1 はじめに 脊髄損傷は,中枢神経である脊髄を損傷することで四 肢,体幹,膀胱の完全または不全麻痺を引き起こす病態 である1).日本では,毎年,脊髄損傷を新規に受傷する 患者数は約5000例と推定され,在宅を含め,身体障害 者福祉法による手帳所持者から脊損者は約8万人(18歳 以上)と推定されている2).また,脊髄損傷の原因とし ては,若年者はスポーツ,特に,水飛び込みの事故や自 動二輪車の事故,高齢者は転倒・転落事故が多く,交通 事故は各年齢層を通じて多いことが指摘されている3). 労働現場においても,作業中の事故によって脊髄損傷 が発生している.新宮らの報告4)によると,労働災害に よる脊髄損傷(以下,せき損災害)は,年間約950人の 発生と推計されている.一方,平成29年の休業4日以 上の労働災害発生数が120,460人であることから5),せ き損災害の発生率は高くないと言える.しかし,脊髄損 傷を受傷した場合,患者が早期に現場復帰できる割合は 十数%と非常に低いことが報告されており6),7),せき損 災害は重篤度が高く,受傷後の患者や家族,関係者にと っても重い負担となるため,看過できない問題である. 以上のことから,著者らが所属する労働者健康安全機 構では,労働者に負担を与える重篤な傷害として脊髄損 傷に着目し,せき損災害の発生傾向の分析と,予防のた めの工学的対策,生活支援策に関する総合的な研究を行 っている.このうち,本稿では,厚生労働省が保有する 労働災害データを基礎データとしたせき損災害の発生傾 向の分析と繰り返し発生している災害事例の抽出をし, せき損災害の特徴をとらえることを目的とした. 2 分析対象データ せき損災害のデータは,厚生労働省が所有する平成 24~26年に発生した事例で,墜落・転落,転倒,はさ まれ・巻き込まれの3種類の事故の型のデータ387件を 抽出した.これらの3種類の事故の型に限定したのは, 事前の予備分析において,せき損災害が3種類の事故の 型でしか見られなかったためである.なお,本調査では, 交通事故は作業中の事故とは特徴が異なると考え,分析 対象から除外した. 対象としたせき損災害は,事故の型,業種,起因物, 墜落・転落時の高さ,被災者に関連する情報(年齢,性 別,休業見込み日数,傷病部位)に関して分析を行った. このとき,事故の型,業種,墜落・転落時の高さ,年齢, 性別については,先行研究と比較することにより,せき 損災害の発生傾向の時間的な変化を調べた.また,厚生 労働省が公表している平成24~26年に発生した全労働 災害の前述の3つの事故の型のデータ(以下,全災害)8) と比較することにより,せき損災害に特徴的な発生傾向 を調べた.ただし,項目によっては全災害データが公表 されていないものがあったため,その場合は厚生労働省 の全労働災害の約1/4を無作為抽出した死傷(死亡・休 業4日以上)データベース(以下,1/4抽出災害)9)や 総務省の労働力調査10)の雇用者数のデータを比較デー タとして使用した.
労働災害による脊髄損傷の発生傾向の分析
-労働災害データを対象として-
高 橋 明 子
*
1,梅 崎 重 夫
*
1 労働災害による脊髄損傷(以下,せき損災害)の発生率は高くない.しかし,患者の早期の現場復帰率は 低く,患者本人や家族,関係者にとって重い負担となるため看過できない問題である.本調査は,厚生労働省 が保有する労働災害データを対象に,せき損災害の発生傾向を分析しその特徴をとらえることにより,せき損 災害防止に資する知見を得ることを目的とした.平成24~26年に発生した墜落・転落,転倒,はさまれ・巻き 込まれによるせき損災害387件を対象とした.昭和50年代に実施された先行研究と比較し,せき損災害の発生 傾向の時間的変化を検討した結果,建設業が多いことは共通したが,近年,第三次産業や転倒によるせき損災 害の割合が大幅に増加していた.また,平成24~26年に発生した墜落・転落,転倒,はさまれ・巻き込まれの 全労働災害,1/4抽出災害,平均雇用者数と比較し,せき損災害に特徴的な発生傾向を調べた結果,建設業, 墜落・転落災害,男性,高年齢労働者は有意にせき損災害の発生する割合が高かった.一方,せき損災害に顕 著な起因物はなかった.さらに,墜落・転落によるせき損災害は3m未満からの墜落・転落により6割近くが発 生しており,1m以上の高さからの墜落・転落であれば重症化する可能性が認められた.本調査の結果により, せき損災害に遭いやすい業種や労働者のプロフィール,せき損災害の重篤度が明らかとなり,労働災害防止の ための基礎データとして活用されることが期待される. キーワード: 労働災害,脊髄損傷,災害分析,発生傾向,墜落・転落災害,高年齢労働者原稿受付 2018年10月29日(Received date: October 29, 2018) 原稿受理 2019年1月16日(Accepted date: January 16, 2019)
J-STAGE Advance published date: February 18, 2019 *1労働安全衛生総合研究所
連絡先:〒204-0024 東京都清瀬市梅園1-4-6
3 分析結果 1)業種と事故の型 本研究では,表1に示すように,厚生労働省の業種分 類を基にして業種を5種類に分類し,集計を行った. 業種と事故の型の関係を調べるため,表2-1に業種と 事故の型のクロス集計表を示す.下部右端の合計(全業 種)を見ると,せき損災害は,墜落・転落が最も割合が 大きく65.9%,次いで転倒が30.5%,はさまれ・巻き 込まれが3.6%であった.一方,3事故の型の全災害は, 転倒が42.3%で最も割合が大きく,墜落・転落が32.8%, はさまれ・巻き込まれが24.9%で,せき損災害と全災 害は各事故の型の占める割合が異なった. また,どの業種もせき損災害の墜落・転落の割合が全 災害の墜落・転落の割合よりも高く,全災害の墜落・転 落の割合が18.3~62.4%であったのに対し,せき損災害 が47.8%~83.1%を占めていた.3種類の事故の型それ ぞれのせき損災害の割合と全災害の割合を比較するた め,業種ごとにχ二乗検定を行った結果,すべての業種 において有意であった.