1.は じ め に
最近,よく眠れていますか? この問いにはっきり と「はい」と答えられる人はどれぐらいいるだろうか? 厚生労働省によると,現在の日本では五人に一人(約 2 400万人)が慢性不眠をはじめ,睡眠時無呼吸症 候群などの睡眠障害を患っている [厚生労働省 14, e-healthnet].不眠症も睡眠障害の一つであり,多くの 女性が悩まされているだけでなく,高齢者になると女性 だけでなく男性も覚醒やレム睡眠(浅い睡眠)が頻繁に 起きるようになる.その結果,夜中の徘徊の回数が増加 したり,食欲不振に陥るなどという問題が発生している. 一方,高齢者だけでなく健常者も,慢性不眠は日中の活 力を失うばかりか,ノイローゼになる危険性もある.そ れ以外にも,運転手の睡眠不足による高速バスの事故も 絶えないことを考えると,少しでも深く安定的な睡眠が 重要である.特に,1 日の 1/3 が睡眠時間であるため,快 眠を得ることは我々の生活において大きな課題である. このような背景から,本稿では早い入眠,深く安定し た睡眠,同じ睡眠サイクルなどの特徴をもつ睡眠を「快 眠(sound sleep)」と定義し,その快眠の実現に向けて, 個人に適応した音を提供する「快眠導入システム」[石原 14, Takadama 15, 植屋 15] を紹介するとともに,その有 効性を示すことを目的とする.特に,心拍や呼吸は睡眠 段階に強い相関があるという数多くの知見 [Harper 87, Otsuka 91, Shimohira 98]に基づき,オリジナルの音を 各人の心拍や呼吸に連動した音に変換し,この音による 効果を紹介する.なお,ここで個人に適応した音とは, 心拍や呼吸に連動した音を意味し,音そのものを各人に パーソナライズしたり,一人一人に合わせてオーダメイ ドとして生成するものでもない.確かに,音の種類は睡 眠に影響を与えると考えられるが,本稿では音の種類よ りは,音のリズムの変化による睡眠への影響に焦点を当 てる.なぜなら,音の種類にこだわっても,入眠ととも に音は聞こえなくなるからである.また,快眠を導く音 として,心拍や呼吸に連動する理由としては,母親の心 臓の鼓動は乳児の心を安らかにする効果があるという古 い知見 [Salk 73] から,そのような心拍に近づけた音は, 同様の安らぎの効果を与える可能性があると考えられる快眠を導く音とは
─心拍・呼吸に連動した音の睡眠への影響─
Exploring Sound Sleep
─ An Influence on Sleep Quality by Sound Adjusted to Heartbeat and
Respiration ─
髙玉 圭樹
電気通信大学大学院情報理工学研究科情報学専攻Keiki Takadama Department of Informatics, Graduate School of Informatics and Engineering, The University of Electro-Communications.
[email protected], http://www.cas.hc.uec.ac.jp
村田 暁紀
(同 上)Akinori Murata [email protected]
上野 史
(同 上)Fumito Uwano [email protected]
田島 友祐
(同 上)Yuusuke Tajima [email protected]
原田 智広
立命館大学情報理工学部知能情報学科Tomohiro Harada Department of Human and Computer Intelligence, The College of Information Science and Engineering, Ritsumeikan University.
[email protected], http://www.ice.ci.ritsumei.ac.jp/~harada/
Keywords:
sleep, personalization, heartbeat, respiration. 「超高齢化社会と AI ─健康増進支援編─」からである. 本論文の構成は以下のとおりである.以下,2 章では 快眠を導く睡眠システムを紹介し,3 章では被験者実験 を実施し,その結果を分析する.そして,4 章では提案 アプローチによるビジネスモデルを議論し,最終章であ る 5 章で本論文をまとめる.
