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ソーシャルメディアにおける分断化と情報選択の自動化

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(1)

1.は

 じ め に

インターネットの普及以降,人々が接触可能な情報 量は爆発的に増加しており,いかにして接触する情報 を選択するか,あるいは接触させる情報を推薦するか という点に対する関心が高まっている.その中で,機 械学習などの人工知能技術(AI)を用いた情報選択や 推薦の自動化が進められており [Das 07, Ricci 15],情 報探索コストの大幅な低減が可能になった . 現在,検索 エンジンの結果の提示やニュース記事の推薦だけでな く,ソーシャルメディア上で提示される情報や,つなが る相手の推薦にも適用範囲を広げつつある.現状のソー シャルメディアでは,サービスの種類によって自動化の 程度に違いはあるが,情報選択における多くの場面では 利用者本人が判断しているように見える.今後さらに拡 大していく自動化の方向性として,多くの情報推薦シス テムがユーザの過去の行動履歴に基づいて選好を推測し ていることを考慮すれば,「見たいものだけ見る」とい う選択的接触を促進させるような方向性は有力な選択肢 の一つだろう.このような選択的接触の促進は,情報探 索のコスト低下やサービス満足度の向上などの利点が見 込める反面,社会的分断化を生じさせ,価値観の共有を 困難にしたり寛容性を低下させるなどの負の影響を及ぼ し,社会全体での合意形成のコストを上昇させる危険性 も秘めている [Pariser 11, Sunstein 01].本稿では,こ れらのプロセスを整理したうえで,ソーシャルメディア (Twitter)における社会的分断化を検証した研究を紹介 する [Kobayashi 18].現状のソーシャルメディアでは, つながる相手や閲覧情報の選択は完全には自動化されて はおらず,ユーザが自身の判断で選択する余地がある. このような現状のソーシャルメディア上で社会的分断化 がどの程度観察されるのかを確認し,今後の自動化の方 向性や社会的な影響について考察する.

2.

選択的接触と社会的分断化

2・1 メディアにおける選択的接触 テレビや新聞などの伝統的なマスメディアと比べて, ソーシャルメディア上では各自が望む情報に選択的に接 触することが容易になっている.このような選択的接触 はメディア効果研究やコミュニケーション研究では重要 なテーマとなっている [e.g. Bennett 08, Prior 07].選択 的接触の概念は古くから存在しており,メディアの効果 が限定的であるという限定効果論を説明する要因として 知られていた.投票時の意思決定における政党の宣伝 の影響力を検証するために 1940 年の米国大統領選挙時 に行われた調査では,人々は事前の選好に一致する宣 伝に選択的に接触する傾向があることが示されている [Klapper 60].リベラルな考えの持ち主は民主党の宣伝 に優先的に接触し,保守的な考えの持ち主は共和党の宣 伝に優先的に接触していた.その結果,政党の宣伝によっ て投票先を変える人は少なく,元来もっていた態度や考 え方を補強する効果が最も生じやすいことが明らかにさ れた.選択的接触は認知的不協和理論による説明が可能 で [Festinger, 57],自身の選好と反するような情報は認 知的な不協和を生み出し,逆に自身の選好と一致するよ うな情報は心地良さを感じさせるため優先的に接触され る.そのため,多様な情報がアクセス可能な状態で存在 していたとしても,人々は等しく情報に接触するのでは なく,リベラル─保守のようなイデオロギーベースで生 じる選択的接触や [Iyengar 09,Stroud 11],政治に対す る関心が低いエンタテイメント(以下,エンタメと表記) 好きな人がエンタメ情報ばかりに接触する選好ベースの 選択的接触などが観察されている [稲増 16, Prior 05]. 2・2 選択的接触が引き起こす社会的分断化 選択的接触は個々の利用者にとっては快適な環境を生

ソーシャルメディアにおける分断化と

情報選択の自動化

Audience Fragmentation and Algorithmic Exposure on the Social Media

鈴木 貴久

津田塾大学総合政策学部

Takahisa Suzuki College of Policy Studies, Tsuda University. [email protected]

Keywords:

social media, twitter, selective exposure, audience fragmentation. 「道徳判断の自動化をめぐる問題:規範の選択と協力の進化」

