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日本マイクログラビティ応用学会誌 Vol. 19 No ( ) 原著論文 高周波磁場による FZ( フローティングゾーン ) シリコン融液内自然対流の制御 宗像鉄雄 染矢聡 Control of Natural Convection in FZ (Floating Zon

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42 ― 258 ― 産業技術総合研究所エネルギー利用研究部門 〒3058564 つくば市並木 121

Institute for Energy Utilization, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 121 Namiki, Tsukuba 3058564, Japan (E-mail: t.munakata@aist.go.jp) 42 ― 258 ― 原著論文

高周波磁場による FZ(フローティングゾーン)

シリコン融液内自然対流の制御

宗像

鉄雄・染矢

Control of Natural Convection in FZ (Floating Zone)

Silicon Melt by High Frequency Magnetic Field

Tetsuo MUNAKATA and Satoshi SOMEYA

Abstract

EŠect of high frequency magnetic ˆelds on natural convection in the FZ (Floating Zone) silicon melt has been investi-gated numerically. The purpose of the study is to clarify the applicability of the high frequency magnetic ˆeld on the con-trol of the melt natural convection induced by both the Marangoni and the buoyancy forces. The numerically obtained results reveal that the high frequency magnetic ˆeld can be used to control the melt natural convection; the melt tion intensity is decreased under the higher applied frequency with an adequate applied current density; the melt convec-tion intensity is increased under the lower frequency and higher current density.

. は じ め に 現在の IT (Information Technology) 産業を始めとする 先端産業は,材料科学の発展によってもたらされていると いっても過言ではない.このような産業の基幹をなすバル ク単結晶を育成するためには,Cz (Czochralski) 法,FZ 法,ブリッジマン法等,融液からの結晶成長法が用いられ ている.得られる結晶の品質および物性を正確にコント ロールするためには,流れ場,温度場,濃度場等を制御し て結晶成長を行う必要があるが,地上においてこれらの場 を制御することは,一般には浮力,表面張力,結晶等の回 転力などの影響が複雑に絡み合うこと,物性値自身の値が 不明確なこと,等のため困難である.一方,ほとんどの半 導体材料の高温融液は金属的となり電磁場の影響を受けや すくなる.そこで,このような融液内対流を制御する手法 として,これまで,直流磁場(鉛直型,水平型,カスプ 型)1),回転磁場2)等の外部磁場を用いる方法が考えられて きた.これらの手法では,磁場によって対流が抑制される ため,場の振動的な現象はなくなるが,融液内の温度場, 不純物濃度場が伝導支配となり,結果的に不純物濃度分布 が結晶の半径方向に不均一となる問題が発生してしまう. この問題を解決するため,Watanabe らは,磁場が印加さ れている系に電流を流すとローレンツ力が働く原理を応用 した EMCZ (Electromagnetic CZ) 法を提案し,電磁力に よって駆動される強制対流により不純物濃度分布が半径方 向に均一化されることを示した3) 微小重力環境においては,浮力の影響がなくなるため, 融液内に形成される流れ場,温度場,濃度場等は地上と比 較して単純化され,より高品位の単結晶が得られると考え られている.しかしながら,融液に自由表面が存在する場 合には,無重力環境であっても表面張力差によって駆動さ れるマランゴニ対流を消し去ることはできない.莇らは, 微小重力環境を利用し,このようなマランゴニ対流の詳細 を明らかにし,地上における結晶成長技術の向上を目指し ている4).また,微小重力環境を利用して地上では育成し 難い結晶を育成することにも成功している5)が,より高品 位の単結晶を得るためには,微小重力環境であっても何ら かの対流制御手法を開発する必要がある. 地上においては,高品質の単結晶を得る手法として高周 波加熱 FZ 法が用いられており,融液内対流に対する高周 波磁場の影響が解析されている.M äuhlbauer ら6)は,数値 解析により単純な系では高周波磁場によって誘導される流 れ場はマランゴニ対流と逆向きになることを示しており, 最近では,Ratnieks ら7)が,ニードルアイ型の誘導コイル を用いた場合の高周波加熱 FZ 法における融液内対流を数 値解析し,流れ場の非定常性・三次元性を明らかにしてい る.また,Hermann ら8)は,ニッケルを対象として高周 波加熱 FZ 法における固液界面形状を数値解析および実験

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43 ― 259 ―

Fig. 1 Model for numerical simulation.

