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学生相談支援における不安に対するセルフモニタリング促進支援の効果

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-03 126

-学生相談支援における不安に対するセルフモニタリング促進支援の効果

○溝井 啓輔1)、藤巻 康一郎2) 1 )県立広島大学学生相談室、 2 )県立広島大学保健福祉学部 はじめに・目的 大学生活を送る学生は人生に影響をあたえるイベン トを体験する。そのため不安定な状態になりやすく、 不安の高い学生が大学の教職員の促しや自ら学生相談 室に来室することがよくある。そのため、学生相談で は不安の取り扱いが重要となる。ここで、学生相談室 に来室された不安の高い女子大学生の事例を報告し、 不安に対するセルフモニタリング促進支援の効果に関 して検討する。なお、対象者には紙面にて事例報告へ の同意を頂いた。 事例概要 A :医療系学科 3 年(20歳)女性薄化粧で締め付け の少ない服装で、礼節疎通性良好で入室時から笑顔で 話をされる。 主訴:横になっていて起きるとめまいがすることが ある(申込用紙より) 問題歴:高校生の時に修学旅行や卒業式など、詰め て座って話を聞くような場面で吐き気やめまいなどが 現れ、周囲の人にその場から連れ出してもらう等のエ ピソードがあった。 X -2年にアルバイト中に同様の症 状が現れ、当初 8 時間行うところを 4 時間に変更して 続けるが、 X -1年から同様の症状が頻回に出現するよ うになった。 X -1年の夏に成人式の前撮りの際に、吐 き気、めまい、発汗が出現し撮影を中止した。翌日は 化粧をするだけで前日と同様の症状が出現し、嘔吐し たため撮影を断念した。成人式当日はずっと友達と話 続けていればどうにかなると考え、ずっと話をするこ とで出席できた。最近では帰省のために電車に乗った 時にも同様の症状が出現した。将来職場で同様の症状 が現れるのではないかと将来に対する不安も語られ た。主訴のめまいについては、週 2 回程度と報告さ れ、健康診断の血液検査に異常値はなかった。 面接過程# 1 〜# 2 【 X 〜 X +1w】 心理教育では不安なことを回避するとより強い不安 が生じることや先の見通しが持てないと不安が高くな ること、不安な対象が具体的になると不安が下がるな どを説明し、リラクゼーションを紹介し実際に 1 分間 の呼吸数を測定した。 1 分の呼吸回数は15回で「たく さん呼吸している」「不安が高いとは思ってなかった」 などの感想を述べられた。 アセスメントに関する説明を行い、本人の状況を正 しく把握することが重要であることを伝えた。そし て、日常で不安が生じる場面として、美容院を挙げら れ、苦手な理由に動けないことや迷惑をかけてしまう ことを挙げられた。美容院に行く予定もあったため、 不安喚起状況と本人の感情や思考の変化に注目して観 察してくるように宿題を出した。 新版STAIを実施( Y -1:42、 Y -2:50)。 ケースフォーミュレーション 以前より集団場面や身動きの取れない状況において 吐き気やめまいが現れていたが、これまでは本人に とって不安が生じる状況から距離をとることで対処し てきた。しかし、前撮りで体を締め付けられた状態を 回避することが出来ず症状が悪化したところで撮影を 中止するという今までの対処で対応できない状態を経 験したと考えられた。その後、身体の少しの変化に注 目しやすくなったことが推察され、いつ起こるかとい う予期不安が強くなり、より身体の変化に過敏になる という悪循環になっていると考えられた。さらに、心 理検査と本人の訴えから、心理検査の結果では慢性的 な不安が高いのにも関わらず、自身の不安の高さを自 覚していないことから、自身の状態を正確にセルフモ ニタリング出来ていない、または、不安喚起刺激を予 測できていないことが考えられた。そして、これまで 不安などの不快感が生じていたであろう状況へ回避す ることで対処してきており、不安事態に十分暴露され ることが少なかったことが推察された。そのため、緊 張の高さを理解し自己観察の動機づけを高めるため に、呼吸数を確認する体験的な測定を行った。本人が 呼吸数の多さに驚かれたことから、日常で不安が喚起 されそうな状況で本人の考えや身体反応などの状態を 報告してもらうことでセルフモニターの機能を高め、 不安喚起事態に対して暴露できる可能性が高まること が期待された。本人も承諾されたため不安喚起事態の 報告を宿題とした。 #3〜#6【 X +4w〜 X +19w】 寝る前に呼吸法を行うと呼吸数が10回と少なく驚い たことや、外出時に気合を入れていたことや不快感が 出現した時に限界まで我慢をしていたことを報告され るようになった。その他にも憧れの職業の首元まであ る制服を着たが不快感が出てこなかったことや、前撮 りも 1 着目は撮影できており、最初はうれしかったが だんだん疲れ、 2 着目で体調を崩し断念したことを報 告された。 パニック様症状に関しては、熱中症の前のような感 覚が出現し「またあの感覚だ」と考え、そこから、動