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み出すが,社会的には望ましくない帰結を生み出す可能 性も指摘されている. 選択的接触が困難なメディア環境では,特定の情報の みに接触することが困難であるため,目当ての情報以外 にも接触する機会が多かった.例えば,従来のテレビ視 聴では,エンタメ好きな人であっても目当ての番組の前 後にもテレビをつけておくことで,偶発的に政治ニュー スに接触する機会があった.このように,意図しない情 報接触によって知識を獲得する副産物的学習を提供する ことがマスメディアの重要な役割の一つである.一方で, 選択的接触が容易な環境では,自身の選好と一致しない 情報に接触する機会が低下し,副産物的学習が生じにく くなっている.その結果,政治的関心が低くエンタメ情 報を好むような人は政治的な知識を獲得できず,政治に 関心がある人とない人の間で政治的知識の格差が拡大し やすい [Prior 07]. また,イデオロギーベースの選択的接触が生じると, 異なる思想の持ち主の間でコミュニケーションや情報流 通が行われなくなり,社会全体が分断化される可能性が ある [Stroud 10].社会的に分断化された環境では,価 値観の共有が阻害されたり,自分と異なる思想に対する 社会的寛容性が低下しやすい [Mutz 02].Sunstein は, 民主主義における社会的意思決定の質を高めるために は,自身の意見とは異なる多様な意見の存在を許容する ような社会的寛容性が重要であり,思想的に分断化され た環境は合意形成のコストを高め,社会的意思決定の質 を低下させる恐れがあると指摘している [Sunstein 01]. 特に,ソーシャルメディアは同質性の高いコミュニティ の構築に適しており,社会的分断化が生じやすい.こ のようなコミュニティ内では,成員は自らの思想の“こ だま”を聞くようなエコーチェンバ状況に陥りやすい [Bouryline 17].エコーチェンバの内部では,局所的な 多数派意見であっても全域的な多数派意見であると誤っ て認識しやすくなり,異なる意見について考える機会が 低下する.その結果,内部の思想や意見が強化されるだ けでなく,グループ内部の意見と一致しない情報に接触 しても自分達に都合良く解釈しやすくなる [Del Vicario 16].このような状況では,流通する情報の真偽を評価 する動機が低下するため,フェイクニュースが蔓延しや すくなることも指摘されている [Törnberg 18].さらに, 接触する情報の選択が自動化され,パーソナライズされ た環境では,自身が接触している情報が全域的に共有さ れている一般的な情報なのか,分断化されて局所的に提 供されている情報なのかを意識することすらなくなる. Pariserは,このような環境を特定の情報のみを通過さ せる泡に包まれた状況に見立て,フィルタバブルと呼び, 思想的な孤立を生み出す要因であると指摘した [Pariser 11].ソーシャルメディアにおけるエコーチェンバやフィ ルタバブルの問題は,社会的分断化と密接な関係にある. そのため,情報選択の自動化を進める際の指針について は,選択的接触や分断化の現状から指針を得ることが可 能だろう.そこで以降は,日本における Twitter 上の分 断化を検証した研究 [Kobayashi 18] を中心に取り上げ ながら,現状のソーシャルメディア上の分断化について 概観する.

