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Fig.. Geological map of the central Kanto Plain (after Sugiyama et al., 1997) and the location of the Otone well and other borehole sites r

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(1)

Chronostratigraphy of 1505 m long hot spring well drilled in the central Kanto Plain, central Japan

関東平野中央部埼玉県大利根町で掘削された

1505 m

温泉ボーリングの年代

層序

Abstract

The chronostratigraphy of a 1505 m deep hot spring well drilled in Otone town, Saitama Prefecture, in the central Kanto Plain of Japan, was determined by tephrostratigraphy, and calcareous nannofossil and diatom biostratigraphy and is correlated with Neogene and Quaternary sequences that outcrop within the Kanto Plain area. Units A (depth 1434–1505 m), B–E (depth 773–1434 m), and F (depth

0–773 m) correlate with the Middle Miocene Hiki Group of the Hiki Hills, the Middle–Late Miocene Tokigawa Group of the Hiki and Iwadono hills and the Late Pliocene–Pleistocene Kazusa and Shimo-sa groups of the Boso Peninsula, respectively. The Niwaya unconfor-mity is thought to separate Units A and B, and the Kurotaki uncon-formity correlates with the base of Unit F. The base of the Kazusa Group has also been identified in the Kazo1–Shobu1 Line seismic section and reaches a maximum depth of ca. 1000 m at Shobu town. Keywords: Neogene, Quaternary, Kanto Plain, tephrochronology, biostratigraphy, calcareous nannofossil, diatom, hot spring well, cuttings

納谷友規

 平松 力

**

 古澤 明

***

柳沢幸夫

 山口和雄

Tomonori Naya

, Chikara Hiramatsu

**

,

Akira Furusawa

***

, Yukio Yanagisawa

and Kazuo Yamaguchi

2012年823日受付.

2013年25日受理.

産業技術総合研究所地質情報研究部門

Geological Survey of Japan, AIST, Central 7, 1-1-1 Higashi, Tsukuba, Ibaraki 305-8567, Japan

** 石油資源開発株式会社技術本部技術研究所

JAPEX Reseach Center, Japan Petroleum Ex-ploration Co Ltd., 1-2-1 Hamada, Mihama-ku Chiba 261-0025, Japan

***

株式会社古澤地質

Furusawa Geological Survey Co Ltd., 93-7 Yashiki, Tosaki, Okazaki, Aichi 444-0840, Japan

Corresponding author: T. Naya, t-naya@aist.go.jp

©The Geological Society of Japan 2013 375

は じ め に 日本最大の平野である関東平野は,中新世以降大規模な堆 積盆として発達してきており,新第三紀∼第四紀の厚い堆積 物で埋積されている(例えば

,

貝塚

, 1987;

高橋ほか

, 2006

). この堆積物は,房総半島・三浦半島や平野の縁辺部において 一部が地上に露出しているものの,その大部分は地下に分布 しており,その基底深度は,深い場所で

3000 m

を超えて いる(

Fig. 1;

鈴木

, 2002;

林ほか

, 2006

など). 近年,関東平野西縁部の大深度ボーリングの地下地質層序 と,関東平野周辺に露出する地表地質層序の対比(林ほか

,

2004a

)と,反射法探査記録の解釈(林ほか

, 2004b,

高橋ほ か

, 2006

)に基づき,関東平野地下に分布する新第三系・第 四系の層序は,

2

つの大きな不整合,すなわち庭谷不整合(約

15 Ma

)と黒滝不整合(約

3 Ma

)に画された

3

層構造モデル によって理解されるようになった(高橋ほか

, 2006

).このモ デルにより,関東平野西縁部の深部地下の地質構造の概要が 示されたものの,反射法探査測線や年代層序が明らかな大深 度ボーリングの数が限られているため,これらの地下の地質 構造が側方にどのように連続しているのか,その詳細には不 明な点が多いのが現状である. 本研究は,関東平野中央部に位置する埼玉県大利根町(現 加須市大利根町)で掘削された掘進長

1505 m

の温泉ボーリ ングのカッティングス試料を使い,石灰質ナンノ化石,珪藻 化石,テフラの解析を行い,年代層序を明らかにした.カッ ティングス試料から得られる情報は限られているが,本研究 では近接する地域で明らかになっている陸上地質層序との対 比を手がかりとして,地下地質層序の復元を行った.このよ うにして明らかになった年代層序を用いて,大利根温泉ボー リングに近接した反射法深度断面(山口ほか

, 2008

)との対応 を検討した.これらの結果,関東平野の地下地質構造を知る 上で新たな知見が得られたのでここに報告する. 大利根温泉ボーリングの概要 本研究で利用した試料は,埼玉県大利根町(現加須市) (

36

°

8

9.7

N, 139

°

40

5.9

E

)に位置する「童謡のふる里お おとね温泉

100

(とね)の湯」(以下「大利根温泉」と呼ぶ)開 発のボーリング掘削(掘進長

1505 m

)により採取されたカッ ティングス試料である(

Fig. 1

).カッティングス試料は,岩 相と深度が記された約

50 cc

のスチロール瓶に泥水が洗浄

(2)

された状態で保管されていた(

Table 1

).本研究では,この カッティングス試料の観察を行い,その岩相を記載した (

Table 1

). ボーリングの岩相は工事報告書の柱状図に記載されてい る.カッティングス試料は基本的に柱状図に記載されたそれ ぞれの岩相区間に

1

つの割合で採取されているが,採取区 間によっては,柱状図の複数の岩相区間から構成されている にもかかわらず,カッティングス試料が一つしか採取されて いない深度も多い(

Table 1

).また,カッティングス試料は 必ずしも一定の間隔で採取されているわけではなく,試料に 記載された採取深度は,数

m

から数

10 m

,最大で

200 m

以上の深度幅をもっているが,工事報告書にそれ以上に採取 深度を限定する記載はない.また,実際にカッティングス試 料を観察してみると,カッティングス試料に記されている岩 相と実際のカッティングス試料の岩相は異なることが多かっ たものの,

50 cc

のカッティングス試料が,必ずしも数∼

200 m

以上の深度幅をもつ岩相全体を反映しているとは限 らない. このように,このコアのカッティングス試料は条件が悪 く,カッティングス試料が実際の岩相を十分に反映していな い可能性もあるので,本研究では,工事報告書に記載された 岩相区分(

Fig. 2,

柱状図

A

)と,カッティングス試料の観察 に基づいた岩相区分(

Fig. 2,

柱状図

B

)を併記し,実際の岩 相は両者を併用して総合的に判断することとした.なお,著 者らが試料を観察した時点で,掘削後時間が経っているた め,試料は完全に乾燥してすべて固結していた.本来,未固 結(シルト)・固結堆積物(シルト岩)を区別して記載すべきで あるが,その判断が難しかったため,カッティングス試料に ついてはすべて未固結堆積物と同じ岩相(シルト・砂

