水 害 時 の 避 難 行 動 に 関 す る 研 究
(1979年 6月 31日 受 め
Study on Pattern of Rcfuge from FioOd Disastcr
ヽlasanori MIcHIuE*
(Rece ed,June 30,1979)
On the basis of consideratiOns on recent natural disasters due to abnormal metological Phenomena,it is Pointed out that the pattertt of natural disasters has changed from flooding Of big rivers and the flood tide into the disasters duc to mad and debris flow and land slides.
In order to s2ve the human life from these disasters, one is neccessary not only to put in practice the hardware for prevention of disasters, but also tO establish che sOftware such as the refuge from f100d disasters. In this paper, the way of retuge is discussed by means of oPiniOnaire investigations.
畑* 上 道
1緒
言 わが国は人 口密度が高 く,か
つ環太平洋地震帯で台風 常襲地帯に位置 してい るため,毎
年 自然災害に起因する 総被害額は約5000億円に達すると言われてお り,ま
た 人命の損失も数百人にのぼ っている。次節で述べ るよう に,戦
後の防災施設の不備 と大型台風の来襲のため,毎
年甚大な 自然災害に よる被害を うけたが,昭
和34年の伊 勢湾台風を境に して,大
型台風の来襲がみ らなれい こと 及び防災施設の整備が進んだことに より,災
害規模力朔ヽ 型化 し,人
命の損失も前期の1000人オーダか ら,100人 オーダヘ と軽減 してお り,戦
後の国土の復興が一応完成 されたように統計上はみ られ る。しか し, このような防 災施設の整備がなされても,決
して災害 は皆無とはな ら ず,新
しい形態の自然災害が発生 しつつあると同時に, 災害のポテンシャルも必ず しも低 くなっているとは言え ない。 災害 は,加
害力 と抵抗力 との不均衡によって発生する ことは しば しば指摘されているが,わ
が国では,戦
後の 防災施設の不備を補 うため, この抵抗力の増強に全力を 傾けてきた。こうした防災施設の完備に対 しては,莫
大 な投資 と長年月の時間を要 し,一
朝―夕では十分なもの とな りえない。はた して,前
述 したようなハー ドな防災 対策だけで,災
害か ら人命を守ることができるものであ ろうか。 災害を惹起す る自然現象は,通
常われわれが体験す る ような 自然力ではな く,異
常値 あるいは極値 と言われ る 非 日常的な現象が社会環境にインパ ク トを与えるとき, 大災害になる。 したがって,災
害を防止軽減するには, ハー ドな面の防災対策の進展度を高めるとともに,ソフ トな面 の防災対策,す
なわち,避
難 の方法論の模索も非 常に重要であ り, この両者が一体 となって,災
害の防止 軽減は達成 され るものと言え よう。 防災純設の充実にともなって,居
住可能領域が大幅に 増大す るとともに,交
通機関及び経済の発展にともなっ て,わ
れわれの行動半径 は著 るしく増大 してきた。この ような情勢の変化によって,住
民の防災施設の安全性に 対す る過信が非常に強 くな り,大
河川の堤防は決 して決 壊 しない とい う風潮が拡が りつつあるようである。*土
木工学科 Department of C il Engineering176 道上正婿融:水害時の避難行動に関す る研究 本報告はこうした住民の 防災意識 を 分析把握 す るた め
,山
陰地方の主要河川である千代川,斐
伊川及び江の 川流域の住民を対象に選び,
ア ンケー ト調査を 実施 し て,避
難の方法論について検討を加 えようとしたもので ある。2
人的被害の推移 全国では,毎
年多 くの人命 と財産が台風な どの異常気 象によって失われているが,そ
の被害 とくに,過
去の人 的被害の経年 的推移について,建
設省の災害統計資料1) に基づいて検討する。Fig.1は
1900年 (明治33年)以