43 ― 259 ― 日本マイクログラビティ応用学会誌 Vol. 19 No. 4 2002 により検討している.著者ら9)も高周波加熱 FZ 法におけ る融液内対流に対する高周波磁場の影響を解析し M äuh-lbauer らの結果と同様の結果を得ている.したがって,高 周波磁場の強さを制御できれば,融液内対流を制御できる 可能性がある.しかしながら,高周波加熱の場合には,高 周波磁場で溶融帯を形成するため,高周波磁場の強さを単 独に制御することは困難である.そこで,著者らは,微小 重力環境での実験が想定されている放射加熱 FZ 法を取り 上げ,これまで高周波磁場を用いた FZ 法シリコンマラン ゴニ対流の制御に関する研究を行ってきた.これは,高周 波磁場を単独に制御のためだけに利用できるためである. その結果,高周波磁場は表皮効果として発現するため,適 切な誘導コイルの配置,印加周波数,印加電流を選択すれ ば,マランゴニ効果を抑制できる可能性があることを数値 解析により示した10).これらの解析結果の妥当性を検討す るためには,微小重力環境を利用した実験が必要となる が,このよう実験機会は少ないため,地上研究によって検 討する必要がある.そこで本研究では,FZ 法シリコン融 液内に発生する自然対流の高周波磁場による制御に関し, 地上実験を想定し,浮力の効果を取り入れた場合の数値解 析を行った. . 計 算 方 法 計算に用いたモデルを Fig. 1 に示す.系は軸対称円筒 座標とし,固液界面・融液自由表面はフラット,ガウス分 布となっている周囲温度により放射加熱される自然対流を 考えた.高周波を印加する誘導コイルは 1 ターン矩形断面 とし,融液内に発生する誘導磁場は対流の影響を受けない と仮定した.なお,一般に FZ 法では原料および結晶を回 転させるが,今回の計算では純粋な自然対流に与える高周 波磁場の影響を調べるため,回転による強制対流の効果は 考えていない.支配方程式,境界条件は前報9,10)とほぼ同 じため詳述しないが,無次元化を行うと以下のようになる. 支配方程式  運動方程式 &v &t+Vr &v &r+Vz &v &z- 2Vr r v =& 2v &r2+ &2v &z2- 1 r &v &r- Ra Prr &T &r -2EM1 1 r

{(

&fc &r &fs &z- &fs &r &fc &z

)

-1 r

(

fc &fs &z-fs &fc &z

)}

(1)  エネルギー式 &T &t+Vr &T &r+Vz &T &z =1 Pr

(

&2T &r2+ &2T &z2+ 1 r &T &r

)

+EM2 1 r2 (fc2+fs2) (2)  ポアソン方程式 &2c &r2+ &2c &z2- 1 r &c &r=v (3)  誘導方程式 &2f c &r2+ &2f c &z2- 1 r &fc &r=EM3fs (4) &2f s &r2+ &2f s &z2- 1 r &fs &r=-EM3fc-rd(Rwc) (5)  流れ関数―速度関係式 Vr= 1 r &c &z, Vz=- 1 r &c &r (6) ここで,v は渦度,T は温度,c は流れ関数,fcと fsは 修正ベクトルポテンシャル,Vrと Vzは速度成分,Ra はレ イリー数,Pr はプラントル数,EM1,EM2および EM3は 電磁場パラメータであり,t, r, z は時間,半径方向,軸方 向を示している.また,添字 c および s はサインおよびコ サイ ン成分であ る.ここで, 無次元パラ メータ Ra, Pr, EM1,EM2および EM3は,Ra=bTUmR3s/an, Pr=n/a, EM1

=m2 eJ2useveR6s/(2r0n2), EM2=me2J2usev2eR6s/(2r0nCpUm), EM3 =meseveR2sで定義される.なお,は重力加速度,bTは体 膨張係数,Umは融点,a は温度拡散係数,n は動粘性係 数,meは透磁率,Juはコイル印加電流密度,seは導電率, veは印加電流の角速度,r0は密度,Cpは比熱,Rsは結晶 半径である. 境界条件  計算領域境界(r=0, r=Rmax,z=0, z=Zmax) fc=0, fs=0 (7)

(3)

44 ― 260 ―

Fig. 2 EŠect of buoyancy force on melt ‰ow and temperature ˆelds. (a) Pure Marangoni convection (Pr=0.011, Ma=4.18×104,Ra=

0), (b) pure buoyancy convection (Pr=0.011, Ma=0, Ra=3.62×104) and (c) natural convection induced by both Marangoni

and buoyancy forces ( Pr=0.011, Ma=4.18×104,Ra=3.62×104).

