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日本産イシガイ科貝類の保全に向けた分類および遺伝的多様性に関する研究

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Academic year: 2021

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全文

(1)

局貝 名 氏 生年月日

学位論文審査結果の報告書

本籍(国籍)

瀬尾

学位の種類

学位記番号

学位授与の条件

(博士の学位)

四1ヲ、・平成 62年12月

友樹 香川県 博

士(農学

第 239 号

学位規程第5条該当

文題目 14日 日本産イシガイ科貝類の保全に向けた分類および遺伝的

学位論文受理日

学位論文審査終了日

審査委員

多様性に関する研究 平成31年

平成31年

1月 2月 (主査) 1 5日 4日 (副主査) 松本 (副主査) (副査) 能導教員) 近藤 光朗 城島 シン 透 タナンゴナン _ノψ/ タナンゴナン 39 -亀、

1

二一口 △冊

(2)

イシガイ科貝類Unionidaeは,二枚貝綱に属し北半球の淡水域に広く生息、する.淡水に生息するベン トスの中では,比較的大型でろ過食性であること,水質に対する影響,絶滅危恨種である淡水魚類夕 ナゴ類の産卵に用いられることなどから,淡水生態系において重要な位置を占めている.イシガイ 科貝類は世界的に著しい減少傾向にあるとされ,既知の日本産イシガイ科貝類14種のうちⅡ種が環 境省レッドリストに掲載されている.種を保全するためにはまず保全対象を明確化することが必要 である.しかし,イシガイ科貝類は同種内においても水流や底質などの環境条件によって容易に殻 形態が変化することが知られ,分類に著しい混乱をきたしてきた.そのため,日本産イシガイ科貝類 はいまだに分類学的混乱が解決されたとはいえず,多様性の評価についても不十分である.加えて, 殻形態を用いた種同定では誤同定が生じやすく,保全計画に悪影響を及ぽす可能性が示唆されてい る.近年では殻形態だけでなく,軟体部の形質を用いた分類学的検討も行われつつぁるが,日本産イ シガイ科貝類ではいまだ軟体部の形質を用いた検討が行われたことはない.また,イシガイ科貝類 は,淡水域に生息、することから幼生の分散が淡水系に限られ,地理的に隔離されやすく,潜在的に地 域固有の系統が存在することが予想される.このような遺伝的に地域固有な集団は,進化的に重要 な単位であると考えられ,とれらの集団を保全することは,遺伝的多様性の保全上重要である.しか しながら,日本におけるイシガイ科貝類に対する遺伝的多様性についての知見は十分ではない.以 上のことより,①流水生イシガイ類における地域系統の特定,(ii)軟体部の検討による新たな分類形 質の探索,(iii)オトコタテボシガイh1νeおi御iore加放π郷の分類学的再検言寸を本研究の目的とした ①流水生イシガイ類における地域系統の特定 特に減少傾向が強い流水生イシガイ類7種を対象に,m田NAマーカーを用いた包括的な系統地理 学的検討を行い,保全単位となりうる地域系統の特定を行った.その結果,7種のうち4種で単系統と なる遺伝的固有性の高い地域系統が認められ,進化的に重要な単位が存在することが明らかとなっ た.さら1こ,マツカサガイPr0πod1ι1αriajaPαπeπSis,カタノ\ガイ0h0ναlis01πieπSiSで1ネ遺イ云的に顕著に 異なる系統が見いだされ,隠蔽種が存在する可能性が示唆された.今後の保全・管理計画の設定に は,これらの地域集団を少なくともひとつの保全単位として管理を行うことが望まれる.特に,ニセ マツカサガイ1.y伽αg卿e那iS三重集団およびヨコハマシジラガイ1.jokohα形e加is・マツカサガイ関 東集団は,遺伝的固有性が高く,遺伝的多様性も低いことから保全優先度は高いと考えられる.また, カタハガイでは,2地点において別系統のハプロタイプが確認され,他地域からの人為的な移入を強 く示唆した.さらなる分布調査や詳細な遺伝解析が,在来個体群の実態の解明と厳密な保全単位の 設定に必要である 文内 ノ'、 ヒニニι (ii)軟体部の検討による新たな分類形質の探索 殻形態が近似しているマツカサガイ,.jaP伽e那iSとオトコタテボシガイ属1加ersi御i0を対象に,軟体 部の分類形質の探索と分子生物学的手法による検討を行った.その結果,殻形態による同定結果と, 分子生物学的手法による同定結果は一部の個体において不整合であり,殻形態による同定では誤同 定が生じやすいことが改めて示唆された.一方で,軟体部における分類形質の検討の結果,両系統群 間で出水管形態に差異が見られ,出水管形態と分子生物学的手法による同定結果は一致した.この ため,水管形態は両系統群間において有効な分類形質であると考えられ,今後は非侵襲的かつ正 確な同定方法として,モニタリングなどに用いられることが期待される 40

