理 学 療 法 学 第37巻 第3号 139
一
145頁 (2010年 ) 研 究 論 文回 復 過
程
の
脳
卒
中
片 麻 痺 者
への
部分
免荷
ト
レ
ッド
ミ ル
歩
行 練 習
の
特 徴
*一
異
な
る歩 行練 習
間
の歩
行 速
度
変
化
,
歩行距離
,
歩容
の比
較
一
武 井圭
一
1)2)#金 子 誠 喜
2)國 澤 洋 介
1) 藪崎
純
1)松
本孝 彦
1)國 澤 佳
恵
3)高 倉 保 幸
3) 山本
満
D
要 旨 【目的】 本研究の 凵的は,
回復 過 程の脳 卒 中 片 麻 痺 者へ の部 分 免 荷 ト レッ ド ミル歩 行練習 (BWSTT
)の 特 徴を検 討 するこ とであ る。
【方法】脳卒中片 麻 痺 者30例を対 象に,
BWSTT,
平地歩 行練習 (TOF ),
トレッ ドミ ル歩行 練 習 (TOT
)の いずれ か を選び,1
日ご と無作 為に行っ た。 評 価 項 目は,
1口練 習 後の 平 地 10m 最 大 歩 行 速 度 変 化.
練 習中の歩 行 距 離,
単 脚 支 持 率,
遊 脚 相の左 右 対 称 性と した。 分 析は,
各 練 習 様 式 聞で歩 行 速 度 変 化,
歩 行 距 離,
単脚 支 持 率,
遊 脚 相の左右対 称 性を 比較した。
【結 果 】1口練 習 後の平 地 歩 行 速 度 変 化は,
練 習 様 式 問に有 意 差を認め な かっ た。
歩行距 離は,TOF
よりもBWSTT
の方 が短距離の傾向で あっ た。 麻 痺 側 単 脚 支 持 率は,
BWSTT で は TOT よ り も有意に増 加し た。
非 麻痺側 単 脚支持 率は,TOT
で はBWSTT
とTOF よ り も有 意に減 少し た。 遊 脚 相の左右 対 称 性は,
BWSTT とTOT
はTOF
よりも有意に高かっ た。 【結 論】回復 過 程の脳 卒 中 片 麻 痺 者へ の BWSTT は,
麻 痺 側 単 脚 支 持 率を増 加し,
左右 対 称な歩 行パ ター
ンで の歩行 練 習 を 促 す 特 徴 が あ る と考え られ た。
キー
ワー
ド 脳 卒 中,
歩 行,
部 分 免 荷 トレッ ドミ ル歩行 練 習 は じ め に こ れ ま で,
脳卒中 片 麻痺者へ の歩 行の 改 善 を 目的 とし た堙 学 療 法は,
歩行自体が困 難な場 合に は 立位 保 持や 立 位 重 心 移 動 練 習な ど歩行に必 要と考 えら れ る要 素の改 善 を 図 り,
歩 行 を可 能とする方 略で行わ れて きた。 これに 対 して,1990
年 以 降は動 作 を 行 う環 境に よっ てr
遂 行 される動 作 能 力 が 異 なる というダイナミック・
シス テム *Gllaracteristics of Body Wcight Supported Treadm丗 Tr語ning
fur Postxgtrok巳Hcmipaτetiじ Subjects in Recovery S1age
−
Cemparison of the Change in Walking Speed,
WalkingDlstance
,
Gait Patte’
rn between D蚯ferellt Walking Trainingr−
D
埼玉医科大 学 総合医療セ ン ター
リハビ リ テー
ション科(〒35Q
−
8550 埼玉県川越 市 鴨 田ユ981)Keiichi Takej
.
RPT,
MS.
Yeusuke Kun工sawa,
RPT,
PhD,
Jun
Yab匸isaki
、
RPT,
Takahlko Matsumoto,
RPT,
Mitsuru Yamamoto,
MD :Dcpartment of RehabMtation
.
Saitama Medical Ccnter,
Sai田ma Medical Universitv
2) 首 都 大 学 東 京大学 院人間健康科学峅究科理学 療 法 科 学域
Keiichi Tukci
,
RPT,
MS,
Seiki Kaneko,
RPT,
PhD:GraduateSchool of Human Health Scienccs
,
Tokye Metropolitan University3)埼 玉 医 科 大学 保 健 医 療 学 部理 学 療 法 学 科
Yoshie Kunisawa
,
RPT,
MS.