そこで,残差分析を行った結果, せき損災害は,どの業種も墜落・転落の割合が有意に高 く(すべての業種でp<.01),第三次産業は,転倒とはさ まれ・巻き込まれが,製造業と運輸交通・貨物取扱業は, は さ ま れ・ 巻 き 込 ま れ が 有 意 に 低 か っ た( す べ て p<.01). 表2-2に3つの事故の型と業種のクロス集計表を示す. まず右端の合計(3事故の型)のせき損災害を見ると, 建設業が33.6%で最も割合が高く,次いで第三次産業 が29.7%,製造業が16.3%,運輸交通・貨物取扱業が 本研究の業種分類 厚生労働省による業種分類 建設業 「建設業」 第三次産業 「商業」,「金融・広告業」,「映画・演劇 業」,「通信業」,「教育・研究業」,「保 険・衛生業」,「接客娯楽業」,「清掃・と 畜業」,「官公署」,「その他の事業」 製造業 「製造業」 運輸交通・貨物取扱業 「運輸交通業」,「貨物取扱業」 その他の業種(鉱業,農林 業,畜産・水産業) 「鉱業」,「農林業」,「畜産・水産業」 108 (83.1) 17816 (62.4) <.001 55 (47.8) 19034 (24.6) <.001 33 (52.4) 8493 (18.3) <.001 57 (49.6) 48587 (62.7) 25 (39.7) 14508 (31.3) 墜落・転落 転倒 はさまれ・巻き込まれ 18 (13.8) 5074 (17.8) 4 (3.1) 5654 (19.8) 3 (2.6) 9832 (12.7) 5 (7.9) 23371 (50.4) 合計 130 (100) 28544 (100) 115 (100) 77453 (100) 63 (100) 46372 (100) 37 (72.5) 12859 (47.6) <.001 22 (78.6) 2806 (41.4) <.001 255 (65.9) 61008 (32.8) <.001 14 (27.5) 8557 (31.7) 4 (14.3) 2108 (31.1) 118 (30.5) 78834 (42.3) 墜落・転落 転倒 はさまれ・巻き込まれ 0 (0.0) 5600 (20.7) 2 (7.1) 1859 (27.4) 14 (3.6) 46316 (24.9) 合計 51 (100) 27016 (100) 28 (100) 6773 (100) 387 (100) 186158 (100) 運輸交通・貨物取扱業 (鉱業,農林業,畜産・水産業)その他業種 合計(全業種) 件数(%) p 件数(%) p 件数(%) p せき損災害 全災害 せき損災害 全災害 せき損災害 全災害 第三次産業 製造業 件数(%) p 件数(%) p 件数(%) p せき損災害 全災害 せき損災害 全災害 せき損災害 全災害 建設業 注1) 注2) 108 (42.4) 17816 (29.2) <.001 .001 4 (28.6) 5654 (12.2) - 130 (33.6) 28544 (15.3) <.001 115 (29.7) 77453 (41.6) 55 (21.6) 19034 (31.2) 33 (12.9) 8493 (13.9) 37 (14.5) 12859 (21.1) 18 (15.3) 5074 (6.4) 57 (48.3) 48587 (61.6) 25 (21.2) 14508 (18.4) 14 (11.9) 8557 (10.9) 3 (21.4) 9832 (21.2) 5 (35.7) 23371 (50.5) 0 (0.0) 5600 (12.1) 63 (16.3) 46372 (24.9) 51 (13.2) 27016 (14.5) 建設業 第三次産業 製造業 運輸交通・貨物取扱業 その他業種(鉱業,農 林業,畜産・水産業) 22 (8.6) 2806 (4.6) 4 (3.4) 2108 (2.7) 2 (14.3) 1859 (4.0) 28 (7.2) 6773 (3.6) 合計 255 (100) 61008 (100) 118 (100) 78834 (100) 14 (100) 46316 (100) 387 (100) 186158 (100) 全災害 合計(3事故の型) 件数(%) p 件数(%) p 件数(%) p 件数(%) p せき損災害 全災害 せき損災害 全災害 せき損災害 全災害 せき損災害 墜落・転落 転倒 はさまれ・巻き込まれ 注1) 注2) 注3)
13.2%であり,これら4業種で92.8%と大きな割合を占 めた.一方,3事故の型の全災害は,第三次産業が41.6 %で最も割合が大きく,製造業が24.9%,建設業が 15.3%,運輸交通・貨物取扱業が14.5%であり,4業種 で96.4%を占めていた.このことから,せき損災害も 全災害も4業種がほとんどの割合を占めていたことは共 通していたが,各業種が占める割合は異なった. 次に,各事故の型のせき損災害と3事故の型の全災害 の各業種の割合を比較すると,どの事故の型も建設業の せき損災害の割合が高く,3事故の型の全災害の建設業 の割合が6.4~29.2%であったのに対し,せき損災害の 割合は15.3~42.4%を占めていた.各業種のせき損災害 の割合と全災害の割合を比較するため,件数の少なかっ たはさまれ・巻き込まれを除外し,事故の型ごとにχ二 乗検定を行った結果,すべての事故の型で有意であった. そこで,残差分析を行った結果,せき損災害は,墜落・ 転落においては建設業とその他の業種が有意に割合が高 く(どちらもp<.01),第三次産業と運輸交通・貨物取扱 業が有意に低かった(第三次産業:p<.01,運輸交通・ 貨物取扱業:p<.05).転倒においては,建設業が有意に 割合が高く(p<.01),第三次産業が有意に低かった (p<.01).合計については,建設業とその他の業種が有 意に割合が高く(どちらもp<.01),第三次産業と製造業 が有意に低かった(どちらもp<.01).以上のように,せ き損災害は全災害の割合に比べて,建設業に多いことが 明らかとなった. 2)事故の型と起因物 表3に事故の型と起因物のクロス集計表を示す.せき 損災害は,墜落・転落の起因物については,動力運搬機 のトラック(16.5%),用具のはしご等(14.5%),仮設 物,建築物,構築物等の屋根・はり・もや・けた・合掌 (10.6%)が多く,転倒の起因物については,仮設物, 建築物,構築物等の通路(30.5%),作業床・歩み板(13.6 %)と環境等(12.7%)が多かった.