降の異常気象に起因 す るわが国の年間の死者行方不明者数の変化を表 したも のであるが,1920年 ∼1930年の10年間と1960年以降を除 くと,年
間の死者行方不 明者数は10年間で少 くとも 1∼ 2回 は1000人を越えている。とくに,戦
後10年間は大型Fig.l Number of ttilled personS by natural disasters due tO ab■ormal weather For
a year 台風の来襲 と国上の荒廃のため
,毎
年のようにその数 は 1000人を越えている。 しか し1960年 (昭和35年)以
降 は,300人 オーダーの死者行方不明者数で,
その数は激 減 している。この原因はそれ以前に比べて,防
災施設の 整備によって,大
河川のはん らん,高
潮及び大型船舶の 沈没などの災害を抑止できた ことと,室
戸台風,枕
崎台 風及び伊勢湾台風級の超大型台風の来襲がない ことに起 因 してい ると考え られ る。 倉嶋2)は,台
風災害の要因分析を行 うため,台
風の強 さ (工率)と死者数の関係を調べ,1959年 以前 と1960年 以降とではその災害の起 り方に明瞭な差異が生 じている ことを指摘 した。すなわち, i)大型台風に よる死者500∼ 1000人以上の災害)大
型台風ではあるが,死
者数100人以下 の災害 iii)弱いまたは小型の台風であるが,死
者数100人程 度の災害 の 3っ のグループに分け,1959年 以前はi)のグループ に よる災害で多数の死者を出したが,1960年 以降は,)の
災害形態に移行 してきた ことを 指摘 している。こ れ は,前
述 した ように,防
災施設の充実に よる,大
河川 のはん らんや高潮災害の激減によるものと考え られ,大
型台風災害の克服を意味 しているものと言え よう。 しか し,1960年 以降は,iii)に基因す る 災害が多発 してお り,これ は土石流,山
・ がけ崩れ とい った土砂災害に基 因する災害で,わ
れわれの居住領域の拡大に よって,ま す ます この種の災害が発生 しやす くなっているものと推 測 され る。Fig.2は
戦後の死者行方不明者数 と住家被害の関係Fig.2 Relationship be占veen numder of killed
persons and destroyed houses for a year
出 が け くず れ 1れ 'F
Fig 3 RelatiOnship between ttumber OF killed persons and land slides fOr a year
生 卜 青 サ ド W 岳 致 ︵ 人 ︶
を表 したものである。戦後か ら1959年まで と,1960年 以 降を区別 して表 しているが
,両
者の間にはかな り明瞭な 正の相関関係が存在 し,人
的被害の大 きい直線Aと,そ
れが比較的小さい直線Bの
2っ のグループに 分 けられ る。Aグ
ループには高潮や土砂災害によるものが主であ った年が集まってお り,一
方Bグループには,浸
水災害 が主,あ
るいは避難行動が敏速に とられた年が含 まれ る ようである。また,伊
勢湾台風を境に して,住
家の被害 も,一,二
の例外を除いて,激
減 しているが, これは防 災施設の拡充が住家被害を減 じ, この ことが人的被害を 抑えることに大 きく貢献 しているといえ よう。土砂災害 に対する対策 と避難活動の徹底化をはかれば,年
間の死 者行方不明者数 を100人以下に抑 えることも 可能 であ ろう。 最近の人的被害をもた らす災害形態は,過
去のものと 変化 しつつあると言われているが,Fig。3に
見 るよう に,最
近の死者数 と山・ 崖 くずれ個所数 との相関は非常 に高い。なお図中の数字は昭和の年数を表す。上砂災害 は局地的で激甚な災害形態をとるために, このような災 害か ら人命を守るには,避
難行動が非常に有効な方策の 一つであるといえよう。3
避難に関するアンケー ト調査 3.1 流域の概要 と調査対象地域 山陰地方の主要河川である,千
代川流域,斐
伊川流域 及び江の川流域の住民を対象にして,そ
の防災意識を検 討す ることに しよう。これ らの地域は過去において頻繁 に水災害をうけてお り,山
陰地 方の水害常襲地帯で,最
近では 昭和47年 7月の集中豪雨,昭
和 51年 9月の台風17号によって, 被害を うけている。とくに,昭
和47年7月 の集中豪雨が江の川 水系に甚大な被害をもた らした ことはまだ記憶に新 しい。なお, 三流域の流域概要がFig。4に 示 され ているが,千
代川流域では 鳥取市,斐
伊サlI流域では大東町 と加茂町,江
