プロスポーツを軸とした地域おこしの取り組みとその課題
― 広島東洋カープ由宇練習場の観客調査を中心に ―
伊藤泰郎・藤本倫史・申明姫
1. はじめに
スポーツと地域社会の関係が注目を集める一つの契機となったのは、1993年に開幕した J リーグ の成功であろう。地域の一体感の醸成や地域に対する持続的な経済効果の獲得を狙って、地域社会 はプロスポーツや企業スポーツに大きな期待を寄せるようになった。同時にスポーツビジネスの側 も、採算性を向上させる新たな活路として、またスポーツ振興の理念を実現する具体的な方策とし て、地域密着型の経営を行うようになってきている。 本稿では、広島東洋カープが二軍の本拠地を置く山口県の由宇町を事例として、プロスポーツを 軸とした地域おこしについて考察を試みたい。スポーツレジャーの振興に力を入れていた由宇町は、 1993年に二軍の専用球場である由宇練習場を誘致し、自治体や商工会、観光協会、住民などが地域 の活性化に向けて様々な取り組みを行ってきた。まずは、こうした取り組みについて、既存の資料 や関係者への聞き取りによって明らかにする。 プロスポーツを軸に地域おこしを行う場合、開催試合への集客やその波及効果がどうであるかが 本稿では、広島東洋カープが二軍の本拠地を置く山口県の由宇町を事例として、プロ スポーツを軸とした地域おこしの取り組みについて考察を試みた。関係者への聞き取り 調査に加えて、2008年 月に由宇練習場の観客を対象とした大量調査を実施し、観客の 構成や集客上の問題点、地域への波及効果に関して分析を行った。この調査データは、 スポーツファンの研究においても基礎資料ともなるものである。商工会や観光協会を中 心に結成された広島東洋カープ由宇協力会は、イベント開催などの取り組みを行ってお り、二軍チーム専門の応援団である広島東洋カープ由宇応援隊も様々な活動を行ってい る。これらは一定の成果を上げており、「由宇球場が好き」という回答は観客の7割近く を占める。しかし、由宇練習場の位置付けがあくまでも「練習場」であることから、観 客のための設備は不十分な状態にあり、公共交通機関によるアクセスの悪さや駐車場不 足などの問題も抱えている。また、現地での物販が制限されていることから、観客の需 要が高いにも関わらず、直接的な経済効果はほとんど上がっていない。また、由宇町が 当初期待していた既存の観光資源との相乗効果も生まれていない現状にあるが、調査結 果では PR 方法の工夫などによりこうした現状が変化する可能性があることも示された。 キーワード:スポーツ、地域活性化、観客一つの鍵になる。筆者らは、2008年 月に由宇練習場で開催された二軍公式戦の観客を対象に、調 査票を用いた大量調査を実施した。本稿では、調査データの分析から、観客がいかなる層によって 構成されているかを明らかにするとともに、集客上の問題点や地域への波及効果に関する基本的な 知見を提示したい。
2. 由宇町と由宇練習場
1)由宇町について 町制施行80周年である2006年 月、由宇町は 市町の合併により岩国市となった。現在の岩国市 の中では南部に位置しており、柳井市と接している。 合併直前の2005年の国勢調査では、旧由宇町の人口は9,454人である。1947年から人口減少が続 いていた由宇町を大きく変えたのは、1975年に行われた干拓地の造成と企業誘致、土砂運搬後の跡 地への団地の建設だったと言われる。これによって人口は増加に転じ、1995年には9,822人に達した。 しかし、1990年の時点で人口の約 割が中心部に集中する一方、それ以外の地域では過疎化が進行 しており、この年をピークとして人口は再び減少が続いている。 年齢別人口構成では、50歳代から60歳代前半にかけての世代が最も多く、誘致した企業で働き、 団地に入居した世代は高齢化を迎えつつある。1975年の開発以降、新たな産業が育成できていない ことが由宇町の停滞の背景にある。産業別人口構成は、第一次産業が7.1%、第二次産業が31.0%、 第三次産業が61.9%である。製造業の従事者が全体に占める比率は20.7%であり、卸売・小売業は 15.6%、医療・福祉は13.4%であった。 通勤・通学者のうち、町外に通勤・通学する者の比率は58.4%である。それが県外である者は6.7% であり、そのほとんどが広島都市圏であると思われる。休日の買い物で柳井市や岩国市街へ出る人 も多く、さらには広島市内へと足を伸ばす人も少なくない。JR の快速電車の運行区間は、広島駅 を中心として、東は東広島市や呉市、西は岩国市までであり、由宇駅から広島駅への直通電車も日 中は 時間に 本程度運行されている。地域の住民にとって、広島市はそれほど遠いイメージはな い(1)。 由宇町におけるプロ野球のファンの構成についても述べておきたい。地域の団体や住民への聞き 取りによれば、最も人気が高いのは巨人であり、かつては巨人一辺倒という時代もあった。それに 続くのが阪神と広島である。こうした状況は岩国市全体においても共通するとのことであった。 2)由宇練習場について 由宇練習場は、内野が土、外野が芝の野球専用の球場である。照明設備はない。両翼100m、中 堅122m、グランド面積は16,010㎡であり、プロ野球で使用される球場としてはかなり広い。特に ファールエリアが広くとられていることが特徴である。球場以外には、三塁側場外にサブグランド と投球練習場が設けられている。このため、施設間の移動が短い三塁側のベンチをホームチームの 広島カープが使用し、ビジターチームは一塁側を使用する。 2008年に由宇練習場で開催された広島カープの二軍戦は、全部で60試合であった。