しかし,全災害の 割合と比較して極端に大きな割合を占める起因物はなか った. 3)業種と年齢 表4に業種と年齢のクロス集計表を示す.本調査で対 象とした3事故の型の年齢別の全データは公表されてい なかったため,死傷(死亡・休業4日以上)データベー ス9)の約1/4抽出災害から該当データを抽出し比較した. このとき,年齢が不明なデータ(せき損災害1件,1/4 抽出災害15件)は分析から除外した.下段右端の合計(全 業種)を見ると,せき損災害は,1/4抽出災害よりも, 60-69歳,70歳以上の高年齢の割合が高かった.また, 各業種を見ても同様の傾向が見られ,せき損災害は1/4 抽出災害よりも60-69歳,70歳以上の割合が高く,建設 業,製造業,運輸交通・貨物取扱業では50-59歳の割合 も高かった.そのため,せき損災害と1/4抽出災害とで 高年齢の割合に差があるかについて調べるため,50歳 上は除外して,それぞれχ二乗検定を行った.その結果, どの業種も50歳以上,60歳以上はせき損災害の割合が 1/4抽出災害よりも有意に高く,どの業種も高年齢労働 者ほどせき損災害に遭いやすいことがわかった. 4)業種と性別 性別については全労働災害の性別データが公表されて いないため,総務省の労働力調査10)で公表されている 平成24~26年の雇用者数を性別ごとに平均し,性別の 割合を算出してせき損災害の割合と比較した.このとき, 厚生労働省の業種分類と総務省の日本標準産業分類は完 全には一致しないため,業種は表5のように対応させた. 表6に業種と性別のクロス集計表を示す.各業種の平 均雇用者数を見ると,第三次産業以外は男性の割合が高 く,61.6~84.5%を占めた.これに対し,せき損災害の 男性の割合は75.7~100%であり,せき損災害の男性の 割合はさらに高かった.平均雇用者数の性別の割合を基 に,せき損災害の性別の直接確率計算をしたところ,す べての業種で有意であったことから,雇用者数における 男性の割合よりも,せき損災害に遭う男性の割合のほう が有意に高いことが示された. 5)墜落・転落の高さと起因物,傷病部位,休業見込み 日数 墜落・転落の高さとせき損災害の関係を調べるため, 墜落・転落データのうち,報告書に高さの記述があった データ137件を抜き出した.表7に墜落・転落の高さと 起因物,傷病部位,休業見込み日数のクロス集計表を示 す. 表7の下部の割合を見ると,2m未満の高さからの墜 落で30.0%を占め,3m未満で55.5%を占めた. 起因物はデータ数が少ないため明確な特徴は認められ ないが,2m未満の低位置からの墜落・転落の起因物は, トラックや主に脚立を含むはしご等,足場が多かった. 2m以上の高所になると,それらの起因物も一定数見ら れたが,加えて,屋根・はり・もや・けた・合掌が多く 見られた. 傷病部位は,どの高さも頚部の損傷の割合が最も大き く,37.5~77.8%を占めた. また,休業見込み日数は,1m未満の高さでは,8~ 30日の割合が高かったが(55.6%), 1m以上の高さで は最長のカテゴリーである91日以上の割合が最も高く, 31.3~40.6%を占めた.また,死亡は1m以上の高さか ら見られた.さらに,墜落・転落の高さと休業見込み日 数とは有意な相関は認められなかった(r=0.09,n.s.). 6)繰り返し発生した類似災害事例 せき損災害の発生状況から特徴をつかむため,業種や 事故の型,起因物を絞って集計し,繰り返し発生した類 似災害事例を抽出した.まず387件の事例について業種 を小分類まで絞り込み,10件以上発生した業種で,そ の他の業種を含まないものを抽出した.その他の業種を 除外したのは,様々な作業を含んでおり,共通した特徴
0 (0.0) 4 (0.0) 0 (0.0) 4 (0.0) 0 (0.0) 47 (0.1) 0 (0.0) 5 (0.0) 0 (0.0) 5 (0.0) 0 (0.0) 1008 (2.2) 0 (0.0) 30 (0.0) 0 (0.0) 20 (0.0) 0 (0.0) 994 (2.1) 10 (3.9) 801 (1.3) 0 (0.0) 261 (0.3) 1 (7.1) 1832 (4.0) 1 (0.4) 41 (0.1) 0 (0.0) 38 (0.0) 1 (7.1) 5219 (11.3) 0 (0.0) 325 (0.5) 0 (0.0) 259 (0.3) 2 (14.3) 10864 (23.5) 2 (0.8) 712 (1.2) 0 (0.0) 167 (0.2) 1 (7.1) 2255 (4.9) トラック 42 (16.5) 13553 (22.2) 2 (1.7) 1515 (1.9) 1 (7.1) 2895 (6.3) フォークリフト 4 (1.6) 636 (1.0) 0 (0.0) 319 (0.4) 0 (0.0) 2243 (4.8) 軌道装置 1 (0.4) 10 (0.0) 0 (0.0) 7 (0.0) 0 (0.0) 46 (0.1) コンベア 0 (0.0) 140 (0.2) 0 (0.0) 188 (0.2) 1 (7.1) 2623 (5.7) ローダー 0 (0.0) 39 (0.1) 0 (0.0) 9 (0.0) 0 (0.0) 44 (0.1) ストラドルキャリヤー 0 (0.0) 6 (0.0) 0 (0.0) 2 (0.0) 0 (0.0) 3 (0.0) 不整地運搬車 1 (0.4) 20 (0.0) 0 (0.0) 5 (0.0) 0 (0.0) 19 (0.0) その他の動力運搬機 0 (0.0) 226 (0.4) 0 (0.0) 115 (0.1) 3 (21.4) 652 (1.4) 小計 48 (18.8) 14630 (24.0) 2 (1.7) 2160 (2.7) 5 (35.7) 8525 (18.4) 5 (2.0) 694 (1.1) 4 (3.4) 2789 (3.5) 1 (7.1) 1343 (2.9) 0 (0.0) 13 (0.0) 0 (0.0) 14 (0.0) 0 (0.0) 29 (0.1) 0 (0.0) 13 (0.0) 0 (0.0) 4 (0.0) 0 (0.0) 8 (0.0) 0 (0.0) 4 (0.0) 0 (0.0) 5 (0.0) 0 (0.0) 269 (0.6) 0 (0.0) 23 (0.0) 0 (0.0) 14 (0.0) 0 (0.0) 68 (0.1) 0 (0.0) 39 (0.1) 0 (0.0) 240 (0.3) 0 (0.0) 42 (0.1) 1 (0.4) 193 (0.3) 5 (4.2) 3183 (4.0) 0 (0.0) 3176 (6.9) はしご等 37 (14.5) 13734 (22.5) 0 (0.0) 798 (1.0) 0 (0.0) 86 (0.2) 玉掛用具 (0.0) 27 (0.0) (0.0) 29 (0.0) (0.0) 299 (0.6) その他の用具 3 (1.2) 931 (1.5) 9 (7.6) 3271 (4.1) 0 (0.0) 1177 (2.5) 小計 40 (15.7) 14692 (24.1) 9 (7.6) 4098 (5.2) 0 (0.0) 1562 (3.4) 6 (2.4) 875 (1.4) 3 (2.5) 1609 (2.0) 2 (14.3) 1550 (3.3) 足場 23 (9.0) 3136 (5.1) 1 (0.8) 195 (0.2) 0 (0.0) 50 (0.1) 支保工 1 (0.4) 90 (0.1) 0 (0.0) 26 (0.0) 0 (0.0) 17 (0.0) 階段,桟橋 20 (7.8) 8731 (14.3) 5 (4.2) 4676 (5.9) 0 (0.0) 12 (0.0) 開口部 7 (2.7) 1076 (1.8) 0 (0.0) 98 (0.1) 0 (0.0) 15 (0.0) 屋根,はり,もや,け た,合掌 27 (10.6) 3279 (5.4) 0 (0.0) 149 (0.2) 1 (7.1) 15 (0.0) 作業床,歩み板 12 (4.7) 1601 (2.6) 16 (13.6) 7542 (9.6) 0 (0.0) 47 (0.1) 通路 5 (2.0) 926 (1.5) 36 (30.5) 29090 (36.9) 0 (0.0) 68 (0.1) 建築物,構築物 14 (5.5) 3612 (5.9) 4 (3.4) 4087 (5.2) 0 (0.0) 938 (2.0) その他の仮設物,建築 物,構築物等 5 (2.0) 1489 (2.4) 3 (2.5) 2982 (3.8) 0 (0.0) 847 (1.8) 小計 114 (44.7) 23940 (39.2) 65 (55.1) 48845 (62.0) 1 (7.1) 2009 (4.3) 1 (0.4) 5 (0.0) 2 (1.7) 31 (0.0) 0 (0.0) 5 (0.0) 0 (0.0) 596 (1.0) 0 (0.0) 2038 (2.6) 0 (0.0) 2790 (6.0) 4 (1.6) 933 (1.5) 2 (1.7) 1966 (2.5) 0 (0.0) 1930 (4.2) 22 (8.6) 2165 (3.5) 15 (12.7) 7597 (9.6) 0 (0.0) 566 (1.2) 1 (0.4) 176 (0.3) 2 (1.7) 1369 (1.7) 0 (0.0) 174 (0.4) 0 (0.0) 78 (0.1) 8 (6.8) 1960 (2.5) 0 (0.0) 42 (0.1) 0 (0.0) 21 (0.0) 1 (0.8) 158 (0.2) 0 (0.0) 9 (0.0) 255 (100) 61008 (100) 118 (100) 78834 (100) 14 (100) 46316 (100) 件数(%) 墜落・転落 転倒 はさまれ・巻き込まれ せき損災害 全災害 原動機 動力伝導機構 木材加工用機械 せき損災害 全災害 せき損災害 全災害 建設機械等 金属加工用機械 一般動力機械 動力クレーン等 動力運搬機 乗物 圧力容器 化学設備 溶接装置 炉,窯等 電気設備 人力機械工具等 用具 その他の装置,設備 仮設物,建築物, 構築物等 起因物なし 分類不能 合計 危険物,有害物等 材料 荷 環境等 その他の起因物
般貨物自動車運送業」が最も多く42件(10.8%),建設 第三次産業の「社会福祉施設」が11件(2.8%),農林 業の「農業」が10件(2.6%)であった.次に,これら 5業種について,事故の型と起因物でさらに絞り込み, 件数の多かった災害事例を抽出した.その結果,最も多 く発生した類型は,「一般貨物自動車運送業」の「トラ ック」からの「墜落・転落」で24件(6.2% )であった. 次いで,「木造家屋建築工事業」の「屋根,はり,もや, けた,合掌」からの「墜落・転落」が12件(3.1%),「足 場」からの「墜落・転落」が9件(2.3%)であった. 以上の結果を基に,各類型の発生状況を精読し,繰り返 し発生した類似災害事例の特徴を抽出した. (1)「一般貨物自動車運送業」における「トラック」 からの「墜落・転落」 24件の類似災害事例を調べた結果,トラックの荷台 に関連する事例が16件と多かった.発生状況を精読し たところ,詳細が記述されていない事例もあったが,複 数の類似した事例が見られた.まず積荷に乗っていた作 業者がシートをたたみながら後方へ移動しているとき, 全数 (推定) 全数 (推定) 全数 (推定) 19歳以下 1 (0.8) 157 (2.2) 626 - 1 (0.9) 220 (1.0) 811 - 1 (1.6) 247 (2.1) 107 - 20-29歳 13 (10.0) 933 (13.0) 3720 11 (9.6) 1974 (9.4) 7275 3 (4.8) 1608 (13.5) 696 30-39歳 14 (10.8) 1350 (18.9) 5383 4 (3.5) 2956 (14.1) 10894 4 (6.5) 2077 (17.5) 899 40-49歳 18 (13.8) 1490 (20.8) 5941 18 (15.7) 4084 (19.4) 15051 13 (21.0) 2648 (22.3) 1146 50-59歳 31 (23.8) 1565 (21.9) 6240 25 (21.7) 5785 (27.5) 21320 17 (27.4) 2900 (24.4) 1255 60-69歳 38 (29.2) 1434 (20.0) 5718 44 (38.3) 