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学校現場におけるスクールカウンセラーの守秘義務のとらえ方

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Academic year: 2021

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(1)学校現場におけるスター肋ウンセラーの守秘義務のとらえ方. 学校教育専攻 教育臨床コース 吉. 田. 恵. 子. もたらされる〈効果に対する認知度〉が,経験. 1 問題と目的. の浅いSCと比較して高いのではないかとい. 本研究は,学校現場で教職員とスクールカ. う仮説も踏まえた上で,調査を実施した。. ウンセラー(以下SC)が連携していく際に,. 「守秘義務を踏まえた上で,双方が折り合え. 2 研究方法. るような情報の開示方法の枠組を見出してい. 〈予備調査1>2001年6月置B県大学院生で. くこと」と,学校全体での守秘義務という概. SCと連携経験のある教職経験者14名に,. 念の前段階として,「連携場面で,比較的少. 教師側から見て連携しやすく感じられるよう. 入毛で情報を交換共有することが可能な集団. な情報開示の方法と情報共有の度合いについ. として,どのようなメンバー構成が適当であ. て,自由記述による質問紙調査を実施.KJ. るか」という2点について検証することを目. 法(川喜田1967)を用いてカテ:ゴリーを作成.. 的としている.「双方が折り合える情報の開. <予備調査H:>2001年7月.A県在住の臨床. 示方法の枠組」に関しては,学校現揚で教職. 心理士でSC勤務経験がある仏名にSC側. 員とSCが連携していく際の大きなハードル. から見て教師と連携する際「守秘義務,プラ. のひとつとして「児童生徒の了解・許可が得. イヴァシーの扱いに関してどのような工夫を. られない場面での学校側からの応報開示要請. しているか?」の設闘に対する自由記述によ. と,それに対するSCの情報の扱い方」が挙. る質問紙調査を実施。分析方法は同上.. げられる.今回、「教職員は相談内容に関す. 〈本調査>2001年10月.西熊本に在住する. る情報開示を求めているが,当該児童生徒や. 臨床心理士有資格者でSCとして派遣されて. 保護者本人の了解を得ていない場合」と,「SC. いる105名を対象に実施.調査内容は,守. は学校側に伝えた方が望ましいと判断してい. 秘義務の扱い方と相談内容の報告に関する設. るが,本人が学校側に情報を伝えることを拒. 問(11問),守秘義務の限界と本人の了解がな. 否している場合」の二種類の場面を想定して,. い場合の情報開示に関する設問(4問),本人. SC自身の情報の扱い方についての調査を実. が拒否している場合の情報開示に関する設問. 施する.また,〈SC経験年数が5年以上〉の. (2聞〉,教職員と連携して情報共有を行う際. グループと,〈5年未満〉のグループを比較し. の効果と課題(22間),教職員と連携して情報. て,学校臨床経験の長いSCは,現場で連携. 共有を行う際の満足度(19問)援助チームを. する際に有効な情報開示の枠組みを身につけ. 組むことの有効性と構成メンバー(17問〉,派. ており,そのために情報共有を〈共有時にお. 遣校の学校属性に関する質問(Face一曲eet).. ける満足度〉ならびに共有することによって. 各県の臨床心理士会会長宛に質問紙調査を実. .1..

(2) 施することに対する依頼文書を送付後,対象. を選択する.6)学校側に伝えた方が望まし. 者の自宅に郵送.回収率は4&6%である.. いが,児童生徒本人の学校側に開示すること. 3 結果と考察. に対する許可が得られない状況での情報の扱. 〈SC経験年数が5年以上〉のグループと,〈5. い方について,原則としてSCは本人の了解. 年未満〉のグループの情報共有時における〈満. を得ないまま,教職員に面接内容で得た情報. 足度〉ならびに共有することによってもたら. を開示することは行わない,ただし伝えた方. される〈効果に対する認知度〉を検討した結. が当該児童生徒への支援援助が促進されると. 果,学校臨床経験の長いSC群のほうが,他. 判断した場合には,学校側に伝えた場合のメ. 群と比較して有意に高いという結果が出た.. リットとデメリットについて確認した上で,. 次に,教職員とSCの双方が折り合えるよ. 児童生徒本人から,直接教職員に伝えるよう. うな情報の開示方法の枠組の構成因を以下に. に促すか,SC判断で学校側に直接伝える.. 示す.1)相談室と職員室の両方にSCの席を. 教育相談活動の中で,“援助チーム”を組. 設置.2>繋ぎ役として,非社会的問題行動. みながらコンサルテーション活動をすること. には教育相談が,反社会的問題行動に関して. について,経験年数にかかわらず,スクール. は生徒指導主事が担当する.3)面接開始時. カウンセラーと教職員が援助チームを組んで. に,「守秘義務」と「守秘義務の限界性」の. 活動していくことの,有効性が認められた.. 両方を説明してから,面接を実施する.SC. 援助チームのメンバーとして,通常は〈学. が守秘義務の限界性について伝えることな. 級担任〉〈養護教諭〉〈教育相談〉にくスクールカ. く,守秘義務のみを最初に伝えてしまうと,. ウンセラー〉を加えた4人置構成,状況に応. 教職員とSC双方の情報の共有に支障をきた. じて,「学年主任」と「生徒指導主事」を加. すので,手続きとして,面接開始時に「守秘. えるような役割分担を意識したメンバー構成. 義務の限界性」について伝えることが,教職. が望ましいという結果が出た.〈管理職〉もメ. 員と情報を共有していく上で,有効となる.. ンバーとして同席するが,困難な場合,窓口. 4)活動内容はその都度担任,または教育相. でもある「教育相談」が報告する形をとる.. 談担当教諭に伝える.5)児童生徒本人の了. 4 今後の課題. 解を得ていない状況で,教職員から情報開示. 情報共有のガイドラインを,SCと教職員. を求められた場合の情報の扱い方について,. で作成,手続きとして,SC自身があまり抵. 原則として,本人の了解を得ないまま,教職. 抗感のない情報をSCから教職員に開示す. 員に面接内容で得た情報を開示することはし. る.それらの情報を共有することによって,. ない.生徒の個人的な問題に関する相談での. 実際に児童生徒を援助していく際に,その情. 情報提供は行わないが,〈いじめ〉〈非行・暴力. 報が有効であったという事実と情報提供に対. 〉等の「反社会的問題行動」や「危機介入的. する感謝の気持ちを,教職員側からSCに伝. な意味合いの強い事例」に関するものは,自. えていくことで,共有の枠組が見えてくる.. 主任指導教官 夏野良司 指導教官 辻書癖登. 発的に情報提供を実施する等,問題の種別や 内容の深刻さの度合いにより,開示する方法. 一2一.

(3) 学校現場におけるスター肋ウンセラーの. 守私義務のとらえ方. 学校教育研究科学校教育専攻 教育臨床コー・ス〃’000600. 陥雌。,yo磁α)4.

