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高校理科教員の授業改善への取組状況に関する研究―主に担当する科目の違いに注目して―

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(1)

―主に担当する科目の違いに注目して―

著者

池田 和正

雑誌名

東北大学大学院教育学研究科研究年報

68

1

ページ

243-255

発行年

2019-12-26

URL

http://hdl.handle.net/10097/00126999

(2)

 本研究の目的は,高校理科教員が主に担当する「物理」「化学」「生物」「地学」の4つの科目に注目し, 授業改善への取組状況の分析を通して,その特徴を明らかにすることである。本研究では,高校理 科教員265名が回答した質問紙調査について,担当科目「物理」「化学」「生物」「地学」の違いと,自 己の授業改善への取組状況,同僚と協働した授業改善への取組状況について分析した。分析の結果, 「物理」「化学」「生物」「地学」の違いと自己の授業改善への取組状況との間には違いがみられなかっ た。しかし,「生物」の担当者群は,「物理」の担当者群よりも同僚と協働した授業改善をより多く取 り組んでいることが明らかになった。背景として,「物理」よりも「生物」の方が,勤務校に同じ科目 の教員が勤務している可能性が高いことが明らかになり,「物理」よりも「生物」の方が同僚と協働 した授業改善に取り組みやすい状況が確保されていることが窺える。 キーワード:同僚性,教員の職能発達,形成的アセスメント,授業改善,教育課程

1 研究の背景と問題設定

 教科の枠組と指導内容は,その時々の社会状況に対応するために変化する。我が国での各教科の 成立過程は,1872年の学制発布と教育課程の基準「小学教則」から現行学習指導要領に連なる教育課 程編成の成果である。教育課程論の先行研究によると,現在につながる各教科の成立では,「理科 (1886年),国語(1900年),社会(1947年)など,教育的観点から専門的知識が再編されて教科が編成 され」たとしている(水原,2010)。さらに,水原によると,教育課程の基準である学習指導要領を分 析することで,そこに描かれている日本人像を明らかになるとしている。このことは,教育課程を 単に各教科の集合体と見るのではなく,学習指導要領が目指す人間像と各教科との関連を常に意識 した指導が重要であると言える。  次に,近年の新しい教科の例として,1989年の学習指導要領改訂における小学校での1・2年生の 「理科」と「社会科」とを統合した「生活科」の創設,1998年の学習指導要領改訂における高等学校で の情報教育の中核としての「情報科」の創設が挙げられる。現在においても,このように教科の枠組 みと指導内容は絶対的ではなく,社会状況に応じて変化すると言える。しかし,これらの例のよう