2.快眠を導く睡眠システム
2・1 提案睡眠システム 我々が構築している「快眠を導く睡眠システム」は, 個 人 に 適 応 し た 音( 以 下, 個 人 適 応 音(Personally Adapted Sound)と呼ぶ)を提供するために,各人の心 拍や呼吸に連動した音を生成する.そのためには,(1) 心拍数や呼吸数を測定できる生体マットセンサ,(2)個 人適応音を生成する音源,(3)その音を出力するスピー カが必要となる.特に,(1)に関しては,体にセンサな どを付けなくても寝具の下に敷くだけで心拍数や呼吸数 に加えて,体の動きも測定できる既存のセンサを活用す る.このようなセンサは寝具の下に敷くだけなので,い つもと同じ状況で眠ることができるのが特徴的である (ただし,あくまでも胸の膨らみなどから呼吸や心拍を 推定しているため,心電図ほどの精度は出ない). 我々が実際に構築した快眠を導く睡眠システムを図 1 (上)に示す.この図からわかるように,睡眠システム は,(1)生体マットセンサとしてフィンランドの VTT 技術研究センタが開発した Emfit センサ,(2)音源とし て Cycling’74によって開発された Max/MSP,(3)スピー カとしてヤマハの Relit LSX-700 から構成されているが, この構成に限定されるものではなく,ほかの組合せでも 実現可能である.なお,Max/MSP の音源は Windows 8 のタブレット PC にインストールしている. 次に,快眠を導く睡眠システムの流れを図 1(下)に 示す.具体的には,(i)生体センサが人の心拍数と呼吸 数を測定した後,(ii)各人の心拍や呼吸に連動した個人 適応音を生成し,(iii)スピーカを経由して音を提供す るという順番で実行される.なお,心拍と呼吸の変化や 体の動きを表す体動から,大まかに眠りに入った時間を 推定することができる. 2・2 個別適応音に向けたアルゴリズム 快眠を導く睡眠システムにおいて欠かせない個人適応 音は,どのように生成すればよいのだろうか? 図 2 に 個人適応音が,人の心拍や呼吸に連動して生成される様 子を示す.具体的には,図 2(上)にオリジナルの音, 図 2(中上)に心拍数や呼吸数の変化(ここでは,最初 は早かった心拍数や呼吸数が時間とともに遅くなる変 化),図 2(中下)に心拍や呼吸に連動した音を表す. 基本的な考え方としては,1 章で述べたように,心拍 や呼吸は睡眠段階に強い相関があることから,その特徴 を利用する.例えば,眠りかけの心拍数や呼吸数は大き な値をもち,眠りが深くなるにつれて徐々に下がりはじ めるため,現在の心拍数や呼吸数よりも少し下がった値 (今よりも少し眠りが深くなったときの値)をターゲッ トとした音に変化する.具体的には,心拍や呼吸が早い ときは音の周期を短くし,逆に遅いときは音の周期を長 くすることで心拍や呼吸に連動させた後,図 2(下)に 示すように,現在の心拍や呼吸の周期よりも少し長い周 期の音に変化させる.このような音は,今よりも眠りが 深くなったときの周期であるため,それらを聞くことに より,擬似的に眠りが深くなったと錯覚し,眠気を誘う 可能性を高められる可能性がある(例えば,心拍や呼吸 の周期を 5% 長くする(心拍や呼吸の周期×1.05 とする) などとして実現する).また,このような関係は,とて も大ざっぱではあるが,母親と乳児との心拍数の関係に も当てはまる.つまり,母親の心拍数の方が乳児のもの よりも小さい(周期が長い)ため,乳児が心拍数の遅く なる方向に引き込まれることで,眠りを促されていると 捉えることもできる. ここで重要なことは,このような音の周期は 1/f のよ うに事前に決めることもできず,まさに自分自身の心拍 や呼吸に連動した個人適応音のみによって実現できるこ とである. 図 1 快眠を導く睡眠システム(生体センサ(Emfit), 音源(Max/MSP),スピーカ(Yamaha Relit) から構成される) 図 2 個人適応音の生成3.被 験 者 実 験
