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共鳴非弾性X線散乱の高エネルギー分解能化

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Academic year: 2021

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共鳴非弾性X線散乱の高エネルギー分解能化

著者

清水 裕友

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2015 年度 修士論文要旨

共鳴非弾性 X 線散乱の高エネルギー分解能化

関西学院大学大学院理工学研究科

物理学専攻 水木研究室 清水 裕友

物質の物性を担っているフェルミ面近傍の電子状態を明らかにすることは、固体物理における重要な 課題である。そのような電子状態における電荷ダイナミクスを探る方法の 1 つに、共鳴非弾性 X 線散乱 (Resonant Inelastic X-ray Scattering:RIXS)がある。非弾性 X 線散乱とは、X 線と物質との間にエネルギ ーや運動量のやり取りが発生するような散乱のことで、エネルギーを運動量の関数として観測すること ができるため、微細な電子の動きを知ることができる。特に、RIXS は、サンプルに入射する X 線のエネ ルギーを吸収端近傍に合わせることで、内殻の電子を共鳴励起させ、励起状態が緩和する過程で発生す る散乱 X 線を分光することで、電荷励起や磁気励起などのフェルミ面近傍の電子励起を直接観測するこ とができる手法である。そのため、元素選択性やバルク敏感,オペランド測定可能などの大きなメリッ トが存在する。それだけでなく、RIXS は温度や電子・ホールのドープ量の変化によって、超電導現象や 電荷秩序が発生する銅酸化物高温超伝導体や、化学反応によって触媒表面の電子状態が変化する燃料電 池用触媒など、フェルミ面近傍の電荷励起が重要な意味を持つ物質に対して強力なプローブとなる。 一方で、RIXS には非弾性散乱ゆえの観測強度の弱さや、共鳴条件を満たす光学系を用意することの難 しさからエネルギー分解能が低いという課題が存在する。その内、強度に関しては、近年の高輝度放射 光技術の発展により解決しつつあり、分解能も光学系を工夫することによって上昇してきている。RIXS の光学系は、図 1 のようになっており、高分解能なモノクロメーターを使用している限り、破線で囲ま れた部分が RIXS の分解能を決定づける。 図 1,RIXS の光学系とアナライザー周辺の拡大図 サンプルにて散乱された X 線は、Si や Ge などの結晶をダイス状にカットし、球面状に湾曲させたア ナライザーと呼ばれる分光結晶にて、エネルギーごとに異なる焦点へと集光される。それらの集光点の

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2 / 2 異なる X 線は、空間分解能を持つピクセルディテクターにより座標ごとに分けて観測される。つまり、 RIXS の分解能はアナライザーとピクセルディテクターのコンビネーションによって上昇する。アナライ ザーは、使用する吸収端ごとに異なる面方位のものを作成する必要があり、RIXS の心臓部と言える器具 である。しかし、アナライザーはダイスカット すると表面に歪みが導入されてしまい、図 2 の 青線のスペクトルが示すようにピークが非対称 となり、分解能が理論値よりも悪化してしまう という問題が発生していた。そこで、本研究で は水木研究室で作成したいくつかのアナライザ ーに対して、化学薬品で表面を研磨するエッチ ングと呼ばれる加工を施し、RIXS の高エネル ギー分解能化を試みた。その結果、図 2 に示す ように、エッチングによってピークの非対称化 を解消することに成功し、分解能が 10~20meV 上昇した。 図 2,エッチング前後のスペクトル比較 このエッチングしたアナライザーの効果を検証するため、2 つのサンプルに対して RIXS 測定を行った。 図 3 は、SPring-8 にて燃料電池用触媒の参照試料である PtO2 を RIXS 測定して得られたスペクトルであ る。エッチング前のスペクトルと比べると、Energy Loss = 0eV の弾性散乱ピークから分解能が上昇して いることが分かるだけでなく、2~6eV のピークに構造が見え始めていると分かる。また、図 4 はエッチ ング前後のアナライザーを用いて SPring-8 BL11XU(Before)と ESRF ID20(After)で、測定された銅酸

化物高温超伝導体 La1.875Ba0.125CuO4(= LBCO)の RIXS スペクトルである。これらの比較から、エッチン

グにより分解能が上昇し、elastic ピークの裾に隠れていた低エネルギーの電荷励起が観測できるようにな ったことがわかる。以上より、エッチングにより分解能の上昇したアナライザーを用いることで、より 詳細な電子励起を観測できることが証明された。

図 3 は、SPring-8 にて燃料電池用触媒の参照試料である PtO2 を RIXS 測定して得られたスペクトルであ る。エッチング前のスペクトルと比べると、Energy  Loss  =  0eV の弾性散乱ピークから分解能が上昇して いることが分かるだけでなく、2~6eV のピークに構造が見え始めていると分かる。また、図 4 はエッチ ング前後のアナライザーを用いて SPring-8 BL11XU(Before)と ESRF ID20(After)で、測定された銅酸 化物高温超伝導体 La 1.87

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