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援助要請の認知行動的特徴,自尊感情と精神的健康の関連

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(1)Title. 援助要請の認知行動的特徴,自尊感情と精神的健康の関連. Author(s). 本田, 真大. Citation. 学校臨床心理学研究 : 北海道教育大学大学院教育学研究科学校臨床心理 学専攻研究紀要, 16: 3-10. Issue Date. 2019-03-26. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/10489. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 援助要請の認知行動的特徴,自尊感情と精神的健康の関連 本 田 真 大*. Relationship Among Cognitive-Behavioral Types of Help-Seeking, Self-Esteem and Well-Being. 要 約 本研究の目的は援助要請の認知行動的特徴と自尊感情,精神的健康の関連を検討することである。 236名の中学生を対象に質問紙調査を実施した。 クラスター分析の結果,援助要請の認知行動的特徴は「援 助要請無関心群」 , 「積極的援助要請群」 , 「援助要請回避群」,「葛藤的援助要請群」の4つのクラスター に分類された。これらの4群と自尊感情(低群,高群)を独立変数とした分散分析の結果,⑴積極的援 助要請群は援助要請回避群よりも学校適応感が高いこと,⑵自尊感情の低い群はストレス反応が高いこ と,⑶自尊感情の低い葛藤的援助要請群は積極的援助要請群よりもストレス反応が高いこと,があきら かになった。援助要請の認知行動的特徴の重要性が議論された。. 問題と目的. 3つに集約される(本田・水野,2017) 。援助要 請と精神的健康に関する研究は2つの観点から知. 援助要請とは「情動的または行動的問題を解決. 見が蓄積されている(本田・石隈・新井,2009) 。. する目的でメンタルヘルスサービスや他のフォー. 1つは過少性の問題として扱う研究であり,援助. マルまたはインフォーマルなサポート資源に援助. 要請に対する促進・抑制要因の中で精神的健康が. を求めること」と定義され(Srebnik, Cause, &. 扱われている。もう1つは非機能性の問題として. Baydar, 1996) ,援助要請に対する肯定的・否定. 扱う研究であり,援助要請が精神的健康に与える. 的 な 態 度(attitude) , 意 図(intention) ,意志. 影響を検討している。さらに近年では援助要請の. (willingness) ,行動(behavior)などの側面か. 促進のための介入研究が行われている。その中で,. ら研究されている(本田・新井・石隈,2011) 。. 抑うつ,不安,その他の心理的苦痛に関する専門. 援助要請研究からは自殺企図やいじめ被害など重. 家への援助要請を標的とした無作為化比較試験. 大な問題を抱え,精神的健康状態が悪化している. (RCT) の メ タ 分 析 か ら は(Gulliver, Griffiths,. 者が適切な援助資源に接近しやすくなるための有. Christensen, & Brewer, 2012),主に以下の3点. 益な知見が期待できる。. が明らかにされている。第1に,援助要請の態度. 援助要請研究において,援助要請の問題は過少. の変容には統制群と比較して弱いか中程度の効果. 性(ニーズがあっても自ら援助を求めないこと) ,. サイズが確認されたことである(Cohen’s d=.12. 過剰性(援助を求めすぎること) ,非機能性(援. ~ .53) 。第2に,行動の変容に唯一有効であった. 助を求めるが結果が好ましくないこと) ,という. 方法は認知行動療法に個人の症状のフィードバッ. *. Masahiro HONDA:北海道教育大学函館校 キーワード:援助要請,被援助志向性,自尊感情,学校適応感,ストレス反応,中学生. 3.

