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<論文>韓 EU FTA の貿易動向と投資分析

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(1)商経学叢 第61巻第1号 2014年7月 韓 EU FTA の貿易動向と投資分析(李). 韓 EU FTA の貿易動向と投資分析 李. 兌. 賢. 概要 最近,TTIP や TPP などの新しい通商政策への見直しを迫られている状況ではある が,韓 EU FTA は締結後3年目を迎えることになり,その関税障壁の撤廃は進んでいる。 韓国では,韓 EU FTA による EU への輸出拡大に期待が高まっていたが,FTA 発効以降, 韓国の対 EU 輸出は増大せず,黒字基調だった貿易収支は縮小している。本稿では,韓 EU FTA 発効以降の効果と対 EU 輸出を減少させている要因を焦点として検討する。 キーワード 韓 EU FTA,対 EU 貿易,対 EU 投資 原稿提出日 2014年4月22日 掲載承認日 2014年5月28日. Abstract New commerce policies such as TTIP and TPP are reviewed recently, Korea-EU FTA was the third year after the conclusion, and the duty abolition effect appears recently. In Korea, expectation was sublimed about export expansion to EU by Korea-EU FTA, after the FTA effect, the export to EU does not increase, and the balance of trade which was surplus reduces. In this report, I examine the factors decreasing the export to EU after Korea-EU FTA effect as a focus. Key words Korea-EU FTA,The EU Trade,The EU Investment. 183( ) 183 ─ ─ .

(2) 第61巻 第1号. は じ め に. 近年,各国の利害関係の複雑化により WTO(World Trade Organization) 交渉が停 滞する状況であるが,自由貿易化推進のための代表的手段として,世界全体で自由貿易協 定( FTA:Free Trade Agreement ,以下 FTA )の締結数は急増している。日本貿易 振興機構(2 012) によると,1 990 年以前に発効された FTA は世界全体でわずか1 6件で あったが,90年代の10年間に50件に増加し,2000年以降では150件を超え,2012年時点で, 発効済,署名済,交渉妥結,交渉中,交渉開始の合意など含めて,世界では3 98件の FTA が存在している。現在も多くの FTA が交渉中あるいは発効を待っている状況であり,今 後 FTA はさらに増えていくことが予想される。 天然資源に乏しいことから,貿易立国を目指して経済発展を遂げてきた韓国は 日本と 同様に2000年代以降 FTA 網を拡大している。韓国の貿易総額(輸出+輸入)に占める FTA 締結国・地域の割合は3 5.4%であり,交渉段階までを含めると82.3%(2012年基準) に達している。 米国や EU などの巨大市場と二国間 FTA を締結し,アジア地域のハブ として存在感を示してきた韓国の動向は, WTO 体制や東アジアの経済連携を考える時に は,無視できないものとなっている。なお,米国と EU との FTA である環大西洋貿易投 資連携協定(TTIP:Transatlantic Trade and Investment Partnership,以下 TTIP) の交渉開始などの通商政策を取り巻く環境変化を受けて, 環太平洋戦略的経済連携協定  2001年11月に開始された WTO のドーハ・ラウンド(多角的貿易交渉)は,2008年に妥結寸前 にまで至りながら,先進国と途上国の主張の隔たりを解消できず,2011年末,近い将来の妥結を 断念して,失速状態が続いている。交渉は農業,非農産品市場アクセス(NAMA: Non-Agricultural Market Access),サービス,貿易の円滑化,ルール(アンチ・ダンピング税など),知的財産権, 開発, 環境,紛争解決の9つの分野に分かれている。 現在1 59カ国・地域が交渉に参加している が,先進国と新興国・途上国の利害が対立し,これまでに何度も決裂している。2003年9月のカ ンクン閣僚会議は,農業問題とシンガポール・イシュー(貿易の円滑化,投資,競争,政府調達 の新分野)の扱いをめぐり激しく対立して決裂した。 その後,2006年7月に開催された米国, EU ,ブラジル,インド,オーストラリア,日本の6カ国による非公式閣僚会合(ジュネーブ) では,農業と NAMA を最優先とし,モダリティ(関税や補助金の削減方法)の合意を目指した が決裂して,交渉は凍結された(馬田啓一(2013) 「オバマの通商戦略に死角はないか:WTO と メガ FTA への対応」 『国際貿易と投資』,No.94, pp.7273)。  韓国の貿易の特徴は,輸出依存度(国内総生産に対する輸出額)が非常に高い(日本が13%, 米国が11%であるのに対して韓国は約5 0%)。 その結果, 経済の成長には輸出の拡大は不可欠で ある。  韓国は,2003年に「 FTA ロードマップ」を策定して同時多発的に主要国との交渉を開始し, チリ(2004年4月発効),シンガポール(2006年3月発効),EFTA(2006年9月発効),ASEAN (2007年6月:物品協定発効,2009年5月:サービス協定発効,2009年11月:投資協定発効),イ ンド(201 0年1月発効),EU(2011年7月発効),ペルー(2011年8月発効),米国(2012年3月 発効),トルコ(2013年5月発効),コロンビア(2013年2月正式署名)との FTA を発効してい る。. 184 ─ 184( ) ─ .

(3) 韓 EU FTA の貿易動向と投資分析(李)  に ( TPP:Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement ,以下 TPP ). 参加しないことによる不利益の回避などを考慮し,通商政策の見直しを迫られている環境 で,2011年7月に発効した, EU との FTA が2年半を迎えるため,韓 EU FTA の関税 撤廃の効果が見え始めている。しかし,韓国では,韓 EU FTA 締結による世界最大の単 一市場である EU への輸出拡大に期待が高まっていたが,実際には同時期における韓国の 対 EU 輸出は FTA 発効を機会にして増大せず,黒字基調だった貿易収支は FTA 発効以 降縮小している。 本稿では, 韓国が締結した FTA の中でも大規模な FTA である, 韓 EU FTA の発効 以降の2年半の貿易動向を分析する。同 FTA が今後どのような影響を締結国および非締 結国に及ぼすのかが不明瞭であり,その効果を分析する意義があると考える。ここでは, 長期データではないが,欧州統計局(Eurostat)の統計データおよび韓国貿易協会の資料 を用いて,韓 EU FTA の効果について分析する。 なお,本稿の構成は以下の通りである。Ⅰでは,韓 EU FTA について概観する。Ⅱで は,対 EU 貿易の全体的な動向について分析する。Ⅲでは,輸出減少と輸入増加の要因に ついて分析する。Ⅳでは,韓 EU FTA 発効以降の投資の動向について考察する。おわり において,韓 EU FTA の評価と課題についてまとめる。. Ⅰ 韓 EU FTA の概観. 1 韓 EU FTA の概要 韓 EU FTA は貿易拡大を狙う実利型 FTA で, その影響は韓米 FTA を上回ると考え られており,韓米 FTA の交渉時のような強い反発がほとんどなかったことが特徴として 挙げられる。韓米 FTA の進展が交渉開始を後押しし,2007年5月に交渉が始まってから,.  TPP( P4 協定)はブルネイ,チリ,ニュージーランド,シンガポールの4カ国が結んだ地域 的自由貿易協定である。この協定は,APEC の内部における英米系の加盟国がアジア金融危機 後,東アジアを軸として結束を強めようとして締結された,ASEAN +3( ASEAN +中国,日 本,韓国)への対抗の動きがその底流にあったともいえる。まず, ニュージーランドとシンガ ポールが2001年にシンガポール・ニュージーランド経済緊密化協定( Singapore New Zealand Closer Economic Partnership Agreement)を成立させた。TPP は,この自由貿易協定を基軸 としているが,そこにチリが加わり,さらにブルネイが参加することで,2 006年1月に P4 協定 として発足することとなった。米国は,クリントン政権期から,この地域での自由貿易協定に積 極的だったが,P4 協定の成立を受けて,ブッシュ政権は,2008年2月に TPP 交渉に参加を表明 し,特に,交渉作業部会のサービス(金融)と投資についての議論に参加した。その後オバマ政 権は TPP への参加を表明し,新しい貿易協定を目指した(ジェーン・ケルシー(2011) 『異常な 契約―TPP の仮面を剥ぐ』農文協) 。. 185( ) 185 ─ ─ .