Yasuyuki Takakura,
RPT,
PhD:Sch(,ot ef Phys工cal Therapy
,
Facu[ty of Health alld MedicalCare
,
Saitanna Medical University#
E
−
mail :takeLk @saltama−
n〕ed.
ac.
jp(受 付日 2009年6月29日 /受理 口 201D年2月22日)
ズ理 論に基づ き
,
より高いパ フォー
マ ン ス を促 すような環 境で動 作 を 反復 し
.
運 動 学 習 および機 能 改 善 を 図る課 題 志 向 型アプロー
チ が 注 目 されている 1)e脳卒巾片麻痺者に対 する部 分免荷トレッ ドミ ル歩行練
習 (
Body
WeightSupported
Treadmill
Training
;以下BWSTT
,
図 1)は,
代 表 的 な課 題 志 向 型の歩行 練 習 で ある。 その特 徴 として は,
平 地 歩 行が困 難 な状 態で あっ ても早 期 か ら歩 行 練 習 を促 すことが できること 2)3),
長 距 離の 歩 行 練習 が 可能なこ と4),
左右 対 称 な歩行パ ター
ンでの練 習が 可能な こ と5−
7)な ど が報 告さ れて い る。
ま た,
BWSTT の継 続に よる平 地歩行へ の効 果に つ い て は,
歩 行 速 度 8−
11)や歩 行パ ター
ン の左 右 対 称 性3)6”
7)におい て他の練 習 様 式 よ り も有 意に改 善した と 報 告さ れてい る、
これ らの 改 善の 生 理 学 的背景 は,
近年 の脳イ メー
ジ ン グ技 術の進 歩に伴い,
脳の 再 組織 化と し て説 明 されてい る。 す な わ ち,
脳 損 傷 後でも脳の 可塑的 変化を 生 じる こ とが 明ら か になっ て きてお り,
BWSTT は 運動 課題 を高 頻 度に,
より正常に近い運 動 様 式で行う こ と に よっ て脳の再 組 織 化を促 進 する ため の方 法として も期 待さ れてい る 12 )。
し か し,
前述の よ うに BWSTT に よ り 平 地歩 行が 改 善 し た と さ れ る一
方,
BWSTT を140 理学 療 法 学 第37巻 第3号 実 施し た 群 と他の練 習 様 式で介 入 し た 群 との 間に有意 差 を認め な かっ た との報 告 13
−
15) も散 見 さ れ,
BWSTT の 効果に対 する評 価は定まっ てい ない。 こ の こ とは,
臨 床 症 状に個 人 間の ば らつ きが大 きい 脳 卒 中 片 麻痺者に対 し て.
BWSTT
の特 徴が必ずしも活か さ れ てい ない こ と が 推 測 さ れ る。
ま た,
回 復 過 程 に おい て BWSTT を 適 用し た報 告3)13)15”
17)は少 ない た め,
回 復 段 階の脳 卒 中 片 麻 痺 者に対 して も 同じ ように BWSTT の特 徴 を認め る の か は明 確で は ない 。 先 行 研 究で慢 性 期 を 対象と し た 報 告で は,
発 症 後日数が6
ヶ月以 上 で あ るの に対 し て 4)18),
回復 段階で BWSTT を適用 し た報 告で は,
発 症 後 日数 (平 均 また は中 央 値 )の範 囲 が 12−22
日であ り,
お およそ 発 症 後1ヶ月に適 用 してい る 3)13)15)。Hesse
ら5)は,
慢 性 期の脳卒中 片 麻痺者 を 対象に免 荷量の異な るBWSTT
を行い,
免荷量の違い に よ る即 時 的な歩行変化を検討し た結果,
免 荷の効果と して麻痺 側 立 脚相の増 加,
両 側 支 持相の減 少.
遊 脚相の左 右対 称 性の改 善 など を報 告して い る。 こ のように,
異 なる練 習 様 式問で歩 行 を比較 する ことは.
長 期 介入 に おい て平 地 歩行 改 善の 要因に なり得るBWSTT
の特徴 を 明ら か に する こ と が で き る。
本 研 究の 目 的は,
BWSTT と他の 練 習 様 式で の 1日 図 1 部分免荷 トレ ッ ド ミル歩 行 練 習の実 施 風 景 練 習 後の平地歩 行 速 度 変 化,
練習 中の歩 行 距 離 単 脚 支 持 率,
遊 脚 相の左 右 対 称 性 を比 較する こ と に よっ て,
BWSTT の 特 徴を検討 す るこ とであ る。
対 象お よ び方 法 1.
対 象 対 象は.
