Key words: three-dimensional bite force, value of bite force, direction of bite force, maxillary clutch, mandibular clutch

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全文

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補 綴 誌,J Jpn Prosthodont Soc, 35: 366•`380, 1991.

原 著 論 文

顎 顔 面 形 態 が 咬 合 力 と咀 嚼 筋 筋 放 電 活 動 に

及 ぼ す 影 響 に つ い て

II.咬 合力三次元測定装置

飯沼

利光 

祇園白信仁 

森谷

良彦 

竹内

康司

竹内

英明 

塚越

直行 

織井

康亙 

長谷川

加納

昭彦 

斉藤

嘉久 

山本

昭一 

山本

克之

The Influence

of Craniofacial

Form

on Bite Force

and EMG Activity

of the Masticatory

MusclesII

. The Three-dimensional

Bite Force Measurement

Sytem

Toshimitsu Iinuma, Nobuhito Gionhaku, Yoshihiko Moriya,

Koji Takeuchi, Hideaki Takeuchi, Naoyuki Tsukakoshi,

Yasunobu Orii, Kan Hasegawa, Akihiko Kanou,

Yoshihisa Saitou, Shouichi Yamamoto and Katsuyuki Yamamoto

Abstract:

The purpose of this study was to explicate the mechanism of jaw movement and its

control system, using bite force and EMG of the masticate

muscles with a view to examine the

result as an effective means of treatment.

A new system of taking three-dimensional

bite force

was developed, which can take the value and direction of bite force.

The description and

evalua-tion of the new system and the result of the load test are presented.

The results were as follows:

1. The vertical and lateral direction (60 degree on occlusal plane) load tests revealed that

the precision of the three-dimensional

bite force measurement system was fully established.

2. When using this system, it is necessary to use the jig for fixing the maxillary

and

mandibular clutches.

3. Using an oscilloscope as the bite force feedback device was useful to instruct the level of

bite force.

4.

This system is very effective to measure the value and direction of bite force.

日本大学 歯学部歯科補綴学 教室総義歯補綴学講座(主 任:森 谷良彦教授)

Department of Complete Denture Prosthodontics, Nihon

University School of Dentistry (Chief: Prof. Yoshihiko Moriya)

平成2年12月1日 受 付

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咬合力三次元測定装置 157―367 Key words: three-dimensional bite force, value of bite force, direction of bite force, maxillary