の川流域では川本 町 と桜江町を調査対象地域に選 定 して,これ らの市町の適当な 中学校にア ンケー ト用紙の配布 と回収を 依頼 した。その結果 鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 10巻道上正規 :水害時の避難行動に関す る研究 Table工 に示すように
,回
収率は平均86.3%と この種 のアンケー ト調査では高率を示 した。この調査が実施さ れた時期は昭和53年6月 か ら7月 にかけてである。3.2調
査項 目 調査項 目としては,以
下に示す 5項 目が調査の対象に された。A
回答者の属性B
居住地の条件C
被災及び避難D
水害に対す る備えE
水害対策に対す る芯見 これ らの 5項 目について,33の設問数を設 けて質問を行 なったが,一
般のア ンケー トに比 して設問数も多 く,理
解を要す る質問も多かったにもかかわ らず,前
述 したよ うな高回収率を示 したのは,これ らの地域の住民の水害 に対する意識の高さによるものと推測され る。質問Aについては
,(Al)性
別,(Aり
年令の 2項 目 か らなってい る。 質問Bについては,(Bl)居
住開始時期,(Bつ
宅地 化前の地 目,(B3)住
宅 の構造,(Bり
水害への考慮,(B5)宅
地地盤高か らなっている。 質問Cにおいては,(Cl)自
然災害の被災経験 と将来 の予測,(C2)水
害遭遇場所,(C3)遭
遇時期,(C4)
被災予測,(C5)水
害対策,(C6)避
難の有無,(C7)
避難場所の指示,(C8)避
難径路の安全性,(C9)誘
導者 の有無,(C10)避
難場所の安全性,(C ll)避難場所に おける情報量,(C12)情
報の信頼性,(C13)避
難 した ことへの感想か ら構成されている。(Cl)は
全員に回答 を求めているが,(C2)∼
(C6)は
被災者 に,(C7)
∼(C13)は
避難 した人に対 しての質問事項である。 質問Dでは,(Dl)水
防や消防団員のような防災関係 者の有無,(D2)水
害ニュースヘの関心,(D3)水
害ヘ の備え,(D4)避
難場所・ 径路の指示,(D5)避
難行動 の順調性,(D6)避
難訓練の必要性,(D7)避
難訓練ヘ の参加,(D8)避
難場所 。径路の情報か らなってお り, 全員に回答を求めている。質問Eでは
,(El)土
地利用の制限,(E2)水
害危険 地域の指示,(E3)治
水事業 と自然環境保護 との優先順 位,(E4)治
水事業の進展度か らなっている。3.3調
査結果`
大別 された 5っ の調査項 目について
,千
代川流域 (鳥Table I Collection rate of opinionaと
o Paper
回 収 数 │ 190 216 回収耳く
%)
79.2 85。7諭儒
186郷刊
205 86.8議輔
│i残
守
儒
│ 227『
計
1 1171
1528 取市),斐
伊川流域 (大東町,
カロ茂町)及
び江の川流域 は 江町,川本町)の
3流 域の特性を比較 しなが ら検討 す ることにしよう。なおア ンケー ト調査結果 はまとめてFig.5に
示 されている。A
回答者の属性 :各流域における回答者の性別 は男 女 ほぼ同数で,年
令については40代が過半数を占め,次
ぃで30代と なっている。これは中学校に依頼 したため に,中
学生の父兄によってこのア ンケー トが回答 されて い ることを物語っている。B
居住地の 条件 :居住開始時期(Bl)は
千代川流 域 と江の川,斐
伊川流域では大 きく異 ってお り,前
者で は,昭
和31年以降の居住者が71.4%と なってお り,さ
ら に最近急増の傾向にある。一方,後
者では,昭
和31年以 降の居住者 が過半数以下で,昭
和2o年以前にその地 に居 住 していた人が約 4割 と非常に多いのが 目立つ 。このこ とより,
鳥取市 は 市街化が急激に進んでいる所 であっ て,い
わゆる都市域の性格を帯びているのに反 し,江
の 川・ 斐伊川流域は山村地域の性格を有 している。 宅地化前の地 目(B2)に
ついては,
各流域 とも田畑 が多 く,ま
たそれを知 らない人 も多いようである。住宅 の構造(33)は
圧倒的に木造モルタルの建物が多 く, とくに,江
の川及び斐伊川流域では木造モルタルの平屋 建が約 5割 と非常に多いのが目につ き,高
層建物 に住ん でいる人は数パーセン トに過ざない。鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 10巻 居住地選定時の水害への考慮
(BOに
ついては,何
ん らかの考慮を払った人は鳥取市で43.5%,斐
伊,II流域 で46.8%,江
の川流域で52.5%で,約
半数の人が家を 建てる場合,災
