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保育者と子どもの関係構築プロセスの変容と要因(2)―若手期の保育者に着目して―

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ίᑎᐐȻފȼɕɁᩜΡഫኳʡʷʅʃɁ۰߁Ȼᛵىᴥ2ᴦ

──若手期の保育者に着目して──

上 村   晶

A Study on the Changes and Factors of the Process of Building

the Childcare Teachers-Child Relationship (2)

—Focusing on Young Childcare Teachers—

Aki U

EMURA ƋᴫץᭉȻᄻᄑ  保育実践を展開していく上で、保育者と子どもの関係性は、非常に重要な基盤になると考え られている。幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説においても、特定の保育者等との親 密な関わりの中で育まれる信頼関係は、子どもが主体的に環境に関わる際の基盤となること、 また、信頼関係の構築により子どもの心的安定が図られることなどが示されており(内閣府ら, 2018(1))、子ども一人一人の気持ちを受容・共感しながら継続的な関係性を築いていく重要性 が指摘されている(内閣府ら,2018(2))。  このような背景を踏まえ、前稿(上村,2019(3))では、保育者と子どもの相互主体的関係(鯨 岡,2011(4))に着目し、初任保育者と㧞歳児の子どもの㧝年間に及ぶ関係構築プロセスに焦点 を当てながら、保育者が子どもとわかり合おうとする関係を構築していく上での転機や変容の 要因を明らかにすることを試みた。その結果、①子どもの姿に対する保育者の受け止め方の差 異が関係構築へ影響を及ぼすこと、②初任期の自信のなさには「初任期特有の専門職としての 自信のなさ」と「一個人としての自信のなさ」が潜在している可能性があること、③初任保育 者を取り巻く人的環境の変化も関係構築の外的要因として影響する可能性があること、の㧟点 が見出された。特に、初任保育者に訪れやすい戸惑いの特徴として、子どものネガティブな姿 だけでなくポジティブな姿に対しても戸惑いを抱きやすいことが挙げられると同時に、子ども の姿に対する保育者の受け止め方に関しては、保育者自身とその子という個別具体的な関係の 中で、共に感じ合えた感情をいかに共有していくかが重要であることが示唆された。また、子 どもとわかり合おうとする志向性の涵養を図るためにも、初任保育者自身が自らの自信のなさ を克服していけるような園内外の支援体制を整える必要性を指摘した。  以上の見解を踏まえた上で、前稿からの継続的研究として、本稿では、保育経験㧞年目から 㧡年目の若手期の保育者と㧞歳児の子どもの関係構築プロセスに焦点を当てる。この㧞年目か

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ら㧡年目の若手期に関しては、保育者のキャリアステージとして、保育の専門家としての意識 を持ち始め、徐々に現実の事実をよく見ることを判断の基礎にできるようになる(Vander, 1988(5))、保育実践に誇りをもつようになるものの、客観的な価値判断が難しい(足立ら,2010(6) などが指摘されている。また、若手期の保育者の子ども理解の特徴に目を向けると、保育経験 㧡年未満の保育者は、一緒に遊んだり観察に努めたりしながら、子どもの状態を単一の視点か ら捉える傾向があり、問題を通して幼児を認識しがちであること(高濱,2001(7))、㧞年目ま では幼児一人一人を見る余裕がないものの、㧟年目以降になると個々の違いや個性が見えて表 情・行動から予想が可能になること(志賀,2001(8))なども示されている。したがって、若手 期の保育者は、初任時の経験を生かしつつ、子どもの姿の見とりや具体的な事実に基づいて、 個々のよさや違いを見極めながら適切な判断を積み重ねようとするキャリア発達の途上期にあ ることが推測される。よって、子どもとわかり合おうとする関係を構築しようとする際にも、 多様な価値を獲得しながら、保育者として成長し続ける重要な段階であると考えられる。  そこで、本研究では、若手保育者と子どもとの㧝年間の関わり合いに着目し、子どもとわか り合おうとする関係構築プロセスを明らかにすると同時に、転機や葛藤の要因を解明すること を目的とする。 ƌᴫᆅሱ஁ศ ᴮᴫᝩ౼ԦӌᐐɁകᛵ  調査協力者は、アヤナ保育者(保育経験㧞年目,女性)とクミ保育者(保育経験㧠年目,女 性)の㧞名の若手保育者である。㧭幼保連携型認定こども園(私立)において、調査開始の㧠 月時点で㧝歳後半∼㧞歳児クラス12名を共に担当し、アヤナ保育者はユメカ(㧞歳女児、㧟 月生まれ)を、クミ保育者はアミ(㧞歳女児、10月生まれ)を、下記の理由により視点児と して選定した(表㧝)。  また、調査協力園の㧭園は、子どもの月齢や発達の状況に応じて、㧝歳後半∼㧞歳児クラス から㧞歳後半∼満㧟歳児クラスへ、また、異年齢保育を展開する㧟歳以上児の幼児クラスへと、 保育者と共に子どもが徐々に移行する体制で保育を展開していた。よって、㧣月以降には、ク ミ保育者はアミと共に㧞歳後半∼満㧟歳児クラスへ移行して、キクヨ保育者(保育経験㧝年目) と保育に携わると同時に、アヤナ保育者は引き続き他のパート保育者と共にクラスを担当した。 加えて、㧝月以降には、アヤナ保育者もユメカと一緒にクミ保育者のクラスへそのまま移行し、 再びクミ保育者と一緒に保育に携わった。

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表㧝 視点児の概況と選定理由 アヤナ保育者(㧞年目) クミ保育者(㧠年目) 視点児 ユメカ(㧟月生まれ) アミ(10月生まれ) 視点児の 概況 父・母・ユメカ・妹(㧜歳)の㧠人家族。 㧭園に生後㧝歳半時点で入園。 父・母・アミ・弟(㧝歳)の㧠人家族。 㧭園に生後11か月時点で入園。 視点児の 選定理由 自分の世界観やペースがあり、周囲への観 察力や遊びへの集中力がある反面、なかな か保育者へ心を開いていない姿が見られた ため、安心できる関係を築きたいと考え選 定した。 明るく活発で積極的に活動に取り組む反 面、手が出たりすぐに諦めたりする姿が見 られたため、素の自分が出せるような関係 を築きたいと考え、選定した。 ᴯᴫᝩ౼஁ศ  2017年㧠月から2018年㧠月まで、月㧝回の頻度で保育観察と園内の相談室で半構造化イン タビュー(アヤナ保育者:計302分、クミ保育者:計266分)を実施し、①先月の視点児の大 きな変化、②保育者と視点児の関係を特徴づける事例、③省察、④次なる手立て、を尋ねると 同時に、その時点における保育者と視点児の二者関係性の可視化を依頼した。また、年度終了 後に、㧝年に及ぶ保育者と視点児の関係性における大きな転機と期の大別を尋ねると共に、㧝 年を通じた関係性の可視化を依頼した。 ᴰᴫґ౏஁ศ  詳細な語りを逐語記録として文字化した後に、テーマ分析(伊賀,2009(9))と複線径路・等

至性モデル(Trajectory Equifinality Model:TEM、サトウら,2015(10))による分析を行った。

特に、二者間の関係構築プロセスに関しては、前稿(上村,2019(11))と同様に、時間軸に沿っ て両者の関係性の変容を同時並行的に描く Parallel-TEM(上村,2018(12))による分析を行った。 具体的な分析手続きは、①各回の逐語録から、保育者が視点児とわかり合おうとする関係を構 成していく特徴的な語りに着目しながら意味単位(パターン)を識別する、②各意味単位から 概要(意味単位の要約や言い換え)を抽出する、③各概要を比較しながら、両者の関係性の特 徴や背景要因などに関するテーマ(各概要の類似的まとまりに着目して抽象度を高めたもの) を抽出する、④テーマを TEM の概念に基づき、「必須通過点(Obligatory Passage Point:OPP、 両者の関係性の質的変化)」、「分岐点(Bifurcation Point:BFP、保育者の行為や関係の捉え方 を揺さぶられる葛藤)」、「社会的方向づけ(Social Direction:SD、互いにわかり合おうとする 関係へ至ることを抑制する保育者の意識や両者を取り巻く環境)」、「社会的助勢(Social Guidance:SG、互いにわかり合おうとする関係へ至るよう促進する保育者の意識や両者を取 り巻く環境)」に分類して、時系列に沿って配置し、二者関係性を加筆した Parallel-TEM 図を 毎月作成する、⑤翌月 TEM 図を示し、両者の現時点の関係性をキクヨ保育者と共に検証・修 正する、という流れで実施した。特に、各月の関係変容の機微を調査協力者とその都度確かめ るよう配慮しながら、①∼⑤の手順を㧝年間で12回繰り返し、テーマを抽出した(アヤナ保