(4) 次. 目. 第1章 問 題………一 第1節 1 2. 1 2 3. ア. ア. スクールカウンセラー導入の成果. 2. スクールカウンセラーとの連携. 4. スクールカウンセラーと連携することに対する現場の声. 4 6. スクールカウンセラーと連携していく際の課題. 70. 教師とスクールカウンセラーの連携に関する先行研究. ア4. スクールカウンセラーと連携する際の問題点. 第3節 1 2 3 4 5 6. 概 要 14 キーパーソンの重要性 ア4. 教育相談活動に対する意欲や理解を深める研修の重要性. 75. インフォーマルな場での相互交流に関する先行研究 教育相談システムとコンサルテーションに関する先行研究. ブ5. 守秘義務のとらえ方に関する研究. 第4節 1 2 3. スクールカウンセラーの導入 スクールカウンセラー導入の経過. 第2節. P. …・・……………・・一………・・一・・………. 欧米での守秘義務の概念 、4P4 e伽oa’oode規定. 16. 2ア. 23. 23. アメリカでの臨床実践の場における守秘とその限界 25 アメリカでの危険な患者と専門家の警告義務の扱い方 27. 第2章 目 的……’…………・一……………・. ・…………………. 第3章 方 法一……__.._..____..____.__.._〃. 第1節 予備調査. 32. 《予備調査1》. 1 2 3 4. 目 的 調査時期 調査対象 分析方法. 32 32 32. 32. Q9.

(5) 《予備調査H》. 1 2 3 4. 第2節 1 2 3 4 5 6. 目 的 32 調査時期 33 調査対象 33 分析方法 33. 本調査 34 目 的. 34. 方法手続き 34 調査対象. 35. 調査内容 35 調査手続き 36 調査時期. 36. 第4章 結 果……………一・一……………・・一……………・・一…31 第1節 予備調査 37 1 教職経験者対象. 37. (1)被験者の属性. 37. 37. (2)KJ法によるカテゴリー分類. 40. 2 スクールカウンセラー対象 (1)被験者の属性. 40 40. (2)KJ法によるカテゴリー分類. 第2節. 1. 本調査. 43. 学校教育相談場面におけるスター励ウンセラーの情報の扱い方 43. (1)被験者の属性. 43. (2)被験者が派遣されている学校の属性. 43. (3)被験者が派遣されている学校でのキーパーソン 47 (4)派遣校での守秘義務の扱いと報告義務について 47 (5)スター励ウンセラーと教職員が情報を共有することに伴う効果と課題. 52. (6)教職員と連携する際の情報の扱い方・交換・共有に伴う満足度. 55. (7)〈効果と課:題〉領域における因子分析 57. (8)〈満足度〉領域における因子分析. 59. (9)教職員と情報共有する際の〈守秘義務〉とく報告義務〉の関連性. 60. (10)学校要因と教職員との連携に伴う〈効果課題〉〈満足度〉の関連性. 63. (11)〈情報の開示共有〉と連携に伴う〈活動状況〉〈効果課題〉〈満足度〉. 64. (12)連携に伴う〈効果課題〉領域と〈満足度〉領域との関連性. 66. 一ll一.

(6) 2スター励ウンセラーと教職員で援助チームを組むことの有効性 67. (1)援助チームそのものに対する有効性. 67. (2)援助チームの構成メンバーについて. 67. (3)各問題種別ごとの援助チーム構成メンバーについて. 70. 第5章総合考察…. 〃. 第1節 双方が折り合える情報開示と共有の方法. z2. 1連携を左右する条件 72 (1)学校の属性. 72. (2)情報交換機能に影響を与える学校属性. 73. (3)学校で窓口となるキーパーソン. 74. 2 教職員と情報を共有する際の守秘義務と報告義務の扱い 74 (1)教職員と児童生徒の相談内容に関する情報を共有する際の手続き. Z4. (2)児童生徒の了解・許可が得られない場面でのく開示方法〉とく守秘義務>75. 3教職員とスクールカウンセラーが情報を共有することに伴う効果と課題 Z8 (1)スクールカウンセラーと教師が情報を共有することに伴う効果. Z8. (2)スクールカウンセラーと教師が情報を共有することに伴う課題 79. 4 連携する際,学校側との情報の交換・共有に伴う満足度. 80. (1)満足度が高い項目群 80 (2)満足度が低い項目群. 80. 第2節 連携場面で,情報の交換共有が可能な集団. 1援助チームを組むことの有効性. 8ア. 81. (1)援助チームそのものに対する有効性. 8ア. (2)援助チームの構成メンバーについて. 87. (3)各問題種別ごとの援助チームの構成メンバーについて. 第3節 まとめと今後の課題. 83. 1情報の開示方法と共有の枠組. 83. (1)情報の開示方法と情報共有の枠組を構築する際の留意点 (2)守秘義務をめぐる今後の課題. APPE∼Dρ(. 83. 84. 2援助チームを学校現場で有効に活用させていくために… 引用文献. 82. 86 90. 謝 辞. m. 84.

(7) 問. 題. 第1節 スクールカウンセラーの導入 1.スクールカウンセラー導入の経過 近年,社会の複雑化・多様化とあいまって,児童生徒の諸問題の多様化と深 刻化により,学校生活に不適応を示す児童生徒の数は増加傾向にある.学校現 場においては,いじめ・不登校・非行・暴力行為・自殺・殺人・薬物依存・子 どもの虐待などが重要な課題となっている.平成12年度文部科学省学校基本調. 査によると,不登校は小中学生で約13万4,282人もおり,前年比約3.1%増で ある.非行傾向は,平成12年の警察庁発表によると,凶悪化・低年齢化・一般 化・集団化・遊び型化している.平成12年度の文部科学省“生徒指導上の諸問 題の現状”によると,高校におけるいじめの発生件数は,2.327件で前年をやや 下回ってるが,暴力行為は約5,971件であり,前年を上回っている.. こうした諸問題の背景には,家庭教育の問題や,社会的な問題が複雑に絡み 合っており,学校教育だけの問題ではなくなってきている.そのため日常的か つ組織的な対応が求められており,そのひとつとして平成7年度から始まった 文部科学省のスクールカウンセラー活用調査研究委託事業は,開始当初の派遣. 歩数154校から,平成12年度には2,250校と年々拡充してきている.各都道府 県の教育委員会派遣のカウンセラー事業も推進されており,B県では従来の単 独校・拠点校方式に加えて,独自に“要請派遣制度”を実施している.それら の実践報告は,全国規模では文部科学省(1997.1999.200壌)各派遣校,スクールカ. ウンセラーなどが実施しており,スクールカウンセラーからの報告は,学校以 外の専門家による客観的な援助活動の評価という視点から,より多くの示唆に 富んでいる.. 伊藤(2000)は,”スクールカウンセラー導入による成果と問題点”として,. カウンセラーと派遣校の教師に対して質問紙調査を実施し,“スクールカウン セラー側に,教師との対立に対する予期不安や恐れがやや強く見られる”と分 析している.さらに,カウンセラー自身の学校要因に対する評価では,さらな る工夫が必要な項目として”学校側の受入れ”を半数以上が挙げており,”ス クールカウンセラーを利用した教師の数”では,“ごく一部”という回答が全. 体の4割に達していることから,“スクールカウンセラーがすべての教師に活 用されているわけではない”ことを指摘している.B県の平成10年度の活動報 告でも,同じスクールカウンセラーに繰り返し派遣を要請している学校がある. 一1一.