害への考慮を払っている。一方,残
り半 数の人は災害に対す る考慮を払わずに家を建てている。 宅地地盤高 と周辺道路面高 との 比較(B5)に
関 して, 鳥取市では`殆んど同 じ、が 48.9%と 最 も高 く,
次い で ミ0.5m程 度高い、が 31,6%と なっているのに反 し, 斐伊川流域及び江の川流域では`lm以
上高い、がそれ ぞれ44.9%,50.0%と
最 も多 く,
`殆んど同じ、が30.8 %と 25.3%で,
宅地の地盤高は道路面 より高い所にあ るものが比較的多い。C
被災及 び 避難 :過去の被災経験(Cl)を
鳥取市 で調べると,地
震39,9%,洪
水浸水23.7%,火
事20.2%,暴
風・ 雷 9・8%,上
石流・ がけ崩れ 8.4%の 順にな っている。この地域では,昭
和18年に鳥取大地震,昭
和 27年に鳥取大火があったため,地
震・ 火事の被災経験が 他の地域に比べ て高 くなっているものと思われる。斐伊 川流域では,そ
の被災経験 は洪水浸水41,0%,
上石流 がけ崩れ29.1%,火
事8.4%,地
震7.3%,
暴風 。雷 6.6%の 順で,江
の川流域では,洪
水浸水72.8%,土
石 流・ がけ崩れ23,7%,
火事12.6%,
暴風・ 雷 12.0%,地
震 11.0%の 順になっている。両地域 とも水災害 による被災をうけてい るのが 目立ち,特
に,江
の川流域 では洪水浸水の被災体験が異常に高いことに気がつくで あろう。 次に,将
来 うけるか も知れない災害についてみると, 鳥取市について全有効回答者を対象 とす ると,第
1位 が 地震86.9%で,第
2位火事78.2%,第
3位 暴風・ 雷70.1%,第
4位 洪水・ 浸水 61,0%と なってお り,
地震・ 火 事への心配が非常に高い。斐伊川流域では,第
1位地震69.4%,第
2位火事65,1%,第
3位 暴風・ 雷 63,4%, 第4位土石流・ がけ崩れ43.8%,
洪水・ 浸水に対す る 被災予測は意外に低い。江の川流域では,
第 1位地震77.4%,第
2位洪水・ 浸水68,9%,第
3位 火事66.9%, 第4位暴風・ 雷60,1%,第
5位 土石流・ がけ崩れ56.5 %の順で,第
1位
は地震であるが,洪
水・ 浸水に対 して もかな り不安をいだ くとともに,上
石流 。がけ崩れに対 しても半数以上の人が災害の恐れあ りとしている。以上 か ら明 らかなように,地
震・ 雷・ 火事………、 とい った昔 か ら恐れ られていた災害への不安が上位を占め,そ
れ と 前後 して地域特性を加味 した水災害に対する被災予測が なされてい るようである。過去の被災経験別の将来の被 災予測をみ ると,各
地域 とも `被害を うけそ うになった 人ミ及び `被害をうけた人、の被災予測率が `経験 しな か った人、に比べて総 じて高い。とくに,洪
水・ 浸水及 び土石流・ がけ崩れの水災害に関する不安の程度は,過
去に災害を経験 または経験 しそ うになった人が経験 しな か った人に比べ て,
約2倍高 くなっている。 このこと は,水
災害に関 しては,同
じ市町村でも,水
害をうけや すい地域 とうけに くい地域が存在することを示 している のに反 し,地
震・ 火事などは全域でほぼ均等に起 こるこ とを物語ってい るといえよう。 水害の遭遇場所(C2)に
ついて,
各地域 とも`現在 と同じ場所、で水害に遭遇しているのが 7∼ 8割 で,と
くに江の川流域 のそれが 79.8%を 占めているのは 特徴 的である。こ.のように,江
の川流域のような平地の狭い 所 では,居
住地の選択余地が小 さい ことを示 してい ると いえ よう。 水害遭遇の時期(C3)に
ついては,鳥取市 の場合,現
在地居住開始時期 と水害遭遇時期の累加百分率 は全体的 に良 く類似 した形状を示 してい るが,た
だ昭和47年以後 水害に遭遇 した人の割合が増加 してい る。一方,江
の川 流域では,昭
和46年以前では水害に遭遇した人が36,4% と少 ないが,昭
和47年以後その値が63.6%と 非常に高 く なってい る。これは昭和47年水害の被災によるもので, その被害の広範囲性は注 目しなければならない。斐伊川 流域 では,昭
和31年以後,住
民は毎年ほぼ同じ割合で水 害に遭遇 してお り,他
の地域 とは異っている。50代 40を oo代 似1 1 5窮 30代 284必 1 40代 089著 要B 薫6 nl f、とfdし擁チ " 70.3% I"Jの ",)29 §aO
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三
≡