Table 1 Physical Properties of silicon Cp=1.0×103J/kg・K a=2.65×10-5m2/s bT=1.4×10-4l/K e=0.3 l=67.0 W/m・K m=7.59×10-4kg/m・s me=1.2566×10-6H/m n=3.0×10-7m2/s Um=1680 K r0=2530 kg/m3 se=1.2×106S/m (liquid) 5.0×104S/m (solid) sT=1.0×10-4N/m・K 44 日本マイクログラビティ応用学会誌 Vol. 19 No. 4 2002 ― 260 ―   中心軸(r=0) v=0, &T/&r=0, c=0 (8)   固液界面(z=Zc,z=Zf) v=&2c/&z2,T=1, c=0 (9)   自由表面(r=1)

v=(Ma/Pr)(&T/&z)-EM4{(&fc/&r)(&fc/&z)

+(&fs/&r)(&fs/&z)},

&T/&r=-Bi(T-Ta)-Rd(T4-T4a), c=0 (10)   周囲温度分布 Ta(z)=1.0+0.7 Exp [-2.0{z-((Zc+Zf)/2)}2] (11) ここで,Ma はマランゴニ数,EM4は電磁場パラメータ, Bi はビオ数,Rd は放射―伝導相互作用パラメータであ り , 各 無 次 元 数 は , Ma = sTUmRs/ ( am ) , EM4= meJ2uR4s/ (2mn), Bi=hRs/l, Rd=esSBRsU3m/l で定義される.なお, sTは表面張力の温度係数,m は粘性係数,h は熱伝達率, l は熱伝導率,e は放射率,sSBはステファン―ボルツマ ン定数である. これらの支配方程式および境界条件から明らかなよう に,高周波磁場の影響を数値解析する場合には,式(1)お よび式(10)に示したように,高周波磁場による電磁力が体 積力および表面力として働くため,高周波磁場による電磁 力を制御することで浮力およびマランゴニ力を考慮した正 味の体積力および表面力を制御することができ,融液内対 流の制御が可能になることを示している. 計算は誘導磁場を計算領域全体で計算した後,融液内で 放射加熱熱伝導場を計算し,この温度場を初期条件として 流れ場・温度場を時間積分した.計算には,空間微分に二 次中心差分,対流項に三次風上差分(KK 法11)),時間項 に ADI 法を用い,差分法により計算した.またポアソン 方程式に対しては SOR 法により収束計算を行った.な お,原料,結晶および融液部の半径 Rs=5×10-3m を代 表長さ,シリコンの融点を代表温度として無次元化を行 い,融液部の高さは 1×10-2m と仮定した.計算に用い たシリコンの物性値を Table 1 に示す1214) . 結果および考察 まず浮力の影響を調べるため,純粋なマランゴニ力によ って駆動される場合,純粋な浮力によって駆動される場 合,マランゴニ力と浮力が同時に作用して駆動される場合 の 3 ケースについて,融液内の流れ場・温度場を計算し た . 結 果 を Fig. 2 に 示 す . 計算 は 非 定 常 計 算を 行 っ た が,結果はいずれも定常場となっている.なお,図中左側 が流れ場,右側が温度場を示しており,流れ場について は,実線が時計方向の流れ場,破線が反時計方向の流れ場 となっている.図から明らかなように,純粋なマランゴニ 力によって駆動される場合には,完全に上下対称な流れ 場・温度場が形成されているのに対し,純粋な浮力によっ て駆動される場合には,単一の対流セル構造となってい

