愛知工業大学研究報告 第22号B 昭和62年
地震災害の地盤液状化影響評価
飯 田 汲 事 ・ 谷 口 仁 士
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The effect of ground liquefaction on earthquake damage to wooden houses is investigated. Th巴relationsbetween the damage ratio of wooden houses and the rank of ground earthquake
risk are obtained as shown in Fig. 8. Here, the definition of damage ratio is the ratio in percentage of the number of totally destroyed houses plus half number of half destroyed houses to the total number of houses, and the rank of the ground earthquake risk is defined as the function of the amplification of ground司motionamplitude and the predominant period of the
ground. The rank of ground earthquake risk is estimated in each one km2 mesh area in Nagoya
City. The damage ratio was obtained in the same mesh from each of three destructive earth. quakes of 1891 Nobi, 1944 Tonankai and 1945 Mikawa occurred around Nagoya City目Fromthe
ground conditions in Nagoya the earthquake damage is considered that the greater the rank of ground earthquake risk, the larger becomes the damage ratio. The e任ectof ground liquefaction
on earthquake damage to wooden houses becomes large for all of three destructive earthquak巴S
above mentioned.
Ground liquefaction causes to increase the damage ratio of these earthquakes and the rank of damage ratio increases in one or two grades which correspond to 10 to 30 per cent increases of the damage ratio
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まえカマき 161 地盤の液状化は地震災害を大きくしていることは,大 地震時にしばしば経験するところである。この地盤液状 化の影響が,地震災害にどの程度の影響を与えているか を,名古屋地盤について調べたので、報告する。 さな割合に,被害率が大きくなるところが見出されるが, その要因は,地盤の震動特性による被害とは異なる地盤 の液状化によるものと判断し,その関係を追究した。 名古屋地方においては,明治24年 (1891) 10月28日の 濃尾地震,昭和19年 (1944)12月7臼の東南海地震,昭 和20年(1945) 1月13日の三河地震があり,名古屋市に おいても多大の被害を生じたので,これらの地震を対象 として,その震害に対する地盤液状化の影響を調べるこ とにした。名古屋市における地盤の地震危険度は,地盤 の震動特性によって求められる。すなわち,地盤のS波 増幅度および卓越周期の関数で表わされる。それは,家 屋被害率は地盤のS波増幅度の大きいほど,また卓越周 期の大きいほど大きくなっているからである。このよう な一般性を考慮して,地盤の地震危険度をS波増幅度と 卓越周期の関数として定義し,この値の大きいほど地震 危険度が大きいとした。この場合地盤のS波増幅度と卓 越周期とを幾つかのランクに区分したので,地震危険度 もランク分けにした。危険度ランクの大きいほど被害率 が大きいことになる。ところが,地震危険度ランクが小2
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名古屋地盤のS