clutch, mandibular clutch

I.緒 言 顎 口腔 領 域 にお け る咀 嚼,嚥 下 お よび 咬合 な どの機 能 活 動 発 現時 に お いて お のお の の咀 嚼 筋 は,各 筋 ご とに そ の役割 を分 担 して お り,機 能 遂 行 時 には 目的 とす る機 能 活 動 に対 し最 良 の結 果 が 得 られ る よ うに役割 を演 じてい る.咀 嚼 筋 の機 能 を解 析 す る一 方 法 と して,咀 嚼 筋 機 能 発 現 によ り生 じ る エ ネル ギ ー を力,す な わ ち 咬合 力 ・咀 嚼 力 と して 捉 えた 顎 口腔 領 域 にお け る機 能 活 動 に関 す る 研 究 は,古 くか ら数 多 く行 われ て きた. 咬 合力 の大 き さは,解 剖 学 的,生 理 学的 に咀嚼 筋 筋線 維 の数 お よび 筋線 維 の 走 行 方 向 の2つ の要 素 に よ り影響 を受 け る とい われ て い る1∼4).した が って,咬 合 力 の 測 定 によ る顎 口腔 領 域 にお け る機 能 を解 析 す る場 合 には, これ らの要 素 に対 して 十分 な注 意 を払 うこ とが必 要 で あ る. 咬合 力 と咀 嚼筋 筋放 電 活 動 との関 係 にお い て は,咬 合 力 の大 き さ に よ り筋 放 電 活 動 様 相,あ るい は 活 動 す る筋 に相 違 が生 じる5,6).さ らに,筋 放 電 活 動 様 相 と活 動 す る 筋 の相 違 は,咬 合 力 の作 用 方 向 に よ って も影 響 を 受 け る7∼12).しか し,今 日まで の咬 合 力,あ る い は咬 合 力 と 咀嚼 筋 筋放 電 活 動 との関 係 につ い て の報 告 は,咬 合 力 の もつ特 性 の一 面 にす ぎな い 大 き さを 二 次元 的 に計 測 し, 論 じた もの が ほ とん どで あ り,咬 合 力 をベ ク トル と して 計 測 し,大 き さ にそ の 作 用 方 向 を 加 味 し 検 討 し た 研 究13,14)はわ ず か で,十 分 に検 索 され て い な い. そ こ で,咀 嚼 筋 の筋 放 電 活 動 様 相 と咬 合 力 の 発現 様 式 の相 関 を解 析 す る に際 して は,顎 口腔 領 域 にお け る機 能 活動 発 現 の場 で あ る顎 顔 面 形 態 の 分 析 と,同 時 に咬 合 力 の大 き さ と作 用 方 向 の三 次 元 的 分 析 とが必 要 と考 え る. 今 回 は,著 者 らが 自家 開 発 した咬 合 力 三次 元 測 定 装 置 の構造,出 力 荷 重 試 験 お よ び そ の測 定 例 につ い て 検 討 し た. II.材 料 お よ び 方 法 1.咬 合 力 三 次 元 測定 装 置 1)圧 力 セ ンサ 咬合 力 測定 には,直 径6.0mm,厚 さ2.0mmのdia-phragm型 圧 力 セ ンサ(共 和電 業 社,PS-100KA)を 使 用 した.し か し,圧 力 セ ンサ は 受 圧 面全 面 で 負荷 を感 受 す る構 造 のた め,受 圧 面 に直 径5.5mm,厚 さ0.5mm の18∼8ス テ ン レス製 プ レー トを貼 付 し,点 状 に プ レー トに加 わ った 負荷 が受 圧 面 ほぼ全 面 に て感 受 され る よ う に した,ま た プ レー トの貼付 が,圧 力 セ ンサ の 出 力感 度 に与 える影 響 につ い て,定 荷重 万能 試 験 機(セ イ キ社, A-001)を 用 い 検 定 し,較 正 値 を求 め た.そ の結 果,70.0 kgfま で は危 険 率1%に て荷 重 値 と出 力 値 との 関係 は一 次 回 帰 にあ り(図1),本 実 験 の 目的 を満 た す もの と判 断 した. 2)構 造 咬合 力 三 次 元 測 定装 置 は,図2に 示 す ご と く,3個 の 圧 力 セ ンサ 受 圧 面 が正 三 角 錐 を構 築 す る よ うに位 置 し, 口腔 内保 持 の アー ム を備 え た上 顎 用受 圧 部 ク ラ ッチ(以 下,上 顎 ク ラ ッチ と略 す)と,圧 力 セ ンサ の 中心 に垂 直 荷 重 として 咬 合力 が入 力 す るよ う直径6.0mmの 金 属製 球 体 を荷 重 部 と して設 置 し,口 腔 内保 持 ア ーム を備 え た 下 顎 用 荷 重 部 ク ラ ッチ(以 下,下 顎 ク ラ ッチ と略 す)か ら構 成 され て い る.図3に3個 の圧 力 セ ンサ の位 置関 係 を示 した ご と く,上 顎 ク ラ ッチ にお け る3個 の圧 力 セ ン サ が構 築 す る正 三 角 錐 の 大 きさ は,口 腔 内 に設 定 す る た め 可能 な限 り小 と し,内 径 にて 一 辺 の 大 き さ10.4mm と した.な お 歯 科用Co-Cr合 金 にて 調製 し た ク ラ ッチ は,万 能 試験 機(ミ ネベ ア社,TCM-5000)に よ り約70 kgf荷 重 ま で変 形 を起 こ さな い こ とを確 認 した. 各 圧 力 セ ンサ に感 受 され た 荷重 は,出 力 電圧 と して動 図1圧 カ セ ンサ#1(PS-100KA)の 較 正 直 線

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158―368 補 綴 誌35巻2号 (1991)

