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不安定密度成層における対向置換流挙動の研究

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I.序   論 密度の異なる気体間の流動挙動には,安定成層におけ る挙動と不安定成層における対向置換流挙動の 2 種類が ある。ここで,安定成層とは,低密度気体が上方にあ り,高密度気体が下方にある状態をいい,不安定成層と はその逆の状態をいう。安定成層における挙動は主に拡 散であり,一般的な現象解明が容易である。一方,不安 定成層における挙動は,対向置換流となり,その現象の 特徴は不規則な上昇・下降の衝突流,分離流,安定成層 流に分類される複雑な流れとなる。 したがって,本報では不安定密度成層における対向置 換流挙動について述べる。最初に不安定密度成層場の応 用例について述べる。一本の流路内を種類の異なる気体 が対向して流れる異種流体の対向流は工業的に重要な流 れである。例えば,炭酸ガス冷却原子炉の配管破断事故 時には破断した配管内に炭酸ガスと空気との対向流が発 生する。高温ガス炉のスタンドパイプ破断事故時には破 断したスタンドパイプ内にヘリウムと空気の対向流が生 じる1) 。家屋などの火災時には燃焼気体と空気の対向流 が発生する。可燃性気体・毒性気体取り扱い設備の配管 が破断すると配管内にはこれら危険性の高い気体と空気 との対向流が発生する。高温ガス炉を例にとると,対向 流発生時に,圧力容器の配管破断口では空気が内部に浸 入し,黒鉛製の炉内構造物の燃焼(酸化)にともなう構 造の健全性が損なわれるおそれがある。対向流による空 気浸入流量を評価することは,構造物の燃焼にともなう 健全性評価に重要な基礎データとなる。 このような一本の流路内を異種流体が対向して流れる 異種流体の対向流に関する研究は,これまでいくつか行 われている。S. J. Leach と H. Thompson2)および A. Mercer

と H. Thompson3),4) はガス冷却原子炉(Magnox 炉)の減 圧事故時に原子炉一次冷却系内に流入する空気流量を調 べるため,二酸化炭素(冷却材)と空気の対向流を水と 塩水の対向流で模擬し,円管流路内に生じる水 – 塩水対 向流の挙動を実験的に調べ,傾斜角の影響を論じてい る。M. Epstein ら5),6)は家屋等の火災時などに生じる燃焼 気体と空気の対向流を水と塩水の対向流で模擬し,円管 流路内に生じる水 – 塩水対向流の挙動を実験的に調べ, 円管の長さと直径の比の関係を得ている。

不安定密度成層における対向置換流挙動の研究

文 沢 元 雄 *

Study on Exchange Flow under the Unstably Stratified Field

Motoo FUMIZAWA*

This paper deals with the exchange flow under the unstably stratified field. The author developed the effective measure-ment system as well as the numerical analysis program. The system and the program are applied to the helium–air ex-change flow in a rectangular channel with inclination.

Following main features of the exchange flow were discussed based on the calculated results. (1) Time required for establishing a quasi-steady state exchange flow.

(2) The relationship between the inclination angle and the flow patterns of the exchange flow. (3) The relationship between the concentration profile and the inclination angle.

(4) The relationship between the net in-flow rate and the inclination angle.

(5) The comparison of the computed velocity profile and the net in-flow rate with experimental data. A good agreement was obtained between the calculation results and the experimental results.

Key words: natural convection, two-component gas flow, helium–air exchange flow, rectangular channel, laminar flow, numerical analysis