(4) 第61巻 第1号. 交渉は経済的実利を重視しながら着実に進められ,20 11年7月に発効した。 韓 EU FTA が持つ経済的な意義は,韓国がこれまでに締結した FTA の中でも最も大きい経済圏との 締結であり,すでに締結した米国と並んで韓国の FTA 戦略の1つである巨大経済圏との FTA 戦略で,韓米 FTA 以上の経済効果を生むものと期待されていた。また,韓 EU FTA は韓米 FTA と並んで高い開放水準を有することが特徴である。EU 側は5年間で 工業製品の関税を全廃し,韓国側も7年間で同様の関税全廃に踏み切るなど,韓米 FTA に次ぐ高い開放率を受け入れた。 韓国にとっては, 中国に次いで第2位の輸出先である EU の関税が5年以内に撤廃されることになる。特に,韓国側は EU が先進国としては2 ケタを超える比較的高い関税を維持していた電気・電子機器(最大14%),乗用車(10%) などを, EU 側は自動車(8%)や産業用機械(5~8%)などを交渉の主な品目として いた。 EU にとっては, アジアとの最初の FTA であるというだけでなく,2 006年の新通商戦  での,初 略「グローバル ・ヨーロッパ( Global Europe: Competing in the World ) 」. の包括的かつ高度な FTA として,象徴的な意義を有する。これまでの EU の FTA に比 べて関税撤廃のカバー率が格段に高いほか,知的財産権,サービス,政府調達,競争,持 続可能な開発など包括的かつ高度な内容の規定を盛り込んでいる。 国際通貨基金( IMF:International Monetary Fund )の推計によると,今後数年間 に世界全体の需要の90%は EU 域外で創出されると推測されている。このような現状こそ  EU 域内の総人口は5億人を超え,経済規模(名目 GDP,2012年)は約16.7兆米ドルと単一国 家で世界最大の米国を上回る規模である。  韓米 FTA と韓 EU FTA では関税の完全撤廃には至ってないが,両 FTA はともに98%を超 える高い自由化率(10年以内に関税撤廃される品目の全品目に対する割合)を実現している。韓 EU FTA の関税に関する締結条件はほぼ韓米 FTA に準じていると評価されている( Cooper, W. H., R. Jurenas, M. D. Platzer and M. E. Manyin(2 011)“ The EU-South Korea Free Trade Agreement and Its Implications for the United States ”, Congressional Research Service, December 1, 2011, p.14)。  EU 側の自動車関税率は10%,貨物自動車は10%~22%である。これらは,即時,3年,5年 の段階を経て撤廃される。交換条件として,韓国側も EU から輸入される自動車にかかる8%~ 10%の関税を5年以内に撤廃する。 完成車に加えて, 高い輸出効果が期待された自動車部品は EU 側に2.5~14%,韓国側に8%の関税が即時撤廃される。  2006年の EU 通商戦略「グローバル・ヨーロッパ」は,中国やインド,ブラジル,ロシアなど 新興国の台頭による経済のグローバル化の進展に伴い,通商政策への取り組みを見直したもので あった。欧州経済の国際競争力の強化を目指し,具体的な行動計画として世界貿易機関(WTO) のドーハ開発アジェンダによる多国間交渉を進める一方で,アジアを中心に FTA 締結に向けた 交渉推進を明確に打ち出した。この戦略では,関税だけではなく,非関税障壁,政府調達やサー ビス,投資,資源やエネルギーへのアクセス,知的財産権,競争政策,衛生,持続可能な開発と いった伝統的には FTA の対象外だった分野も重視する姿勢を採用した。また,欧州委員会は2010 年11月に,新たな通商政策「 EU の2020戦略の中核要素としての通商政策」を発表した。これは 2010年3月の欧州理事会(EU 首脳会議)で合意した EU の新中期成長戦略である「欧州2 020」 の一環として提示された。2006年に発表した通商戦略に代わるもので,日本を含む戦略的パート ナーとの関係について,FTA を視野に入れた関係の強化を打ち出している。. 186 ─ 186( ) ─ .

(5) 韓 EU FTA の貿易動向と投資分析(李). が,EU の域内企業がより開かれた市場機会を得るために,FTA 交渉を進める主たる理由 である。また,各国,地域との通商および投資の拡大は,EU 経済を再活性化させるため には, 欠かせない条件である。 現在交渉中の FTA がすべてまとまるとすると,EU の GDP は2.2%増加し,金額ベースでは2,750億ユーロと予測されている。これはオーストリ ア,あるいはデンマークのような規模の国が EU 経済に加わることと同じ効果を見込める。 2009年10月5日にギリシャで発生した,債務危機からの回復過程にあり,低成長と緊縮財 政が続く EU にとって FTA は経済活性化の新たな手段の1つとして重要性が増している。 この数年の厳しい経済状況が注目されているとはいえ, EU は依然として世界最大の地域 である。FTA などの通商政策は EU の経済成長のための重要な政策であり, これを実現 するために,EU はさまざまな貿易自由化交渉に取り組んでいる。. 2 交渉の経緯 韓国政府は,2003年8月に「FTA ロードマップ」を発表し,FTA を通じた輸出市場の 獲得,国際的に躍進する韓国企業のビジネス環境の改善などを目的に,対象国としては, 巨大市場である先進国・地域,成長が見込まれる新興国を優先して,製品分野にとどまら ず,サービス,投資,政府調達など包括的な分野で, 「同時多発的」な FTA 交渉を推進し てきた。 一方,EU は,2 006年10月に「新通商戦略」を発表した後,対外政策については,関税 障壁の削減,資源へのアクセスの確保,貿易における新成長分野の強化を基本目標として 掲げ,FTA を通じて,EU 企業のための市場開拓や公正な競争条件の確保を目指す方針を 示した。 さらに, FTA 交渉を優先すべき国・地域として,市場の成長性や保護の水準な どを考慮して,アジアでは ASEAN,韓国,インドをあげている。 しかし,韓国との FTA については,2 007年5月に交渉を開始したが,韓国の工業製品 や農産物の関税譲許,自動車の安全・環境基準,サービスなどで調整が難航し,当初目標 としていた2007年内の締結から大きく遅れたが,2007年6月の韓米 FTA の交渉の再開に より,韓国に進出している EU 企業が米国企業との競争上で不利になるとの懸念の強まり などが後押しし,交渉開始から2年2カ月で妥結され,201 1年7月に発効した。.  EU MAG(Europe magazine)ホームページ:http://eumag.jp/feature/b1113。. 187( ) 187 ─ ─ .

(6) 第61巻 第1号. 3 事前に予測された効果 韓 EU FTA におけるマクロ経済効果の分析として,韓 EU FTA による EU と韓国に 対する定量的な影響については, 欧州委員会による委託調査, 韓国主要研究機関 によ る調査などがある。韓国の主要研究機関の調査によれば,韓国の経済に対し GDP を0.1% (中長期には5.62%)押上げる効果があると推測している。特に,自動車産業や電気・電子 機器産業へのメリットが大きい。逆に,農水産品についてはマイナスの影響が想定され, 構造調整が必要となる。 EU にとっては,韓国市場で優位にある豚肉,ウィスキー,乳製品などの農産品や競争 力のあるサービスでの利益を見込んでいる。また,今回の FTA で初めて非関税障壁に関 するルールを取り入れたことへの期待は大きかった。 欧州委員会の調査によれば,FTA により EU の物品・サービス輸出は191億ユーロ拡大する。これは,韓国の128億ユーロよ り大きい。さらに,この調査は非関税障壁の削減効果を織りこんでいないが,非関税障壁 の削減効果を織り込んだ2010年5月の調査によれば,EU の対韓輸出は330~410億ユーロ 増加し,韓国の対 EU 輸出は340億ユーロ増加する。韓国と EU の二国 ・地域間貿易は, 20年後には,FTA が締結してない場合に比べて,2倍以上に拡大すると推定されている。 また,品目を自動車に限定した場合には,イタリア産業協会( ANFIA )によれば,韓 EU FTA 発効時に,韓国の自動車輸出は1 30%増加する一方,ヨーロッパ自動車産業は50 億ユーロの赤字に陥ると予測しており,このため,イタリアの自動車産業の雇用人数では 3万人,関連産業雇用人数では15万人が減少すると分析した。ルーマニアも,主力産業で ある自動車産業の被害を懸念しており, 韓 EU FTA に対して全体としては否定的な反応 を示している。 貿易立国を掲げる韓国が対 EU FTA に大きく期待したことは EU での  EU 側の韓 EU FTA の影響の定量分析には,2 007年3月のコペンハーゲンエコノミクスによ る経済影響調査報告書,2008年6月の持続可能性影響調査最終報告書( Trade Sustainability Impact Assessment of the EU-Korea FTA)およびそれを補完する2010年5月の CEPII によ る経済影響調査報告書(妥結した FTA の約束,非関税障壁の影響を反映)がある。また定性分 析については,欧州委員会の委託を受けて, 欧州政策研究所( CEPS )と対外経済政策研究院 (KIEP)が2 007年に共同で実施した調査がある。 ( http://trade.ec.europa.eu/docs/2010/mav/tradoc1 46174.pdf , http://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000396/eurotrand201010R4.pdf) 。  韓国貿易協会,対外経済研究院,産業通商資源部,関税庁など。  自動車の場合,リーマン・ショックを受けて一部の国で導入された新車買い替え補助金(スク ラップ・インセンティブ)が下支えしたものの,2009年から2010年にかけて新車の新規登録は減 少した。同制度の打ち切りに加え,欧州債務危機の影響もあって2011年も減退,2012年も景気の 低迷から乗用車の新規登録台数は前年比8.4%減少と大幅に落ち込んだ。2013年に入っても欧州全 体で低迷が続いていたが,11月の乗用車新規登録台数において,EU では,前年同期比1.2%増加 となり回復の傾向がみられる。なお,欧州5大市場(ドイツ,英国,フランス,イタリア,スペ イン)をみると,英国が7.0%増加となったほか,スペインで1 5.1%増加と大幅な改善がみられて いる(ジェトロ「欧州債務危機をめぐる動き」,p.8)。. 188( ) 188 ─ ─ .

