学 位 論 文 内 容 の 要 約
氏名 岩本 史光
論文題目
Fecal Calprotectin predicts disease activity of Crohn’s disease evaluated with balloon-assisted endoscopy (クローン病における小腸バルーン内視鏡との対比による便中カルプロテクチンの臨床 性能の検討) 学位論文内容の要約 (研究の目的) クローン病は全消化管に非連続性に肉芽腫性炎症、瘻孔などを起こす原因不明の慢性炎症性疾患であ り、特に小腸、大腸の病変が主となる。再燃と寛解を繰り返すため病変の活動性評価が定期的に必要と され、臨床症状、血清マーカー、内視鏡検査による評価を行なう。特に小腸大腸の内視鏡的粘膜治癒は クローン病の長期寛解維持率と相関することが知られており、治療目標として重要である。深部小腸の 粘膜評価方法としてバルーン内視鏡がある。しかしバルーン内視鏡は挿入困難例の存在、高侵襲な検査 であり頻回の検査が困難である。 カルプロテクチンは36kDaのカルシウム・亜鉛結合蛋白であるS100蛋白A8、A9複合体で、好中球、単 球、マクロファージなどの主要な蛋白質である。腸管炎症が起こると糞便中に移行し、好中球量と相関 することが知られている。また常温で約1週間安定することもあり、炎症性腸疾患と過敏性腸症候群の 鑑別や炎症性腸疾患の活動性評価に有用とされ、簡便な検査として報告される。しかし、便中カルプロ テクチンと小腸病変との関連は報告が少なく、多くは臨床的活動性や大腸鏡による粘膜評価との相関が 報告される。 そこでクローン病のバルーン内視鏡による小腸粘膜評価と便中カルプロテクチンの相関を検討し、臨 床における有用性と最適なカットオフ値を検討することとした。 (方法) 本研究はと山梨大学医学部付属病院と東京医科歯科大学医学部付属病院の2施設で行った横断研究であ る。2015年6月から2017年3月までにクローン病と診断され、バルーン内視鏡で小腸観察を行った70例を 対象とした。各症例の臨床活動性を臨床症状、白血球数(WBC)、血中ヘモグロビン濃度(Hgb)、血清 アルブミン、C反応蛋白(CRP)、赤沈(ESR)、便潜血反応(FIT)で評 価 し 、 内 視 鏡 活 動 性 は バ ル ー ン 内 視 鏡 を 可 能 な 限 り 経 肛 門 的 に 挿 入 し 、 simplified endoscopic activity score for Crohn’s diseaseを改変して用いて評価を行なった(mSES-CD)。mSES-CDは空腸、回腸、回腸末 端 、右 側 大 腸 、横 行 結腸 、S状 結 腸 、直 腸の 各セ グ メ ント の 最も 炎 症を 認 め る場 所 を 10c mの 範 囲 で 評 価 し た 。 便 中 カ ル プ ロ テ ク チ ン は 内 視 鏡 実 施 日 の 前 後 4週 間 以 内 に 専 用 容 器 で 採 便 し 、-30℃ で 保 管 、測 定を 行 な った 。便中 カ ルプ ロ テ クチ ン と各 変 数と の 相 関は Spearmanの 順 位 相 関 係 数 を 用 い て 行 い 、 臨 床 的 カ ッ ト オ フ 値 を 決 定 す る た め に ROC(receiver-operator curve)に よ る 解析 を 行っ た 。また mSES-CDへ の影 響 を 及ぼ す 因子 の 検討 に 臨 床症 状 、WBC、Hgb、 ア ル ブ ミン 、 CRP、 ESR、 FIT、 FC間 で 重 回帰 分析 を 行 った 。 ( 結 果 ) CD全70例では中央値527μg/g (range 16-9733)だった。内視鏡との相関係数はr=0.642, p<0.001と有意 な相関を示し、ROC解析はカットオフ92μg/g, sensitivity 94%, specificity 88%, positive predictive value (PPV) 98%, negative predictive value (NPV) 64%, area under the curve (AUC) 0.91 (n=70) だった。小腸型クローン病39例では中央値249μg/g (range 16-3964)、r=0.607, p<0.001と有意な相関 だった。ROC解析はカットオフ92μg/g, sensitivity 87%, specificity 88%,PPV 96%, NPV 64%, AUC 0.85 と良好な値だった。既存のマーカーではHgb、血清アルブミン、CRP、ESR、FITと有意な相関を認めたが FCが最も相関していた。またROC解析でも感度、特異度、PPV、NPVはFCが最も良好な値だった。重回帰 分析ではFC,WBC,ESRが有意にmSES-CDと相関していた。
学 位 論 文 内 容 の 要 約 ( 続 紙 ) 氏名 岩本 史光 (考察)今回の検討で便中カルプロテクチンはクローン病の粘膜治癒評価に有用であることがわかっ た。既存のマーカーと比較してFCは最も内視鏡活動性と関連があり、感度、特異度、陽性的中率、陰性 的中率いずれも優れていた。クローン病の完全粘膜治癒と非完全粘膜治癒で予後に差があることが報告 されており、治療目標として重要となる。小腸内視鏡と便中カルプロテクチンの関連性についての報告 はあるものの、小腸の完全粘膜治癒と便中カルプロテクチンの比較検討をした報告は無く本検討が最初 の報告である。 (結論) FCは小腸内視鏡スコアと有意な相関を示した。FCは小腸型クローン病の病勢評価にも有用であり内視鏡 に代用可能である。