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2 ブロードバンド市場ブロードバンド市場では 21 年度頃までは FTTH への加入増が市場拡大を牽引してきたが 211 年度以降 3.9 世代携帯電話端末パケット通信 (LTE) が急速に加入数を伸ばし ブロードバンド市場の拡大を再加速している ( 図表 3) BWA(WiMAX 等 ) も含め

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ケーブルテレビ業界の現状と連携への動き

1. コンテンツの流れ、トリプルプレイ関 連市場の現状 近年、ケーブルテレビ業界においては、 新たな通信技術により放送サービスの高度 化が進んでいる。特に近年では、モバイル ブロードバンドやモバイル端末の普及を背 景として、映像サービスとインターネット の融合、テレビとモバイル端末の連携を実 現するスマートテレビが普及しつつある。 ケーブルテレビ業界の従来からの強みであ る上位レイヤのコンテンツの魅力に加え、 視聴時間や場所、パッケージにおける自由 度の高さや直感的な操作といった、ユーザ ーの利便性を追求する新たな競争が始まっ ている(図表1)。 モバイル ブロードバンド (LTE・WiMAX・WiFi) テレビ PC スマート フォン プラット フォーム 伝送 端末 STB コンテンツ (アプリ) タブレット PC OS Web ユーザー BS・ CS 地 上 波 一方向 =情報の入手、娯楽 等 双方向 =コミュニケーション CATV FTTH・DSL スティック Wi‐Fi ① 多チャンネル市場 多チャンネル市場はここ数年、IP マルチ キャスト放送が市場拡大を牽引してきてお り、IP マルチキャスト放送を除くと 2012 年度末では前年比横ばいとなっている(図 表2)。ケーブルテレビ加入世帯数の前年 比伸び率は 0.1%程度に低下しており、多チ ャンネル市場拡大への寄与度も大幅に低下 した。多チャンネル加入世帯数の底上げが 業界における喫緊の課題となっている。 -2% 0% 2% 4% 6% 8% 10% 12% 14% 16% 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 (百万世帯) IPマルチキャスト CATV スカパー! WOWOW 多チャンネル合計(IPマルチキャスト除く)伸び率 CATV伸び率 ※伸び率は対前年同月比(右目盛) (年度) 【要 約】 ケーブルテレビ事業は、通信・放送業界における技術革新や競争激化に直面している。 放送(多チャンネル)事業は成長鈍化が著しく、これまで堅調に推移していた通信(イン ターネット)事業でもさらなる営業施策が不可欠となっている。モバイルブロードバンド やスマートテレビ等への対応も迫られている中、ケーブルテレビ業界の競争力強化を企図 した連携への動きが顕在化しつつあり、当行調査では回答事業者の 8 割以上が「連携が必 要」と回答した。今後、各事業者・地域における連携戦略の具体化が注目される。 ※本稿は「ケーブルテレビ事業の現状(12 年度決算版)」(以下「本年度レポート」)の概要版である。 図表1 コンテンツ視聴環境の多様化 (備考)日本政策投資銀行作成 図表2 多チャンネル市場推移(加入世帯数) (備考)総務省、(株)放送ジャーナル社「月刊放送ジャーナル (2013 年 7 月号)」、各社 IR より作成