,

等)を 用いて記載した. 以上の試料から判断した岩相特徴に基づいて,この研究で は,本ボーリングコアを

6

つの岩相ユニット(下位より

A

F

)に区分した.なお,各ユニットの堆積環境については, 微化石分析の結果を加味して,改めて考察する. 岩相ユニット

F

(深度

0–773 m

):シルト,砂,砂礫の繰 り返しからなる.深度

0–4 m

は表土である.深度

239 m

よ りも上位では貝化石を含む場合がある.深度

324–327 m

に は軽石質のテフラが挟在する.ユニット

E

との境界は,深 度

765–773 m

にある顕著な礫層の下底に暫定的に置いた. この礫層には中新統の凝灰岩起源と推定される礫が含まれて いる. 岩相ユニット

E

(深度

773–964 m

):主にシルト,粘土か らなり砂,砂礫も含む.全体的に木炭(亜炭)を多く含むこと で,ユニット

F

とは区別できる. 岩相ユニット

D

(深度

964–1152 m

):下部は砂質シルト, 上部は貝殻片が混じる細粒砂で特徴づけられる. 岩相ユニット

C

(深度

1152–1327 m

):泥・シルトを主体 と す る 泥 質 堆 積 物 か ら な る ユ ニ ッ ト で, 深 度

1152

1187 m

に火山灰質粗粒砂を挟在する. 岩相ユニット

B

(深度

1327–1434 m

):上位および下位の 泥質堆積物(ユニット

C, A

)の間にあって,礫と細粒砂を主 体とするやや粗粒の堆積物を特徴とする.ただし,

2

層準に 薄いシルトを挟んでいる. 岩相ユニット

A

(深度

1430–1505 m

):コア最下部のシル

Fig. 1. Geological map of the central Kanto Plain (after Sugiyama et al., 1997) and the location of the Otone well and other borehole sites referred to in this study: TB = Tate-bayashi well, GD = Gyoda core, SB = GS-SB-1 core, WM = Washimiya core, KJ = Kawajima core, KK = Kasukabe core, FS = Fukasaku A-1 core, IT = Iwatsuki well, KS = GS-KS-1 core, KGH = Kosh-igaya Higashi core, A.F. = Ayasegawa Fault.

(3)

トないし砂質シルトからなるユニットである. 分 析 方 法

1

.テフラ 深度

324–327 m

に挟在する軽石質テフラについては,火 山ガラス・鉱物組成観察,ガラスの屈折率測定と主成分化学 組成分析を行った.新鮮な軽石を乳鉢で粉砕後,超音波洗浄 と篩い分けを繰り返して粘土分を除去し,

60

°

C

以下で乾燥 した後,

0.063–0.25 mm

の粒度の試料を分析用試料とした. 火山ガラスは,形状を吉川(

1976

)に従って区分した.鉱物 組成は偏光顕微鏡下で定性的な量比を把握した.屈折率の測 定には,浸液の温度を直接測定して屈折率を求める温度変化

Table 1. Lithofacies documented in original drill logs and assigned to drill cuttings for the Otone well, and the depths at which each observation was taken; N = samples for nannofossil identification, D = samples for diatom identification, T = samples for tephra analysis, * = based on drilling reports, ** = observed during this study

(4)

Fig. 2. Stratigraphic section for the Otone well, showing the distribution of selected calcareous nannofossils and diatoms within this borehole; A = lithology documented in the original drilling logs, B = lithology based on observation of drill cut-tings. The calcareous nannofossil zonation is based on Okada and Burkry (1980), and the diatom zonation is based on Yanagisawa and Akiba (1998).

(5)

型測定装置

MAIOT

(古澤

, 1995

)を使用した.火山ガラス の主成分化学成分析には,エネルギー分散型

X

線分析装置

EDX

EMAX ENERGY EX-250

HORIBA

製 )と 走 査

型電子顕微鏡

S3000H

HITACHI

製)を用いた.エポキシ 樹脂に封入した試料をダイヤモンドペーストで鏡面研磨した 薄片を炭素蒸着し分析試料とした.分析条件は,加速電圧を

15 kv

,試料電流を

0.3 nA

,ビーム径約

150 nm

4

μ

m

四方を走査させ,ライブタイムを

150

秒として,

ZAF

法に て主成分組成の補正計算を行った.

2

.石灰質ナンノ化石 石灰質ナンノ化石分析用スライドの作成については高山 (

1978

)に従った.分析試料としたカッティングス試料には 様々な大きさの試料が含まれていたため,肉眼で岩相の判別 ができる程度の大きさを有する試料を選んだ.なお,落ち込 みの可能性のある,とくに大きめの破片は分析試料から取り 除いた.カッティングス試料はよく洗浄されていて表面に泥 水由来の泥は全く付着していなかったため,あらためて洗浄 は行わず,乾燥した試料を乳鉢にて粉状に砕いた後,約

1 g

100 cc

ビーカーに入れ,水道水を加え懸濁液を作成する. 約

30

秒間放置して粗粒物が沈むのを待ち,上澄みの懸濁液 から約

0.5 cc

を取り,

18 mm 18 mm

のカバーグラスに 滴下する.低温にて水分を蒸発させた後,光硬化樹脂にて封 入し,スライドを作成する.偏光顕微鏡下,倍率

1600

倍の 条件で,単ニコルと直交ニコルの双方でスライドを観察し,

1

試料あたり

200

個体を目安に石灰質ナンノ化石の検出と 算定を行なった.充分な含有量を持つ試料については,その 後さらに数

1000

個体の観察を行って,その際に認められた 稀産種を

present

+

印)として記録した.含有量の少ない試 料に関しては,スライド全域を検鏡し,スライド

1

枚当た りの個体数を記録した.石灰質ナンノ化石帯区分は

Okada

and Bukry

1980

),化石帯の年代は

Gradstein et al.

2004

を用いるが,第四紀については

Sato et al.

2009

)の基準面 とその年代も使用する.産出頻度および保存状態に関する略 語は以下の内容で用いた.すなわち,試料あたりの産出頻度 については,スライドの単位面積当たりに検出された個体数

に応じて

R

rare

),

F

few

),

C

common

),

A

abundant

),

VA

very abundant

)の

5

段階で評価した.化石の保存状態

については,破損状態,溶解度,再結晶度の程度に基づき

VP

very poor

),

P

poor

),

M

moderate

),

G

good

),

VG

very good

)の

5

段階で評価した.なお,一般にカッ ティングス試料は落ち込みを伴う可能性があり,微化石群集 組成や生層序イベントの把握に影響を与える場合がある.そ こで,本研究における生層準の解釈は,終産出層準を中心に 行った.

3

.珪藻化石

964–1505 m

の珪藻化石試料の処理は

Akiba

1986

)の

unprocessed strewn slide

の方法で行った.分析試料とし

たカッティングス試料には様々な大きさの試料が含まれてい たため,肉眼で岩相の判別ができる程度の大きさを有する試 料を選んだ.なお,落ち込みの可能性のある,とくに大きめ の破片は分析試料から取り除いた.珪藻の分析・計数方法は 柳沢(

1999

)に従い,以下の手順で行った.珪藻殻の計数は, 生物顕微鏡

600

倍の倍率下で,

Chaetoceros

属の休眠胞子 を除いて,観察されたすべての種の蓋殻が

100

になるまで 行った.その後,さらにカバーグラス全面を走査して,その 過程で新たに認められた種,および破片としてのみ認められ た種は

present

+

)として記録した.休眠胞子については, 上記蓋殻計数時に認められた総数を別途記録した.珪藻化石

帯区分は

Akiba

1986

)と

Yanagisawa and Akiba

1998

の新第三紀北太平洋珪藻化石帯区分を適用し,化石帯は

NPD

コード,生層準は

D

コード(

D10–D120

)を用いた. 珪藻年代は

Watanabe and Yanagisawa

2005

)を用いて修

正し,

Gradstein et al.

2004

)の地磁気極性年代尺度に合わ せて調整した.

