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塩江町橋谷の変温動物-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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香川生物(KAGAWA SEIBUTSU),㈹:19−24,1982

塩江町橋谷の変温動物 植 松 辰 美 香川大学 教育学部 生物学教室

N。teS On Some PoikilothermalAnimals of Hashitani(Shionoe−Cho)

ntsumiUEM瓜Ⅳ,β宜0∼og宜eαg加ゎγα拍叩,凡¢如才y o′β血cαわ0れ,励gα00αひ花宜γβγβ宜£飢 mゐα仇α≠8%760,Jαpα鶴. 調 査 方 法 調査地域の位置は,第1図に,調査地の水系図 (溜池と放棄水田の用水路)は,第2図に示して おいた。ただし,調査時には,池8とその水路 の部分は,すでに整地が終っていた。 調査は,1977年12月27日の予備的観察の後, 1978年2月18日および4月11日におこなった。 この他に,2月19,26日および3月17日には, 順に,田辺実,山本正幸および前田俊夫の3氏 に依頼して,池1と2の観察あるいをま,カニ・ル 卵(幼生)の採集と写真撮影をおこなった。 12月27日の観察は,南部尾根沿いの境界線と 高松地区南部広域衛生施設組合廃棄物処理場 周辺(香川県塩江町橋谷)における動物の現況 を1977年12月から1978年4月にかけて調査した。 筆者は,哺乳類・鳥類以外の動物を分担したが, 調査期間が動物にとって最も条件の悪い冬期に 限定されたため,生息分布の確認された種は僅 少であった。 調査地域と地形・植生などがよく似ている他 の地域の動物相から類推すれば,この地域にか なり多くの種が生息している讐である。 ここでは,今回の調査で確認されたものにつ いてのみ報告する。 池6,7か ら北部の廃棄水田, 池および西側の川を観察した。 2月18日には,主として池1 ∼7と,西側の川および境界か ら約100mと500m下流にあた る谷川の2地点で,玉網を用い た採集を行った。この日は,前 日からの大雪が水田跡や睦を白 くおおっていた。水面も,大部 分が薄く氷結し,その上に溶け かけた雪が積っていた(第3図, 第4図の1・2) 4月11日.池1∼7,用水路 および西側の川を中心に水田跡 を観察し採集した。 採集した動物は,生物学教室 に持ち帰り,同定・計測・写真 撮影などの後,709らアルコ−ル で保存している。 種の同定は,主として中村・ 上野(1963),宮地・川郡部・ 第1囲 鞠査地,塩江町桶谷の位置 −19−

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カナへど科 Lacertidae lカナへど陶物か0仇%さ fα¢吻dγ0仇0五dβ8 (Schlegel) 性不明,1個体.体長:9cm.採集日:Ⅳ,11 採集場所:池5北側の堤・・枯草(オオアレチノ ギクβγ宜gβγ0れg沸α≠γβ朋ゐ)の茎にいけにえ にされた個体を採集した。 II両生綱 AMPHIBIA アマガエル科 Hylidae 2 アマガエル助gααγる0γβαJαpOケ乙宜cα Giinther 水野(1976),吉良(1974),川副・若林 (1976),日本甲虫学会(1963)および竹内 (1962)によった。

結 果 と 考 察

採集または観察された動物と,その記録事項 は以下の通りである。 採集または観察月日は,月をロ・−マ数字,日 をアラビヤ数字で示し,月日の字を省略した。 Ⅰ 爬虫網 REPTILIA 1個体。体長:21mm.体重 :07g採集日:Ⅳ・11・ 採集場所:池2の東側睦. アカガ=lル科 Ranidae 3 ニホンアカガエル βα耽αJαpO7も宜¢α