当 院 入 院 中の理 学 療 法 を処 方さ れ た初回発 作 で発 症 後40H 以 内の脳 卒 中 片 麻 痺 患 者であ り,
かつ全 身状 態が安定し,
杖を 用い て介助なく平地歩行が可 能 な 者30
名と し た (表1
)。
対象者に は,
事前に本 研 究の主 旨を説 明して同意書へ の署 名を もっ て同 意を得た。 除外基 準は
,
Japan
Coma
Scale
I−3
以 上の意 識 障 害 を認める者
,
認 知 症 およ び失 語 症に よ り課 題 内 容の理 解が困 難 な者,
円背によ りハー
ネス装着で 疼痛を 認 め る 者,
腰 痛 に より懸 垂が 困難な者,
下肢の変 形性関節症 な ど に より 歩行 時に疼 痛 を認 め る者と し た。
な お,
本研究は埼玉 医 科 大 学 総 合 医 療セ ン ター
倫 理 委 員 会の承 認 を得て実 施 し た (承 認番号 :160
)。
2,
方 法1
)練習方 法 歩行 練 習は,
BWSTT,
平地歩行 練 習 (Training on Floer;以下 TOF ),
トレ ッ ドミル 上歩行 練 習 (Training on Treadm 皿;以下丁OT
)の3
つ の練 習 様 式と し た。 TOF は,
12 m 歩 行 路で実 施し,
対 象 者に は歩 行 路の両 端にある線上で方 向 転 換をするように指 示 し た。
通 常 練 習 時に杖や短 ド肢 装 具 など補 助 具を使 用し てい る場合には,
そ れ らを使 用し て実 施し た。 歩 行 速 度 は,
練 習 時間内を連 続で歩 行可能な任 意の最 大 速 度と し た。 BWSTT は,
体幹ベ ル トと大 腿ベ ル トを装 着 して頭 上のハー
ネス と連 結 するハー
ネス式の免 荷装 置 (Biodex,
Unweighing
System BDX−
UWSZ ) と ト レ ッ ド ミル(
Biodex,
Gait
Training System BDX−
GTM )を使用 し た。
免 荷量 は
,一
般 的に麻 痺 側 下 肢の支 持 性に合わ せて体重 の40
% 以下で調 整 するこ とが 推 奨 されてお り18),
本 研 究の対象は全 荷 重で もトレッ ドミ ル ビ歩行が可 能なこと 表 1 対象者内 訳 平 均年齢 (±標準偏 差 〉 性 別 病 型 平均発 症 後口数 (±標 準 偏 差 ) 下肢Brunnstrem Stage TOF 時の歩 行 補 助 具 BWSTT 時の手 す りの使用 TOT 時の手す りの使AJ 短 ド肢 装 具の 使用 57 (± 12) 歳 男 性 :19名 女 性 :11名 脳 梗 塞 :22名 脳 出,
vftt:8名 19 (± ll) 病 日 II]:1名.
IV 二ll名,
V ;10名.
VI:8名 補助具な し :15名,
T 字 杖 :7名.
四 点 杖 :5名,
歩 行 器:3名 有:22名 無 :8名 有:25
名 無:5名 有:11名 無 :19名 n=
30TOF:Trailling on Floor
,
BWSTT :Body Weight Supported Treadmill Training,
TOT :Trainlng on TreadmiU厠復 段 階の脳 卒 中 片 麻 痺 者へ の部 分 免 荷 トレッ ドミ ル歩行練 習の特徴 正41 練 習 前 測 定 歩 行 練 習 練 習 後 測 定
こ
f
‘
一
1日目 練 習 前 測 定 歩 行 練 習 練 習 後 測 定⊂
2日目 図2 練 習 およ び測 定の手 順 練 習 前 測 定 歩 行 練 習 練 習 後 測 定⊂
二 三
▽
1
⊃
3
日 目 か ら,
免 荷量の少 ない先行研 究 19)を参考に体 重の20
% に設 定し た。 TOT は,
免 荷 装置を使用 せず全荷 重の状 態で実 施 し た。 BWSTT,
TOT と も に不安 定で歩行 が 困 難 な場 合には,
トレッ ドミ ル に付 属 さ れて い る手 す り を使用 し た。
BWSTT
とTOT
に おける手 す りの使 用 状 況につ いて表1
に示し た。
歩 行 速 度は.
