Investigation of a new evaluation method (Octave factor) for guitar tones
using FFT analysis
ギターの音色の FFT 解析を用いた新しい評価方法(オクターブ係数)の検討
Hagino TANAKA, Kazutaka ITAKO
Kanagawa Institute of Technology, 1030 Shimoogino, Atugisi, Kanagawa, 243-0292 Japan
TEL: +81-46-291-3152 FAX: +81-46-291-3152 e-mail: [email protected]
In this paper, the difference between the tone of a high-quality handmade guitar and that of a mass-produced
guitar is quantitatively analyzed by using FFT (Fast Fourier Transform) analysis. The sound of each guitar
string contains different frequencies. In this time, the sound contained in the open string of the guitar is first
decomposed into the fundamental sound, the consonant interval that harmonizes with the fundamental sound
(mainly included lower order frequencies), and the dissonant interval that does not harmonize with the
fundamental sound (mainly included at higher-order frequencies) by using the 12 equal temperament. In this
study, new scheme which defines an octave factor to estimate the content rate of the octave sound is proposed
and the sound of the guitar was evaluated using the scheme.
Keywords : FFT analysis, Harmonics, Guitar tones, Consonant interval
I. INTRODUCTION
ギターのように弦を弾いて音を出す楽器を撥弦楽器 (はつげんがっき)という。 古代エジプトの紀元前 3000 年頃に描かれた絵に、ネ フェルというギターによく似た撥弦楽器が描かれてい ることから、ギターの祖先は古代エジプトではないかと 言われている。そしてエジプト文明の遺品から、この「ネ フェル」と呼ばれた長いネックと小さめのサウンドホー ルを持った楽器の絵や、少数ながらその実物までもが見 つかっている。この楽器がその後どのように発展したの か、跡をたどれるような資料はなく断定はできないが、 おそらくはさまざまなかたちに作り変えられつつ、世界 に広まっていったものと想像される。 また、現代のギターの直接の先祖であるものを 19 世 紀ギターと呼び、この 19 世紀ギターは製作者によって 形状もサイズもさまざまであった。しかしいずれも小ぶ りなつくりで、小さな音しか出ない楽器だった。それを 大きくして音の面でも改良したのが、1817 年にスペイン で生まれたギター製作家、アントニオ・デ・トーレス (Antonio de Torres)である。彼は、弦やボディの長さを 伸ばし、ボディの幅も広くして現代ギターの基礎をつく った。そして彼の影響を受けた製作家たちがその製法を 広め、さらに工夫を重ね、より現代的なギターをつくり 上げていった。 そこで、現代のギターは大まかに 2 種類に分けられる。 1 つは一般に数万円程度で手軽に手に入る工場で生産さ れる量産型ギターである。そしてもう 1 つは、一般に数 百万円程度の伝統的な高級手工ギターである。 ギターに関していくつかの研究が行われている。例え ば、ギターの材料を変えたときのボディの振動モードへ の影響[1]、振動モード解析やギターの合成音作製のため のボディの物理モデル[2],[3]、ギター等の低音量の楽器の 音響効果を高い再現性で測定できる方法[4]、ギターの環 境変化に対する音の変化を説明するための音響パラメ ータ[5]などの検討が行われてきている。しかしピアノや バイオリンと比べて極めて少ない。そのため現在におい ても研究するべき課題がある。ギターを演奏した経験の Paper(Received 21 December, 2020 Accepted 22 January, 2021)
SAS Award was given to this paper presented as Oral
Presentation at the 2020 SAS Symposium.