5212 (24.8) 19208 15 (24.2) 2167 (18.2) 938 70歳以上 15 (11.5) 228 (3.2) 909 12 (10.4) 776 (3.7) 2860 9 (14.5) 231 (1.9) 100 50歳以上 84 (64.6) 3227 (45.1) 12867 <.001 81 (70.4) 11773 (56.0) 43389 .002 41 (66.1) 5298 (44.6) 2294 <.001 60歳以上 53 (40.8) 1662 (23.2) 6627 <.001 56 (48.7) 5988 (28.5) 22068 <.001 24 (38.7) 2398 (20.2) 1038 <.001 合計 130 (100) 7157 (100) 28536 115 (100) 21007 (100) 77420 62 (100) 11878 (100) 5142 全数 (推定) 全数 (推定) 全数 (推定) 19歳以下 0 (0.0) 40 (0.6) 153 - 1 (3.6) 22 (1.2) 84 - 4 (1.0) 686 (1.4) 2613 - 20-29歳 2 (3.9) 527 (7.5) 2022 0 (0.0) 214 (12.0) 816 29 (7.5) 5256 (10.8) 20019 30-39歳 0 (0.0) 1255 (17.8) 4814 4 (14.3) 371 (20.9) 1415 26 (6.7) 8009 (16.4) 30505 40-49歳 11 (21.6) 2203 (31.3) 8450 4 (14.3) 297 (16.7) 1133 64 (16.6) 10722 (21.9) 40839 50-59歳 21 (41.2) 1905 (27.1) 7307 3 (10.7) 376 (21.2) 1434 97 (25.1) 12531 (25.6) 47729 60-69歳 16 (31.4) 1031 (14.6) 3955 11 (39.3) 395 (22.2) 1506 124 (32.1) 10239 (21.0) 38999 70歳以上 1 (2.0) 81 (1.2) 311 5 (17.9) 101 (5.7) 385 42 (10.9) 1417 (2.9) 5397 50歳以上 38 (74.5) 3017 (42.8) 11573 <.001 19 (67.9) 872 (49.1) 3325 - 263 (68.1) 24187 (49.5) 92125 <.001 60歳以上 17 (33.3) 1112 (15.8) 4265 <.001 16 (57.1) 496 (27.9) 1892 <.001 166 (43.0) 11656 (23.9) 44396 <.001 合計 51 (100) 7042 (100) 27012 28 (100) 1776 (100) 6773 386 (100) 48860 (100) 186101 p せき損災害 1/4抽出災害 p 件数(%) 件数(%) 件数(%) 件数(%) 件数(%) 件数(%) せき損災害 1/4抽出災害 p せき損災害 1/4抽出災害 件数(%) 件数(%) 件数(%) 運輸交通・貨物取扱業 その他業種(農林業,畜産・水産業,鉱業) 合計(全業種) 建設業 第三次産業 製造業 せき損災害 1/4抽出災害 p せき損災害 1/4抽出災害 p せき損災害 1/4抽出災害 p 件数(%) 件数(%) 件数(%) 注1) 注2) 注3) 注4) 本研究の業種分類 総務省「日本標準産業分類」による 業種分類 建設業 第三次産業 製造業 運輸交通・貨物取扱業 その他の業種(鉱業,農林 業,畜産・水産業) 「建設業」 「電気・ガス・熱供給・水道業」,「情報 通信業」,「卸売業,小売業」,「金融 業,保険業」,「不動産業,物品賃貸 業」,「学術研究,専門・技術サービス 業」,「宿泊業,飲食サービス業」,「生 活関連サービス業,娯楽業」,「教育, 学習支援業」,「医療,福祉」,「複合 サービス事業」,「サービス業(他に分類 されないもの)」,「公務(他に分類され るものを除く)」 「製造業」 「運輸業,郵便業」 「農業,林業」,「漁業」,「鉱業,採石 業,砂利採取業」
頭上の障害物に気付かずに衝突したりするなど,注意が 別の作業などに集中し,周囲の状況に気付かなかったこ とが原因となって墜落・転落する事例が見られた.また, 昇降時,足をかけたステップが凍結していたり,ぬれて いたり,荷積み作業時に,固定されていないトレーラー のアコーディオン型扉に寄りかかったりするなど,作業 者が危険な状態を予測できなかった可能性のある事例も 見られた.また,荷物を縛る作業時や昇降時に手が滑っ た反動で転落した事例も見られた. (2)「木造家屋建築工事業」における「屋根,はり, もや,けた,合掌」からの「墜落・転落」 12件の類似災害事例を調べた結果,屋根からの墜落 ・転落が10件を占めた.詳細が記述されていない事例 もあったが,この類型においても(1)と類似した事例 が見られた.すなわち,作業者が屋根の端部に気付かず に足を踏み外したり,屋根上での作業時に誤って材料や 重なった瓦の上に乗ってしまい,バランスを崩したりす るなど,別の作業などに注意が集中し,周囲の状況に気 付かずに墜落・転落する事例が見られた.