麻 痺 側下肢の振 り出し が可能な最大 速度,
ま た は対象者の主観的な最 大 速 度と し,
BWSTT,
TOT ご と に 設 定 し た。
練 習 申 に 疲 労 などの影 響に よりパ フ ォー
マ ンス の変 化や対 象 者か らの訴 え が あっ た場 合 には,
歩行 速 度 を 調 整し た。 全て の 歩行 練習 に おい て,
練 習 時 間は 5分 間を1セ ッ ト と し,
合 計2
セッ ト行っ た。
本 研 究で測 定 する歩 行 練 習 以 外に,
筋 力 増 強,
歩 行改 善 な ど を目的 とした 担 当理 学 療 法 士に よ る40
分 間の通 常の理学 療 法を実施し た。
本 研 究での 歩行 練 習は,
通 常 練 習 後3
時 間以 上 が経 過し て か ら実施 し た。 表2 各 実 施 日にお ける練 習 様 式ご との実 施 回 数 1日目 2 日目 3 口 目 BWSTTTOFTOT 910n 11109 111000BWSTT :Body Weight
Supported
Treadmill Training,
TOF :Training on Floor
,
TOT :Truining on Treadmil1を100% と した割 合 を算 出した
。
遊 脚 相の左 省 対 称 性は,
まず2
次 元 動作解析ソ フ トで左 右の遊 脚 時 聞 を求めt1
歩行 周 期 を100
% と し た 割 合 を算出 し た。
次 に,
左右の うち 大 きい値を分 母 もう一
方を分 子と し て除し,
最 大 値1
に近い ほ ど左 右 対 称と な る もの と し て求め た。
単 脚 支 持 率・
遊 脚 相の左 右 対 称 性は,
2セ ッ ト目の練 習で の 最後1
分 間に おける安 定し た3
歩 行 周 期の デー
タ の平均 値 を代表値 とし た。
2
) 測 定 評 価 項目 は,
練習前 後に おける平 地 10n1 最 大 歩 行 速度 練 習中の歩行 距 離 単脚 支持率,
遊 脚 相の左 右 対称 性と し た。
そ れ ぞ れの値は 以 下の ように して求め た。
10m 最大歩 行速 度 は,
両端に1m
ずつ の 予備 路 を設 けた10m
歩行 路で行い,
ス トッ プウ ォ ッ チで計 測 した 10m 所 要 時 間か ら速 度を求め た。 2回実 施し たう ちの最 大 速 度を代 表 値と し た。 歩 行 速 度 変 化は,
練 習 前 後の 10m 最 大 歩 行 速 度の差 を 求 めた。 な お,
通 常 練 習 時に杖や短下肢 装具 な ど補 助具 を使用 し てい る場 合 に は,
そ れ ら を使 用し て行っ た。 歩 行 距 離は,
平 地で は12m 歩 行 路の往 復回数に.
歩 行 路の途中 で練習 が終 了し た場 合に は歩 行路の端か らの距 離 を 加 えて計測 し た。 方向 転 換が歩 行路端の 線か らずれ た場 合に 生 じ る 誤 差につ い て は,
計測値に は含め な か っ た。
ま た,
ト レッ ド ミ ル 上 で は トレ ッ ドミ ル に 内 蔵 さ れてい る 機 能 によ り求め た。 2セ ッ ト の練習の うち 長 距 離の 方を代 表 値と し た。
単 脚 支 持 率は,
ビ デ オ カ メラ (Sony
社 製,
Digital Handycam
,
30 frames/second )で歩 行中に麻痺 側 矢状 面 か ら撮 影し
,2
次 元動 作 解 析ソ フ ト (DKH,
FRAME−
DIASII
)で単脚 支持時間を求め,
1歩 行 周 期3
)手1
頂 練 習と測 定の手順 を図2に示 す。 練 習 前 測 定と して,
平 地10m
最 大 歩 行 速 度 を測 定 し,
歩 行 練 習 は1
日 ごと に合 計3
日間で行っ た。 本 研 究で は.
対 象が 回復 途 上で あ る た め練習様 式の実施順序を無 作為に す るこ とで,
各 練 習様式に含ま れ る自然回復・
波 及 効 果・
累 積 効 果の偏 りが少な くなる よ うに配 慮した。 無作 為 化の方 法は,
3 つ の練 習 様 式を並び替 えて 6通 りの順 序 を1か ら6
まで の数 字に当て.
