うタイポグラフィは,こうした領. グラフィといった伝統的対象も,その内容が読者の情報へのア. 域と疎遠なデザインと思われがちであるが決してそうではな. クセスや利用といった視座に加えて,実証的な手続きに基づく. い。そのことを示すために,この小論では情報デザインとタイ. デザインであれば情報デザインの範疇で取り上げられていたの. ポグラフィの関係を歴史的観点から論証してみたい。ただし本. である。. 稿ではもっぱらラディスラフ・ストナー(Ladislav Sutnar). キンロスは,この文脈で捉えられる情報デザインの先駆を戦. とヌッド・レンバーグ=ホルムによる初期の仕事に限定して,. 間期の欧州のデザイン,特にニュー・タイポグラフィに求め. この課題を考察する。. た。そして,その戦後の展開としてウルム造形大学の情報理論. なぜ,ラディスラフ・ストナーとヌッド・レンバーグ=ホル. を援用したグイ・ボンシエーペ(Gui Bonsiepe)によるタイポ. ム(Knud Lönberg-Holm)を取り上げるのか。まず「情報デ. グラフィ実験などの試みを位置づけている(注3)。キンロスが例. ザイン」という名称を最初に用いた実績があるにもかかわらず. 証として引き合いに出したのは列車時刻表のタイポグラフィで. 彼らの仕事がこの領域で積極的に言及されてきたとは言いがた. あり,ボンシエーペがこの事例をレトリック不在の「客観的情. いからである。もうひとつの理由は,彼らの仕事が具体的には. 報」のデザインとして言及したことを批判するためであった。. カタログデザインというタイポグラフィの比重の高いデザイン. 情報デザインといえども,書体の選定などに特定の意図や趣向. 領域に属しているからである。このように,ストナーとレン. が反映されるのであって,レトリックのないデザインは存在し. バーグ=ホルムの仕事は情報デザインとしてのタイポグラフィ. ないというのがキンロスの結論であった。キンロスのこの論証. の先駆的あり方を例証する格好の事例と想定されるのである。. それ自体の検証はここでの課題ではないが,情報デザインの起 点を1920年代のニュー・タイポグラフィに置き,その後の展. 1.情報デザインと機能的タイポグラフィ. 開をウルム造形大学のボンシエーペらの科学的デザイン実践な. タイポグラフィと情報デザインの関係を扱った関連研究とし. どに求める歴史的系譜が,タイポグラフィから情報デザインへ. て,ロビン・キンロスのモダン・タイポグラフィの歴史に関す. と連なる可能な経路のひとつとして提起されていることを押さ. る議論がある。彼は著書『モダン・タイポグラフィ』 (1992). えておきたい。. において,情報デザインをタイポグラフィをめぐる史的動向の. こうした系譜に隠れた格好で展開していたのが,これから取. 先端に位置する動向として位置づけていた. 。しかし,彼の. り上げるストナーとレンバーグ=ホルムの活動である。スト. 指摘する情報デザインはある特有の文脈を背景に生じてきたひ. ナーとレンバーグ=ホルムの活動も1920年代のデザイン運動. とつの運動として捉えられている点に注意が必要である。キン. と結びついて展開した時代性を有している。しかし彼らの活動. ロスによれば,情報デザインいうことばが一般に使われ始めた. は欧州中心の合理主義デザインとは異なる経路を辿っている。. (注1). のは1970年代後半頃からであるが,そのメルクマールとして 雑誌『情報デザイン誌(Information Design Journal) 』の発刊. まず,レンバーグ=ホルムとストナーが「情報デザイン」. 多い情報デザインであるが,この雑誌が標榜する情報デザイン. ないしは「情報のデザイン」という用語を最初に用いた人物. は,明確にグラフィックデザインを対象としたある特定の文脈. らしいとする仮説を確認しておこう。1944年に出版された. から採用された名称であった。それは一口で言えば「ユーザー. 『Catalogue design: new patterns in product information』の序. 中心のグラフィックデザイン」であり,表現に偏るグラフィッ クデザインの傾向に対抗して,デザイン受容者,デザイン行為. 8. 2.情報デザインとしてのカタログデザイン. (1979)がある。一般には情報技術の文脈で語られることが. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.23-2 No.90 2016. 文に次のような記載がある(注4)。.