図2咬 合 力三次元測定装置の模式図

図3上 顎用受圧部 クラ ッチにお ける3個 の圧力 センサ の 位置関係

ひ ず み 測定 機(共 和 電 業 社,DPM-611 B)に て 増 幅 され, A/Dコ ンバ ー タ(カ ノー プ ス電 子 社,ADX-98 E)を 介

しパ ー ソナ ル コン ピ ュ ー タ(NEC社,PC-9801XL)に 入 力 され,記 録 され る。 3)咬 合 力 の 三次 元 換 算 方 法 咬 合 力 三 次 元測 定 装 置 にお い て,咬 合 力 は 下 顎 ク ラ ッ チ に設 定 した ボ ー ル ベ ア リン グの 中心 点 か ら,上 顎 ク ラ ッチ に設 定 した 各圧 力 セ ン サ の 中心 点 に垂 直 ベ ク トル と して伝 達 され る.そ の結 果,図4に 示 した換 算 法 と換 算 式 によ って,お のお の の圧 力 セ ンサ 出 力値(F'n)か ら, そ の 水 平成 分(Hn)お よび 垂 直 成 分(Vn)を 求 め た.そ の後,3個 の圧 力 セ ンサ 出 力値 の水 平 成 分(H1∼H3) の合 力(H)お よび3個 の圧 力 セ ンサ 出 力値 の垂 直 成 分 (V1∼V3)の 合 力(V)か ら出力 ベ ク トル(F)の 大 き さ を求 めた.ま た,こ の水 平成 分(H1∼H3)の 合 力(H) か ら出力 ベ ク トル(F)の 水 平展 開角(φ)を,水 平成 分 の合 力(H)お よび 垂 直 成 分(V1∼V3)の 合 力(V)か ら出力 ベ ク トル(F)の 垂 直展 開角(θ)を 求 めた. 4)出 力 荷 重 試験 出力 荷重 試 験 は,図5-bに 示 した ご と く,較 正 終 了 後 の3個 の圧 力 セ ンサ を設 定 した 上顎 ク ラ ッチ を角 度 可 変 a.ベ ク トル 成 分 分 解 図 b.ベ ク トル成 分 換 算 方 法(図3参 照) c.換 算 式 図4換 算方法および式 台座 に固 定 し,咬 合 力 三 次 元 測 定 装 置 の 出力 荷重 試 験 を 行 い 検討 した. 上顎 ク ラ ッチ は,図3お よび4に 示 した ご と く,3個 の圧 力 セ ンサ 中 心 点Pを 原 点 と した 平 面 をX-Y平 面 と し,ま たPを 通 るX-Y平 面 へ の垂 線 をZ軸 と規 定 し, 圧 力 セ ンサ#1の 中心 点 がX軸 上 に あ る よ うに角 度 可変 台 座 に固 定 した.こ の と き上顎 クラ ッチ の ア ーム 下 面 と X-Y平 面 が 平行 とな る よ う上 顎 ク ラ ッチ を調 整 した.下 顎 ク ラ ッチは,そ の ア ー ム 下 面 と下顎 ク ラ ッチ の ア ーム 下 面 とが平 行 に な るよ う に上 下顎 ク ラ ッチ の相 対 的 位 置 関 係 を規 定 し,下 顎 ク ラ ッチ 荷重 部 中心 に定荷 重 万 能 試 験 機(セ イ キ社,A-001)の 荷重 部 先 端 を 固定 した(図