コンピュー
タ で乱 数 関 数 を用いて割 り付 け た。
表2
に各 実 施日 に お け る練習様 式ご との実 施 回 数 を示し た。
歩 行 練 習 時の測定と し て,
麻痺側矢状 面か ら ビ デ オ撮 影 を行い,
歩 行 距離を記録し た。
練 習 終 了後は,
5
分 間 以 上の休憩 を 挟 み 主観 的 疲 労 感,
血 圧,
脈 拍 がお お よ そ開 始前の状 態に戻っ たこ とを確 認 した後,
練 習 後 測定と して再び平地101n 最 大 歩 行 速 度 を測 定 した。
4
) 統言i
埆年析 あらか じ め,
対象者15
名の計 測 値を も と に本 研 究で 用い た測定 法の信 頼 性 につ いて検 討 す る た め,
級内 相 関係 数 (lntraclass correlation coefficients ;以下ICC)142 理学療量去学 第37巻第3 号 の計 測 値 を もと に
ICC
(1,1
)を求め た。
栄脚支 持率・
遊 脚 相の左右 対 称 性 は,
各練 習様式で の3
歩 行 周期の計 測 値をもと にICC (1,
3)を求め た。 また,
各 歩 行 練 習 前 後の平 地 歩 行 速 度の比 較につ い て,
対 応の ある t検 定 を用いた。 練 習 後の平 地 歩 行 速 度 変 化,
単脚支持率,
遊 脚 相の対 称 性に お け る練習様 式問の比較につ い て,
一
元 配置 分 散 分 析 反 復 測 定 を用い,
有 意 差を認め た場合 は多重 比較検定と して Bonferroni法を用い た。 歩行 距 離は,
BWSTT とTOT の比較につ い て対 応の ある渉検 定 を用い,
測 定 法が異 なる TOF につ い て は統 計 解 析 を 用い ずに参 考 値 とし て比 較した。 統 計 解 析に は,SPSS
Ver.
14,
0
を用い て,
有 意水 準は5
%とし た。
表3 歩行 距 離・
単 脚 支 持 率・
遊脚 相の左 右 対 称 性の級 内相 関 係 数の結 果 結 果 1.
各 測 定 法の信 頼 性 分 析の結 果 各 測 定 法のICC
の 結果を 表3
に 示 し た。
歩 行 距 離・
単脚支持率・
遊脚 相の左右 対称性ともにすべ て の練 習 様 式に おい てICC
は0,
80
以L
で あ り,
高い 信 頼 性を認め た。
BWSTTICC TOFICC TOTICC
歩 行距離 麻 痺 側 単脚 支 持 率 非 麻 痺 側 単 脚 支 持 率 遊 脚 相の左 右 対 称 性 O
.
9 0.
960.
89e89 0.
970,
990.
97097 O.
970.
980.
880.
92 n=
15BWSTT;Body Weight Supported Treadmill Training
,
TOF :Training on Floor
,
TOT ;Training on TreadmilL 至CC :IntraClaSS CerrelatiOn COef [iCients 歩行 距離 は
,
2セッ ト分の計 測値を 使 用 単脚 支持 率・
遊 脚 相の左右 対称 性は,
3歩 行周期分の計 測 値 を 使 用 2.
練 習 後の平 地 歩 行 速 度 変 化 練 習 前・
後の10m
最 大 歩 行 速 度 を 順 次 示 す と,
BWSTT
につ い て は0.
91
±0,
45
m/s (平 均値±標 準 偏差,
以 ド1
司様 ),0.
99
± 0,
50m /s,
TOF で は0.
94
± 0.
47m /s.
1,
01 ±0.
48 m /s,
TOT で は0,
90± O.
46 mfs,
0.
97
± 0.
48m /sで あ り,
全て の練 習 様 式に おい て練 習 後に有 意な増 加 (p〈0,
01
) を 認め た (表4
)。
ま た,
平 地歩 行 速 度 変 化は,
BWSTT で はO.
08
±0.
08
mfs,
TOF
で は0,
07
±0,
10
m /s,
TOT
で は0.
07
±0.
10
m/s であっ た。
練 習 様 式 間の比 較の 結 果,
全て の練 習 様 式 問 に有 意 差を認め な かっ た (表5
)。
3.
各 練 習 様 式に おける歩 行 距 離5
分 問での 歩 行 距 離は,BWSTT
で は202
±81
m,
TOT
で は 175 ±75
m.
参 考 値 とし てTOF
は212
±109m
で あ っ た。
BWSTT
とTOT 間の 比較の 結果,
BWSTT
はTOT
に 比べて有意に 長距離で あっ た (p < 0.
01)(表 5).
=
BWSTT は,
TOF よ りも短距 離 に な る傾 向 を 認め た。 表 4 練習前 後の10m
最 大歩 行 速 度の 結果 n 練 習 前 練 習 後 Pの BWSTT (mfs ) 30 0,
91± 0,
45 0.
99± 0、
Se <0.
Ol TOF (m /s) 30 0.
94± 0,
47 ].
Ol± 0.
48 < 〔},
0] TOT (m /s) 30 0.
90 ± 0.
46 0.
97± 0.
48 < 0.