(3) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). クを組み合わせた介入のみであり,その効果サイ. 象者を査定し,対象者により適した介入技法を選. ズ は 比 較 的 小 さ か っ た こ と で あ る(Cohen’s d. 択する必要性なども検討できよう。そこで本研究. =.24)。第3に,態度の変容は必ずしも行動の変. では援助要請の認知行動的特徴と精神的健康の関. 容 に 帰 結 し な か っ た こ と で あ る。Gulliver, et. 連を検討する。. al.(2012)の研究には6つのRCTしか含まれて. 本研究では援助要請の認知的側面の変数として. おらず,また援助要請への介入を第1の目的とし. 我が国で多く検討されている被援助志向性(本田. ていない研究も含まれているという限界はあるも. 他,2011)を取り上げる。行動的側面の変数には. のの,援助要請への介入には認知行動療法に基づ. ソーシャルスキルトレーニングによって介入可能. くアプローチが有効である可能性が示唆される。. であると考えられる援助要請スキル(本田他,. しかし効果サイズが十分でないことから,介入の. 2010)を用いる。なお,これらの尺度は中学生を. 効果を高めるために更なる研究知見の蓄積と介入. 対象として作成されているため,本研究において. 法の改善が必要である。そこで本研究では今後の. も中学生を対象として研究を行うこととする。. 援助要請への介入に向けた基礎研究として,援助. 精神的健康には様々な観点があるが,本研究で. 要請の認知行動的特徴を検討する。. は中学生の精神的健康度の高さを測定するために. 援助要請の認知的側面について,国内で研究さ. 学校生活享受感(古市・玉木,1994) ,精神的不. れている援助要請態度尺度(大畠・久田,2010). 健康度の高さを測定するためにストレス反応(三. や被援助志向性尺度(田村・石隈,2006;本田他, 浦・坂野・上里,1998)を取り上げる。 2011)は主に認知的成分を測定する尺度として作. ところで援助要請研究では自尊感情との関連が. 成されており,それらの下位尺度は援助要請や被. 検討されることが多く(例えば,水野・石隈,. 援助に対する期待感と抵抗感の2側面に大きく分. 1999),また自尊感情はストレス反応など精神的. 類できると考えられている(本田,2015) 。期待. 健康の指標とも関連する(例えば,外山・桜井,. 感(肯定的認知)は主に援助要請の意図や行動と. 2003)。そこで本研究では自尊感情(山本・松井・. 正の関連が見られる一方で(e.g. 永井・新井,. 山成,1982)も分析に加え,援助要請の認知行動. 2007),抵抗感(否定的認知)は援助要請行動と. 的特徴と併せて精神的健康との関連を検討する。. の関連はほとんど見られず(Carlton & Deane,. 以上より本研究では,被援助志向性と援助要請. 2000; 永井・新井,2007) ,むしろバーンアウト. スキルから見た援助要請の認知行動的特徴,自尊. (田村・石隈,2006) ,ストレス反応(本田他,. 感情と精神的健康の関連を検討することを目的と. 2011)などの精神的不健康度の高さと正の関連が. する。. 得られている。援助要請の行動的側面には,過去 の一定期間の援助要請行動の有無や実行された量, 方 法 援助要請スキル(本田・新井・石隈,2010) ,援 助要請スタイル(永井,2013)そして援助要請行. 調査対象者と手続き:. 動を強く予測する援助要請意図が用いられる(e.g.. 関東地方の中学生236名に調査を実施した。分. 中岡・兒玉・栗田,2012) 。. 析には,記入漏れや記入ミスのなかった208名(1. これらの両側面の関連について,先行研究では. 年生男子47名,女子47名,2年生男子28名,女子. 援助要請の促進・抑制要因を解明する研究として, 27名,3年生男子34名,女子25名,平均年齢13.56 援助要請の行動的側面の規定因に認知的側面の変. ±1.02歳)のデータを用いた。. 数を位置づけて検討している(e.g. 永井・新井,. 調査方法:. 2007)。しかし,援助要請が精神的健康に与える. 調査は個別記入式の質問紙により学級単位で実. 影響を検討した研究の中で,援助要請の認知的側. 施された。学級担任の指示により一斉に回答・回. 面と行動的側面の組み合わせを考慮した研究は少. 収が行われた。. ない。援助要請の認知行動的特徴によって精神的. 調査内容:. 健康に違いがあるとすれば,その観点から介入対. ⑴ 援助要請スキル:援助要請スキル尺度(本田 4.

