論 文
弾性波の伝播特性によるRC床版のひび割れ評価に関する基礎研究
岡村雄樹 檜貝勇
(平成2年8月31日受理)
Fundamental Study on Crack Evaluation in Reinforced Concrete Slabs
by Elastic Wave Propagation Characteristics
YuukiOKAMURA TakeshiHIGAI Abstract Properties of elastic waves, propagatingin the reinforced concrete slabs, are studied. Elastic waves are generated by dropping a steel ball on to the slab specimens. Three concrete slab specimens are used in the experiment. One has no crack, while the others have flexural cracks or passing・through cracks. Acceleration in the vertical directionis measured and anal− yzed in terms of maximum amplitude and Fourier spectrum. The damping of maximum amplitude of the acceleration is clearly recognized in the specimen with wide passing−through cracks comparing with that in the specimens without cracks, with flexural cracks or with narrow passing−through cracks. The patterns of Fourier− spectra are also clearly different each other, according to the width and types of cracks in the speclmens. Though further investigations are required, these results suggest the possibility of develop− ing new non−destructive inspection method based on the elastic wave propagation for reinforced concrete slabs.
1.まえがき
筆者らは,ここ数年ひび割れ等によって劣化した RC床版の損傷程度を,弾性波を用いた非破壊試験に よって判定しようとする研究を行っている。弾性波の 伝播性状で,RC床版の損傷度を判定する研究は国内 外でもいまだ緒に就いたぼかりであり,多くの基本的 な問題点が残されている。本文では,これまでの検討 結果1)2)を踏まえて,鋼球を落下させ衝撃をコソクリー ト表面に与えることにより発生する弾性波のコンク リート中での伝播性状のうち,波形の最大加速度の減 *土木環境工学科,Departlhent of Civil and Environmental Engineering 衰および周波数特性に着目し,これらがひび割れを有 するRC床版で如何なる性状を示すかを,’RC床版を モデル化した比較的大型の供試体を用いて,実験的に 検討した結果を示すものである。また,この結果に基 づき,弾性波の減衰および周波数特性に着目すること で,RC床版のひび割れ発生状況が把握可能であるか について論じた。2.実験方法
2.1供試体