また,除雪作 p p p 男性 130 (100.0) 348 (84.5) <.001 87 (75.7) 1778 (47.8) <.001 56 (88.9) 702 (71.1) <.001 女性 0 (0.0) 64 (15.5) 28 (24.3) 1944 (52.2) 7 (11.1) 285 (28.9) 合計 130 (100) 412 (100) 115 (100) 3722 (100) 63 (100) 988 (100) p p p 男性 51 (100) 265 (81.4) <.001 27 (96.4) 38 (61.6) <.001 351 (90.7) 3131 (56.8) <.001 女性 0 (0) 61 (18.6) 1 (3.6) 24 (38.4) 36 (9.3) 2378 (43.2) 合計 51 (100) 326 (100) 28 (100) 62 (100) 387 (100) 5509 (100) 運輸交通・貨物取扱業 (農林業,畜産・水産業,鉱業)その他業種 合計(全業種) せき損災害 件数(%) 平均雇用者数 (万人)(%) せき損災害 件数(%) 平均雇用者数 (万人)(%) せき損災害 件数(%) 平均雇用者数 (万人)(%) 建設業 第三次産業 製造業 せき損災害 件数(%) 平均雇用者数 (万人)(%) せき損災害 件数(%) 平均雇用者数 (万人)(%) せき損災害 件数(%) 平均雇用者数 (万人)(%) 注1) 10 (31.3) 4 (11.4) 2 (6.3) 1 (4.8) 17 (12.4) 6 (66.7) 4 (12.5) 4 (11.4) 5 (15.6) 4 (19.0) 23 (16.8) 5 (15.6) 1 (2.9) 4 (12.5) 4 (19.0) 14 (10.2) 2 (5.7) 1 (3.1) 1 (4.8) 1 (12.5) 5 (3.6) 5 (14.3) 7 (21.9) 2 (9.5) 1 (12.5) 15 (10.9) 1 (11.1) 2 (6.3) 2 (5.7) 2 (6.3) 1 (4.8) 8 (5.8) 2 (6.3) 3 (8.6) 3 (9.4) 3 (14.3) 1 (12.5) 12 (8.8) 1 (3.1) 2 (5.7) 2 (9.5) 4 (50.0) 9 (6.6) 2 (5.7) 4 (12.5) 1 (4.8) 7 (5.1) トラック はしご等 足場 開口部 屋根,はり,もや, けた,合掌 作業床,歩み板 建築物,構造物 地山,岩石 立木等 その他 2 (22.2) 8 (25.0) 10 (28.6) 4 (12.5) 2 (9.5) 1 (12.5) 27 (19.7) 合計 9 (100) 32 (100) 35 (100) 32 (100) 21 (100) 8 (100) 137 (100) 頚部 7 (77.8) 19 (59.4) 23 (65.7) 12 (37.5) 8 (38.1) 5 (62.5) 74 (54.0) 背部 6 (18.8) 2 (5.7) 10 (31.3) 6 (28.6) 2 (25.0) 26 (19.0) 骨盤部 1 (11.1) 1 (3.1) 3 (8.6) 2 (6.3) 1 (4.8) 8 (5.8) その他 1 (11.1) 6 (18.8) 7 (20.0) 8 (25.0) 6 (28.6) 1 (12.5) 29 (21.2) 合計 9 (100) 32 (100) 35 (100) 32 (100) 21 (100) 8 (100) 137 (100) 4~7日 1 (3.1) 1 (0.7) 8~30日 5 (55.6) 8 (25.0) 7 (20.0) 1 (3.1) 5 (23.8) 1 (12.5) 27 (19.7) 31~60日 1 (11.1) 7 (21.9) 2 (5.7) 4 (12.5) 2 (9.5) 16 (11.7) 61~90日 1 (11.1) 4 (12.5) 9 (25.7) 10 (31.3) 5 (23.8) 29 (21.2) 91日~ 2 (22.2) 10 (31.3) 11 (31.4) 13 (40.6) 8 (38.1) 3 (37.5) 47 (34.3) 不明 1 (3.1) 1 (0.7) 死亡 2 (6.3) 6 (17.1) 3 (9.4) 1 (4.8) 4 (50.0) 16 (11.7) 合計 9 (100) 32 (100) 35 (100) 32 (100) 21 (100) 8 (100) 137 (100) 割合(%) 6.6 23.4 25.5 23.4 15.3 5.8 100 休業見込み日数 (死亡,不明含む) 傷病部位(職員記入) 起因物 10m以上 合計 件数(%) 1m以上2m未満 2m以上3m未満 3m以上5m未満 5m以上10m未満 件数(%) 件数(%) 件数(%) 件数(%) 件数(%) 件数(%) 1m未満
業時に屋根上に残った雪に足を滑らせたり,解体作業時 に足をかけた床根太が折れたり,瓦桟木の取り付け作業 中に屋根からはみ出して敷かれたルーフィングの上に乗 ったりするなど,作業者が危ない状態を予測できなかっ た可能性のある事例が見られた. (3)「木造家屋建築工事業」における「足場」からの「墜 落・転落」 9件の類似災害事例を調べた結果,詳細が記述されて いない事例が多く,複数の類似事例は見られなかった. 外壁水道配管工事中,移動のために掴んだ鉄製の竿竹が 折れた反動で墜落・転落した事例や,足場解体作業中に, 足場板を下の作業者へ渡すため,自分で足元の足場板を ずらしたことによりバランスを崩して墜落・転落した事 例などが見られた. 4 考察 1)業種,事故の型,起因物 せき損災害の業種,事故の型について,1983年に発 表された松井の先行研究11)と比較し,発生傾向の時間 的な変化を調べた.なお,本調査では交通事故を含めな かったが,この先行研究は2%の追突を含んでいた.そ の結果,建設業が多いことは共通していた(先行研究 45%,本調査33.6%).しかし,先行研究では第三次産 業の割合は15% であったのに対し(電気・ガス・水道 業が9%,卸売・小売業が6%),本調査では,第三次産 業の割合が29.7%と約2倍大きかった.また,先行研究 では鉱業の割合が比較的大きく10%を占めていたが, 本調査では鉱業はほとんど見られなかった.これらはせ き損災害自体の発生傾向が変化したというよりは,産業 構造が変化し,各業種の雇用者数が変化したことが影響 し,雇用者数が大幅に増加した第三次産業のせき損災害 が目立ってきたからだと考えられる.総務省のデータ10) では,日本標準産業分類がこれまでに2回改定されてい るため,2001年以前の第三次産業の雇用者数を算出で きなかったが,例えば,第三次産業のうち「医療,福祉」 は平成14年(2002年)から平成26年(2014年)まで で雇用者数が287万人増加している. また,事故の型についても,先行研究では転倒災害の 割合は2%と非常に小さかったのに対し,本調査では 30.5%と大きな割合を占めた.これは,墜落・転落災害 が減少してきた一方で転倒災害は減少せず,平成17年 (2005年)から転倒災害が休業4日以上の死傷災害の中 で最も大きな割合を占めるようになったことで転倒によ るせき損災害が目立ってきた可能性がある.