(2) カタログデザインという名のこの研究は,それが説明. の研究であり,特に『Architectural Records』誌と『Shelter』. する情報デザイン(information design)の新しい原理が,. 誌のレイアウトを事例として,レンバーグ=ホルムのタイポグ. 便利でより正確な用語法を求めるあまり一般にはカタログ. ラフィへの関心について言及している(注6)。この指摘を補強す. と呼ばれている情報の形態よりも大きな含意を持っている. る意味で,ここでは,カタログデザインと平行して彼が制作し. ことを示唆し損なってしまうことのないよう心構えしてお. ていた著作を取り上げて,ストナーが参画する以前のレンバー. きたい。. グ=ホルムのタイポグラフィに対する関心の度合いを検討して みよう。. これ以前の「情報デザイン」という用語の使用事例はいまの ところ知られていないことから,この記述が初出ということに. 3.レンバーグ=ホルムのタイポグラフィへの関心. なる。もちろんだからといって,情報デザインがそれ以前に存. レンバーグ=ホルムのタイポグラフィへの関心とその傾向. 在しなかったという構成主義的な主張をしているわけではな. を具体的に示す資料として,1940年に同僚の建築研究者のセ. い。この引用文が興味深いのは,彼らが情報デザインというこ. オドア・ラールソン(Theodore C. Larson)とともに出版した. とばで対象化しようとしたのは,カタログのデザインを包摂す. 『生産性のための計画(Planning for Productivity)』と題する著. るより包括的で新しい原理であったということだ。. 作がある(注7)。この書物の制作過程を示唆する書簡が残されて. では,その新しい原理とはどのようなものであったのか。こ. いるが,以下のように,それはレンバーグ=ホルムがデザイン. の点を考察するには,ストナーではなくレンバーグ=ホルムの. 面に強いこだわりを持っていたことを明確に示している。. 活動に注目する必要がある. 。レンバーグ=ホルムは,コペ. この著作は,レンバーグ=ホルムとラールソンがスウィー. ンハーゲンの Kunst-akademietes Arkitekskole で学び,1923年. ツ社での建設の産業化に関する研究に基づいてまとめた. にミシガン州立大学から勧誘を受けて移住,以降アメリカで活. 新 し い デ ー タ の 分 類 法 に 関 す る 内 容 で あ っ た。 出 版 は IRI. 動したデンマーク出身の建築家である。移住後に彼は建築設. (International Industrial Relatins Institute)という組織が請け. 計から手を引き,建設産業の革新のための実践を行うように. 負ったが,この組織は,科学的管理法に規範を持つ技術者や科. なる。i10や ABC など欧州の前衛建築雑誌に寄稿していたが,. 学者で構成され,その代表者であるマリー・ヴァン=クリーク. 1929年に建築雑誌『Architectural Record』誌のスタッフとし. (Mary van-Kleeck)とマリー・フレデラス(Mary Fleddérus). て雇用され,その編集者として働くことになる。その後1932. は,オットー・ノイラート(Otto Neurath)の重要な支援者で. 年に同誌の系列会社であるスウィーツ・カタログ・サービス社. あった。加えて印刷を請け負った業者が,オランダのハーグに. に新設された技術ニュース・研究部門にリサーチャーとして従. 拠点を持つ印刷会社 TRIO であり,この会社は『レンブラント. 事する。レンバーグ=ホルムは,建築そのものよりも,それと. 周辺』展パンフレットなどアイソタイプ関連の印刷物を製作し. 産業との関係に強い関心を抱き,バックミンスター・フラー. ていた。しかし,当初はレンバーグ=ホルムが指定していたデ. (Buckminster Fuller)らとともに,SSA(Structural Studies. ザインどおりには仕上がらず,ホルムは修正を依頼した。この. Associates)のメンバーとして,生産主義的な主張を行って. レンバーグ=ホルムのレイアウトへの強いこだわりは,組版の. いた。カタログは,建築と産業,技術を結ぶ重要な情報メディ. 大幅な途中変更によりコストが増大する恐れがあることから. アであり,レンバーグ=ホルムはそのデザインについてもその. ヴァン=クリークらの心配の種となっていたようである。ヴァ. 効率を高める工夫を試みていた。たとえば,1936年頃に彼は. ン=クリークは,印刷の面倒を見ていたフレデラスにあてた手. 広告カタログのデザインへの応用を目的に眼球運動計測装置. 紙で次のようにレンバーグ=ホルムの態度を形容している(注8)。. (注5). (Opthalm-o-graph)を用いて視線の計測を行っており,そう した調査に基づいたデザイン原理を「カタログデザイン・スタ. 