高校理科教員の授業改善への取組状況に関する研究

―主に担当する科目の違いに注目して―

池 田 和 正

* *教育学研究科 博士課程後期

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に教科の枠組みが変化する際,新しい教科を増やす方向で諸問題を解決を目指すことは,既存の教 科の枠組みを従来と異なる枠組みに基づいた教科の整理統合の難しさを暗示する。  さて,教育課程の基準である学習指導要領に基づき各教科を指導する教員にも目を向けてみる。 学習指導要領は定期的に約10年程度で改訂されており,各教科の指導内容とその時々の社会状況を 踏まえた教育課程編成方針との関係も示す。各教科においても,教員が指導内容をどのように指導 していくかが重要になる。先行研究によると,高校教員は担当教科の違いによって,自己の授業改 善への取組状況に表1に示すように有意な差がみられた(池田,2018)。また,授業の指導方法の一 部についても,担当教科の違いによる有意な差がみられた(池田,2014)。背景には,高等学校の教 科固有の知識やその指導方法の違いがある。言い換えれば,戦前の旧制中学校から戦後の新制高等 学校へと移行してから連綿と現在に続く各教科の固有の伝統が窺える。  特に幅広い学問分野から構成されて教科として,理科や地歴・公民科などがあり,例えば理科では, 「物理」「化学」「生物」「地学」の各科目からなっている。実際,高等学校理科1種免許状を取得する 際は,「物理」「化学」「生物」「地学」のいずれかの科目を専門科目として,他の3科目よりもかなり 多くの単位の修得が求められている。教育職員免許法では,理科の教員免許となっているため,バ ランス良く4科目の単位を修得していると思われている。しかし,実際には「物理」「化学」「生物」「地 学」のいずれかの科目を重点的に履修して高校理科教員になる者が多い。さらに,入職後は,専門と する科目を中心に長年に渡って授業を担当することになる。このことは,先行研究で示された担当 教科の違いによる一部の指導方法や自己の授業改善への取組状況が異なるという知見から,理科の 4つの科目,「物理」「化学」「生物」「地学」の違いに注目した研究が必要になる。  本研究では,高校理科教員の主に担当してきた「物理」「化学」「生物」「地学」の4つの科目に注目し, 授業の指導方法の状況,授業改善への取組状況の分析を行い高校理科教員の特徴を明らかにするこ とで,より効果的な教育課程実施に繋がる知見を得ることを目的とする。 表1 担当教科の違いによる「指導方法の数」得点,「授業改善」得点の多重比較の結果(池田,2018) 国語 (N=57) M (SD) 地歴公民 (N=49) M (SD) 数学 (N=60) M (SD) 理科 (N=51) M (SD) 外国語 (N=84) M (SD) 分散分析 F 多重比較(Tukey HSD) 指導方法の数 (4.44)37.3 (5.14)35.2 (5.46)35.9 (4.28)35.3 (4.76)37.4 2.93* n.s. 自己の授業改善 (3.51)22.8 (3.54)23.6 (3.40)21.6 (3.99)23.6 (3.32)22.8 3.03* 地歴公民,理科>数学* 同僚と協働した 授業改善 (3.86)16.6 (3.95)16.5 (3.95)16.8 (3.84)16.8 (3.73)17.0 0.152 n.s. 註)多重比較の結果は,有意水準5% 未満のみを記載している   * p<.05

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2 方法

2.1 調査対象者及び調査時期  調査対象者は,M 県内の公立高校全88校に在籍する全ての常勤の理科教員(主幹教諭,教諭,再 教諭,常勤講師)344名とし,回収者は265名で回収率は77.0%であった。また,質問紙調査につい ては,調査時期を2014年9月~ 10月とし,郵送によって実施した。なお,本調査は「高校理科教員 の研修経験と指導方法に関する調査」として実施し,調査結果の概要は,清水・池田(2015)に示す。 2.2 質問項目の構成 2.2.1 主体的な学習につながる指導方法の数の項目  質問項目は,2001年~ 2005年にかけてイギリスで取り組まれた形成的アセスメントの大規模な 調査研究(TLRP:Teaching and Learning Research Programme(James, et al., 2007))を元にした 高校教員対象の質問紙調査(池田,2013)で用いた項目を用いた。具体的には,主体的な学習につな がる指導方法の数とその実施程度の12項目からなり,4段階評定(4= よくある,3= ややある,2= あ まりない,1= 全くない)で回答を求めた(池田,2013: 池田・有本,2014、 池田,2015: 池田,2017: 池田, 2018: 池田,2019)。 2.2.2 授業改善への取組状況の項目  自己の授業改善への取組状況を尋ねる8項目と同僚と協働した授業改善への取組状況を尋ねる7 項目の計15項目からなり,4段階評定(4= よくある,3= ややある,2= あまりない,1= 全くない)で 回答を求めた。これらの質問項目は,イギリスの TLRP プロジェクトの項目を元に日本の高校教員 の文脈を考慮し,表記等に修正を加えて作成した(池田 ,2013: 池田 ,2016: 池田 ,2018)。 表2 主体的な学習につながる指導方法の数とその実施程度の12項目(池田,2013: 池田・有本,2014: 池田,2015: 池田,2017: 池田,2018: 池田,2019) 項目番号 質問内容 2- 1 授業の始めに,生徒が本時のねらいをつかめるように説明している 2- 2 机間指導(机間巡視)によって,生徒の学習状況を把握している 2- 3 授業で考え方などを説明するようなことについて,正答がいく通りにもなる内容を取り入れている 2- 4 授業では,生徒が得意な内容を把握し,さらに向上する方法を助言している 2- 5 授業では,生徒が分からない問題について,助言やヒントを示して自力で解決できるように支援している 2- 6 生徒に対して,問題の誤答は理解への重要なチャンスだと励ましている 2- 7 授業で生徒から推論や説明を引き出す発問をしている 2- 8 問題について,生徒が主体的に探究するようなやり方を取り入れている 2- 9 授業では,生徒が他の生徒の考えを聞き,良い点を自分の考えに取り入れる時間を取っている 2-10 授業で生徒がお互いに助け合って問題を解決する方法を取り入れている 2-11 授業で生徒に自分の学習状況を把握させるような問いかけをしている 2-12 授業で生徒から知識を引き出す発問をしている