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45 ― 261 ―

Fig. 3 EŠect of applied induction current density on melt ‰ow and temperature ˆelds for zero gravity conditions (a) and for 1g conditions (b) (ve=v0=3 MHz, t=2.0). 45 ― 261 ― 日本マイクログラビティ応用学会誌 Vol. 19 No. 4 2002 る.これは,融液の下部は密度安定成層となって浮力が発 生しないのに対し,上部は不安定成層となって浮力対流が 発生し,上部で発生した対流が下部まで影響しているため と考えられる.このような流れ場の影響で,融液表面に発 生する最高温度の位置は融液中央より上部へ移動してい る.マランゴニ力と浮力が同時に働く場合には,純粋なマ ランゴニ力によって駆動される場合とほぼ同様に,上下に 2 つの対流セルが発生するが,上部に発生する対流セルは 純粋なマランゴニ力のみの場合よりも浮力によって加速さ れるためやや強い流れ場となり,下部に発生する対流セル は反対に純粋なマランゴニ力のみの場合よりも浮力によっ て安定化されるためやや弱い流れ場となっている.結果と して上下 2 つの対流セルを分離する位置が系の対称位置 z =10よりやや下方に位置している.これらの結果から,半 径 Rs=5×10-3m のシリコン材料を用いる地上実験では 浮力の影響が加わるため完全に上下対称の対流セルを発生 させることはできないが,対象とする系が比較的小さいた め浮力の影響は小さいと考えられる. 次に,融液内に発生する自然対流に高周波磁場を印加し た場合を考える.ここでは,前報9)で取り扱った高周波加 熱に必要な印加電流密度 J0=4.31×108A/m2および印加 周波数 v0=1.88×107rad/s(3 MHz)を基準とし,これ らの値を種々変化させた.Fig. 3 に印加周波数を ve=v0 とし,印加電流密度を種々変化させた場合の流れ場・温度 場を,無重力環境および地上環境で高周波磁場を印加した 場合を比較して示す.計算は非定常計算を行ったため,無 次元時間 t=2.0(実時間で約180 s 後)の結果を示してい る.無重力実験と地上実験とを比較すると,3 MHz の高 周波磁場を印加した場合には,印加電流密度が(1/2)J0 の場合を除き,先に述べた自然対流のみを考慮した場合と 同様に,地上実験では浮力の影響により上部にやや強い対 流セルが発生し,下部に発生する対流セルがやや弱くなっ ているというほぼ同様の結果が得られた.印加する高周波 磁場の影響を詳細に観察すると,印加電流密度が(1/8) J0では,無重力実験と地上実験のいずれの場合もほとん ど高周波磁場の影響を受けず,ほぼ自然対流のみの場合と 同じ結果になっている.印加電流密度を増加させてゆき (1/4)J0に達すると,高周波磁場の影響が顕著に現れる ようになる.すなわち,自由表面近傍では表面張力に起因 した対流が発生するが,その対流セルは表面近傍に限定さ れ,融液の中心部には表面近傍に形成される対流セルと逆 向きに高周波磁場によって駆動される流れ場が発生し始め る.さらに印加電流密度を増加させ,(1/3)J0に達する と,自由表面近傍に発生していた表面張力に起因する対流 がほぼ完全に抑制されている.一方,さらに印加電流密度 を増加させ,(1/2)J0に達すると,表面張力に起因する 対流はほぼ完全に消滅し,高周波磁場によって駆動される 対流が顕著となる.これらの結果は,高周波磁場による対 流制御では,誘導コイルに印加する電流を変化させること により,自然対流の抑制効果および逆向きではあるが対流 の促進効果の両効果を得ることが可能であることを示唆し ており,高周波磁場による対流制御が有効であることを示 している.なお,印加電流密度が(1/3)J0までは,無重 力実験と地上実験共に,流れ場・温度場がほぼ上下対称と 同じ結果になっているのに対し,(1/2)J0では,地上実 験においては上下対称から大きく外れている.これは,高

(5)

46 ― 262 ―

Fig. 4 Time development of stream function and temperature in the melt for various applied induction current density under 1g condi-tions (ve=v0=3 MHz, r=0.5, z=9.025007).