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咬合力三次元 測定装置 159―369 a.荷 重 方 向(A∼E) b.荷 重 方 向Aか らの荷 重 試 験 図5荷 重方向お よび荷重試験 5-b). (1)垂 直 荷 重 試 験 荷 重 方 向 は,X-Y平 面 お よび 上 顎 ク ラ ッチ の底 面 に対 す る垂 線方 向,す な わ ちZ軸 と した.こ の 荷 重 方 向 を X-Y平 面 に対 す る垂 直 展 開角 θ=90°(垂 直 方 向,図5-a のA)と した.荷 重 量 は3.0kgfか ら順 次7.0, 14.0, 21.0, 42.0kgfの5段 階 の静 荷 重 と し,測 定 は各8回 行 った. (2)測 方 荷 重 試 験 荷 重 方 向 はX-Y平 面 に対 して 垂 直 展 開 角60°(θ= 60°)と し,X軸 を基 準 として90° 単位 で 時計 回 りに φ= 0°,φ=90°,φ=180° お よび φ=270° と角 度 可 変 台 座 を 回転 させ(図5-a),上 顎 ク ラ ッチ に4方 向か ら行 った. 荷 重 量 と測 定 回 数 は,垂 直 荷 重試 験 と同様 に行 った. (3)分 析 垂 直 お よび 側 方 荷 重 試 験 の分 析 は 図4-Cに 示 した換 算 式 を用 い た.荷 重 量 に対 す る 出 力 ベ ク トル の大 き さ に 図6荷 重 ベ ク トル と出 力ベ ク トル の角 度 差 つ い て は,平 均値,標 準 偏 差,変 動 係 数 お よ びt-検 定 を 行 い,荷 重 ベ ク トル と出力 ベ ク トル の 方 向 の相 違 につ い て は,両 ベ ク トル の 角 度差 を求 め て そ の平 均 値 と標 準 偏 差 にて検 討 を行 った(図6). 出力 ベ ク トル の方 向 につ い て は,そ の垂 直 展 開 角(θ) お よび水 平展 開角(φ)の 平 均 値,標 準 偏差,変 動 係 数 お よびt-検 定 を行 った.統 計処 理 にお い て垂 直荷 重 試 験 の垂 直展 開角(θ)は,そ の水 平 展 開角(φ)が180° ≦φ< 360° の場 合 に90° を越 え る よ うに表示 した.側 方 荷 重 試 験 の水 平 展 開角(φ)の 変 動 係 数 は,360° を4分 割 し て 荷重 試 験 を行 った の で,各 荷 重 方 向 と も90° に対 す る 変 動 係数 を求 めた. 5)上 下 顎 ク ラ ッチ規 定 用 ジ グ 上下 顎 ク ラ ッチ の相 対 的 位 置 関 係 を測 定 時 に出 力 試験 と同一 の状 態 に保 持 し,常 に出 力試 験 時 と同一 な 測 定条 件 にて咬 合 力 三 次 元測 定装 置 を使 用 す る た め に,出 力 荷 重試 験 時 に上 下 顎 ク ラ ッチ の相 対的 位 置 関 係 を規 定 す る 上 下顎 ク ラ ッチ 規 定用 ジ グ(以 下,規 定 用 ジ グ と略 す) を荷重 万 能 試 験 機(図5-b)上 で 常温 重 合 レジ ン にて 調 製 した. 2,ク レ ンチ ング に よ る咬 合 力 三 次 元測 定 1)被 検 者 被 検 者 は,顎 口腔 領 域 に 自覚 的 お よび 他 覚 的 に異 常 を 認 め ない 健 常 機 能者 と し,上 下 顎 第1大 臼歯 の咬 合 関 係 がAngle I級 に相 当 し,上 下 顎 第2大 臼歯 ま で に欠 損 や 失 活 歯 の ない個 性 正 常 咬 合 者1名 と した.