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≡
三
罠
寺
打
干必
(601" ci3 60●
鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 10巻 水害遭遇の予測
(C4)で
ぁるが,
鳥取市 と斐伊川流 域では水害遭遇を予測 していた人はそれぞれ,61,3%と 54.3%で,残
りの人 はほ とんど,ま
たは全 く水害遭遇を 予想 していなかっ たにもかかわ らず,
被災 してい る。 一方,
江の川流域 では,
水害遭遇を予測 していた人が 72,7%と 多 く,前
者に比べて水害の危院性を認識 してい たように思える。 水害への備 え (Cの は,
鳥取市及び斐伊川流域では `していたミ人が 28.7%でぁ り,
江の川流域では `し ていた馬人が 41.3%と 前者に比べて多 くなってお り, 水害への備えがかな りなされているといえよう。 被災 した場合の避難(C6)に
つい て,
避難 `してい た馬人が鳥取市で39.4%,斐
伊川流域 で50.3%,
江の 川流域で 75,7%に なってい る。 これより,江
の川流域 では 4人 のうち 3人 が避難 してお り,洪
水災害の甚大 さ を物語るとともに,地
域住民が災害の恐 ろしさをよく認 識 して,
自らの生命を守る 行動 に移 ったものといえよ う。 避難場所の指示(C7)に
ついて,
鳥取市の場合,指
示 `されていたミが27.4%,
`直前に知 らされたミが 38,7%で,'両者を合せて 66.1%と かな りの人が指示を 受けている。斐伊川流域では,
`されていた、が24.7%,直
前に知 らされた、 が 28,4%で 何んらかの指示を 受けた人が 53.1%に なってい る。一方,江
の川流域で は,
何んらかの指示を受 けた人の割合が 47.0%で,
` 知 らされていなか ったので自分で決めた、人が53.0% と過半数を越えてい る。これは,江
の川流域では組織的 な防災体制ができていないためではなかろうか。 避難径路の安全性 (Cの について,
各地域 とも約7 割の人が安全であると考えている。しか し,残
り3割 の 人は何 らかの危険性を感 じているので,これを取 り除 く ような方策を考えなければならない。 避難誘導者の有無(C9)に
ついて,
各地域 とも誘導 者がいたと回答 した人は約 35%で,残
りの 65%の 人は 自分の判断で避難 しており,災
害時には組織だった行動 がとりくく,個
人の判断が非常に重要になってくること を意味 してい る。 避難場所の安全性(C10)に
ついて,鳥
取市の場合, その安全性を認める 者が96.6%,
斐伊,I十流域 で90・3%,江
の川流域で85,6%で,
順次その割合は低 くなっ てい るが,か
な りの人は避難場所が安全であったことを 認めてお り,避
難場所が適当な所に設定 されていた とい えよう。 しか し,
江の川流域では危険性を訴える人 も 14.4%ぃ るため,こうした人を少な くす るように,安
全 な避難場所 を設定す ることも忘れてはならない 。 避難場所 での情報入手量 (C ll)に ついて,そ
の情報 入手量にまあまあ満足 してい る人 は,
斐伊川流域 で 67.6%,鳥
取市の場合58.3%,江
の川流域で 50,3%に な ってい る。一方,このような情報が全 く入って来なか っ た と回答 してい る人が各地域 とも2割 を越えてお り,避
難場所 での 情報 の 伝達方法 ついても検討する必要があ ろう。 避難場所 での情報の信頼性(C12)に
ついて,まあま あ信頼 できた と回答 した人が,
鳥取市の場合 80.6%, 斐伊川流域 で34.7%,江
の川流域で 76.3%に 達 してお り,信
頼性はほぼ満足できる状態であって,信
頼 できな い情報,た
とえばデマなどはほとんど出なかったようで ある。 避難 した ことへの感想(C13)に
ついて,避
難 した こ とに満足 している人は,江
の川流域で93.5%,
斐伊デII 流域 で92.4%,鳥
取市 で 89.5%と なってお り,避
難 し た ことを積極的に評価 してい るのは江の,II流域 で 74,9 %と非常に高 く,昭
和47年の豪雨災害でこの地域が大被 害をうけたため,避
難についてこのような理解ある態度 を示 したものと考え られ る。D
水害への備え :防 災関係者の有無(Dl)す
なわ ち,身
近かに防災関係の職務についてい る方がいますか とい う質問に対 して `いるミと回答した人が,斐
伊川流 域 で63.5%,江
の川流域で55,8%,
鳥取市で28.4%
となってお り,山