実験に用いた供試体は,幅210cm厚さ15 cm長さ 300cmの無筋コンクリート版,および幅180 cm厚さ 15cm長さ300 cmの鉄筋コンクリート版である。鉄筋コンクリート版は,D16 mmの異形棒鋼を直交 二方向に配筋し,鉄筋中心間隔が20cmで主鉄筋のか ぶり厚を2.2cmとしたものを作製した(図一1参照)。 曲げひび割れを有する鉄筋コンクリート版は,一点 集中載荷により供試体中央部付近でのひび割れ幅が 0.14mmとなるように,曲げひび割れを導入した。図 一2は,曲げひび割れを導入した供試体のひび割れ状 況を示したものである。また,貫通ひび割れを有する 鉄筋コンクリート版は,一点集中載荷を供試体上面で 行った後,供試体を反転させ,再度一点集中載荷を実 施し,供試体中央部付近でのひび割れ幅が所定幅(0.08 mm,0.45 mm)となるように,貫通ひび割れを導入し た(図一3参照)。 試験時における供試体の支持は,供試体長手方向 (300cm)を支点方向とした単純支持である。支点間距 離は,50cm,250 cm及び300 cmとした。なお,支点 上には幅10cm厚さ0.5cmで長さ供試体幅の硬質ゴ ムを用いた。 無筋コンクリート版および鉄筋コンクリート版に用 【無筋コンクリート版】 波動受信点 波動発生点
@ / 1°5・
@ 臼一θづ←研 @ 200。m/ 5巴 1 10cm 300cm 【鉄筋コンクリート版】 波動受信点 波動発生点90cm
6 / 巴 召・召一コ一伊+
200。m/ 〆 自 ’ o o。 @自 † 一rr−一℃「一レ 1 ←一一9一い 汕鼈黶汕鼈黶怐ィ 80cm o 十 →一◆一一◆ ← ◎り 餅筋D16SD30 7@20cπ声140 300cm 図一1 供試体の形状寸法 も いたコンクリートは,表一1に示す示方配合のもので ある。実験時点でのコンクリートの物性は,直径10cm 高さ20cmの円柱供試体の圧縮強度試験,単位容積重 量試験および弾性係数試験等を実施して調べた。この 曲げひびわれ 曲げひびわれ 曲げひびわれ 0.005mm以下0.14mm
0.005mm以下十
十
300cm
゜波動発生点 口 波動受信点 図一2 曲げひび割れの発生状況 貫通ひびわれ 0.005mm以下 貫通ひびわれ0.08mm
O.45mm
貫通ひび 0.005mm以下 ゜波動発生点 口 波動受信点 図一3 貫通ひび割れの発生状況 表一1 コンクリートの示方配合種別
粗骨材の ナ大寸法 imm) 単位量(kg/m3) スラン v(cm) 空気量 i%) 水セメン g比 i%) 細骨材 ヲ($) 水 セメント 細骨材 粗骨材 混和剤 A’ 25 8 4 52.5 42.4 143 273 816 1137 2.78 B串 25 8 4 50.5 42.1 143 284 806 1137 3.08 注)A’は無筋コンクリート版に用いたもの B“は鉄筋コンクリート版に用いたもの 一97一平成2年12月 第41号 結果は表一2に示す通りである。
2.2 計測方法
計測器の構成を,図一4に示す。この計測器構成は, コンクリート中を伝播してくる衝撃波を2個の加速度 センサーで受信し電気信号に変換し,変換された電気 信号を1μ秒間隔で8192個サンプリングしたものを 波形記憶装置にを記憶させた。さらに,このデータを パーソナルコンピュータでデータ処理できるようした ものである。なお,計測に用いた加速度センサーは, プリアンプ内蔵圧電型のもので,応答周波数領域が2 Hz∼50 KHz,使用最大加速度が±212Gのものであ る。 2.3 加速度センサーの配置および波動の発生方 法 加速度センサーは,供試体の幅方向の中央位置表面 に配置した(図一2、3参照)。加速度センサーのコン クリート表面への取り付けは,あらかじめコンクリー ト表面に接着させた角柱鉄片(断面2×2cm高さ2.5 cm)にマグネットマウントを介して行い,供試体表面 に垂直および鉛直方向の加速度を測定した。 波動の発生は,鋼球を高さ3.4cmからコンクリート表面に接着させた直径2cm厚さ0.6cmの鉄板上に
落下させることによった。なお鋼球は,衝撃力の作用 時間(接触時間)を変化させるために,直径19mm重さ 28g(以下S球),直径28.5mm重さ95 g(以下M球)お よび直径44.3mm重さ359 g(以下L球)の3種のもの を用いた。衝撃波発生源に鉄板を用いたのは,鋼球落 下による衝撃荷重でコンクリート表面が性状変化を起 こすことを防止するためである。 