2aPOnica Gunther

A 成体(第4図の3) 雌2個体 体長:60mm, 体重:134gと体長:47mm, 体重:63g採集日:Ⅳ ・11け採集場所:池2下西 側の用水路.約20cmの間隔 で捕獲された。 この種とヤマアカガェル 点。0門亀α£ゐ¢耽βれ亡γ宜β Wer・ner・とは,外見的に酷 似しているので誤まった同 定が時にみられる。両種を 区別する主な特徴としては, ヤマアカガエルの背側線が, 鼓膜の後方で背中の方に折 れ曲がるのに対し,ニホン アカガエルでは曲らないこ とや,ニホンアカガユ・ルは, ヤマアカガエルよりも吻が とがっている(頭が細長い) ことなどをあげることがで きる。また,勿状軟骨の形 がニホンアカガエルはハ・− ト型であるのに対し,ヤマ 第2図 詭査地内の水系(池と用水路)・ −20−

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胚以上には発生が進んでいないので,4日以上 産卵日が遡ることはないものと考える。田原, (1959)によれば,18℃で尾芽胚までに64時間 を要している。なお,採集して持ち帰った1卵 塊は,教室で2月24日に僻化している。 地1は,水深10∼30cmのハス州痛脚血=槻− Cぴヲγα池で,他の面積は,約1アールあるが, 水域は約20m皇であった。薄い氷の張った約20m五 の全水域に産卵されており,最も広い卵塊の集 まりは,長さ約2m,幅約0.5mであった。全 体の卵塊が占める面積を合計すれば,ほぼ4m2 である。 池6では,東部の浅い(水深0.5m以下)部 分に8個の卵塊が認められた。 ここで,卵塊の量からこの水域に産卵した雌 ガェルの個体数を推定してみよう。岡田(1930) によれば,ニホンアカガエルの卵塊の大きさは, 直径6∼14cmである。桶谷における今回の観察 卵塊も平均直径10cmとみてよい。 卵塊は,水深や産卵行動から考えて重層する ことはない(一部では,重なっているものもあ 第3図 調査地の景観(池1東側より南を望む. 1978年2月18日). アカガェルは,先端部中央が凹んでいる。これ は,胸の表皮を開けば軟骨を取り出さなくても 判別できる。 今回,採集のものは,これら3点のほか,体 色や斑紋などの特徴もニホンアカガェルの記載 と一致している。 B 卵塊と親ガエルの個体数推定 1978年2月18日の調査で,池1および池6に おいて数多くの卵塊が確認された。卵は,尾芽 第4園 地1と採集動物1:地1の全景 2‥池1の卵塊 3‥右からウシガエル・アマ.ガエル・ニホンア カガエル2個体 4:上 モツゴ,下 ギンブナ(1と2は2月18日). −21−