3・1 実 験 内 容 快眠を導く睡眠システムの有効性を検証するために, 実施した被験者実験 [石原 14, Takadama 15] を紹介する (なお,今回の被験者実験をさらに展開した実験は [植屋 15]を参照されたい).すべての被験者は障害をもたない 健康な人であり,図 1 に示した部屋で下記の二つの実験 を行っている. § 実験 1:昼寝 6名の男性(50.3 歳± 12.2)が,昼食後,30 ∼ 40 分 の昼寝をし,表 1 に示す音なしのケースと 5 種類の連動 音を流したケースの 6 種類の入眠潜時(後述)を比較する. § 実験 2:夜間の睡眠 実験 1 とは異なる 7 名の男性(42.8 歳± 7.46)が, 夜間の睡眠をとり,音なしのケースと実験 1 の実験で一 番良かった音(入眠潜時の早い音)を流したケースの 2 種類において,入眠潜時,ノンレム 3 潜時(後述),睡 眠のサイクル数(後述)を比較する. 3・2 評 価 基 準 実験 1 では,図 3 に示すように睡眠の代表的な指標の 一つである入眠潜時(布団に入ってから寝るまでにかか る時間)で評価し,実験 2 では入眠潜時に加えて,ノン レム 3 潜時(布団に入ってから睡眠段階 3 に至るまでの 時間),睡眠のサイクル数(浅い眠りから深い眠りを経 て再び浅い眠りに戻る睡眠のリズムを 1 サイクルとする と,寝ている間のサイクル数)とその分散で評価する. なお,これらの評価で必要となる睡眠段階は,図 2 の縦 軸に示すように浅い睡眠から深い睡眠にかけて「覚醒」, 「Rem 睡眠」,「ステージ 1」,「ステージ 2」,「ステージ 3」, 「ステージ 4」の 6 段階に分かれており,それぞれ便宜上, W, R, 1, 2, 3, 4と記載している.また,この図の横軸は 睡眠時間を示す. ここで,ノンレム 3 潜時を測ることによって,深い睡 眠に早く到達できたかどうかがわかる.また,睡眠のサ イクル数の分散を見ることによって,安定した睡眠をと れているかどうか(睡眠の周期が早くなったり,遅くなっ たりしていないかどうか)を評価できる.例えば,図 3(下 左)に示す睡眠では睡眠サイクルが一定間隔の安定的な 周期であるのに対して,図 3(下右)に示す睡眠では睡 眠サイクルの間隔が一定ではない不安定な周期であるこ とを示している.なお,このような睡眠段階は,我々の 手法 [Takadama 10] を用いて心拍と体動から睡眠段階 を推定する. 3・3 音 の 種 類 表 1 に被験者実験で使用した音のすべての種類を示 す.具体的には,No. 1 は何の音も提供しない(音なし の)ケース,No. 2 は呼吸の周期×1.05 に連動したシン セサイザ和音と心拍の周期×1.05 に連動したシンセ和音 の両方を流すケース,No. 3 は呼吸の周期×1.05 に連動 した波の音と心拍の周期×1.05 に連動した波の音の両 方を流すケース,No. 4 は心拍の周期×1.05 のみに連動 した MIDI 音を提供するケース,No. 5 は呼吸の周期× 1.05のみに連動した波の音を提供するケース,No. 6 は 呼吸の周期×0.95 のみに連動した波の音を提供するケー スとなる. これらの音の特徴をまとめると次のようになる.(1) シンセ和音と MIDI 音は,心地良いと思われる音をシン セサイザによって人工的に生成されたもので,ヒーリン グサウンドに近い音である.それに比べて(通常の)波 と(新しい)波は,一般的に人の眠りを誘う効果がある といわれている,うち寄せては引いていく海の波の音で ある.特に,新しい波は No. 2 の音が小さく合成されて いる点で通常の波と異なっている.(2)すべての音の大 きさは 40 dB SPL に正規化されている.(3)心拍に連 動する音は 60 ∼ 70 回 / 分の音として設計され,一方, 呼吸に連動する音は 15 ∼ 20 回 / 分の音として設計され ている.なお,これらの回数は実際の心拍や呼吸によっ て変化(連動)する.また,1 回の音は多様性をもたせ るために少しだけ異なっており,ランダムに選ばれる. (4)No. 2 と No. 3 の音は心拍連動音と呼吸連動音の二 つからなるのに対して,No. 4 ∼ No. 6 の音は心拍連動 音か呼吸連動音のどちらか一つの音からなる. 