厚生労働省 の公表データ12)から算出すると,参照可能な最も古い 昭和63年度(1988年度)の転倒は全死傷災害の12.7% であり,平成26年(2014年)は22.6%へ増加している. また,後述するが,転倒などで起こる高齢者の軽微な外 傷による脊髄損傷が増加していることも,転倒によるせ き損災害の割合が高まってきた要因として考えられる. 害が多いのは,全労働災害もせき損災害も変わらなかっ たが,χ二乗検定の結果から,せき損災害は全災害と比 較して,建設業に有意に多く,墜落・転落災害に有意に 多いことが明らかとなった.墜落・転落災害は転倒災害 やはさまれ・巻き込まれ災害よりも地面等と衝突して頚 部や背部が被災部位となって強打する可能性が高く,よ りせき損災害につながりやすいと考えられる.さらに, 建設業は足場の不安定な場所での作業が多く,地面に衝 突した時に衝撃が大きくなる可能性が高いことが原因と して考えられる.一方,起因物については,全災害と比 較して極端に大きな割合を占める起因物はなく,せき損 災害特有の起因物は見られなかった.この結果は,起因 物に関わらず,墜落・転落災害や転倒災害の中に一定数 の割合でせき損災害が発生していることを表している. 2)被災者の年齢,性別 年齢について,一般的な脊髄損傷の新規患者数を見る と若年者と高齢者にピークのある2相性があることが報 告されている3).一方,労働現場で発生するせき損災害 は,若年者に大きなピークは見られず,高年齢労働者が 中心であることがわかった.高年齢労働者は,心身機能 が若年労働者に比較して低下し13),労働災害(主に,墜 落・転落,転倒,はさまれ・巻き込まれ)の発生率が高 まることが報告されており14),高年齢労働者の労働災害 は多い.しかし,本調査の結果から,高年齢労働者のせ き損災害の割合が高年齢労働者の全災害の割合よりもさ らに有意に高いことが明らかとなり,高年齢労働者が労 働現場で事故に遭うと,若年者よりもせき損災害のよう な重傷を負いやすいことが示唆された.高齢者は,受傷 以前から加齢性変化に伴う頚椎症やOPLLなどによる脊 柱管狭窄症を合併している症例が多く15),軽微な外傷に よる骨折や脱臼のない非骨傷性頚髄損傷が増加している ことが指摘されている16)~18).このような高齢者の身体 の特性が高年齢労働者の脊髄損傷の発生に影響している 可能性がある. また,1997年に発表された新宮ら4)の調査では,せ き損災害による高所転落と転倒は50代にピークがある ことが報告されているが,本調査では建設業と第三次産 業のせき損災害は60代の割合が最も高く,全災害の合 計についても同様であった.この結果は,60歳以上の 高年齢労働者が増加していることが影響している可能性 がある.総務省のデータによると19),55~64歳の雇用 者数は2002年に774万人であったが,2014年は977万 人となり,65歳以上の雇用者数は2002年に221万人で あったが,2014年は415万人となった.高年齢労働者 は今後も増えると予想されるため,今後もせき損災害は 増える可能性がある. 性別について,第三次産業以外はもともと男性の雇用 者の割合が高いが,男性がせき損災害に遭う可能性が有 意に高いことが示された.松井11),新宮ら4)でも男性の せき損災害が多いことが指摘されているが,本調査では
リスクの高い作業を担う場合が多いと考えられ,性別に よる職種や作業内容の違いによって男性のほうが労働災 害に遭う可能性が高まり,それに伴ってせき損災害も男 性に多い結果となったと考えられる. 3)墜落・転落の高さと重症度 せき損災害は,労働安全衛生法上墜落防止措置の規定 のない2m未満の高さからの墜落・転落が30.0%を占め, 3m未満は55.5%を占めており,せき損災害の6割近く が3m未満の比較的低位置からの墜落・転落によって発 生することが示された.また,松井11)の調査では,2m 以下の頚髄損傷者の発生があったことが指摘されている が,本調査でも同様の結果が見られ,1m未満(最も低 いのは40cm)のような低位置からの墜落・転落でも頚 髄損傷のような高位損傷が認められた.さらに,墜落・ 転落の高さと重篤度に関連する休業見込み日数や高位損 傷に有意な相関が認められず,せき損災害は,1m以上 であればどの高さであっても休業の長期化や死亡につな がるなど重症化する可能性があることが示唆された.以 上のように,墜落防止措置の規定のない2m未満からの 墜落・転落であっても重症化が認められることから,現 行規定の2mという基準が適切かどうかを再考する必要 があるだろう. 4)繰り返し発生した類似災害 災害事例の発生状況から類似災害を抽出した結果,全 体として,まず作業時や昇降時に,足元や頭上など周囲 の状況に被災者の注意が向いていなかったために墜落・ 転落した事例が見られた.人の注意のリソースは有限で あり,「1つの作業に消費すると他の作業に消費する分 がなくなってしまう」という側面がある20).この注意の 特性により,作業や昇降に作業者の注意のリソースが多 く消費されると,周囲の状況に対してはリソースが十分 に消費されず,注意が向けられなくなってしまう.その ため,作業者が不注意になっても墜落・転落につながら ない工学的な対策を実施する必要がある.また,濡れた ステップや凍結したステップが滑りやすいことがわかっ ていなかった可能性のある事例や開口部にシートがかか っているなど危険な状態に気づけていなかった可能性の ある事例,作業の反動によってバランスを崩して墜落し た事例も多く見られた.これらは,作業者が危険な状態 (作業者がハザードに近づいている状態)を予測できて いなかったと考えられる.そのため,予め設備や作業環 境を整えるなど本質安全化や工学的対策をするのが前提 であるが,作業者の危険感受性を高めるような安全教育 も併せて実施する必要がある. 5 おわりに 本調査では,平成24~26年に発生したせき損災害387 件を先行研究や全労働災害と比較した.その結果,せき 損災害の発生傾向の時間的な変化やせき損災害が発生し やすい業種,労働者のプロフィールが明らかとなるとと もに,せき損災害が低位置からの墜落・転落であっても 重症化する可能性のあることが明らかになった. 