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育者:計262個、クミ保育者:計254個、表㧞)。  その後、㧝年分が蓄積された Parallel-TEM 図を年度終了後に調査協力者と再度振り返り、互 いにわかり合おうとする関係の構築を「等至点(Equifinality Point:EFP)」に設定した上で、 㧝年を通じて視点児との関係が最も大きく変容した転機、関係構築を抑制・助勢した主要な要 因を尋ね、マスターテーマ(毎月のテーマを統合しながら抽象度を高める中で、特に㧝年間の 両者の関係構築を特徴づけたテーマ)を抽出した(アヤナ保育者:計47個、クミ保育者:計 53個)。これらを整理しながら㧝年版の Parallel-TEM 図を作成した上で、㧝年を通じた二者関 係性の大局的な推移を再度曲線で描いた。 表㧞 調査協力者の各月のインタビュー時間と抽出テーマ数 月 アヤナ保育者の時間とテーマ数 クミ保育者の時間とテーマ数 㧠月 15分 19 15分 18 㧡月 14分 16 11分 18 㧢月 17分 17 18分 18 㧣月 18分 23 17分 26 㧤月 37分 27 38分 24 㧥月 24分 18 21分 26 10月 21分 20 15分 19 11月 24分 22 18分 23 12月 38分 29 28分 23 㧝月 29分 32 21分 22 㧞月 34分 24 29分 22 㧟月 31分 15 35分 15 計 302分 262 266分 254 ᴱᴫϕျᄑᥓਁ  日本保育学会倫理綱領に則り、調査協力園の園長・保育者・視点児の保護者へ、口頭と文書 で調査趣旨を説明し、個人情報保護を遵守して実施することを伝えた上で、研究協力の承諾を 得た。また、本研究における調査協力者及び園名は全て仮名で取扱い、人権に配慮した。なお、 本学における研究倫理審査を受審し、実施許可を得た。 ƍᴫᆅሱፀ౓  㧞名の若手保育者の Parallel-TEM 図(図㧝・図㧞)では、新年度開始を起点とし、互いにわ かり合おうとする関係の構築を『等至点:EFP』に設定した上で、両者が関係を構築していく 上での〈必須通過点:OPP〉、㧝年を通じて両者の関係の大きな転機となった〔分岐点:BFP〕、 ユメカとわかり合おうとする関係構築を促進した【社会的助勢:SG】と、抑制した《社会的 方向づけ:SD》に分類しながら、モデル化をした。以下、㧞名の保育者の各期の概要を示す。

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第1 期 手 探 り 期 第 2 期 疎遠期 第 3 期 回復期 第 4 期 感情共有期 第 5 期 相互的理解期 アヤナ保育者 ユメカ 非可逆 的時間 相互心的許容関係萌芽 話を聴いてほしい相手から 相互に話をしたい相手へ 他児対応奔走 関係構築模索 心情察知の疑心暗鬼と不確かさ SG 精神的ゆとり保持 SG 本児本質的理解希求 SD クラス内環境変化 EFP 互いにわかり合おう とする関係の構築 ୿ࢳ࣊ᩒܿ F-EFP 互いにわかり合おうとす ることができない関係 BFP:他児対応優先 or 本児対応優先 本児対応優先 本児対応後回し 他児対応奔走SD BFP:保育者心情の伝達 or 見守り 相互理解停滞 親和的関係再萌芽 非一方向的心情の手応え 関係促進期待 本児心情多角的推測と感情共有 保育者心情を伝え続ける 伝えず陰から見守る SG 他児対応収束 BFP:本児との感情共有 or 友達関係促進 自律性非顕在化 物理的近接感に基づく関係構築実感 非一方向的心情実感 保育者が本児に根差している自信 安全基地的存在自覚 本児心情の共感・承認・感情共有 友達関係促進支援 関係希薄化 本児対応が疎かになった自戒 SD 孤軍奮闘感 SD 他保育者 全面的受容 SG 家庭情報共有 SD クラス内環境変化 SG 本児心情尊重志向 SG 精神的ゆとり保持 BFP:個々ペース重視 or 集団生活リズム重視 SG 担当者間意識共有 間接的見守り・受容 直接的支援・友達関係促進支援 心情変化非察知 SG 個々ペース重視願望 移行後生活奔走感SD SG 自己充実環境 SD 非主張安堵感 SG 本児対応意識化 ᄾ̠ᣘᠨ࿡ৰ ̠ȗȾɢȞɝնȝșȻȬɞᩜΡഫኳɁЮȪ 理論的に存在する二者関係 実際の径路 理論的に存 在する径路 EFP:等至点 SG: 社会的助勢 SD: 社会的方向づけ F-EFP:理論的に存在する等至点 実際の二者関係 BFP:分岐点 ॒ᬳᣮᤈཟÏÐÐ ᩜΡॴᬂሥ 素を表現できる心的距離感 真意・タイミング察知手応え感 園内最信頼感 心的距離感に基づく関係構築実感 図㧝 アヤナ保育者とユメカの関係構築プロセスにおける Parallel-TEM 図  なお、保育者は子どもと共に育ち合う大人であるという調査協力園の 共生共歩 の理念に 基づき、園内で保育者は アヤナちゃん・クミちゃん と呼ばれているため(他保育者も同様)、 本稿では現実的な文脈を反映して、そのまま記載した。 ᴮᴫɬʮʔίᑎᐐȟʰʫɵȻɢȞɝնȝșȻȬɞᩜΡഫኳʡʷʅʃ  語りの質的変化から、アヤナ保育者がユメカとわかり合おうとする関係構築プロセスは、全 㧡期に大別された(図㧝)。まず4‒7月は、クラス担当としてユメカとわかり合おうと模索し ながら関わっていたため「手探り期」と命名した。また㧤月は、担当者変更などクラス内の環 境変化を受けて、今まで築いてきた関係が疎遠になった戸惑いを感じたことから「疎遠期」と

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した。その後の㧥月は、本児心情を尊重しながら関係の回復を意識するようになったため「回 復期」とした。さらに10‒12月は、本児からの近接的・親和的な関わりが増えると同時に互い の感情を共有することを心掛けていたため「感情共有期」と命名した。最後の1‒3月は、物理 的距離感に左右されず素を表現できる心的距離感の近さやわかり合えている関係の確信を実感 したため「相互的理解期」とした。 ᴮᴦቼƋఙᴷਖ਼૘ɝఙᴥ‒ఌᴦ Ȍ̜΍ᴮᴷșɦᴥ¯ᴦȍ  ランチの時間に誘いかけても、パズルに集中していた。パズルが完成したタイミングで、 再度目を見て「完成したね。ユメカちゃんランチおいしそうだよ、食べる?」と尋ねると目 線を合わせて頷く。 ȌᴱఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  最初の時は目も合わなかったり声も入らなかったりしたんですけど、この時はユメカちゃ んと目が合って、①自分の声がちゃんと聞こえて、理解してちゃんと行動してくれて、「あ、 思いが通じた」っていう瞬間だったので、一歩近づいたかなぁって思って。多分、②私たち もだいぶ余裕がでてきて、パズルが終わってから声をかけられたのも大きいですね。(略) でも、③自分の声は届いたけど本当に理解しているのかとか、ユメカちゃんが本当にその時 にランチを食べたかったのかなど気持ちをくみ取れなかったっていうのもあるので、まだ手 探りの段階というか、確信が持てないというか…。 ȌᴲఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  最近は、④「あ、心を許してくれているんだなぁ」っていうのがだいぶ感じられるようになっ て。(略)でも、⑤ちょっと私から見て、ユメカちゃんの本質的というか中にあるものを、 もうちょっと知りたいなっていうのがあって、そこをちゃんと理解できているのかなって。 向こうは甘えたい気持ちをすごい出してきてくれるんですけど、⑥その甘えたい気持ちはた だ単に甘えたいっていう認識にしかなくて、何でこのタイミングだったのかとか、何でそう いうことを言うのかとかが、ちょっとまだ理解ができていないかなっていうのがあって…。 ȌᴳఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  やっぱり触れるって、心を許していないとたぶん嫌なんだろうなって思うと、⑦向こうが 心を許して近づいてきてくれたことによって、私も心を開いて、向こうが許してくれたんだ なってことが感じられたので、私の方もだいぶ近づいてきたのかな…って思います。(略) 前はユメカちゃんがどういう風に私を思っているんだろうって考えていたけど、⑧今は悪い イメージではないのは確実にわかってきたし、多分思っていたよりもユメカちゃんは複雑 じゃなくて、わりと「心を許せばすぐ自分も思いを行動で示してきてくれる子」っていうの もわかってきたかな…って手応えがあるっていうか。