鋼球の接触時間を,Carinoらの論文3)に示されてい 表一2 試験時のコンクリートの物性 種 別 圧縮強度 ikgf/cm2) 弾性係数 i×105kgf/cロ2) ボアソ 灯 単位容積 d量(t/皿3) 無筋コン列一ト版 323 2.61 0.16 2.32 鉄筋コンクリート版 355 2.70 0.17 2.36 加速度センサー 図一4 計測器の構成 バーソナル コンピュータ データ記録 データ処理 る(1)式によって求めると,S球で68μ秒, M球で102μ 秒,L球で158μ秒となる。 Tc=5.97 [ρs(δ』十(Sp)] 2/SR/(h)o・1・・・・・・… …… …(1) 6P・=(1−Vp2)/πEp,δ』=(1一レ。2)/(πEs) Tc=接触時間 ρ、=鋼球の密度kg/m3 R・=鋼球の半径(m) h=落下高さ(m) 〃ρ=落下面鉄板のボアソン比 Vs=鋼球のボアソン比 Ep =ts下面鉄板の弾性係数N/m2 E、=鋼球の弾性係数N/m2 2.4 検討に用いた衝撃波の波形性状と周波数特 性 検討に用いた各使用球による衝撃波の性状は,本来 は出来る限り衝撃発生点近くで調べることがよいが, 衝撃発生点近くでは測定上に問題があるので,衝撃発 生点より5cm離れた点で測定した。 図一5は,各使用球を所定の高さから落下させ発生 する波を鉛直方向で測定した波形を示したものであ る。一方,図一6は,水平方向で測定した波形を示し たものである。鋼球を落下させて発生させた波には, 多数の周波数成分の波が合成されたものである。そこ で,これらの波形をFFT解析し周波数分析を行った 結果が図一7,8である。これより,1)S球を落下さ せ発生させた波は,鉛直方向成分で10∼18KHz,水平方向成分で5KHz前後と12 KHz前後の周波数成分
が卓越しているしていること,2)M球を落下させて発 生させた波は,水平方向成分が9∼13KHz,鉛直方向成分が5KHz前後と11 KHz前後の周波数成分が卓
越していること,3)L球を落下させて発生した波は,鉛直方向成分で5KHz前後,11KHz前後および16
KHz前後,水平方向成分で4∼7KHzの周波数成分
が卓越した波であること,などがわかる。2.5 データ処理
パーソナルコソピュータのフロッピーディスクに記 憶させたデータを基に,伝播波形の減衰および周波数 解析を行った。伝播波の減衰は,弾性波発生点付近(発 生点より5cmの点:測点A)で測定された波形の最 大加速度に対する所定位置(測点B)で測定された受信 波形の最大加速度(図一9参照)の比を減衰として取りG
) 250 一250 250 一250 250 使用球:S 鉛直成分 使用球:M 鉛直成分 4 2 Oi4
三2
墾よ9
使用球:S 鉛直成分 使用球:M 鉛直成分 0 一250 0 1 時 間 (ms) 使用球:L 鉛直成分 2 2 00 使用球:L 鉛直成分 10 20 30 40 周波数(KHz) 50 図一5 検討に用いた各使用球による衝撃波の鉛直成分の波形 図一7 検討に用いた各使用球による衝撃波の鉛直成分の周波数特性 li; ) 忌 150 一150 150 一150 150 使用球:S 水平成分 一150 0 使用球:M 水平成分 時 間 (ms) 使用球:L 水平成分 図一6 検討に用いた各使用球による衝撃波の水平成分の波形 4 2〒28
三 ? 巴 聾 10 H7
s 0 40 使用球:S 水平成分 20 0 0 使用球:M 水平成分 使用球:L 水平成分 周波数(KHz) 図一8 検討に用いた各使用球による衝撃波の水平成分の周波数特性 一99一平成2年12月 山梨大学工学部研究報告 第41号 300 【測点A】
§ 1\最大加速度
畏 一300 60 【測点B】 § 蝦 0 員 一600 0.4 0.6 時 間 (ms) 0.8 O.2 O.4 0.6 時 間 (ms) 図一9 測定波形の一例 0.8 1 扱った。これは,伝播波の形が伝播距離およびひび割 れなどによって異なる(図一10参照)ので,本文では, 伝播波の最大振幅がその波形の代表値であるとの考え によった。また,周波数解析は,得られた加速度デー タをFFT(Fast Fourier Transform)解析し,コンク リート中を伝播した弾性波の各周波数成分および振幅 を解析した。なお,FFT解析に用いたデータ数は,い ずれも波形立ち上がり点から4096個である。3.実1験結果