01BWSTT :Body Weight Supportcd Treadmin Tralning
,
TOF :Tralning o]1 Floor,
TOT ;Training on Treadmill
平均 値±標 準 偏 差 a〕 対 応のある‘検 定 表 5 BWSTT
・
TOF・
TOT の測 定 結 果 BwSTT (A) n=
30 TOF (B) ]コ=
30 TOT (C) n=
30 aP 多 重比 較b〕 10皿 最 大 歩 行 速 度 変 化 (m /s) 歩 行 距 離 (m ) 麻 痺 側 単 脚 支持 率 (%) 非 麻 痺 側 単 脚 支 持 率 (%) veSWNo 左 右対 称性・
〕 0.
S± 0.
08 202± 81 29.
3± 6、
3 32.
1± 4,
0 0.
87± 0ユ0 0.
07 ± 0」0 212 ± logd) 26.
9± 8、
8 32.
6 ± 7.
] 0.
79 ± 0ユ7 0.
07± 0.
10 175 ± 7526.
8± 5.
8 28.
9 ± 3.
8 0.
87 ± 0ユ3 D,
S 〈 O.
Ol 〈 0.
05 < 0,
05 <,
05 A >CA > C,
B >C A > B,
C >BBWSTT :Body Weight Supported Treadmill Training
,
TOF :Training on Fleer.
TOT :Training on Treadm 皿 平均値±標準偏 差 a〕歩行 距 離 :対 応のあ る t検 定 (BWSTT−
TOT の比較 ),
その他 ;一
元 配置分 散分 析 反 復 測 定 b}Bonferroni 法 C>右 (左 ) 遊 脚 相/左 (右 ) 遊 脚 相 (左 右の う ち大きい値を分 母と し,
1を最 大 値と し た) d)TOF の歩 行 距 離 は,
他の練 習 様 式と異な る方 法で計 測し た参 考 値 を記 載回 復 段 階の脳 卒 中片 麻 痺 者へ の部分 免 荷 トレッ ドミ ル歩行 練 習の特 徴 143
4.
各練 習様式に お け る単脚 支 持 率 と遊 脚 相の左 右 対 称 性 麻 痺 側 単 脚 支 持 率は,BWSTT
で は29,
3
±6.
3
%,
TOF
で は26.
9
±8.
8%.
TOT では26.
8± 5,
8
%であっ た。
練 習 様 式 間の比 較の結 果,
BWSTT は TOF に 比べ て増 加 する傾向を 認めたが有意 差はな く,
TOT より も有 意 な 増加 (p 〈0.
01
)を認め た (表5
)。 非麻痺側単脚 支 持率は,BWSTT
で は32.
1
±4.
0
%.
TOF では32.
6 ± 7,
1
%,
TOT で は28.
9
±3.
8
% で あっ た。
練 習 様 式 間の比較の結 果,
TOT はBWSTT
とTOF
に 比べ て有 意 な 減 少 (p< 0.
05 )を認め た (表5)。 遊 脚 相の 左 右 対 称 性は,BWSTT
で は0.
87
± O.
10,
TOF
で は0.
79
±0.
17,
TOT
で は0.
87
±0,
13であっ た。 練 習 様 式 問の比 較の 結 果,BWSTT
とTOT
はTOF
に 比べ て有 意に高 く (p <0.
Ol
),
BWSTT
とTOT
間に は有 意 差 を認めなかっ た (表5)。 考 察 本 研 究で は,
回復遇程の 脳卒 中 片 麻 痺 者 を 対 象 にBwSTT
と他の練習 様 式での 1日練習後の平 地 歩 行 速 度 変化,
練習中の歩行距離 遊 脚相の左 右対称 性,
単脚 支 持 率を 比較す ることで,
BWSTT の特 徴 を 検 討 した。
1
日練 習 後の平 地歩行 速 度 変 化は,
全て の練 習様式で 有 意に改 善し た が,
練 習 様 式 間で は統 計 学 的 有 意 差を認 め な かっ た。
これまでに,
脳 卒中片 麻 痺 者 を対象にlH のBWSTT
後に お け る平地 歩行速 度 変化を 検討し た報 告は,
我々 の 知る 限 りで は見 当たらない。一
定 期 間の 介入で は,
Hesse ら9)は慢 性 期 脳 卒 中 者7 名を対 象と し た3
週間の介入結 果か ら,BWSTT
はTOF に 比べ て 平地歩行速 度 を有意に改 善し た と報 告して い る。一
.
一
方,
Nilsson
ら15)は 回 復 過 程の脳 卒 中 者73
名 を対 象 と した 入 院期 間 中の介 入 結 果 か ら.