Fig. 5 EŠect of applied induction current frequency on melt ‰ow and temperature ˆelds for ve=(1/3)v0=1 MHz (a) and ve=(1/30)

v0=100 kHz (b) under 1 g conditions (t=2.0). 46 日本マイクログラビティ応用学会誌 Vol. 19 No. 4 2002 ― 262 ― 周波磁場によって駆動される対流が顕著となるものの,浮 力の影響で密度安定成層を攪拌できる程度の強い対流を下 部に誘起できなかったためと考えられる.これらの結果か ら,地上実験を想定すると,対象とする系が小さい場合に は,浮力の影響で無重力実験とは若干対流構造が変化する ものの,その影響は小さく,地上実験においても十分に高 周波磁場による対流の制御性を確認できるものと考えられ る.印加周波数が 3 MHz の場合の融液内での温度および 流れ関数の時間変化を Fig. 4 に示すが,計算開始直後の 初期には大きく変化するが,t=0.02以降(印加電流密度 が(1/2)J0の場合は t=0.07以降)では,定常状態になっ て変化していないことがわかる.したがって,ここで得ら れた結果は定常状態での流れ場・温度場を示している. 高周波磁場による対流制御では,操作パラメータとし て,印加電流以外に印加周波数の影響も調べる必要がある. Fig. 5 に印加周波数が1 MHz,100 kHz と変化させた場 合の流れ場・温度場の結果を示す.3 MHz の場合と同様 に t=2.0における結果である.印加周波数が低周波になる に従い,高周波磁場が浸透する代表長さである表皮厚さが 増大するため,同一の印加電流密度であっても高周波磁場 の影響がより顕著に現れるようになっている.すなわち, 印加周波数が 1 MHz の場合においては,3 MHz の場合に は印加電流密度が(1/8)J0まではほとんどその影響を流 れ場・温度場に与えなかったのに対し,1 MHz の場合に は同じ(1/8)J0という印加電流密度であっても 3 MHz, (1/4)J0の場合と同程度の効果が現れている.また,1

(6)

47 ― 263 ―

Fig. 6 Time development of stream function and temperature in the melt for various applied induction current density for ve=(1/3)v0

=1 MHz (a) and ve=(1/30)v0=100 kHz (b) under 1 g conditions (r=0.5, z=9.025007).

47 ― 263 ― 日本マイクログラビティ応用学会誌 Vol. 19 No. 4 2002 MHz,(1/4)J0では 3 MHz,(1/3)J0と同程度の効果が 現れ,自由表面近傍に発生していた表面張力に起因する対 流がほぼ完全に抑制されている.さらに印加電流密度を増 大させていくと(1/3)J0で,対流の構造は異なるが,3 MHz,(1/2)J0の場合と同様に上下非対称となり,(1/2) J0では,高周波磁場による強制対流が支配的となり,完 全に上下対称な対流構造となっている.さらに印加周波数 を下げ,印加周波数が100 kHz の場合には,より少ない印 加電流密度で自由表面近傍に発生していた表面張力に起因 する対流を完全に抑制することができるようになるが,こ の場合には,融液内部に発生する高周波磁場に起因した対 流の強度が大きくなっており,対流を完全に抑制すること が難しくなっている.また,印加電流密度が(1/3)J0以 上では,高周波磁場による強制対流が支配的となり,完全 に上下対称な対流構造となっている.すなわち,印加周波 数が低い100 kHz の場合には,対流促進は容易にできるが 対流抑制は難しいことを示している.なお,印加周波数が 1 MHz および100 kHz の場合の融液内部での温度および 流れ関数の時間変化を Fig. 6 に示す.これらの図から明 らかなように,地上実験を想定し,浮力の効果を取り入れ た場合には,印加周波数が低いと,3 MHz の場合に得ら れたような定常状態とはならず,流れ場・温度場共に時間 的に変動していることがわかる.宇宙実験を想定し,純粋 なマランゴニ対流に対する高周波磁場の影響を考えた前報 の結果10)では,このような比較的低周波であっても定常解 が得られたことを考えると,融液内に発生する 1 対の対流 セルを駆動する力が浮力の影響で上下対称とならないため に対流セルの構造が不安定化したためと考えられる.した がって,比較的低周波の高周波磁場を印加した場合には, 浮力の影響が顕在化してくるため,地上実験では注意する 必要があることを示唆している. これらの結果から,より高周波側の磁場を印加した場合 には印加電流を比較的大きくしないと対流促進は困難とい う面もあるが,対流の促進・抑制といった制御性の面で は,より高周波側の磁場の方が適していると考えられる. なお,宇宙において融液内の濃度分布を解消するために混 合を促進しなければならない場合のように,対流抑制効果 を必要としない場合には,低周波側の印加周波数を選択し た方が,必要とする印加電流も少なくてすむため適してい ると考えられる.特に,一般の高周波電源は,500 kHz 程 度まではサイリスタ式で比較的コンパクトになっているの に対し,MHz オーダーになると真空管式となって大型化 するため,宇宙実験を想定した場合には500 kHz 以下の高 周波磁場による対流制御手法を詳細に検討する必要があ る.また,計算に用いた仮定についても妥当かどうか,実 験により確認する必要がある.