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2.2.3 主な担当科目の項目  本項目は,新規に作成したものである。具体的には,主な担当科目についての1項目からなり,物 理(1= 物理),化学(2= 化学),生物(3= 生物),地学(4= 地学)の選択肢より1つを選ぶことで回答 を求めた。

3 結果と考察

3.1 因子分析  3.1因子分析では,「生徒の主体的な学習につながる指導方法の数」12項目,「自己の授業改善へ の取組状況」8項目,「同僚と協力した授業改善への取組状況」7項目について,因子分析及び内的整 合性を検討することで分析を進めていくことにした。 3.1.1 生徒の主体的な学習につながる指導方法の数の項目  「生徒の主体的な学習につながる指導方法の数の項目」12項目の得点分布を確認した。次に,これ らの項目について,主因子法による因子分析を行ったところ,固有値の変化は3.48,1.24,1.10,0.96・・・ となった。そこで,固有値の減衰状況と因子の解釈可能性を検討した結果,1因子解を採用した。 表5に因子分析の結果を示す。また,内的整合性を検討するために,クロンバックのα係数を求め たところ,α= .77となり十分な値と判断した。そこで,「生徒の主体的な学習につながる指導方法 表3 自己の授業改善への取組状況の8項目(池田,2013: 池田,2018) 項目番号 質問内容 3- 1 授業改善のために,他校の良い実践例に注目している 3- 2 各種の研究結果を活用し,授業改善をしている 3- 3 教員として必要な研修課題を把握するために,授業実践を振り返っている 3- 4 生徒の反応を見ながら,授業を改善している 3- 5 研修のために研究授業(校外も含む)を提供している 3- 6 授業や校務の取り組みで,校外の研修で得た内容を参考にしている 3- 7 日常生活に関連した内容を授業の発問に取り入れている 3- 8 地域社会の人々や大学等の協力を得た授業実践の経験がある 表4 同僚と協働した授業改善への取組状況の7項目(池田,2013:池田,2016: 池田,2018) 項目番号 質問内容 3- 9 教育実践について,同僚と指導内容の認識を共有している 3-10 同僚と互いに授業を見合っている 3-11 授業での様々な難しい場面について,同僚に助言を求める 3-12 同僚に授業実践に関する新しい取り組みを提案している 3-13 授業について,教科会などの会議で「何をどのように学ぶか」について,話し合っている 3-14 授業改善のために,同じ教科の教員と共に授業の実践研究に取り組んでいる 3-15 他教科の教員と協働した授業実践をしている

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の数の項目」12項目を合計した得点の平均値を算出し,「指導方法の数」得点(M =34.9,SD =4.69) を求めた(池田,2017)。 3.1.2 自己の授業改善への取組状況  「自己の授業改善への取組状況」8項目の得点分布を確認した。次に,この8項目に対して主因子 法による因子分析を行ったところ,固有値の変化は2.71,1.14,0.91,0.83・・・ となった。そこで,固 有値の減衰状況と因子の解釈可能性を検討した結果,1因子解を採用した。表6に因子分析の結果 を示す。また,内的整合性を検討するために,クロンバックのα係数を求めたところ,α= .71とな り十分な値と判断した。そこで,「自己の授業改善への取組状況」8項目を合計した得点の平均値を 算出し,「自己の授業改善」得点(M =22.9,SD =3.35)を求めた。 表5 「生徒の主体的な学習につながる指導方法12項目の因子負荷量(池田,2017) 項目 質問内容 ( α =.77) 因子負荷量 2- 8 問題について,生徒が主体的に探究するようなやり方を取り入れている .643 2- 9 授業では,生徒が他の生徒の考えを聞き,良い点を自分の考えに取り入れる時間を取っている .620 2- 7 授業で生徒から推論や説明を引き出す発問をしている .550 2-10 授業で生徒がお互いに助け合って問題を解決する方法を取り入れている .532 2- 4 授業では,生徒が得意な内容を把握し,さらに向上する方法を助言している .508 2- 5 授業では,生徒が分からない問題について,助言やヒントを示して自力で解決できるように支援している .483 2- 6 生徒に対して,問題の誤答は理解への重要なチャンスだと励ましている .456 2- 3 授業で考え方などを説明するようなことについて,正答がいく通りにもなる内容を取り入れている .413 2-12 授業で生徒から知識を引き出す発問をしている .402 2-11 授業で生徒に自分の学習状況を把握させるような問いかけをしている .371 2- 2 机間指導(机間巡視)によって,生徒の学習状況を把握している .349 2- 1 授業の始めに,生徒が本時のねらいをつかめるように説明している .278 表6 「自己の授業改善への取組状況」8項目の因子負荷量 項目 質問内容(α =.71) 因子負荷量 3- 2 各種の研究結果を活用し,授業改善をしている .680 3- 1 授業改善のために,他校の良い実践例に注目している .653 3- 3 教員として必要な研修課題を把握するために,授業実践を振り返っている .504 3- 6 授業や校務の取り組みで,校外の研修で得た内容を参考にしている .503 3- 5 研修のために研究授業(校外も含む)を提供している .500 3- 8 地域社会の人々や大学等の協力を得た授業実践の経験がある .387 3- 4 生徒の反応を見ながら,授業を改善している .341 3- 7 日常生活に関連した内容を授業の発問に取り入れている .315