(8) 反面,一度も派遣要請をしない学校もあり,活用頻度の学校間格差が開いてし まっている.. 村山(2000)は,“教師とスクールカウンセラーの役割の相違点を双方が明確 化して理解し合うことが前提条件である”とした上で,山本(1986)の言葉を引. 用して“DoingとBeingのカルチャーの出会いであり,学校の閉鎖性に風穴をあ けた”と評価している.山下(2000)も,“カウンセラー側に問題があるとすれ. ば,個々の児童生徒の立場だけしか見ずに,学校全体の動きが見えていない場 合である”と個に重きを置くスクールカウンセラーと集団全体を常に意識して いる教師との立場の違いを指摘している.これらの実践報告から,教師とスク ールカウンセラーとの連携のあり方を検討することが急務となっている.. 研究調査派遣委託事業開始から7年を経て,文部科学省(2001)は,着実に連. 携の効果が現れたと評価している.一方,当初ほどではないにせよ,教師とス クールカウンセラーの専門性の違いから生ずる課題が現在もなお指摘され続け. ていることも事実である.教師とスクールカウンセラー双方の文化と立場の違 いを認めながら,互いに理解していく方向を見出していかない限り,連携はう まくいかないのではないか.. 2.スクールカウンセラー導入の成果 文部科学省は,スクールカウンセラー導入の目的として,以下の二項目を挙 げている.①児童生徒のいじめや校内暴力等の問題行動,登校拒否や中途退学 者の学校不適応等その他生徒指導上の諸問題に対する取り組みの在り方,②児 童生徒の問題行動を未然に防止し,その健全な育成を図るための活動の在り方 の二点について,実践的な調査研究を行うことである。. 導入後の成果として,文部科学省中学高等学校編の“中等教育資料特集平成 7.8年度スクールカウンセラー活用調査研究委託研究集録(1997)”に,教師の立. 場からの報告を掲載している.それによると“教師と異なる視点の提供”(違 った視点から,教師としての活動を行うことができた)”“コンサルテーション の有効性”(教師として気がかりな生徒達の捉え方の指針となった)”“生徒保. 護者への直接的な援助”(配慮を必要とする生徒・保護者への支援活動の拠り 所となった)”“専門家としての優秀なスキル”(全体研修会や事例研究会に同 席して直接アドヴァイスを受けられた)”“親身になって相談に乗ってもらえて,. 心のゆとりが深まった”など,直接,間接にプラスの影響を与えているという. 報告が非常に多かった.また,医療・福祉関係の外部機関とのネットワークづ くりに貢献しているというコーディネイトかかわる能力も高く評価されている.. 一2一.

(9) 平成13年度から5年計画で,すべての中学校にスクールカウンセラーが配置 される.今後,教育相談業務を実施していく上で,何らかの形でスクールカウ ンセラーと連携することは,必須であると言えよう.. 一3一.

(10) 第2節 スクールカウンセラーとの連携 1.スクールカウンセラーと連携する際の問題点 平成10。11年度,文部科学省活用調査研究委託指定校としてスクールカウン セラーと連携しながら教育相談活動に取り組んだB県の公立高校は実践報告書 (2000)で,教師とスクールカウンセラーのそれぞれの役割の相違点を,双方が. 明確化して理解し合うことが,活用していく際の前提条件であり,まず乗り越 えなければならない壁であると指摘している.このことに関して村山(2000)は 山本の言葉を引用して,教師と臨床心理士の心の問題に対するアプローチの違 いとして,“教師は今まで学校教育の中ではDoingの文化というか,とにかく効 率的にする,みなで早くきちんとするというカルチャーにウェイトを置いてき た.臨床心理士の投入というのは,Belngのカルチャーというか,つまり今のあ るがままを認めていく,成長力を持つというふうな視点を導入しないと事態が うまく展開しないということがあった.DolngとBeingのカルチャーの出会いみ. たいな一面もあるような気がする.学校の閉鎖性に風穴をあけた.”と指摘し ている.山下(2000)は,スクールカウンセラーを市場に出回り始めた頃のパソ. コンに例えて,“初めは不安や戸惑いなどを感じるが,上手く使いこなせば,. 非常に便利なものである,しかし,使わなければ,高価で場所をとる置物にす ぎない.スクールカウンセラーを活用していない学校は,カウンセラー自身に. 十分な力量がない場合もあれば,管理職に活用の仕方がわかっていない場合も ある.スクールカウンセラー側に問題があるとすれば,個々の児童生徒の立場 だけしか見ずに,学校全体の動きが見えていない場合である.”と個に重きを 置くスクールカウンセラーと集団全体を常に意識している教師との立場の違い を示している.C県では,スクールカウンセラー配置当初の問題点を,以下の ようにまとめている.カウンセラーの側からは「教師は基本的に指示に従わせ ようとする,一定の枠の中に子供を入れようとしているようだ,守秘義務につ いての意識が薄い,担任に情報を示すと,すぐにほとんどの先生が知ってしま う」など,教師に対する多くの批判があった.一方,教師の側からも,「カウ ンセラーは,子供の言うことばかり聞いている,学校の方針を無視するようだ,. 教員から離れて一人で何かやっている,子供の情報を出さずに抱え込んでいる,. 子供に対する見方が独りよがりに見える」という批判がなされた.これらの批 判を見た場合,もちろんすべてではないが,双方の批判が,ともに自分の立場 に立った場合には,ほとんど正しいと思えるところに相互役割理解の難しさが,. 介在していると感じられる.学校教育の現場には,集団生活の中で文化の伝承. 一4一.

(11) や社会からの要請への対処等,特定の内容を伝える働きがあるので,そこには. 価値に基づく指導があり,その結果に対し評価がなされる.また,集団での活 動がなされるので,氏原(1997)が指摘するように,指導の一貫性を保つために. は,指導者間に共通した情報が必要となる.高等学校では,科目担任制を敷い ており且つパート別の授業が大部分であるため,クラス全員と接する時間は,. SHRのみという担任も多い.その意味からも,情報交換を密にし,生徒個人に 関わる全職員で共有していく体制づくりが,高等学校では不可欠となっている.. 一方,カウンセリングは,一人の子供が発達することに対して援助するのであ るから,価値に基づく指導や評価は,存在せず,他との比較もあり得ない.双. 方の文化と立場の違いを認め合わない限り,連携はうまくいかないのではない か.A県では導入当初,教師の要望を聞く取り組みを質問紙形式で実施した、 それによると,“カウンセラーの活動が見えにくい”“生徒に関する面接内容を 教えて欲しい”“教師との連携を強化して欲しい”“事例検討会を通して生徒へ. の関わり方やカウンセリングの方法を教えて欲しい”という意見が出された、. 表現の違いはあるものの,B県でも同様の意見が出されており,これら二つの 県に共通する問題として”守秘義務に関するもの”と”スクールカウンセラー の役割の明確化と理解に関するもの”(スクールカウンセラーの動きや活動の 内容を教師に理解してもらうための情報提供を行うこと)”“キーパーソンに関 するもの”(スクールカウンセラーの活用を組み立てる学校側の担当者を明確 にすること)”“教育相談システムの確立”(相談の流れをシステム化し,教師 や生徒にわかりやすくすること)”“スクールカウンセラーの役割の明確化と理. 解に関するもの”スクールカウンセラーの存在を生徒と保護者に活用しやすい 形でPRすること”の4点が,課題として挙げられている. 伊藤(2000)は,”スクールカウンセラー導入による成果と問題点”として,. 次のような分析を行っている.調査対象として,学校現場で実践に当たってい るスクールカウンセラーと,それを受け入れる派遣校の教師,並びに派遣校の. 養護教諭の三群に対して質問紙調査を実施した.成果に関しては,教師も養護 教諭ともに,心理臨床の専門性についてスクールカウンセラーの貢献を評価し ているが,担任の負担軽減や職場のチームワークについてはやや否定的である という結果が見られた.このことに対して伊藤は,“スクールカウンセラーが. 関わることで,子供についてのコンサルテーションの時間や家庭訪問などの負 担が増えたり,教師間の軋礫が表面化したりしたためではないか”と分析して いる.次に指導上の問題点として,スクールカウンセラーが導入されることに よる教師の不安や抵抗に関しては,教師と比べてスクールカウンセラー側の不 安が強いという結果が出た.このことについて“導入に対して,教師自身は指. 一5一.