表 は、その 月別・内容別の内訳である。ウエスタンリーグの公式戦が44試合開催されたが、それ以外にも開幕 前の教育リーグ(オープン戦に相当する)が 試合、ウエスタンリーグに所属するチームとの練習試 合が 試合、社会人チームとの交流戦が 試合開催された。 カ月の開催数は ∼12試合である。いずれの試合も入場料は無料とされている。 由宇練習場では、芝生になっている内野席 での観戦が一般的である。バックネット裏は、 事務所や選手のロッカー、倉庫が入っている 建物があり、観戦席は設けられていない。建 物の上は報道関係者しか入ることができない ため、観戦する場合は、そのさらに後方に位 置することになる。外野席も内野席と同様に 芝生であるが、十分に整備されておらず、ス コアボードなどを管理する関係もあって、原 則的に立入禁止になっている。しかし、実際 には立ち入って観戦する人が少なくなく、それ以外では外周にある木立の陰で観戦する人もいる。 由宇練習場で開催されるほぼ全試合を観戦する後述の浜氏によれば、平日の観客数は200∼300人、 土日は700∼800人である。対戦相手によっても観客数は異なり、阪神戦や福岡戦などの人気カード が休日に開催される場合は、1000人を超えることもある。また、平日はオールドファンや若者が多 く、休日はファミリー層が多いとのことであった。 3)由宇練習場の誘致 由宇練習場は、1993年 月に開場した。開場以前は福山にある「みろくの里神勝寺球場」などで 試合を行っていたが、合宿所や練習場から遠く交通の便が悪かったことや、他球団と比較して練習 施設の整備が不十分だったことから、新たに二軍の専用球場として建設された。気候が温暖であっ たことや、高速道路のインターチェンジが近く、合宿所から自動車で約40分で移動が可能であった ことなどが、建設地として由宇町が選ばれた理由であった。 スポーツレジャーという新たな観光産業に力を入れつつあった由宇町は、地域おこしの起爆剤と して由宇練習場に大きな期待を寄せた。由宇町では、商工会青年部のアイディアから生まれた山岳 自転車レース「ツール・ド・ゆう」が1988年から開始されており、観光ドライブコース「由宇町ス カイライン構想」も進められていた。この構想は、県主導により開発が進められていた銭壺山や、 岩国カントリークラブ、由宇温泉などを結び一大観光ゾーンとして整備するというものである。由 宇練習場ができればこの構想をさらに発展させることができる上、事業費約10億円が全て球団から 出資されることもあって、由宇町は積極的な誘致を行った。また、干拓地に進出した企業がいずれ もマツダの関連企業であったことも、誘致を後押しした理由の一つであったと言われている。由宇 練習場の誘致を契機に、由宇町は「カープタウンゆう」としての歩みを始めた。 4)由宇練習場を支える地域の活動 広島東洋カープ由宇協力会(以下、由宇協力会)は、由宇練習場が開場した1993年に、「将来のスター 選手を応援し、町おこしにつなげよう」という目的で、由宇町の商工会や観光協会が中心となって 結成された。現在の会員は100名ほどである。岩国市との合併後は、旧由宇町以外の会員も増えつ つある。主な活動は、試合当日の「由宇町カープウエスタンフェスタ」の開催、シーズン終了後の 選手との親睦会、広島県庄原市や広島カープがキャンプを行う宮崎県日南市の応援団体との交流、 表1:2008年由宇練習場開催試合数 公式戦 教育 リーグ 練習 試合 社会人 交流戦 計 3月 2 8 2 12 4月 9 9 5月 8 8 6月 8 8 7月 10 10 8月 4 1 2 7 9月 3 1 2 6 計 44 8 2 6 60 広島東洋カープHPより作成
広島市民球場で開催される一軍公式戦での特産品販売、駐車場での車の整理や試合後のごみ拾いな どである。 「由宇町カープウエスタンフェスタ」は、由宇協力会や広島東洋カープ、由宇町観光協会の主催 により、2008年のシーズンは 回開催された。開催日はいずれも土曜日である。「由宇トマト」な どの地域の特産品やカープグッズの販売に加え、 月24日は選手のサイン会、 月14日は選手が使 用した用具の抽選会、 月 日は地元の少年野球チームを対象に野球教室が行われた。 庄原市や日南市の応援団体とは、毎年共同して広島市民球場での観戦会を行うことが恒例である。 また、 月には庄原市の応援団体とバスツアーを組んでキャンプを訪問し、日南市の応援団体とと もに地域おこしに関する勉強会を行っている。 中国新聞社と広島東洋カープは2006年に「中国新聞・カープ ALL-IN 大賞」を創設し、 年間に わたって、球団とファン、地域をつなぐ役割を果たした団体に対して月刊大賞や年間大賞、特別賞 を贈ったが、由宇協力会はこれまでの地道な活動が評価され、2007年度の年間大賞に選出された。 由宇町には、二軍チーム専門の応援団である広島東洋カープ由宇応援隊(以下、由宇応援隊)も存 在する。由宇応援隊は、2004年に現在も代表を務める浜一彦氏により結成された。核となるメンバー は ∼ 人であり、常連の観客によって緩やかなメンバーシップに基づき構成されている。試合開 催日には多い時で20∼30人が由宇練習場に集まるとのことである。年齢層は高校生から高齢者まで と幅広い。一軍の応援団とは異なり派手な応援スタイルはとらないが、県内の他球場での開催や関 西での阪神戦にも駆けつける。また、由宇練習場周辺の「頑張れ若鯉!」と書かれたのぼりは由宇 応援隊が提供したものであり、駐車場の案内板の設置や選手への差し入れも行っている。 5)由宇練習場の問題点と地域おこしの課題 観客にとって、由宇練習場にはいくつかの問題点が存在する。 