3.1 弾性波の伝播距離と最大振幅の減衰との関 係 図一10は無筋コンクリート版を15,105,205cm伝播 した弾性波の鉛直方向成分の測定例を示したものであ る。この図より,弾性波の振幅は,伝播距離が長くな るに従って小さくなるが,波形の全体の形は伝播距離 によって異なり相似形ではないことがわかる。図一11 は,測点Aで得られた波形の最大加速度に対する測点 Bで得られた波形の最大加速度の比を示したものであ る。これより,1)減衰の大部分は,波動発生点から25 cm以内の区間で生ずること,2)コンクリート中を伝 播する波の減衰は,伝播距離が増すほど大きくなるが, 100cm以上伝播すると伝播距離が減衰に及ぼす影響 E]’ ) 50 0 一50 500
忘 一50 50 0 一500 1.0 iil O.89
Q6
0.4 O.2 図一10 1 時 間 (ms) 無筋コンクリート版を伝播した波形 :△:無筋コンクリート供試体 :O:鉄筋コンクリート供試体 鉄筋上での測定 1●:鉄筋コンクリート供試体 鉄筋上より10c皿離れた 位置での測定 2 0 50 100 150 200 伝播距離(cm) 図一11弾性波の伝播距離と最大加速度の減衰の関係0.7 0.6 最0・5 大 0.4 加 速 0.3 度 の 0.2 比 0.1 0.0 0.7 0、6 最0・5 大 0.4加 速 0.3度 の O.2 比 0.1 0 50 100 [鉛直方向]
O S球
ロ M球 △ L球 150 伝播距離(c爾) 図一12 衝撃力作用時間が鉛直成分の最大加速度の 減衰に及ぼす影響 0.0 200 0 50 100 [水平方向]O S球
ロ M球 △ L球 伝播距離(cm) 150 図一13 衝撃力作用時間が水平成分の最大加速度の 減衰に及ぼす影響 200 が小さくなること,3)無筋コンクリート版と鉄筋コソ クリート版を伝播した波の減衰はほぼ同等であり,鉄 筋の存在が減衰に及ぼす影響は認められないこと,な どがわかる。また,図一12,13は,波動を発生させる 鋼球の大きさを変化させた場合の波形の鉛直方向成分 および水平方向成分の伝i播距離と最大加速度の減衰を 示したものである。これより,鉛直方向成分では,落 下させる鋼球の大きさの相違が,弾性波の距離による 減衰に及ぼす影響は殆ど認められないことがわかる。 しかし,水平方向成分では,減衰の程度が使用球によっ て異なり,衝撃力の作用時間が大きくなるに従って減 衰が小さくなっていることが認められる。さらに,供 試体の支持条件のうち支点間距離を変化させた場合の 0.5 最0.4 大 加0.3 速 度0・2 の 比0・1 0.0 0 50 [鉛直方向:S球使用] 支点間距離 ロ 50cm O 250c胴 △ 300cm 100 伝播距離(cm) 150 図一・−14 支点間距離が鉛直水平成分の最大加速度の 減衰に及ぼす影響 0.7 0.6 最0・5 大 0.4 加 速 0.3 度 の 0.2 比 0.1 0.0 200 0 50 [水平方向:S球使用] 支点間距離 ロ 50cm O 250cm △ 300cm 100 150 伝播距離(cm) 図一15 支点間距離が水平成分の最大加速度の 減衰に及ぼす影響 200 減衰について示したものが図一14,15である。この図 をみると,支点間距離の変化による弾性波の距離減衰 の傾向には大きな差異は認められない。なお,図 一11∼15に示されている伝播距離と最大加速度の比の 関係で,最大加速度の比が伝播距離に比例して小さく ならない伝播距離が存在する場合があるが,これは実 験誤差ではなく以下のことによる。すなわち,この現 象を振動論の面から考えると振動モードの相違であ り,波動論の面から考えると反射波の影響であると考 えられる。 3.2 弾性波の最大振幅の減衰とひび割れの関係 図一16は,健全およびひび割れを有する鉄筋コンク リート版を伝播した弾性波の測定結果である。これら の波形の最大振幅に注目して,測点Aと,この点より 200cm離れた点の最大振幅を比較した結果が表一3 一101一平成2年12月 第41号
G