(4) 援助要請の認知行動的特徴,自尊感情と精神的健康の関連. 他,2010)の語尾を修正し,過去1ヶ月間の援. 5)であった。もう1つはストレス反応尺度(三. 助要請スキルの遂行の頻度を尋ねた。例えば元. 浦他,1998)であり,20項目4件法(全くちが. の尺度では「自分の気持ちを身振り,手振りで. う:1―その通りだ:4)であった。. 表現することができる」という項目を, 「自分. 結 果. の気持ちを身振り,手振りで表現する」などに 修正した。17項目から構成され,4件法(全然 しなかった:1―たくさんした:4)で回答を. 記述統計量,信頼性係数と単相関係数. 求めた。. 各尺度の平均値,標準偏差,信頼性係数と単相. ⑵ 被援助志向性:友人に対する被援助志向性尺. 関係数の値を算出した(Table 1)。いずれの下位. 度(本田他,2011)の項目を修正し,友人に特. 尺度も十分な内的整合性を示した。また,援助要. 定しない形で尋ねた。具体的には, 「友人は,. 請の認知と行動の関連としては,援助要請スキル. 自分の抱えている問題を真剣に考えてはくれな. と被援助に対する期待感の間に中程度の正の単相. いだろう」という項目を「相談相手は,自分の. 関係数が見られたのみであった。また,援助要請. 抱えている問題を真剣に考えてはくれないだろ. スキルと被援助に対する期待感は学校生活享受感. う」と修正した。 「被援助に対する期待感」 (6. と正の関連を示し,被援助に対する抵抗感は自尊. 項目),「被援助に対する抵抗感(7項目) 」の. 感情,学校生活享受感と負,ストレス反応と正の. 下位尺度から構成される合計13項目であり,4. 関連を示した。自尊感情は学校生活享受感と正,. 件法(あてはまらない:1―あてはまる:4). ストレス反応と負の関連が得られた。さらに,学. であった。なお,先行研究(本田他,2011)で. 校生活享受感とストレス反応の間には負の関連が. は抵抗感(否定的認知)に関する下位尺度の項. 見られた。. 目をすべて逆転させて「被援助に対する懸念や. クラスター分析の結果. 抵抗感の低さ」という下位尺度名にしているが, 援助要請の認知行動的要因の組み合わせを検討 本研究では得点の高さが抵抗感(否定的認知). するために援助要請スキル尺度得点,被援助に対. の傾向の強さを示すように,項目を逆転させず. する期待感尺度得点,被援助に対する抵抗感尺度. に用いた。. 得点をそれぞれ標準得点に換算し,Ward法によ. ⑶ 自尊感情:自尊感情尺度(山本他,1982)を. るクラスター分析を行った。3-6のクラスターを. 用いた。10項目5件法(あてはまらない:1―. 設定して分析を行い,人数の偏りと解釈可能性を. あてはまる:5)で回答を求めた。. 総合的に考慮した結果,人数の偏りはあるものの. ⑷ 精神的健康:精神的健康の指標として2つの. 4クラスターが妥当であると判断した(Figure 1)。. 尺度を用いた。1つは学校生活享受感尺度(古. そこで,それらのクラスター間の尺度得点の差を. 市・玉木,1994)であり,10項目5件法(ぜん. 検討するために一要因分散分析を行った。その結. ぜんあてはまらない:1―よくあてはまる:. 果,クラスター1とクラスター3の間に肯定的態. Table 1 各尺度得点の記述統計量,信頼性係数,単相関係数(N=208) 得点 範囲. M. SD. α. 1 援助要請スキル. 1-4. 2.57. (.75). .95. 2 被援助に対する期待感. 1-4. 2.89. (.76). .90. 3 被援助に対する抵抗感. 1-4. 2.18. (.77). .89. 4 自尊感情. 1-5. 2.96. (.62). .70. 5 学校生活享受感. 1-5. 3.50. (.95). .91. 6 ストレス反応. 1-4. 1.90. (.77). .95. 尺 度. 1. 2 .50**. 3. 4. 5. 6. .15*. .10. .23**. .01. .13. .02. .23**. .07. -.31**. -.25**. .27**. .35**. -.55** -.37**. **p<.01,*p<.05.. 5.