0–194 m

の珪藻化石試料の処理は納谷ほか(

2009

)の手法

B

(スメアスライド)で行った.珪藻殻の計数は,生物顕微鏡

1000

倍の倍率下で観察されたすべての種の蓋殻が

100

にな るまで行った.産出が極めて少なかった試料については,

50

あるいは

5

殻で計数を打ち切った.種の同定と生態は

Krammer and Lange-Bertalot

1988, 1991

),

Vos and

De Wolf

1993

), 渡 辺 ほ か(

2005

),

Witkowski et al.

2000

)等を参考にした. テフラ分析結果 深度

324–327 m

の試料には,粗粒砂∼

5 mm

径の白色軽 石が大量に含まれる.新鮮な軽石を破砕した粒子の砂粒組成 は,多孔質(

T

型)ガラスを主体とする(

Table 2

).重鉱物と しては,カミングトン閃石を多く含み,普通角閃石,黒雲母 を含み,ごくわずかに単斜輝石を含む.軽鉱物としては,石 英,長石を含み,菫青石を少量含むのが特徴的である.火山 ガラスの屈折率(

n

)は

1.497–1.498

であった.火山ガラス の主成分化学組成は,

TiO2

0.07%

CaO

0.26%

と非 常に低いという特徴を持つ(

Table 3

). 関東平野中央部で菫青石とカミングトン閃石を含むテフラ としては,新潟地域の下部更新統に挟在する上越火山灰(あ

るいは

SK030

)(黒川ほか

, 1981, Kurokawa and Hirata,

1986

)が多数のコアで確認されている(小林・関東火山灰グ ループ

, 2003;

水野・納谷

, 2011

).模式地の新潟県長岡市 芝ノ又川の

SK030

テフラの火山ガラス屈折率(

n

)は

1.495–

1.498

であり,大利根温泉ボーリング深度

324–327 m

の火 山ガラスのそれとほぼ一致する(

Table 2

).また,同試料を

EDX

で分析した

SK030

テフラの火山ガラスの主成分化学 組成も,水野・納谷(

2011

)において

ICP

発光分析によって 得られた分析値も,大利根温泉ボーリング深度

324–327 m

の火山ガラスの主成分化学組成とは,

TiO2

CaO

が非常 に低いという特徴が極めて良く類似する(

Table 3

).関東平 野周辺の第四系において,菫青石を含むテフラは上越火山灰 以外にほとんど知られておらず,火山ガラスの屈折率と主成 分化学組成が共に一致するため,大利根温泉ボーリング深度

324–327 m

に含まれるテフラは,上越火山灰に対比できる. なお,大利根温泉ボーリングの近傍のコアである,鷲宮コア (

WM

)と春日部コア(

KK

)で得られている上越火山灰の層厚

(6)

はおよそ

3 m

であり(水野・納谷,

2011

),大利根温泉ボー リングで上越火山灰を含む岩相の深度範囲と良く一致する.

SK030

テフラは,新潟小木ノ城地域相田ルートにおいて 石灰質ナンノ化石基準面

7

の約

10 m

上位に位置し(佐藤ほ か

, 1987;

佐藤ほか

, 1999

),基準面

7

1.128 Ma

)と基準面

8

1.182 Ma

)を基にして外挿すると,その年代は約

1.12 Ma

と算定される. 石灰質ナンノ化石層序と年代

29

試料のうち

11

試料から石灰質ナンノ化石が検出され た(

Table 4

).深度

879–964 m

以浅の層準からは唯一深度

97–135 m

の試料から石灰質ナンノ化石が産出したが,深度

964–1047 m

以深の層準では連続的に産出する.産出頻度 はばらつきがあるが,深度

1417–1434 m

以深で高くなる 傾向がある.保存状態は普通から良好である.

1

.深度

97–135 m

この試料は

Gephyrocapsa caribbeanica, G. oceanica

などの

Gephyrocapsa

属を主体とし,本属が群集の

75%

以上を占める.本試料の群集は,その出現が

CN14

帯の下 限を規定する

G. parallela

を含み,その出現が

CN14

帯の 上限を定義する

Emiliania huxleyi

を欠くことから,

CN14

帯と認定される.さらに本群集では,その消滅層準が

CN14a/b

亜帯境界を規定する

Pseudoemiliania lacunosa

がまったく検出されないことから,この試料は

CN14b

亜帯 に認定される可能性が高い.なお,本種は関東平野地下の上 総層群から連続的に産出することが明らかにされており(柳 沢ほか

, 2006;

千代延ほか

, 2007

),その消滅層準は信頼性 が高いと推定される.

Sato et al.

2009

)によると,

CN14b

亜帯の年代は

265 ka

451 ka

である.

2

深度

964–1047 m

1047–1152 m

1187–1327 m

1341–1350 m

1350–1359 m

および

1390–1405 m

これら

6

試料の石灰質ナンノ化石群集の特徴は,

Reticu-lofenestra

属を優占種とすることにある.とくにコッコリ ス の 長 径 が

7

μ

m

を 超 え る 大 型 の

R. gelida

R.

pseu-doumbilicus

の産出頻度が高く,これに

Coccolithus

pe-lagicus

を伴う.

最下位の

2

試料(深度

1350–1359 m

および

1390–1405

m

)は,

Sphenolithus heteromorphus

を欠き

Cyclicargoli-thus floridanus

が認められことから,

CN5a

亜帯に認定さ れる. その上位の

3

試料(深度

1187–1327 m, 1327–1341 m

お よび

1341–1350 m

)は,

C. floridanus

を含まず,

Coccoli-thus miopelagicus

が検出される.北大西洋における

C.

miopelagicus

の消滅層準は,

Martini

1971

)の

NN7

帯∼

NN8

帯 間(

CN5b

CN6

帯 )に 位 置 す る(

Takayama and

Sato, 1987

).また,東北日本海地域において

C.

miope-lagicus

の消滅層準は

CN5

帯∼

CN8

帯の範囲内に存在する と考えられている(平松ほか

, 1997

).さらに,

Young

1998

) によると,本種の消滅は

NN7

帯上限(

CN5

帯と

CN6

帯の 境界)に位置づけられている.関東地域における

C.

miope-lagicus

の産出範囲については明確にされてはいないが,以 上の結果を参照すると,本種の産出上限はほぼ

CN5

帯と

CN6

帯の境界(

11.02 Ma

)に限定される.よって,本種を産 出する上記

3

試料は

CN5b

亜帯に認定されると考えられる. 深度

964–1047 m

および

1047–1152 m

からは

C.

mio-pelagicus

がまったく検出されないので,

CN6

帯を含め, それより上位の化石帯に認定されると考えられる.ただし, そ の 消 滅 が

CN11

帯 上 限 を 規 定 す る

Reticulofenestra

pseudoumbilicus

を含むので,

CN6

帯∼

CN11

帯の範囲内 にあるものとみられるが,両試料からは上部中新統から下部 鮮新統の石灰質ナンノ化石帯認定に重要な

Discoaster

属,

Table 2. Petrographic characteristics of the Otone 324–327 and SK030 or Joetsu tephras; the shape of glass shards is based on the morphologic classification of Yoshikawa (1976).

Table 3. EDX-determined normalized chemical composition of volcanic glass shards within the Otone 324–327 and SK030 tephras.

(7)

Ceratolithus

属および

Amaurolithus

属などの指標種がまっ たく検出されないので,これ以上の限定は難しい.ただし, 両試料からは

Sphenolithus moriformis

が検出されるので, 上部中新統上部の

CN9

帯より下位に相当する可能性が高い (

Young, 1998

).

3

深 度

1417–1434 m

1434–1499 m

お よ び

1499–

1505 m

上位の

Reticulofenestra

属を主体とする群集とは異なり

C. pelagicus

Dictyococcites

属が優占する.