(7) 韓 EU FTA の貿易動向と投資分析(李). 輸出拡大だったが,実際には対 EU 輸出は FTA 発効を機会にして増大せず,順調に拡大 していた貿易収支は,FTA 発効後縮小している。EU 向け輸出額の減少が最も大きいのが 船舶で,これは EU での債務危機の直撃を受けたものである。 2008年以降, EU 加盟国に広かった債務危機 により単一通貨を共有するユーロ圏では 国境を越えた大規模な経済活動が行われているにもかかわらず, EU としての統一した経 済政策が不十分で,金融や財政の行き詰まりに対する適切な対処が困難であることが露呈 した。このことが金融不安を拡大し, ユーロは大きく下落し(図1),景気は後退し,回 復までに長期間を要した大きな原因となった。. 図1 ユーロの対ドル為替レートの推移. (出所)http://www.datastream.jp/product/worldscope/. 2011年に債務危機が深刻化したユーロ圏の経済は,2012年には金融市場の安定を取り戻 しているが, 各国の緊縮財政は財政赤字の縮小につながり,域内での需要は長期にわた り低迷し, 長引く雇用環境の悪化で  経済が低迷し, ユーロ圏の GDP は縮小している (図2)。.  リーマン・ショック(2008年)を機に発生した金融危機は,その後ヨーロッパを舞台に移し, ユーロ危機という形で広がり,2009年(10月)のギリシャの政権交代により,財政赤字の粉飾が 明るみに出ると,ソブリン(国家・国債)危機が勃発した。2011年(5月)に,ギリシャへの第 1次支援策が決まったものの,7~8月に再びギリシャで国債利回りの急騰が始まると危機はス ペイン,イタリアの EU の加盟国にまで波及し,ユーロ圏でソブリン危機が全面化した。  http://eumag.jp/feature/b1112/  2012年7月の ECB ドラギ総裁発言「ECB は権限の範囲内で,ユーロを救うためにできること は何でもする」や,同年9月の新国債購入プログラム(OMT: Outright Monetary Transactions) の導入の発表などを契機にして,ユーロ圏の金融市場は落ち着きを取り戻している。  ユーロ圏の失業率は,2 012年4月に1 1.1%とユーロ導入以来最悪の水準を記録したが, その後 も悪化が続いており,2013年2月には12.0%を記録している。国別に見ると,ギリシャ(27.2%: 2013年1月時点)とスペイン(26.7%:2013年3月時点)では2011年以降悪化している。  2013年の実質 GDP 成長率は EU 28カ国で0.0%と0.1%ポイント上方修正し,ユーロ圏17カ国. 189( ) 189 ─ ─ .

(8) 第61巻 第1号 図2 ユーロ圏の実質 GDP 成長率. (出所)欧州連合統計局。. なお,2009年10月に,大幅な財政赤字の隠蔽が発覚して,国際市場からの信用を失った ギリシャ をきっかけに,ギリシャとともに厳しい財政状態にあったアイルランド・イタ リア・ポルトガル・スペイン( GIIPS 諸国)にも債務不履行の懸念が伝播した。GIIPS 諸国は,財政 のみならず,経常収支の赤字もかかえている。 でマイナス0.4%となった。GDP 成長率(前年比)を国別にみると(2 013年3四半期基準)ルー マニアが1.6%を記録し,顕著な成長を示した。2014年1月からユーロを導入したラトビア(1.2%), ハンガリー(0.8%),英国(0.8%),ポーランド(0.6%),ブルガリア(0.5%)で,ユーロ圏で は, エストニア(0.4%), フィンランド(0.4%)と好調で, これにベルギー(0.3%), ドイツ (0.3%)が続いた。ドイツでは,輸出が第2四半期に比べて鈍化したが,企業の投資活動が活発 で,内需が経済の下支えとなっている(ジェトロ「欧州債務危機をめぐる動き」,pp.34)。  ギリシャで債務危機が発生した最大の原因は,2009年10月にギリシャ政府が EU に報告してい る財政統計の粉飾が露呈し,しかも上方修正幅が他国ではほとんど見られないほど大きなもので あることから,ギリシャ政府に対する信用が著しく損なわれたことにある。欧州委員会・統計局 (ユーロスタット)は,以前からギリシャの財政赤字(対 GDP)の目標値と実績値の乖離が平均 3%(2004年 ~2008年)に達していることを問題視して,同国に対して是正措置をとるよう勧告 してきたが,全く無視されてきたことが明らかとなった。この財政統計のズレは主として政府に よる国営企業に対する債務保証,民間納入企業への未払い分,銀行への金利スワップ支払いなど が盛り込まれずに,過少報告されていたものを追加したために生じた。  ギリシャ政府は,19%だった付加価値税の標準税率を2010年の3月と7月に各々21%,23%に 引き上げた上,公務員給与の削減を進めるなど財政緊縮策に取り組んできた。このため,財政赤 字は対 GDP 比1 5.6%(2009年)から2 011年には9.1%に低下した(欧州委員会「2012年春季経済 予測」)。  これはユーロが単一通貨であるために,ユニットレーバーコスト(ULC: Unit Labor Cost) が高い(=労働生産性の低い)国は割高なコストを為替相場の下落で調整できず,国際競争力が 低下することに起因している。グローバル金融危機後の景気低迷の中で,賃下げ・構造改革など 各国の調整努力によってユニットレーバーコストの格差は縮小した。特に,ギリシャのコストは 大きく低下し,2013年では,実効相場でみた,1999年からの変化率はドイツに四敵するに至って. 190( ) 190 ─ ─ .