まず、公共交通機関によるアクセスが悪いことである。JR 由宇駅から由宇練習場まで路線バス が運行されているが、 日に 往復しかなく、試合の開催時間に合わせて利用可能な便は1往復し かない。このため、来場者のほとんどは自動車を利用しており、中には JR 由宇駅からタクシーの 相乗りで来場する者もいる。また、自動車による来場者が多いにも関わらず、それに駐車場が対応 しきれていない点も問題である。200台の収容が限界であり、来場者が多い開催日にはすぐに一杯 になるため、路上駐車がかなり離れたところまで続く光景が見られる。近隣住民からもたびたび苦 情が寄せられており、由宇協力会や由宇応援隊が駐車場の問題に取り組むのは、こうした状況が背 景になっている。 球場の構造や設備に起因する問題もある。ファールグランドが広いことは由宇練習場の特徴であ るが、これは試合中に観客とプレイする選手の距離が遠いことを意味している。また、由宇練習場 は基本的に「練習場」として建設されたため、観客席に座席や屋根がなく、観戦のための環境が十 分であるとは言い難い。観客はパラソルやテントを持ち込んでそれぞれのスタイルで観戦を楽しん ではいるが、改善すべき点としてたびたび指摘されている。しかし、本格的に観客を収容する施設 を建設するためには相当の投資が必要であり、改善は容易ではない。 地域おこしという点からは、目立った経済効果がないことが最大の課題となっている。由宇練習 場には売店は常設されておらず、自販機以外では恒常的に物品の販売は行われていない。付近には 商店やスーパーはなく、最も近いコンビニエンスストアに行くためには自動車で10分程度は走らな
ければならない。こうした直接的な経済効果だけでなく、試合の観戦が地域の観光産業への集客に つながっていない点は、より大きな問題である。由宇協力会の会員であり岩国西商工会支所長を務 める出雲忠氏は、筆者の一人である藤本の聞き取りに対して、「飲食物やグッズ、特産品などを販 売したいが、なかなかできない。さらに、選手への食事の提供、審判や観客の宿泊、観光なども周 辺地域にとられている。正直、町への経済効果はタクシーとグランドの石灰くらいではないでしょ うか」と述べている。 由宇練習場の誘致以降、由宇町には相次いで施設の建設が行われる。開場と同じ1993年には由宇 町歴史民俗資料館が開館し、1994年には多目的文化スポーツ施設「ゆうたん」が、1997年には銭壺 山の頂上に青少年教育施設としては全国で有数の規模である山口県ふれあいパークが完成した。し かし、由宇練習場とこれらの施設、さらには岩国カントリークラブ、由宇温泉といった既存の観光 資源との相乗効果は、あまり生み出されていない。岩国市由宇総合支所地域振興課の福岡克芳氏は、 「由宇には良い観光資源はあると思う。しかし、それはうまく活用できていない。本来であれば、 点ではなく線で結ばれるような観光資源でなければ地域が活性化しない」と述べていた。 また一方で、活動の担い手が不足している点も、課題として挙げられている。例えば、岩国西商 工会の女性部を中心に毎週日曜日に開催される朝市「カープ夢市場」は、由宇練習場を訪れる観客 には好評であるが、担い手不足の問題からこれ以上の活動が展開できない状況にある。人口減少地 域の様々な地域おこしの活動と同様に、特に企画力や行動力にあふれた若い層の参加が求められて いるが、人口が減少傾向にあり高齢化が進む由宇町においては、それもなかなか困難なのが現状で ある。
3. 観客調査の分析
1)調査概要 今回の観客調査は、広島国際学院大学大学院社会科学研究科の授業「社会調査演習」(担当教員: 伊藤)を履修する藤本と申により企画された。調査方法の検討や調査票の作成の段階において、伊 藤が関わった。調査主体は、藤本が代表をつとめる広島カープ応援サークル「ENTRANCE」であ り、活動の一環としてこの調査が実施された。また、実施にあたっては、広島東洋カープ、由宇協 力会、由宇応援隊の協力を得た。 調査は2008年 月10日に実施した。当日は、由宇練習場において、広島カープと阪神タイガース の二軍公式戦が開催された。 日から三連戦のカードが組まれており、その最終日である当日は日 曜日であった。試合開始時間は12時であり、15時過ぎに終了した。お盆前の週末に開催された人気 カードであったため、最大1000人程度の観客数を予想していたが、当日の観客数は500人ほどであっ た。前日の 日に、今年 回目の「由宇町カープウエスタンフェスタ」が開催されたことや、テレ ビ局による応援ツアーが組まれていたこと、さらにはこの時点で最も勝利数を上げていたルイスが 調整で登板したこと(登板予定はマスコミなどで事前に知らされていた)により、観客がそちらに流れ た可能性が考えられる。快晴で非常に暑かったことが影響したのかもしれない。球場にはいつもよ りも家族連れが多く、スポーツ少年団などの団体による観戦もあるなど、観客に子どもが多かった ことがこの日の特徴であろう。藤本が見た限りでは、大人と子どもの比率が : ぐらいであった。 調査票は A 用紙4頁の簡単なものであり、設問は21問であった。対象者は15歳以上の来場者全 員とした。藤本や申とともに「ENTRANCE」のメンバーが球場入口などで配布し、対象者に試合開始前や観戦中に記入してもらう方法をとった。調査員は13名である。調査票と一緒に、ボールペ ンと記入の際に下敷きとするためのクリアファイルも配布した。配布を開始したのは、試合開始 時間前の10時である。調査票の回収は、 回と 回のグランド整備の際に観客席で行うとともに、 試合終了後に球場入口で回収する計画であったが、実際には回収票の半数以上は試合前に回収する ことができた。 