波増幅度と卓越周期 前述の濃尾地震山東南海地震九三河地震3)の震害に対 応する名古屋市地盤の震動特性4開問はすで、に多年にわた って報告してきたので,それらによることにした。すな わち,地震基盤は第三紀層とし,地震波減衰を表わすQ
値は20とし,入波S波の振幅に対する地表面の振幅比R の最大値を増幅度,その時の周期を卓越周期と定義した。 また,名古屋市の地盤を一辺1kmのメッシュに分割 し,各メッシュの地盤構造と地盤定数はボーりング孔に おけるPS
検層データから収集した。PS
検層が行われ ないところは,筆者等の求めた経験式4)蜘}を用いて密度やS
波速度を計算によって求め,すべてのメッシュ地盤に ついてS波増幅度,卓越周期を求めた。 名古屋市地盤では地震基盤が東から西に向って傾いて いるので,それが浅いところではS波速度は約300m/s, 深いところで、約700m/sである。地震基盤が地表に露出 しているときのS波増幅度は2である。162 飯 田 汲 事 ・ 谷 口 仁 土 F G
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2 4防n 20 図2 名古屋市地盤における地盤卓越周期ランクの メッシュ別分布(ランクは表1による) 表1 S波増幅度および卓越周期のランク S波増幅度 卓越周期 S波増幅度 卓越周期 ランク ランク (sec) (sec) l 2 ~O_2 6 6 ~ 7 O , 6~O , 7 2 2 ~ 3 O , 2~O , 3 7 7 ~ 8 O , 7~O , 8 3 3 ~ 4 0_3~0 .4 8 8 ~ 9 O_8~O , 9 4 4 ~ 5 0 , 4~0 , 5 9 9 ~ 10 0 , 9~ 1. 0 5 5 ~ 6 0 , 5~0 , 6 10 10以 上 1.0 ~ こうして,求められた名古屋市地盤のS波増幅度は図 1に,また卓越周期は図2に示した。メッシュ中値が示 してないのはボーリングデータのない所であり,また図 2に示した棒印のメッシュは地震基盤が地表に露出して いるために応答曲線がフラットのため卓越周期が求まら なかったところである。図1.図2には表1に示したよ うなランク分類の値を示した。 図1
のS
波増幅度は名古屋市の北西部から西部,南西 部にかけての地域で5~ 7 (ランク 5~ 6) と大きくな っており,特に臨海域において大:ぎな値を示しているこ とがわかる。図2の 卓 越 周 期 を み る と 東 部 地 域 で は 0_1~0 , 3sec と比較的短いが,北西部から西部,南西部に かけての地域で0_3~ 1. 0sec と長くなっている。このよ うな周期分布は大局的にはS
波増幅度の分布状態と類似 なパターンを示しているといえよう。既往地震の震害は, 北西部,西部,南西部に多いので,そのパターンは図1, 図 2のパターンと同様であり,その数値の大きなところ が危険地ということになる。3
.
名古屋地盤の地震危険度 名古屋市地盤の地震危険度のランク区分は表liこ示す 通りとし, 1から10に分類した。その区分は図3の通り である。図1に示したS
波増幅度の各メッシュにおける 値と,そのメッシュにおける卓越周期の値とを対応させ て図3から地震危険度ランクを読みとり,それを図に示 したのが,図 4である。この図 4に示す地震危険度は地 震動によって地盤が示す震動特性のみから定まる数値 で,その値の大きなところはS
波増幅度が大きく,卓越 周期も大きいところで,震害の大きいことが予想される のである。 図4の地震危険度図において,棒線印のメッシュは卓 越周期が決まらなかったもので, したがって,地震危険E F
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2.0 地盤の地震危険度1~10 を与える地盤のS
波増幅度と卓越周期との関係 0.60.81.0 周 期 (sec) 0.4 卓 越 0.2 図3 名古屋市地盤の地震危険度ランクの メッシュ別分布 図4。
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度も決まらないメッシュである。しかし,このメッシュ は危険度の意味から考えて,ランク 1と考えてもよい。 表1に示すように,s