(9) 韓 EU FTA の貿易動向と投資分析(李). 2011年のギリシャ経済は,急激な内需の冷え込みを背景に,実質 GDP 成長率はマイナ ス6.9%, 失業率は17.7%と記録的な高水準で推移しており,個人消費も前年比マイナス 7.1%と大幅な落ち込みとなった。 なお, 内需減退の中,輸入もマイナス8.1%と大幅に減 少し,輸出はマイナス0.3%落ち込んでいる。 アイルランドは2 009年から黒字に転化し,イタリア, スペイン, ポルトガルも2 013年 上期には赤字はほぼゼロに近づいている。一方,ドイツの黒字は高水準ながら, GDP で 比べで見れば横ばいであり,ユーロ圏内の対外不均衡も縮小傾向にある。このようなユー ロ圏の経常赤字国の赤字の縮小を受け,2012年後半以降ユーロ為替相場は上昇傾向で推移 している。 ユーロ圏の輸出(対域外)は,リーマン・ショック以降,ユーロ安の進行による輸出競 争力の向上や中国等の新興国の需要に支えられ,2009年を底に大幅に回復し,2011年には 世界経済危機以前のピークを大きく上回る水準に達した(EU 域外向け10.1%増加)。同年 の貿易は,輸出が160億1,480万ユーロで前年比9.4%増加し,ユーロ安の追い風で EU 域内 向けは10.1%増加(EU 向けも9.0%増加,輸入は318億8,820万ユーロと前年比13.2%減少) した。しかし,2011年秋に伸びが鈍化し,2012年秋には,新興国における景気の減速や 米国の生産活動の低迷を背景に減少した。一方で,景気の低迷や重債務国を中心にして, ユーロ圏の主要国で緊縮政策が実施されていることによる内需の減少を受け,貿易黒字は 拡大した。. いる。このようなコスト低下を反映した競争力回復に,内需の低迷による輸入の減少も加わり, 各国の経常収支の赤字の縮小が進んでいる。  2011年のアイルランドの経済は,内需の冷え込みは続いたものの,順調な外需に支えられ,実 質 GDP 成長率は0.7%とリーマン・ショック以降,3年続いたマイナス成長から脱却した。アイ ルランドは6行あった主要銀行をすべて国有化した上で,アングロ・アイリッシュ銀行など経営 状態の悪い銀行を整理・清算するなど, 金融再編に取り組んだため,2010年には財政赤字が対 GDP 比で31.2%と急激に悪化した。2011年の同比率は13.1%と減少傾向にあるものの,GIIPS 諸 国の中でも最悪の水準にある。こうした状況から,2011年も個人消費はマイナス10.6%と厳しい 状態が続いたが,歴史的にビジネス関係の深い米国の景気回復を機に輸出が着実に回復し,外需 が伸びたことが,アイルアンド経済の緩やかな回復を牽引した。貿易(アイルランド中央統計局, 2011年基準)は,輸出が929億3,580万ユーロ(前年比4.2%増加)で,アイルランド最大の輸出相 手国である米国との輸出は,ユーロ安を背景に3.3%増加し,輸入は482億3,840万ユーロと5.4%増 加した(最大の輸入相手国は英国で13.0%急増)。貿易収支は446億9,740万ユーロと過去最大の黒 字となっている。  ただし,ギリシャは国際競争力をもった輸出産業が限られていることから,ユーロ安による輸 出拡大の機会を生かし切れていないとされる。  貿易収支は1 58億7,340万ユーロ(2011年基準)で, 輸出について国別に見ると, ドイツは自動 車と機械類に支えられ,2009年以降,堅調に回復していたが,2011年後半から伸びが停滞してお り,2012年には数量ベースで前年比0.1%増加に留まっている。ギリシャは2010年後半から石油製 品が著しく伸びているほか,ポルトガルは中国やアフリカ向けの機械類と自動車等の伸びによっ て大きく拡大,更に,スペインも機械類や衣料品等の伸びによって回復傾向にある。他方,イタ リア,フランスおよびアイルアンドはユーロ圏外向けの伸びも低い。. 191( ) 191 ─ ─ .

(10) 第61巻 第1号. ユーロ安に加え,労働コストの低下を背景に価格競争力が向上した南ヨーロッパ諸国を はじめとして,各国はユーロ圏外向けの輸出割合を拡大しているが,輸出額の半分近くを 占めるユーロ圏の需要の減退 が輸出を抑制しており,ユーロ圏の景気の冷え込みの要因 となっている。. 表1 ドル/ウォン(USD/KRW)とユーロ/ウォン(EUR/KRW)の為替レートの推移 (単位:ウォン) 年度. 2005. USD/KRW 1,024.1. 2006. 2007. 2008. 2009. 2010. 2011. 2012. 2013. 954.8. 929.3 1,102.1 1,276.4 1,156.1 1,108.3 1,126.5 1,094.9. EUR/KRW 1,275.4 1,198.3 1,273.4 1,608.2 1,772.1 1,532.6 1,541.0 1,44 7.8 1,454.4 (出所)http://ecodb.net/tool/exchange.html より作成。. 図3 ユーロ圏の貿易収支推移. (出所)欧州連合統計局。. Ⅱ 対 EU 貿易の全体的な動向分析. 韓国の対 EU 輸出はリーマン・ショック直前に最高水準を記録した後,2011年から2013 年に大幅な減少を記録したのに対して,対 EU 輸入は継続して増加し,対 EU 貿易収支が  特にドイツ,フランス,イタリアといった主要国の輸出が減少している。. 192( ) 192 ─ ─ .

(11) 韓 EU FTA の貿易動向と投資分析(李). 2012年に赤字に転換した。2 004年以降,韓国の対 EU 貿易収支の黒字は毎年100億ドルを 大きく上回って黒字構造が維持されていたが,欧州の財政危機による景気低迷により,韓 EU FTA が発効したにもかかわらず,対 EU 輸出が大幅に減少した。2008年に584億ドル を記録した対 EU 輸出は,2009年には,リーマン・ショックにより,大幅な下落を記録し た。また,欧州の財政危機の余波で,EU の景気が後退し始めて,下落傾向に転換したた め,2 012年494億ドルに縮小した。一方,2008年の400億ドル水準だった対 EU 輸入は,グ ローバル金融危機後に減少して,322億ドルを記録した後,継続して増加し,2012年に504 億ドルまで増加した。 また,2 007年191億ドルに達した対 EU 貿易収支の黒字は,2 010年以降,急速に減少す る傾向を示し,2 012年に10億ドルの赤字を記録した。2013年1月から6月の間でも対 EU 貿易収支は2 5.6億ドルの赤字を記録した。対 EU 貿易収支の赤字は1997年以降では,初め てであり,同じ期間に韓 EU FTA が発効(2011年7月)したが,期待を裏切る結果となっ た。. 図4 韓国の対 EU 貿易推移(単位:1億ドル). (注)2013年輸出入データは1月~6月までのデータを使用して作成。 (出所)韓国貿易協会。.  EU から韓国への輸出は,2011年の325億ユーロから2012年378億ユーロへ16.2%増加した。同 時に韓国からの EU への輸入の伸びはそれより小さく2011年の362億ユーロが2012年には379億 ユーロとなり,4.7%増加となっている。その結果,2013年第1四半期において15年ぶりに EU が韓国に対して貿易黒字を計上した。さらに,韓国の輸入全体に占める EU の割合が着実に増加 し,2011年の9%から2012年の9.7%へと,中国,日本,米国からの輸入をしのぐ伸びを示した。 EU からの輸出で,韓 EU FTA により最も顕著な増加を示した品目は北海原油, 機械類および 自動車と自動車部品である。 (http://europa.eu/rapid/press-releas IP-13-626en.htm? locale=en) 。. 193( ) 193 ─ ─ .

(12) 第61巻 第1号 図5 韓国の対 EU 月別貿易収支の変化(単位:百万ドル). (出所)韓国貿易協会。. 韓国の対 EU 貿易は,大規模な西ヨーロッパの貿易赤字と東ヨーロッパの貿易黒字が固 定化されていることが特徴である。ドイツ,フランス,オランダ,イギリス,イタリア 5カ国( EU GDP の5 5%)との貿易が対 EU 総貿易の64%を占めており,東ヨーロッパ 10カ国との貿易は16%に過ぎない。西ヨーロッパとの貿易収支の赤字が大きい理由は,自 動車および自動車部品,機械装置等の設備の輸入が多いことにある。たとえば,ドイツな ど一部国との貿易収支赤字は対日本の貿易収支の赤字のような慢性的な特徴を伴って,増 加し続けている。 一方, 中央および東ヨーロッパとの貿易黒字は, 現地進出した韓国企 業の中間財輸出から始まっているため,事実上,韓国系協力業界との間の企業内貿易の形 態である場合が多く,東ヨーロッパの現地工場で生産され,西ヨーロッパに再輸出されて いる。結果として,2010年から2012年まで,ドイツ,英国,フランスなど西ヨーロッパと の貿易赤字が大幅に増加しており,一部の中央および東ヨーロッパの国との貿易収支黒字 の規模も縮小した。 なお,たとえば,ドイツとの貿易収支の赤字は徐々に拡大する様相を示し,2010年に36.0 億ドルだった貿易収支の赤字が2012年に101.4億ドルまで拡大した。また,イギリスとの貿 易収支は, 同期間に2 2.9億ドルの黒字から,14.7億ドルの赤字に転落した。 反面, スロベ ニア,スロバキア,チェコ共和国など,いくつかの中央および東ヨーロッパの国との貿易  2010年~2012年に,西ヨーロッパの貿易収支の赤字が大幅に増加しており,東ヨーロッパ諸国 との貿易収支の黒字規模はやや減少している。  韓国の対ドイツの貿易収支(1億ドル):+5.3(2005年),-19.9(2007年),-34.8(2009年), -74.6(2011年),-101.3(2012年),-50.9(2013年6月まで)。 . 194 ─ 194( ) ─ .