BWSTT 群とTOF 群 との 問に膚 意 差は なかっ た と報 告し て お り,
評 価は一
定では ない。 今回の結果 は,
BWSTT
の一
定 期間の介入 結果に 影響 を及 ぼす 即 時 的な効果を示 してお り,
BWSTT は 即 時 的 に は他の 練習様 式と 同程度 に平地歩行 速 度 を 改 善す る練習 課 題 で あ る と考 えら れ た。
練 習 時の歩 行 距 離の結果,
BWSTT はTOT よ りも有 意 に 長 距 離 で あ り,
参 考 値で は あ る が TOF よりも短 距 離に な る傾向を認め た。
今 回測 定し た歩 行 距 離は,
全て の練習 時 間を5分 間に設 定し たことで練 習 中の歩 行 速 度 を 評 価 してお り,
持 久 力を 反映して い る か は明 硫で は ない。
ま た,
トレ ッ ドミ ル 上では一
定 速 度で歩 行 する の に対し,
TOF では方 向 転 換 時の減 速を含む。 その た め,
TOF の測 定 方 法 は トレッ ドミ ル上 よりも短 距 離に 測 定 され るこ とがあり,
ト レッ ド ミル と直 接比較 する こ と は困 難で ある。一
般 的に,
BWSTT は転倒へ の不 安を除去で き20−
21),
心肺 機 能へ の 餅 「[を減 少で き る22) た め TOF や TOT より高 速 度で 長 距 離に な る と考 えら れてい る。 し か し,
Hesse ら 5) は練 習 時の歩 行 速 度はBWSTT
の方がTOF
より も有 意に低かっ たと報 告 し,
本 研究の ように定説と異な る 傾向を 示 してい る。
今回の 結 果は,TOF
と ト レッ ド ミル.
ヒでの測定 方 法が異な る た め明 確にはで き ない が,
BWSTT は 必ずし もTOF
よ り高 速 度になる練 習 課 題ではない こ とが示 唆さ れ た。 こ の こ とは,BWSTT
は歩 行 を補 助 する だけで はな く,
接 地而が一
定 速 度で動くトレッ ドミ ル の環 境に適 応 する た め,
歩調 を合わ せ る 課 題 を付加す ること が影響し ている と考 えら れ た。
遊 脚 相の左 右 対 称 性の結 果は,
BWSTT とTOT では TOF より も有 意に高 かっ た。 また.
麻 痺 側 単 脚 支 持 率 の 結 果は,
BWSTT は TOF よ り も増 加 する傾 向であっ た が有 意差 は な く,TOT
よ り有 意に増 加し た。
非麻痺 側 単 脚 支 持率の結 果は,
TOT はBwSTT とTOF より も有意に減 少し た.
Hesse ら5)は,
遊脚 相の左右 対称 性につ い て TOF よりもBWSTT の方 が 有 意に高 くなっ た と報 告して おり,
本 研 究と一
致 する。 彼ら は,
両側の 単 脚 支 持 率につ いて も調 査してお り,
対 称 性が改 善した 要 因 とし て麻 痺 側の単 脚 支 持 率が増 加したこと を挙 げて い る。
今 回の 結 果 は,
部 分 免 荷 装 置 を 使 用 し な くて も トレッ ド ミル を用い る こ と で左右 対 称の歩行パ ター
ン になるこ と を示し た。 左 右 対 称に なる方 略につ い ては,
BWSTT では麻痺側の単 脚 支 持率を増加 する傾 向が示唆 さ れ た の に対し,TOT
で は非麻痺側 の単脚支持 率が減 少す ること を 示 し た。
す な わ ち,
BWSTT とTOT では 左 右 対 称になる方 略が異 な り,
BWSTT は TOT より麻 痺 側下肢の残存機 能を活か し た歩行パ ター
ンを促 す 練 習 課 題である と考え られた。 こ の こ とは,
脳 卒 中 片 麻 痺 者 の平 地 歩 行が主 と して非 対 称 的 な歩 調になるの に対 し,
トレッ ドミルで は接 地 面が一
定 速 度で動 くこ とに より左 右対称 的な歩調 を促 すと考 えられ た。
加 えて,
部 分免 荷 に よ り 麻痺側 下 肢へ の負 担 軽減や転 倒へ の不 安を除去で きる ことで,
より麻 痺側下 肢を活か した状 態で ト レッ ド ミ ルに 適 応するこ と を促 すと考え ら れ た。 これ らの こと から,
回 復 過 程の脳 卒 中 片 麻 痺 者に対 す る BWSTT は,
麻 痺側 下 肢の 残 存機能を 活 か し た 左 右 対 称な歩 行パ ター
ン で の練 習 を促 す 特徴がある と考え ら れ た。 本 研 究で は,
表1
に示し た ように平地で の杖の使 用 状 況.