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-03 127 -けないという思考に繋がり、その不快感に耐えられな くなり、症状が出現していると報告があった。そのた め、身体の変化に対し「またあの感覚だ」という思考 が生起し、より身体の変化に注意が向くといった循環 が状態を悪化させている可能性を説明した。そこで注 意訓練法を紹介し、施行した。面接を重ねるうちに、 身体の違和感がある時に早めに身体を休めることで症 状が悪化しないことや、食べ過ぎたなど、身体の違和 感の原因が明確な時は症状が悪化しないことを報告さ れた。また、自発的に対処方法を探すようになり、不 安喚起場面で水を飲むこと、呼吸法を実践することで 安心することが出来ることを報告された。以上のよう に、対処方法を試し、その結果をセルフモニタリング することで、症状の出現頻度は、 2 ヶ月に 1 回程度に 減少した。次に、これまでは我慢し耐え続ける対処を とっていたが、周囲に働きかけることで緊張を緩和で きる可能性を伝え、外出時に我慢せず 1 度甘えをいう (主張する)ことを提案した。すると、「我慢しなくて も良いことがしっくりきた」と理解され、今後は我慢 することなく、辛い状況を伝えるスキルを獲得するこ とも目標した。 #7〜#8【 X +24w〜 X +32w】 この時期では、「以前は悪いこと(緊張が高まる) ばかり注意が向いていたが最近は安心できることを探 している」「安心できるものを見つけられるように なった」など不安状況における以前との違いを報告さ れ、安心の材料探しや材料作りもできるようになって きたと報告された。 我慢することなく、辛い状況を伝えるスキルの獲得 に向けては、外食の際に途中でお腹がいっぱいになり 我慢をしようとしたが、思い切って「お腹がいっぱい」 と相手に伝えることが出来た。その結果、だんだん楽 になって食事を続けることが出来、辛い状況を主張す ることが良い結果をもたらすことに納得できたと報告 があった。 主訴のめまいも出現していないことや新版STAIの結 果( Y -1:30、 Y -2:39)も低下していることや不安喚 起状況に対するコントロール感も持てるようになった ため本人と話し合い終結となった。 結果・考察 本ケースは、パニック様症状を持つ女子大学生の ケースであった。 初回面接時は自身の不安と緊張の高さを自覚してお らず、不安喚起事態を把握することが困難であり、パ ニック様症状が生じ不安が高くなっている状態で あった。面接初期では、本人の不安や緊張を客観的に 把握してもらうために、新版STAIや呼吸数を測定し た。その後、不安喚起事態と本人自身の状態の変化に 注目するようになることで、日常生活の中でも自分自 身が緊張していることへの気付きが増し、様々な不安 喚起場面を報告できるようになったことから、セルフ モニタリングが機能し始め、行動変容に対し動機づけ が高くなったと考えられた。 面接中期では、どのような場面でパニック様症状が 生じるかを報告してもらい、状況を整理することで不 安喚起場面に対する予測やセルフモニターが機能する ようになった。その中でも症状が起こりそうで起きな い場面の分析や本人なりの対処行動を試して上手く対 処出来た時と出来なかった時の機能分析を行うこと で、本人にとって良い対処を理解できるようになっ た。また、自分のとっての上手く対処できる方法への 気付きを報告することが増加し、症状も 2 ヶ月に 1 回 の頻度になった。 面接後期では、これまで不安喚起が予測される安心 できるものに注意を向けることが出来るようになった という本人の思考の変化を報告するようになった。代 替行動を使って行動実験をすることで不安が高まる前 に対処できる体験をしたことで不安喚起場面に対する コントロール感を獲得されたと思われた。 学生相談支援において、不安や緊張感を適切に自覚 することのできない学生に対し、呼吸数や不安検査を 行うことでセルフモリタリング機能を促進させる支援 は、不安喚起場面に対する暴露の動機づけを高める支 援になると考えらえる。

参照

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