C. fl orida-

fl orida-

florida-nus

が群集内容の約

1%

の頻度で認められ,

S.

heteromor-phus

が検出されるので,これらの試料は

CN3

帯∼

CN4

帯 に相当する.ただし,その消滅層準が

CN3

帯と

CN4

帯の 境界を規定する

Helicosphaera ampliaperta

H.

scissu-ra

が検出されないので,これらの試料は

CN4

帯に相当す る可能性が高い. 珪藻化石層序と年代

26

試料のうち

7

試料から珪藻化石が検出された(

Table

5

).深度

4–718 m

964–1047 m

の群集は大きく異なり, 前者は淡水生珪藻と海生・汽水生珪藻を主体とし,後者は海 生珪藻のみで中新世の指標種を含む.

1

深度

4–28 m

32–41 m

41–70 m

70–97 m

258–

324 m

および

498–718 m

深度

4–718 m

の試料から産出した珪藻化石の保存は中程 度であるが,深度

41–70 m

および

498–718 m

の試料は保 存が悪い.深度

4–28 m

の試料は淡水生珪藻のみが産出す るが,他の試料では割合の違いはあるものの淡水生珪藻と海 生珪藻が両方産出する(

Fig. 2, Table 5

).淡水生種では,

Aulacoseira ambigua

A. pusilla

Stephanodiscus spp.

などの浮遊性種と,

Achnanthedium spp.

Gomphonema

spp.

Pinnularia spp.

などの底生種,

Diadesmis

conten-ta

Hantzschia amphioxys

Luticola mutica

などの陸生 珪藻が産出する.海生・汽水生種では,

Actinocyclus

nor-manii f. subsalsa

Cyclotella baltica

Paralia sulcata

などの浮遊性種,

Diploneis smithii

Pseudopodosira

ko-sugii

Tryblionella granulata

などの底生種が産出する. この区間において化石帯指標種は産出しない.

2

.深度

964–1047 m

産出した珪藻化石の保存は中程度で,

Thalassionema

nitzschioides

が多産する.化石帯指標種として

NPD5C

(8)

Ta bl e 5. D ia to m s f ro m th e O to ne w el l.

(9)

Ta bl e 5. C on tin ue d

(10)

11.4–10.0 Ma

)に産出が限定される

Denticulopsis

hus-tedtii

が産出した.この種の初産出層準(

D55.2

)は

NPD5C

帯の下部にあってその年代は

11.2 Ma

と算定される.した がって,深度

964–1047 m

の試料の年代は

11.2–10.0 Ma

と推定される. 大利根温泉ボーリングの岩相層序と年代層序 石灰質ナンノ化石年代とテフラ年代に基づき,大利根温泉 ボーリングにおける堆積速度曲線を作成した(

Fig. 3

).使用 した年代基準点(帯)は,

Sphenolithus heteromorphus

の終 産 出(

13.53 Ma

),

Cyclicargolithus floridanus

の 終 産 出 (

13.33 Ma

),

Coccolithus miopelagicus

の 終 産 出(

11.02

Ma

), 上 越 火 山 灰(

ca. 1.2 Ma

),

CN14b

亜 帯(

451–265

ka

),ボーリングの最上部(現在)である.これら基準点から 外れる深度については,石灰質ナンノ化石帯および珪藻化石 帯が示す年代幅と矛盾しない範囲で堆積速度曲線を外挿し た.以上の結果に基づいて,大利根温泉コアの層序,堆積環 境および年代を総括する. 岩相ユニット

A

(深度

1430–1505 m

):海生の石灰質ナン ノ化石を含む海成泥質堆積物である.石灰質ナンノ化石の

CN4

帯(

13.53–14.9 Ma

)に属する可能性が高い. 岩相ユニット

B

(深度

1327–1434 m

):礫と細粒砂を主体 としシルトを挟む粗粒の堆積物で,下位の海成泥質堆積物の ユニット

A

との岩相の違いは顕著である.シルト層,礫層 および細粒砂層のいずれも海生の石灰質ナンノ化石を含み海 成である.本ユニットからは

CN4

帯,

CN5a

亜帯および

CN5b

亜帯の石灰質ナンノ化石が産出する.

CN4/CN5a

帯 境界を規定する

S. heteromorphus

の終産出(

13.53 Ma

)は, 最下部の砂礫層(深度

1417–1434 m

)中に,

CN5a/CN5b

亜帯境界(

11.86 Ma

)は最上部の細粒砂層(深度

1350–1359

m

)中に存在する.堆積速度曲線(

Fig. 3

)からこのユニット の堆積年代は約

14.5–11.8 Ma

と推定できる.層厚がわず か

107 m

と薄いにもかかわらず,堆積時間が約

270

万年も かかっており,極めて堆積速度が遅いことが特徴である. 岩相ユニット

C

(深度

1152–1327 m

):石灰質ナンノ化石 を産出する海成泥質堆積物である.

CN5b

亜帯に属する石 灰質ナンノ化石が検出されたので,ユニット

C

11.86

Ma

から

11.02 Ma

の間に堆積したと推定される. 岩相ユニット

D

(深度

964–1152 m

):下部が砂質シルト, 上部は貝殻片が混じる細粒砂からなる,石灰質ナンノ化石や 外洋性の珪藻化石を含む海成層である.上位へと岩質が粗粒 化しており,上位に向かって次第に浅海化したと推定でき る.このユニットは,石灰質ナンノ化石帯では

CN6–11

帯 に,珪藻化石帯では

NPD5C

帯に対比され,両化石帯の年 代の重なりから,その年代は

11.02–10.0 Ma

に限定される. 岩相ユニット

E

(深度

773–964 m

):シルト,粘土からな り砂,砂礫も含む.全体的に木炭(亜炭)を多く含むことで特 徴づけられる.堆積環境を示す微化石は得られていないが, 全体的に木炭(亜炭)を多く含むことから,本ユニットは陸成 層である可能性が高い. 岩相ユニット

F

(深度

0–773 m

):このユニットは,礫層 とシルト層の互層を主体とする.淡水生珪藻化石と海生珪藻 化石両方を産し,海生の貝化石や石灰質ナンノ化石を産する 層準があることから,ユニット

F

は淡水成層と海成層が繰 り返す地層と考えられる.さらに,海生珪藻化石は,外洋性 の種を含まず,汽水域や浅海域を示す種を主体とすることか ら,ほとんどの海成層は内湾,干潟,エスチュアリーなど浅 海域で形成されたと推定される.ただし,外洋性の石灰質ナ ンノ化石を産する層準では,一時的に外洋水が入り込んでい たと思われる. 深度

334–337 m

に挟在するテフラは,約

1.12 Ma

に噴 出した上越火山灰に対比される.また,深度

97–135 m

か ら産出する石灰質ナンノ化石帯は

CN14b

亜帯(

265–451

ka

)に属する.以上から少なくとも上越火山灰挟在層準(深 度

324–327 m

)より上位は

1.12 Ma

より新しい第四紀前期 更新世から完新世の堆積物であることがわかる.なお,ユ ニット

F

の基底の礫層には中新統の凝灰岩起源と推定され る礫が含まれているので,この礫層の堆積時には,下位の中 新統が地表に露出していた可能性が高い. 地表新第三系および地下鮮新・更新統の年代層序 次に,本研究で明らかになった年代と堆積環境を基にし て,大利根温泉ボーリングの層序を,近接した比企丘陵およ び岩殿丘陵の中新統や,関東平野中央部に広く分布が認めら れる鮮新・更新統の上総・下総層群と対比し,地表と地下の 新第三系∼第四系の構造を議論する.その前提として,まず これらの地域の層序と年代を簡単に総括しておく. すでに述べたように関東地方の地表および地下の新第三系 ∼第四系の層序は,三層構造モデルで良く説明できることが 明らかにされている(高橋

, 2008

など).すなわち,最下部 に先新第三系の基盤岩と庭谷不整合に挟まれた海底扇状地堆 積物やハーフグラーベン堆積物からなり,浮遊性有孔虫化石 帯(

Blow, 1969

)の

N.8

帯に対比される“

N.8

層”が,その上 位に庭谷不整合と黒滝不整合に挟まれた中期中新世弧内堆積 盆埋積物と後期中新世デルタ堆積物からなる“

post N.8

層” が,そして最上部に黒滝不整合より上位の上総層群および下 総層群相当層が分布するモデルである(高橋ほか

, 2006

).