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3.1.3 同僚と協働した授業改善への取組状況  「同僚と協働した授業改善への取組状況」7項目の得点分布を確認した。次に,この7項目に対し て主因子法による因子分析を行ったところ,固有値の変化は3.19,1.10,0.67,0.62・・・ となった。そ こで,固有値の減衰状況と因子の解釈可能性を検討し,1因子解を採用した。表7に因子分析の結果 を示す。また,内的整合性を検討するために,クロンバックのα係数を求めたところ,α= .80とな り十分な値と判断した。そこで,「同僚と協働した授業改善への取組状況」7項目を合計した得点の 平均値を算出し,「同僚と協働した授業改善」得点(M =16.8,SD =3.73)を求めた。 3.2 主に担当する科目の違い  本節では ,「生徒の主体的な学習につながる指導方法の数」得点,「自己の授業改善」得点,「同僚 と協働した授業改善」得点について,主に担当する科目の違いによる分析を行う。 3.2.1 一元配置分散分析による分析  主に担当する科目の違いによって,「生徒の主体的な学習につながる指導方法の数」得点が異な るかを検討するために,1要因の分散分析を行った。分散分析の結果,主に担当する科目の違いに よる得点差には有意差はみられなかった(F(3,257)=1.96, n.s.)。  同様に,主に担当する科目の違いによって,「自己の授業改善」得点が異なるかを検討するために, 1要因の分散分析を行ったが,主に担当する科目の違いによる得点差には有意差はみられなかった (F(3,251)=0.47, n.s.)。  さらに,主に担当する科目の違いによって,「同僚と協働した授業改善」得点が異なるかを検討す るために,1要因の分散分析を行った。分散分析の結果,主に担当する科目の違いによる得点差に 5% 水準で有意差がみられた(F(3,252)=3.19, p<.05)。  主に担当する科目の違いによる「生徒の主体的な学習につながる指導方法の数」得点,「自己の授 業改善」得点,「同僚と協働した授業改善」得点について表8に示す。これらのことは , 高校理科教 員の生徒の主体的な学習につながる指導方法の実施状況,自己の授業改善への取組状況は担当する 科目による違いがみられないが,同僚と協働した授業改善への取組状況については,担当する科目 表7 「同僚と協働した授業改善への取組状況」7項目の因子負荷量 項目 質問内容(α =.80) 因子負荷量 3-14 授業改善のために,同じ教科の教員と共に授業の実践研究に取り組んでいる .752 3-11 授業での様々な難しい場面について,同僚に助言を求める .650 3-12 同僚に授業実践に関する新しい取り組みを提案している .635 3-10 同僚と互いに授業を見合っている .621 3-13 授業について,教科会などの会議で「何をどのように学ぶか」について,話し合っている .609 3- 9 教育実践について,同僚と指導内容の認識を共有している .565 3-15 他教科の教員と協働した授業実践をしている .363 3- 7 日常生活に関連した内容を授業の発問に取り入れている .315