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160―370 補 綴 誌35巻2号 (1991) 2)上 下 顎 ク ラ ッチ の 口腔 内付 着 (1)上 下顎 模 型 へ の設 定 上 下 顎 ク ラ ッチ の上 下 顎 模型 へ の設 定 は,フ ェイ スボ ウ にて 被 検者 の 上顎 模 型 を付着 し,中 心 位 チ ェ ッ クバ イ ト記 録 を用 い下 顎 模 型 を付 着 した 咬合 器 上 に て 行 っ た (図7-b). 上顎 ク ラ ッチ を 上顎 第1大 臼 歯 咬合 面 へ強 固 に嵌 合 さ せ,ク レンチ ン グ によ る ク ラ ッチ の移 動 お よび 脱 落 の 予 防 とな る ク ラ ッチ 固定 用 シー ネ(以 後,シ ー ネ と略 す) は,常 温 重 合 レジ ンを用 い,上 顎 模型 の第1大 臼歯 上 に て調 製 した. 上顎 ク ラ ッチ の 上顎 模 型 へ の 設 定 は,上 顎 ク ラ ッチ の 3個 の圧 力 セ ンサ 中心 点Pを 含 むX-Y平 面 が,セ フ ァ ロ写 真 にて 規 定 した咬 合 平 面(OP,図8)と 一 致 し,し か も中心 点Pが 両側 上 顎 第1大 臼 歯 の近 心 頬 側 窩 を結 ぶ 直線(Y軸)と 正 中線(X線)と の交 点 に一 致 す る位 置 (図7お よび8)と な る よ うに,マ ニ ピュ レー タ(ナ リシ ゲ社,MA-2S)上 にて 上 顎 模型 の シ ー ネ と常 温 重合 レジ ンを用 い て 連結 した(図9). 下顎 ク ラ ッチ の 下顎 模 型 へ の 設 定 は,出 力 荷 重 試験 時 と同一 条 件 とな る よ うに,上 顎模 型 上 の上 顎 ク ラ ッチ の 規 定 用 ジ グ に下顎 クラ ッチ を適 合 させ咬 合 器 上 で 行 っ た. な お,常 温 重 合 レジ ンを用 い た シ ー ネ の使 用 が ク レ ン チ ング に よ る出 力 ベ ク トル(以 下,咬 合 力 とす る)の 大 き さに与 え る影響 につ いて,予 備 実験 と して 模 型 上 で, 上 下顎 ク ラ ッチ の み にて 荷 重 試験 を行 った場 合 と,上 下 顎 クラ ッチ を常 温 重合 レジ ン に よる シ ー ネで 付 着 固 定 し た場 合 との荷 重 量 に対 す る出 力値 を求 め比 較 検 討 した. そ の結 果,両 者 間 に危 険率1%で 有 意差 を認 め な か った. (2)口 腔 内付 着 上 下顎 ク ラ ッチ の 口腔 内付 着 は,咬 合 器 の上 下 顎 模 型 上 と同一 条 件 とす る た め に,規 定 用 ジ グ にて 上 下顎 ク ラ ッチ を 固定 した状 態 で両 側 第1大 臼歯 に シ ー ネ を適 合 し 常 温重 合 レジ ンを用 い て付 着 した.そ して,上 下顎 ク ラ ッチ と上 下 顎 第1大 臼歯 が強 固 に結 合 してい る こ と を確 認 した後,こ の規 定用 ジ グ を撤 去 した. な お,上 下 顎 ク ラ ッチ付 着 に よる 上 下顎 第1大 臼 歯 部 にお け る開 口量 は約4mmで あ り,前 歯 部 切 端 間 にお い て は平 均7∼9mm程 度 で あ った. 3)ク レンチ ン グに よ る咬 合 力 測定 垂 直,前 方 お よ び側 方 方 向 ク レンチ ング に よ る最 大 咬 み しめ を行 わ せ,垂 直お よび 前 方 方 向 ク レン チ ン グで は 圧 力 セ ンサ#1,左 側 方方 向 ク レンチ ング で は#2お よび a.咬 合 面 b.咬 合 器上 での設定状態 図7咬 合力 三次 元測定装置 の歯列模型へ の設定 右 側 方 方 向 ク レンチ ン グで は#3に お け る最 大 出 力 電位 を 求 め た.そ して,そ れ らの最 大 出 力 電 位 を100%と し,咬 合 力 の大 き さを75∼100%(図10-1,以 下100% MCと す る),50∼75%(図10-2,以 下75%MCと す る),25∼50%(図10-3,以 下50%MCと す る)お よび 0∼25%(図10-4,以 下25%MCと す る)の4段 階 の範 囲 に わ け た.こ の4段 階 の範 囲 を咬 合 力 指 示 装 置(ken-wood社,CS-8010)の オ シ ロ ス コー プ上 に表 示 し,被 検 者 に対 す る各 方 向 ク レ ンチ ン グに よ る咬 合 力 の大 き さの 指 定範 囲 と し,各 方 向 ク レ ンチ ング を それ ぞれ3回 行 わ せ た(図10).そ の 際 に,ト リガ波 形 とク レン チ ン グの 出力 電 位 を表 示 す る こ とに よ って,被 検 者 に指 定 範 囲 と ク レン チ ン グ によ る咬 合 力 の大 き さ を視 覚 にて 確 認 させ