1

.比企丘陵および岩殿丘陵の新第三系の年代層序 大利根温泉ボーリングの西方に位置する比企丘陵および岩 殿丘陵(

Fig. 1

)の新第三系については古くから詳細な研究が 行われてきた(渡部ほか

, 1950;

松丸・林

, 1980;

小池ほか

,

1985;

間嶋

, 1989;

比企団体研究グループ

, 1991, 2004;

高 橋・柳沢

, 2004

など).この論文では,高橋・柳沢(

2004

) および高橋(

2008

)の層序(

Fig. 4

)に準拠して対比を行う. 比企丘陵および岩殿丘陵の中新統は,庭谷不整合に対応す る

15 Ma

の不整合により,下部の比企層群と上部の都幾川 層群に大別される(高橋

, 2008

).このうち,比企丘陵の中新 統は,下位より比企層群の小園層,荒川層および市ノ川層か らなり,断層を挟んで都幾川層群の土塩層と楊井層が分布す る.一方,岩殿丘陵の中新統は,下位より比企層群の荒川層 および市ノ川層と,都幾川層群の神戸層,根岸層,将軍沢 層,鳩山層および今宿層に区分される.これらの中新統を不

(11)

Fig. 3. Age vs. depth plots for the Otone well based on microfossil geochronology and tephrochronology; diatom zones of Akiba (1986) and Yanagisawa and Akiba (1998), calcareous nannofossil zones of Okada and Bukry (1980), and Late Plio-cene–Pleistocene nannofossil biohorizons of Sato et al. (2009) are correlated with the geomagnetic polarity timescale of Gradstein et al. (2004).

(12)

Fig. 4. Chronostratigraphic correlation of Neogene and Quaternary sequences intersected within the Otone well and in the Hiki Hills, Iwadono Hills and Boso Peninsula areas of the Kanto Plain; diatom zones of Akiba (1986) and Yanagisawa and Akiba (1998), calcareous nannofossil zones of Okada and Bukry (1980), late Pliocene–Pleistocene nannofossil biohorizons of Sato et al. (2009), and the planktonic foraminiferal zones of Blow (1969) are correlated with the geomagnetic polarity timescale of Gradstein et al. (2004).

(13)

整合に覆って上部鮮新統の物見山層が両丘陵に分布する. 小園層は粗粒砂岩および砂岩・シルト岩互層からなり,門 ノ沢型の軟体動物化石が産出することから(

Majima and

Takahashi, 1987,

橋屋

, 2004

),その年代は

16

15 Ma

と 推定される(高橋

, 2008

). 荒川層は小園層を整合に覆う砂岩・シルト岩互層(タービ ダイト)を主体とする海成層で,挟在する凝灰岩から

15.0

0.7 Ma

(高橋・柳沢

, 2004

)や

16.7 1.1 Ma

(大平

, 2004

) のフィッショントラック年代が得られている.荒川層から は,

NPD4A

帯下部(

15.8

15.6 Ma

)の珪藻化石(須藤ほか

,

2002a, b

)や,

CN3–4

帯の石灰質ナンノ化石(堀内

, 2004

) が産出する. 市ノ川層はシルト岩・砂岩互層からなり,三波川結晶片岩 の角礫からなる不淘汰角礫岩(青岩礫岩)を挟在する.本層の 下限は珪藻生層準の

D42

15.5 Ma

)付近,上限は珪藻生層 準

D43

D43.2

の間(

15.4

15.2 Ma

)である(高橋・柳沢

,

2004

).市ノ川層分布域からは

CN3–4

帯の石灰質ナンノ化 石が報告されている(堀内

, 2004

). 神戸層は市ノ川層を不整合に覆う.礫岩を主体とし,斜交 層理の発達した極粗粒砂岩と亜円礫岩からなる.本層から は,浮遊性有孔虫化石帯区分(

Blow, 1969

)の

N.8

帯を示す 有孔虫化石が産出する(

Hayashi et al. 2003

). 根岸層は斜交層理の発達したコキナ質砂岩と細粒砂岩を主 体とする.最下部の年代は浮遊性有孔虫化石から

15.1–

14.8 Ma

と推定された(

Hayashi et al., 2003

).また,中部 には石灰質ナンノ化石

S. heteromorphus

の終産出(

13.53

Ma

)が確認され,

NPD5B

帯の珪藻生層準

D51–D52

の間 (

12.7–12.4 Ma

)の年代が推定される(栗原ほか

, 2003

).本 層は層厚の割に堆積速度が遅いのが特徴で,とくに本層と下 位の神戸層の間に極めて堆積速度の遅い層準があると推定さ れている(高橋

, 2008

). 将軍沢層は塊状の珪藻質シルト岩からなり珪長質凝灰岩を 数層挟む.凝灰岩からは

12.0 0.2 Ma

10.9 0.2 Ma

K–Ar

年代が報告されている(

Takahashi et al., 2004

). 本層下部からは

CN5a

帯の石灰質ナンノ化石(栗原ほか

,

2003

)が,将軍沢層全体を通して

NPD5B

帯の珪藻が産出 する(堀内・柳沢

, 1994

). 鳩山層は砂岩・シルト岩互層からなり,上方に向かって砂 岩の割合が増加し,上位は塊状中粒∼粗粒砂岩からなる今宿 層に移行する.鳩山層下部からは

NPD5B

帯,鳩山層中上 部と今宿層からは

NPD5C

帯を示す珪藻化石が産出する(堀 内・柳沢

, 1994

). 土塩層は珪藻質シルト岩を主体とし細粒砂岩を頻繁に挟 む.本層の年代は,

NPD5C

帯最上部の生層準

D55.8

D56

10.2–10.0 Ma

)の 間 と 推 定 さ れ て い る( 須 藤 ほか

,

2003

). 楊井層は土塩層を覆う海退期の粗粒堆積物で,下部は砂 岩・シルト岩の細かい互層からなり,上方に向かって粗粒砂 岩∼細礫岩を頻繁に挟む層相に変化する.楊井層からは大量 の植物化石が産出する.土塩層と楊井層の関係は荒川の河床 で連続的に観察でき,その岩相変化は漸移的であり,両層は 整合であると考えられる.楊井層に挟在する複数の凝灰岩か らは,

9.1 0.7 Ma

9.6 1.3 Ma

Kobayashi et al., 2011

),

10.5 0.3 Ma

(大平

, 2004

)のフィッショントラック年代が 報告されている.これらの年代値と下位の土塩層の珪藻年代 との差は小さく,土塩層と楊井層が整合であるという層序関 係と矛盾しない. 物見山層は,比企層群および都幾川層群を傾斜不整合に覆 う礫層を主体とする鮮新

更新統である(渡部ほか

, 1950,

小 池ほか

, 1985

).関東平野西縁部では,周辺の草花丘陵,加 治丘陵,加住丘陵などにおいても,中新統およびそれ以前の 地層を不整合で覆う礫質堆積物が分布し,飯能礫層と総称さ れる場合もある(竹越ほか

, 1979

).物見山層の年代は不明だ が,加治丘陵,草花丘陵,加住丘陵に分布する礫質堆積物を 含む地層の年代は,主に鮮新世後期の

3 Ma

付近から更新世 前期の

2.2 Ma

までの幅を持ち,加住丘陵の山田層について は,

3.7 Ma

までさかのぼる可能性が示されている(植木・ 酒井

, 2007

).