村地域 の方が防災組織が整備 され てい る。 水害 ニュスヘの 関心(D2)に
ついては,
`あってよ く話題 にす る、 と 回答 した人は,
江の川流域で59.1%,
斐伊,II流域で 53.1%と かな り高率 を 示 してい る が,
鳥取市 の場合 このように回答 した人は 28,4%と 非 常に低い。 これは鳥取市の場合,
防災施設の整備に伴 い,水
災害の頻度が低下 したため,水
害への関心が低下 してい るものと考えられ るが,そ
れに関する潜在的な関 心を持 ってい る人は 45.9%と かな りいるので,
これ ら の人に対する意識の高揚をはかる必要があろう。 日頃か らの水害への 備 え(D3)に
ついて,
`天気予 報などのニュースに注意 してい る、と回答 した人が,各
地域 とも8割 程度で高いが,これ以外では,鳥
取市の場 合,`貴重品の置場所を考えている、17.0%,` 日頃か ら 避難場所や方法を考えてい る、13.6%,斐
伊川流域 で, ` 貴重品の置場所を考えてい る、10.5%,
`日頃か ら避道上正好き:水害時の避難行動に関す る研究 難場所や方法 を 考 えている、7.5%となってい る。 一 方
,江
の川流域では,
`宅地が浸水 しない ように盛土な どしている、38.0%,
`日頃か ら避難場所や方法を考え てい るミ23.1%,
`貴重品の 置場所 を考えてい る、が 22.3%で,他
の地域 よりかな り防災意識が高 くなってい るのがうかがえる。これは,前
述 したように,昭
和47年 の豪雨災害が強く影響してい るものと考えられるが,他
の地域では,天
気予報などのニ ュース以外に,関
心はき わめて低い ように思われ る。 水害時の避難場所及び径路(D4)に
ついては,
何ん らかの形で知 ってい ると 回答´した人は,
江の川流域 で50,0%,鳥
取市で38.3%,斐
伊)II流域で 32.2%で,こ こでも江の川流域住民の防災意識の高い ことが知れる。 さ らに注意 しなければな らないのは,過
半数以上の人が 避難場所や 径路 についてあま り:知 らない としている点 で,日 頃か ら広報活動を盛んにして,これを周知徹底さ せ る必要があろう。 避難行動の順調性(D5)に
ついて,
一応順調に行な えると思 うと回答 した人は,
江の川流域で53.2%,斐
伊川流域 で37.0%,鳥
取市 で 23.2%と なってお り,各
流域 ともこれ以外の人はあまり自信がない としてい る。 避難訓練の必要性(D6)に
ついて,
各流域 とも`必 要 であるミと回答 した人が約45%,
`水害の危険性が高 い所だけ必要である、と回答 した人が約25%で
,
それ 以外の人は避難訓練を積極的に評価 していない。 避難訓練への参加(D7)に
ついて,
何ん らかの形で 参加 したい と回答 した人が,各
流域 とも 7割 を越えてお り,これは前項の質問の避難訓練の必要性を認めた人の 割合 とほぼ同じであるので,防
災関係者はこのような点 に留意 して数年に 1度 は 避難訓練 を 企画 すべ きであろ う。 避難場所・ 径路 の 情報伝達(D8)に
ついて,
`必要 なので周知 して欲 しい、 と 回答 した人は,
鳥取市 で68,1%,江
の川流域で65.9%,斐
伊ザII流域で 54.9%と なってい る。また,
`一部に知 らせるだけでよい、と回 答 した人は,斐
伊川流域で22,3%,鳥
取市 で 14.8%, 江の川流域で 12,1%に なってい る。 これ より,避
難場 所 。径路の情報については,多
くの人が入手することを 希望 してい るので,この種の情報伝 達手段を再考 して, もっと多 くの人に知れわたるようにす る必要があろう。E
防災行政への意見 :水 害を防 ぐために土地利用を 制限すること(El)に
ついて,
`賛成、 と回答 した人 が,各地域 とも約 3割 で,`場合による、が各地域 とも4 ∼ 5割 程度,
`反対、が 1∼3%で
あ り,土
地利用制限 を肯定す る人がかな り高率を占めることは興味深い。 浸水の危険性の標示 (Eり について`賛成、 と回答 した人が江の川流域で79.7%,鳥
取市 で78,3%,斐
伊 川流域で 72.0%で,か
な り高率を示 してお り,`反対、 と回答 した人は各地域 とも1%に
満たない。`一概にい えない、 と回答 した人 も10%程度であるものの,大
部 分の人は浸水の危険性の標示を希望 してい るので,浸
水 危険地域についても今後表現法を考えて公表すべ きであ ろう。 治水事業実施 と自然環境保護の優先順位(E3)に
つ いて,
`治水事業重視、と回答 した 人 が江 の デII流域で46.2%,
斐伊)lI流域 で45.3%,