(12) 導のジレンマやカウンセリングへの抵抗をあまり感じてはいないが,参入して いくスクールカウンセラー側に,教師との対立に対する予期不安や恐れがやや 強く見られる”と分析している.さらに,スクールカウンセラー自身のスクー ルカウンセラー活動に対する評価の構造と学校要因の関連として,活動内容を 五つの項目に分類し,各項日ごとの満足度を調査している.それによると,“ 教師のコンサルテーション・保護者の相談・子供の相談”の三項目は高く,“ 教師の研修・保護者への講演”の二項目に関しては低めの結果が出た.これを 受けて,“個人対象の臨床活動では経験することの少ない新しい仕事であり, 自信が持てないのだろう”と分析している.スクールカウンセラーの認知した. 学校要因に対する評価では,さらなる工夫が必要な項目として”学校側の受入 れ”を半数以上が挙げており,”スクールカウンセラーを利用した教師の数”. では,半数が“半分程度”を選択し,“ごく一部”という回答も全体の四割に 達した.”教師の教育相談に対する意欲”も,六割以上が“意欲的な教師は半 分程度”と回答しており,“意欲は感じられない”という回答も三割を占めた.. また,“スクールカウンセラーの居心地は,”教師に対する研修の満足度”との. 関連が強く,学校の受け入れ体制や教師の意欲との関連も大きい”とまとめて いる.最後に,教師データから,スクールカウンセラーから積極的な開示を受 けている教師群と,消極的な開示しか受けていない教師群とで,スクールカウ ンセラーからの評価の違いを検討している.それによると,“スクールカウン セラーから積極的な開示を受けている教師の方が,組織の機能も良好で,教師 の意欲も高めであると,スクールカウンセラーから認識されている.”と分析 しており,“見方を変えるとスクールカウンセラーから積極的な開示を受ける. には,教師自身が相談活動に対して理解しており,学校の組織や教師の意欲も 良好であるという条件も必要であることを意味している.”と言及しており, 先に述べた守秘義務とも関連して,興味深いデータである.. 2.スクールカウンセラーと連携することに対する現場の声(逐語要約) (1)B県の公立高等学校を取り巻く課題と現状. B県高校教育課,担当指導主事の見方 *不登校の生徒の増加に,なかなか歯止めがかからない.. *問題を抱えた生徒に対するカウンセリングの必要性と効果を疑問視する声の 両方有.. *2001年3月で,文部科学省からの補助は打ち切りなので,今後,公立高校で は,要請訪問派遣スクールカウンセラー事業が主流となる.現在スクールカウ. 一6一.

(13) ンセラーの登録人数は44名.うち臨床心理士は,22名しかいないので,産業 カウンセラーや精神科医が補う形となっている.. *今後,教育現場で,実際に活かせるような“担任教師に対する教育相談の立 場からの支援・援助”の研究を深めていくことが有効である.. 8県公立高校校長(元三スクールカウンセラー派遣事業担当)の見方 *スクールカウンセラーと学校側とがうまくいかない理由のひとつに,学校側. が“生徒や保護者と面接を行うこと”を第1に求めており,スクールカウンセ ラーに頼りすぎてしまっている現状がある,主体は教師なのだから,“教師へ のコンサルテーションの実施”に重点をおいて,かかわるような方向性を持た ないと,週8時間では,とても数が多すぎて対応できないのではないか.. B県公立高校生徒指導主事の見方. *今,一番困っているのは,親とのかかわり方である.発達水準が未熟な親や 親自身の価値観も多様化しており,担任教師にやってもらって当たり前という 態度が主流になりつつある.. *教育相談担当者も,他の校務分掌と兼務しており,教育相談に理解や実務面 で心得のある教師が派遣されない現状では,なかなか相談業務を機能させてい くことが困難である.教育相談の経験が無い職員でも,ある程度運営できるよ うな,マニュアル化されたシステムがあれば,また別だろうが….. *連携という立場では,研修部主催で,要請派遣スクールカウンセラーによる. 講演会を1時間ほど開いたが,声が小さく,専門用語も多すぎて,何をしゃべ っているのかよく理解できず,学校現場で即役立っ内容ではなかった.. *個別のかかわりでは,今年は,2回生徒面接に来てもらったが,連続ではな く単回であり,特にコンサルテーション的な働きかけもされていない.守秘義 務があるため,生徒面接の内容も,担任には知らされなかったが,担任の抱く 負担感の軽減には役立ったようである.. B県公立高校担任教諭の見方 *手続きとして,生徒指導主事に相談してスクールカウンセラー登録者の名簿 を見せてもらい,担任が直接連絡をとった.. *現時点では,スクールカウンセラーを要請するか否かは,担任の判断にまか されている.生徒を支援・援助していくための“作戦会議?”的なものを運営 できれば良いとは思うが,音頭をとる人間がいないことと,時間的な制約の問 題もあるので,なかなか難しいと思う.. *2例とも,不登校のケースで要請派遣を依頼した.比較的初期の段階(登校 しぶり)で依頼したケースはうまくいったが,ある程度休み初めてからのケー. 一7一.

(14) スは,結局出席日数が1/3を越えた時点で,中途退学してしまった,うまく いくか否かは,派遣を依頼する時期にもよる.生徒との面接内容や今後の方針 についても,特に情報交換をすることもなかった.コンサルテーションを希望 しようかとも思ったが,守秘義務と言われてしまうとそれまでである.. *反社会的問題行動の生徒のケースも依頼したことがあるが,その時には,ス クールカウンセラーによるカウンセリングは,あまり役には立たないという印 象を受けた.. B県総合教育センター,教育相談担当カウンセラーの見方 *スクールカウンセラーと学校側がうまくいかない理由として,価値観の離れ. たものどうしが学校集団で同居しているという見方があり,例えるなら両者は まさに“水と油”のようなものである.教師集団が“理屈や理論を重視する” のに対し,スクールカウンセラーは“生徒の感情や欲望”に重きをおいている.. 時間の概念にしても,教師集団は“在学期間(3年差や担任期聞(1年),欠 席目数(1/3)”を念頭に置いてかかわっているのに対し,スクールカウン セラーは“人生を単位”として考えている.また,“守秘義務”という概念が,. 教師集団の感情を逆撫でしてしまっている.1人の生徒を育てていくのに,10 名以上の教師がかかわりながら指導していくという意識が,高校現場にはある ため,生徒と2人きりで,相談室内で向かい合いながら,その子の人間性が芽 生えてくるのをじ一つと待つなんてナンセンスという思いこみが,教師側にあ るからである.両者は,職種は違うにも関わらず,生徒を支援・援助していく という足場は同じである.しかし,両者の連携がうまくいっている県を探すほ うが難しいのではないか.ほとんどの県で,多かれ少なかれ問題を抱えている. はずである.教員側も約50名からなる教師集団が,1人の異職種のスクールカ ウンセラーを受け入れてあげようとする柔軟性に乏しい.その意味でも,教育 相談担当や養護教諭が橋渡しや仲立ちとして存在することは,大変有意義であ ると思う.. *スクールカウンセラーとして導入されているのは,臨床心理士の資格を持つ 人間であるためか,過去に遡って原因探しをする傾向がある.一方,教師側は “いじめ”を除いては,さほど原因には捕らわれない.事態を好転させるため に具体的な援助指導として現時点で何ができるかという’量how tげに重きを置い. ている.教育という行為そのものが,未来志向なのでしかたないのかもしれな いが,仲立ちをしていくためには,“現場での指導・援助に結びつくような,. 実際に役立つ実践や具体的な技術を身につけていること”と専門用語を羅列す るのではなく,“個々のケースに対しての指導・援助が浮かんでくるような理. 一8一.