3.ソーシャルメディア

上の分断化を検証した

従来研究

テレビや新聞といった伝統的マスメディアと比較し て,ソーシャルメディア上では選択的接触が容易なた め分断化の危険性が提唱されているが,現状における 実際の分断化の程度については議論が続いている [e.g. Barberá 15b].例えば,人々が選択的接触する傾向自体 は多くの研究で観察され,選択的接触が分断化に結び付 くことが示されているが [Stroud 10],一方で自身の選 好と一致しない情報を選択的に回避するような行動は少 ないとの知見もある [Garrett 09].そうであれば,自身 の選好と一致する情報には優先的に接触するが一致しな い情報には全く接触しないわけではなく,ソーシャルメ ディア上のように多くの情報に接触できる環境であれば 分断化は深刻な状況ではない可能性もある. 社会的分断化は心理的側面や技術的側面など複数の 要因によってもたらされるマクロな現象である.そのた め,その程度を知るためには個人レベルの検証だけでな く,大規模なデータを用いた検証が必要になる.一例と して,米国のテレビ視聴データを分析した研究では,イ デオロギーに基づいて選択的にニュース番組を視聴して いる人は少数に限られており,米国でもテレビ視聴にお いては大きな分断化は生じていないという結果を示して いる [Prior 13]. 3・1 ソーシャルメディアデータを用いた検証 ソーシャルメディア上の社会的分断化の検証におい ては,blog[Adamic 05] や Twitter[Conover 11] などの データを収集して分析する手法が多く用いられている. ソーシャルメディア上の分断化を観察する方法として は,ネットワーク構造の可視化や,コミュニティ抽出 などがある.Conover らは 2010 年の米国の中間選挙の 6週間前からの政治関連 tweet を収集し,約 25 万件の re-tweetネットワークを可視化した(図 1)[Conover 11].図 1 の左下半分はリベラル系 tweet で,右上半分 は保守系 tweet であり,イデオロギーごとにクラスタが 形成されていることがわかる.この結果からは,イデオ ロギー間の分断化が観察されるが,一方でメンションの ネットワークでは分断化は観察されず,クラスタを超え た何らかのコミュニケーションが行われていることも示 されている [Conover 11].このような,イデオロギーが 異なるクラスタ間でのメンションの存在は他の研究でも 確認されており [Gruzd 14, Yardi 10],フォロー関係が

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完全に同一クラスタ内にとどまらない可能性も示唆され ている.

さらに,ネットワーク構造の分析だけでなく,機械学 習などを用いた,ユーザのイデオロギー推定も行われて いる [Barberá 15a, Barberá 15b, Colleoni 14, Golbeck 14, 三輪 17].Barberá は,Twitter ユーザはイデオロ ギーが類似した相手をフォローしているという前提のも と,フォローパターンから一般ユーザや政治家のイデオ ロギーをベイズ推定している [Barberá 15a].その結果 から,Twitter 上ではイデオロギーに基づいた分断化が 生じていることを確認している. 3・2 従来研究の限界 ソーシャルメディアデータを用いた分析では,社会 調査よりも信頼性が高く,大規模なデータを対象にする ことが可能になるが,分析時に強い前提を設定すること が多い.例えば,イデオロギーの推定の際には,イデオ ロギーが類似した相手をフォローしているという前提が 設定されることが多い [e.g. Golbeck 14].しかし,前節 のように,自身の選好と一致しない情報を積極的に回避 する行動は少なく [Garrett 09],クラスタを超えたメン ションのやり取りも一定数観察されており [Conover 11, Yardi 10],上記の前提は適切とは言いがたい.そのため, イデオロギーの推定の際には,フォローの関係性に特定 の前提を置かないことが望ましく,そのためにはネット ワーク構造以外の情報も考慮した推定が必要になる. また,多くの研究は米国のデータを対象としており, 一般化の可能性については十分な知見が蓄積されてい ない.米国は二大政党制が定着しており,個人のイデ オロギー的ポジションも明確になっているため,分断 化が観察されやすい環境である.それに対して日本で は,政党の変動が激しく,無党派層が多く,メディアご との政治的ポジションも比較的弱いため [Goldman 11], 米国より分断化が観察されにくい環境である.例えば, 日本における Twitter のネットワーク構造を検証した Takikawaらは,イデオロギーの異なる六つのコミュニ ティを抽出している [Takikawa 17].この結果だけから, 日本のソーシャルメディア上では米国よりも細かく分断 化しているのか,極端なコミュニティをブリッジングし やすい構造になっているのかを解釈することは難しい. ソーシャルメディアにおける分断化の現状を広く把握す るためには,米国とは異なる環境での知見の蓄積が求め られる.

4.

