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〈著書紹介〉 松森晶子,新田哲夫,木部暢子,中井幸比古 編著『日本語アクセント入門』

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Academic year: 2021

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国立国語研究所学術情報リポジトリ

〈著書紹介〉 松森晶子,新田哲夫,木部暢子,中井幸

比古 編著『日本語アクセント入門』

著者

木部 暢子

雑誌名

国語研プロジェクトレビュー

3

3

ページ

193-194

発行年

2013-03

URL

http://doi.org/10.15084/00000722

(2)

193

国語研プロジェクトレビュー Vol.3 No.3 2013 NINJAL Project Review Vol.3 No.3 pp.193―194(March 2013)

国語研プロジェクトレビュー  〈著書紹介〉

木部 暢子

松森晶子,新田哲夫,木部暢子,中井幸比古 編著 『日本語アクセント入門』 2012 年 9 月 三省堂 A5 判 223 ページ 1,900 円+税 『日本語アクセント入門』というと,標準語のアクセントを学習するための本だと思われ る方がいらっしゃるかもしれません。しかし,本書はそのような本ではなく,日本語のアク セントのしくみや成り立ちについて解説した本です。 ひとくちに「日本語」といっても,その中にはいろいろな方言が存在します。そして,方 言も標準語と同じように,それぞれ整合性のある「しくみ」を持っています。本書は,その ような各地の方言を積極的に取り上げ,東京方言(標準語のもとになっている方言)や他の 方言と比較しながらアクセントのしくみについて考え,最後に日本語アクセントの歴史に言 及するという内容になっています。 本書は,次にあげる13 章で構成されています。各章で取り上げた方言をカッコの中にあ げておきます。  第1 章  アクセントとは何か(東京,高知,鹿児島)  第2 章  アクセントのしくみ(東京,青森県弘前)  第3 章  アクセントの規則(東京)  第4 章  助詞のアクセントと句音調(東京,青森県弘前,鳥取県湯梨浜町)  第5 章  2 型アクセント−鹿児島方言(鹿児島,長崎,屋久島,種子島)  第6 章   3 型アクセント−隠岐島の方言(島根県隠岐島,沖縄県多良間島,鹿児島県 沖永良部島,鹿児島県徳之島)  第7 章  アクセントの単位(東京,京都,鹿児島,長崎)  第8 章  声調のある方言(京都,高知,香川県伊吹島)  第9 章  外来語のアクセントと生産性(東京,京都)  第10 章 複合語のアクセント(1)(東京)  第11 章 複合語のアクセント(2)(東京,京都,岩手県雫石)  第12 章  アクセントの歴史を知る(東京,京都,広島,高知,大分,鹿児島,香川県 伊吹島,岐阜県垂井,讃岐,瀬戸内海の島々)  第13 章 アクセントと音韻(東京,富山,島根県松江,金沢)

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木部 暢子

194

国語研プロジェクトレビュー Vol.3 No.3 2013 上の諸方言のうち,東京方言,青森県弘前方言,岩手県雫石方言などは,ピッチの「下が り目」や「上がり目」によってアクセント型が区別される方言,京都方言や高知方言,香川 県伊吹島方言などは,ピッチの「下がり目」に加え,文節全体にわたる「式」(「声調」と呼 ぶこともあります)によってアクセント型が区別される方言,鹿児島方言や長崎方言,島根 県隠岐島方言などは,語句の長さにかかわらず,アクセント型の種類がN 個と決まってい る方言です(N は 1 以上の整数を表します。N の値は方言によって異なります)。アクセン ト体系を異にするこれらの方言を見ることによって,アクセントが整合性のあるしくみを 持っていること,諸方言のアクセントがお互いに対応関係を持ちながら存在していること, そこから諸方言の系統関係やそれぞれの方言がたどってきた歴史が推理できることなどを 知ってもらおうというのが本書のねらいです。 そのために,本書ではさまざまな工夫をこらしています。例えば,本書は各章とも《基本 編》と《発展編》の2 部構成になっています。《基本編》では,アクセントのしくみを学ぶ 上で必須の事柄について解説し,《発展編》ではもう少し掘り下げた内容や応用的な内容に ついて解説しています。《基本編》だけ読んでも日本語のアクセントの全体像がつかめるよ うになっていますが,《発展編》まで読み進めれば,さらに理解が深まることと思います。 また,各章にはColumn と「練習問題」を設けています。Column の内容は,具体的な用 例の追加だったり,現象の背後に隠れている問題点の指摘だったり,また,関連する話題の 提供だったりと,さまざまです。「練習問題」では,その章で取り上げた事柄がきちんと理 解できたかどうかを問う問題を用意しています。問題を解くためのヒントや参照ページを示 していますので,馴染みのない方言でもきちんと解答が出せるようになっています。これら を通して,日本語アクセントについて何らかの「発見」を経験していただければ幸いです。 なお,日本語にはこの他に,無アクセント(無型アクセント,一型アクセントと呼ぶこと もあります)の方言があります。単語に一定の決まった型がなく,「雨」と「飴」などの語 のアクセントを区別しないような方言のことで,宮城県や福島県,熊本県,宮崎県などに分 布しています。本書では,このような方言については取り上げていません。それは,本書の 目的がアクセント型を観察することによって,アクセントのしくみや歴史を考えるところに あったためです。しかし,日本語アクセントの入門書としては,無アクセントの解説も必要 です。次の機会にはぜひ,取り上げたいと思います。

木部 暢子

(きべ・のぶこ) 国立国語研究所副所長,時空間変異研究系長。博士(文学)(九州大学)。鹿児島大学名誉教授。2010 年 4 月より現職。 主な著書・論文:『鹿児島県のことば』(共著,明治書院,1997),『西南部九州二型アクセントの研究』(勉誠出版, 2000),『方言の形成』(共著,岩波書店,2008). 受賞:新村出財団研究助成(新村出財団,1990). 社会活動:日本語学会理事,日本音声学会評議員,日本方言研究会世話人,日本学術会議連携会員.

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