(5) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). 度得点の差が見られなかった以外は,すべてのク. 行った(Table 2)。その結果,学校生活享受感に. ラスター間で得点の差が確認された。. つ い て, ク ラ ス タ ー の 主 効 果 が 有 意 で あ っ た. クラスター1はいずれの得点も低く,援助要請. (F(3,204)=9.48, p<.01)。多重比較の結果,積極. に対する期待感も抵抗感も乏しく遂行も少ないこ. 的援助要請群は援助要請回避群よりも学校生活享. とから「援助要請無関心群」と命名された。クラ. 受感得点が高いことが明らかになった。ストレス. スター2は援助要請スキルと期待感がやや高く,. 反 応 に つ い て, 自 尊 感 情 の 主 効 果(F(1,206)=. 抵抗感がやや低いことから「積極的援助要請群」. 55.48, p<.01)と交互作用(F(3,204)=2.92, p<.05). と命名された。クラスター3は援助要請スキルが. が有意であった。単純主効果の検定の結果,自尊. やや低く,期待感が低く,抵抗感がやや高いこと. 感情低群は自尊感情高群よりもストレス反応得点. から「援助要請回避群」 と命名された。クラスター. が高いこと,及び自尊感情低群では,葛藤的援助. 4はすべての得点が最も高かった。つまり,援助. 要請群は積極的援助要請群よりもストレス反応得. 要請に対する期待感と抵抗感の両方が高く,かつ. 点が高いことが示された。. 援助要請行動を遂行することから「葛藤的援助要. 考 察. 請群」と命名された。 認知行動的特徴,自尊感情と精神的健康の関連. 本研究の目的は援助要請の行動的側面として援. 自尊感情高群に分類した。学校生活享受感とスト. 助要請スキル,認知的側面として被援助志向性を. レス反応を従属変数とし,クラスター分析で得ら. 取り上げ,それらの組み合わせによる認知行動的. れた群と自尊感情を要因とする二要因分散分析を. 特徴及び自尊感情と精神的健康との関連を検討す. 各尺度の標準得点. 自尊感情得点の平均値によって自尊感情低群,. 2.00 1.50 1.00 .50 .00 -.50 -1.00 -1.50 -2.00. 援助要請スキ ル 被援助に対する 期待感 被援助に対する 抵抗感. クラスター1 クラスター2 クラスター3 クラスター4. Figure 1 援助要請スキル尺度,被援助志向性尺度を用いたクラスター分析 Table 2 クラスターと自尊感情を要因とした分散分析 クラスター 1.援助要請 無関心群 自尊感情. 学校生活 享受感 ストレス 反応. 2.積極的 援助要請群 自尊感情. 低群. 高群. 低群. 高群. (n=7). (n=12). (n=38). (n=65). 3.援助要請 回避群 自尊感情 低群. 4.葛藤的 援助要請群. 主効果: クラスター. 主効果: 自尊感情. 主効果: 交互作用. F値. F値. F値. 2.43. 2.08. 自尊感情. 高群. (n=30) (n=38). 低群. 高群. (n=11). (n=7). 2.87. 3.68. 3.61. 3.93. 2.81. 3.28. 3.63. 3.06. (1.32). (.88). (.70). (.79). (1.04). (.93). (.72). (1.09). 2.39. 1.45. 2.09. 1.60. 2.44. 1.61. 2.95. 1.54. (1.11). (.49). (.76). (.57). (.75). (.55). (.67). (.54). 9.48**. 2>3** 2.35. 55.48**. 2.92*. 自尊感情低群:4>2**,自尊感情低群>高群** **p<.01,*p<.05.. 6.