印刷者が活字選定とレイアウトをどんな風に計画するの. ンダード」と題する報告書にまとめている。こうした資料は,. かを前もって正確に知っておきたいという一般的関心を逸. ストナーがスイーツ・カタログ・サービス社にデザイナーとし. 脱して,著者としてのホルム氏とラールソン氏はこの特定. て加わりカタログデザインを手がける1941年以前に,レンバー. の作品に通常以上の関心を持っています。彼らはどんなに. グ=ホルムがすでにその素地を整えていたことを示している。. 深くそれを引きだそうと感情的に関心を持っているかご存. 従来,スイーツ社のカタログデザインはもっぱらストナーの. じですか。さらに建築家として,彼らはレイアウトの正確. 業績として取り上げられることが多く,レンバーグ=ホルムの. さへの通常の著者の関心以上のものを持っています。彼ら. こうした役割についてはあまり知られていない。例外が,マコ. は語法のみならず,ページ上での正確な視覚面をデザイン. ブスキーによる詳細なレンバーグ=ホルムとラールソン(後述). しようとしています。 デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.23-2 No.90 2016. 9.

(3) 当時のレンバーグ=ホルムのレイアウトへの強い関心を裏付 ける証言である。書体に関しては,タイトルなどには,彼らが 常用していたオルタネート・ゴシック No.2が用いられていた。 本文は当初フツーラを指定していたが,おそらくは TRIO 側の 事情でフツーラに類似したサンセリフ書体の Nobel Antiek が採 用されている。完成したデザインは,これらのサンセリフ書体 による本文組版や,グレーの表紙そしてプラスチックリングの バインディングなど,モダンデザインの典型と言えそうであ る。しかし,それ以上にこの著作のデザインを特徴づけている のは,情報を構造化したリストやダイアグラムに用いられてい るタイポグラフィである。 「増大する生産性のためのレファレンスの枠組み」と題する 章は,ラールソンが「意味論的計算尺(semantic sliderule)」. 図1.『Planning for Productivity』(1939-40) の 見 開 き ペ ー ジ. 環 境 エネルギーを利用して生産するプロセスを図解したダイアグラム (左ページ). と形容する諸要因の意味や文脈を他の要因と組み合わせること で推測できるツールとなっており,文字だけを用いてダイアグ ラムが構成されている(図1,図2)。このダイアグラムの正確 な内容については改めて分析する必要があるが,大まかには生 産関係の分析,生産要因の操作体系,生産における情報研究の 三つの項目,およびその中心となる「生産性」概念を捉えた 6つのサイクル:「調査」,「デザイン」,「生産」,「配給」,「利 用」,「消費」を複合的に組み合わせたものである。それぞれの 項目を表すダイアグラムでは,縦方向が時系列であり,たとえ ば「生産の連続」を示すダイヤグラムでは,このサイクルが 一巡したことを示すために, 「消費」の項目がリストの冒頭に 置かれている。そして,扱うトピックのカテゴリーの違いが,. 図2.『Planning for Productivity』(1939-40)の見開きページ.生産性 の要因をまとめたカテゴリー図(部分). 横軸に示されている(図3)。使用する文字種も,大文字のみ, 大文字小文字の組み合わせ,小文字のみの三種類が用いられて いるが,それらの使い分けのルールも定められていた。この特 徴的なダイアグラムのタイポグラフィは,情報の階層や順序な どの論理的関係性の視覚化をレンバーグ=ホルムが強く意識 していたことを示唆している。なお,レンバーグ=ホルムは, この時期に同じ内容の円環ダイアグラム(図4)も試作してお り,それらは後にラールソンが中心となって1951年に出版し た『Development Index』で用いられている(注9)。. 4.ストナーの参画:ニュー・タイポグラフィの導入 チェコのデザイナー・画家であったストナーは,1920年代 はテーブルウェアなどの仕事で知られていた存在であったが, 井口によれば,1930年代になってドイツで生じていたニュー・ タイポグラフィの影響を受けたデザインを展開し,タイポグラ フィの領域で注目を集めるようになる。チヒョルトを講演に招 待するなど,彼はチェコスロバキアへのニュー・タイポグラ フィの導入の足がかりを作った(注10)。またアンデル(Jaroslav. Andel)は,この時期のストナーの作品とチヒョルトの作品を. 10. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.23-2 No.90 2016. 図3.『Planning for Productivity』(1939-40)で用いられているダイア グラム.左から右にトピックが配置されている.縦軸は時間軸である..