回収数は240票、調査対象外である10歳未満の回答者を除外した有効回収数は228票であった(2)。 観客に子どもが多く含まれていることを考慮すれば、回収率はかなり高かったと思われる。家族で つの調査票を回答したケースも多かった。 2)観客の基本属性 まずは表 から性別と年齢を見てみたい。観客に占める男性の比率は58.9%である。当日は子ど も連れのファミリー層が多かったことから、おそらく通常の試合よりも女性の比率が高かったと考 えられる。年齢については、男性の40歳代が19.1%で最も多かった。女性の30歳代の16.3%、男性 の30歳代の13.4%が続く。30歳代と40歳代で全体の57.9%を占めていた。 表 は一緒に来た人について男女別にまとめたものである。家族は58.7%であり、特に女性の場 合は65.1%を占めている。家族の内訳については今回質問しなかったが、回収の際の調査員の印象 では、やはり子ども連れが多かったとのことである。もっとも、家族と一緒に来たか否かを問わず、 30歳代と40歳代の比率は高かった。女性については、家族と一緒でなかった回答者は30歳代に次い で20歳代が多く、50歳以上の回答者は1人だけであった。当日はユニフォームを着た若い女性同士 のファンもよく見かけた。家族以外では、友達が15.4%、その他が7.7%、観戦仲間が3.4%、恋人 が2.4%、仕事のつながりが1.9%となっている。その他のほとんどはスポーツ少年団で観戦に来た 人であった。 何人で観戦に来たかという質問については、 人が12.2%、 人が31.5%、 人が23.7%、 人 が14.6%であり、10人以上で来た人も9.1%存在した。10人以上と回答した人の多くはスポーツ少 年団で来た人である。また、 人で来た人の80.8%は男性であった。 表 では、観戦した場所についてまとめた。全体の81.3%が内野であり、15.7%が外野、ネット 裏が2.9%であった。内野席での観戦がほとんどであるが、このことは、前述したような由宇練習 (%) 10歳代 20歳代 30歳代 40歳代 50歳 60歳以上 計 男性 7.7 8.6 13.4 19.1 4.3 5.7 58.9 女性 2.4 8.6 16.3 9.1 3.8 1.0 41.1 計 10.0 17.2 29.7 28.2 8.1 6.7 100.0 表2:性別と年齢 (%) 家族 友達 観戦仲間 恋人 その他 男性 54.1 16.4 2.5 1.6 2.5 7.4 女性 65.1 14.0 4.7 3.5 1.2 8.1 計 58.7 15.4 3.4 2.4 1.9 7.7 表3:男女別の一緒に来た人(多重回答) 仕事 ながりの つ
場の観客席の構造に起因するものである。 塁側よりも 塁側の方がやや男性の比率が高く、内野 よりも外野の方が家族と一緒に来た人の比率がやや高かった。 塁側の回答者のうち、86.7%が広島ファン、8.2%が阪神ファンであり、 塁側は、42.6%が 広島ファン、58.8%が阪神ファンであった(ファンに関する設問は多重回答であるため、両方のファン である人が含まれる点には留意が必要である)。この分布は、広島カープが 塁側ベンチに入ることに 対応している。なお、ファンの比率が 番目に高かった福岡のファンは、 塁側が13.3%、 塁側 が16.2%とほぼ均等に分かれていた。外野については、90.6%が広島ファンであった。 表 は居住地である。今回の調査では、居住地が由宇町であるか否かを質問した上で、由宇町で ない回答者には具体的に居住地を記入してもらった。このような方法をとったのは、由宇町が2006 年 月に岩国市に合併されたためであり、由宇町の住民を区別する工夫が必要だったからである。 まずホームタウンである由宇町からの来場者であるが、わずか 人(1.3%)という意外な結果と なった。由宇町の隣接地域については、由宇町以外の岩国市は20.2%、同じく柳井市は3.5%であり、 これらを合わせても地元からの来場者は25.0%にしかならない。由宇練習場で開催される二軍戦は、 筆者らの当初の予想以上に、かなり広範な地域から観客を集めていた。 山口県全体では44.6%であり、その中では周南市の8.3%、山口市の6.1%が多かった。山口県内 からの来場者は、いずれも県の中央部や東部に居住する人々である。これより西では九州からの来 場者が1.3%存在した。一方で、東に位置する広島県からの来場者は、35.9%である。この中では 人口規模が大きい広島市が25.4%を占めている。広島県内で前述した JR の快速電車の運行区間に 広島 阪神 福岡 3塁側 98 (48.0) 52.6 54.1 86.7 8.2 13.3 1塁側 68 (33.3) 62.3 56.7 42.6 58.8 16.2 32 (15.7) 63.3 68.8 90.6 18.8 9.4 6 (2.9) 80.0 66.7 50.0 16.7 0.0 228(100.0) 58.9 58.7 69.7 27.2 12.7 場所を無回答の者も含まれている。ファンの球団は多重回答。 全体 男性 全体は数値が人数・括弧内は%、それ以外は全て%。全体の人数には観戦 内野 外野 ネット裏 家族と 来た人 ファンの球団 表4:観戦場所と属性別内訳 全体 由宇町 3 (1.3) 広島市 58 (25.4) 関東・東海 11 (4.8) 岩国市 46 (20.2) 廿日市市 8 (3.5) 関西 4 (1.8) 柳井市 8 (3.5) 安芸郡 5 (2.2) 中国 3 (1.3) 周南市 19 (8.3) 東広島市 2 (0.9) 九州 5 (2.2) 山口市 14 (6.1) 呉市 2 (0.9) 計 23 (10.1) 宇部市 6 (2.6) 福山市 3 (1.3) 由宇町以外 5 (2.4) 下松市 5 (2.2) 大竹市 2 (0.9) 無回答 16 (7.0) 光市 1 (0.4) 三原市 1 (0.4) 三次市 1 (0.4) 102 (44.6) 82 (35.9) 総計 228(100.0) 計 計 数値は人数、括弧内は%。岩国市には旧由宇町を含まない。 表5:居住地 隣接 市 それ 以外 山口県 広島 都市 圏 それ 以外 広島県 それ以外