(6) 援助要請の認知行動的特徴,自尊感情と精神的健康の関連. ることであった。. が示唆された。これは野崎(2003)の学業的援助. 援助要請の認知行動的特徴と精神的健康. 要請の中には見られなかったタイプである。. 単相関係数を算出した結果,援助要請スキルと. 次に,クラスター分析によって得られた援助要. 肯定的態度の間には中程度の関連が見られたが,. 請の4類型と自尊感情を要因とした分散分析を. 否定的認知との間には関連が見られなかった。援. 行った結果,以下の3点が明らかになった。. 助要請に対する肯定的認知は援助要請行動と関連. 第1に,積極的援助要請群は援助要請回避群よ. し,否定的認知がほとんど関連しないという知見. りも学校生活享受感が高かった。被援助に対する. はいくつかの研究で確認されている(例えば,. 期待感は学校生活享受感との間に正の関連を示し. Carlton & Deane, 2000; 永井・新井,2007) 。本. (本田他,2011) ,積極的援助要請群は期待感が. 研究の結果はこれらの先行研究と一致していると. 高いために学校生活享受感が高かったと考えられ. 言えよう。. る。しかし,期待感のみを見れば葛藤的援助要請. 先行研究では援助要請の認知的側面と行動的側. 群も高いものの有意な関連は見られなかった。こ. 面の間の直接的な関連を検討する研究が多く(例. のことには葛藤的援助要請群に特徴的な否定的認. えば,永井・新井,2007) ,両方の要因を組み合. 知(被援助に対する抵抗感)の影響が推察される。. わせて検討した研究は少なかった。そこで本研究. また,積極的援助要請群は学校生活享受感が高い. では認知行動的特徴を類型化し,精神的健康への. ことによって被援助に対する期待感を有し,援助. 影響を検討した。. 要請スキルの遂行が促進された可能性もある。先. クラスター分析によって援助要請の認知行動的. 行研究においても援助要請と精神的健康の関連は. 特徴を検討した結果,本研究の対象者は4つのク. 因果関係が双方向から検討されており,これらは. ラスターに分類された。援助要請の特徴に関する. 循環的な関係にあるととらえることができよう。. 研究として,学業的援助要請の類型に適応的要請, 第2に,自尊感情低群は自尊感情高群よりもス 依存的要請,要請回避という3つが挙げられてい. トレス反応が高かった。自尊感情とストレス反応. る(野崎,2003) 。これらの類型は学業上の課題. の負の関連は外山・桜井(1998)などでも示され. に直面してから援助を要請するまでの姿勢による. ている。さらに,自尊感情の低さは自身の援助要. 分類であり,本研究では援助要請の認知と行動に. 請行動の結果を否定的に評価する傾向と関連し. よる分類を試みたため単純に比較はできないもの. (本田・石隈,2008),援助要請行動の結果を否. の,援助要請無関心群と援助要請回避群はどちら. 定的に評価することでストレス反応が高まる可能. も援助要請行動の遂行が少ないという点で共通し. 性が示唆されている(本田・新井,2008)。つまり,. ており,野崎(2003)の要請回避と同様であると. 自尊感情が低いことは援助要請に対する傷つきや. 考えられる。本研究においては援助要請行動の遂. すさを意味すると考えられる。そのため,自尊感. 行の少ない者の中に,援助要請について否定的に. 情とストレス反応には負の関連が見られたと推察. 認知する特徴を併せ持つ者と,肯定的にも否定的. される。. にも認知せず無関心であるような者の両者が存在. 第3に,自尊感情低群の中では,葛藤的援助要. する可能性が示唆された。積極的援助要請群は援. 請群は積極的援助要請群よりもストレス反応が高. 助要請に対する期待感が高く援助要請行動を多く. かった。これらの群は被援助に対する期待感が高. 行うという特徴があり,野崎(2003)の適応的要. く援助要請スキルの遂行が多いという共通した特. 請,依存的要請と重複すると思われる。今後,援. 徴がある一方で,葛藤的援助要請群は援助要請に. 助要請行動の機能をより詳細に検討するためには, 対する抵抗感が高いという相違がある。このよう 野崎(2003)のように自立的・適応的か依存的で. な両群の特徴を踏まえると,本研究の結果は以下. あるかという観点も含めた分類が有効かもしれな. の2点から考察できる。まず,自尊感情の低さと. い。さらに,本研究では援助要請に対する期待感. 援助要請に対する抵抗感が組み合わされることで. と抵抗感の両方が高く,認知的な葛藤を有しなが. ストレス反応が高まりやすい可能性である。そし. ら援助要請を行うという葛藤的援助要請群の存在. て,葛藤的援助要請群は援助要請スキルの遂行が 7.