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- 2 - ② ブロードバンド市場 ブロードバンド市場では、2010 年度頃ま では FTTH への加入増が市場拡大を牽引し てきたが、2011 年度以降、3.9 世代携帯電 話端末パケット通信(LTE)が急速に加入数 を伸ばし、ブロードバンド市場の拡大を再 加速している(図表3)。BWA(WiMAX 等) も含め、モバイルブロードバンドが市場全 体の牽引役として急速に台頭している。 ③ 電話市場 固定電話の契約数は、1998 年をピークに 漸減傾向にある(図表4)。内訳を見ると、 0ABJ-IP 電話の契約数は増加しているもの の、NTT 加入電話の減少により、固定電話 全体では漸減傾向が続いている。一方、携 帯電話の契約数は増加し続けており、2012 年度末時点で約 1 億 3,100 万契約に達した。 携帯電話は固定電話を代替しつつあること に加え、LTE がモバイルブロードバンド回 線として普及する見通しであり、今後さら に存在感を増していくとみられる。また、 近年スマートフォンの普及とともに世界規 模で浸透しつつある無料通話アプリの電話 事業へのインパクトも注目される。 2. ケーブルテレビ事業者の各事業の動向 ① 放送事業 本年度レポートにおいては、全国のケー ブルテレビ事業者約 150 社から回答を得た。 多チャンネル契約について、1社あたり 多チャンネル加入世帯数と加入率の推移を 見てみると、2012 年度の加入率は 20.4%と なり、低下傾向が続いている(図表5)。 また、1 社あたり多チャンネル獲得・解 約 世 帯 数 を MSO ( Multiple System Operator;ケーブルテレビ事業統括運営会 社)・非 MSO 別にみると、MSO は 2012 年度 も純増を維持したが、非 MSO では純減に転 じた(図表6)。 図表4 固定電話の契約数の推移 (備考)1. 総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する 四半期データの公表」より日本政策投資銀行作成 2.CATV 事業者が提供する IP 電話サービスは、IP 電話にカ ウントされている。 56.8 131.7 24.1 0 3 6 9 12 15 0 20 40 60 80 100 120 140 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 固定電話 携帯電話 内訳:NTT加入電話 内訳:0ABJ-IP電話 内訳:直収電話(右目盛) 内訳:CATV電話(右目盛) (百万件) (百万件) (年度) 図表5 1 社あたり多チャンネル加入世帯数 と加入率の推移(n=96) (備考)日本政策投資銀行作成 112 118 121 122 24.3 24.6 24.8 24.9 21.6% 20.8% 20.5% 20.4% 15% 20% 25% 30% 0 50 100 150 09年度 10年度 11年度 12年度 (千世帯) 対象世帯数 加入世帯数 加入率(右目盛) 図表3 ブロードバンド市場推移 (加入世帯数) (備考)1. 総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する 四半期データ」より日本政策投資銀行作成 2. CATV 事業者の提供する FTTH の加入世帯数は FTTH に含 まれる 5.5% -10% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 0 10 20 30 40 50 60 70 04 05 06 07 08 09 10 11 12 (百万世帯) 3.9世代携帯電話端末パケット通信(LTE) BWA(WiMAX等) FTTH DSL CATV FWA(固定無線アクセス) 伸び率(右目盛) (年度)

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- 3 - 解約理由について尋ねたところ、「引越」 との回答割合が最も高く、特にサービスエ リアが主に都市部となる MSO においてその 割合が高い(図表7)。また、本年度の回 答では「サービスを使用しない」の割合が 急増している。この背景には、スマートフ ォン等の普及に伴う嗜好の多様化等がある ものとみられる。

ARPU(Average Revenue Per User;1 契 約あたりの月間売上高)については、2010 年度までは多チャンネル契約のデジタル契 約への切り替えにより上昇してきたが、足 下では下落基調に転じている(図表8)。 これは、地デジ化の完了や、加入促進のた めの割引策等によるものと考えられる。 MSO/非 MSO で見ると、2012 年度は、非 MSO は概ね横這いで推移した一方、MSO は低下 傾向が継続している。MSO における低価格 帯コースの拡販の影響等が要因として考え られる。 ② 通信事業 2012 年度のケーブルインターネット加入 率は 13.2%に上昇した。全体の約 1/4 の事 業者が放送区域の拡張等を行い、対象世帯 数が増加したことに加え、メニューの多様 化や高速コースの拡販等により新規加入を 獲得したことによる(図表9)。 獲得・解約の状況を見ると、全体では純 増基調は維持されたものの、純増ペースは 図表6 1社あたり多チャンネル獲得・ 解約世帯数の推移 18,778 18,934 19,037 19,024 6.3% 7.1% 6.4% 6.9% 4.7% 4.7% 1,185 1,341 +156 1,211 1,314 +103 900 887 -13 10 20 30 09年度 解約 獲得 10年度 解約 獲得 11年度 解約 獲得 12年度 (千世帯) 46,418 47,447 48,256 48,747 12.0% 14.2% 10.8% 12.5% 9.7% 10.7% 5,573 6,602 +1,029 5,134 5,943 +809 4,657 5,148 +491 10 20 30 40 09年度 解約 獲得 10年度 解約 獲得 11年度 解約 獲得 12年度 (千世帯) 純増率 +2.2% 純増率 +1.7% 純増率 +1.0% 純増率 +0.8% 純増率 +0.5% 純増率 -0.0% 【MSO】(n=19) 【非MSO】(n=77) (備考)日本政策投資銀行作成 82.1% 41.4% 48.3% 6.2% 3.4% 0.0% 24.1% 12年6月(n=145) 66.4% 52.1% 35.7% 5.0% 1.4% 0.7% 25.0% 引越(予定) 他事業者サービスへの 移行 地上D放送のアンテナ 受信化 料金への不満 設定や操作が難しい 顧客サービスに不満 (料金以外) サービスを使用しない 11年6月(n=140) 87.6% 36.4% 53.5% 17.8% 4.7% 0.8% 46.5% 13年6月(n=129) 図表7 解約理由経年変化 (備考)日本政策投資銀行作成 図表9 1 社あたりケーブルインターネット 加入世帯数と加入率の推移(n=102) 115 117 120 121 13.8 14.6 15.3 15.9 12.0% 12.5% 12.8% 13.2% 11% 12% 13% 14% 0 50 100 150 09年度 10年度 11年度 12年度 (千世帯) 対象世帯数 接続世帯数 接続率(右目盛) (備考)日本政策投資銀行作成 図表8 多チャンネル ARPU の推移 (09 年度での全社平均=100) (備考)日本政策投資銀行作成 85 90 95 100 105 110 115 120 09年度 10年度 11年度 12年度 全社(n=69) MSO(n=15) 非MSO(n=54)