MEMOIRS OF SHONAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY

Vol. 39, No. 1, 2005

*機械システム工学科 教授

平成 16 年 10 月 8 日受付

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湘南工科大学紀要 第 39 巻 第 1 号 著者は高温ガス炉の炉容器上部に取り付けてある鉛直 なスタンドパイプが破断する事故(スタンドパイプ破断 事故)が生じたときにスタンドパイプ内に生じるヘリウ ムと空気の異種気体間の対向置換流に関する研究を系統 的に行った。 著者の開発した対向置換流挙動の解明に適した計測手 法を Fig. 1 に示す。計測手法には全体 1 点近似計測,点 計測,線計測,面計測がある。全体 1 点近似計測では質 量変化法での置換流量測定,点計測ではレーザー流速計 での垂直管内流速測定,線計測ではスモークワイヤー法 での傾斜管内流速分布測定,面計測では光学的干渉計の 可視画像処理による上鏡内部の 2 次元非定常密度分布表 示がある。線計測の例として,傾斜した接続管内の対向 置換流をスモークワイヤー法で可視化観察した結果を Fig. 2に示す。流れは分離流で軽いヘリウムガスが上面 を上方に流れ,重い空気が下面を下方に流れる様子が明 示できる。 上述の計測手法によって,質量変化法による鉛直管形 状の対向置換流量測定,レーザ流速計およびスモークワ イヤー法による局所流速測定結果からの対向置換流量評 価を行った。そして,この対向流によって原子炉容器内 に流入する空気流量と開口部を有する円管のアスペクト 比(円管の長さと直径比)との関係を調べた7)–13) 。また 質量変化法および可視化手法により,流路の傾斜角(水 平と流路のなす角度)が空気の流入流量に及ぼす影響を 調べた9)–13)。その結果,傾斜すると低密度流体の上昇流 と高密度流体の下降流の分離が起こり,流入流量が鉛直 (垂直)管に比べて増加することが分かった。ヘリウム – 空気対向置換流の場合,アスペクト比が 5 以上の場合, 傾斜角が 60 度において,流入流量が最も多くなること が分かった。姜らは仕切のある開口部におけるヘリウム – 空気対向置換流の実験を行い,仕切りの無い場合より 対 向 置 換 流 量 が 多 く な る こ と を 見 出 し て い 14)。鶴らは異種流体間(液体間および気体間)の垂直 管開口部の対向置換流実験を行い,流動様式を調べてい 15),16)。また現在日本原子力研究所で試験運転が実施さ れている高温工学試験研究炉ではスタンドパイプ破断事 故を想定し,事故解析を行い,スタンドパイプ破断事故 時における空気流入量を制限値以下に押さえる設計を採 用している17)。すなわち,実規模のスタンドパイプア ニュラス部の流路形状は,流路断面積を可能な限り少な くした 2 重管流路となっており,外径が約 480 mm,内 径が約 476 mm,外径と内径の比が約 1 の同心円環状で ある。また,高温ガス炉の種類によっては,原子炉圧力 容器に水平 2 重管流路や,傾斜した燃料挿入配管が設置 されている場合がある1),16)。著者らは従来より,鉛直 (垂直)2 重管流路内に生じるヘリウム – 空気対向流につ いて,実規模の流路形状(外径と内径の比)を含む条件 Fig. 1. The developed measurement system of the exchange flow.

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不安定密度成層における対向置換流挙動の研究(文沢元雄) での空気の流入質量流量と 2 重管流路外径と内径の比の 関係を調べた11) しかしながら,傾斜した 2 重管流路内の異種流体対向 置換流の流速分布,濃度分布などを詳しく調べた研究は ほとんど行われていない。スタンドパイプアニュラス部 の流路形状は外径と内径の比が約 1 であり,2 重管流路 は平行平板流路で近似できる。 本報では,著者らが行ったヘリウム – 空気対向置換流 の 3 次元数値解析および実験18) を,平行平板流路近似の 観点から再検討した結果を述べる。したがって,本報で は平行平板流路近似の代表例として,アスペクト比が 10 の矩形流路内を流れるヘリウム – 空気対向置換流の流速 分布,濃度分布を 3 次元数値解析よって調べ,流路の傾 斜角と流速分布,濃度分布および正味の流入する質量流 量との関係を調べるとともに数値解析を検証するための 実験を行うことを主な目的とする。 II.解析体系と基礎式 1 解析体系 解析体系の基本形状を Fig. 3 に示す。全体の系は 2 個 の容器を 1 本の矩形流路で接続した系である。下部容器 は直径 350 mmf ,高さ 400 mm の円筒形の容器であり, 実 験 形 状 と 類 似 の 体 系 と す る た め , 矩 形 流 路 の 一 部 (50 mm) が容器内に挿入された形状となっている。こ の容器内には温度 293 K,圧力 1.013105Pa のヘリウム (またはヘリウムと空気の混合気体)が充填されている。 上部容器は直径 350 mmf,高さ 400 mm の円筒形の容器 であり,この容器内には温度 293 K,圧力 1.013105Pa の空気が充填されている。実際の容器間を接続する矩形 流路の断面寸法は幅 50 mm 奥行 5 mm 長さ 200 mm と し,アスペクト比 10 に固定した。矩形流路内に生じる 対向置換流は,容器の寸法の影響を受ける可能性があ る。しかしながら,著者らが行った円管内のヘリウム – 空 気 対 向 置 換 流 の 実 験7) に よ る と , 容 器 寸 法 が 350 mmf350 mm 以上の場合には,空気の流入流量は容器 寸法の影響を受けないという結果を得ている。そこで, 本研究では上記の容器寸法を選択した。 計算開始前には矩形流路の右端に蓋がされている。矩 形流路右端の蓋を取り除くと,矩形流路内にはヘリウム 上昇流と空気下降流が対向して流れる対向流が発生す る。本研究では,この対向流の特徴を数値解析によって 調べる。 全体の系は Fig. 3 に示すように,水平に対して傾斜し て置かれており,流路の傾斜角 q が 0°, 30°, 45°, 60°, 75°, 87°の場合について計算する。 2 基礎式と初期条件および境界条件 本解析モデルの座標系を Fig. 3 に示す。解析に用いた 基礎式は以下のとおりである。