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による違いがみられる。 3.2.2Tukey の HSD 法による多重比較  Tukey の HSD 法(5% 水準)の多重比較を行った結果,「生徒の主体的な探究につながる指導方法 の数」得点では,主な担当科目「物理」「化学」「生物」「地学」による違いはみられない。これらは,生 徒の主体的な探究につながる指導方法への取組状況は,主な担当科目「物理」「化学」「生物」「地学」 による違いはみられないことを示す。  同様に,Tukey の HSD 法(5% 水準)の多重比較を行った結果,「自己の授業改善」得点では,主 な担当科目「物理」「化学」「生物」「地学」による違いはみられない。これらは,自己の授業改善への 取組状況は,主な担当科目「物理」「化学」「生物」「地学」による違いはみられないことを示す。  しかし,「同僚と協働した授業改善」得点について,Tukey の HSD 法(5% 水準)の多重比較を行っ たところ,「生物」の方が「物理」よりも有意に高い得点を示した。このことは,「生物」の担当者群は, 「物理」の担当者群よりも同僚と協働した授業改善に向けてより多く取り組むことを示す。

4 総合考察

4.1 主に担当する科目の違いによる特徴  本節では,最初に先行研究である担当教科の違いによる特徴を述べた後に,理科教員の主に担当 する科目「物理」「化学」「生物」「地学」の違いによる特徴について考察を行う。 4.1.1 担当教科「国語」「地歴・公民」「数学」「理科」」「外国語」の違いによる特徴(先行研究)  先行研究によると,表1に示すように「生徒の主体的な探究につながる指導方法の数」得点,「同 僚と協働した授業改善」得点は,担当教科「国語」「地歴・公民」「数学」「理科」「外国語」による違い はみられない。しかし,「自己の授業改善」得点については,「地歴・公民」,「理科」の方が「数学」 よりも5%水準で有意に高い得点を示した(池田,2018)。 表8 主に担当する理科科目の違いによる「指導方法の数」得点,「授業改善」得点の多重比較 物理 (N=50) M(SD) 化学 (N=80) M(SD) 生物 (N=101) M(SD) 地学 (N=23) M(SD) 分散分析 F (TukeyHSD)多重比較 指導方法の数 35.3(4.39) 35.7(4.74) 34.5(4.33) 33.5(6.00) 1.96 n.s. 自己の授業改善 22.5(3.64) 23.1(3.27) 23.1(3.23) 22.5(3.60) 0.47 n.s. 同僚と協働した授業改善 15.6(3.49) 17.1(3.71) 17.4(3.86) 16.0(3.08) 3.19* 生物 > 物理* 註)多重比較の結果は,有意水準5% 未満のみを記載している * p<.05