(4) 図4.『Development index』(1951)で用いられているダイアグラム. 『Planning for Productivity』の項目が円環状に配置されている.. 比較しつつ,特に視線の流れを制御しようとするデザインに共 通性を見出している(注11)。ストナーは,1939年にニューヨー ク万国博覧会のチェコスロバキア館のデザインディレクション の仕事で渡米したが,ナチスドイツによるチェコ占領の報を 受けて帰国を断念し,以降アメリカを拠点に活動する。そし て,アメリカ移住後にレンバーグ=ホルムの誘いを受けて,ス. 図5. 『 controlled visual flow( 』1943) の図版. 交通標識が参照され ている. 図6. 『 catalogue design:. new patters in product information, 』. (1944)の図版. 製品の特徴,型,特色 な ど が 構 造 化 さ れ, 配置されている.. ウィーツ・カタログのデザインを担当することになる。 すでにふれたように,ストナーの参加以前にレンバーグ=ホ ルムによってカタログデザインのスタンダードの方針はすでに 立てられていたが,ストナーの参加は,デザインの視覚面での 総合的な方向性を決定づけるものとなった。その具体的な方針 は,1943年に出版された小冊子『design and paper』13号の 「controlled visual flow」や,翌年の1944年に出版された『カ. れ)」である。この原理は複数の意味を持っている。ひとつは,. タログ・デザイン』などの初期の著作に十分に確認できる。い. 情報の流れという意味であり,生産サイクルの図解でも示唆さ. ずれの著作においても,タイポグラフィを基本として,色彩や. れたように,さまざまな項目間の間の時間的な関係性を表すた. 視覚記号,図,写真などの諸要素が大幅に導入され,それらの. めに用いられている。もうひとつは視覚的な流れであり,誌面. 機能的な役割とともにページ構成の階層的な秩序の視覚化の方. 上の読者の視線を誘導する組織化の原理という意味である。レ. 法について解説されている(図5,6)。他方,そうした内容で. ンバーグ=ホルムは,両者の一致をデザインの目標として位置. あるにもかかわらず,ストナーの描く形態の有機的な特徴やそ. づけていた。フローは,原理的には時間的性質に基づくもので. のダイナミックで自由な運動の描写,明るい色彩などの特徴の. あるが,カタログというメディアを対象として展開された点が. おかげで,堅苦しい調子から逃れている。ストナーのカタログ. 興味深い。なぜならカタログとは本質的にレファレンスとして. のデザイン以降の仕事には,こうした彼特有のデザイン様式を. 用いられるメディアであり,それはメディア美学者のレブ・マ. 保持しながらも構造的と呼べるような厳密さが加わっている。. ノヴィッチが述べているような無時間的な形式,すなわちデー. こうした特徴はレンバーグ=ホルムの影響によるものと推定さ. タベースに対応すると思われるからである。他方マノヴィッチ. れる。. はデータベースと対立する代表的な時間的形式としてナラティ ブを挙げている(注12)。この二分法に従うとすれば,レンバー. 5.データベースとフロー. グ=ホルムとストナーの導入した「フロー」は,無時間的な. レンバーグ=ホルムのアイデアに基づき,ストナーが具体的. データベースの空間に時間的形式を持ち込もうとする試みで. に視覚化し,洗練させた重要なデザイン原理が,「フロー(流. あったとも言える。1951年に出版された『カタログ・デザイ デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.23-2 No.90 2016. 11.