(13) 韓 EU FTA の貿易動向と投資分析(李). 収支の黒字規模は増加したが,ハンガリーとポーランドとの貿易収支の黒字規模はそれぞ れ13.0億ドルと9.7億ドル減少した。. 1 韓 EU FTA 発効以降の輸出入の推移についての分析 韓国の対 EU 輸出は,韓 EU FTA 発効以降,2年間で1 6.3%減少したが,これは同期 間における中国,ASEAN ,米国,日本への輸出が増加したこととは非常に対照的な様相 である。韓 EU FTA 発効1年目の対 EU 輸出は,FTA 発効にもかかわらず,71.0億ドル 減少し,それぞれ132.6億ドルと76.2億ドルの増加を記録した対ASEAN,対中国との輸出 とは対照的である。主要貿易相手国では,2年連続で輸出の減少を記録した国は,EU と インドであり,一部の中央および東ヨーロッパの国への輸出は増加したが,フランス,ド イツ,イタリアなどの輸出が激減した。 表2 韓国の西欧および中東欧主要国との輸出入額の推移 西欧 ドイツ. オランダ. イギリス. フランス 中東欧 スロバキア. ポーランド. チェコ. ハンガリー. 輸出入. 2008年. 2009年. 2010年. (単位:百万ドル). 2011年. 2012年. 輸 出. 10,523. 8,821. 10,702. 9,501. 7,510. 輸 入. 14,769. 12,298. 14,305. 16,963. 17,645. 輸 出. 6,406. 4,528. 5,306. 4,627. 5,059. 輸 入. 3,240. 2,060. 4,189. 4,426. 3,994. 輸 出. 5,936. 3,797. 5,555. 4,969. 4,897. 輸 入. 3,637. 2,896. 3,266. 3,818. 6,367. 輸 出. 3,496. 2,911. 3,004. 5,707. 2,599. 輸 入. 4,877. 4,006. 4,283. 6,315. 4,924. 輸出入. 2008年. 2009年. 2010年. 2011年. 2012年. 輸 出. 3,462. 3,137. 4,424. 4,103. 4,624. 輸 入. 81. 64. 100. 141. 170. 輸 出. 4,117. 4,147. 4,381. 4,101. 3,677. 輸 入. 307. 234. 274. 376. 535. 輸 出. 829. 771. 1,165. 1,713. 1,786. 輸 入. 395. 337. 329. 501. 572. 輸 出. 1,513. 1,704. 2,385. 1,476. 1,157. 輸 入. 361. 304. 401. 471. 475. (出所)韓国貿易協会。  韓 EU FTA 発効以降の2年間の輸出増減(1億ドル) :フランス(-26.7),ドイツ(-26.5), イタリア(-14.5),マルタ(-1 1.9),ポーランド(-6.5),スロベニア(+5.5),オランダ(+ 5.1),チェコ(+3.6),スロバキア(+1.0)。. 195( ) 195 ─ ─ .

(14) 第61巻 第1号. FTA 発効1年目の対 EU 輸出の減少(-1 2.3%)が総輸出の増加傾向(+7.3%)の中 で示された異例の現象であるのに対して,2年目には,輸出減少幅の緩和(-4.7%)は, 世界的な景気低迷の現象により,総輸出額が減少(-1.3%)する状況下で明らかになっ た。なお,韓 EU FTA 発効2年目である2 012年7月から2013年6月の間では,対 EU の 輸出は4.7%減少したが, 中国を除く大部分の主要国への輸出が大幅に減少し, 日本(- 8.8%),インド(-6.7%),MERCOSUR(-1 5.3%)への輸出の減少も目立っている(表 3)。 表3 韓 EU FTA 発効期間中主要国に関する輸出変化 輸出(1億ドル) 発効1年前 EU. 1年目. (単位:%). 変化率(%) 2年目. 発効1年目. 2年目. 2年累積. 578.9. 507.9. 484.3. -12.3. -4.7. -16.3. 中国. 1,255.6. 1,331.8. 1,405.1. 6.1. 5.5. 11.9. 日本. 343.3. 401.0. 365.7. 16.8. -8.8. 6.5. 米国. 541.5. 590.6. 591.4. 9.1. 0.1. 9.2. インド. 125.2. 124.6. 116.2. -0.5. -6.7. -7.2. ASEAN. 622.1. 754.7. 829.2. 21.3. 9.9. 33.3. MERCOSUR. 116.6. 127.7. 108.3. 9.5. -15.3. -7.2. 5,186.5. 5,566.0. 総輸出. 5,495.4 7.3 -1.3 6.0 (注)発効1年前:2 010年7月~ 2011年6月,1年目:2 011年7月~2012年6月, 2年目:2012年7 月~201 3年6月,2年累積:発効2年目間の輸出変化率(%)。 (出所)韓国貿易協会。. 一方,対 EU 輸入は,韓 EU FTA 発効以降の2年間に2 2.2%増加し,同期間の韓国の 総輸入増加率(6.8%)を大幅に上回った。対 EU 輸入は,FTA 発効1年目に1 3.1%に増 加したことに続き, 2年目も前年同期間比で8%増加した。 FTA 発効1年目の対 EU 輸 入の増加が総輸入の増加(10.5%)の状況下で現れた比較的自然な現象であるとみなせば, 2年目には,総輸入が減少(-3.4%)する状況下で8%の増加が明らかになったことは, 非常に異例であり, FTA の関税引き下げに伴う輸入増加の効果が非常に大きかったと考 えられる。なお,EU 以外の主要国からの輸入は韓 EU FTA 発効後の2年目には,米 国,日本,インドに対する輸入は継続して減少しているが,中国,ASEAN,MERCOSUR はプラスに転換した(表4)。  1993年以降の総輸入と対 EU 輸入は同じ方向の変化を示してきたが,2012年~2013年の間に総 輸入が減少する状況下で,対 EU 輸入が増加する反対方向の変化が現われている。なお,韓 EU FTA 発効以降の2年間に輸入増減(1億ドル) :イギリス(+3 3.4), ドイツ(+23.3), イタリ ア(+9.2),キプロス(+9.2),フランス(+4.1),スウェーデン(-10.8),オランダ(-4.9)。. 196 ─ 196( ) ─ .

(15) 韓 EU FTA の貿易動向と投資分析(李) 表4 韓 EU FTA 発効期間中主要国に関する輸入変化 輸入(1億ドル) 発効1年前. 1年目. 変化率(%) 2年目. 1年目. 2年目. 2年累積. EU. 433.7. 490.6. 530.0. 13.1. 8.0. 22.2. 中国. 809.9. 837.7. 812.7. 3.4. -3.0. 0.3. 日本. 676.1. 668.0. 621.5. -1.2. -7.0. -8.1. 米国. 424.2. 457.3. 408.2. 7.8. -10.0. -3.8. 68.4. 73.2. 65.9. 7.1. -10.0. -3.7. 487.5. 534.7. 516.4. 9.7. -3.4. 5.9. 69.2. 80.0. 72.5. 15.6. -9.4. 4.7. 4,796.7. 5,302.7. インド ASEAN MERCOSUR 総輸入. 5,121.1 10.5 -3.4 6.8 (注)発効1年前:2010年7月~ 2011年6月,1年目:2 011年7月~2012年6月, 2年目:2 012年7 月~2013年6月,2年累積:発効1年前と発効2年の間での輸入変化率(%)。 (出所)韓国貿易協会。. 欧州統計局(Eurostat)の資料によれば,韓 EU FTA 発効以降,韓国をはじめ東アジ ア諸国の対 EU 輸出は減少しており,対 EU 輸入は大幅に増加した。FTA 発効後の2年 間,韓国の対 EU 輸出は6.8%減少したが,中国の対 EU 輸出も減少(-5.0%)し,台湾 (-17.4%)と日本(-15.3%)も大幅な減少を記録した。韓国の対 EU 輸出の減少幅が1 年目に比べて2年目に緩和されたのに反して,中国と日本の輸出の減少幅は拡大しており, 米国の対 EU 輸出の増加幅も鈍化した。一方,域外国の対 EU 輸出は増加(+5.2%)を 示しているが,これは,原油価格の上昇により,輸入全体の30%を占める原油と液化ガス の輸入が増加(2012年:11.6%)したのに起因するところが大きく,製造業部門の収益増 加率は横ばい状態を見せている。 また,対 EU 輸入の場合,全体的に大幅な増加(1 6.8%)を見せている状況下で,他の 諸国に比べて, 韓国の対 EU 輸入の増加(24.1%)が顕著に現れ,FTA 締結による関税 引き下げが輸入増加につながっていることが分かる。対 EU 輸入の増加は,韓国だけでな く, 中国(13.5%), 米国(12.1%), 日本(1 8.5%)など, 比較的経済成長率が EU より も高い主要国で現われていることが共通した現象である(表5)。 なお,韓 EU FTA 発効後の2年目に,中国と日本の対 EU 輸入の増加が顕著に鈍化し たのに比べ, 韓国の対 EU 輸入は比較的高い増加傾向を維持しており, 韓 EU FTA が EU の対韓国輸出に大きく寄与したことが分かる。. 197( ) 197 ─ ─ .