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Ȍ̜΍ᴯᴷȈʡʋȶȻȪȹ฼ȶȹ᭥ɌɞɁȉᴥ¯ᴦȍ  窓から小さな実を見つけて、「アヤナちゃん、あのね、ユメカね、トマト採ったの。緑の は食べられないんだよ」と伝えてくる。「何色だったら食べられるの?」尋ねると、「赤!プ チってして洗って食べるの」と教えてくれる。 ȌᴴఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  前までは「ユメカちゃんが一方的に話したい」だったんですが、「私と会話をしたい」と思っ て会話をしてくれるようになって。最近は、⑨目を合わせてちゃんと話してくれるっていう ことは、この人に伝えたいという気持ちが強くて見てくれているのかな、ちょっとずつ距離 が縮まってきたかなと思って。(略)やっぱり㧠月からの様子を見ていると、だいぶ興味を持っ てくれて好意も感じられるようになってきたけど、⑩成長の過程でそうなっているのか、本 当に私に好意を持ってくれているのかが、ちょっといまいち…というか、距離が縮まったっ てちゃんと言えるようではないというか…。  第Ⅰ期の当初は、反応が乏しいユメカに対して言葉が届いていない様子から、〈③心情察知 の疑心暗鬼と不確かさ〉や〈⑥表層的理解自覚〉を感じていた。少しずつ余裕が出てきた 【②精神的ゆとり生起】や、本児のことがわからない現状だからこそ本質をわかろうとしたい という【⑤本児本質的理解希求】に後押しされて、視線合致やタイミングの配慮や、ユメカへ の共感的代弁・関わり合う機会の継続などを通じて〈関係構築模索〉に努めていた。徐々に、 視線が合ったり「アヤナちゃん、あのね」と話しかけたりする姿が見られるようになったこと から、〈①思いが通じた実感〉や〈④心を許せる対象自覚〉を抱くようになる。  その後㧢月以降は、さりげないユメカからのスキンシップからユメカの個性を捉えて〈⑧本 児個性把握手応え感〉を抱いたり、ユメカにとってアヤナ保育者が一方的に「話したい相手」 から「互いに会話をしたい相手」へと変化しつつある〈⑨会話切望対象への変化〉を感じたり するようになり、ユメカが徐々に心を許してくれているような〈⑦相互心的許容関係萌芽〉に 至りつつある認識をもつ。一方、そのような関係の変化が、本児の成長に起因するのか、保育 者自身との親和性に起因するのかなど、一抹の不確かさを感じながら〈⑩原因探索迷走〉する など、手探りの状態は続いていた。 ᴯᴦቼƌఙᴷႾᤕఙᴥᴵఌᴦ Ȍ̜΍ᴰᴷɬɷȴɖɦȟȗȗᴥ¯ᴦȍ  ランチ前の着替えの時、「ユメカちゃん、一緒にやる?」と声をかけると「アキちゃんが いい!」と隣にいたパート保育者の下へ行き「やって」と言う。甘えながら着替えを終えた 時、「アキちゃんと一緒にできて嬉しいね」と声をかけると「うん!」と言って手を洗いに行っ た。 ȌᴵఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ

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 今回は、①ユメカちゃんにとって大切な時間も他の子に費やしていて、一緒に過ごせない 期間がちょっと長かったから申し訳なくて…。なんか、②時間的にも心も距離ができちゃっ たかなって。(略)③自分の思い通りにならなくてワーッとなっちゃう子がいて、わりとつきっ きりになっていたことがあって。私も、④子どもも移行、大人も異動で、独りでワチャワチャ していたし。着替えも、⑤その保育者だといつも「いいよいいよ」って全部やってくれるので、 ユメカちゃんも甘えたい気持ちは満たされるからか、そっちに行っちゃうことが何回か続い て、ちょっと悲しいな…みたいな。でも、⑥私も、関係がちょっとできてきて、「やって」っ て求められたり待ったりもなかったから、大丈夫かなって安心しちゃっていた部分もあった から…。(略)⑦私からの思いとか気持ちは変わらないけど、でも多分ユメカちゃんに伝わっ ていなかったから、自分で意識して時間とか場所を作って気持ちを伝えたりユメカちゃんの 気持ちを受け止めたりしていきたいなって。  第Ⅰ期末の㧣月に、㧝歳児クラスから他児が㧡人移行してくると同時に、今まで一緒に組ん でいたクミ保育者が移行するなど《クラス内環境変化》が生じたことを契機に、㧤月にアヤナ 保育者は〔本児対応優先か他児対応優先か〕という状況に直面した。その際に、《③他児対応 奔走》から本児対応が後回しになるなど、慌ただしい日々が続く。また、同クラスに㧠月から パートで携わっているアキ保育者がユメカの要望を全て受け止める《⑤他保育者全面的受容》 などの影響もあり、ユメカが他保育者に自ら身を委ねる姿が見られた。アヤナ保育者自身は 《④孤軍奮闘感》を抱きつつ、ユメカへの《⑥非主張安堵感》から本児対応を疎かにしてしまっ た〈①本児後回し自戒〉を痛感し、物理的にも心理的にも距離ができたような〈②関係疎遠化〉 を実感する。また、疎遠になった背景や要因を丁寧に省察した上で、アヤナ保育者自身がユメ カを大切に思う心情を抱きつつ伝えていなかったことに気づき、㧝対㧝の時間を少しでも持て るよう意識しながら、保育者心情を届けたり本児心情を受け止めたりしたいなど【⑦本児対応 意識化】を図るよう努める。 ᴰᴦቼƍఙᴷوेఙᴥᴶఌᴦ Ȍ̜΍ᴱᴷܧȠȳɛᴥ¯ᴦȍ  午睡時、ユメカちゃんの下に行くと「ユメカね、あのね…」と家のことを話し出す。明る い雰囲気になったところで「アヤナちゃんはユメカちゃんのこと大好きだよ」と伝えると「ユ メカも好きだよ」とニコッと微笑む。 ȌᴶఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  あの後、①移行してきた子が、わりと落ち着いてきて。なので、②じゃぁこの日はユメカちゃ んを優先にするから、その子はポイントを押さえて関わろうって。(略)③年齢的には「寂 しいかったよ」って伝えても伝わらないと思ったので、だったら「大好きだよ」ってストレー トに伝えた方が、気持ちが満たされるって思って。④「大好きだよ」って伝えて「好きだよ」っ