含まれる自治体を仮に「広島都市圏」として分類すれば、来場者に占める比率は32.9%であった。 広島県と山口県以外からの来場者についても、10.1%存在した。九州以外では、関東・東海が4.8%、 関西が1.8%、広島県と山口県を除く中国地方が2.2%である。時期的に帰省している者も含まれ ていると思われるが(自由記述でそのように回答した者も存在した)、お盆前の週末ということもあり、 かなり遠方から駆けつけた熱心なファンもいたようである。 球場までの交通手段は、97.7%が自家用車であった。バスが到着する頃から来場者が増加したが、 実際にバスを利用していた回答者は、 人(1.8%)だけであった。タクシーについては、今回の 調査では 人しかいなかった。 3)由宇練習場での観戦とその目的 図 は、男女別の由宇練習場に初めて来た年である。今年の2008年が初めてという人は39.7% であり、表には示さなかったが、今回の来場が初めてという回答者は20.6%であった。2007年が 14.5%であり、この ∼ 年という回答者が54.2%と半数以上を占めている。一方で古くからの来 場者も一定数存在しており、1999∼2003年が19.6%、1998年以前が7.0%である。由宇練習場が建 設された1993年頃から来ている回答者も存在した。 表 は、2008年の観戦回数である。この日の試合は、2008年に由宇練習場で開催された50試合目 であった。 回目が37.4%、 回目が25.2%であり、 回目までの回答者で62.6%と多数を占めて いた。しかし、 回目以上の回答者が37.4%存在するということは、定期的に由宇練習場を訪れる 二軍戦のファンが一定数存在することを示している。10回目以上の「コア」なファンは7.2%であ り、18回目が 人、20回目が 人、30回目が 人、32回目が 人 であった。また、観戦回数に男女の差は見られず、 回目以上の 40.0%、10回目以上の31.3%が女性であった。 プロ野球のどこのチームのファンであるかを多重回答で質問し たところ、広島が69.7%、阪神が27.2%、福岡が12.7%であった。 他のチームのファンである回答者の比率は全て 桁である。巨人 ファンの回答者は6.1%であるが、山口県の住民に限れば10.3% であった。 1回 83 (37.4) 2回 56 (25.2) 3回 22 (9.9) 4回 14 (6.3) 5回 20 (9.0) 6〜9回 11 (5.0) 10回以上 16 (7.2) 数値は人数・括弧内は% 表6:2008年の観戦回数 39.7 14.5 8.0 5.5 5.5 19.6 7.0 図1:男女別の初来場年 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 08 07 06 05 04 99〜03 98以前 男性 女性 不明 (%) (年) 7.0 19.6 5.5 5.5 8.0 14.5 39.7
今回の調査では、観戦の目的について「とてもあてはまる」から「全くあてはまらない」までの 段階で質問した。回答結果をまとめたのが図 である。「とてもあてはまる」という回答が多い 順に上から並べた。まずは、「とてもあてはまる」と「ややあてはまる」を合計した比率を見てみ たい。 割前後の回答者が「チームの応援」(95.3%)、「選手の応援」(92.1%)、「野球をじっくり見る」 (90.9%)、「若手選手の成長を見たい」(86.2%)を目的として来場していた。ファミリー層が多かっ たことから「レジャー」(75.7%)という回答も多く、その一方で「友人・知人に誘われた」(39.7%) が半数以下になったことは、そもそも友人や知人と一緒に来た人が少なかったことを反映している。 「由宇球場が好き」(67.3%)という回答は 割近くを占めており、後述するように設備等への不満 はあるが、基本的には由宇練習場は回答者から愛されていると言える。 「とてもあてはまる」と「ややあてはまる」の合計が半数以下だったのは、「友人・知人に誘われ た」以外では、「二軍の試合の方がおもしろい」(45.6%)、「対戦相手が魅力的」(44.0%)、「二軍の 成績がいいから」(27.7%)の つであった。「若手選手の成長を見たい」という回答は多かったが、 試合の面白さや成績など、二軍にこだわって観戦する人々はそれほどは多くなかったと言える。ま 3. 35 8. 22 4. 9 チームの応援 選手の応援 若手選手の成長を見たい 野球をじっくり見る 由宇球場が好き レジャー 友人・知人に誘われた 対戦相手が魅力的だった 2軍の試合の方が面白い 2軍の成績がいいから 0% 20% 40% 60% 80% 100% 62.3 53.3 38.8 33.0 50.0 36.2 12.4 49.3 41.6 32.2 35.1 25.4 26.7 49.0 14.9 21.6 18.1 9.0 7.3 7.2 7.5 3.7 0.9 0.5 1.4 1.9 9.4 51.3 18.8 25.2 26.2 29.7 14.7 30.9 43.6 10.8 21.8 49.5 22.8 5.9 図 :観戦目的 とてもあてはまる ややあてはまる あまりあてはまらない 全くあてはまらない