鳥取市 で 42.2%で あ り,
一方 (環境保護重視、 と回答 した人は,
鳥取市 で29.1%,斐
伊川流域で26.1%,江
の川流域で 25.3%と なっている。これ より,治
水事業重視型の方が環境保護 重視型をかな りうわ まわ ってい ることが知れるが,この 傾向は都市域 より山村地域の方が強 くなっている。 周辺河川 の 治水事業進展度(E4)に
ついて,
`よく 進んでいる、と回答 した人 は,
斐伊川流域で 22.8%, 鳥取市 で20,5%,江
の川流域で 15.1%に なっており, \遅れてい る、 と回答 した人はこの川流域で 44.9%, 斐伊,II流域で42,3%,鳥
取市 で 29.9%と 各流域で前者 の割合を越えている。すなわち,河
川の改修はまだ十分 でない と考えてい る人 の割合が河川の改修が十分なされ ているとい う人を うわ まわ ってお り, この傾向は山村地 域 ほど高 くなっている。4避
難4.1
土砂災害発生の限界降雨 最近の豪雨災害 の特徴は,す
でに述べた ように,死
者 行方不明者の約 8割 が,山
・ がけ崩れ,土
石流 とい った いわゆる土砂災害に起因してい る点で,このような災害 か ら人命を守 る場合の 問題点 を 考 えてみることにしよ う。 柳 田3)によれば,第
一に,山
。がけ崩れ型災害の原因 になる集中豪雨の発生は,ゲ
リラ的・ 突発的で,予
報 も 発見 も困難である。第二に,発
生地域が局地的で,従
来 の広域的な情報ではカバーし切れない。第二に,情
報伝 達の時間的余裕が非常に限 られてい るうえに,情
報伝達 のシステムが確立 されていない。さ らに,
付け加える と, 第四に,
この種の災害は, 地域を固定 して考えると
,そ
の発生確率は極めて小 さい。このような特徴の災 害を防止軽減す るには,ハ
ー ドな防災対策を進めること は当然であるが,しか しその地域が広域的に分布 してい るので,この対策にのみ期待す ることは困難があろう。 したがって,ソフ トな防災対策,す
なわち避難が重要な もう一つの柱になると考え られ る。 この種の災害を惹起する降雨を考える場合,降
雨特性 量 として,累
加雨量,降
雨強度,先
行雨量など種々のも のがあげられるが,石
原 らのによって過去10年間の災害 資料の分析 より,Table Iの
ような降雨特性が指摘さ れてい る。これ より明 らかなように,各
地域の地形・ 地Tableェ
rainfali for occure4Ce Of鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 10巻 24hr llull 918 218 537 301 185 発生限界雨量の調査によれば
,そ
の限界雨量は,累
加雨 量が300N35011ullでかっ時間雨量強度が40∼5011ul1/hrで あろうと推測されている。 以上 より,累
加雨量が100ollllを越えると,危
険状態に 達す るので,避
難への心の準備を して置 くとともに,テ
レビ・ ラジオやその他の災害情報に関心を集中させ,さ らに累加雨量が増 して,時
間雨量強度が40∼504Ml1/hr を越える状態が予想 される場合には, 2∼
3時 間後に は,避
難行動に移 るべきであろう。ここで注意すべき点 は,災
害調査の現場で よく耳にす る言葉であるが,
`う ちの家は何十年 と災害にあった ことがなかったのに、 と い う狭い範囲の経験にこだわ ってはいけない とい うこと であろう。4.2避
難 と情報伝達 避難す る場合には,予
め,
`いつ、 `どのように、\ どこへ、とい う二つの要素が明 らかになっていない と円 滑な行動に移れない 。さ らに,重
要なことは,避
難を円 滑に行 うには, 日頃か らの住民の防災意識の高揚が重要 である。例えば, 3節で述べたア ンケー ト資料を相関分 析 して,
何 らかの形で 水害遭遇を予測 していた人 とそ うでない人 との 水害への 備えについて検討 した 結果が Fig。6に
示 されてい る。これ より明 らかなように,各
流域 とも水害遭遇を予測 していた人 の方が していない人 よりもはるかに高率で水害への備えを してい ることがわ かる。また,一
度被災 しそうになった人及び被災 した人 の水害遭遇の予測が非常に高率であることはすでに指摘 (1,4了らかの移tttiケを予測 していた 1:子1(:itit 2,江のオ1流域年十
ゴ 的 disaster 本 一 船点
│ h r 血 h r 剛 68 一 84 S, S, 41 S. 鷹 ノ 巣 海洋気象台 S. 刈 安 峠 S. StS,4
S, 町 役 場 下 限 値 質特性によって災害発生の限界降雨は変イとするが,累