Fig. 2. The flow visualization of the separation flow in a inclined tube by the smoke wire method.

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湘南工科大学紀要 第 39 巻 第 1 号 混合気体の質量保存の式: ∂r /∂t(·rV )0 (1) ヘリウムの質量保存の式: ∂(r XHe)/∂t(·rXHeV )(·rDXHe) (2) 混合気体の運動量保存の式: r DV/tP[·t]rg (3) こ こ で , r は 混 合 気 体 の 密 度 , t は 時 間 , V V(U, V, W )は速度ベクトル,XHeはヘリウムの質量分率, Dはヘリウムと空気の相互拡散係数,P は圧力,t は応 力テンソル,g は重力加速度である。 混合気体の密度 r は,ヘリウムおよび空気とも理想気 体近似が成立するとして,次式より求めた。 r(P/RT)/(Xa/MaXHe/MHe) (4) ここで,Xa1XHeは空気の質量分率,MHeおよび Ma は,それぞれヘリウムおよび空気の分子量である。 また,混合気体の粘性係数 m は次式により求めた。 (5) fij[1(mi/mj) 1/2(M j/Mi) 1/4]1/2/[8(1(M i/Mj)) 1/2. (6) ここで,添字の i1 はヘリウム,i2 は空気を表す。ま た,本計算体系では,流れは流路中心面(Fig. 3 の cen-ter plane)に対して面対称な流れになると考えて計算を 行った。 境界条件:壁面ではすべての場所において,x 方向流 速 U0, y 方向流速 V0, z 方向流速 W0,ヘリウムの質 量分率の勾配XHe/∂x∂XHe/∂y∂XHe/∂z0 とした。流路 中心面では,W0, U/z∂V/z0, ∂XHe/∂z0 とした。 初期条件:すべての場所で,UVW0, P1.013 105Pa とした。また,下部容器内および矩形流路内にお けるヘリウムの質量分率を XHe1,上部容器内における ヘリウムの質量分率を XHe0 とした。このとき,下部容 器内と上部容器内に充填されている気体の密度差は 1.02 kg/m3 となる。 計算には,有限体積法19) の熱流体解析コード「FLU-ENT」を用いた20) 。全体の計算領域を約 10 万の不等間 隔メッシュに分割した。Fig. 4 の左図に計算領域の全体 図を示し,Fig. 4 の右図に矩形流路の詳細図を示す。不 等間隔の分割方法は,流速変化の大きい領域である壁近 傍および矩形流路部分にメッシュ分割を細かくし,計算 の収束性および精度向上を図った。矩形流路部分は,x 方向に 44 分割,y 方向に 28 分割,z 方向には 12 分割し た。ただし,前述のように,z 方向に関しては,流路中 心面(Fig. 3 の center plane)に対して面対称な流れにな ると仮定した。 温度 293 K,圧力 1.013105Pa の空気およびヘリウムの 粘性係数は,それぞれ,1.857105kg/(s · m), 1.983105 kg/(s · m),空気とヘリウムの相互拡散係数は D7.25 105m2 /s,の値を用いて計算を行った。 µ

[

(Xi⋅µi)

(Xj⋅φij)

]

Fig. 3. Schematic view of geometrical configuration for calculation.