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て返ってくる単なるやりとりだったかもしれないけど、自分の気持ちを伝えて喜んでくれて 「あ、一方的じゃないんだな」っていう反応が見られたので、嬉しかったですね。私が伝え たことによって、⑤ユメカちゃんの素直な反応というか嬉しそうな表情から「あ、嬉しいっ て思ってくれるんだ」という目に見えてわかる結果だったので、前ほどの関係を戻せたかなっ て思えて。⑥これがきっかけで、またちょっとずつ私に心を開いてくれたらいいな、前みた いに気軽に甘えられる関係になれるかなって思ったりもします。(略)ユメカちゃんの気持 ちを考える時、⑦なんか決めつけたくないっていうのがあって、こっちがどれだけ見ていて こう思ったとしても、本当のことは本人にしかわからないっていうのが、やっぱりあるので。 そこは、⑧例え自分がこうだと思っても、そこ一本では絞りたくなくて、色々な角度の可能 性を考えて関わりながら、気持ちを共有していきたいなって思っているので…。  㧥月に入ると、【①他児対応収束】の影響も受けながら、㧝対㧝でユメカと個別に関わる時 間を意図的に設ける・他児との関わりのバランスを取るなど〈②本児他児双方対応〉に努める。 また、アヤナ保育者がユメカを大切に思っていることを言葉にして伝えるかという〔保育者心 情を届けるか、見守るか〕で一瞬躊躇するものの、第Ⅱ期末の【本児対応意識化】に後押しさ れ、㧞歳児の発達を考慮して相応しい言葉を選択する〈③発達過程考慮言葉がけ〉をしながら ユメカへの親和的な心情を伝え続けたところ、ユメカもアヤナ保育者への親和的な心情を徐々 に伝えてくるようになる。ポジティブな感情を届けた結果、ユメカの表情を手掛かりに〈④非 一方的心情の手応え〉や〈⑥関係促進期待〉を感じられるようになり、〈⑤親和的関係再萌芽〉 を実感する。  その一方で、第Ⅰ期の【本児本質的理解希求】でも語っていたが、どのような関係であって も本児の気持ちは本児にしかわからないことや、一方向的に決めつけたくないというような 【⑦本児心情尊重志向】に後押しされながら、自身の見とりを多角的に捉えて関わろうとする 〈⑧本児心情多角的推測と感情共有〉を意識していた。 ᴱᴦቼƎఙᴷ৞ষц఍ఙᴥ‒ఌᴦ Ȍ̜΍ᴲᴷȕɁɀǾᬊ˩៳ȶȲɁᴥ¯ᴦȍ  新しく買った靴下を履いてきたユメカが、朝部屋に入ると走ってきて「おはよう、あのね、 靴下買ったの」と伝えてくる。私が「可愛いね」と伝えると、お母さんの下へ行き「カワイ イって!」と喜ぶ。 ȌఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  先日、①「最近アヤナちゃんに見せに行こうと思って靴下選んでいます」ってお母さんが 教えてくれて。単純には嬉しいのと、②今まで関係ができているのか不安っていうのか、本 当に100%ユメカちゃんが思っているかはわからないって言っていたけど、でもお家の中で 話していることとか聞くと、「あ、ちゃんと関係できているじゃん」って思って。③「あ、ちゃ

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んとユメカちゃんの中に私がいる安心感があるんだな」って自分の自信にもなって。半年経っ て、④私もユメカちゃんが言われて喜ぶことや嫌なこともだいぶわかってきたのと、ユメカ ちゃんの家でも会話に私が出てくるってことは満足感を得られているのかなって感じてき て、ユメカちゃんとだいぶわかり合えてきたなって。 ȌఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  なんか、⑤私はユメカちゃんの気持ちを今までと同じぐらいわかってあげられている感じ がしていて、で、ユメカちゃんも自立してきているけど、⑥中身を見ると、ちゃんと受け止 めてもらえるからちょっと㧞階へ行って距離が離れても大丈夫って思っているところや、 ちゃんと見ていてくれているのが伝わってくるので、心の距離は変わっていないのかなって。  第Ⅳ期には、ユメカの生活や遊びへの関心も意欲的になってきたことから、アヤナ保育者は 丁寧にユメカの発信を受け止め、感情共有をしながら共感・承認するよう努めていた。その後、 保護者との【①家庭情報共有】を通じて、家庭内でユメカからアヤナ保育者の話題が数多く出 ていることを知り、保育者が薄々感じていた親和的関係は、保育者自身の一方的な思い込みで はない〈②非一方向的心情実感〉や〈③保育者が本児に根差している自信〉を感じ、今までの 関わり合い中で最も強く〈④わかり合えてきた実感〉を抱くようになった。  また、11月以降は、㧝月の移行に向けて徐々に午後から㧞階の部屋で遊んだり、移行して きた他児対応に追われたりなど、《クラス内環境変化》という第Ⅱ期と同じような状況が生起 した。しかし、第Ⅳ期では関係が疎遠になることはなく、【自己充実環境】を整えたり【精神 的ゆとり保持】を意識したりすることで、今までと変わらず〈⑤本児とわかり合えている実感〉 を抱いていた。加えて、自発的行動の増加や友達関係の広がりが見られたことから、ユメカに とってのベースキャンプ的な存在として位置付いているような〈⑥安全基地的存在自覚〉を抱 くようになり、徐々に物理的距離が離れていっても〈互いにわかり合おうとする関係構築の兆 し〉を感じるような関係へと変容してきた。 ᴲᴦቼƏఙᴷᄾ̠ᄑျᜓఙᴥ‒ఌᴦ Ȍ̜΍ᴳᴷȝዢɁඟᴥ¯ᴦȍ  母親から お米の歌に夢中になっている と聞き、ユメカに「聞きたいな」と伝えると大 きな声で歌い出す。一緒に歌うと嬉しそうな表情を見せ、他の保育者にも拍手をもらうと、 恥ずかしそうに私へ「ユメカ、上手だった?」と聞いてくる。「上手だったよ」と伝えると 満足そうな顔をしていた。 ȌᴮఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  私は、①自分自身が新しい生活についていくのが必死で、環境の変化に戸惑うところがいっ ぱいあって、ギュッて縮こまっちゃったりして…。②他の保育者から「ちょっと急がないと まずいかな」って声があったけど、でも自分は「一人一人のペースを守ってあげたい」って

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いう、そこの葛藤だったんです。でも、③こないだパートナーの保育者と主幹(教諭)と話 す機会があって、「ペースを守ってあげていいんだよ」って主幹が言ってくれたことがすご く大きくて、クミちゃんとも役割分担のことを話せて、楽になって…。(略)ユメカちゃんは、 誰かの前で歌うのは恥ずかしいからあまり歌ってくれなかったんですけど、お母さんから「お 家でいっぱいやっている」って聞いたので、④「あっ、素が出せるようになってきたんだな」っ ていう嬉しさが一番最初に思って、「この人には見せていいかな」っていう関係がちゃんと 築けているから、どんどん自分を表現できるようになってきたのかな、12月の時よりも距 離が縮まったかなと思って。 ȌᴯఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  う∼ん、お母さんの代わりではないけど、⑤園の中だったら多分「この人ならいいかな」っ て㧝番思ってくれている感じはしますね。(略)「ママじゃなきゃイヤ!」って叫んだこの時 も、⑥この「イヤ」って言い方や表情から、何か本当のイヤじゃないな、甘えのイヤだなっ てちょっと感じたところが大きくて。あ、⑦何となくこのタイミングで私が声を掛けたら 60%ぐらいは来てくれるかな…、何となく今なら嫌だと言わない気が、いける気がするな…っ ていうタイミングやポイントとかがだいぶ掴めるようになってきて。⑧ちょっとずつ関係を 築いてきたから、今はユメカちゃんの表情とか行動で、きっとこうだろうなっていう「きっ と」を、自分の中で十分わかるようになってきて、ユメカちゃんも多分「この人ならわかっ てくれるだろう」と思って一緒に来てくれた感じが伝わってきて、お互いわかり合えている 部分が大きいなって感じたので。  第Ⅴ期の㧝月に、アヤナ保育者はユメカと共に、㧞階の㧞歳後半∼満㧟歳児クラスへ完全移 行した。移行後は、アヤナ保育者自身が《①移行後生活奔走感》に襲われ、〔個々ペースを重 視した個別具体的対応か、集団生活リズムに順応させる対応か〕という分岐点でかなり葛藤す ると同時に、アヤナ保育者自身も集団生活のリズムや他保育者との連携に困惑していた。その 困惑状況を踏まえ、主幹教諭やクミ保育者と担当者間で話し合いを重ねた【③担当者間意識共 有】を通じて、集団生活順応よりも今は【②個々ペース重視願望】を意識して関わるようにし たところ、アヤナ保育者自身も肩の力が抜け、ユメカを集団生活へ順応するよう焦らせること なく、本児のペースを尊重した〈間接的見守り〉に徹した。その結果、予想以上に順応しなが ら園生活を楽しむユメカの姿が見られると同時に、アヤナ保育者には保護者と同じような素を 出せるようになってきた〈④素を表現できる心的距離感〉を抱いていることを実感するように なる。  また、この㧝年の関わりから、〈⑥表情・行動からの心情的確推測〉に基づき、本児の本音 やタイミングが掴めてきた〈⑦真意・タイミング察知手応え感〉や、園内で一番信頼されてい るような〈⑤園内最信頼感〉などをもてるようになり、〈⑧互いにわかり合えている関係の確信〉 を抱きながら、『互いにわかり合おうとする関係構築』へと至っていた。