表 1 音の種類 No. 1 音なし No. 2 シンセ和音 呼吸× 1.05,心拍× 1.05 No. 3 新しい波 呼吸× 1.05,心拍× 1.05 No. 4 MIDI 心拍× 1.05 No. 5 波 呼吸× 1.05 No. 6 波 呼吸× 0.95 図 3 睡眠段階と評価指標(入眠潜時,ノンレム 3 潜時, 睡眠サイクル数と分散)3・4 実 験 結 果 § 実験 1:昼寝 図 4 に昼食後に 30 ∼ 40 分の昼寝をとった 6 名の男 性の被験者実験の結果を示す.この図における縦軸は入 眠潜時〔s〕,横軸は音なしのケースと 5 種類の音を流し たケースを表している.なお,各棒グラフについている 細い線は入眠潜時の標準偏差を示している. この図から,呼吸の周期×1.05 に連動した波の音と心 拍の周期×1.05 に連動した波の音の両方を流す新しい波 の音(No. 3)を聞かせた場合,他の音に比べて入眠潜 時が一番短くなっていることがわかる.一方で,呼吸の 周期×1.05 あるいは呼吸の周期×0.95 に連動した(通 常の)波の音(No. 5 と No. 6)を聞かせた場合,入眠潜 時の標準偏差が大きくなり,被験者によって効果が異な ることがわかる.これらの結果は,新しい波は早い入眠 に貢献する一方で,(通常の)波はその効果に一貫性が ないことを示している. また,呼吸の周期×1.05 に連動したシンセ和音と心 拍の周期×1.05 に連動したシンセ和音の両方を流すシン セ和音(No. 2)も早い入眠潜時を導くことを考えると, 心拍と呼吸それぞれに連動する二つの音のほうが,心拍 か呼吸のどちらに連動する一つの音よりも,入眠潜時を 短くする効果があるといえる.特に,60 ∼ 70 回 / 分の 心拍と 15 ∼ 20 回 / 分の呼吸は異なるため,それぞれに 連動した異なる周期の音の統合は,早い入眠に貢献する 可能性を示唆している. § 実験 2:夜間の睡眠 図 5 ∼図 7 に,夜を通して眠った 7 名の男性の被験者 実験の結果を示す.この図における縦軸は,図 5 の場合 は入眠潜時〔s〕,図 6 の場合はノンレム 3 潜時〔s〕,図 7の場合は睡眠のサイクル数を表し,横軸は音なしのケー スと実験 1 の実験で一番良かった音(すなわち,No. 3 の新しい波)を流したケースを表している.なお,各棒 グラフに付いている細い線は,図 4 と同様,それぞれの 標準偏差を示している. 図 5 から,呼吸の周期×1.05 に連動した波の音と心 拍の周期×1.05 に連動した波の音の両方を流す新しい波 の音(No. 3)を聞かせた場合,音なしの場合に比べて 入眠潜時が短くなっていることがわかる.さらに,入眠 潜時の標準偏差に着目すると,新しい波の音のほうが音 なしの場合に比べて大幅に小さいことから,前者の音は 安定して短い入眠潜時の提供に貢献している.実験 1 と 同等もしくは顕著に差が出ていることから,新しい波の 音の効果は高いと考えらえる. また,図 6 からノンレム 3 潜時に関しても,入眠潜時 ほどはっきりした結果ではないものの,音なしの場合に 比べて新しい波の音は短くなり,早く深い睡眠に到達し ていることがわかる.特に,睡眠は浅い眠りから深い眠 りを経て再び浅い眠りに戻るというサイクルになり,一 般的に深い睡眠は疲れをとることに貢献することから, ノンレム 3 潜時が遅くなると,深い睡眠をとる機会が少 なくなり,良い睡眠がとれていないことになる.また, 入眠時ではかすかに音が聞こえている人もいるが,ノン レム 3 潜時では全く聞こえていない音が,図 6 のような 効果を生むことは非常に興味深い. 最後に,図 7 を見ると,音なしの場合はサイクル数の 分散が大きいのに対して,新しい波の音の場合はその分 散がほとんどないことがわかる.睡眠のサイクル数の分 図 4 睡眠潜時(実験 1:昼寝) 図 6 ノンレム 3 潜時(実験 2:夜間の睡眠) 図 7 睡眠サイクル数(実験 2:夜間の睡眠) 図 5 睡眠潜時(実験 2:夜間の睡眠)
散が大きいということは,睡眠の周期が早くなったり, 遅くなったりしていること(ここでは,50 ∼ 180 分周 期となっていること)を意味しており,音なしの場合は 不安定な睡眠を導いている.それに対して,新しい波の 音は安定した睡眠(ここでは,平均的に 90 分周期とい う適切なリズムの睡眠)を導くことに成功している.