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不安定密度成層における対向置換流挙動の研究(文沢元雄) III.検証実験 1 質量変化法による対向置換流量測定 対向置換流量測定方法は著者らの質量変化法11) を用い た。ここで,対向置換流によって上部容器へ流入する流 量を流入流量と称する。 ヘリウム – 空気置換流の実験装置を Fig. 5 に示す。実 験装置は,電子天秤,データ収録部などで構成されてい る。矩形流路部分は,内径および高さが 350 mm のアク リル製円筒容器(Fig. 3 の上部容器と同じ寸法)の上部 に高さ 50 mm 幅 5 mm 長さ 200 mm のガラス製の矩形 流路を取り付けたものである。Fig. 3 の下部容器 (top sec-tion)は無く大気開放となっている。矩形流路部分と上部 容器の空気をヘリウムで完全に置換した後,矩形流路の 先端に取り付けた盲蓋を取り外し,空気とヘリウムの置 換流を生じさせる。空気の流入流量とヘリウム・空気の 混合気体の流出流量との差である正味の流入する質量流 量 DM/Dt [g/s] は電子天秤で試験体の質量変化を測定す ることにより求めた。 2 局所流速測定 実験は著者らの LDV(レーザ)流速計による測定12) 同様の手法であるが,本装置の特徴は,Fig. 5 に示すよ うに,対向置換流量測定と同時の局所流速測定を可能と したことにある。線香の煙を流速測定のトレーサ粒子と した。局所流速測定方法は LDV ファイバープローブ内 の 2 カ所から出るレーザ光の交点(測定点:体積は 0.01 mm3 )にできる干渉縞で反射されるトレーサ粒子からの 散乱光を光電子増倍管で捉え,信号処理する方法であ る。測定個所は,流速が比較的早く測定精度がよい場所 を選んだ。実験では,条件の適した実験開始後約 30 秒 程度経過後の流速分布を測定した。 IV.結   果 1 対向置換流の時間発展 Fig. 6に流路傾斜角 q が 60° の場合の,流路中央断面 ( Fig. 3 の middle section) の 中 心 線 上 ( Fig. 3 の center line)における x 方向の流速分布(U 分布)の時間変化 を示す。図中の三角形等のシンボルは計算点を内挿し, 等分割点での値を出力したものである。数値計算では, 不等間隔メッシュを採用しており,全幅 50 mm に対して 壁近傍は 1 mm である。計算開始後の経過時間 t が約 10 秒以前の流速分布は時間の経過とともに大きく変化する が,10 秒以降の流速分布の変化は極めて緩慢であること が分かる。流路の傾斜角が 60° 以外の場合においても, 計算開始後 1030 秒後には,速度分布,濃度分布等の 時間変化は極めて緩慢となった。すなわち,本計算体系 においては,計算開始後短時間の内に準定常的な対向流 が形成されることが分かった。経過時間 t が約 30 秒(対 向流が準定常的となった)の場合,最大流速は 0.8 m/s な ので,レイノルズ数 Re は 250 程度である。別途予備的 Fig. 4. The non-uniform mesh configuration of three-dimensional computation region around 100,000 meshes.

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湘南工科大学紀要 第 39 巻 第 1 号 に行った可視化実験より不規則な流動振動などは観測さ れなかった11)。以上より,本条件の対向流は層流と考え られる。 以下には,このような準定常対向流についてその特徴 を調べる。 2 速度分布 2.1 実験との比較による検証 Fig. 7は流路の傾斜角が 60° の場合の流路中央断面に おける U 分布の実験値と計算値の比較を示す。実験条件 は,下部容器内の気体は純粋なヘリウムではなく,ヘリ ウ ム と 空 気 の 混 合 気 体 ( 混 合 気 体 の 初 期 密 度 rmix 0.79 kg/m3)を用いた。実験値は流速測定値が安定してい る実験開始後 30 秒後の値を選定した。この条件では, 流れが緩慢なため,下部容器内の混合気体の密度は初期 値と同じ条件と考えられる。このため,Fig. 7 の計算の 初期条件としては,下部容器内および矩形流路内には実 Fig. 5. Schematic diagram of experimental apparatus.