(16) 第61巻 第1号 表5 韓 EU FTA 発効以降の主要国の対 EU 輸出入変化 輸 出 輸出量(1億ユーロ) 発効1年前. 1年目. 変化率(%). 2年目. 1年目. 2年目. 2年累積. 韓国. 380. 375. 329. -1.5. -0.9. -6.8. 中国. 2,985. 2,987. 2,609. 0.1. -5.0. -5.0. 日本. 693. 677. 542. -2.2. -13.0. -15.3. 台湾. 258. 235. 196. -9.1. -8.3. -17.4. インド. 378. 377. 350. -0.1. 0.5. 1.9. 米国. 1,855. 1,974. 1,830. 6.4. 1.4. 7.9. 域外. 16,623. 17,590. 16,002. 5.8. -0.7. 5.2. 輸 入 輸出量(1億ユーロ) 発効1年前. 1年目. 変化率(%). 2年目. 1年目. 2年目. 2年累積. 韓国. 306. 348. 349. 13.8. 10.3. 24.1. 中国. 1,258. 1,417. 1,303. 12.6. 1.3. 13.5. 日本. 465. 524. 505. 12.8. 6.3. 18.5. 台湾. 163. 154. 146. -5.5. 3.4. -2.8. インド. 391. 386. 348. -1.4. -2.0. -1.7. 米国. 2,589. 2,756. 2,662. 6.5. 6.3. 12.1. 域外. 14,841. 16,094. 15,858. 8.4 8.4 16.8 (注)発効1年前: 2010年7月~2011年6月(12カ月) ,1年目:2011年7月~2012年6月(12カ月), 2 年目:2012年7月~2 013年5月(1 1カ月), 2 年累積:発効1年目(1 1カ月)と発効2年目 (11カ月)の間の輸入変化率(%) 。韓 EU FTA 発効2年目の場合 EU 統計庁の最新資料が2 013 年5月までの11カ月の期間を対象に調査したので,1年目と2年目の間の輸出量の水平比較に 注意しなければならない。変化率の場合,過去の比較年度を11カ月に調整して計算している。 (出所)欧州連合統計局。. 2 品目別貿易分析 対外政策研究院では,韓国の対 EU 輸出入の変化を品目別に分析するために,30大輸出 品目(HS4単位,対 EU の2 011年総輸出の76%)を選定した後,品目別対 EU の増加率 を EU の同一品目総輸入増加率と, また,30大輸入品目( HS 4単位,対 EU 総輸出の 49%)別対 EU 輸出増加率を,韓国の同一品目輸入増加率と比較している。 FTA 発効以降の2年間, 自動車やエンジン部品,バッテリー,一部の合成繊維と樹脂 は, 輸出増加(12%~104%)を記録した一方,対 EU 輸出の主要品目である船舶および 電子部門では, 輸出が大幅に減少した。 FTA 発効後の2年目を中心に見ると,3 0大輸出 198( ) 198 ─ ─ .

(17) 韓 EU FTA の貿易動向と投資分析(李). 品目の内, 発効2年目にプラスの増加率を記録した品目は1 4品目であり, この内, 2年 連続プラスを記録した品目は,自動車,合成繊維,バッテリーなど6品目である。この 6品目は,2年連続で対 EU 輸出増加率が EU の総輸入の増加率を上回っているという点 で輸出成果が良かったと評価できる。 また,発効1年目にはマイナス増加率,2年目にはプラスの増加を見せた8品目の内, 6品目(液晶デバイス,コードレス電話,特殊船舶,光学式のデータ処理装置,ステンレ ス鋼板製品,医療用機器)の1年目の対 EU 輸出増加率は同年次 EU の総輸入増加率を下 回っており,この品目の場合,2年目の成果に基底効果も一部反映されていると判断され る。 他方, 発効2年目にマイナスとなった品目は16品目であり,その内,15品目は EU の総輸入の増加率を下回っている。発効2年目の輸出減少幅が大きい品目の場合は,ほと んど対 EU 輸出増加率が EU の総輸入増加率よりも下回っているという点で,基底効果な どとは関係なしに,輸出実績が良くなかったと判断される。 一方,自動車やカバン類,精製石油,油圧装置など,様々な品目に渡って2年連続に大 幅に輸入が増加した。 発効2年目にプラスの伸び率を記録した20品目の内,15品目が2 年連続でプラスの伸び率を記録した。 なお,発効1年目と2年目の両方とも増加を記録した1 5品目の内,対 EU 輸入増加率が EU の総輸出増加率を上回る項目は9品目であり,この中で1年目の輸入増加率が EU  輸出増加14品目:自動車(HS 8 703),ポリアセタール樹脂(HS 3 907),合成繊維(HS 5 503), バッテリー(HS 8507),循環用フード(HS 8414),エンジン付属品(HS 8409),液晶デバイス (HS 9013),無線電話機(HS 8517),特殊船舶(HS 8905),鉄鋼版(HS 7210),光学式データ 処理機器(HS 8417),ステンレス鋼板製品(HS 7210),スチレン(HS 3903),病院用機器(HS 8418)。  自動車(HS 8703),ポリアセタール樹脂(HS 3907),合成繊維(HS 5 503),バッテリー(HS 8507),循環用フード(HS 8414),エンジン付属品(HS 8409)。 011) ,建設重装備(HS 8429),  自動車部品(HS 8708),精精石油(HS 2710),タイヤ(HS 4 機械用部品類(HS 8 431),光ファイバーケーブル(HS 9001),合成ゴム類(HS 4002),工具類 ( HS 8 409), 船舶( HS 8 901),ラジオ・TV・カメラ部品( HS 8 529), 半導体デバイス( HS 8541),電子集積回路(HS 8542),電子機器部品(HS 8473),ほか機械類(HS 8479),コピー機 の部品類(HS 8443),モニターおよびプロジェクタ(HS 8 528)。  自動車(HS 8 703),医薬品(HS 3 004),カバン類(HS 4 202),精精石油(HS 2710),電動配 信関連部品( HS 8 483),液体ポンプ類( HS 8413),油圧関連装置( HS 8 4 81),測定機器( HS 9031),ディーゼルエンジェル(HS 8408),手術用機器(HS 9018),清浄機(HS 8 421),自動制 御機器(HS 9032),原油(HS 2709),加熱処理機器(NS 8419),電動機と発電機(HS 8501), ほか機械類(HS 8479),電子集積回路(HS 8542),循環用フード(HS 8414),血液関連医薬品 (HS 3002),機械類の部分品(HS 8487)。  自動車(HS 8703),医薬品(HS 3004),カバン類(HS 4202),精精石油(HS 2 710),電動配 信関連部品(HS 8483),液体ポンプ類(HS 8413),油圧関関連装置(HS 8481),測定機器(HS 903 1),ディーゼルエンジェル(HS 8408),手術用機器(HS 9018),清浄機(HS 8 421),自動制 御機器( HS 9 032), 原油( HS 2709), 加熱処理機器( NS 8419), 電動機および発電機( HS 850 1)。  自動車(HS 8 703),医薬品(HS 3 004),カバン類(HS 4202),精精石油(HS 2710),電動配 信関連部品(HS 8483),液体ポンプ類(HS 8413),油圧関関連装置(HS 8481),測定機器(HS. 199( ) 199 ─ ─ .