(15) 解のし方を教師集団に提示できること,”同時に,教師としての時間の概念に 縛られず,“人生単位でゆっくりいくつもの可能性に思いをめぐらすような態 度を身につけること”それらを,実践できて,はじめて連携が可能になる.. *センターで扱っている事例としては,無気力や怠学傾向を持った“不登校” が一番多い.しかし,県全体の傾向としては,“不登校”は頭打ちになってき ており,特に高校現場では“摂食障害”“神経症”等が増加する傾向にある.. 小学校では,LDやADHDが全生徒数の2∼3%に達しており,不登校の割合が 中学校では約40人に1人の割合で生じていることと比べても,決して少ない数. ではない.高校にほぼ全員入学している現状から鑑みても,LDやADHDは小学 校の問題とは言っていられない.可能ならば,小学生の事例等も担当させても らって,様々な症例の子供たちのカウンセリングをとことんやることが,高校 の現場に戻った時に生きてくる.同時に,人間の存在は1つの理論や技法では かりしれるものではない.様々なケースがあって,思いも寄らない家庭とぶつ かり合う.ケースごとに揺れたり悩んだりした時に自分が戻っていける人間理 解の哲学,原点といえるものを持たなければいけない,技法は,その次である. B県在住のスクールカウンセラーの見:方. *平成10年度の山梨県のスクールカウンセラー配置校数は,小・中・高合わせ. て17校であり,全国で4番目に少ない数である.高校では現在,M高校(商). ・N高校(農)・E高校(農)の3校のみ,週2日(8時間)派遣されている. *他はすべて要請訪問校であり,ケースに関しては単回.または,何人か要請 してみて,相性の良いカウセラーをリピーターにというパターンが多い,現在,. 臨床心理士は22旧いるが,学校数に対するカウンセリングを実施できる人材 という点から見ると,絶対数が不足している.. *要請訪問の問題点として,短時間に何名ものケース検討を要請されること.. 教員が抱え込んでしまい,問題がこじれてしまってから持ち込まれる場合が多 いため,なかなか改善されにくいこと.ケースの概要を教師の口から説明され,. それに対するアセスメントを求められるため,教師側のバイアスがかかってし まっている.教師へのコンサルテーションのみならず,生徒本人と保護者に面 接してから,教師側にフィードバックしていく形が,一番効果的なのだが,要 請派遣の性質上,なかなか実施が困難であること.どこまで教師がやって,ど こまでスクールカウンセラーがかかわるかの匙加減が難しい.謹慎1回目にじ っくり面接する機会が持てたならば,退学せずに済むケースも多い。どういう. ケースが要請派遣の対象となるかを決める際,早い時期でスクールカウンセラ ーがかかわれるような配慮をすることが,要請訪問の有効活用につながってい. 一9一.

(16) く.メンタルな問題までも教師がなんとかしなければいけないという思い込み があると,何をどう活用したらよいのかわからなくなってしまう.. *臨床心理士自身,教師集団に対するサポートの方向を探っており,サイコロ ジストが個人心理療法の枠組をそのまま学校現場に持ち込んでも,教師集団と. の溝が深まるばかりであることを自覚してきている.派遣当初の目的は“生徒 や保護者との面接”だったのが,今では“教師へのコンサルテーション”へと 活動の主流が移ってきている.守秘義務に対する考え方も,幅を持たせており,. 教師とスクールカウンセラーの持つそれぞれの専門性を,自己確認し,他者確 認し,きちんと把握してわきまえた人間ができる専門職と専門職との連携とい う観点から,相互関係を模索している状況である.連携に伴う学校側の変化と して,“敵対→持ち上げ→相互理解”というプロセスを経ることが多い.. *スクールカウンセラーの立場から,教師集団に求めることは,教師側もスク. ールカウンセラーを迎え入れるノウハウを創り上げることであり,これまでの 方向性を変えて,スクールカウンセラーの派遣先の受け手として,どうずれば 活用しやすくなるかを,他県の専属スクールカウンセラーの事例発表等を参照 しながら,文献研:究をしていくことが,有効である。その際,高校の事例だけ ではなく,中学校の事例からも学んで欲しい.なぜなら,高校は輪切りのため,. 本当に大変な生徒は入学してこない,一番スクールカウンセラーが活躍してい るのは,中学校であり,ノウハウも学ぶべき要素も,たくさんある. *現場に戻れば,教師側のかかわり方は,いくらでも研究できる.可能ならば,. スクールカウンセラーの立場に立って活動してみると,双方の立場がよく理解 できると思う.その際,自分が所属する学校側と指導担当である臨床心理士の 意図に従って活動すること.不登校等の事例面接・心理検査・学習補助・今後 の援助アセスメントのし方等,臨床心理士のチェックを受けながら,実際に業 務を担当させてもらえるようなシステムがあると良いのだが….昨年12月,河. 合隼雄先生を講師に招いて“B県臨床心理士会”を開催したが,教員側の出席 は,ほとんどなかった.仲立ちをするためには,双方の専門性と立場を理解す ることが,先決だと思う.. 3.スクールカウンセラーと連携していく際の課題 鵜飼(1998)は,教育現場とスクールカウンセラーの双方に質問紙調査を実施. して,問題点をまとめている.それによると,傾向と今後の課題として,以下 の11項目を挙げている.. ①スクールカウンセラーを活用するために学校内に新しい生徒指導体制を作 り出すことの必要性.. 一10一.

(17) ②.生徒指導とスクールカウンセラーの協力のあり方(反社会的問題行動),. 教育相談とスクールカウンセラーの協力のあり方(非社会的行動)を,各学校 で状況に応じて作り出す必要性.. ③.スクールカウンセラーの主な役割は,教師へのコンサルテーションになっ ており,学校外の諸機関との連携も強化されてきている.. ④.教師が生徒の問題行動に対処する際,“こころの専門家”としてのスクー ルカウンセラーに助言を求める気運が高まる.. ⑤.スクールカウンセラーの役割や業務をめぐって,学校側とスクールカウン セラー側とが,十分に協議する必要性.. ⑥.学校の置かれている事情や学校現場の状況について,スクールカウンセラ ー側が十分理解する必要性.. ⑦.スクールカウンセラーは,学校内の人間関係に配慮して,教職員との信頼 関係を築くこと.. ⑧,守秘義務に柔軟性を持たせながら,生徒の個人情報を担任等に知らせる. ⑨教師と連携を取り合って,連係プレイに務めること. ⑩.スクールカウンセラーは,状況に応じて直接生徒や家族の相談に当たり,. 家庭と学校の相互関係を支援しながら,担任への助言・学校改善へのアドバイ スを行う.. ⑪教職経験のあるスクールカウンセラーを配置することが望ましい,. ⑥∼⑨に関しては,従来の相談場面でのフォーマルな会話に加えて,⑩に関し ては徳田(2000)が,スクールカウンセリングにおける成長促進的モデルとして, 不登校事例に関するものを提示している.(図1−1). 村山(1998)は,学校の主体性とスクールカウンセラー側の主体性をどのよう. に保ち,専門性を発揮していくのかという視点から,今後の課題を次の5点に 整理している.. ①.スクールカウンセラーが外部からかかわることの意味(主体は教師であり カウンセラーは黒衣役・コンサルタント・コーディネーター)を明確化する. ②.学校とスクールカウンセラー双方の主体性を互いに尊重し合いながら,ス. クールカウンセラーを活用する校内制度・システムを,学校の責任において創 り上げる.. ③.養護教諭へのサポートと校務分掌の心理的意義の査定を実施していく.. ④個人病理の見立てとかかわりの範囲・限界・それぞれの見通しに関する力 量をつける.. ⑤.倫理について(力量・守秘義務・福祉).. 一11一.