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- 4 - 鈍化している。特に非 MSO については、解 約率の上昇が継続しており、12 年度には獲 得率も下落した(図表 10)。 ARPU は、全社平均で 2009 年度から 2012 年度にかけて一貫して低下基調にあり、特 に 2012 年度の落ち込み幅は大きい(図表 11)。MSO 事業者では 2012 年度において対 前年比で ARPU が大きく低下している点が 特徴的である。この背景として、顧客囲い 込みのための営業施策や通信事業者との厳 しい競争状況等があるものと考えられる。 インターネットの提供速度(加入が最も 多いコース)の割合をみると、直近 5 ヵ年 度を通じて、最も速度の遅い 2Mbps 未満の 事業者の割合が低下する一方、最も通信速 度の速い 20Mbps 以上の事業者の割合が上 昇する状況が継続しており、全体として低 速コースから高速コースへ遷移する傾向と なっている(図表 12)。 ③ 固定電話サービス事業 固定電話サービスは、導入開始が最近で、 伸びしろの多い事業者が多いこともあり、 加入世帯数・加入率ともに順調に増加・上 昇を続けている(図表 13)。 MSO/非 MSO 別にみると、固定電話サービス が MSO において先行的に導入が進んだこと から、2008 年度時点では MSO と非 MSO のサ ービス提供事業者の割合に大きな較差があ ったが、非 MSO においても直近 5 期の間に 急速に導入が進み、60%以上の事業者が同サ ービスを提供している。 12.9% 10.5% 8.9% 7.3% 4.8% 39.5% 44.4% 37.1% 39.5% 38.7% 26.6% 24.2% 29.8% 25.8% 24.2% 21.0% 21.0% 24.2% 27.4% 32.3% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 08年度 09年度 10年度 11年度 12年度 ~2.0Mbps 2.0~10.0Mbps 10.0~20.0Mbps 20.0Mbps~ 図表 12 各事業者の加入世帯が最も多い サービス提供速度 (備考)日本政策投資銀行作成 図表 11 ケーブルインターネット ARPU の 推移 (備考)日本政策投資銀行作成 85 90 95 100 105 110 115 09年度 10年度 11年度 12年度 全社(n=87) MSO(n=16) 非MSO(n=71) 図表 13 1 社あたり固定電話サービス加入 世帯数と加入率推移(n=42) (備考)日本政策投資銀行作成 158 161 162 164 12.4 15.7 18.6 21.2 7.8% 9.7% 11.5% 12.9% 0% 5% 10% 15% 20% 0 50 100 150 200 09年度 10年度 11年度 12年度 (千世帯) 対象世帯数 加入世帯数 加入率(右目盛) 図表 10 1社あたりケーブルインター ネット獲得・解約世帯数の推移 (備考)日本政策投資銀行作成 26,875 28,858 30,273 32,254 12.7% 20.1% 12.6% 17.5% 12.5% 19.1% 3,422 5,405 +1,983 3,623 5,038 +1,415 3,790 5,771 +1,981 10 20 30 09年度 解約 獲得 10年度 解約 獲得 11年度 解約 獲得 12年度 (千世帯) 10,603 8.1% 13.3% 11,157 11,688 11,923 8.9% 13.6% 9.4% 11.4% 857 1,411 +554 990 1,521 +531 1,100 1,335 +235 5 10 15 09年度 解約 獲得 10年度 解約 獲得 11年度 解約 獲得 12年度 (千世帯) 純増率 +7.4% 純増率 +4.9% 純増率 +5.2% 純増率 +4.7% 純増率 +2.0% 【MSO】(n=20) 【非MSO】(n=82)