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ᴯᴫɹʩίᑎᐐȟɬʩȻɢȞɝնȝșȻȬɞᩜΡഫኳʡʷʅʃ  続いて、クミ保育者がアミとわかり合おうとする関係構築プロセスも、全㧡期に大別された (図㧞)。まず4‒6月は、アミとの関わりの中で関係構築を模索していたため「手探り期」と命 名した。また7‒8月は、アミと共に㧞歳後半∼満㧟歳児クラスへ移行する中で、環境変化に伴 い心的余裕がなくなったことから「五里霧中期」とした。その後の9‒11月は、本児心情を全 面的受容しながら関わり合う中で徐々に安定した関係が築き始めてきたため「心的安定期」と した。さらに12‒1月は、再び環境の変化などから本児の不安が顕在化したため「揺らぎ期」 と命名した。最後の2‒3月は、全面的受容に基づき安心感や信頼感の回復を実感すると同時に、 絶対的安心感や心的距離感を抱いたことから「相互的理解期」とした。 第1 期 手 探 り 期 第 2 期 五里霧中期 第 3 期 心的安定期 第 5 期 相互的理解期 クミ保育者 アミ 非可逆 的時間 親和的関係構築実感と手探り 代替的存在から特定的存在へ変化 他児対応奔走 関係構築模索 前保育者の代替的存在の認識・希求欲求察知 SG 共に遊ぶ環境構成 SD クラス内環境変化 EFP 互いにわかり合おう とする関係の構築 ୿ࢳ࣊ᩒܿ F-EFP 互いにわかり合おうとす ることができない関係 BFP:他児対応優先 or 本児対応優先 本児対応優先 他児対応奔走 SD 他児対応奔走 BFP:全面的受容 or 緩和的対応 更なる不安顕在化 互いにわかり合えてきた実感 最後まで感情を出し切る爽快感 素を見せられる関係構築萌芽 非一方的心情実感 周囲に振り回されない信念 存分に泣かせる全面的受容 保育者意図先行対応 SG 精神的ゆとり生起 BFP:他児対応優先 or 本児対応優先 安定的関係継続 本児を後回しにしている自戒 独占欲や甘えの再顕在化 本児心情充足と他保育者関係構築の葛藤 本児注視欲求理解 他児対応優先 本児優先的対応 五里霧中関係 本児充足対応困難感 本児対応自己満足感と現実乖離 五里霧中的試練感 SD 非余裕的心的負担感 SG 担当者間意識共有 SD クラス内環境変化 SG 感情伝播園内雰囲気 BFP:本児全面的受容 or 他児対応奔走 心的距離感に基づく関係構築実感 安心感や信頼感の回復 困惑時希求対象としての特別的存在実感 心的距離近接感・絶対的安心感 心的余裕対応ができる心構え 本児全面的受容 他児対応奔走 心情変化非察知 SG 誘導優先保育への自戒 SG 訴え表出の見方転換 ᣘᠨᣳࡼ࿡ৰ ᣘᠨᣳࡼ࿡ৰѓ఼ 理論的に存在する二者関係 実際の径路 理論的に存在する径路 EFP:等至点 SG: 社会的助勢 SD: 社会的方向づけ F-EFP:理論的に存在する等至点 実際の二者関係 BFP:分岐点 ॒ᬳᣮᤈཟÏÐÐ ᩜΡॴᬂሥ SG 本児発信の親和的関わり多発 ίᑎၥہሉᚐ SD 他児対応奔走 ̠ȗȾɢȞɝնȝșȻȬɞᩜΡഫኳɁЮȪ SG 個々ペース重視環境再構成 SG 思いを届け続ける援助 SD 非余裕的心的負担感 SG 本児心情 探索志向 第4期揺らぎ期 図㧞 クミ保育者とアミの関係構築プロセスにおける Parallel-TEM 図

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ᴮᴦቼƋఙᴷਖ਼૘ɝఙᴥ‒ఌᴦ Ȍ̜΍ᴮᴷˢ፳Ⱦᴞᴥ¯ᴦȍ  ランチの時間に、他児へおかわりを注いでいたら、アミが私の下に来る。「どうしたの?」 と尋ねると「一緒に!」と私の手を引く。一緒に座ると笑顔で食べ始めるが、再び他児のお かわりを注ごうと立ち上がると、不安な表情で私を見つめ「一緒に!」とまた手を引く。 ȌᴱఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  担当でもあるし信頼関係を築いていきたいなっていう思いもあって、①一緒にアミちゃん と遊んだりとか、一緒にランチも食べてって、いう関わりを大切にして。(略)②もう「ク ミちゃんクミちゃん」って感じで、そんなに甘えてくるってことはないんですけど、名前を 呼んで一緒に遊ぼうとか、「クミちゃんじゃないと嫌だ」とかもあって。だいぶ近づいて、 今イイ感じになっている感じですね。(略)正直、前担当していた保育者がいると、そこの 信頼関係っていうのは厚いので、まだそちらに流れちゃうことがあるので、③「その人がい ないからこの人かな」と思っているんじゃないか…、まだ完全に私でなく、拠り所みたいな 感じになっているかな…と。④でも、なっているけど求めてくることもあるので…。 ȌᴲఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  私は、⑤自分を必要としてくれるようになったんだっていうことが大きくて、これ以降、「ク ミちゃんじゃなければ嫌」っていうのも増えてきたかなって思って。手をつないで散歩に出 るのも「クミちゃんじゃなければ嫌」っていうのをはっきり伝えてくるようになったし。 ⑥何に対しても私じゃなきゃ嫌っていうのが強く出てきているから、関係も縮まってきてい るかなって。  第Ⅰ期は、クミ保育者がアミと信頼関係を築こうと【①共に遊ぶ環境構成】を意識しながら 働きかけたところ、【②本児発信の親和的関わり多発】が見られた。クミ保育者は、〈③前保育 者の代替的存在の認識〉を抱きつつ、〈④希求欲求察知〉をしながら関係構築を模索していた。 また、日曜日に休日保育を利用しているアミの様子を保護者と情報共有しながら、関係構築を 模索していた。  㧡月には、本児からの親和的・独占的関わりが増え、〈⑤代替的存在から特定的存在へ変化〉 しつつある実感を抱きながら、〈⑥親和的関係構築実感〉を抱く。その後、他保育者や他児と の関係構築へと徐々につなげていきたいという意識を抱く一方で、保育者自身が理由を伝えず 会議や休憩などでアミの下を離れた際に「寂しかったの!」と率直に言われてしまったりした ことから、本児心情が理解できていなかった罪悪感を抱くなど、関係構築の手探りは続いてい た。

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ᴯᴦቼƌఙᴷ̡᥽᫧˹ఙᴥ‒ఌᴦ Ȍ̜΍ᴯᴷ੿ȶȦᴞᴥ¯ᴦȍ  遅番のため18時に㧝階に降りようとすると、「アミも行く!」と伝えに来る。アミの思い を受け止め、一緒に降りたが、部屋に入る前に「抱っこ!」と訴える。一緒に部屋に入り、 パズルで遊ぼうと誘い掛けて降ろそうとすると「抱っこ…」と目に涙を溜めて訴える。 ȌᴴఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  やっぱり下だとすごい小さい集団だけど、①上に行くと集団も大きくなるし、子どもを見 る人数的なものも増えてくるし、周りにも気を遣わないといけないから、という環境が全く 違うので…。②そこについていくので精いっぱいの中で㧝ヶ月やってきて、結構余裕がなく なってきたりとかもあったので。体調も崩しちゃって、環境も変わったことは自分の心の中 で大きかったんかなと思って。 ȌᴵఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  ちょっと③入園した子につかなくてはならないことが増えて、こっちもいっぱいいっぱい で、自分が思っていた以上にすごかったので、そこは㧝対㧝で絶対つかなくてはいけないっ て言われたので。④アミちゃんとの関わりも以前より減ってきたので、関わっているつもり だったんですけど、今までみたいな満たされている満足感はなかったかなと思って。(略) ⑤環境の変化に自分もちょっと弱いので、独りで抱え込んでいることはないし自分的には大 丈夫だと思っているですけど…、多分この㧝年は試練の時だと思っています。ここを乗り越 えたらちょっと自分は強くなると思っていますので。(略)一緒に遊ぶ中でも、楽しさの共 有とか気持ち的なものに寄り添ったりとかはしてきたんですけど、⑥それは多分、自己満足 だったのかな、自分はこうやってきたつもりだったけど、相手からしたら「もうちょっとほ しかったんだよ」っていうのがあったのかな…っていう。それは、自分がやってきた「つも り」だったのかな?って、振り返ってみると。私は「わかっている」と思っていたので、思っ ていたつもりだったけど、「こっちは満たされていなかったよ!」みたいな、「違うんだよ!」 みたいな感じで離れていったかなって。  㧣月に入り、クミ保育者とアミは㧞階の㧞歳後半∼満㧟歳児クラスへ移行し、キクヨ保育者 (保育経験㧝年目)と一緒に㧞人で保育をすることとなった。アミは、クミ保育者の予測に反 して新しい環境に順応する姿が見られた反面、クミ保育者自身は、㧞階の新たな保育環境に移っ た《①クラス内環境変化》の影響を受けたり、ついていくのに精いっぱいという《②非余裕的 心的負担感》を抱いたりするなど、試練の時であると語る。  㧤月には、新入園児と㧝対㧝対応を要する《③他児対応奔走》に追われるようになり、〔他 児対応優先か、本児対応優先か〕という局面で他児対応を優先することが増えたことに伴う 〈④本児充足対応困難感〉を抱いたり、アミの気持ちに寄り添った対応をしてきたつもりだっ たが自己満足に過ぎなかったのではという〈⑥本児対応自己満足感と現実乖離〉に気づいたり