た、対阪神戦という人気のカードではあるが、対戦相手が誘因になっている人よりは、週末の開催 や広島の試合だったから見に来たという人の方が多かったと思われる。なお、性別や年齢によって 観戦目的に差は見られなかった。 「とてもあてはまる」という回答から順に ∼ 点を与え、観戦目的に関する変数について相関 係数を示したのが表 である。「レジャー」「友人・知人に誘われた」「対戦相手が魅力的」という つの変数以外は、関係の強弱はあるが、それぞれ相互に有意な関係があった。「レジャー」は他 のどの変数とも有意な関係はなかった。このことは、「レジャー」が目的で来場した人には、様々 な観戦志向を持つ人が含まれていることを示している。また、「友人・知人に誘われた」は、「対戦 相手が魅力的」「二軍の成績がいいから」とだけ有意な関係があった。友人や知人に誘われてきた 人は、対戦相手と二軍の成績が良いことが誘因になったということであろう。「対戦相手が魅力的」 は「友人・知人に誘われた」「二軍の試合の方がおもしろい」「二軍の成績がいいから」の つの変 数と有意な関係があった。対戦相手にこだわる人は、試合の面白さによりこだわる傾向があると考 えられる。 4)二軍の試合に通うファン 二軍の試合に定期的に足を運ぶという人はどのような人であろうか。年にどれくらい来場すれば 熱心なファンであるかは断定しがたいが、全体の37.4%を占める今年の観戦回数が 回目以上の回 答者について分析してみたい。 性別の構成比は、男性が60.0%であり、前述したように ∼ 回目の回答者と比較して差は見 られない。年齢別の構成比は、多い順に40歳代が30.0%、30歳代が25.0%、20歳代と50歳代が 15.0%、60歳代が10.0%、10歳代が5.0%であった。30歳代と40歳代が中心であるが、年齢層は多 岐に渡っている。50歳代と60歳代で 回目以上の回答者の比率が顕著に高く、それぞれ70.6%と 66.7%であった。由宇練習場で年配者を見かけたら、 人に 人は熱心に通うオールドファンとい うことになる。居住地の構成比については、地元の由宇町や由宇町以外の岩国市、柳井市など、由 宇練習場に近い地域がいくらか高くはなるが、山口市や大竹市、さらには九州や関東・東海から来 た人の中にも、今年 回目以上の観戦である人が存在した。 さきほどの相関係数の分析と同様に、観戦目的の回答に点数を与え、分散分析により ∼ 回目 の回答者と 回目以上の回答者の点数の平均を比較してみた。 %水準で有意な差があったのは、 ム ー チ 援 応 選応援手 若選手手 くじっり 球 が好き場 レジャー 誘われた 対相戦手 二軍が面 い白 二軍の成績 0 0 0 . 1 援 応 ム ー チ 0 0 0 . 1 ** 2 7 6 . 援 応 手 選 0 0 0 . 1 ** 4 4 3 . ** 5 5 3 . 手 選 手 若 0 0 0 . 1 ** 4 4 3 . * 6 3 1 . ** 5 0 3 . り く っ じ 0 0 0 . 1 ** 3 8 3 . ** 1 6 2 . * 4 6 1 . ** 5 8 1 . き 好 が 場 球 ー ャ ジ レ −.103 −.095 −.041 .008 .021 1.000 た れ わ 誘 −.038 .028 −.048 −.051 .019 .126 1.000 手 相 戦 対 −.004 −.013 −.016 .049 −.001 .140 .212** 1.000 . ** 2 8 1 . * 1 4 1 . い 白 面 が 軍 二 248** .277** .426** .069 .006 .351** 1.000 . ** 9 6 1 . ** 8 5 1 . ** 0 4 1 . * 5 4 1 . 績 成 の 軍 二 216** .124 .229** .263** .461** 1.000 5 0 . < p * 1 0 . < p * * 数 係 関 相 の 的 目 戦 観 : 7 表
「レジャー」「友人・知人に誘われた」である。 回目以上の回答者は、レジャーや友人・知人の誘 いでは来ない傾向があった。 %水準では「選手の応援」「若手の成長を見たい」「由宇球場が好き」 「二軍の試合が面白い」の つで有意な差が見られた。 ∼ 回目の回答者と比較していずれも平 均点が高く、定期的に由宇練習場に足を運ぶ人は、これらを目的に来場する傾向がより強い人であ る。換言すれば、チームだけではなく自分のひいきの選手の応援に力を入れ、若手の成長を見るこ とができる二軍の試合にこだわり、由宇練習場をより愛する人とであるということになる。 5)これからの由宇球場に必要なもの 今回の調査では、「これからの由宇球場に必要なもの」について多重回答で質問した。回答が 多いものから順に結果をまとめたのが図 である。最も比率が高かったのは、「売店の充実」の 64.5%であり、「カープグッズの販売」の31.1%も合わせて考えれば、常設の売店を求める声は非 常に多いことが分かる。売店の設置は球場の設備の関係で困難であると言われているが、調査結果 はそれが喫緊の課題であることを示している。 次に高かったのは「選手とのふれあい」の54.4%である。家族と一緒に来た人において回答比率 が高いが、回答者本人というよりは子どもと選手のふれあいを望んでいると思われる。