加 雨量が 1001ullを越えると,危
院状態に達 し,そ
の後,時
間雨量が20∼30mm/hrの 強度があると危院性は一段 と 増す。 さらに,
次の 1時 間で30∼401ul1/hrを越える と,も
はや限界を越えると指摘されている。その下限値 として,2001111/day,100dltl1/3hr,及び 50Hu1/hrが提案 されてい る。ここにかかげた限界雨量は,地
域に よって 異なるため,各
地域の特性に対応す る限界雨量を見出す 必要があるが, この値は一応 の目安を与えるものと思わ れる。例えば,背
田ら5)の風化花南地帯における土石流 556 一 3 . 9 24〇 一 784 69 一 99 一 75 一 8〇 一 59 一 46 一 96 一 75 一 50Hg 6滸
触
ェ尭臀監
s患
鍵 紙
watershed 215 129 196 124 48 266 160 3:ひ い川流域186 したが
,隣
災意識を高めるには,こうした経験が非常に 重要なことを物語ってい る。この被災経験 と同種の経験 を得 るような災害のシ ミュレーション,記
録映画の上映 さ らにマス コミに よるキ ャンペーンなどがもっと真剣に 考え られ るべきであろう。 Fig。7は
避難場所の指示のあった場合 となかった場 合の避難場所の安全性について検討 したものである。全 体的にみて,避
難す る前に,避
難場所が防災関係者に よ って指示された場合の方が,避
難場所を 自分で決めた人 よりも,避
難場所の安全性は高い ようである,し
か しそ の差異はあまり大きくない。また,避
難場所の安全性に ついては,大
部分の人が満足 してい るので,避
難が円滑 に行えれば,か
な り災害か ら身を守 ることが可能であろ う。 (1)千倫 川 流 域 l:工 iパきれていた 道上正規 :水 害時の避難行動に関す る研究 (2)江の 川 議 察 l:指示 さ れ て い たFig.7 Security at refuge depending on that the place of reFuge is specified and is nct specified
Fig.8は
避難誘導 者がい る場合 とい ない場合で の避難 の安全性につい て示 した ものであるが
,避
難誘導者 の有無に避難 の安全性 は左右 されない ようであ る。昭和50
年8月の5号台風で死者・ 行方不 明者77人 を 出した災害
Fig. 8 Security at refuge depending on exist― ence of Readers for refuge
時の避難状況を調査 した結果6)では
,魁
難者の約80%は 自分あるいは知人の判断によって避難行動を起 こしてお り,大
災害時には 日頃考えているような組織的な行動は とりに くく,自分 自身の判断が非常に重要 になって くる と教えてい る。したがって,防
災関係に携 る人 は, 日頃 の広報活動で,住
民に災害時の対応の し方や,防
災意識 の高揚を高める方法をまず第一義に模索すべ きであ り, 第二に,非
常時の情報伝達方法を検討すべ きであろう。 しか し注意 しなければな らない点は,災
害時においては 情報伝達網はあまり複雑にな らず,一
系統が支障をきた しても,他
の系統でそれが補えるように しておかなけれ ばな らない。Fig.9は
避難径路・ 場所について事前 に知 ってい る 人 と知 らない人では,避
難行動の順調性に どのような差 異があるかを検討 したものである。これに よれば,事
前 に こうした情報を知 っている人は,各
流域 とも知 らない 人に比べて避難がはるかに順調に行えることを示 してい る。したが って,避
難の時期,径
路,場
所を 日頃か ら住 民に知 らせてお くことは,避
難行動を円滑に行 うには欠 かせない事項であろう。また,避
難訓練 の必要性につい ても,多
くの人が肯定 していると同時に,大
災害をうけ た地域ほど,避
難 したことを良か った と考えてい る点を 想起 して欲 しい。ミ災害は忘れた頃にや って くる、 とい う名言があるが,災
害体験を忘れさせない よう持続 させ ることも,防
災意識の高揚に非常に役立つ ものと考え ら 孝tる。鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 10巻
(1)何う か の形 で知 つて い る
工:千代 川 読壊 2:江 の川 流 鞍
(2)知らない
ユ:千代川流域 2,こ の川流域
Fig.o Relation between information of refuge
and reFt■ge actiOn