ま た ト レッ ド ミル上で の手 す りの使 用 状 況が異 なっ ていた。
この た め.
今 回測 定 された練 習 時の歩 容に は,
ト レッ ド ミル と平地 とい う歩 行 路の条 件や,
体 重 免 荷の有 無 とい う 条 件 に 加 えて,
歩行補 助具の影 響を含 ん で いた。
また,
本研 究で は他の練 習 様 式との比 較 か らBWSTT
の特 徴を検 討し た が,
今回の結 果が一
定 期 間にお ける BWSTT 介入 後の平 地 歩 行 改 善の要 因であ る のか は言 及で きない 。 その た め,
今回の 結 果が臨床 的 に有 意 味なものか を 明確にするた め に は,一
定 期閭の144 理 学 療 法 学 第37巻 第3号 BWSTT 介 入 後の効 果と今回示し た特 徴との 関連 を検 討 する必 要 が ある
。
結 論 回復 過 程の脳 卒 中 片 麻 痺 者を対 象に練 習 前 後の歩 行 速 度 練 習 巾の歩 行 雛 離,
単 脚 支 持 率,
遊 脚 相の左 右 対 称 性につ い て BWSTT・TOF ・TOT
の練 習 様 式 間 を 比 較 する こ と に よ り,
BWSTT の特徴 を検 討し た。
遊 脚相の 左 右 対称性は,BWSTT
・TOT
がTOF
よりも有意 に高 かっ た。
麻 痺側単脚支 持 率は BWSTT がTOT より も 有 意に増 加,
非 麻 痺 側 単 脚 支 持 率はTOT がBWSTT・
TOF
よ り有 意に減 少 し た。BWSTT
は,
麻 痺 側 下 肢の 残 存 機 能 を活か した左 右 対 称な歩 行パ ター
ン での 歩 行練 習を促 すと考えら れ た。
謝 辞 :本 研究 に お け る 歩行 練 習の実施,
評価 に あ たりご 協 力いた だいた埼玉医 科 大 学 総 合 医 療センター
リハ ビリ テー
シ ョ ン科 理 学 療 法士 高山祐 子 氏,
松 本 絵 美子 氏,
森本 貴 之 氏,
高野敬 士 氏に 深謝 致します。
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Characteristics
of BodyWeight
Supported
[Etreadmill
[[ltraining
for Post-Stroke Hemiparetic
Subiects
in
RecoveryStage
-Comparison
of theChange
inWtilking
Speed, Walking Distance,
Gait
Pattern
between
DiffbrentWalking
[Vrainingr
KeiichiTAKEI, RPT, MS, Yousuke
KUNISAWA,
RPT,
PhD,
Jun
YABUSAKI,
RPT,
Takahiko
MATSUMOTO,
RPT, Mitsuru YAMAMOTO, MDPepartment
ofRehabilitation,
Saitama
Mledieal
Centeag
Saitarna
A4ledical
Uhivensdy
Keiichi
TAKEI,
RPT,MS,
Seiki
KANEKO,RPT,
PhD
Graduate School of Human Health Science& 7bdyo Metropolitan
Uhiversdy
Yoshie KUNISAWA, RPT, MS, Yasuyuki TAKAKURA, RPT, PhDSchool
of
Ph)rsical711zercrpy,fuculty ofAealth
andMbdical
aare,
Saitama
Mledical
Universdy
Purpose:
The
purpose ofthis
study was toinvestigate
characteristics ofbody
weight supportedtreadmilltraining
(BWSTT)
for
post-strokehemiparetic
subjectsin
recovery stage.Methods:
Thirty
subjects withpost-stroke
hemiparesis
randomly received aday
ofBWSTT,
training on
fioor
(TOF),
or training on treadmill underfu11
weight(TOT}.
Outcome
measures included change in the 10m maximum walking speed on floorafter a day of training, walkingdistance,
single stance ratio. and swing phase symmetry(symmetry)
during
the
training,The
analysis compared
the
changein
walking speed, walkingdistance,
single stance ratio,symmetry among the condition of training,Results:
The
changein
walking speed was no significantdifference
amongthe
condition oftraining. The walking distance tended to walk shorter BWSTT than TOF. The single stance ratio with affected limb significantly increased inBWSTT compared to TOT. The single stance ratio with non-affected limb significantly
decreased
in TOT compared toBWSTT andTOF.
The symmetry was significantiyhigher
in
BWSTT andTOT
thanin
TOF.
Conclusions: BWSTT for post-stroke hemiparetic subjects
in
recovery stage mayhave
achar-acteristic to