ある人は、高級手工ギターと量産型ギターの音色の違い を感覚的に判別できる。しかし、ギターの音色の質を定 量的に評価する方法は見受けられない。
そこで本論文では、ギターの音を電気信号に変換し、 FFT(Fast Fourier Transform)解析による音色の分析を 行い、高級手工ギターと量産ギターの音色の違いを定量 的に検討する。 ギターの各弦の音には様々な周波数の音が含まれて いる。そこで、本論文では、まず 12 平均律を用いてギタ ーの開放弦に含まれる音を基音、基音と調和する協和音 程と調和しない不協和音程に分類した。そしてオクター ブ音の含有率を評価するオクターブ係数を新たに定義 し、これを用いてギターの音色を評価することを提案し ている。
II. RELATIONSHIP
BETWEEN
MUSIC
THEORY AND THE CHARACTERISTICS OF
GUITAR TONES
II-A. Music Theory
本論文では、最初に、ギターの開放弦に含まれる音を 12 平均律に基づき分類した。12 平均律とは 1 オクター ブを均一に 12 等分した音律のことで、半音の差はすべ て同じ比率で表すことが出来る。ある音の半音上の音を 求める際は、 √212 との積で求めることが出来る。この関係 から、倍音と音程の種類との関係を考えている。 音程の種類には、協和音程と不協和音程があり、協和 音程とは、2音間の音程のうち、よく調和し合う響きの ものである。協和音程のうち、ある音の 2n倍音をオクタ ーブ音と呼ぶ。 一方で不協和音程とは、協和音程に分類されないもの
(a) Valencia
(b) Ramirez
Fig. 1. Two typical guitars used for
characterization.
すべてを指す。 また、今回の研究で用いたギターは Fig. 1(a),(b)の 2 種類である。 Fig. 1(a)のバレンシアは量産型ギターの一種であり、 1972 年にオーストラリアのメルボルンで製作が始まっ た。ワールドワイドに販売を展開し、世界で最も売れて いるギターブランドの 1 つである。そして(b)のラミレ スは高級手工ギターの一種である。このギターは、ギター職人のホセ・ラミレスⅢ(Jose Ramirez III)のも と、1964 年に作られたスパニッシュギターを代表する一 本である。一人の職人が時間を掛けて、1 本のギターを 最後まで仕上げている。ギターの神様と呼ばれたアンド レス・セゴビア(Andrés Segovia)が永年愛用したことで 知られる。
II- B. Characteristics of Guitar Tones
各弦の基音となる周波数は 1 弦 330Hz、2 弦 247Hz、3 弦 196Hz、4 弦 147Hz、5 弦 110Hz、6 弦 82Hz である。 ギターの音は、様々な高さの音が合成されたもので倍 音の含まれ方により音色が変わる。 Table 1 では一例として 6 弦の倍音成分を 12 平均律に 基づいて、オクターブ音と協和音程、不協和音程に分類 している。Table 1 より、1 つの弦の音には多くの周波数 成分が含まれていることがわる。これらの成分がギター の特徴的な音色を形成している。Table 1. Classification of overtone components
(Sixth string).
12 平均律を用いているので、他の弦も倍音の相対的な 音程は変わらないので Table 1 に示した倍音と音程の種 類の関係は全く同じになる。
これまでに述べた通り、ギターの特徴的な音色は、オ クターブ音成分や協和音程成分、不協和音程成分で形成 されている。このことから、特に基音となる周波数の 2n 倍の音のオクターブ音である2、4、8倍音の含有率に 注目することで、ギターの音色の質を定量的に評価でき ないかと考えた。 そこで、ギターの音色を評価するためのオクターブ係 数を以下のように定義する。 O.F. = √𝑉2 2+𝑉 42+𝑉82 𝑉1 × 100 [%] ・・・・(1) 𝑉𝑛:倍音の大きさ[V] (n は自然数) この係数により、各弦に含まれるオクターブ音の含有 率を評価する。この値は厚みのある豊かな音の指標にな ると考えられる。
III. HARMONIC ANALYSIS
III- A. Experimental Equipment
解析に使用した機器を Table 2 に示す。
Table 2. Experimental Equipment.
使用したギターはラミレス(高級手工ギター)とバレ ンシア(量産ギター)の 2 種類で、それぞれの仕様を Table 3 に示す。一般に、量産型ギターのトップには合板が使 用される。一方、高級手工ギターのトップには、100 年 以上乾燥させた単板が使用される。また、表面板の塗装 にも違いがあり、これらが音色の違いの主要因になって いるものと考えられる。
Table 3. Specification of the two guitars.
III- B. Analysis Method
FFT アナライザによる各弦に含まれる周波数スペクト ルの測定を行った。測定条件として、マイクとギターの サウンドホールの距離を 5cm、弦を弾く位置をサウンド ホール上に設定した。演奏方法については、実験結果に ばらつきが生じないようにピックを使用し、弾く弦以外 の全てを指でミュートした。なお、測定範囲は 0~20kHz とした。 すべての開放弦の調波分析を行い、2 つのギターの O.F. の違いを比較、検討した。
IV. RESULTS AND CONSIDERATIONS
Fig. 2 は、各弦に対する O.F.の特性をラミレスとバ レンシアで比較している。Fig. 2. Comparison of Octave factors at respective
string of the two guitars.