(7)

48 ― 264 ― 48 日本マイクログラビティ応用学会誌 Vol. 19 No. 4 2002 ― 264 ― . ま と め FZ 法シリコン融液内に発生する自然対流の高周波磁場 による制御に関し,地上実験を想定し,浮力の効果を取り 入れた場合の数値解析を行い,以下の結果が得られた.  高周波磁場による対流制御手法は,浮力の影響が追 加される地上実験においても適用可能である.ただし,対 象とする系が小さい場合には,浮力の影響は小さいが,印 加する高周波磁場の特殊な領域では,その影響が顕在化 し,対流構造の不安定化が発生する.  対流の促進・抑制といった制御性の面では,より高 周波側の印加磁場が適している.  対流促進だけを考える場合には,印加する高周波電 源の容量が小さくてすむ比較的低周波側の印加磁場が適し ている. 参 考 文 献

1) D. T. J. Hurle and R. W. Series: Handbook of Crystal Growth 2a, ed. by D. T. J. Hurle, Chap. 5, p. 259 Elsevier Science, Am-sterdam, 1994.

2) M. Salk, M. Fiederle, K. W. Benz, A. S. Senchenkov, A. V. Egorov and D. G. Matioukhin: J. Crystal Growth, 138 (1994) 161.

3) M. Watanabe, M. Eguchi, W. Wang, T. Hibiya and S. Kuragaki: J. Crystal Growth, 237239 (2002) 1657.

4) 莇 丈史,中村 新,日比谷孟俊日本マイクログラビテ ィ応用学会誌,18 (2001) 16.

5) 木下恭一日本マイクログラビティ応用学会誌,19 (2002) 42.

6) A. M äuhlbauer, W. Erdmann and W. Keller: J. Crystal Growth, 64 (1983) 529.

7) G. Ratnieks, A. Muiznieks, A. Muhlbauer and G. Raming: J. Crystal Growth, 230 (2001) 48.

8) R. Hermann, J. Priede, G. Behr, G. Gerbeth and L. Schultz: J. Crystal Growth, 223 (2001) 577.

9) T. Munakata and I. Tanasawa: J. Crystal Growth, 206 (1999) 27.

10) T. Munakata, S. Someya and I. Tanasawa: J. Crystal Growth, 235 (2002) 167.

11) T. Kawamura and K. Kuwahara: AIAA Paper, 840340 (1984) 9.

12) G. M äuller and A. Ostrogorsky: Handbook of Crystal Growth 2b, ed. by D. T. J. Hurle, Chap. 13, p. 812 Elsevier Science, Am-sterdam, 1994.

13) 熱物性ハンドブック,日本熱物性学会編,C.5 エレクトロ ニクス,p. 231 養賢堂,1990.

14) Lev I. Berger: Semiconductor Materials, Chap. 3, p. 65 CRC Press, Boca Raton, 1997.

Table 1 Physical Properties of silicon C p =1.0×10 3 J/kg ・ K a=2.65×10 -5 m 2 /s b T =1.4×10 -4 l/K e=0.3 l=67.0 W/m ・ K m=7.59×10 -4 kg/m ・ s m e =1.2566×10 -6 H/m n=3.0×10 -7 m 2 /sUm=1680 Kr0=2530 kg/m3se=1.2×106S/m (liquid)5.0×104S/m(solid)sT=1.0×10-4
Fig. 3 EŠect of applied induction current density on melt ‰ow and temperature ˆelds for zero gravity conditions (a) and for 1g conditions (b) (v e =v 0 =3 MHz, t=2.0)
Fig. 5 EŠect of applied induction current frequency on melt ‰ow and temperature ˆelds for v e =(1/3)v 0 =1 MHz (a) and v e =(1/30) v 0 =100 kHz (b) under 1 g conditions (t=2.0)
Fig. 6 Time development of stream function and temperature in the melt for various applied induction current density for v e =(1/3)v 0

参照

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