2

.地下鮮新・更新統の年代層序 関東平野中央部地下の深度

600 m

程度までの層序は, ボーリングコアの解析によって研究されており,多くの場合 その上部が房総半島に分布する中

上部更新統下総層群に, 下部が下

中部更新統上総層群に対比されてきた(関東平野 中央部地質研究会

, 1994;

平社

, 2008a, b

).近年,この地域 に分布する下総層群∼下総層群と上総層群の境界付近の層準 については,広域テフラの対比と堆積サイクルに基づく層序 対比が検討され,その詳細が明らかになりつつある(中澤・ 中里

, 2005;

中澤ほか

, 2009

).それらによると,関東平野 中央部では房総半島で観察されるような,下総層群と上総層 群の層相上の違いが無く,上総層群・下総層群相当層を通し て浅海相と陸成相の繰り返しからなることが指摘されている (中澤ほか

, 2009

).なお,上総層群と下総層群の境界の定義 は,東京湾不整合をその境界とする考え(楡井ほか

, 1975

)と 笠森層と地蔵堂層の境界とする考え(徳橋・遠藤

, 1984

)があ るが,本研究では徳橋・遠藤(

1984

)の定義に従う. 関東平野中央部における上総

下総層群の境界の深度は, 越谷(

GS-KS-1

コア)において深度

135 m

付近に推定され た(中澤ほか

, 2009

).上総

下総層群の境界は,海洋酸素同 位体ステージ(

MIS

12

に相当する低海面期の不整合と考え られており(町田ほか

, 1980;

中里・佐藤

, 2001

)その年代は, およそ

0.4 Ma

である. 関東平野中央部において上総層群相当層の層序は未だ確立 していないが,古地磁気層序と広域テフラの対比によって, ある程度の年代観が得られている.

Brunhes–Matuyama

chron

境界は,川島コア(

KJ

),深作コア(

FS

),

GS-SB-1

コア(

SB

),春日部コア(

KK

),鷲宮コア(

WM

),越谷東コ ア(

KGH

),行田コア(

GD

)(

Fig. 1

)において確認されてお り,その深度は約

150 m

280 m

である(会田ほか

, 1994;

埼玉県

, 1996;

植木ほか

, 2009;

植木ほか

, 2012

).上越火山 灰(

SK030

)をはじめとする前期更新世を示す広域テフラが 多数挟在し,川島コアと春日部コアからは鮮新世のテフラも 報告されている(水野・納谷

, 2011

).さらに,

Matuyama–

(14)

Gauss chron

境界が,川島コアで深度約

320 m

に,春日部 コアで深度約

535 m

に確認されており(植木ほか

, 2012

)両 コアの最下部は鮮新統に対比される. 地表地質層序および既存地下層序との対比

1

.比企層群および都幾川層群との層序対比 大利根温泉ボーリング最下部のシルトを主体とする岩相ユ ニット

A

は,石灰質ナンノ化石帯の

CN4

帯に属する可能 性が高い.比企丘陵および岩殿丘陵において

CN4

帯ないし

CN3–4

帯に年代的に対比されるのは,荒川層,市ノ川層, 神戸層および根岸層下部である(

Fig. 4

).これらの中で,岩 相ユニット

A

と岩相の特徴が一致するのは,シルト岩を主 体とする荒川層および市ノ川層であり,実際両層から

CN3–4

帯の化石が産出する(堀内

, 2004

).以上,年代と岩 相の一致から岩相ユニット

A

は市ノ川層と荒川層に対比さ れる可能性が高い. 大利根温泉ボーリングにおいて,

CN4

帯上限を規定する

Sphenolithus heteromorphus

の終産出は,岩相ユニット

B

の砂礫層(深度

1417–1434 m

)中に認められる.この砂礫層 より上位では岩相が粗粒化し(

Fig. 2

),石灰質ナンノ化石帯 の

CN5a

亜帯に属する.岩殿丘陵において,

S.

heteromor-phus

の終産出は,主に砂岩からなる根岸層中に認められ(栗 原ほか

, 2003

),神戸層と根岸層下部は堆積速度が遅くなる という特徴があるが(

Hayashi et al. 2003,

高橋

, 2008

),大 利根温泉ボーリング岩相ユニット

B

でも堆積速度が遅くな る特徴が認められる(

Fig. 3

).このように

S.

heteromor-phus

終産出層準付近の岩相と堆積速度の特徴は,大利根温 泉ボーリングと岩殿丘陵において類似することから,大利根 温泉ボーリングにおける

S. heteromorphus

の終産出を含む 砂礫層(

1417–1434 m

)は,根岸層あるいは神戸層に対比さ れる可能性が高いと考えられる. 神戸層の基底部には庭谷不整合に対比される不整合が位置 す る( 高 橋・ 柳沢

, 2004

). こ の 不 整 合 の 年 代 は

15.1–

15.4 Ma

という極めて狭い年代範囲に限られ(栗原ほか

,

2003

),石灰質ナンノ化石帯でいえば

CN4

帯に含まれる. 大利根ボーリングにおいて神戸層基底に相当する礫層は,

CN4

帯に含まれる岩相ユニット

B

の基底の礫層以外に無く,

B

ユニット基底が神戸層基底の不整合,つまり庭谷不整合 に対比されると推定される. 既に述べたように,大利根温泉ボーリング岩相ユニット

B

は,最下部の

CN4

帯をのぞくと

CN5a

帯に属する.岩 殿丘陵において,

CN5a

亜帯は根岸層上部と将軍沢層の下 部に認められる(栗原ほか

, 2003

).将軍沢層はシルト岩を主 体とするのに対し,岩相ユニット

B

は礫層を含むため,必 ずしも岩相は一致しないが,石灰質ナンノ化石年代の一致か ら,岩相ユニット

B

の中上部は,根岸層上部と将軍沢層下 部に対比される. 岩相ユニット

C

CN5b

亜帯に属する.岩殿丘陵におい て,

CN5b

亜帯に対比される地層は,

NPD5B

帯に対比さ れる将軍沢層中上部,鳩山層下部,

NPD5C

帯に属する鳩 山層中上部,今宿層である(

Fig. 4

). 岩相ユニット

D

は,石灰質ナンノ化石帯では

CN6–11

帯 に,珪藻化石帯では

NPD5C

帯に対比され,両化石帯が重 なる年代から推測すると,その年代は

10.89

10.0 Ma

に 限定される.この年代に対比される地層は,岩殿丘陵には露 出していないが,比企丘陵では

NPD5C

帯に属する土塩層 が分布している(須藤ほか

, 2003

).したがって,岩相ユニッ ト

D

は土塩層に対比できる(

Fig. 4

). 岩相ユニット

E

からは,年代指標が産出しないのでその 年代は不明である.このユニットの層序学的位置づけについ ては,別項で詳しく検討する.