(5) ン・プログレス』では,こうした形式的特徴の展開が,都市と. 対し,ストナーは,あくまでもカタログに代表される「情報. 交通網の発展にたとえて説明されている. 。カタログの元. 的」な広告分野の重要性を強調している。この座談会が示唆し. になる誌面は言わばニューヨークのような格子状の都市空間で. ているストナーと他の広告デザイナーとのすれ違いには,カタ. あり,その中で読者は情報のカオスに直面する。そのカオスに. ログという対象に対する見方の違いがあるようだ。このこと. 秩序を与えるために都市空間において1930年代頃から本格的. は,ストナーらの仕事が,結局はカタログデザインという分野. に整備されはじめたのが交通標識システムであった。カタログ. で注目されたものの,その境界を越えて「情報デザイン」とし. の空間では,そうした交通標識に代わって読者のナビゲーショ. てデザイン共同体に広がることはほとんどなかったという歴史. ンの役割を担うのが,タイポグラフィや色彩,ピクトグラムな. 的事情を説明しているように思われる。だが,ごく最近になっ. どの記号類であるということになる。. て,彼らの業績が再び注目されはじめている。ストナーについ. (注13). ては「インターネット以前のウェブデザイン」というスティー. おわりに. ブン・ヘラーのポピュラーな論文(注16)のタイトルが雄弁に語っ. 以上,レンバーグ=ホルムとストナーの仕事は,「情報デザ. ているように,情報デザインの先駆者としての位置づけがほぼ. イン」として先駆的な実践であり,しかもその仕事がタイポグ. 定着していたが,2015年末に彼の主著である『ビジュアル・. ラフィを基本に展開したと見なしうることを確認した。. デザイン・イン・アクション』の復刻版が刊行された(注17)。. 情報デザインとタイポグラフィにまたがる彼らの仕事が,共. レンバーグ=ホルムについても,2014年にはじめての個展が. 同作業に基づいていた点は,特に重要である。「情報」のデザ. ニューヨークで開催され(注18),「情報建築家」のパイオニアと. インという観点から彼らの仕事を捉えるならば,レンバーグ=. して注目を集めたばかりである。. ホルムとラールソンが重要な役割を果たしている。レンバーグ. 研究対象としての彼らのデザインには,眼球運動とレイアウ. =ホルムは,建築に領域での情報の役割の重要性に着目し,情. トの関係や,ダイアグラムの意味論的分析など解明すべき課題. 報を効率的に利用するための視覚化の方法の開拓が主な動機で. が多く残されている。今後の研究課題としておきたい。. あったが,その過程でタイポグラフィを重視した。眼球運動の 分析をデザイン分野に利用しようとした最初期の人物としても その先駆性はもっと評価されるべきだろう。またラールソンに 特に顕著であるが,彼らは1970年代には,情報理論やコミュ ニケーション理論を取り入れた「フロー」の考え方の現代化を 図っている(注14)。他方タイポグラフィの観点からは,ストナー の貢献がやはり重要である。ストナーは,理論面ではレンバー グ=ホルムの考え方をほぼ共有していた。たとえば,彼は1959 年のある広告デザインクラブのタイポグラフィの革新性をテー マとしたデザイナーの座談会で,次のように発言している(注15)。 デザイナーは注意を惹きつけるという限定された機能を 乗り越えて行かないといけない。一例に雑誌や新聞だけに とどまらない広大な広告の分野がある。それは,カタログ ページ,情報的なブックレット,そのほかのたくさんの 本文を必要とする販促ツールだ。 [書体の選定で]あるイ メージを作るだけではこのような対象には不十分である。 これらのページは容易で速やかな判読性を要求する。それ ぞれの仕事に適したよい活字を選ぶ目が必要だ。現代では 時間は非常に短い。誰もがますますそうなっている。習慣 的に吸収するにはあまりにも多くの情報であふれている。 同席していた他のデザイナーの多くが目を惹きつける新奇性 の観点から,タイポグラフィを判定する意見を述べていたのに. 12. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.23-2 No.90 2016. 注 1)Robin Kinross, Modern typography: an essay in critical history, Hyphen Press, 1992, pp. 141-2 2)次の拙稿を参照:「ユーザー中心」のグラフィックデザイ ン論,『デザイン理論』,no.32 , pp.1 - 14 , 1993 3)Robin Kinross, ʻ The rhetoric of neutrality ʼ , Margolin, Victor(ed). Design Discourse, The University of Chicago Press, pp.131-143 4)K. Lönberg-Holm and Ladislav Sutnar, catalogue design: new patters in product information, Sweetʼs Catalog Service, 1944(ページ番号なし) 5)レンバーグ=ホルムの活動については次の文献を参照: Suzanne Strum, Correlations: Instrumental Architectures of the SSA and Knud