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- 5 - 非 MSO では、電話加入率が多チャンネル よりも低く、既存加入世帯への拡販により 今後も増加基調は続くものと考えられる。 一方 MSO では、電話加入率が多チャンネル に近づいており、今後は伸び率が鈍化する 可能性がある(図表 14)。 3. 経営状況 本年度レポートでは、ケーブルテレビ事 業者の 2012 年度の売上高は前年度比横ば いに留まり、前年に引き続き伸び率の鈍化 が顕著となった。 事業収入の内訳を見ると、通信事業収入 が増加している一方で、放送・その他事業 の収入はほぼ横ばいであり、構成に大きな 変化は無かった(図表 15)。 総資産規模の水準は、全体平均では 3 ヵ年 度を通じて有利子負債の圧縮が進み、縮小 傾向にある(図表 16)。継続的な当期黒字 の計上に伴い累積利益の蓄積が進行してい ることから、貸方(右側)では純資産の割 合が高まっている。 4. 通信と放送における新しい動き ① キャリアによるスマートテレビ展開 ケーブルテレビ業界でスマート TV が実 用化される中、移動体通信キャリアも独自 のスティック型端末によるスマートテレビ サービスを一斉に開始した。これは、通信 キャリアがこれまでスマートフォン等モバ イル端末向けに集積・構築してきたコンテ ンツを家庭のテレビに拡大する動きである。 ② プラットフォーム整備への動き 上記のような内外の厳しい環境の中、業 界全体の競争力強化を企図した「ケーブル プラットフォーム」の実現に向けた動きが 具体化しつつある。日本ケーブルテレビ連 盟内の「地域力」検討特別委員会において 4,609 7,475 10,231 12,274 5.5% 67.7% 6.4% 43.3% 6.6% 26.5% 255 3,121 +2,866 481 3,237 +2,756 672 2,715 +2,043 5 10 15 09年度 解約 獲得 10年度 解約 獲得 11年度 解約 獲得 12年度 (千世帯) 24,957 29,064 32,282 35,646 8.4% 24.8% 7.9% 19.0% 7.5% 17.9% 2,092 6,199 +4,107 2,299 5,517 +3,218 2,429 5,793 +3,364 10 20 30 40 09年度 解約 獲得 10年度 解約 獲得 11年度 解約 獲得 12年度 (千世帯) 【非MSO】(n=26) 【MSO】(n=16) 純増率 +16.4% 純増率 +11.1% 純増率 +10.4% 純増率 +62.2% 純増率 +36.9% 純増率 +19.9% 図表 14 1 社あたり固定電話サービス 獲得・解約世帯数の推移 (備考)日本政策投資銀行作成 1,230 1,249(+2%) 1,256(+1%) 1,261(+0%) 681 (+10%)752 805 (+7%) 834 (+4%) 51 89 42 13 2,440 478 2,655 (+9%) 565 (+18%) 2,684 (+1%) 581 (+3%) 2,693 (+0%) 585 (+1%) 0 1,000 2,000 3,000 09年度 10年度 11年度 12年度 (百万円) 放送事業収入 通信事業収入 電障収入 その他収入 図表 15 各事業収入の推移 (当行取引先平均) (備考)日本政策投資銀行作成 図表 16 平均的事業者のバランスシート (備考)日本政策投資銀行作成 3,670 1,471 2,200 10年度 3,666 1,632 2,034 11年度 3,577 1,738 1,839 12年度 負債 負債 負債 (有利子負債) (1,746) (有利子負債) (1,604) (有利子負債) (1,381) (資本金) (1,123) (累積損益) (348) (資本金) (1,123) (累積損益) (509) (資本金) (1,085) (累積損益) (653) 純資産 純資産 純資産 総資産 総資産 総資産