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長,10∼12mmで外紙期・後肢肢芽期であった。 3月17日 池1のオ・タマジャクシを採集し て帰る。体長の範囲は,10∼23mmであったが, 17′、、】20mmの個体が多かった。 この材料で口盤を検鏡し,歯列式が(1:2+2) /(2:1+・1)であることを確め,ニホンア カガユ・ルと同定した。 4月11日 池1のオクマジャクシは,3′、一 4cmに成長していた。他の蓮根が掘りとられ, 水域ほ狭くなって14∼15m2であった。 現存するオタマジャクシの個体数を数えた結 果,1m2当たり約1,000個体であり,全水域に 分散分布しているので全個体の総数は,約14,000 ∼15,000個体である。したがって,100万個の 卵のうち約シう0が生残しているといえる。 4月11日の調査では,池1から池5の間の水 田中の用水路に,所々醇化したばかりのオクマ ジャクシ(体長約10mm)がみられた。卵塊の痕 跡にかたまっており,その数(卵塊数)は,全 部で23個あった。このオクマジャクシの発生段 階(後肢肢芽期,180cで187時間後,田原: 1959)は,よく揃っており,ほぼ同時期(3月 末)に産卵したものと考えられる。 1卵塊とみられる個体数の少ないことから, この卵の親は,次のように考えられる。親ガセ ルが小さく,そのようなカニ・ルは遅く産卵する。 あるいは,一・部のカエ・ルは2月初めの産卵後に, 卵数は少ないが2回目の産卵をする。現在のと ころ,そのどちらが正しいかは不明である。ま た,上記以外の原田があるかも知れない。ちな みに,岡田(1930)によれば,親の体長と卵数 は相関しており,一例をあげると体長35mmでは 987,63mmでは2,382であった。 4 ウシガエル月αW¢αfββゐe如才旭 Shaw 体長:65mm・体重:251g。採集日:Ⅳ・11 採集場所:池1に隣接する南側用水路中。枯草 の下で,じっと動かずにいた。冬眠からさめた ばかりであろう。 池7のコンクリ・−ト堰堤の壁面に,ウシガ・エ ルのオクマジャクシが口盤をくっつけて浮いて いた(約10匹)。 った)と考え,また隣接する卵塊との間隙を考 慮して,1卵塊の占める面横を001m2(10×10 cⅡP)とすれば,池全体の卵塊数は400と計算さ れ,間隙がないものとして半径5cmの円面積 (約0008m2)から卵塊数を求めると500という 債がでてくる。 池6の卵塊は,8個で(深い所は,観察不能 であったが恐らく産卵されていない),両名を 合計すれば,408または508になる。 資料に厳密さを欠くけれども,上述の推定が それ程あやまっていないとすれば,500個体前 後の雌ガ・エルが,殆ど時を同じくして池1と6 に集まって産卵したものと考えなければならな い。しかも,カエ・ルの産卵行動(雄が雌を抱接 して産卵させ,かつ射精する)から類推して, 同じ数の雄ガエルがいなければならない()また, かりに1匹の雄が,複数の雌を抱接するとして も,このような同時に産卵される場合に,雄が 榛端に少ないことは考えられない。 いずれにせよ,この1ア・−ルたらずのハス他 に1,000匹に近いニホンアカガェ・ルが産卵に集 合すると考えねばならず,極めて興味深い問題 を提起する卵塊数である。これだけのニホンア カガエルが,どの範囲に生息しているのか,隣 接する谷の産卵場を調査すれば,明らかになる ものと考える。 なお,1卵塊中の卵数を973∼2,970,平均 1725(岡田,1930)を根拠に,平均数2,000個 と考えると,この他に産出された卵は,約100 万個ということになる。 C オタマジャクシ 2月18日採集の卵塊1個は,生物学教室のメ ダカ飼育中の水槽に入れられた。教室は,暖房 しているので,水温が自然条件下よりも高く, 2月24日には僻化して泳ぎ出している。 2月19日に採集した卵塊は,理科棟東側の生 物野外教材園の他におかれた。この他のオクマ ジャクシの発生速度は,池1のものと変らなか った。 2月26日 池6の卵塊は,−・部からオクマ ジャクシが泳ぎでていた。 2月27日 教室内のオクマジャクシは,体 ー22−

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の橋の北側。玉網を用いて採集した。 Ⅳ 昆虫綱 INSECTA