) 10 0 一1 0 10 一10 10 【ひび割れ無し】使用球:S 鉛直成分 O 【曲げひび割れ】使用球:S 鉛直成分 【貫通ひび割れ(0.45mm)】使用球:S 鉛直成分 である。表一3は,曲げひび割れを有する鉄筋コンク リート版,および貫通ひび割れを有する鉄筋コンク リート版を伝播する弾性波の最大振幅の減衰を,ひび 割れの無い場合と対比させて示したものである。これ より,ひび割れの有無による影響を見ると,弾性波の 伝播する経路にひび割れが存在することにより,伝播 した弾性波の減衰が大きくなることが明らかである。 また,ひび割れ形態の違いによる弾性波の減衰の相違 を見ると,曲げひび割れを経路して伝播した場合の最 大加速度は4.8Gであるが,貫通ひび割れ(ひび割れ幅 0.45mm)を経路して伝播した場合には最大加速度は 0.4Gで曲げひび割れの場合の1/12となり,貫通ひび 割れによる減衰が著しく大きいことがわかる。 3.3 弾性波の伝播距離と周波数特性の関係 図一17は,無筋コソクリート版中を伝播した弾性波 の鉛直成分のFFT解析結果の一例を伝播距離別に示 したものである。図一18,19は,FFT解析から得られ た最も卓越する周波数と伝播距離の関係を示したもの である。これによると,1)S球およびM球を落下させ 一10 表一3 ひび割れ形態が弾性波の最大加速度の減衰に及ぼす影響 O 1 2 3 4 時 間 (ms) 図一16 ひび割れを有する鉄筋コンクリート版を伝播する 弾性波の測定波形 40 5 ひび割れ形態 `播距離 ひび割れなし 曲げひび割れ i0.14㎜) 貫通ひび割れ @(0.08㎜) 貫通ひび割れ @(0.45㎜) 200cm 0,024 i1.00) 0,015 i0.63) 0,006 i0.25) 0.0015 i0。006) 2019
1、
{2
2 0 0 【伝播距離:5cm】t,2… 雛㌫S
‖ ,/i 【伝播距離:105cm】 【伝播距離:205cm】 10 20 30 40 50 周波数(KHz) 40 【伝播距離:5cm】 12KHz 使用球:M 1 鉛直成分 4 2 0 4 ハ 【伝播距離:2田cm】 2 0 0 10 20 30 40 図一17 40 209
22
2 00 周波数(KHz) 伝播距離と弾性波の周波数測定(鉛直成分) 10 20 30 40 50 周波数(KHz)20 卓 越 周 10 波 数 (KHz) 0 0 50 100 O 球
ロM球
△L球
150 200 伝播距離(cm) 図一18 弾性波の鉛直成分の卓越周波数と伝播距離の関係 20 卓 越 周 10 波 数 (KHz) 0 0 50 100 150S球
M球
L球
200 伝播距離(cm) 図一19 弾性波の水平成分の卓越周波数と伝播距離の関係 20 卓 越 周 10 波 数 (KH2) 0 0 50 [鉛直方向:M球使用] o鉄筋コンクリート版 ロ無筋コンクリート版 100 150 伝播距離(cm) 図一20 鉄筋の存在が弾性波の卓越周波数に及ぼす影響 20 卓 越 周 10 波 数 (KHz) 0 200 0 50 100 [鉛直方向:M球使用] 支点間距離 0 50c爾 ロ 250c冊 △ 300cm 150 200 伝播距離(cm) 図一21支点間距離の相違が弾性波の卓越周波数に及ぼす影響 て生じた弾性波は,鉛直方向成分および水平方向成分 とも伝播距離が異なっても卓越する周波数は大きく変 化しないこと,2)L球を落下させて生じた弾性波の場 合に,水平方向成分は伝播距離が異なっても卓越する 周波数は変化しないが,鉛直方向成分では伝播距離が60cm以内では卓越する周波数は約12 KHzである
が,60cm以上となると2∼5KHzの低い周波数成
分が卓越すること,などがわかる。図一20は,無筋コ ンクリート版と鉄筋コソクリート版中を伝播した弾性 波の鉛直方向成分のFFT解析結果を前図と同様なま とめ方で示したものであって,この図をみると両者で はほぼ同様な結果となり,周波数成分に及ぼす鉄筋の 影響は認められない。なお,S球およびL球を用いた 場合にも,また,水平方向成分についても周波数成分 に及ぼす鉄筋の影響は認められないことを確かめてい る。一方,図一21は,供試体の支持条件のうち支点間 距離を変化させた場合について卓越周波数と伝播距離 の関係を示したものである。これより,支点間距離の 変化が弾性波の卓越周波数に及ぼす影響は殆ど認めら れない。 3.4 ひび割れと弾性波の周波数特性の関係 図一22は,ひび割れを経由して伝播した弾性波の鉛 直方向成分のFFT解析結果をS球を用いた場合につ いて示したものである。これらの結果より,1)曲げひ び割れを有する鉄筋コンクリート版を伝播する弾性波の卓越周波数は7∼8KHzであり,健全な鉄筋コン