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- 6 - 議論が行われてきたほか、総務省において も、2012 年秋の「放送サービスの高度化に 関する検討会」の中で、「ケーブル・プラ ットフォーム WG」が設置され、ケーブルテ レビ業界のための独自プラットフォーム構 築に向けた議論が行われた。2013 年 5 月に 示された総務省の検討結果では、プラット フォームの 5 つの機能が提示された(図表 17)。 一方、事業者側においてもいくつかの取 組が進められている。 日本デジタル配信(株)(JDS)では、J:COM による IP ベースの VOD サービスと連携し、 プラットフォームを構築しつつある。 一方、独立系ケーブルテレビ事業者同士 の連携による「J.COTT」では、アクトビラ 等と連携しながら、各地の事業者が VOD サ ービス等を実現できるプラットフォーム構 築を進めている。 5. 連携への動きと実現に向けた方策 ① 米国における状況 米国でも、日本と同様に通信事業者等と の競争が激化する中、米国の地方部の独立 系事業者においては、地域経済低迷や衛星 放送事業者との競合、政策の影響等により 業況は厳しい。こうした中、一部で独立系 ケーブルテレビ事業者間の連携の動きがみ られる。 独立系事業者が加盟する協同組合である NCTC ( National Cable Television Cooperative)は、番組の共同購入や権利処 理に加え、近年は中小向け TV Everywhere プラットフォーム構築等を行う。また、ACA (American Cable Association)は再送信 に関する法律関連の事務処理や FCC との調 整等を担う。この両者が協働して独立系事 業者をサポートしている(図表 18)。 大手MSO 地方独立系CATV事業者 ACA NCTC 衛星放送 事業者 通信 事業者 独立系 CATV <ケーブルテレビ業界> TV Everywhere <独立系事業者 の連携内容> コンテンツ価格交渉・調達 権利処理 /コンテンツ会社保有 価格交渉・調達権利処理 TV Everywhere プラットフォーム 開発・提供 TV Everywhere プラットフォーム 開発(実験) トリプルプレイ 競合 コンテンツ調達における連携 ・規模のメリットにより、コン テンツ事業者に対する交渉 力の確保 ・FCCへの申請 ・法律関係の事務処理 TV Everywhere プラットフォーム開発 ・技術的な開発に加え、コン テンツの権利処理も行う。 コンテンツ事業者・ 地上波ネット等 <ユーザー> トリプルプレイサービス 図表 18 米国における連携の状況 (備考)日本政策投資銀行作成 ① IP映像伝送プラットフォーム機能 ② 既存IDの事業者間連携プラットフォーム機能 ③ 監視プラットフォーム ④ AJC-CMS機能 ⑤ お客様管理システム(SMS)プラットフォーム機能 (備考)総務省資料より日本政策投資銀行作成 図表 17 総務省によるプラットフォームの 5 つの機能

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- 7 - また、独立系事業者向けに、IPTV/OTT サ ービスを手軽に実現する技術と番組の権利 処理を併せたコンサルティングを行うサー ビスも出てきている(図表 19)。 米国中部では、当地域の独立系事業者が 一堂に会する”Mid-American Cable Show”が 毎年開催されている。2013 年のショーは 9/4~9/6 にミズーリ州スプリングフィール ドで開催された。セッションでは、NCTC や 独立系事業者による TV Everywhere の取り 組み状況、技術ロードマップ等が紹介され た(図表 20)。また、展示ブースでは、独 立系事業者の強みである地元の高校のフッ トボールやバスケットボールといったコン テンツをタブレット端末等で視聴できるサ ービスが目立った(図表 21)。 個々の事業者も連携を意識している。あ る地方独立系事業者へのヒアリングにおい ては、TV Everywhere が地方部でも普及す ると見据えた上で、それを実現するための 連携先として、MSO ないし、NCTC のような 中小事業者連合の 2 つを挙げた。また、近 隣で CATV 事業を手がける電力事業者等と の連携により活路を見出そうとしている。 加えて、連携に際しては各事業者の個性を 多少犠牲にすることも必要である、との意 見もあった。 ② 日本における連携への意向 ケーブルテレビ業界をめぐる競争環境の 激化、技術革新が進む中、業界内の連携へ の機運も高まりつつあるとみられる。そこ で、本年度レポートでは連携に関するアン ケート調査を実施した。 まず、連携への意向については、回答事 業者の 8 割以上が「連携が必要」と回答し た。MSO/非 MSO 別では、「今すぐ必要」と いう回答が MSO で 4 割を超えるのに対し、 非 MSO では 2 割未満にとどまり、連携への 意向の強さに相違がみられた(図表 22)。 図表 20 パネルディスカッションの模様 (備考)図表 20、21 は日本政策投資銀行撮影 図表 21 地元高校のスポーツコンテンツを タブレットで視聴 図表 19 地方電話会社や CATV 事業者 向けの OTT/IPTV サービスも現れている (写真は 「Skitter TV」) (備考)当社資料