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するようになる。互いに揺らぎ合い、どうしたらよいかわからず耐え凌ぐような〈⑤五里霧中 的試練感〉を抱き、〈迷走逡巡状態〉に陥る。 ᴰᴦቼƍఙᴷ॑ᄑާްఙᴥ‒ఌᴦ Ȍ̜΍ᴰᴷɬʩɕᴞᴥ¯ᴦȍ  午睡明けに、少し早く起きた子が私の膝の上に座りに来て話をしていた。その後アミが起 き、その様子を見ると涙を目に溜めて立ち上がり「アミも!」と泣いて私の下に来る。しば らく私の腕の中で泣き、落ち着くと「一緒に着替えする」と笑顔を見せるが、他児が私の膝 に来ると「どいて!」「半分こ!」などと怒る。 ȌᴶఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  甘えや泣きは続いているけど、①あの時、捉え方のヒントもらったから、あの後よく考えて、 「はい、いっぱい泣いていいよ、ありがとね、いっぱい泣いて、どんどん表現していいよ」っ て関われるようになってきたので…。(略)怒ったり泣いたり色々な表情を見せてくれるから、 ②本当にアミちゃんにとって、素を見せてられるのが私なのかなって。③ヒントをもらって から気持ち的に余裕をもって関われるようになって、今までは泣いたりされると、「あ∼も う」、みたいなのが正直あったけど、今は「どうぞどうぞ!」って思うことによって、本当 に私も気持ちも楽になって。④アミちゃん自身も色々な表現を最後まで出し切ることでスッ キリした満足感はあるのかなって、感じましたね。自分が困ったら、ここに来て、ここで表 現して、ここで満足して帰る、みたいな感じなのかなって。(略)⑤私は、多分わかりあえ たと感じています。気持ち的にも余裕がもてるようになったし、アミちゃんの思いも満たさ れつつあるから、前回よりも今回本当に近づいていると思います。 Ȍ̜΍ᴱᴷɬʩǾɹʩȴɖɦ۾ܧȠȽɦȳɛᴥ¯ᴦȍ  おやつの時間に㧝階まで取りに行こうとすると「アミも行く」と私の下に来る。手をつな いで一緒に会話を楽しみながら階段を下りていたら、「アミ、クミちゃん大好きなんだよ!」 と突然伝えてくる。「クミちゃんも、アミちゃん大好きだよ!」と伝えると、「いっぱい大好 き∼」と嬉しそうに取りに行き、帰りも「好き∼」と笑顔で伝えてくる。 ȌఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  私も⑥結構自分の思いも伝えていくようにしていて、アミちゃんの様子を見ながら、もう 思いっきり愛情表現したりとか、色々思いを伝えて関わってきていて。最近よく⑦他の子が 「○○ちゃん大好き」みたいなことを毎日言っているから、そういうところで「好き」って いうワードをアミちゃんも覚えてきたのかなって。(略)この時は、「ダイレクト」の言葉で もう一瞬でもっていかれまして。今までにない感じだったので、自分のなかですごく嬉しく て、⑧伝えることで、何か結構一方的が多かったのかなって思うことが多かったので、アミ ちゃんと思いがちゃんと通じ合ってきたのかなって。⑨お互いの思いが通じ合って、たぶん

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今までの中でも一番近い状態なのかなって。(略)もうやっぱり⑩全てをドンと受け止めて あげなきゃっていう、もう「どうしていいかわからない」って㧟か月前は思っていたけど、 アミちゃんの行き所をなくさないよう、ここでドンッとここで構えなければっていうのがで きるようになってきたから…。  㧤月期には、アミに泣かれることに戸惑いを抱いていたクミ保育者であったが、㧤月期イン タビュー終了時点で、日曜日の休日保育や毎週火曜日の欠席、保育者が不定期に出張や会議で 不在になる状況、新しい環境への移行など、園・家庭を含めたアミを取り巻く環境を考えた際 に、泣き出したアミに対して大変と感じるか、アミにとって泣ける相手が園内に居ることや思 いをぶつけられる私という存在があって良かったと思うかなど、子どもの訴えや表出に関して 多様な捉え方があることを話題に挙げた。そこからヒントを得たクミ保育者は、【①訴え表出 の見方転換】に助勢され、㧥月期以降はアミの泣きや訴えが見られた際に、〔全面的受容か、 緩和的対応か〕という局面で〈存分に泣かせる全面的受容〉を選択するようになる。また、 【③精神的ゆとり生起】に助勢されながら、〈④最後まで感情を出し切る爽快感〉や〈②素を見せ られる関係構築萌芽〉を感じ、〈⑤互いにわかり合えてきた実感〉を抱くようになる。  その後、クミ保育者自身の【⑥思いを届け続ける援助】や「大好き」という好意的感情を率 直表現する【⑦感情伝播園内雰囲気】などに助勢され、11月期には、アミがクミ保育者への親 和的感情を率直に言葉で伝えてくる姿が見られた。このことから、今まで一方的な働きかけが 多かったことを踏まえ、私が一方的だったわけではなかったのではという〈⑧非一方的心情実 感〉を抱くと同時に、〈⑨互いにわかり合えてきた実感〉を感じる。また、このことを機に、 今までの精神的に余裕がない対応を振り返りつつ、〈⑩周囲に振り回されない信念〉を抱くよ うになる。 ᴱᴦቼƎఙᴷ૸ɜȡఙᴥ‒ఌᴦ Ȍ̜΍ᴲᴷɬɷȴɖɦȟȗȗᴥ¯ᴦȍ  登園時、朝の受け入れでアミの下へ行くが、私の周りには移行してきたばかりの子が何人 か「抱っこ」と足下にくっついてくる。アミへ「おはよう、一緒に遊ぼう」と声をかけると、 私の方を見たが、周りにいた子を見て、母親の胸に顔をうずめる。たまたま通りかかったア キ保育者を見ると、「アキちゃんがいい!」とアキ保育者へ抱き着く。 ȌఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  ここのところ①移行してきた子たちに付いているので、どうしてもアミちゃんって、流れ もしっかりできてきてたし、正直、「ちょっとだけ、ごめんね」みたいな感じは、やっぱりあっ たから…。(略)㧤月の時と似ているけど、私がたぶん違うと思います。②今、ドンって、「い いよ、泣いて、泣いて」っていうふうには、正直今は捉えられなくて、ちょっと移行のこと で、結構今いっぱいいっぱいになっている部分があって、振り回されているので…。やっぱ