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 「同僚と協働した授業改善」得点は,担当教科「国語」「地歴・公民」「数学」「理科」「外国語」による 違いはみられない。このことは,高校教員では少なくとも担当教科「国語」「地歴・公民」「数学」「理 科」「外国語」の間では,同僚と協働した授業改善への取組状況に差がみられないことを示す。 4.1.2 担当科目「物理」「化学」「生物」「地学」」の違いによる特徴  本研究では,高校理科教員の主に担当してきた「物理」「化学」「生物」「地学」の4つの科目に注目し, 授業の指導方法の状況,授業改善への取組状況の分析を行い高校理科教員の特徴を明らかにするた めに,M 県内の公立高校全88校に在籍する全ての常勤の理科教員(主幹教諭,教諭,再教諭,常勤 講師)344名対象の質問紙調査を実施し,265名から回答を得た(回収率は77.0%)。  次に,「生徒の主体的な学習につながる指導方法の数の項目」12項目を合計した得点の平均値を 算出し,「指導方法の数」得点(M =34.9,SD =4.69)を求めた(池田,2017)。続いて,「自己の授 業改善への取組状況」8項目を合計した得点の平均値を算出し,「自己の授業改善」得点(M =22.9, SD =3.35)を求めた。最後に,「同僚と協働した授業改善への取組状況」7項目を合計した得点の平 均値を算出し,「同僚と協働した授業改善」得点(M =16.8,SD =3.73)を求めた。なお,池田(2018) による先行研究での調査と本調査研究の実施時期が約2年異なるため,「理科」について先行研究の 結果と本調査研究の結果との比較は行わない。  本研究での分析方法は最初に,表8に示すように教科「理科」の各科目「物理」「化学」「生物」「地学」 の違いによる「生徒の主体的な探究につながる指導方法の数」得点,「自己の授業改善」得点 ,「同僚 と協働した授業改善」得点についての分析を実施した。1要因の分散分析の結果により,主に担当す る科目の違いによって,「生徒の主体的な学習につながる指導方法の数」得点の得点差に有意差が みられなかった。このことは,高校理科教員は主に担当する科目が異なっても,生徒の主体的な学 習につながる指導方法には違いはみられないことを示す。同様に,「自己の授業改善」得点におい ても得点差に有意差がみられなかった。このことは,高校理科教員は主に担当する科目が異なって も,自己の授業改善への取組状況には違いはみられないことを示す。しかし,「同僚と協働した授 業改善」得点では,主に担当する科目の違いによって,得点差に5% 水準で有意差がみられた。この 表1 担当教科の違いによる「指導方法の数」得点,「授業改善」得点の多重比較(池田,2018)【再掲】 国語 (N =57) M (SD) 地歴公民 (N =49) M (SD) 数学 (N =60) M (SD) 理科 (N =51) M (SD) 外国語 (N =84) M (SD) 分散分析 F (TukeyHSD)多重比較 指導方法の数 (4.44)37.3 (5.14)35.2 (5.46)35.9 (4.28)35.3 (4.76)37.4 2.93* n.s. 自己の授業改善 (3.51)22.8 (3.54)23.6 (3.40)21.6 (3.99)23.6 (3.32)22.8 3.03* 地歴公民,理科>数学* 同僚と協働した 授業改善 (3.86)16.6 (3.95)16.5 (3.95)16.8 (3.84)16.8 (3.73)17.0 0.152 n.s. 註)多重比較の結果は,有意水準5% 未満のみを記載している   * p<.05

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ことは,高校理科教員は主に担当する科目の違いによって,同僚と協働した授業改善への取組状況 が異なることを示す。  分析方法の2番目として,具体的な科目名を明らかにするために,多重比較を行うことにした。 Tukey の HSD 法(5% 水準)の多重比較を行った結果,主な担当科目「物理」「化学」「生物」「地学」 による違いは,「生徒の主体的な探究につながる指導方法の数」得点ではみられなかった。同様に, 主な担当科目「物理」「化学」「生物」「地学」による違いは,「自己の授業改善」得点でもみられなかっ た。しかし,「同僚と協働した授業改善」得点では,主な担当科目「物理」「化学」「生物」「地学」によ る違いについて,「生物」の方が「物理」よりも有意に得点が高い。このことは,「生物」の担当者群は, 「物理」の担当者群よりも同僚と協働した授業改善をより多く取り組んでいる。 4.2 学校における理科教員の教員数  本節では,4.1節で明らかになった「生物」の担当者群は,「物理」の担当者群よりも同僚と協働し た授業改善をより多く取り組むという結果の背景について考察を行う。表9に各校での理科教員の 総数を示す。学校全体の理科教員が1名の学校に11名(4.2%),学校全体の理科教員が2名の学校に 30名(11.3%)である。理科教員数が1 ~ 2名の少ない状況で自分の専門科目以外の3科目を担当す る教員が41名(回答者の15.5%)存在する。一方,学校全体の理科教員が9名の学校に15名(5.7%), 学校全体の理科教員が10名の学校に32名(12.1%)である。これらのように,高校理科教員は勤務 校によって理科教員の総数に大きな違いがみられる。しかし,勤務校における理科教員の数が1名 しかいない理科教員は11名(4.2%)であり,残りの理科教員254名(95.8%)は理科教員が複数の学校 に勤務している。そこで,勤務校での理科教員数が1名と複数名の教員間での「同僚と協働した授 業改善」得点について,t 検定によって分析した(表10)。なお,同様に「生徒の主体的な探究につ ながる指導方法の数」得点,「自己の授業改善」得点についても,t 検定によって分析した。分析の 結果,t 検定の結果,「同僚と協働した授業改善」得点について,勤務校での理科教員の数が1名か 表9 各校での理科教員数 各校での理科教員の総数 1人 2人 3人 4人 5人 6人 7人 8人 9人 10人 該当する理科教員数(人) 11 30 24 39 18 49 33 14 15 32 該当する理科教員数(%) 4.2 11.3 9.1 14.7 6.8 18.5 12.5 5.3 5.7 12.1 表10 勤務校での理科教員の総数の違いによる「同僚と協働した授業改善」得点の t 検定 勤務校での理科教員の総数 1人(N=10) M(SD) 2人以上(N=244)M(SD) t 値 指導方法の数 36.8(7.18) 34.8(4.57) -0.86 自己の授業改善 23.2(2.56) 22.9(3.39) -0.28 同僚と協働した授業改善 15.5(4.80) 16.9(3.67) 1.22