波増幅度が大きいほど,また卓越 周期が長いほど,ランクが大きくなるように定義してあ るから,図lおよび図2に示された分布ノ之ターンが一層 強調されたパターンとなって図4に示されたとも考えら れる。 図4の地震危険度図をみると,名古屋市の北西部で3 ~5 ,西部で 4~6 ,南西部で 5~8 となっている。都 心 部 お よ び 東 部 で は 大 部 分 が2であり 3のところもあ る。河床部や丘陵谷部にあたるところは,局所的に4く らいのところもみられ,危険度のやや大きいメッシュも 点在している。 濃尾地震,東南海地震,三河地震における住家被害率 分布に対する地盤の地震危険度分布との関係を調べてみ よう。ここに,住家被害率は,住家全壊家屋数に住家半 壊数の半分を加え,その数を住家全戸数で割った百分率 である。また,濃尾・東南海・三河の各大地震における 地盤の液状化地点は,それぞれの地震災害の項で報告1)制 されているので,それらを用いた。 名古屋市地盤における濃尾地震の住家被害率 ランクのメッシュ別分布 えられる。断層の影響が著しかったと思われるところは, 図 5 のメッシュ番号 E~G の 9 ~13, H~ 1 の 16~19 な どであり, H~L の 5~8 では地変が著しかった。地盤 の液状化現象が現われたのは, C~D の 16~18, D~E の 11~12 , Fの8~9 , H の 10~1,1 Jの9などである。 図5 4.濃尾地震・東南海地震・三河地震の被害率分布 1891年の濃尾地震・1944年の東南海地震・1945年の三 河地震の住家被害率のメッシュ別分布を図5,図6,図 7にそれぞれ示した。濃尾地震の住家被害率は図5から わかるように,南部の臨海域におけるよりは市の北西部 から西部にかけて大きくなっている。濃尾地震の震源は 岐阜県根尾村にあり,濃尾地震にも断層や液状化現象に よる被害が著しかったので,その影響が大きいものと考。
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ー 一 飯 164 名古屋市地盤における三河地震の住家 被害率ランクのメッシュ別分布 図7 名古屋市地盤における東南海地震の住家 被害率ラγ Fのメッシュ別分布 図6 は地盤の地震危険度のランク〔図 4に示した数値〉を示 した。前述の三つの被害地震のそれぞれの地震危険度に 対する被害率の頻度は図中の円の大きさで示した。図8 の最上段に頻度が示してある。 図8で示した地盤の地震危険度と住家被害率との関係 は,被害地震いずれの場合においても,地震危険度が大 きくなるに従って地震被筈率も大きくなっている。その 関係を破線の曲線で示したが,これは地盤液状化のある 被害率を除いた曲線であって,地盤の震動性状に基づく 地震動災害だけを示しているといえる。この破線曲線よ りも大きな被害率は,地盤の液状化の影響や断層などの 地変による影響を示しているのである。濃尾地震の場合 に,地盤の地震危険度が2という小さなランクにもかか わらず,70%以上もの大きな被害率が対応しているのは, 断層の影響による被害を示すものである。そのほか地震 危険度が小さいのに大きな被害率を示すのは,地盤の液 状化の影響によるもので,この地盤の液状化が住家被害 率を大きくしていることが認められよう。濃尾地震の場 合,被害率が地震危険度の小さなランクに対しても大き くなっているのは,地盤の液状化および断層の出現など 地盤破壊が行われた所のメッシュであることが知られ これらの地帯では住家被筈率は70%以上に達していると ころが多L。、 東南海地震では震源は遠州灘の海域であるため,断層 の生成などの影響は名古屋市地盤にはないが,地盤の液 状化現象が現われた。そのメッシュは C~D の 17~18, G~H の 19~20 , 1 の 19~20, Hの21,1 の 21~22 ,J
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の20などである。図6でわかるように,伊 勢湾北部臨海域の名古屋市南部での被害が大きく30%以 上に達している。 三河地震は図7からわかるように,東南海地震の場合 と同様に,名古屋南部の臨海地域で被害がでた。震源地 の三河の西尾市に被害が大きかったが,名古屋市の港・ 南区に被害があった。被害率の最大は港区におけるl.22 %であったが,その地区では地盤の液状化現象が著しか った。これが住家被害に大きな影響を与えたのである。 液状化現象の現われたメッシュをあげると, E~F の 21 ~22 , G~H の 19~20, 1, J の 18~19 に分布してし、る。 以上のようにして,図 5~7 において住家被害率をラ ンク別として示したが,これらと地震危険度との関係か ら液状化の影響評価を行うことにする。 る。 東南海地震の場合は,地震危険度が小さなランクにも かかわらず被害率の大きな所はすべて地盤の液状化が行 われたメッシュが対応しているのである。 三河地震の場合には,東南海地震の場合と同様に,名5
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地盤の地震危険度と地震被害率との関係 地盤の地震危険度ランクに対して地震被害率を,名古 屋市の同一メ之シュから求めて図示したのか図8であ る。図8の上段は濃尾地震,中段は東南海地震,下段は 三河地震の場合であり,縦軸には住家被害率を,横軸に地震災害の地盤液状化影響評価 165