Fig. 6. Development of axial velocity-U profile along the center line of the middle section after the onset of counter flow at the angle q of 60°.

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不安定密度成層における対向置換流挙動の研究(文沢元雄) 験と同じ条件の混合気体が充填されているとした。計算 値は実験と同様に実験開始後 30 秒後の値を選定した。 図からわかるように,実験値と計算値は比較的良く一致 していることがわかる。 2.2 適用解析 Fig. 8は流路の傾斜角 q が 60° の場合の流路上端断面 (Fig. 3 の top section),中央断面 (middle section) および流 路下端断面 (bottom section) の中心線上 (center line) におけ る U 分布と,V 分布を示す。 上昇流の速度分布 (U0) について見てみると,流路下 端断面(流入面)では,U は通常の管内流れと同様,比 較的平坦な分布をしている。このとき,V は上昇流と下 降流の境目近辺で正の値となっており,通常の管内流れ と同様,流入面近辺では流れが発達しつつあり,それに 伴い流路幅が減少しつつあることがわかる。流路中央断 面では,U は上昇流の流路幅の中心 (y0.037 m) よりかな り壁面に近い位置 (y0.043 m) に最大値を持った山形の流 速分布になっている。また,V は流路の高さ方向全域( y 方向全域)にわたってほぼゼロとなっている。流路上端 断面(流出面)における U 分布は,流路中央断面におけ る U 分布より更に尖った山形の分布となり,U の最大値 は上昇流の流路幅の中心よりさらに壁面に近い位置 (y0.046m) に現れている。流路上端断面における V の分 布は上昇流の流路幅の中央近辺で最大値となる分布と なっており,流出端近辺で上昇流の流路幅は減少し,そ れに伴い流れが加速される様子がわかる。 下降流についても,値は異なるものの,定性的な特徴 は上昇流と同じである。 なお,60° 以外の傾斜角においても,上述と同様な特 徴を持っていることがわかった。 Fig. 9は流路中央断面における U 分布が流路の傾斜角 によってどのように変化するかを示す。傾斜角 q0(水 Fig. 7. Comparison of U-profile between experiment and calculation along the center line of the middle section at the angle

q of 60° and the density rmixof 0.79 kg/m 3.

Fig. 8. U- and V-profile along the center line of the top, middle and bottom section at the angle q of 60°.

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湘南工科大学紀要 第 39 巻 第 1 号 平)の場合には,上昇流と下降流の U 分布は,上昇流 と下降流でほぼ同じ分布となっている。流路幅も上昇流 と下降流で同じである。しかし,傾斜角 q 0 の場合は, 上昇流と下降流の流速分布は同じではない。傾斜角の増 加とともに,上昇流の流路幅は広くなり,それに伴い, 下降流の流路幅は減少する。 上昇流の U の最大値は,傾斜角が 45° までは傾斜角の 増加とともに大きくなるが,傾斜角が 4575° の範囲で はほぼ一定値となる。傾斜角をさらに大きくすると U の 最大値は再び減少する。一方,下降流の U の最大値は傾 斜角の増加とともに単調に増加する。 3 濃度分布 Fig. 10に傾斜角が 60° の場合の流路上端断面,中央断 面および流路下端断面におけるヘリウムのモル分率分布 wHeを示す。空気のモル分率分布は,wa1wHeで与え られる。流路下端断面(流入面)ではヘリウムのモル分 率 wHe1 の領域が流路高さの約半分 (y0.03–0.05 m) を占 めているが,流路中央断面,流路上端断面に向かうに 従ってヘリウムのモル分率 wHe1 の領域は狭くなってい る。流路中央断面では,wHe1 となる領域は y0.042– 0.05 mであり,流路上端断面では,wHe1 となる領域は ほとんど消滅している。空気のモル分率分布もヘリウム のモル分率分布と同様な傾向である。すなわち,流路上 端断面(流入面)では,wa1 となる領域は流路高さの 約半分 (y0–0.021 m) を占めているが,流路中央断面にお いては wa1 となる領域は y0–0.003 m と狭くなり,流 路下端断面においては wa1 となる領域は消滅している。 Fig. 11は流路中央断面におけるヘリウムのモル分率分 布が流路の傾斜角 q によってどのように変化するかを示

Fig. 10. Mole fraction profile of He along the center line of the top, middle and bottom section at the angle q of 60°. Fig. 9. U-profile along the center line of the middle

section.