高橋ら21)は建設作業者を対象とした実験により,作 業場面をどのくらい危ないと感じるか(主観的リスク) は,事故の発生確率(どのくらい事故が発生しやすいか) と結果の重大性(事故が起きた場合にどの程度のケガを するか)の主観評価が影響することを報告している.作 業者が作業場面をどのくらい危ないと感じるかが,その 後にリスキーな行動をとるかどうかに影響すると考えら れるため,作業者は作業場面について適切に事故の発生 確率と結果の重大性を評価する必要がある.本調査結果 は,せき損災害による結果の重大性,すなわち重篤度を 具体的に示すことができたため,労働災害による重篤度 についての基礎データとして,労働現場で活用されるこ とが期待される.新宮ら22)は脊髄損傷の一次予防として, 中学生のプールでの飛び込みによる脊髄損傷の多さに着 目し,脊髄損傷防止のためのポスターを日本水泳連盟, WHOの共同の運動として作成して,若年層へ飛び込み の危険性について注意喚起を行った.せき損災害の発生 傾向も当事者である作業者やその管理者に知られていな い現状があるため,まずは行政や業界団体と協力し,せ き損災害に遭いやすい業種やプロフィール(建設業,墜 落・転落災害,男性,高年齢労働者)に該当する作業者 やその管理者に対して情報提供をして,せき損災害防止 に関する注意喚起をしていく必要がある.特に,建設業 はせき損災害が発生しやすいと考えられることから,建 設業に対し重点的に情報提供と注意喚起をしていくのが 有効であるだろう. 6 本研究の限界 最後に,本調査の限界として,せき損災害は,年間約 950件発生していると推計されている4)が,本調査は医 学系のデータではなく,労働災害データを対象としてお り,3年間で発生した387件のデータしか抽出できなか った.交通事故によるせき損災害は二十数%と報告して いるデータもあり2),4)交通事故を除いたとしても本調 査ではせき損災害の全数を抽出できていなかったと言え る.一方,労働災害データは医学系データと異なる項目 が含まれているため,せき損災害について新規性のある 傾向分析が可能となり,有用であった.今後,分析の精 度を高めるために,せき損災害全数の抽出を可能にする 必要がある. また,本調査で対象としたデータは発生状況が詳細に 記述されていない事例も多く,被災者のどのようなエラ ーや背景要因によってせき損災害につながったのかが記 載されていない事例が多かった.人的要因分析の詳細さ は対象とするデータの内容に依存することが指摘されて おり23),せき損災害の防止対策を事例分析から検討する ためには,発生状況を詳しく記述できるように報告書の 項目数や情報量を増やしていく必要がある. 文文文 文 1) 坂井宏旭,植田尊善,芝啓一郎,わが国における脊髄損 傷の現状.JournalofSpineResearch.2010; 1: 41-51
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Occurrence tendency of spinal cord injuries due to work-related accidents:
targeting work-related accident data
by
Akiko Takahashi*
1and Shigeo Umezaki*
1Spinal cord injuries are not frequent; however, the rate of early return to work for people who suffer from such injuries is low, and such injuries are a burden on patients, their families, and others involved. To clarify the fre-quency of spinal cord injuries on work sites, we analyzed 387 cases of work-related spinal cord injuries due to falls to a lower level, falls on the same level, and being caught between objects, from 2012 to 2014. Although the rate of injuries in the construction industry is high, the rates of spinal cord injuries in the tertiary industry and due to falls on the same level have significantly increased recently. The rates of spinal cord injuries were significantly high for the construction industry, falls to a lower level, male workers, and older workers compared with all work-related accidents. Furthermore, 55.5% of spinal cord injuries due to falls to a lower level happened over distances under three meters, and there is a possibility for severe injuries to happen if workers fall from over one meter. We expect that these findings provide fundamental data to prevent work-related accidents.
Key Words: Work-related accidents, Spinal cord injuries, Accident analysis, Accident occurrence tendency, Falls to a
lower level, Older workers