(7) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). 多いものの,自尊感情の低さから援助要請の結果. 助要請スキルを援助要請の認知行動的特徴として. を否定的にとらえやすく(本田他,2011) ,援助. 捉えたが,今後は援助要請のプロセスの中で両変. 要請スキルの遂行によってかえってストレス反応. 数をとらえた研究を行うことも有益であろう。. を高めてしまっている可能性がある。したがって,. 引用文献. 援助要請スキルが精神的健康の向上という点で上 手く機能しない状態にあるのが葛藤的援助要請群 であると思われる。しかし,機能しないにも関わ. Carlton, P.A., & Deane, F.P (2000). Impact of. らず援助要請スキルの遂行が多いことの背景には,. attitudes and suicidal ideation on adolescents’. 切迫したストレッサーや問題状況があるなど環境. intentions to seek professional psychological. 要因の影響が予想される。本研究では援助要請の. help. Journal of Adolescence, 23, 35-45.. 認知的要因と行動的要因のみを取り上げて検討し. 古市祐一・玉木弘之(1994).学校生活の楽しさ. たが,今後はこれまでの援助要請研究で多く取り. とその規定要因 岡山大学研究収録,96,105-. 上げられている個人の悩みや問題状況の要因を含. 113.. めた検討も必要であろう。. Gulliver, A., Griffiths, K.M., Christensen,H., &. 以上より,本研究では援助要請の認知行動的特. Brewer, J.L. (2012). A systematic review of. 徴と自尊感情に注目することで個人の精神的健康. help-seeking interventions for depression,. の相違を一部明らかにすることができた。本研究. anxiety and general psychological distress.. の結果より,個人の援助要請の特徴を認知行動的. BMC Psychiatry, 12: 81.. 要因からとらえることで援助要請に対する介入す. 本田真大(2018).援助要請の最適性と機能性-「相. る際には援助要請スキルを高め,援助要請行動を. 談すること」の困難さに関する研究と実践-日. 促進することに加えて,対象者の自尊感情と援助. 本学校心理士会年報,10,33-41.. 要請に対する認知(特に抵抗感)の程度を査定し, 本田真大・新井邦二郎(2008).中学生の悩みの それらに働きかけることが精神的健康の向上によ. 経験,援助要請行動,援助に対する評価(援助. り有効であると言える。したがって,援助要請へ. 評価)が学校適応に与える影響 学校心理学研. の認知的介入方法として,特に抵抗感を低減する. 究,8,49-58.. ような介入方法を開発することが求められよう。. 本田真大・新井邦二郎・石隈利紀(2010) .援助. 本研究の限界と今後の課題. 要請スキル尺度の作成 学校心理学研究,10,. 第1に,クラスター分析によって得られた類型. 33-40.. の中には人数が少ないものが含まれていた。クラ. 本田真大・新井邦二郎・石隈利紀(2011) .中学. スター分析の結果は対象者に依存するため,他の. 生の友人,教師,家族に対する被援助志向性尺. 対象者にも同様の分析を行い,援助要請の認知行. 度の作成 カウンセリング研究,44,254-263.. 動的特徴の妥当な類型を検討していく必要がある。 本田真大・新井邦二郎・石隈利紀(2015) .援助 第2に,本研究は一時点の調査であるため,援助. 要請行動から適応感に至るプロセスモデルの構. 要請の認知行動的特徴と精神的健康の因果関係を. 築 カウンセリング研究,48,65-74.. 明らかにするためには縦断的なデータによる分析. 本田真大・石隈利紀(2008).中学生の援助に対. が不可欠である。第3に,近年の援助要請研究で. する評価尺度(援助評価尺度)の作成 学校心. は,悩みを抱えてから援助を求め,さらにその結. 理学研究,8,29-39.. 果どうなるかを見通したプロセスの中で研究され. 本田真大・石隈利紀・新井邦二郎(2009) .中学. るようになってきた(例えば,本田・新井・石隈,. 生の悩みの経験と援助要請行動が対人関係適応. 2015;本田,2018)。このような研究知見の蓄積. 感に与える影響 カウンセリング研究,42,. は援助要請に焦点を当てたカウンセリング(本. 176-184.. 田・水野,2017)として実際の臨床場面への応用. 本田真大・水野治久(2017).援助要請に焦点を. が期待されている。本研究では被援助志向性と援. 当てたカウンセリングに関する理論的検討 カ 8.