クリート版を伝播した弾性波の卓越周波数より小さく なること,2)ひび割れ幅が小さい貫通ひび割れを有す る鉄筋コンクリート版を伝播する弾性波の卓越する周波数は14∼15KHであるが,これ以外に5KHz付近
をピークとする成分が卓越してきていること,3)ひび 割れ幅の大きい(0.45mm)貫通ひび割れを有する鉄筋 コンクリート版を伝播した弾性波の卓越周波数は4 ∼5KHzであり,13∼14 KHzをピークとする成分が 減少していること,などが認められる。また,これと 同様の結果が,M球を用いた場合にも認められており, 特に貫通ひび割れ幅が大きく(0.45mm)なると5 KHz程度以下の周波数成分が卓越し,13 KHzの成分 は極端に減少してくる(図一23参照)。しかし,衝撃力 の作用時間が長いL球を用いた場合には,1)図一8よ り明らかなように弾性波の発生時点に5KHz前後の 一103一平成2年12月 第41号 自 × : 響 H ゴ 1
30
15 0 2 O、 10 0 5 25 0 2 i 【ひび割れ無し】 使用球: 鉛直成分 【曲げひび割れ】 使用球: 鉛直成分 【貫通ひび割れ(0.08mm)】 使用球: 鉛直成分 【貫通ひび割れ(0.45mm)】 使用球: 鉛直成分 0 0 10 20 30 40 50 周波数(KHz) 図一一22 ひび割れの存在が弾性波の周波数特性に及ぼす影響 周波数成分が多く含まれていること,2)さらに,図 一17で示したように,伝播距離が長くなると健全なコ ンクリート版でも5KHz前後の周波数が卓越するよう になること,などから,ひび割れ形態の相違による周 波数成分の変化がS球M球とは異なり,明確な差異が 認められない。 4.弾性波の伝播特性によるRC床版のひび割れ評価 の可能性 前節で示した実験結果から,衝撃によって発生させ た弾性波によるRC床版のひび割れ評価の可能性につ いて述べると以下のようである。 コンクリート版中を伝播する弾性波の振幅は,伝播7
9
: 理 H ひ 1 【貫通ひび割れ(O.45田m)】 使用球:M 鉛直成分 10 20 30 40 50 周波数(KHz) 図一23 貫通ひび割れを伝播した弾性波の周波数特性 距離および伝播経路中のひび割れの存在によって減衰 し,ひび割れの存在による減衰もひび割れ形態(曲げ ひび割れ,貫通ひび割れ,ひび割れ幅)によってその 程度は異なる。従って,この振幅の減衰に着目して, RC床版のひび割れの有無を調べることが可能である と考えられる。減衰の尺度としては,得られた波の最 大振幅(最大加速度)をその波の代表値と考え,最大振 幅の値を用いるのが簡便であると考える。また,最大 振幅の減衰に着目したひび割れ検査は,比較的長い距 離での測定が可能であると思われる。これは,実験結 果から,伝播距離による最大振幅の減衰は伝播距離1 m以上においてほぼ一定となるので,測定距離をある 程度長く取ることにより,ひび割れによる減衰が明確 に現れてくると考えられるからである。さらに,最大 振幅の減衰によってひび割れの有無を調べる場合に は,伝播する波の鉛直方向の成分,水平方向成分のい ずれによっても評価できる。 ひび割れを有する鉄筋コンクリート版を伝播した波 のフーリェスペクトルは,ひび割れ形態に関する情報 を含んだものである。従って,伝播した波をスペクト ル解析することによりひび割れの形態を評価すること が可能である。今回の検討結果からは,波の鉛直成分 をスペクトル解析することが適当であり,水平成分の スペクトル解析ではひび割れ形態の評価は出来ない。 図一一24は,ひび割れを経由した波の鉛直成分をFFT 解析することにより求まる周波数成分の概念図であ る。この図に示したように,曲げひび割れの場合には 健全な鉄筋コンクリート版を伝播する弾性波の卓越す る周波数成分より低い周波数が卓越する。ひび割れ幅 の小さい貫通ひび割れでは,健全な鉄筋コンクリート 版を伝播する弾性波の卓越周波数成分が減少して,周 波数の低い成分が卓越し始め,貫通ひび割れの幅が大 きくなると周波数の低い成分の卓越が顕著となる。周 波数成分に着目してひび割れ形態を評価する場合に は,衝撃によって発生する波の周波数成分も重要であフ t リ エ 振 幅 フ 1 リ エ 振 幅 周波数 貫通ひびわれ (ひびわれ幅大)