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- 8 - 次に、「連携が必要」と回答した事業者 を対象に、想定する連携相手を尋ねると、 「MSO 以外の事業者」との回答が最も多く、 次いで「MSO」となった。ただし、MSO/非 MSO 別に見ると構成は大きく違っており、 非 MSO では「MSO 以外の事業者」が最も多 く、「自治体」も比較的多い一方、MSO で は連携相手として「MSO 以外の事業者」を 回答する事業者は無かった(図表 23)。 また、連携で期待する効果については、 「番組共同購入・機器共同調達等によるコ ストダウン」との回答が約 6 割と最も多く、 「新技術」や「経営・顧客対応ノウハウ」、 「地域コンテンツ流通促進」等も 5 割近く が回答した。MSO/非 MSO 別に見てみると、 「コストダウン」や「経営・顧客対応ノウ ハウ」では MSO の方が非 MSO より回答割合 が高く、特に「経営・顧客対応ノウハウ」 での期待が大きいことが窺える(図表 24)。 一方、「地域コンテンツ流通促進」や「新 技術」では非 MSO で高い期待度が窺える。 さらに、効果について想定する連携相手 別に見ると、MSO との連携、MSO 以外の地域 ケーブルテレビ事業者との連携ともに、「コ ストダウン」への期待が最も多い(図表 25)。 ただし、2 番目に多い回答は、MSO との連 携が「経営・顧客対応ノウハウ」である一 方、地域ケーブルテレビ事業者との連携で は「地域コンテンツの流通促進」である。 最後に、連携実現に向けた課題としては、 7 割以上の事業者が「経営方針の違い」と 回答した。これを連携相手別に見ると、MSO との連携では「追加的なコストの発生」や 「地域密着を維持できるか懸念」の回答割 合が、地域ケーブルテレビ事業者との連携 より高い。一方、地域ケーブルテレビ事業 図表 22 連携への意向 (単回答,MSO/非 MSO 別) 図表 23 想定する連携相手 (単回答,MSO/非 MSO 別) (備考)図表 22~25 は日本政策投資銀行作成 図表 24 連携で期待する効果 (複数回答,MSO/非 MSO 別) 今すぐ必要 将来的には必要 考えていない 0% 20% 40% 60% 80% 100% MSOの回答 (n=25) 非MSOの回答 (n=97) 82% 55% 73% 32% 0% 5% 0% 74% 43% 49% 66% 0% 6% 3% 0% 20% 40% 60% 80% 番組共同購入・機器共同調達等 によるコストダウン 新技術(スマホ・タブレット連携,スマート TV,ネットでの動画配信等)対応 経営ノウハウ,営業・顧客対応ノウハウ 等の共有 地域コンテンツの流通促進 固定電話サービスへの対応 無線サービス(WiMAX,Wi‐Fi等)へ の対応 その他 MSOとの連携(n=22) 非MSOとの連携(n=35) MSO以外の地 域ケーブルテレビ 事業者 大手MSO 自治体 通信事業者 コンテンツ配信 事業者 機器ベンダー その他 具体的な連携 相手は想定で きていない 0% 20% 40% 60% 80% 100% MSOの回答 (n=21) 非MSOの回答 (n=80) 図表 25 連携で期待する効果 (複数回答,連携先が MSO/非 MSO 別) 65% 50% 75% 45% 0% 10% 5% 57% 54% 41% 51% 1% 14% 4% 0% 20% 40% 60% 番組共同購入・機器共同調達等に よるコストダウン 新技術(スマホ・タブレット連携,スマート TV,ネットでの動画配信等)対応 経営ノウハウ,営業・顧客対応ノウハウ 等の共有 地域コンテンツの流通促進 固定電話サービスへの対応 無線サービス(WiMAX,Wi‐Fi等)へ の対応 その他 MSOの回答 (n=20) 非MSOの回答 (n=74)