家族と一緒 でなかった人についても、女性の場合は同様に比率が高く、特定の選手を応援する若い女性ファン の存在が影響していると考えられる。由宇練習場の場合、試合観戦中は観客と選手との距離が遠い が、サブグランドでは練習風景を間近に見ることができる。サブグランドから球場までの間の移動 中に選手と接することも可能であり、一軍よりもサインがもらいやすいとも言われている。したがっ て、「選手とのふれあい」を求める回答は、現在の状態を将来も続けて欲しいという意味で解釈す るのが妥当であろう。もっとも、自由回答ではサイン会を増やして欲しいという要望も出ているこ とから、選手とのふれあいイベントの要望があることも確かである。 置 配 の 員 備 警 売 販 の 品 産 特 元 地 実 充 の 板 内 案 の 内 場 球 実 充 の ー ャ ジ レ や 光 観 実 充 の 関 機 通 交 共 公 ト ン ベ イ の で 場 球 宇 由 売 販 の ズ ッ グ プ ー カ 張 拡 の 所 車 駐 い あ れ ふ の と 手 選 実 充 の 店 売 売店の充実 選手とのふれあい 駐車場の拡張 カープグッズの販売 由宇球場でのイベント 公共交通機関の充実 観光やレジャーの充実 球場内の案内板の充実 地元特産品の販売 警備員の配置 図3:これからの由宇球場に必要なもの 2.2 8.8 9.6 11.0 14.5 22.4 31.1 33.3 54.4 64.5 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 (%)
「駐車場の拡張」は33.3%であった。駐車場に関する不満の声は自由回答でも多く述べられている。 駐車場の改善は現在も取り組まれているが、週末などの開催において絶対数が不足する状況は否定 しがたい。球場へのアクセスについては、「公共交通機関の充実」を挙げた回答者も14.5%存在した。 10%水準であるが、男性の回答が多かった。駐車場の問題は公共交通機関の整備とセットで考える べきものであろう。また、自動車による来場者からは、由宇練習場までの案内板が不十分であると いう指摘も自由回答で多く見られた。 「由宇球場でのイベント」は22.4%であり、「地元特産品の販売」は8.8%であった。回答はいず れも今年の来場が 回目以上である層において多かった。前述の選手とのふれあいイベントも含め、 イベントを求める声は少なくないと思われる。 「周辺地域の観光やレジャーの充実」は11.0%であったが、今年の来場が ∼ 回目である層で 多かった点に注目すべきである。このことは、観戦前と観戦後の行動を尋ねた設問を分析する際に 改めて述べることにしたい。「警備員の配置」は2.2%であった。 これ以外にも、自由回答で様々な要望が挙げられている。真夏の正午からの開催であったことか ら、屋根などを設置してもらい日陰で観戦したいという回答は多く、試合開始時間の変更やナイター 設備の設置を求める声もあった。球場の設備に関しては、内野だけでも椅子席を設置して欲しい、 ネット裏やベンチ上で観戦したい、スコアボードの選手名が小さくて見えづらい、スコアボードに 時計があったらいいと思う、トイレの改善が必要であるという回答も寄せられた。 6)地域おこしの課題 由宇球場でのイベント開催の要望は少なくないが、既存のイベントに関する認知度は全体的に低 い。開幕戦のセレモニーは11.0%であり、今年 回目の「由宇町カープウエスタンフェスタ」で行 われたサイン会は26.3%、 回目に行われた用具の抽選会は17.1%、 回目に行われた野球教室は 24.1%であった。PR 不足はやはり課題として挙げられるように思う。自由回答では、そもそも二 軍の試合スケジュールが分かりづらいという指摘が、数人の回答者からなされていた。 試合当日の昼食は、回答者の81.2%が持参していた。内訳は、コンビニエンスストアやスーパー での購入が64.3%、手作りが15.5%、その両方が1.4%であった。売店の設置を求める声がかなり 多いことは既に述べたが、売店が設置された場合には、かなりの需要があることもこの結果から分 かる。 今回の調査では、観戦前と観戦後の行動についても多重回答で質問を行った。観戦前については、 「自宅から直接来た」が78.1%であり、「外食」が1.8%、「ドライブ」が4.8%、「温泉」が1.8%、「ショッ ピング」が0.9%、「スポーツ」が1.7%、「海水浴」が2.6%、「キャンプ」が2.2%、「その他」が3.0% であった。また、観戦後については、「自宅に直接帰る」が65.8%であり、「外食」が9.6%、「ドラ イブ」が7.5%、「温泉」が4.4%、「ショッピング」が6.1%、「スポーツ」が0.4%であった。 自宅から直接来てそのまま自宅に帰る回答者は57.9%である。当日は非常に暑かったため、野球 観戦だけで精一杯という回答者も少なくなかったと思われるが、球場の道すがらどこにも寄らない 回答者の比率は高いと言える。これが野球観戦の特徴である可能性もあるが、由宇町にとっての経 済効果が「タクシーとグランドの石灰くらい」という状況は、この結果からも確かに言えるように 思う。もっとも、由宇練習場の観客は野球観戦に徹する人々ばかりではなく、前述のように、「周 辺地域の観光やレジャーの充実」を回答した比率は、今年の来場が ∼ 回目である層において相
対的に高い。さらなる観光資源の開発や観客に対する情報の提供により、由宇練習場という点が線 へと変わる余地はあるのではないだろうか。
4. 小括