2

.上総・下総層群相当層 ユニット

F

は,上越火山灰を含むことから下部更新統を 確実に含んでいる.また,珪藻化石から推測される堆積環境 も,陸成層と浅海成層の繰り返しを示し,関東平野中央部の 上総・下総層群相当層の特徴と良く一致する.さらに,深度

97–135 m

は,石灰質ナンノ化石帯の

CN14b

亜帯(

265

451 ka

)に属し,その基底が

MIS12

(約

40

万年前)と対比さ れる下総層群におおよそ相当する(中里・佐藤

, 2001

).以上 のような層相と年代の一致から,少なくとも岩相ユニット

F

の深度

4 m

から

327 m

付近までは上総・下総層群に確実に 対比される. 岩相ユニット

F

には上越火山灰を含む深度

324–327 m

以深では層序指標が無いが,周辺のコアでは深度

600m

ま での層序の概要が明らかにされている.たとえば,大利根温 泉ボーリングから

10 km

ほど西側で掘削された行田コア (

GD

:掘削深度

611 m

)では,コアの最下部が

Matuyama

逆磁極帯に属する下部更新統であることが,古地磁気測定と テフラの対比によって明らかにされている(水野・納谷

,

2011;

植木ほか

, 2012

).山口ほか(

2010

)は後ほど議論に用 いる反射法深度断面(

Kazo1, Shobu1

測線 )( 山口ほか

,

2008

)と

GS-SB-1

コア付近で直交し,行田コア付近を通る 反射法深度断面(行田

菖蒲断面)を示した.これら断面を参 考にすると,大利根温泉ボーリングと行田コアの深度

600 m

付近は,ほぼ同層準と判断でき,大利根温泉ボーリ ングにおいても深度

600 m

付近までは,

Matuyama

逆磁極 帯に属する下部更新統が分布すると推測される.

CN14b

帯 を含む深度

97–135 m

と深度

324–327 m

の堆積速度をそ のまま外挿した堆積速度曲線は,深度

600 m

付近で約

2.1 Ma

の年代を示し,この推測と矛盾しない(

Fig. 3

). 大利根温泉ボーリングにおいては,詳細な岩相が分からな いので上総層群と下総層群の境界は明確でないが,

CN14b

亜帯に属する深度

135 m

よりも深いと予想される.大利根 温泉に近接する行田コア(

GD

),鷲宮コア(

WM

)および

GS-SB-1

コア(

SB

)では,上総層群と上総層群の境界深度 は,それぞれ深度約

178 m

,深度約

151 m

,約

164 m

と推 定されており(納谷ほか

, 2012

),大利根温泉ボーリングで推 定された深度は,これらと大きく矛盾はしない.

3

.黒滝不整合の検討 大利根温泉ボーリングにおける岩相ユニット

E

および岩 相ユニット

F

の深度

327 m

以深からは年代指標が産出しな いため,その年代は不明であるが,この区間の層序学的位置

(15)

づけとして,大きく二つの可能性が考えられる.すなわち, 岩相ユニット

D

から

F

までが整合で累重する可能性と,従 来の関東平野の地下地質モデル(高橋ほか

, 2006

など)で示 されているように,中新統と上総層群相当層が不整合(黒滝 不整合)で接する可能性である.また,前者では堆積速度が どの層準で変化するのか,後者では,不整合がどの層準に存 在するのか,幾つかの可能性が考えられる.以下では,これ らの可能性について,陸上に露出する地表地質層序と,近接 するボーリングコアの層序を手がかりに詳しく検討する. まず,岩相ユニット

D

から

F

までが整合で累重する可能 性を検討する.岩相ユニット

F

には上越火山灰を含む深度

324–327 m

以深では層序指標が無いが,上記のように深度

600 m

程度までは

Matuyama

逆磁極帯に属する下部更新統 であると考えられる.岩相ユニット

D

から

F

までが整合と した場合,深度

600 m

程度以深で堆積速度が極めて遅い区 間を想定する必要がある.堆積速度が遅くなる区間としてい くつかの可能性が考えられるが(

Fig. 3

C1

C3

)その層準 を特定することはできない.なお,関東平野西縁部の地表地 質層序では,中新統の上位に河川成の鮮新・更新統が整合で 累重する層序関係はこれまで知られておらず,岩相ユニット

D

から

F

までを整合とした場合,岩相ユニット

E

に対比さ れる地層を地表地質層序に見出すことはできない. 次に,岩相ユニット

D

から

F

の間に黒滝不整合に相当す る不整合が存在する可能性を検討する.この不整合があると すれば,上記の理由から深度

600 m

程度以深に位置すると 考えられる.その場合,岩相変化に着目すると,不整合の層 準の候補としては,海成層から陸成層へと変わる岩相ユニッ ト

E

の基底と(

Fig. 3

U1

),礫層が顕著となる岩相ユニッ ト

F

の基底(

Fig. 3

U2

)の

2

つの可能性が考えられる. 比企丘陵においては,岩相ユニット

D

に対比される土塩 層は,上部が粗粒化し,植物化石を多く含みファンデルタ堆 積物とされる楊井層(武井ほか

, 1989

)へと漸移的に変化す る.楊井層に挟在するテフラ層から得られたフィッショント ラック年代が,土塩層よりもわずかに新しいかほぼ同じ年代 を示すことからも,土塩層と楊井層は整合で重なると考えら れる.岩相ユニット

D

も上方が粗粒な岩相からなり,その 上位に位置する岩相ユニット

E

は亜炭を特徴的に含む.こ のように岩相ユニット

D

E

の岩相の特徴とその累重関係 は,土塩層と楊井層のそれらと非常に良く一致することか ら,岩相ユニット

D

は土塩層に,岩相ユニット

E

は楊井層 にそれぞれ対比できる可能性が高い.この対比に基づけば, 岩相ユニット

D

E

は整合に累重すると推測される.した がって,不整合が岩相ユニット

E

の基底に存在する可能性 は低いと判断できる. 比企丘陵および岩殿丘陵に分布する中新統は,鮮新・更新 統の礫層である物見山層に不整合で覆われる.同じく関東平 野の西縁部に位置する加治丘陵や加住丘陵などでは,中新統 を河川成の礫・シルト層が不整合で覆い,その上位には河川 成層と浅海成層が整合で累重する(植木・酒井

, 2007

).岩相 ユニット

E

が比企丘陵の楊井層に対比されるとすると,岩 相ユニット

F

の基底にある比較的厚い礫層は,関東平野西 縁部丘陵に分布する鮮新

更新世の礫層に対比され,不整合 があるとすれば岩相ユニット

F

の基底と考えるのが最も合 理的である.岩相ユニット

F

基底の礫層には中新統の凝灰 岩起源と推定される礫が含まれていて,この礫層の堆積時に 中新統が地表に露出していて侵食を受けていたと推定される ことも,この推測を支持する. 上越火山灰の深度

327 m

以深については対比の根拠とな るデータはないものの,それより上位の年代を直線的に外挿 して求めた岩相ユニット

F

基底(深度

773 m

)の年代は約

2.7

Ma

となる(

Fig. 3

).この年代値は,関東平野西縁部に分布 する鮮新

更新統基底の礫層の年代(

2.2 Ma

から

3.7 Ma

) (植木・酒井

, 2007

)と大きく矛盾はしない. 以上のように,岩相ユニット

D

から

F

の累重関係につい て詳細に検討した.その結果,すべてのユニットが整合で累 重する可能性を完全に否定することはできないものの,地表 地質層序との対応を考慮すると,岩相ユニット

F

の基底が 上総層群基底に相当し,岩相ユニット

E

と不整合で接する 可能性が最も高いと判断した. 関東平野地下の上総層群基底の不整合は房総半島の黒滝不 整合に対比されており(高橋ほか

, 2006

),岩相ユニット

F

基底に推定される不整合も黒滝不整合に対比される可能性が 高い.ただし,最近,房総半島ボラの鼻における黒滝不整合 には剪断面が存在することから,この不整合が海底地滑りや 断層で形成された可能性が指摘さるようになった(

Otsubo

et al., 2011

).このように黒滝不整合は通常の不整合ではな い可能性もあるため,房総半島に認められる黒滝不整合を関 東平野の地表および地下で認められる不整合にそのまま対比 することに関しては,今後詳しく検証する必要があると思わ れる.