(3)

-(i註)オトコタテボシガイn1νeおi柳iore加放π郷の分類学的再検言寸

絶滅危愼種である琵琶湖固有種オトコタテボシガイ1.ル加卿加に対して分類学的再検討を行い,

オトコタテボシガイがT沖e1と1沖eⅡの2系統から構成される多系統群であることを明らかにした T沖e1は形態学的検討および分子系統学的解析により,ニセマツカサガイに近縁な琵琶湖圖有種で

あることが示唆された.一方,TypeⅡは,東・東南アジアに分布するια形PM詔mleαガと非常に類似した

ハプロタイプを共有しており,地理的分布と系統関係が一致しなかった.さらに,TypeⅡ,1

ra'脚'απ弘S,そのシノニムである1.hシαSeiは,内肋の隆起,左殻の擬主歯などの形態学的特徴がし.1eah

と一致し,これらの種が同一種である可能陛が示唆された.このため,TypeⅡ←オトコタテボシガ

イ1.re加伽細)は琵琶湖に人為的に移入された外来種であることが推測されたが,明確な結論を得 ることはできなかった.少なくとも,オトコタテボシガイが多系統群であることは明らかなことか ら,オトコタテボシガイに対する保全評価は今後,再検討が行われるべきである 本研究により得られた遺伝的多様性,解剖学,分類学的知見が,今後の日本産イシガイ科貝類の保全 に貢献する基礎的な知見となることが期待される 41

(4)

-イシガイ科貝類は殻形呉の爰異が大きいため,同定が困難なグループである。そのため,分類は いまだに混乱してぃる。近年,分子系統学的研究が行われるようになり,隠蔽種や遺伝的に地域固 有の集団の存在が指摘されるようになってきた。しかしながら,日本ではそのような研究はほとん どなく,種間の系統関係を調ベたものがあるだけである。

本論女は,第1章において流水生イシガイ類7種にっいて遺伝子解析を行い,複数の隠蔽種の存

在を明らかにした。さらに,地域固有性の高い種内系統の地理的分布パターンが日本列島の地史と

関連してぃることを示唆し,種によって異なる分布パターンは日本ヘの侵入時期の違いだけでな く,生態学的特徴の違いにも起因すると考察している。このような視点はユニークなものであり, イシガイ類の種分化の過程を解明するのに今後役に立つと考えられる。 第2章においては,殻形態が特に近似しているグループを対象にして,殻形態, DNAマーカーと 出水管形態それぞれの同定結果を相互に比較することで,殻形態による同定にはかなりの頻度で間 違いが起とるが,3つの方法を組み合わせれば正しく同定できることを明らかにした。出水管形態 今 は残念ながら種レベルの同定形質ではなかったが,属レベルの同定形質になる可育断生がある。 後,このような非侵襲的な同定方法が確立されれば,野外調査等で非常に重宝されることは間違い ない。その可育断生を示したことは高く評価すべきであろう。 第3章においては,従来「オトコタテボシガイ」とされてきたものが多系統であることを明らか にした。さらに,近縁種やタイプ標本との比較も行い,オトコタテボシガイ属の分類学的再検討の 必要性を示した。サンプルが限られたため,明快な結論を得ることはできなかったが,今後の研究 の進展が期待される結果であった。 本研究によって得られた知見は,イシガイ科貝類の分類だけでなく,その保全にも役立つもので ある。よって、本論文は博士(農学)の学位論文として価値あるものと認める。なお、審査にあ たっては、論文に関する専攻内審査および公聴会など所定の手続きを経たうえ、平成31年2月4日、 農学研究科教授会において、論文の価値ならびに博士の学位を授与される学力が十分であると認め られた。 文 査 42 -の ヒ=ニ Jノ

参照

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