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り、③アミちゃんはどうしてもできちゃうから、後回しってことが多くて、申し訳ないと思っ て…。(略)④アヤナちゃんとの関係作りもしていかないとなっていうのがあるんですけど…、 私と離れたくないっていうのが、ここ最近強いのかなって思いますね。⑤アミちゃんだから 大丈夫かなって思った部分があったから、わかり合えていなかったのかなってちょっと思っ たのと、アミちゃんも何回もしてくるから、やっぱり「わかって!」っていうのもあったの かなって思って、ちょっと離れたかなっていう感じです。 ȌᴮఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  多分今まで⑥どこか言葉とかで子どもを誘導することが多いから、たぶん振り回されてい るかなって、子どもから自発的な行動ではなく、私らの誘導で子どもが動いてるんじゃない かって気がついて。だから、⑦「その子はその子のペースでやっていけばいいよね」ってい うことをアヤナちゃんと話して。⑧キクヨちゃんと㧟人で回せるようにコーナーを変えて、 「㧟人で回せるから、より丁寧にいけるよね、その子に合った関わりがいけるよね?」って。 ⑨変えたことで、私もアヤナちゃんも、今まで本来の保育ができるようにもなってきて、今 はだいぶ落ち着いてきたっていう感じで、アヤナちゃんとの息もだいぶ戻ってきた感じで、 声を掛け合ったりとかしながらいい感じには進んでいっているかなとは思います。(略)今 まで休み明けでもそういうことがそんなになかったから、⑩自分のなかでは「なんで?」っ て思ったけど、落ち着いて周りを見たら、休み長くてようやく来たのに、ここにいっぱいい て、また自分を見てほしいという気持ちが出て、でも周りにいるし…、だったら「アキちゃ んのほうがいい」みたいな感じなのかなって感じたんですけど…。⑪多分「自分だけは見て もらえない」って思ったのか、それか、今この状態で、私のところに来るのは本当に嫌だ、 㧝対㧝じゃないから嫌だとか…、もっとちゃんとわかりたいな…って。(略)周りにうまく 対応して、アミちゃんにもうちょっと配慮してあげてもよかったのかなと思ったし、私もわ かってあげられなかったというのと、アミちゃんも先月とそんなに変わらないかなと。  第Ⅳ期の12月には、アヤナ保育者と他児㧡名が慣らし保育として㧞歳後半∼満㧟歳児クラ スに移行してきた《クラス内環境変化》の影響を受け、アミに〈独占欲や甘えの再顕在化〉が 生じ始めた。クミ保育者は、第Ⅱ期と同様に、〔他児対応優先か、本児対応優先か〕という局 面に立たされる。その際、《①他児対応奔走》と《②非余裕的心的負担感》に抑制されながら、 生活リズムが確立しているアミたちよりも移行してきた他児を優先することが増え、〈③本児 を後回しにしている自戒〉を抱く。また、新たに加わったアヤナ保育者との関係構築にもつな げていきたい反面、私と居たいアミの心情も充足させたいという〈④本児心情充足と他保育者 関係構築の葛藤〉に苛まれ、〈⑤迷走逡巡状態再来〉に陥る。  㧝月の完全移行を受け、キクヨ保育者は㧟歳児クラスへ高月齢児と一緒に移行し、クミ保育 者は正式にアヤナ保育者と一緒に再びパートナーを組むことになった。新たに移行児が加わっ たことを機に、今までの保育を振り返り、【⑥誘導優先保育への自戒】を抱く。また、アヤナ 保育者と保育の方向性について【⑦⑨担当者間意識共有】をすることで、【⑧個々ペース重視環

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境再構成】に配慮したところ、徐々に個々に応じた対応が充実し、生活リズムの落ち着きが見 られるようになった。しかし、㧝月末に、10日ほどの長期欠席後に久々に登園したアミが、 他児対応に奔走していたクミ保育者の受け入れを拒み、他保育者への代替的承認欲求が見られ たことから、【⑪本児心情探索志向】に助勢されながら、本児の心情を探りわかろうとする 〈⑩本児注視欲求理解〉を試みていた。 ᴲᴦቼƏఙᴷᄾ̠ᄑျᜓఙᴥ‒ఌᴦ Ȍ̜΍ᴳᴷ᯻Ȩɦ఼ȲɜǾަȶȹɀᴥ¯ᴦȍ  豆まきの紙芝居を、アミは怖そうな表情をしながら見ていた。紙芝居が終わった後、アミ が私の下に来て「鬼さん来たら守ってね」と伝える。「もちろんだよ、アミちゃんの心の中 の鬼、一緒に鬼は外!ってしようね」と伝えると、満面の笑みで「うん、ありがとう」と言 い、次の紙芝居を集中して見る。 ȌᴯఌఙɁ᝙ɝᴥˢ᥂੺ዩᴦȍ  やっぱり、①関わる日が何日か持てたことで、信頼感とか安心感というのが、また再び戻っ てきたのかな…。私も、アミちゃんからそんな言葉をまさか聞くとは思っていなかったので …、ちょっとびっくりして、もう本当に正直「えっ、アミちゃんがそんなことを言うの?」 みたいな感じですごい驚いたのと、ちょっと固まりましたね。(略)紙芝居を見ていて、私 は後ろの補佐みたいに座って居たけど、②その後も他の保育者には言いに行かなかったので、 やっぱりいざというときの私なのかなって。いざというときには守ってほしいという存在だ からこそ、そうやって伝えてくれたのかなって、この時はすごい感じて。(略)③先月やそ の前よりは心の距離も近くなって、絶対的安心感みたいな…。④私はどんと構えてあげられ るぐらい、今、結構、気持ち的な余裕もあるので、全然。  第Ⅴ期の㧞月以降、クミ保育者は㧝対㧝で安心して過ごせるよう配慮しつつ、アミの心情を 受け止め、素直に気持ちを表現できるよう努めたところ、徐々に〈①安心感や信頼感の回復〉 を実感するようになる。そのような中で、遠くにいたクミ保育者に対して「守ってね」と伝え てくるアミの姿に驚くと同時に、〈②困惑時希求対象としての特別的存在実感〉を抱くように なる。また、アミからクミ保育者への〈③心的距離近接感・絶対的安心感〉を抱くと同時に、 クミ保育者自身も〈④心的余裕対応ができる心構え〉が芽生え、心的距離感に基づく関係構築 実感から『互いにわかり合おうとする関係構築』へと至っていた。 Ǝᴫ፱նᐎߔ  以上の結果から、若手保育者が子どもとわかり合おうとする関係構築プロセスを Parallel-TEM で分析した結果、㧞名の若手保育者が子どもと関係を構築していくプロセスの具体的な

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内実やそれぞれの揺らぎ方には差異が見られた。その一方で、関係を構築しようと模索する手 探り期を起点に、クラス内環境変化を機に他児奔走に追われたり五里霧中感を抱いたりしなが ら困惑する時期、本児対応意識化や全面的受容により親和的関係の再萌芽を実感する時期、家 庭情報や他保育者との比較に基づき関係促進の手応え感やわかり合えてきた実感を有する時期 などの段階を経て、関係を構築していたことが見出された。  特に、Parallel-TEM 図の面積の推移に着目すると、アヤナ保育者は、全期を通じて保育者と 子どもの双方が互いの面積を縮小・拡大しながら推移していく様相が示され、わかり合おうと する関係は、互いの感情共有を主としながら共鳴し合っており、互いの感情が響き合うように しながら構築されたと考えられる。一方、クミ保育者は、困惑した期(第Ⅱ期・第Ⅳ期)にお いて、保育者自身とアミの互いのわかり合いの度合いに偏りが生じていることを実感しつつ、 それを乗り越えようとしながら関係を構築していた様相が示された。  その上で、若手保育者が子どもとわかり合おうとする関係を構築していく中で、以下の㧠つ の特徴が見出された。 ᴮᴫɹʳʃၥہ۰ԇȾͧșᕼᗵɁႆᠭ  まず初めに、若手保育者が子どもとわかり合おうとする㧝年間のプロセスの中で見られた関 係構築の社会的方向付け(SD)として、 環境変化に伴う葛藤 が顕在化した。つまり、アヤ ナ保育者もクミ保育者も、低月齢児を新しく受け入れる移行と、保育者自身が子どもと共に新 たな環境へ移る移行の㧞種類の保育環境の変化を経験したが、これらは共に《クラス内環境変 化》という SD として、関係構築を抑制していたことが見出された。特に、アヤナ保育者の第 Ⅱ期とクミ保育者の第Ⅱ期・第Ⅳ期に着目すると、子ども集団の構造が変化する中で《他児対 応奔走》に追われて本児対応が十分行き届かないこと、余裕を失い《孤軍奮闘感》や《非余裕 的心的負担感》を抱きやすいことが見出された。したがって、若手保育者にとっては 個と集 団のバランス に着目した葛藤が生起しやすいと考えられ、クラス環境の変化に伴い 集団の 中で個別具体的な関係を構築する難しさ が示唆された。  このようなクラス環境変化に伴う葛藤は、子ども理解の熟達化の特徴とも関連があると推測 される。特に、保育経験㧡年未満の保育者は子どもを単一の視点から捉える傾向があること(高 濱,2001(13))、幼児一人一人を見る余裕がない状態から徐々に個々の違いや個性が見えてくる こと(志賀,2001(14))などの知見を踏まえると、若手保育者の段階は、徐々に視野を拡充し つつ、集団と個の双方に意識をバランスよく向けながら対応していく過渡期にあると言えよう。 そのような段階において、本児対応と他児対応の優先性に躊躇したり、双方への対応が行き届 かなくてゆきづまりを感じたりすることは、保育者が子どもとわかり合おうとする際にも障壁 になると考えられる。  2017年改訂の幼保連携型認定こども園教育・保育要領の中では、特に㧞歳から満㧟歳の移 行期には、入園する園児の存在や子ども対保育者の人数比率の変化などの多様な環境変化が生 じることを踏まえ、保育者間での連携は引き継ぎを円滑に行うことや、保育者間の共通理解や