日本における Twitter 上の社会的分断化

こ こ で は, 前 章 で 指 摘 し た 限 界 を 解 決 し な が ら Twitter上の社会的分断化を検証した Kobayashi らの研 究を紹介する [Kobayashi 18].この研究では,Twitter のデータだけを用いるのではなく,社会調査と組み合わ せることで,従来研究の強すぎる前提を回避しながら ユーザのイデオロギーを推定し,日本における Twitter 上の分断化を検討している.分断化の指標としては,テ レビ局や新聞社などのメディアアカウントのフォロワの 重複度としている.もし,保守的なユーザのみがフォロー するメディアアカウントとリベラルなユーザのみがフォ ローするメディアアカウントが明確に分かれている場 合,分断化しているといえる. 4・1 手   法 この研究では,フォローのネットワーク構造とユーザ のイデオロギーの情報を用いて,分断化を評価している. メディアアカウントをフォローしている一般ユーザの イデオロギーの推定には機械学習を用いるが,その教師 データには社会調査で測定したイデオロギーと国会議員 アカウントへのフォローのパターンを用いる.そのため, 対象となるのは,メディアアカウントと国会議員の両方 をフォローしている一般ユーザである.Twitter のデー タについては API を用いて収集している. ①オンライン社会調査:機械学習の教師データを作成 するために,Twitter ユーザを対象にした調査を行 う. ②調査非回答ユーザのイデオロギー推定:①で測定し たイデオロギーと Twitter 上のデータを用いて学習 を行い,社会調査に回答していないユーザのイデオ ロギーを機械学習によって推定する. ③メディアアカウントフォロワの分断化の評価:②で 推定した Twitter ユーザのイデオロギーを用いて, メディアアカウントのフォロワのイデオロギー分布 を確認し,分断化を評価する. 以下ではそれぞれについて詳しく説明する. § 1 オンライン社会調査 機械学習の教師データを作成するために,Twitter ユー 図 1 政治的 retweet のネットワーク構造 [Conover 11]

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ザを対象にしたオンライン社会調査を行う.対象者は, オンライン調査会社のモニタの中から以下の条件でスク リーニングされた.スクリーニング条件は,Twitter を 利用しており,一つ以上のメディアアカウントと一つ以 上の現職国会議員アカウントの両方をフォローしてい て,Twitter アカウントが公開されており,Twitter ID を教えてくれる人である.調査当時(2014 年 4 月)の 国会議員 722 人のうち,Twitter アカウントを開設して いた 418 人分の現職国会議員アカウントと,表 1 の 18 のメディアアカウントを対象としている.スクリーニン グの結果 3 420 人が抽出されたが,提供された Twitter IDを確認したところ,実際に条件に当てはまるのは 1 724人であった.この 1 724 人に対して調査を行い, 1 493人からの回答を得た.調査では対象者のイデオロ ギーと国会議員アカウントへのフォロー理由を質問して いる. イデオロギーの測定には,東京大学谷口将紀研究室・ 朝日新聞共同政治家調査*1(以降,UTAS とする)と同 じ以下の 6 項目を用いた.「憲法を改正すべきだ」,「日 本の防衛力はもっと強化すべきだ」,「北朝鮮に対しては 対話よりも圧力を優先すべきだ」,「治安を守るために プライバシーや個人の権利が制約されるのは当然だ」, 「永住外国人の地方参政権を認めるべきだ(反転項目)」, 「道徳教育をもっと充実させるべきだ」をそれぞれ 5 段 階尺度で測定し,加算したものを 0 ∼ 1 の間に収まるよ うに調整してイデオロギー得点とした.値が大きいほど 保守的,小さいほどリベラルである.UTAS では国会議 員に対しても同じ項目を用いた調査を行っているため, 同一の尺度を用いて国会議員のイデオロギー得点が算出 できる. 国会議員アカウントへのフォロー理由については支持 しているかどうかを測定した.回答者ごとに,支持フォ ローと不支持フォローの比率を確認したところ,60% の回答者は支持フォローのほうが多かったが,残りの 40%近くの回答者は不支持フォローが多いか,あるいは どちらでもないという結果であった.このことは,前章 で指摘した従来研究での前提が強すぎることの論拠でも あり,Twitter ユーザのイデオロギー推定においては, フォローしている国会議員全員のイデオロギー得点を平 均するだけでは推定精度に限界があることを示してい る.そのため,フォローパターンや tweet 内容などの情 報を用いた機械学習による推定が必要になる. § 2 機械学習(ランダムフォレスト) 表 1 のメディアアカウントと国会議員アカウントの両 方をフォローしている人は全部で 605 446 人存在してお り,調査非回答者のイデオロギー得点についてはランダ ムフォレストによって推定した.調査回答者の tweet 内 容と国会議員アカウントへのフォローパターンから,調 査回答者のイデオロギー得点を予測するモデルを作成 し,調査非回答者のイデオロギー得点を推定している. モデルの作成においては,フォローパターンと tweet 内容の片方だけを用いたモデルと両方を用いたモデル,