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不安定密度成層における対向置換流挙動の研究(文沢元雄) す。空気のモル分率分布は,wa1wHeで与えられる。 傾斜角がゼロ( 水平) の場合は, 上昇流中 ( y0.025– 0.05 m)におけるヘリウムのモル分率分布 wHeと下降流 (y0–0.025 m) 中の空気のモル分率分布 waはほぼ同じ分 布となっている。しかし,傾斜角がゼロ以外の場合には, 両者は同じ分布とはならない。矩形流路の傾斜角が増加 するとともに,空気とヘリウムのモル分率が等しくなる 点(wHewaとなる点)は空気下降流側に移動する。こ れは,傾斜角の増加とともに,空気下降流とヘリウム上 昇流の境界(流速がゼロとなる点: Fig. 9 参照)が空気 側に移動することと関係が深いと考えられる。 4 正味の流入する質量流量 4.1 実験との比較による検証 Fig. 12は正味の流入する質量流量 M˙ と流路の傾斜角 q との関係を示す。ここで,正味流入流量とは,上部容器 内から矩形流路内に流入する空気 ヘリウム混合気体 の流入質量流量から,矩形流路から上部容器内に流出す るヘリウム 空気混合気体の流出質量流量を差し引い た質量流量である。すなわち,上部容器から矩形流路内 に流入する正味の混合気体の流入質量流量である。実線 が計算値を滑らかに結んだ線であり, 印が実験値を示 す。Fig. 13 は流路の傾斜角 q が 60° の場合の正味の流入 する質量流量と密度差 Dr との関係を示す。ここで,Dr は上部容器内の混合気体の密度 rHと下部容器内の混合 気体の密度 rLとの差である。実線が実験値を示し, 印が計算値を示す。Fig. 12 および Fig. 13 からわかるよう に,実験値と計算値は比較的良く一致している。このこ とより,本解析方法および解析結果が妥当であることが わかる。 Fig. 12からわかるように,正味の流入する質量流量は 流路の傾斜角が約 60° のとき最大となっている。

Fig. 12. Relationship between net in-flow rate and tilted angle of channel. Fig. 11. Mole fraction profile of He and air along the

center line of the middle section.

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湘南工科大学紀要 第 39 巻 第 1 号 4.2 適用解析 流路の傾斜角が約 60° のとき正味の流入する質量流量 が最大となる点について検討を行ったのが,Fig. 14 であ る。Fig. 14 は流路上端断面における U 分布と混合気体の 密度分布(r 分布)を示す。ヘリウムの密度は空気の密 度の約 0.14 倍であるため,流路上端断面における混合気 体の密度は,空気を多く含んでいる下降流の密度の方が ヘリウムを多く含んでいる上昇流の密度よりはるかに高 い。すなわち,大まかに言えば正味の流入する質量流量 は,流路内への流入質量流量によってほぼ決定されると 考えてもよい。Fig. 14 からわかるように,流路の傾斜角 が 0° の場合は,空気下降流の流路幅(流速が負となる 範囲)は広く (y0–0.035 m) また流路幅のほぼ全域に渡っ て混合気体の密度は高い(ほぼ純粋な空気の密度に等し い)。しかし,このときの下降流の流速 U は非常に小さ い。流路の傾斜角が 60° の場合には,下降流の流路幅は 傾斜角が 0° の場合とほぼ同じであるが(60° の場合の約 90%),流速 U は約 46 倍である。したがって,傾斜角 が 60° の場合,正味の流入する質量流量は傾斜角が 0° の 場合より多くなる。このように,流路の傾斜角を増加さ せた場合,流速の増加割合と流路幅の減少割合の兼ね合 いにより,正味の流入する質量流量が最大となる傾斜角 が決まるものと考えられる。 V.結   論 流路断面が 5 mm50 mm,長さが 200 mm の矩形流路 内に生じるヘリウム – 空気対向流について,熱流体解析 コード「FLUENT」を用いた数値解析および実験を行っ た。その結果,本研究で対象とした対向流の特徴とし て,以下のことが明らかとなった。 (1) 計算開始後 1030 秒後には,対向流の速度分布,

Fig. 13. Comparison of net in-flow rate between experiment and calculation at the angle q of 60°. Where Dr = rair–rmix.