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園全体での受け入れ体制確保などの柔軟で弾力的な対応を行う必要性が提言されている(内閣 府ら,2018(15))。また、昨今の保育現場では、㧝・㧞歳児の保育利用率の上昇などから、本研 究の調査協力園特有の移行体制に限らず、年度途中の子どもの新入園・転園などにより、常に 流動的なクラス集団の構造的変化が生じる可能性が推測される。よって、子どもだけでなく若 手保育者にとっても、このようなクラス内環境変化の影響を受けやすく、子どもとわかり合お うとする関係を構築していく上でも様々な葛藤を引き起こす大きな阻害要因となると考えられ る。 ᴯᴫᩜΡႾᤕˁٌ঺࿡ৰȾȝȤɞᅁߔɁ᥾ᛵॴ  さらに、関係構築途上に生起する障壁は、両者にとっては葛藤を引き起こすものの、その時 点で生起している多様な事象を的確に捉え、保育者が自ら省察することは、新たな関係構築の 手立てを生み出す可能性が潜在していることが見出された。例えば、アヤナ保育者にとって子 どもと最もわかり合えないと感じたのは第Ⅱ期の疎遠期であったが、その際に保育者がクラス 環境の変化や他保育者の存在、自分自身の他児対応奔走感・孤軍奮闘感やユメカの非主張安堵 感など、冷静に保育者自身や子どもの状況や周囲の環境を省察していた。その上で、次なる手 立てを考え、本児への個別対応を意識化したことにより、第Ⅲ期では本児へ保育者自身の心情 を率直に伝えることで、保育者側からの一方的な心情ではない手応えを持ち、わかり合おうと する関係構築の再萌芽に至っていた。一方、クミ保育者も、第Ⅱ期において、アミの気持ちに 寄り添った対応をしてきたつもりだったが自己満足に過ぎなかったのではという省察をしてい た。また、第Ⅱ期末には、アミとの関係構築に五里霧中感を抱きながらわかり合えないと感じ ていたが、本調査のインタビューで自身の考えを語る中で、子どもの訴えや泣きの表出をどう 捉えるかについてヒントを得たことから十分な省察をしていた。それが見方転換の契機となり、 第Ⅲ期には保育者自身にも精神的ゆとりも生まれ、互いにわかり合えてきた実感を抱くに至っ ていた。  これらのことを踏まえると、関係構築途上における様々な障壁は、保育者への落胆や自責の 念・様々な葛藤などを誘発しやすいが、その反面、丁寧な状況判断や次なる手立てを検討する 契機として位置づく可能性もあると言えよう。関係構築の際に何らかの障壁に直面した際に、 単純に落胆したり閉塞的に考えたりするのではなく、自己内省察や他者との語り合いに基づく 省察によって、新たな関係構築の再起点になりうることが考えられる。 ᴰᴫފȼɕɋɁɢȞɜȽȨȾႏ఼Ȭɞ߰᥾ॖտॴ  続いて、関係構築の社会的助勢(SG)として、子どもへのわからなさに由来する尊重志向性 が見出された。例えば、アヤナ保育者の第Ⅰ期では、保育者自身の思いが通じた実感はあるも のの子ども側の真意や背景を探ろうとしたり、子どもの心情はわかるが表層的理解で留まって いることを自覚しながら背景に潜在する理由や根拠を探したりしていたが、この時期には、 「もっと子どもの本質的な部分を知りたい」という【本児本質的理解希求】という SG が生じ

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ていた。また、第Ⅲ期で、一時的に疎遠になった関係が再び回復して親和的関係の兆しが見え てきた際も、「子どもの気持ちを考える時に、決めつけたくない」「こちらがこうだと思っても、 本当の気持ちはその子にしかわからないのではないか」と語っており、子どもの心情を推測し ても一方的な主観で断言したり結論付けたりすることなく、子どもが自分とは異なる存在とし て尊重しようとする【本児心情尊重志向】が SG として作用していた。加えて、クミ保育者の 第Ⅳ期においても、他児対応に奔走していたクミ保育者の受け入れを拒み、他保育者への代替 的承認欲求が見られたことを受け、10日間の長期休み明けに登園した本児の立場に立って様々 な心情を多角的に推測しながら「もっとちゃんとわかりたい」という【本児心情探索志向】が SG として生起していた。このように、実践経験の浅い若手保育者にとって、 子どもへのわか らなさ は、子どもの未知性や異他性を認識する契機となり、本児とわかり合えていない状況 だからこそわかり合おうとする 尊重志向性 が、関係構築を促進する社会的助勢として大き く影響していると考えられる。  この点に関しては、初任保育者もわからなさに直面した際に、真意や理由を探し求めて迷走・ 逡巡するような混乱が生じていたことが見出されている(上村,2019(16))。この知見を踏まえ ると、若手保育者の場合は、初任期から実践経験を徐々に蓄積していく中で、 子どもがわか らない瞬間は存在しうる という子どもの未知性や異他性を認識して前提としながら、わから ないからこそわかろうと意識する志向性を少しずつ体得していくキャリア発達の途上にあるこ とが推察される。保育者と子どもが、それぞれわからなさを有した異なる存在として、互いを 認め合う地平に立ち、その個別具体的な存在を尊重し合うことを出発点とすることが、子ども とわかり合おうとする際の重要な要因になると考えられる。 ᴱᴫᩜΡ΢᣹ɁಏચȻȽɞ᫿ժ᛾ᄑষڨɋɁᅔᄻ  最後に、多様な可視的情報だけでなく、非可視的情報を手掛かりとしながら、わかり合おう としていたことも見出された。まず、可視的情報に着目すると、例えばアヤナ保育者に関して は、第Ⅰ期に「甘えたい気持ちはわかるけどその的確さや背景がわからない」など、本児の表 層的な理解に留まっている自覚があった。しかし、徐々に「予想よりも複雑な性格ではない」 など個性把握の手応えを感じるようになり、第Ⅲ期では㧞歳児の発達過程の知識を想起しなが ら届きやすい言葉を十分考慮した上で、本児により伝わりやすい言葉がけを選択していたと同 時に、子どもの嬉しそうな表情を手掛かりにしながら、互いに親和的感情を有している手応え を感じたことも語っている。さらに、第Ⅴ期には、「このタイミングで言葉がけをすれば60% は来てくれるだろう」などと子どもの行動を予測する際、今まで関わってきた本児の言い方や 表情から、その真意やタイミングを察知できる手応え感を有していた。一方、クミ保育者も、 第Ⅰ期の「一緒に!」と手を引く姿、第Ⅱ期の涙を浮かべて抱き着く姿、第Ⅲ期の「どいて!」 「半分こ!」と他児を拒むなどのアミの姿からクミ保育者への希求欲求や独占欲を察知したり、 第Ⅲ期の「クミちゃんのこと大好きなんだよ」や第Ⅴ期の「守ってね」という親和的言葉表現 や、第Ⅳ期の「アキちゃんがいい」という拒絶的発言など、アミが発する言葉を手掛かりにし

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