シジミチョウ Lycaenidae 9 ペニシジミLycaena phlaeas Linnaeus

Ⅳ・11,池3東側の廃水田において,枯草の上 にとまっているのを観察し,写真撮影した。

タテハチョウ科 Nymphalidae

lO ルリタテハKaniska canaee Linnaeus Ⅳ・11,池3西側の廃水田で,確認した。

ミズスマシ科Gyrinidae ll ミズスマシGyrinus japonicus sharp

Ⅳ・11,池2の南西隅で,枯草の間にいる23個 体を観察記録した。 アメンボ科 GerrIidae 12 アメンボAquarius paludu仇Fabricius Ⅳ・11,池2内の西北側に開けた水面で,5個 体記録された。 カマキリ科 Mantidae 13 オオカマキリ 撤γα£β耽Odβγα0γ弱ゆZあ Stoll Ⅱ・18,池2の枯草に附著している卵塊を2侶 採集した。 Ⅴ 甲殻綱 CRUSTACEA サワガニ科 Potamonidae 14 サワガニ Po≠α刑0ケ乙dβ如以》れ宜Vhite 雌2個体:甲幅長と体重は,26mm,53gと22 叫 39g・幼ガニ2個体:甲幅長と体重はそ れぞれ,9mm,03gおよび7mm,39g採集 日:Ⅱ・18採集場所:調査地北端に位層する 地点BMから約100mと500m下流の谷川2地 点。 甲殻(殻幅長,23mm)だけを,Ⅳ・11に,池 6下の用水路の岸で採集した。このことは,サ ワガニが,池6,7附近まで生息した(してい る)と考えてよい。 Ⅵ 腹足綱 GASTROPODA ヤマタニシ科 Cyclophor・idae 15 ヤマクルマガイ 鋤五γ叩£抑脇JαpOれ五¢髄仇 (AいAdams) Ⅲ 硬骨魚綱 OSTEICHTHYES コイ科 Cyprinidae 5 モツゴ掩βdoγαβる0γαpαγγα (Temmincket Schlegel) 体長:55mm体重:26g・採集日:Ⅳ・11・ 採集場所:池2下の用水路。 池5でも泳いでいるのが観察された。 6 ギンブナCαγαββ宜%さg宜るβ㍍oJα㈲g8dの:鍔 (Valer】eiennes) 体長:110mm。体重:38g採集日:Ⅳ・11・ 観察・採集場所:西側の川,池5および池7・・ 池1より北側二つ目の用水路が落ち込む位置 の西側の川(22485測量点の西)の長さ1m, 幅05m,深さ05mの渕で,5∼10個体の■フ ナ(濃い黒色)を観察し,そこから約20m下流 のセキショウAcoγ乱βgγα仇宜耽β髄β の繁茂する 小さいたまりで1個体を採集した。 同日,池5と7でも観察された。池5に∼ま, 30個体以上が生息している。 池7では,コンクリ−ト壁に体長2∼4cmの 幼魚が口をつけていた(5個体確認)。また, 他の西北隅で堤から約5mの沖に体長5∼10cm のフナ80∼100個体が群をなし,静かに水面を 泳ぎ,僅かな物音や観察実の動きで沈むが,し ばらくすると浮き上がってきた。 体色は,池水の色に近似して黄茶色である。 また,頭が大きく,やせているように見えた。 土木工車による池水の濁りが,餌不足を招いて いるのではなかろうか。 メダカ科 Cyprinodontidae 7 メダカ Oryziaslatipes(Temminck

et Schlegel)

観察日:Ⅳ・11り 観察場所:池2下の用水路と 上記フナのいた川の小さい渕。 前者で2個体,後者で1個体を確認したが採 集はできなかった。 ハゼ科 Gobiidae 8 カワヨシノポリ 朗励明沌独り伽血彿β%8 (Mizuno) 体長:33mm体重:05g と体長:24mm,体重 :02gの2個体り採集日:Ⅱ・18採集場所 :処理場城北端の地点BM3から約500m下流 −23−

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宮地伝三郎・川郡部浩哉・水野信彦・1976・原 色日本淡水魚類図鑑.保育社,大阪. 中村健児・上野俊一・1963」原色日本両生・爬 虫類図鑑。保育社,大阪. 日本甲虫学会.1963.原色日本昆虫図鑑,上。 保育社,大阪 岡田弥−・郎.1930。日本産蛙類総説.岩波書店, 東京∴ 田原 肝.1959。ニホンアカガェルの正常発生 段階表Ⅰ。初期発生(Stagesl−25)・ 実験形態学誌13:47−60 竹内蓄蔵.1962原色日本昆虫図鑑,1㍉保育 社,大阪 殻のみ.殻径:14mm・採集日:Ⅳ・11・採集場 所:BM2の近く(池3の東側)。 カワ・=ナ科 Pleur・OCer・idae 16 カワニナ ∫川′′汚‡J/−、0叩汗(!レ椚沖両 (Philippi) 殻高:40mm.殻幅:15mm・全書:43g・採集日 :Ⅳ・11.採集場所:西側の小川で,ギソブナ を採集した地点。 引 用 文 献 川副昭人・若林守男.1976.原色日本蝶類図鑑・ 保育社,大阪. 善良哲明1974.原色日本貝類図鑑。保育社, 大阪 ー24−

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