Fig. 14. U- and r -profile along the center line of the top secion.

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不安定密度成層における対向置換流挙動の研究(文沢元雄) 濃度分布などの時間変化は極めて緩慢となる。す なわち,本計算体系においては,計算開始後短時 間の内に準定常的な対向流が形成される。 (2) 上昇流と下降流は層状に分離して流れる。 (3) 流路の傾斜角 q が増加すると,上昇流の流路幅は 広くなり,下降流の流路幅は減少する。 (4) 上昇流の U の最大値は,傾斜角 q が 45° までは傾 斜角の増加と伴に大きくなるが,傾斜角が 4575° の範囲ではほぼ一定値となる。傾斜角を更に大き くすると U の最大値は再び減少する。一方,下降 流の U の最大値は傾斜角の増加とともに単調に増 加する。 (5) 正味の流入する質量流量 M˙ は流路の傾斜角 q が 約 60° のとき最大となる。これは,流路の傾斜角 を増加させた場合の,流速の増加割合と流路幅の 減少割合の兼ね合いにより決定されるものと考え られる。 (6) 流速分布および正味の流入する質量流量の実験値 と計算値はよく一致した。 参 考 文 献

1) Hishida, M., et al., “Researches on air ingress accidents of HTTR”, Nucl. Engrg. and Design, 144, p. 317 (1993). 2) Leach, S. J., Thompson, H.: J. Br. Nucl. Energy Soc., 14(3),

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(1989).

7) Fumizawa, M.: “Experimental study of helium–air ex-change flow through a small opening”, Kerntechnik 57, p. 156 (1992). 8) 文沢元雄,“レーザ流速計による浮力置換流の流量 測定に関する研究”,日本機械学会論文集(B 編), 59(567), p. 3686 (1993). 9) 文沢元雄,菱田 誠:第 31 回日本伝熱シンポジウ ム講演論文集,D123, p. 208 (1994).

10) Fumizawa, M., Hishida, M., “Helium–Air Exchange Flow through Annular and Round Tubes”, Nuclear Technol-ogy, Vol. 109, p. 123 (1995). 11) 徳井洋介,田中 学,菱田 誠,文沢元雄:第 35 回日本伝熱シンポジウム講演論文集,D153, p. 163 (1998). 12) 川橋正昭,細井健司,平原裕行,福井大俊,文沢 元雄,“ヘリウム – 空気置換流の可視化解析”,可視 化情報,14(54), p. 37 (1994). 13) 文沢元雄,菱田 誠,“ヘリウム・空気置換流の流量 測定と傾斜管内の流れの可視化”,可視化情報,15 (Suppl. 2), p. 169 (1995). 14) 姜 泰一,岡本孝司,班目春樹,文沢元雄,“仕切 りのある開口部におけるヘリウム – 空気対向置換 流”,日本機械学会論文集(B 編),59(566), p. 3106 (1993). 15) 鶴 大悟,岡本孝司,班目春樹,文沢元雄,“複数 のフローパターンを持つ隣接複開口部を介した浮力 駆動置換”,日本機械学会論文集(B 編),63(615), p. 3572 (1997). 16) 鶴 大悟,岡本孝司,班目春樹,文沢元雄,“隣接 複開口部を介した浮力駆動置換流(開口部断面形 状の影響)”,日本機械学会論文集(B 編),64(625), p. 2790 (1998).

17) Saito, S., et al.: “Design of Temperature Engineering Test Reactor (HTTR)”, JAERI-1332 (1994). 18) 文沢元雄,田中 学,趙 紅,菱田 誠,椎名保 顕,“矩形流路内に生じるヘリウム – 空気対向流に 関する研究”,日本原子力学会和文論文集(掲載決 定). 19) 河村 洋,土方邦夫,“熱と流れのシミュレーショ ン”,丸善(株),(1995).

20) FLUENT. Inc, “FLUENT 6.1 USERS GUIDE 2003” (2003).

Fig. 2. The flow visualization of the separation flow in a inclined tube by the smoke wire method.
Fig. 3. Schematic view of geometrical configuration for calculation.
Fig. 6. Development of axial velocity-U profile along the center line of the middle section after the onset of counter flow at the angle q of 60°.
Fig. 8. U- and V-profile along the center line of the top, middle and bottom section at the angle q of 60°.
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参照

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