(18) 《関係育成的支援》. 《内省促進的支援》. 子供理解の促進 かかわり方の工夫. 自己表現・自己理解の促進. 自尊心の尊重. 家族からの支援. 生徒理解の促進 かかわり方の工夫. ほどよい目標の設定・共有. 問題への取り組み. 図 1−1 スクールカウンセリングにおける成長的促進モデル(徳田2000). 一12一.

(19) これからの中から,②の学校教育相談場面におけるシステムに焦点を当てて,. 要請訪問体制を前提とした上でのスクールカウンセラーを迎え入れる体制づく りという視点から考えると,. a.校内の調整役である教育相談担当教師または養護教諭が,スクールカウ ンセラーの活動の場を設定し,こじれきってしまう前に持ち込むべき事例か否 かの判断と,教職員や生徒とのつなぎ役を務める.. b.教頭・学年主任・教育相談担当教諭・担任・養護教諭(進路・教務)等 で,教育相談委員会を組織する.一般の教員も自由に参加可能なオープン形式 にして,スクールカウンセラーにも可能な限り出席してもらいながら,問題検 討・:事:例研究の場として活用する.. c。学校が,主体的に教育相談に取り組むという合意を形成し,スクールカ ウンセラーは,教師へのコンサルテーションを中心に活動を行う.. d.スクールカウンセラーに頼りすぎてしまったり,任せきりにしたりせず, 教師の主体性と専門性を認識して,中島(1999)の言うところの教師の既有資源 を意識的に活用する.. 山本(1977)は,その際,教師の先入観や価値観には焦点を当てず,生徒自身. の行動や状態の具体的事実に注目して検討することを示唆している,言い換え れば“先生の価値観や信念はどうぞご自由にお持ちください.それより,子供 とそれを支える環境条件の現実を客観的に具体的に検討しましょう…という態 度”ということになると述べている,. 状況によっては,生徒・保護者の面接を実施した上で,外部諸専門機関(医 療機関等)との連携を実施していくコーディネイト機能も,重要になっていく だろう.. 一13一.

(20) 第3節 教師とスクールカウンセラーの連携に関する先行研究 1.概 要 教職員とスクールカウンセラーが連携する際,どのような形で従来の教育相 談体制の中に位置づけるかという問題に対して,主に以下の5つの視点から先 行研究が実施されている.“キーパーソンの重要性”“教育相談活動への意欲や. 理解を深める研修の方法”“教職員とスクールカウンセラーとのインフォーマ ルな場面での相互交流”“教育相談システム”“守秘義務と情報交換”.各項目 ごとの先行研究の概略について,以下に述べる.. 2.キーパーソンの重要性 伊藤(2000)は,参入していくスクールカウンセラー側に,教師との対立に対. する予期不安や恐れがやや強く見られると指摘しており,”スクールカウンセ ラーを利用した教師の数”では,“ごく一部”という回答が全体の四割に達し たとする調査結果をまとめている,. 黒沢(2000)は,教師の閉鎖性に対して“教師には,がんばる(別名:やせ我. 慢する)ことが勤めであるとしばしば信仰されており,援助を求めたり,受け たりすることに慣れていない”と指摘している.. 坂上(2000)は,初めて配置された時の印象を“カウンセラーという異質な存 在に無関心を装いっっ,しばらくは観察期間とみている教師も少なくなかった.. 数ヶ月を経て,初めて私に声をかけてくれた教師の言葉を聞いて,あたかもス クールカウンセラー試用期間が終了し,正式採用の門戸が開かれたように感じ た”と述べている.. 岩宮(2000)は,派遣校すべてに教育相談専任教員が配置されており,彼らが. 窓口となって予約を調整し,そのスケジュールに従って相談業務を開始したた め,導入がスムーズに行われ,キーパーソンの存在の重要性を指摘している.. このことは,伊藤が指摘している“スクールカウンセラーから積極的な開示 を受けるには,教師自身が相談活動に対して理解しており,学校の組織や教師 の意欲も良好であるという条件も必要である”こととも重なり,スクールカウ ンセラーと教師を繋ぐ役割をする教育相談活動に理解のあるキーパーソンとし ての教師の存在が,連携を進めていく上で,重要となっている.. 一14一.

(21) 3.教育相談活動に対する意欲や理解を深めるための研修の重要性 キーパーソンの重要性と関連して,学校教育相談活動に対する理解を深める ような,言い換えればキーパーソンを作り出すような研修の在り方についても, 研究していかなければならない.. 伊藤(2000)は,スクールカウンセラー活動に対する満足度を調査した際に, “教師の研修・保護者への講演”のこ項目に関しては低めの結果が出たことを,. “個人対象の臨床活動では経験することの少ない新しい仕事であり,自信が持 てないのだろう”と分析している.また,“スクールカウンセラーの居心地は,. “教師に対する研修の満足度”との関連が強く,学校の受け入れ体制や教師の 意欲との関連も大きい”とまとめている.. 岡本(2000)は,中学校長という立場から,教職員がスクールカウンセラーを 受け入れるための具体的な研修のあり方について言及している.それによると,. “スクールカウンセラーといかに協働していくかの意識付け”が研修の第1歩 であり,第一段階として”生徒理解(他者理解)について”や”発達段階を意 識した指導”を研修していく.この段階で学んだことは保護者との関係づくり. に活かされるし,授業方法の改善や,評価の改善にも繋がってくる.次に”事 例検討会”を通して,関係諸機関との連携についても,実際のケースを通して 学んでいく.このような定期的な研修会に加えて,日々の教師への支援として の諏ンサルテーションが一番の研修の場となっている.”とのことであり,教 師の教育相談に対する理解が深まることがスクールカウンセラーからの積極的 な開示を受けることに繋がり,そのことによって相互理解と連携が強化されて いくという循環が生み出されている.. 國分(1997)は,教師がカウンセリングを活かした教育指導ができるための“. 教師のためのカウンセリング研修”の必要性を指摘している.教員が研修会を 企画して,スクールカウンセラーも,教師と異なる視点を持つスタッフとして 加わるような形で,教育相談に対する理解を促進させるような研修内容のプロ グラミングが有効となろう.. 4.インフォーマルな場での相互交流に関する先行研究 インフォーマルな場での相互交流として,まず連想するのが職員室や廊下で の雑談である.. 福田(1998)は,高等学校にスクールカウンセラーとして配属された経験から,. “高等学校では,小中学校に比較して教員の専門意識が高いのか,議論好きが. 多いようだ.雑談の場で,筆者は心理学的な理論の説明を求められる…. 一15一. 担.