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- 9 - 者との連携では「株主の意向」の回答割合 が 2 番目に高い(図表 26)。 86% 41% 5% 59% 50% 0% 5% 74% 54% 14% 34% 29% 29% 3% 0% 20% 40% 60% 80% 経営方針の違い 株主の意向 コンテンツ配信会社の違い 追加的なコストの発生 地域密着を維持することができ るかどうかの懸念 連携を主導/コーディネートする主体 の不在 その他 「MSOとの連携」との回答者 (n=22) 「MSO以外の地域ケーブルテレビ事業者との連携」との回答者 (n=35) ③ 連携戦略 今後、技術革新や通信事業者等との競合 激化が予想される中、ケーブルテレビ事業 者の経営戦略は、大きく分けて「コスト競 争力の強化」と「地域密着によるサービス の差別化」の2つの方向性があり(図表 27)、 いずれも連携がキーポイントとなる。縦軸 の「コスト競争力の強化」では、同業他社 との「設備共用」「端末・番組等の共同購 買」や「機能集約」といった方策が考えら れ、すでに実践している一部事業者におい ては、相応の効果を上げている。 一方、横軸の「地域密着サービスによる 差別化」は、地域内の様々な主体との連携 により、地域住民の課題解決や豊かな暮ら しを実現するものである。この連携では、 地域の各主体と地域住民を結ぶ役割がケー ブルテレビ事業者に期待される。 ケーブルテレビ事業者としては、事業環 境の変化を見据えて、まずは自社の中長期 的な業績見通しと経営計画を策定し、どの ような連携が自社にとって望ましいのかと いう連携戦略を具体化することが求められ よう(図表 28)。連携に対する考え方や期 待される効果は事業者によって異なるため、 プラットフォーム整備の議論や国内外の連 携の先行事例も参考にしながら、 個々の事業者の特徴や置かれて いる環境を踏まえて検討を進め ることが重要であろう。 図表 26 連携実現に向けた課題(複数回答) (備考)日本政策投資銀行作成 通信事業者との差別化 コ ス ト 競 争 力 の 強 化 設備共用による 投資抑制 共同購買による コストダウン 機能集約による 生産性向上 地域密着サービス による差別化 MSOなどの大手 事業者が推進し てきたコストリー ダーシップ戦略 同業者との連携 がカギ 高齢化・人口減少といった課題に直面 する事業者が模索する対抗策 異業種との連携がポイント ヘッドエンドの共用 電話用センター装置の共用 加入者端末の共同購買 インターネット上位回線の共同調達 CS番組の共同購買 番組ガイド誌の共通化 広告営業機能の相互利用 コールセンターの統合 制作機能の統合・相互活用 事務関連のシェアードサービスセンター 人材育成・R&D関連の連携 小売業者、運送業者 医療機関、福祉施設 学校 市役所、町役場 等との連携 (備考)日本政策投資銀行作成 図表 27 競争戦略と連携による効果 図表 28 連携戦略の具体化 (備考)日本政策投資銀行作成 連携相手: 例)MSO、独立系事業者、通信事業者、自治体等・・・ 連携範囲: 例)設備の共用化、番組の共同購入、新技術対応・・・ 連携で期待される効果・メリット:  その具体的(経済的)効果 例)投資抑制効果、生活支援サービス、・・・   ○○円規模のコスト削減 阻害要因・デメリット: 例)資本関係、独自性の維持・・・ 自社に適合する連携か: 例)エリア、規模、・・・

(10)

- 10 - (担当) 企業金融第 2 部 澤田 裕之 産業調査部 清水 誠 ・本資料は、著作物であり、著作権法に基づき保護されています。著作権法の定めに従い、引用する際は、 必ず出所:日本政策投資銀行と明記して下さい。 ・本資料の全文または一部を転載・複製する際は著作権者の許諾が必要ですので、当行までご連絡下さい。 お問い合わせ先 株式会社日本政策投資銀行 産業調査部 Tel: 03-3244-1840 E-mail: report@dbj.jp

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