Fig. 5. Stratigraphic correlations between sequences with-in the Otone, Tatebayashi, and Iwatsuki wells and the Washimiya and Kasukabe drillcores; these correlations are based on calcareous nannofossil horizons and the location of the Joetsu tephra layer.

(16)

関東平野地下の長尺ボーリングとの対比 次に,関東平野中央部地下における地層の深度分布を概観 するため,大利根温泉ボーリングを含む

5

本のボーリング を対比し,模式的な地質断面図を作成した(

Fig. 5

).使用し たのは,館林観測井(

TB

)(林ほか

, 2004a

),大利根温泉 ボーリング(本研究),鷲宮コア(

WM

)(納谷ほか

, 2012

), 春日部コア(

KK

)(小林・関東火山灰グループ

, 2003,

納谷 ほか

, 2012

),岩槻観測井(

IT

)(柳沢ほか

, 2006

)である. この断面から,都幾川層群相当層基底(庭谷不整合)と上総 層群相当層基底(黒滝不整合)の深度は,北西から南東に向 かって徐々に深くなることがわかる.ただし,大利根温泉 ボーリングと館林観測井では,深度

1000 m

以深が側方に 連続しない.すなわち,大利根温泉ボーリングでは,深度

1300 m

以深に比企層群相当層(グラーベン埋積堆積物)が分 布するのに対し,館林観測井では,都幾川層群相当層の下位 に,直接先新第三系の基盤岩類が分布する. 従来,現在の利根川に沿って,利根川構造線が想定されて おり,横ずれ断層と推定されている(高橋ほか

, 2006

).大利 根温泉ボーリングと館林観測井における

1000 m

以深の不 連続は,両地点の間に利根川構造線が存在する可能性を示唆 する. 一方,上越火山灰および下総層群基底深度は,鷲宮コアに おいて若干深いものの,この断面ではほぼ水平に近いことが 読み取れる. 反射法断面との対応 山口ほか(

2008

)は,大利根温泉ボーリングの南西約

3 km

を起点とする測線で反射法地震探査を実施している(

Fig.

1

).そこで,ここでは山口ほか(

2008

)によって報告された 反射法深度断面(

Kazo1, Shobu1

測線)と大利根温泉ボーリ ングとの対応を検討した(

Fig. 6

).この断面からは,

GS-SB-1

コア付近で最も深くなる向斜状の構造を読み取ること ができ,上総層群基底と上越火山灰層準の深度が地下に連続 的に追跡できる.この断面に基づけば,上総層群基底(黒滝 不整合に相当する)は

GS-SB-1

コア付近でおよそ深度

1000

m

に存在すると推定できる.しかし,都幾川層群基底(庭谷 不整合)に相当する深度は,反射面が明瞭でないために詳し く読み取れない.また,この測線は活断層である綾瀬川断層 を横切っており,図の左端近傍では反射面の連続性は追跡で きない. このように,本研究による大利根温泉ボーリングの解析に よって,この付近の地下

1505 m

までの年代層序が明らか になったことにより,これまで地下地質との対応が分からな かった反射法地震探査断面の解釈が初めて可能となった.掘 削深度が

1000 m

を超える学術ボーリングは本数が非常に 少ないため,深度地下の地質構造を直接知る情報は限られて いる.千代延ほか(

2007

)で指摘されたように,温泉ボーリ ング試料を積極的に活用することにより,関東平野地下の中 新統∼更新統の分布と地質構造の解明に有用な情報が得られ

Fig. 6. Integration and stratigraphic inter-pretation of a seismic section along the Kazo1–Shobu1 line (Yamaguchi et al., 2008); this is a depth section with tenfold vertical exaggeration.

(17)

ることが,本研究からも改めて示された.特に,残された カッティングス試料から微化石だけではなく,年代決定に有 効な広域テフラの検出が可能であることが示されたことは, 温泉ボーリング試料からより多くの年代情報を引き出せる可 能性を示唆する.今後,温泉ボーリング試料を活用すること により,関東平野地下の地層分布と地質構造がさらに詳しく 解明されることが期待される. ま と め 埼玉県加須市(旧大利根町)に位置する掘削長

1505 m

の 大利根温泉ボーリングのカッティングス試料の岩相,テフラ 層序,石灰質ナンノ化石層序,珪藻化石層序を明らかにした 結果,次の結論を得た.

1

大利根温泉ボーリングの深度

1434 m

以深には前∼中 期中新世の海成層が分布し,比企丘陵・岩殿丘陵に分 布する比企層群に対比される.

2

大利根温泉ボーリングの深度

1434–956 m

には,中 ∼後期中新世の海成層および陸成層が分布し,比企丘 陵・岩殿丘陵に分布する都幾川層群に対比される.

3

大利根温泉ボーリングの深度

956–773 m

には陸成層 が分布し,比企丘陵の表層地質層序との比較から,都 幾川層群に対比される可能性が高い.

4

大利根温泉ボーリングの深度

773 m

以浅は,鮮新

更 新世の浅海成層と陸成層の互層が分布し,房総半島の 上総層群および下総層群に対比される.

5

都幾川層群相当層基底と,上総層群相当層基底に推定 される不整合は,それぞれ庭谷不整合と黒滝不整合に 対比される.

6

これらの層序対比と反射法深度断面(

Kazo1, Shobu1

測線)との対応を検討した結果,上総層群相当層基底 の深度は埼玉県久喜市(旧菖蒲町)付近で最も大きく, 深度

1000 m

程度に推定される. 謝 辞 本研究を進めるにあたり,加須市役所大利根総合支所福祉 課からは,「童謡のふる里おおとね温泉

100

(とね)の湯」温 泉井のボーリング報告書を閲覧させて頂くとともに,貴重な カッティングス試料を提供して頂いた.産業技術総合研究所 地質情報研究部門の水野清秀氏には,テフラの対比について 議論していただいた.産業技術総合研究所地質情報研究部門 の高橋雅紀博士には,関東平野地下の地質構造と比企丘陵・ 岩殿丘陵の層序について助言をいただいた.査読者の秋葉文 雄博士並びに佐藤時幸博士からは,多くの重要なコメントを いただき,原稿は大きく改善された.以上の方々に厚く御礼 申し上げます. 文 献

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小林雅弘・関東火山灰グループ(Kobayashi, M. and Kanto Ash

Fig.  2 . Stratigraphic section for the Otone well, showing the distribution of selected calcareous nannofossils and diatoms  within this borehole; A = lithology documented in the original drilling logs, B = lithology based on observation of drill  cut-tin
Table  3 . EDX-determined normalized chemical composition of volcanic glass shards within the Otone 324–327 and SK030  tephras.
Table 5. Diatoms from the Otone well.
Table 5. Continued
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参照

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