(18) 第61巻 第1号. の総輸出増加率を上回った5品目(精製石油,油圧関連機器,計測機器,ディーゼルエン ジン,電動機および発電機)は,特に FTA に伴う輸入の効果がより大きく現れたと考え られる。また,発効1年目にはマイナスとなり,2年目にはプラスの成長率を見せた5品 目は,すべて発効1年目には,対 EU 輸入増加率が EU の総輸出増加率を下回っているの に対し,発効2年目には,前者が後者を上回る基底効果の影響を相対的に大きく受けたも のと考えられる。 なお, 発効2年目にマイナスの伸び率を記録した品目は10品目であり, すべての EU の総輸出増加率を下回っている。発効2年目の対 EU 輸入増加率がマイナスを記録した品 目の中で,発効1年目と2年目すべての対 EU 輸入増加率が EU の総輸出増加率を下回っ ている7品目(エンジンの付属品,鉄・鉄鋼・スクラップ,化粧品,電気控除機器部分品, 半導体生産装置,自動車部品,コードレス電話)は,特に輸入実績が良くないと評価でき, 欧州の経済危機が加速され,実質的に大きな効果を出せずにいるものと考えられる。 全体として, FTA 発効以降の経済効果は低調であり,輸入は増加し,輸出は減少して いる。このため,否定的な面では,FTA 発効2年目の FTA の成果が低調という点で,長 期的な観点から, 経済的効果を得ることができるかは疑問である。肯定的な面では,韓 EU FTA 発効以降,輸出が急増した品目の存在である。FTA 発効以前にはなかった新た な対 EU 輸出市場を開拓するきっかけになっている。なお,既存の主力輸出品の内,発効 後2年連続で100%以上の輸出増加率を見せる品目が全産業にわたって明らかになった。. 9031),ディーゼルエンジェル(HS 8 408)。  ほか機械類(HS 8479),電子集積回路(HS 8542),循環用フード(HS 8414),血液関連医薬 品(HS 3002),機械類の部分品(HS 8487)。  航空機(HS 8802),エンジン付属品(HS 8409),鉄・鉄鋼(HS 7204),豚肉(HS 0 203),化 粧品( HS 3304),電気控除機器( HS8538),光学式データ処理機器( HS 8 538),半導体生産装 備(HS 8 486),自動車部品(HS 8708),無線電話機(HS 8517)。. 200 ─ 200( ) ─ .

(19) 韓 EU FTA の貿易動向と投資分析(李) 表6 韓 EU FTA 発効以降の輸出急増20大品目 (単位:千ドル,前年同期比,%) 基準 関税. 発効後1年 発効後2年 譲許 (2011.7~2012.6) (2011.7~13.4) 年度 金額 増減率 金額 増減率. ギアボックス(自動車部品). 4.5. 即時 227,930. 283.2 175,103. 390210. ポリプロピレン(合成樹脂). 6.5. 即時. 32.372. 331.0. 46,552. 181.8. 870894. ハンドルや運転ボックスなどの車 両の付属品. 4.5. 即時. 57,188. 255.9 110,542. 23 3.8. 870850. 車軸,その部分品. 4.5. 即時 146,949. 196.5 147,627. 115.6. 420232. ポケット・ハンドバッグに入れて 持ち歩く物品(表面がプラスチッ ク・紡織用繊維製). 9.7. 3年. 1,192. 198.7. 12,767. 1704.5. 420292. トランク・スーツケースに入れて 持ち歩く物品(表面がプラスチッ ク・紡織用繊維製). 9.7. 3年. 7,368. 499.5. 31,958. 882.6. 382440. セメント用・モルタル用・ コンク リート用の調製添加剤. 6.5. 即時. 9,208. 255.8. 8,827. 114.1. 390230. プロピレン共重合体(合成樹脂). 6.5. 即時. 46,444. 238.0. 39,413. 95.4. 841290. 水力発電エンジン,蒸気原動機な どの部分品. 2.7. 即時. 3,958. 133.6. 4,895. 151.9. 853641. 電圧 60V 以下継電器. 2.3. 即時. 2,763. 148.2. 7,363. 351.8. 293329. 窒素複素環の化合物 ヒダントイン及びその誘導体外そ の他. 6.5. 即時. 6,908. 217.9. 8,541. 125.7. 741110. 精製した銅製の管. 4.8. 3年. 20,332. 148.1. 19,405. 116.0. 070959. 松茸・椎茸・霊芝・カキ・ゴマ・ トリュフなど. 6.4. 即時. 7,212. 156.1. 6,302. 98.1. 392043. 全重量の6%以上の可塑剤を含有 した塩化ビニールポリマー(プラ スチックシート・フィルムなど). 6.5. 即時. 25,404. 619.8. 21,998. 109.5. 740710. 精製した棒及び形材. 4.8. 即時. 6,475. 179.8. 6,027. 118.2. 600542. 染色した場合ニット 織物. 8. 即時. 1,728. 301.6. 1,223. 77.9. 282580. 酸化アンチモン(精密化学品). 5.5. 即時. 2,639. 3068.6. 3,213. 143.6. 854460. 接続者を付着せず 1,000ボルトを超える電気導体. 3.7. 即時. 9,897. 208.5. 6,873. 81.6. 540248. ポリプロピレン原料の合成師. 4. 即時. 5,155. 114.6. 3,421. 77.2. 390791. 不飽和ポリエステル. 6.5. 即時. 653. 93.0. 1,709. 326.8. HS コード 870840. 品目目. 93.0. (注)同資料の FTA 関税は EU と韓国の間の HS コードに関税分類変更基準( CTC:Change in Tariff Classification)の違いにより,1対1のマッチングが不可能で HS6単位で変更加重平 均化された関税率であり,実際に韓 EU FTA 協定文の関税率と異なる場合がある。 (出所)韓国貿易協会。. 201( ) 201 ─ ─ .

(20) 第61巻 第1号. Ⅲ 輸出減少と輸入増加の要因についての分析. 輸出が減少し,輸入が急増した要因としては,韓国と EU との間での景気格差,一部品 目に偏った対 EU 輸出構造,原油など一部品目の輸入急増,ユーロ安などを指摘すること ができる。. 1 景気低迷 EU 経済は,2011年末から景気後退に入って2年連続して,マイナス成長を記録してお り,比較的良好な韓国の年間経済成長率の格差が2%以上に拡大した。韓国の経済成長率 は2011年と2 012年にそれぞれ3.7%と2.0%を記録したのに対し, EU の成長率は1.6%と- 0.4%に過ぎない。 EU 経済が2年連続(2 011年~2012年)でマイナス成長を記録したのは, 第2次大戦後 初の事例で, 主要製造業品目の需要自体が停滞または減少するという現象を見せた。 EU 経済の景気低迷は,輸入需要の増加率に影響を与え,実際に EU の最終消費支出の増加率 と可処分所得(家計および非営利単体), 商品の輸入増加率は同様な様相を見せている。 表5で示しているように,日本と台湾の対 EU 輸出は,韓国に比べて,2倍以上減少して おり,中国も韓国と同じような幅の,対 EU 輸出減少を記録したことは,主要国の対 EU 輸出減少は,景気低迷に起因するところが非常に大きいと考えられる。. 図6 韓国と EU の実質 GDP 成長率の推移(単位:%). (注)成長率の差異は,韓国の実質 GDP 成長率-EU の実質 GDP 成長率で計算。 (出所)韓国銀行経済統計システム,EU 統計庁(Eurostat)。. 202 ─ 202( ) ─ .

(21) 韓 EU FTA の貿易動向と投資分析(李) 図7 EU の実質 GDP,最終消費支出,可処分所得(家計および非営利単体) , 商品輸入増加率の推移(単位:%) . (出所)欧州連合統計局。. 2 輸出構造 韓国の対 EU 輸出は自動車( HS 8 9),エレクトロニクス( HS 8 5),船舶( HS 8 9)の 3分野が58%を占めており,輸出が非常に高いが,特に,対 EU 輸出の割合が高い船舶 (2011年:9.75%,2012年6.91%)が世界的な景気低迷と EU の財政危機の影響で輸出価格 と物量が下落して,対 EU 全体の輸出の減少につながった。EU の域外輸入の増加率と韓 国の対 EU 輸出の増加率は2 010年から2 011年に入って最も大きな格差を見せており, 対 EU の船舶輸出は2 010年に136億ドル(全体輸出の25%)を記録したが,2012年に79.3億ド ルに急速に減少し,2013年中(1月~6月)にも,前年同期比24.3%の減少を記録した。. 表7 韓 EU FTA の造船産業の輸出現況 区分. 2007. 2008. 2009. 2010. 2011 125.3. 対 EU. 73.2. 100.2. 122.1. 135.9. 増減率. 0.5. 36.8. 21.9. 11.3. 2012. (単位:億ドル,%). 発効1年目 発効2年目 11.7.1~12.6.30 12.7.1~13.5.31. 79.3. 82.7. 52.6. ▲7.8 ▲36.7. ▲46.3. ▲29.7. (出所)韓国貿易協会,HS89 類船舶と水上構造物資料より作成。. 日本と中国の対 EU 輸出の内,船舶の割合はそれぞれ1%と2.7%に過ぎず,EU の船舶 需要での全体の急速な減少が全体対 EU 輸出に及ぼす影響は少ない。.  2010年基準。. 203( ) 203 ─ ─ .