Lönberg-Holm, 1927-1953, Unpublished Thesis, Universitat Politècnica de Catalunya, 2010 6)Paul Makovsky, The space of information: Collabora-. tion between Theodore Larson, Knud Lönberg-Holm and Ladislav Sutnar at Sweetʼs Catalog Service (1940-1960), in Ladislav Sutnar- Prague-New York-Design in action, Museum of Decorative Arts in Prague & Argo Publishers, 2003, pp.338-348. 本論文で,マコブスキーは,レン. バーグ=ホルムによる雑誌のレイアウトを写真やダイアグ ラムの利用,サンセリフ書体の重視,アシンメトリーのレ イアウトなどの特徴を挙げて,情報デザインの先駆と見な しているが,これらの特徴は,基本的にはニュー・タイポ グラフィの考え方の反映であり,それだけでは情報デザイ ンの先駆とは言えないだろう。 7)Knud Lönberg-Holm and Theodore Larson, Planning for Productivity, International Industrial Relations Institute,.

(6) 1940.なお,本論で取り上げた資料の図版は,“Designing for increasing Productivity” というタイトルの付けられ た「初校版」である。最終版を確認できてはいないが,組 版に大きな変動はないようである。 8)Letter Mary van Kleeck to Mary Fleddérus, July 10 , 1939, box 74, folder 1, Mary van kleeck Papers, Sophia. Smith Collection, Smith College, Northampton. 9)Knud Lönberg-Holm and Theodore Larson, Development index, University of Michigan, 1953 10)井口壽乃,チェコスロバキアのモダニズムとアメリカへの 越境:ラディスラフ・ストナーのグラフィックデザイン, 『グラフィックデザイン1930:版画,写真,タイポグラ フィ,アイソタイプ』,富士ゼロックス株式会社,2007, pp. 35-47 11)Andel Jaroslav, Sutnarʻs Heritage in the Digital Era, 前 掲 Ladislav Sutnar- Prague-New York-Design in action , pp.350-352 12)レフ・マノヴィッチ(堀潤之訳)『ニューメディアの言語』, みすず書房,2013,pp.318-322の議論を参照 13)Knud Lönberg-Holm and Theodore Larson, Catalog design progress: advancing standards in visual communication, Sweetʼs Catalog Service, 1950(ページ番号なし) 14)Theodore Larson and Knud Lönberg-Holm, “Role of Mass Media of Information and Communications”, in The Future is Tomorrow, Martinus Nijhoff, the Hague, 1972, pp.54380 15)Forum for Five: Are we really advancing typographically?, 1959 Jan.Feb, p.9, box 20, folder 15, Ladislav Sutnar. Papers, Cooper-Hewitt, National Design Museum, New York 16)Steven Heller, Ladislav Sutnar, Web Design before the Internet, 2004 , https://www.typotheque.com/articles/ ladislav_sutnar_web_design_before_the_internet,2015. 年11月20日アクセス確認 17)Ladislav Sutnar, Ladislav Sutnar: Visual Design in Action (1961), Lars Muller Publishers, 2015 18)”Knud Lonberg-Holm: The Invisible Architect” http://www.. ubugallery.com/exhibitions/lonberg-holm-invisible-architect/,2015年11月20日アクセス確認. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.23-2 No.90 2016. 13.

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