(8) 援助要請の認知行動的特徴,自尊感情と精神的健康の関連. ウンセリング研究,50,23-31. 三浦正江・坂野雄二・上里一郎(1998) .中学生 がストレッサーに対して行うコーピングパター ンとストレス反応の関連 ヒューマンサイエン スリサーチ,7,177-189. 水野治久・石隈利紀(1999) .被援助志向性,被 援助行動に関する研究の動向 心理学研究,47, 530-539. 永井 智(2013). 援 助要請スタイル尺度の作成 教育心理学研究,61,44-55. 永井智・新井邦二郎(2007) .利益とコストの予 期が中学生における友人への相談行動に与える 影響の検討 教育心理学研究,55,197-207. 中岡千幸・兒玉憲一・栗田智未(2012) .カウン セラーのビデオ映像が学生の援助要請意識に及 ぼす影響の実験的検討 学生相談研究,32, 219-230. 野崎秀正(2003).生徒の達成目標志向性とコン ピテンスの認知が学業的援助要請に及ぼす影響 -抑制態度を媒介としたプロセスの検証-教育 心理学研究,51,141-153. Srebnik, D., Cause, A.M. & Baydar, N. (1996). Help-seeking pathways for children and adolescents. Journal of Emotional and Behavioral Disorders, 4, 210-220. 田村修一・石隈利紀(2006) .中学校教師の被援 助志向性に関する研究-状態・特性被援助志向 性尺度の作成および信頼性と妥当性の検討-教 育心理学研究,54,75-89. 外山美樹・桜井茂男(1998) .大学における自尊 感情,日常的出来事,およびストレス反応の関 係 筑波大学心理学研究,20,125-133. 山本真理子・松井豊・山成由紀子(1982) .認知 された自己の諸側面の構造 教育心理学研究, 30,64-68.. 9.

(9) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). SUMMARY Relationship Among Cognitive-Behavioral Types of Help-Seeking, Self-Esteem and Well-Being Masahiro HONDA (Department of Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education) This study investigates the relationship between the cognitive-behavioral patterns of helpseeking and well-being. Participants were 236 junior high school students. The participants were asked to complete a questionnaire. The results of cluster analysis showed that the participants could be grouped into four clusters, named as follows: Noninvolvement of Help-Seeking, Active HelpSeeking, Avoidance of Help-Seeking, and Conflictive Help-Seeking. Results of analysis of variation showed that (a) participants of the Active Help-Seeking type had higher enjoyments of school scores than the Avoidance of Help-Seeking type, (b) participants of lower self-esteem had higher stress responses scores than participants of higher self-esteem, (c) participants of the Conflictive HelpSeeking type with lower self-esteem had higher stress responses scores than the Active Help-Seeing. The importance of cognitive-behavioral approaches to help-seeking was discussed.. Keywords : help-seeking, self-esteem, school adjustment, stress responses, junior high school students. 10.

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