4.ビジネスモデルとしての展開
1章で述べたように,我々の提案する睡眠システムで は音の種類ではなく,音のサイクル(周期)の変化によっ て快眠を導くことを目指している.このようなアプロー チは,(歌も含めて)どのような音や音楽が人に好まれ るのかという今までの音楽業界の観点とは,全く異なる ものである.つまり,今までは人を魅了するために「聞 こえる音」に焦点を当ててきたため,音の種類の追求が 重要であった.それに対して,我々は眠りに入るにつれ て「聞こえなくなる音」に焦点を当てているため,音の 種類を追求しても最終的には聞こえなくなることから, 別の視点(提案システムでは,眠りに関連のある音の周 期)が重要となる. これをビジネスモデルの観点から見ると,今まで扱っ てきた「聞く音」に加えて,「聞こえない音」の市場が 加わることを意味する.特に,好みの音(=聞く音)は 人の数だけで存在するのと同様,眠りを誘う音(=聞こ えない音)も人によって異なるため,同じ人数だけ必要 となる.つまり,音楽業界が好みの音(=聞く音)を追 求してきた分だけ,眠りを誘う音(=聞こえない音)を 追求できることになり,これは市場が倍になることを示 唆している.5.お わ り に
本稿では,睡眠段階と強い関係性をもつ心拍や呼吸に 着目し,人の心拍や呼吸に連動した音である個人適応音 を聞かせることで快眠を導く睡眠システムを紹介した. 提案システムの有効性を検証するために,音なしのケー スと 5 種類の連動音による睡眠の効果(厳密には,入眠 潜時,ノンレム 3 潜時,睡眠サイクル数)を比較した. 6名による昼寝の被験者実験(実験 1)と,7 名による 夜間の睡眠の被験者実験(実験 2)を通して次の知見を 得た.まず,実験 1 から,(1)呼吸の周期×1.05 に連 動した波の音と心拍の周期×1.05 に連動した波の音の両 方を流す新しい波の音(No. 3)を聞かせた場合,他の 音に比べて入眠潜時が一番短くなったことから,この音 は入眠潜時を早める効果がある.次に,(2)心拍連動音 と呼吸連動音の二つからなる音は,心拍連動音か呼吸連 動音のどちらか一つの音よりも入眠潜時を短くする効果 がある.また,実験 2 から,(3)新しい波の音は入眠後 に聞こえなくなるにもかかわらず,入眠潜時だけでなく, ノンレム 3 潜時が短くなったことから,この音は深い睡 眠を早く導ける可能性がある.最後に,(4)新しい波の 音は平均的に 90 分周期という適切なリズムの睡眠を導 くだけなく,安定した睡眠を導くことに貢献する. しかし,これらの知見は 13 名(6 名+ 7 名)の被験 者のデータによるものであり,今後,被験者数を増やす など知見の一般性の向上に取り組まなければならない. また,これら以外にも今後の課題として,(1)実験 1 で 採用した音以外の音の効果の調査,(2)今回の実験で採 用した男性だけでなく女性による被験者実験や,高齢者 による被験者実験などがあげられる. 謝 辞 本研究の一部は,文部科学省の科学研究費補助金(基 盤研究(A),課題番号 No. 15H01720)とヤマハ株式会 社との共同研究の支援によって行われている.◇ 参 考 文 献 ◇
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髙玉 圭樹(正会員) 1998年東京大学大学院工学系研究科博士後期課程修 了.同年,国際電気通信基礎技術研究所(ATR)入 所.2002 年東京工業大学大学院講師を経て,2006 年電気通信大学助教授,2007 年准教授,2011 年教 授,現在に至る.博士(工学).マルチエージェン トシステム,強化学習,創発的計算手法,ヘルスケ アの研究に従事.著書に「マルチエージェント学習 ─相互作用の謎に迫る─」(コロナ社,2003)など.IEEE,情報処理学会, 計測自動制御学会,日本ロボット学会,電子情報通信学会などの各会員. 村田 暁紀 2015年電気通信大学情報理工学部卒業.同年,同大 学院情報理工学研究科入学,現在に至る.学士(工 学).進化計算とその応用展開に関する研究ならび に睡眠段階推定の分析に従事. 上野 史 2015年電気通信大学情報理工学部卒業.同年,同大 学院情報理工学研究科入学,現在に至る.学士(工 学).マルチエージェント間協調の学習理論に関す る研究ならびに睡眠段階推定プログラムの開発に従 事. 田島 友祐 2013年電気通信大学電気通信学部卒業.同年,同大 学院情報理工学研究科入学,現在に至る.学士(工 学).進化計算,睡眠段階推定ならびに生体信号モ ニタリングの研究に従事.進化計算研究会会員. 原田 智広 2012年電気通信大学大学院情報理工学研究科博士前 期課程修了.同年,同大学院情報理工学研究科博士 後期課程入学.2012 年日本学術振興会特別研究員 DC1採択.2015 年電気通信大学大学院情報理工学 研究科博士後期課程修了.同年,立命館大学助教に 着任,現在に至る.博士(工学).進化計算,機械学習, 知的エージェントの研究に従事.進化計算研究会会員.