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複数名による有意な差はみられなかった(t=-0.86,df=9.29,n.s.)。同様に,「生徒の主体的な探 究につながる指導方法の数」得点(t=-0.27,df=253,n.s.),「自己の授業改善」得点(t=1.22, df=254,n.s.)についても,勤務校での理科教員の数が1名か複数名による有意な差はみられなかっ た。これらの結果より,勤務校での理科教員の数が1名であることと生徒の主体的な探究につなが る指導方法,自己の授業改善への取組状況,同僚と協働した授業改善への取組状況との関係はみら れない。  なお,勤務校での理科教員数が1名である学校に勤務する11名について,主に担当する科目を分 析した結果,「物理」3名,「化学」4名,「生物」4名であった。 4.3 学校における理科教員の「物理」「化学」「生物」「地学」の科目毎の教員数  4.2節では学校における理科教員の総数に注目して考察を行ったが,4.1節で明らかになった「生物」 の担当者群は,「物理」の担当者群よりも同僚と協働した授業改善をより多く取り組むという結果と の関連性は見出せなかった。本節では,学校における理科教員の「物理」「化学」「生物」「地学」の科 目毎の教員数に注目して,考察を進めていく。表11に各校での理科教員の教科毎の教員数を示す。  「物理」「生物」について,最初は表11の各校での理科教員の各科目の教員数に注目してみる。理 科教員の総数に関わらず各科目の教員数が1名の場合,「物理」では32名であり,「物理」の教員に占 める割合は60.4%となった。一方,「生物」では22名であり,「生物」の教員に占める割合は21.4%で あった。「物理」では,60.4%の教員が自分と同じ科目を専門科目とする教員がいない環境で勤務し ているが,「生物」では,21.4%の教員が自分と同じ科目を専門科目とする教員がいない環境で勤務 しており,「生物」では「物理」の約1/3にしか過ぎない。M 県の公立高校の教員は初任者では4年, 2校目以降は3年~ 10年程度で転任を経験することを考慮すると,「物理」と「生物」とでは,「物理」 の方が自己の専門科目が1名の学校に転任する可能性が「生物」よりも高い。さらに,「生物」では, 転任先に自分以外の主に「生物」を担当する教員がいる可能性が高い。これらのことは,理科教員が 授業改善に取り組む際,同じ科目の教員が同僚にいるかどうかに直結する。言い換えれば,「物理」 表11 各校での理科教員の科目毎の教員数 各校での理科教員の科目毎の教員数 1人 2人 3人 4人 各科目の教員数 物理 (人) 32 12 9 -(%) 60.4% 22.6% 17.0% -化学 (人) 28 36 18 -(%) 34.1% 43.9% 22.0% -生物 (人) 22 38 39 4 (%) 21.4% 36.9% 37.9% 3.9% 地学 (人) 25 2 - -(%) 92.6% 7.4% -