tweet内容の用い方として 1 gram と 2 gram のそれぞれ

を用いたモデルについて,10 分割交差検証による精度評 価を行った.その結果,フォローパターン+ 2 gram の tweet内容を用いて,独立変数の数を 500 に設定した場 合に MSE が最小になったので,このモデルを採用した. 4・2 結   果 推定した 60 万人分のイデオロギー得点を用いて,メ ディアアカウントごとのフォロワのイデオロギー得点分 布を算出した(図 2).図 2 から,東京新聞や産経新聞 以外のほとんどのメディアアカウントが全体の平均(平 均値 0.61)付近に位置しており,メディアアカウント によるイデオロギー分布に大きな違いがないことがわか る.一方で,産経新聞のフォロワは保守的な傾向があり (平均値 0.72),東京新聞のフォロワはリベラルな傾向が あることがわかる(平均値 0.46). 表 1 対象としたメディアのアカウント *1 UTAS は,2003 年以降の国政選挙時に候補者全員と一般有権 者に対して調査を行い,その結果を公開している.

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次に,メディアアカウントのフォロワの分断化を評価 するために,フォロワの重複度についてメディアアカウ ントのペアごとに Jaccard 係数を計算し,グラフを描画 した(図 3).図 3 のノードの大きさはフォロワ数,ノー ドの色は推定されたフォロワのイデオロギー平均値,リ ンクの太さは結ばれているアカウント間の Jaccard 係 数の値を意味している.太いリンクで結ばれているアカ ウントどうしは,フォロワの重複度が高いことを意味し ている.上部に位置するアカウントを中心にすると,左 側に配置されているアカウントが保守的,右側に配置さ れているアカウントがリベラルとみなすことができる. フォロワ数が多いアカウントに注目すると,左右に配置 されたアカウント間を結ぶリンクが確認でき,主要アカ ウント間では分断化は生じていないといえる.一方で, 図 2 で両端にあった産経新聞と東京新聞のフォロワは他 のアカウントをフォローしている率が低く,孤立してい ることがわかる. 以上の結果から,現状の日本のソーシャルメディア上 では大きな分断化は生じていないといえる.先行研究で 見られた分断化は,ソーシャルメディアの特性だけで生 じているというよりも,米国という分断化が生じやすい 文脈に依存していた可能性が示唆された.