(22) 第61巻 第1号 図8 EU の域外製造業商品増加率および韓国の対 EU 輸出変化増加率の推移(単位:%). (注)SITC: Standard International Trade Classification,SITC5~8: 製造業の商品群。 (出所)欧州連合統計局。. 図9 EU の船舶輸入増加率(単位:%). (注)前年比 EU の対世界,対中国,対日本の船舶輸入の増加率を意味する。 (出所)欧州連合統計局。. 204( ) 204 ─ ─ .

(23) 韓 EU FTA の貿易動向と投資分析(李) 図10 韓国,中国,日本の対 EU 船舶(HS89)輸出の割合の推移(単位:%). (出所)欧州連合統計局。. 図11 EU の船舶(HS89)輸入の韓国・中国・日本が占める割合(単位:%). (出所)欧州連合統計局。. 3 原油輸入の急増 原油(HS2709)と精製石油(HS2710)の対 EU 輸入は,韓 EU FTA 発効以前は,全 体的対 EU 輸入の1%に過ぎなかったが,発効後の2年目には17.2%まで増加した。とこ ろで, 韓 EU FTA 発効以前では EU からの原油輸入はなかったが,FTA 発効による即 時関税撤廃(3%)と対イラン制裁の雰囲気が相乗的に作用して,2011年からノルウェー 205( ) 205 ─ ─ .

(24) 第61巻 第1号. 産原油により,輸入が開始された。2011年にイギリス産とノルウェー産の原油は全体の原 油輸入の0.56%だったが,2012年には4.77%,2013年(1~3月)には5.33%へと大幅に増 加したが,これは新規の輸入増加ではなく,輸入先の切り替えによる FTA の典型的な貿 易転換 の例である。 FTA 発効1年目と2年目の EU からの北海産の原油の輸入は17.8 億ドルと3 0.8億ドルを記録し,このような増加傾向はしばらく続くものと見られている。. 図12 対 EU の年間原油の輸入量の推移(単位:百万ドル). (注)19 91~2000と2001~2010年は該当期間の累積輸入量を意味する。 (出所)韓国貿易協会。. 4 ユーロの弱体化 国際市場では,為替相場の大きな変動が2 003年頃から2007年まで続き,ユーロは対ドル 相場を大きく上回っていたが,2011年5月を境にユーロ安基調となった。ユーロ安は,EU の域外輸出に有利に作用し,EU の総輸出が大幅に増加する原因となっている。発効2年 目(20 12年7月~2 013年6月)のユーロ対ウォンの価値は, 発効1年目(2 011年7月~  FTA の経済的効果(静態効果と動態効果)では, 貿易創出効果・貿易転換効果・交易条件効 果(静態効果), 市場拡大効果と競争促進効果(動態効果)がある。 このなかで, 貿易転換効果 とは,FTA によって第3国からの生産効率の高い輸入品がより生産効率の低い FTA 相手国か らの輸入品に置き換えられることを指す。一般的に FTA 締結国にとって貿易創出効果は有益だ が,貿易転換効果のインパクトは明確ではない。 FTA がその締結国に与える全体的なインパク トは不明瞭だが,貿易転換から生じる悪影響を減らすためには第3国に対する関税(最恵国関税 率)が低くなくてはならない。貿易創出が生じる範囲を最大化させるためには生産性の高い国と FTA を締結すべきである。FTA のインパクトは不明瞭であるとはいえ,どのような FTA も適 切に設計されれば経済厚生を改善することが理論的に説明されている(ミレヤ・ソリースほか (2010)『アジア太平洋の FTA 戦争』 ,pp.3638)。. 206 ─ 206( ) ─ .

(25) 韓 EU FTA の貿易動向と投資分析(李) 図13 韓 EU FTA 発効前後の年間原油輸入量の推移(単位:百万ドル). (注)発効1年前:2010年7月~2011年6月,1年目:2011年7月~2012年6月,2年目:2012 年7月~2013年6月。 (出所)韓国貿易協会。. 2012年6月)に比べて,5.15%切り上げられ, 発効前の同じ期間に比べて,6.9 6%切り上 げられた。 ユーロ安の原因としては, 金融危機に起因するユーロ圏の信用の喪失, ヨー ロッパの景気後退,ユーロ圏発足以降の基準金利などに起因するところが大きく,このた め南ヨーロッパの諸国の貿易収支が大幅に改善された。しかし,中央ヨーロッパでは,ド イツは自動車等の輸送機器や資本財の輸出に支えられ,貿易収支では,一定の水準を維持 しているが,ドイツに比べて輸出競争力の低下が指摘されるフランスやイタリアの回復は 遅れている。. 図14 ユーロとウォンの為替レートの推移(単位:ウォン). (出所)韓国銀行経済統計システム。  ウォン / ユーロの平均為替レート:1,539.2ウォン(2010年7月~2011年6月)→1,509.7ウォン (2011年7月~2012年6月) →1,432.0(2012年7月~2013年6月)。. 207( ) 207 ─ ─ .

(26) 第61巻 第1号. 5 生産拠点の海外移転 近年,韓国企業の半導体,携帯電話などの電子分野の生産拠点の海外移転は,輸出代替 効果を誘発し,対 EU 輸出の減少の要因として作用した。 韓国製造業の海外直接投資は,2000年代半ば以降に,大幅に増加し,エレクトロニクス の分野は,全体の製造業の海外投資の25%を占めており,数年前から,第3国への輸出が 生産施設の海外移転の動機として作用し始めた。 ところで,1990年代初頭には,繊維業界,2000年代初頭には,コンピュータ,家電産業 の海外移転が加速したのに続いて,2000年代後半からは,携帯電話や自動車が海外投資を 主導しており,製造業全体の投資の64%は,中国をはじめとするアジア地域に集中されて いる。特に,第3国への輸出のための生産設備の海外移転が行われ,エレクトロニクス分 野の海外生産が増加しているが,結果として,携帯電話,半導体,ラジオ,テレビ,カメ ラなどの韓国製電子製品の輸出が減少する現象が発生しているが, 東ヨーロッパの対 EU 輸出減少が端的な例である。このような電子製品は海外生産設備の導入段階を超えて生産 拡大段階に入っており,輸出代替効果が可視化されているが,特にスマートフォンの場合, 2010年15.9%に過ぎなかった海外生産比率は,2012年には80%まで増加しており,これに 伴い,携帯電話の国内輸出が減少した。これに対して,ASEAN ,中国のエレクトロニク ス分野の輸出は依然として増加傾向にあるが,これらの国の対 EU 輸出の増加量の一部は, 韓国の海外生産量の増加によるものである。. Ⅳ 韓 EU FTA 発効以降の投資の動向. 韓 EU FTA 発効後の2年間に EU 加盟国から明確な投資の流入が増加する現象は現わ れなかったが, 米国, 日本からの投資の流入は大幅に増加した。 FTA 発効1年目の EU からの投資の流入は,前年比14.3%増加したが,2年目に再び減少して FTA 発効後の2 年間では EU からの投資の流入が増加する現象は現われていない。ドイツ,フランスなど.  具体的な例としてサムスン電子と LG 電子のケースを考える。サムスン電子は,メキシコのチ フアナに TV 生産工場を,アメリカのテキサスオーチンに半導体工場を稼働しており,またアメ リカに輸出される TV のほとんど全量をチフアナ工場で生産中である。主要輸出品である半導体 もアメリカ現地に生産工場がある。国内で生産して輸出している商品は,冷蔵庫,洗濯機など一 部生活家電製品にすぎない。また,サムスン電子と同じく現地生産ラインを取り揃えた LG 電子 も,北米市場に供給する携帯電話と LCD TV,モニター,冷蔵庫など大部分の製品をメキシコに ある2工場で生産している。  このような分析は EU 執行委員会通商局( DC Trade )の公式報告で確認できる( European Commission,“EU-Korea FTA sees strong rise in EU exports”July 2 013)。. 208( ) 208 ─ ─ .

図 1 2  対 EU の年間原油の輸入量の推移(単位:百万ドル)

参照

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