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-では同じ科目の同僚がいない可能性が高く,逆に「生物」では同じ科目の同僚がいる可能性が高い。 このような経験が定年退職までの期間続いていく。これらが,同僚と協働した授業改善への取組状 況に関係していると窺える。  さらに,これらのことから,高校理科教員にとって教科「理科」というカテゴリよりも,自己の専 門科目である「物理」「化学」「生物」「地学」の方を強く意識していることを示唆する。高校理科教員 は,理科以外の教科の教員からは,教科「理科」の教員と認識されているが,高校理科教員自身は教 科「理科」教員よりも,自己の専門科目の教員という意識の方が強いと窺えよう。 4.4 今後に向けて  前節までの本研究の分析より,同僚と協働した授業改善については,「生物」担当者の方が「物理」 担当者よりも多く取り組んでいることが明らかになった。その背景として,「物理」では同じ科目の 同僚がいない可能性が高く,逆に「生物」では同じ科目の同僚がいる可能性が高いことから,同じ科 目の同僚の存在の有無が焦点として,浮かび上がってきた。高校の場合,授業改善について科目固 有の内容が関わってくる場合があるため,同じ科目の同僚が果たす役割が大きい。このことは,理 科教員の授業改善の取組について,校内での取組に加え,校外の同一科目の担当者との連携した授 業改善の取組を意識的に推進していく必要性がある。具体的な方策としては,ICT 利活用による 校内外の教員との情報共有を進めることや生徒の実態が似ている学校どうしでの実践研究の推進等 を通して,協働した授業改善に取り組む機会を確保していくことが考えられよう。 【註】   本調査は,「高校理科教員の研修経験と指導方法に関する調査」として実施した。なお,2014年度東北大学大学院 教育学研究科教育ネットワークセンタープロジェクト研究経費「教師のライフコースにおける職能成長と研修の意 義に関する調査研究-東北大学教育指導者講座受講者の追跡調査を通して-」(研究代表:清水禎文)の助成を得て 実施している。 【引用文献】 池田和正(2013) 高校教員の「職能発達」と勤務経験に関する研究,東北大学大学院教育学研究科修士論文,(未公刊) 池田和正・有本昌弘(2014) 高校教員の担当教科の違いによる指導方法の特徴- PISA を背景にした「学びの学習力」 に注目して-,日本教科教育学会誌,37(2):1-13. 池田和正(2015) 実践的な教育研究経験の有無による高校教員の指導方法の特徴- PISA を背景にした「学びの学習 力」との関連に注目して-,東北大学大学院教育学研究科研究年報,64(1):165-178. 池田和正(2016) 授業改善につながるティーム・ティーチングの経験-高校教員の特別支援学校の勤務経験に注目し て- , 東北大学大学院教育学研究科研究年報,65(1):93-110. 池田和正(2017) 教科「情報」の指導経験と形成的アセスメントとの関係-高校理科教員の主体的な学習につながる指 導方法に注目して-,東北大学大学院教育学研究科研究年報, 65(2):153-168.

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池田和正(2018) 形成的アセスメントを志向した授業への取組-生徒の学習の自律性を支える教師の「探究」経験を手 がかりに―,東北大学大学院教育学研究科研究年報, 66(2):203-222.

池田和正(2019) 教科の枠組みを超えた授業の実践経験と職能発達との関係の一考察―形成的アセスメントに注目し た高校理科教員への質問紙調査を通して―,東北大学大学院教育学研究科研究年報,67(2):181-193.

James. M., Black, P., Carmichael, P., Conner, C., Dudley, P., Fox, A., Frost, D., Honour, L., MacBeaath, J., McCormick, R., Marshall, B., Pedder, D., Procter, R., Swaffield, S. and Wilaim, D.(2007). Improving Learning How to Learn: Classroom, schools and networks. London Routledge.

水原克敏(2010) 学習指導要領は国民形成の教科書-その能力観と人間像の歴史的変遷-,東北大学出版会

清水禎文・池田和正(2015) 高校教員の研修経験と指導方法に関する調査研究,東北大学大学院教育学研究科教育ネッ トワークセンター年報,15:15-28.

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The purpose of this study is to focus on four subjects of "physics", "chemistry", "biology", and "geology", which are taught by high school science teachers, and to analyze their efforts to improve their own lessons. In this study, a questionnaire survey was conducted and 265 high school science teachers answered. Based on the questionnaire survey data, the difference between the subjects "physics", "chemistry", "biology", and "geology", how to improve their own lessons, and collaborating with colleagues. We analyzed how to improve. As a result of the analysis, there was no difference between the courses taught “physics”, “chemistry”, “biology”, and “geology” and the way to improve their classroom practices. However, it became clear that "biology" teachers are more engaged in efforts to improve classroom practices in collaboration with colleagues than "physics" teachers. As a background, it became clear that “biology” teachers are more likely to have much communication with teachers of the same subject at their school than “physics” teachers. This is because it is easier for “biology” teachers to work on improving classroom practices while collaborating with colleagues than “physics” teachers.

KEY WORDS: Colleagueship, Faculty Development, Formative Assessment, How to Improve Classroom Practices, Curriculum

A Study of Efforts to Improve Classroom Practices by High

School Science Teachers:

Pay Focusing on The Difference in Subjects

Kazumasa IKEDA

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参照

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