5.ソーシャルメディア

上の情報選択の自動化に

向けて

近年では,テレビ局や新聞社が Twitter 上にアカウ ントを開設してニュースを配信しており,SNS を通 じてニュースなどの情報を得ている人が増加している [Shearer 17].このような環境の中で,ソーシャルメディ ア上の情報接触が自動化されるとしたら,社会的にどの ような影響がもたらされるであろうか.本稿では,日本 においてはソーシャルメディア上で大きな分断化が生じ ていないことを確認した [Kobayashi 18].主要なメディ アアカウントのフォロワの間で分断化が生じていないこ とは,ソーシャルメディア全体でも米国ほど大きな分断 化は生じていないといえるだろう.ただし,今後ユーザ の選好に基づいた自動化が進むことによって,分断化が 促進され,エコーチェンバやフィルタバブル的状況が強 まる可能性は否定できない. 社会的分断化を促進しないように自動化を進めること はできるのか,その可能性について考察する.高選択な オンラインメディアであっても,選択的接触に関する理 論が説明するような望ましくない帰結が必ずしも生じる わけではないことも明らかにされている.例えば,ポー タルサイトでは政治知識に関する副産物的学習が行わ れることが示されている [e.g. Kobayashi 15, Kobayashi 17].Yahoo! のトップページのようなポータルサイトに は,複数のジャンルの記事の見出しが並んでいる.仮 に,エンタメ好きな人が芸能記事を読みに訪れたとして も,少数でも政治記事の見出しが存在していれば,それ を目にすることで副産物的に学習が行われることが実験 によって示されている [Kobayashi 17].この結果は,選 択的接触が容易な環境であったとしても,多様な情報 を目にする機会を提供できれば,望ましくない帰結が緩 和される可能性を示されている.ソーシャルメディア 上でも,ユーザの選好と一致する情報に優先的に接触し ていたとしても,それ以外の情報への接触機会を少しで も確保しておくことで極端な分断化は回避できる.実際 に,Twitter 上では非同質なフォロー関係も観察されて いる [Gruzd 14, Kobayashi 18].これらを考慮すると, ソーシャルメディアにおける情報選択が自動化される場 合には,ユーザの選好と一致しない異質な意見や情報に 接触する機会をどのように確保するかが重要な争点と 図 2 メディアアカウントフォロワのイデオロギー得点分布 [Kobayashi 18] 図 3 メディアアカウント間のフォロワの重複度 [Kobayashi 18]

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なる.Sunstein はソーシャルメディアが普及する以前 の 2001 年に発行された著書の中で,政治的な内容を含 む Web サイトは反対意見を含むサイトへのリンクを張 ることで,異質な情報への接触機会を提供する必要があ ると主張している [Sunstein 01].コミュニケーション 研究においても,多様な情報への横断的な接触は社会的 寛容性を高め [McClurg 06, Mutz 02],熟慮を促すこと が示されている [Price 02].重大な分断化を避けるため には多様な情報への接触機会をどのように提供するか, どの程度提供する必要があるのかを見極める必要がある [Helberger 18]. この点に関して,すでに実験的な試行も行われている. Gillaniは,Twitter ユーザに社会的分断化を可視化した グラフを見せたうえで,イデオロギー横断的なフォロー 相手を推薦すると,短期的にはネットワークの多様性が 上昇する効果が見られることを示した [Gillani 18]*2 一方で,ソーシャルメディア上で強制的に反対意見に接 触させることで,事前の態度がより強固になるという結 果も報告されている [Bail 18].Bail らは Twitter 上で, 事前に測定されたユーザのイデオロギーと反対の情報を 発信する bot を 1 か月間フォローさせる実験を行った. その結果,リベラルな内容を発信する bot をフォローし た保守的なユーザは保守傾向をより強めるといった,反 発的な効果が見られたことを報告している.社会的分断 化の検証研究や関連する研究がさらに蓄積されれば,自 動化に向けて有益な示唆を得ることができるだろう. また,自動化された情報提供が利用者に対してどの ような効果をもたらすかについての検証も始まっている [Bakshy 15, Nguyen 14].例えば,ソーシャルメディア 上の自動化に関しては,Twitter よりも Facebook の方 が進んでいる点があり,Facebook ではニュースフィー ドに掲載される記事は選択的接触を促進するようなア ルゴリズムによってソートされている.Bakshy らは Facebookデータを分析し,イデオロギー横断的な情報 接触の低下に対しては,ユーザ自身の選択よりも,アル ゴリズムによる要因のほうが小さいことを示している [Bakshy 15]. 自動化による選択的接触の促進は個人にとっては利益 が大きいが社会的分断化をもたらす恐れがあり,横断的 接触は個人レベルでは認知的不協和をもたらしつつも, 社会全体の合意形成においてはプラスの効果をもたら す.このような状況は,投票行動と同様に社会的ジレン マ構造であるといえる.それぞれの価値と両者のトレー ドオフを冷静に見極めつつ,議論を進める必要がある.

◇ 参 考 文 献 ◇

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2019年 1 月 15 日 受理

著 者 紹 介

鈴木 貴久 東京工業大学工学部情報工学科卒業,同大学院情報 理工学研究科修士課程修了,総合研究院大学複合 科学研究科情報学専攻博士課程修了.博士(学術). 現在,津田塾大学総合政策学部総合政策学科助教.

参照

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