(22) 任が来て生徒の様子を伝えてくれた.近くにいた専科の教員にも意見を求めて いる.情報の守秘の感覚が心理臨床と異なるということを強く感じた”と述べ ている.. 鵜養(ね98)もコンサルテーションの具体的イメージとして“ちょっといいか. なと飛び込んできた教師に即応しての会話”や“職員室の前を通りかかるとす れ違いざまに話しかけてくる場面”など,インフォーマルな場面での対話を方 法に含めた教師支援の方法を提示している.. また,中島(1999)は,鵜養の示したインフォーマルな対話場面での可能性と 伊藤(1998)が提示している教師へのコンサルテーションの捉え方のモデルであ. る“学校という場の自然な流れを優先しつつ,個人心理療法的視点を基盤のひ とつとして活動を行うことの有効性”を,フォーマルな対話とインフォーマル な対話とによる教師が持つ既有資源の活用という形で,不登校の生徒に関わる. 担任教師の取り組みに対する支援のあり方を検証している.そこで,職員室へ 自ら出向くことの大切さと,個人心理療法の枠組になじんでいる臨床心理士が,. 学校状況から離れたことを吟味無く唱えることにより,教師自身の有している 既有資源(手段や士気等)までつぶしてしまう危険性についても指摘している.. ただし,上記はすべて単独校配置での話であり,それ以外の形態では,時間 的な制約が絡んでくるために,インファーマルな場面を共有すること自体が,. 難しくなってくる.雑談以外のフォーマルとインフォーマルの中間的なかかわ りとして,スクールカウンセラーが作成する印刷物の存在が挙げられる.. 福田は,教員の時間的余裕を考慮しながら,カウンセラーにとっては教員の スクールカウンセラーに対する期待の度合いを知る,教師にとってはスクール カウンセラーの活動のレパートリー紹介のメディアにするという二つの目的で,. 25項目からなる簡単なアンケート調査を作成して,名刺代わりに各職員室を依 頼してまわった.実施後,教員からは「仕事の広さが以外だった」「ここまで 考えてくれているとは驚いた」という声が寄せられ,PRに有効に働いた. 坂上(2000)も,印刷物が積み重なっている教師の日常で”スクールカウンセ. ラー便り”に目をとめてもらえるには,どうずればよいかという視点から,片 手で持てて,二分で読める分量:のものを,桃色のB5用紙に印刷し,職員室を まわりながら「どうぞ」と一言添えて手渡すなど,工夫をこらした取り組みの 実践を,報告している.. 5.教育相談システムとコンサルテーションに関する先行研究 藤岡(1999)は,スクールカウンセラーとして教育相談活動に携わってきた経. 一16一.

(23) 験から,担任に対するサポートの重要性を繰り返し指摘している.. 高校では,担任が学習指導・進路指導も含めた学校生活におけるすべての面 に関わっているため,担任をサポートすることに重点を置いた藤岡の視点には,. 共感できる.次に,スクールカウンセラーをどのような形で従来の教育相談体 制の中に位置づけるかという問題になってくるのだが,石隈(1999)は,スクー ルカウンセラーが専門家としての機能役割を遂行して問題解決に当たるために,. “援助チーム”を組むことを提案している.具体的には,援助ニーズの大きい. 生徒を援助するチームであり,生徒の学習面,心理・社会面,進路面,健康面 における問題状況の解決を,二次的・三次的援助サービスとして,担任・保護 者・スクールカウンセラー・養護教諭・教育相談担当教諭他で行うことである. 石刃・横島(2000)は,生徒が誰に悩みを相談しているかの調査結果から,高. 校現場における生徒の援助ニーズに応えられる適切な援助チームの構成の在り 方を検討している.それによると,二次的援助ニーズにおける相談相手として,. 心理・社会面では,教師への相談は少なく,生徒が内面的な問題を教師に相談 することに抵抗感のあることを示唆しており,スクールカウンセラーの導入の 意義を示している.三次的援助ニーズにおいても,心理・社会面では,親は多 いが,教師は少なくスクールカウンセラーの有効なかかわりが望まれる. 福田(1998)は,スクールカウンセラーとして派遣先の公立高校教師対象に,. スクールカウンセラーの活動内容として25項目を提示し,必要か否かの質問紙 調査を実施した.結果は,“学習,進路面は,教師が主体となっての援助”,“ 心理・社会面は,スクールカウンセラーがかかわっていく”という石壁らの研: 究結果と重なっている.. 大野(1997d)は,学校教育相談を,児童生徒の現在の問題や今後の課題,話題 に対して学校における生活面(健康面と心理社会面)を土台にして,児童・生徒 各自の学習面・進路面に焦点化された指導・援助活動であると定義している.. 高校の現場では,進路面と学習面に関する相談内容は”ガイダンス的な対応 (現実的なアドヴァイスを数回実施することにより,問題の解決の進展が期待. できる)”が多く,教員だけで対応をする場面が多い.スクールカウンセラー が派遣先の学校の社会特性をある程度理解した上で,教師とスクールカウンセ ラーのそれぞれの役割の明確化という視点からも,心理社会面におけるコンサ ルテーションは主にスクールカウンセラーから教師に対して実施し,学習面と 進路面に関するコンサルテーションは,教師からスクールカウンセラーに対し て実施していくような“相互コンサルテーションモデル(図1−2)を用いたかか わり方”の有効性も,今後考えていかなければならない. 田村・石隈(1998)は,相互コンサルテーションモデルを“同じ組織内(学内). 一17一.

(24) ,一一一一一 ロ. u. 挙習。生活面. コ. i教科担任i一……一一…一一…一一一一〉 コ. SC. 外部専門機関. コ. 1(複数)1 巳 層. 藍 暫. 心理社会面. 学習. 心理社会面. 3 … …. 学習. 健康. 生活面. ;. 路. 生活. 生活面. 生徒・保護者. 養護教諭. 担任 健康・生活面. 図1−2U」梨の高校で実現可能な教育相談場面における相互コンサルテーション〉(石隈1999を一部変更). 一18一.

(25) の異なる役割同士のコンサルタントーコンサルティ関係が柔軟に入れ替わる状 態”と定義し“相互コンサルテーションの場で児童・生徒に対する援助方針が 決定される”と位置づけている.山本(2000)は個々の児童生徒や保護者に対す. るカウンセリングと並行して,教師に対するコンサルテーション機能の充実が. 連携の鍵を握ると指摘している.山本は,コンサルテーション関係の開始期に は,危機理論にもとづいた方略をとっているとした上で“日頃持っている安定 機能を使い果たして万策つきた時,危機状態が登場し,心理臨床の専門家の介 入を受け入れる素地ができている.援助を受け入れる動機が高まってきている と同時に新しい解決方法を取り入れようとする準備ができている.ただし,こ. の危機状態は2∼6週間で,より不健康な解決方法でバランスを回復させてし まうので,短期間に危機状態のピークを焦点にした働きかけが必要である”と 言及している.由口ら(1998)は,B県でのスクールカウンセラー活動報告とし. て“要請訪問スクールカウンセラーは,問題が生じてからの治療より,むしろ 教育的予防的な活動を前提としている”として,早い時期での連携の重要性を 示唆している.. 教師がスクールカウンセラーとの連携を躊躇する原因のひとつとして折原 (2000)は,コンサルテーションを受ける教師側の問題として“援助を求めるこ. とは自分の無力さを認め,自尊心を大きく損なう行為であるととらえる風土が. 教師文化の中にはある”と指摘し,担任教師は自分の担当クラスの問題につい て,自分自身で解決していきたいという基本的な姿勢を持っているとまとめて いる.折原は小学校の教師に関して言及しているが,他の校種においても“困 難な状況に直面しているにも関わらず,スクールカウンセラーに援助を求めよ うとしないタイプ”は見られる.“どのような教師(属性や性格)が,どのよ うな困難に直面した時に,どのようなスクールカウンセラー(派遣形態や能力). に対して,より積極的に援助要請行動を起こすのか”という研究の視点が求め られる.. 相川(1989)は,援助要請過程に伴う検討課題として,“利益(悩みの解消). とコスト(時間や自己の無能力さの露呈等)の査定”を取り上げ,“要請した ときのコストが利益よりも小さく,要請しない時のコストが利益よりも大きい と判断されるときに援助行動が決定される”としている.. 教師がコンサルテーションを要請するまでの行動の生起過程をフローチャー ト(図1−3)で示したが,援助を躊躇,または求めない場合として,以下の4種 類のパターンを想定した.. a.問題の棚上げをする. b.独力で問題の解決をはかる. c.非専門家と問 題の解決をはかる. d.スクールカウンセラーに関する情報を持っていない.. 一で9・.