以上、広島東洋カープが二軍の本拠地を置く山口県の由宇町を事例として、プロスポーツを軸と した地域おこしについて考察を試みた。 スポーツレジャー産業に力を入れていた由宇町は、由宇練習場の誘致により「カープタウンゆう」 として歩みを始め、商工会や観光協会を中心とした由宇協力会やファンが組織する由宇協力隊の活 動は、これまで一定の成果を上げてきた。しかし、由宇練習場の「練習場」という位置づけは、観 客の需要が確実に存在しているにも関わらず、物販を制限されることにより直接的な経済効果を上 げづらい状況を生みだしている。経済効果としてそれ以上に重要であるのは、由宇町が当初期待し ていた既存の観光資源との相乗効果が生まれていないことであるが、観客調査の結果はいくらかの 需要があることは示しており、取り組み次第では状況の変化がもたらされる可能性はあると考えら れる。イベントや試合の開催情報も含め、PR の方法に工夫が必要であろう。また、人口減少地域 の様々な地域おこしの活動と同様に、活動の担い手不足も指摘されている。 観客調査では、練習場の設備に関する観客の様々な要望が明らかになるとともに、駐車場の不足 も含めたアクセスの問題が改めて浮き彫りになった。前者については、やはり「練習場」という位 置づけから整備が進んでいないことが背景にあり、後者については、自動車での来場者への対応だ けでなく、公共交通機関の整備とセットで取り組んでいく必要があると考える。「由宇球場が好き」 と答える回答者が7割近くを占めてはいるが、新たな観客を獲得するためには、少しでも改善を進 めていく必要があるだろう。 二軍の本拠地球場の観客調査は、管見ではあるがこれまで例がないと思われるので、地域おこし の課題を探るという目的にとどまらず、スポーツファンの研究における基礎資料ともなるものであ る。今回は特に定期的に二軍戦に通うファンの分析を試みたが、他球場の観客との比較など、今後 さらに研究を進めていきたいと考えている。 【注】 1)もっとも、広島市の住民が由宇町に近いというイメージを抱いているとは限らない。 2)年齢に関する設問は、「10歳未満」「20代」「30代」「40代」「50代」「60代以上」の つのカテゴリーに分 けた選択肢を用いたため、11∼14歳の回答者を除外できなかった。そのため、有効回収数には調査対象 外の回答者が含まれている可能性がある。 【参考文献】 由宇町役場政策推進室編 ,2006, 由宇町制施行80周年記念誌『明日への伝言:由宇町の未来へ』由宇町 . 「なぜ、今合併なのか」由宇町、2003年 . 「広報ゆう」1991年 月、1993年3月 . 「朝日新聞」1992年2月28日朝刊(福岡板). 「中国新聞」2007年10月19日朝刊、2007年11月24日朝刊 . ※本稿は、伊藤が ・ ・ 章を執筆し、 章は藤本が執筆したものを伊藤が再構成して加筆を行っ た。申は執筆の過程で議論に参加した。Regional Vitalization with a Professional Sport and the Challenges
it is Facing: With a Focus on an Audience Survey at the Yuu Stadium
of the Hiroshima Toyo Carp
Tairou ITOU, Norifumi FUJIMOTO and MingJi SHEN
In this paper, the author looks at a case of regional vitalization with a professional sport, with an example of the town of Yuu, Yamaguchi Prefecture, in which the farm of the professional baseball team is based.
In addition to interviews with people involved, the author conducted a mass survey of audience at the Yuu stadium in August 2008, to analyze the composition of the audience, problems in attracting audience and the ripple effects on the town.
The approach has accomplished certain achievements; however, facilities for the audience in the stadium ― a mere practice ground ― remain insufficient, and the access by public transportation and parking space is limited. Also, because the sales of merchandise in the stadium are restricted, there are few direct economic effects in the town, despite demands from the audience.
The synergetic effects with existing local tourism resources are yet to come ; however, the results of the survey show the possibility that the circumstance may change with, for example, a twist of publicity.