Fig. 2より、2~4弦ではバレンシアに比べるとラミ レスはオクターブ係数が大きくなった。しかし、1 弦に おけるオクターブ係数の比較では2種類のギター間に大 きな差は見られなかった。また 6弦に関しては、逆転し た結果になった。そこで、バレンシアとラミレスのスペ クトルにどのような違いがあるのかを明確にするために 協和音程と不協和音程の周波数スペクトルの比較を行っ た。 Fig. 3 はバレンシアとラミレスの 3 弦の周波数スペク トルである。Fig. 3 のそれぞれのスペクトルを比較する と、バレンシアは基音が一番大きいのに対し、ラミレス は 2 倍音(オクターブ音)が一番大きくなった。 Fig. 4 はバレンシアとラミレスの 1 弦の周波数スペク トルである。Fig. 4 のそれぞれのスペクトルを比較する と、バレンシアは不協和音程である、7、9、11、13、14、 15 倍音を多く含んでいるのに対し、ラミレスは不協和音 程をほとんど含んでいないことがわかった。 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1 2 3 4 5 6
O
.F
.[
%
]
strings
Ramirez ValenciaII- C. Octave Factor
ここでは数値に差がある3弦とあまり差が出なかっ た1弦、そして大小が逆転した6弦について比較検討を行 う。
(a) Valencia (b) Ramirez
Fig. 3. Frequency spectra of harmonics at the third string of the two guitars
.
(a) Valencia (b) Ramirez
Fig. 4. Frequency spectra of harmonics at the first string of the two guitars.
(a)Valencia (b) Ramirez
Fig. 5. Frequency spectra of harmonics at the sixth string of the two guitars.
Fig. 5 はバレンシアとラミレスの 6 弦の周波数スペク トルである。Fig. 5 のそれぞれのスペクトルを比較する と、バレンシアはオクターブ音(協和音程)である 2 倍音 のみを多く含んでおり、ラミレスは 2 倍音と 5 倍音の複 数の協和音程が非常に多く含まれていた。このことから 協和音程成分はバレンシアよりもラミレスの方が多く 含まれていたことがわかった。 Fig. 3~Fig. 5 において共通している点は、ラミレス の方が低次の周波数スペクトルが多い点である。すなわ ち、バレンシアよりもラミレスの方が協和音程成分は多く含まれていたということになる。
V. CONCLUSIONS
これらの比較検討から、伝統的な高級手工ギター(ラ ミレス)は量産型ギター(バレンシア)よりも協和音程が 不協和音程と比べて多く含まれており、このことが音色 に大きく影響することが明らかにされた。 従って、今回新しく定義したオクターブ係数は 2 種類 のギターの優位差を示すことが出来、ギターの音色の質 の簡易的な評価に有効であるが、より厳密には、協和音 程と不協和音程の成分についても考慮して、総合的な評 価を行う必要性が明確となった。 今後は、これらの知見を踏まえて、より厳密な評価係 数の検討を行うとともに、ギターの音色の評価を行う際 に補助的な役割を担うことのできる、自動評価システム を構築していきたいと考えている。REFERENCES
1
Crisron Rudolf Lucas and Franz de Leon :
“Effects of Changing Material Properties on
Vibration Modes of Guitar Body”, Proceedings
of 2017 7th IEEE International Conference on
Control System, Computing and Engineering
(ICCSCE 2017), 24-26 November 2017, Penang,
Malaysia.
2
Giuseppe Cuzzucoli and Vincenzo Lombardo : “A
Physical Model of the Classical Guitar, Including
the Player’s Touch”, Computer Music Journal,
23:2, pp. 52-69, Summer 1999.
3
Kevin Bradley, Mu-huo Cheng and Virginia L.
Stonick
:
“Automated
analysis
and
computationally efficient synthesis of acoustic
guitar strings and body ”, Proceedings of 1995
Workshop on Applications of Signal Proceeding
to Audio and Accoustics.
4