(26) 問題を抱えていることに気づく. ↓(STARτ〉. 悶題の解決は緊急を要するか. a問題の棚上げ. ↓面 自分に問題解決能力がある. h独力で問題解決をはかる. ↓圃 身近な非奪門家に擾助要請するか. 。.非奪門家と問題解決をはかる. ↓湿 スクール加塊ラーに援助要講希望があるか. ↓圏 加ンセラーに関する情報をもっているか. d情報収集と意志決定. ↓囮 スター励ウンセライこよる]ンサ駈一ションの案施. (END). 図1−3 ⊃ソサ1レテーションが実施されるまでの教師の行動の生起過程. 一20一.

(27) 山本の言う不健康な解決方法でバランスを回復させないためにも,教師がス クールカウンセラーに対して速やかに援助要請行動を起こすことが可能となる ような相互コンサルテーションのあり方を模索していきたい.. 6.守秘義務のとらえ方に関する研究 B県の教育相談研修主事は,教師とスクールカウンセラーとの連携を妨げる 要因の一つとして”守秘義務のとらえ方の違い”を指摘している.実際,守秘 義務に関する問題は,スクールカウンセラーと連携していく上で避けては通れ ない課題であり,”個を尊重するのか,集団に重きを置くかの文化の違い”も加 わり,双方で試行錯誤を重ねている.. 東山(1999)は“学校という社会に開かれた日常場面で仕事をする時は,専門. 的秘密の定義や幅,守秘義務の範囲(内容と関係者)を個々の臨床心理士が自. 分の枠組みとして持っていないと問題が多発する”と指摘している.また校務 分掌に言及して“学校においては,管理の法的な権限と責任が校長に集中して おり,最終責任は全て校長にあるので,全ての事を把握しておきたいと思うの は学校社会においては当然である.高校においては,担任と教科担当者が生徒 と密接な関係と権限と責任を持っている.スクールカウンセラーと生徒の間の. 秘密はカウンセラーと生徒の距離を密接にするが,同時に他の関係者との距離 を疎遠にもする”として,秘密を共有した者同士は関係が強化される反面,秘 密にされた方とは距離が開いてしまい,その秘密が規則に反する場合,学校社 会においては異端者と見なされてしまう危険性を指摘している. 氏原(2000)も秘密の持つ二重性として,“相手との距離を保つことによって. 自分自身の立場を守る意味合いと,共同社会の一員として仲間に受け入れられ なくなる危険性”の両面を指摘している.. 佐野(1998)は,公立中学校の教師は,スクールカウンセラーからの情報提供. を要望しているとして,守秘をカウンセラー個人ではなく学校全体でとらえる 視点の必要性を指摘している.. 岩宮(2000)は,スクールカウンセラーとして中学生に関わっていく中で,“. 生徒からの相談を受けた場合,先生にどの程度のことを伝えるかという点につ いて,詳しく打ち合わせるようにしている”とクライエントの同意を得た上で の情報開示を示唆している.. 森川(1999)は守秘義務の限界性に触れた上で,“学校関係者との信頼関係と 共通理解が守秘義務の実際問題を解決する鍵になる”と指摘している. 申原(1999)は,守秘義務を“心を開いて語ろうとした人を守るために設けら. 一21一.

(28) れている大切なルール”と位置づけ,守秘義務に対する共通理解と,支援に必 要な情報を開示して共有しながら,支援の方策を検討していく場の必要性を提 起している.高校では,担任が学校生活におけるすべての面に関わっているた め,カウンセラーによっては,担任と情報を共有しながら活動しているケース が多い.その結果として,伊藤(2000)が指摘したような担任の負担感増にも繋 がってしまう.. 藤岡(2000)は,逆に教師の側から守秘義務を前提に深い悩みを相談された経 験を述べている.. 教師にも教育公務員としての守秘義務はあるのだが,普段はさほど意識され ていない.教師自身の守秘義務に対する意識の再確認と,カウンセリング場面 での守秘義務の倫理面も含めた重要性を,理解しておく必要がある.その上で,. 相互コンサルテーション機能を備えた教育相談システムの枠組みの中で,誰と. 誰がどこまでどのような形で情報を開示して共有していくのかを,細部にわた って検討していく必要性があるのではないか.. 一22一.

(29) 第4節 欧米での守秘義務の概念 1,APA ethical code規定. プロフェッショナル・チェックリストの作成者であるピンコフス (Pincof摂Sj971)は,ある職業が専門職として社会において自己主張し,かつ認知. してもらうための条件の一つは,その活動が倫理的自覚に支えられていること であるとしている.それが文書となったものが“倫理コード(ethical code)”であ. り,日本では“倫理綱領”と訳されている.現行の目本臨床心理士会の倫理綱. 領は,全9条から構成されており,抽象的な表現のため多様な解釈が可能とな り,具体的にどのような臨床実践に帰結するのか,実際の倫理問題にどう対処 していくのかというイメージを湧かせるには,乏しい内容となっている,これ に対して,APAの倫理コードは,目本とは比較にならないほど明確に指針,ある. いは考慮すべき事柄を明示して,その種の問題に困った時にはどのように対処 すべきかを示している.心理の専門家としての能力のとらえられ方も,中米で は異なっている.日本臨床心理士会の倫理綱領では第2条で“臨床心理士は,. 訓練と経験によって的確と認められた技能によって,来談者に援助・介入を行 うものである.そのため常にその知識と技術を研鎖し,高度の技術水準を保つ ように努めること.一方自らの能力と技術の限界についても,十分にわきまえ ておかなくてはならない.”と規定している.一方APA倫理コードにおいては,. 次の7項目が規定されている.「(a).心理学者は自らの業務において能力 (competence)の高い基準を維持するように努力する⇒維持の努力.(b).自らの. 特殊能力の境界と自らの専門的見識(expe健ice)の限界を心得ている→限界の自 覚.(c).教育,訓練あるいは経験によってそれに関して資格がある(qua葡ed)サ. ービスだけを提供し,またそのようなテクニックだけを用いる⇒実践における 使用の限定.(d)。心理学者は人々の集団にサービスし,教え,集団を研究する. 上で必要とされる能力が,集団の顕著な特徴によって異なるという事実に気づ いている→対象への適合.(e).認知されている専門的基準がまだ存在していな. い領域では,心理学者は慎重に判断し,自分が相手とする人々の福祉を保護す るための適切な用心をする⇒用心.(f)泊分の提供するサービスに関連する学 問的・専門職的情報に関する知識を維持し,研修しつづける必要があることを認 めている→知識と研修.(g),心理学者は学問的,専門的,技術的,行政的資源. を適切に使用する⇒様々な資源の使用.」これらのうち,APAにあって,目本 で触れられていないものは,(d).対象への適合と(g).様々な資源の使用であり,. スクールカウンセラーとして派遣されても,現場との連携が今ひとつスムーズに行. かない場面と重ね合わさってくる.日本の臨床心理士の体質を考える上での材. 一23一.

参照

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