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咬合 力三次元測定装置 1 6 1―3 7 1

垂直成分表示

水平成分表示

図8咬 合力 の口腔内 における表示 法 た.な お,出 力 電 位 曲線 上 の 上 昇点(図11-M2)か ら維 持 に移 行 す る変 曲点(図11-M3)ま で の時 間 は,20ms 以 内 とな る よ う被 検 者 に指 示 を行 った. ク レ ンチ ン グ に よ る咬 合 力 三 次 元 測 定 には,被 検 者 に トリガ波 形 に従 っ て,1.5秒 間 の垂 直,前 方 お よび 左 右 側 方 方 向 ク レン チ ン グ をそ れ ぞ れ 行 わ せ た.咬 み しめ る 方 向 が 下顎 を垂 直 的 に上 方 向 へ 引 き あげ る ク レン チ ン グ を垂 直 方 向 ク レ ンチ ン グ(以 下,VCと した)と した. 咬 み しめ る方 向 が下 顎 を前 方 へ 押 しだ そ う と し,そ の際 に下 顎 の 前 方移 動 を伴 わ ない ク レン チ ン グを 前方 方 向 ク レンチ ン グ(以 下,PCと した)と した.前 方 方 向 ク レン チ ン グ と同様 に下顎 の移 動 を伴 わず,咬 み しめ る 方 向 を 左 側 あ るい は右 側 方 向 へ加 え る ク レン チ ン グ を左 側 方 方 向 ク レンチ ング(以 下,LCと した)あ るい は 右側 方 方 向 ク レンチ ン グ(以 下,RCと した)と した. 被 検者 には あ らか じめ各 方 向 ク レンチ ン グの練 習 を十 分 行 わ せ た 後,咬 合 力 指 示 装 置 のオ シ ロ ス コー プ上 の ト リガ波 形 と指 定範 囲 に従 って 各 方 向 ク レ ンチ ング を行 う よ うに指 示 した.そ の 際,疲 労 に留 意 して 各 方 向 ク レン チ ン グ ご と に十 分 な 間隔 をお い た. 4)ク レ ンチ ング に よ る咬 合 力 分 析 分 析 は,3個 の圧 力 セ ンサ の 出力 電 位 曲線 にお け る咬 合 力 発 現 開 始 時(図11-M1)か ら直 線 的 な 上 昇 を示 して い る上 昇 部 分 の200ms後(図11-M2,以 後 上 昇点 とす る)に お け る出 力 電位 と,咬 合 力 の大 き さが 一 定 に持 続 され て い る維 持 部 分 の 中 央200ms間(図11-T1,以 後維 持 部 とす る)の 出 力電 位 とに つ いて 行 った.そ して,上 昇 点(M2)と 維 持 部(T1)の 出力 電 位 を図4の 換 算 式 に 代 入 し換 算 を行 い,咬 合 力 の大 き さ(以 下,咬 合 力 値 と 図9マ ニ ュ ピ レー タ に よ る咬 合平 面 の 決 定 す る)と 咬 合 力 の 方 向 とにつ い て 分 析 を行 った.咬 合 力 値 はkgf単 位 で,咬 合 力 の 方 向 は垂 直展 開 角(θ)お よび 水平 展 開角(φ)に わ け表 示 を行 った.さ らに,各 方 向 ク レ ンチ ング にお い て 最 大咬 合 力 を発 現 した時 の上 昇 点 お よび維 持 部 の咬 合 力値 を100%と して換 算 し,相 対 的 な 咬 合 力値(以 下,相 対 咬合 力 値 とす る)を 求 めた. 各 方 向 ク レンチ ン グに よ る咬 合 力 値,相 対 咬 合 力 値, 垂 直 展 開角(θ)お よび 水 平展 開角(φ)に つい て 指 定 範 囲 にお け る平 均 値 お よ び標 準 偏 差 を 求 め,指 定 範 囲 間 に お け るt-検 定(α=0.05)を 行 った.ま た,各 方 向 ク レ ンチ ン グに よ る相 対 咬合 力 値 お よび 咬合 力 の方 向(θ お よび φ)に つ い て上 昇 点 と維 持 部 にお け るt-検 定(α= 0.05)を 行 っ た.な お,各 方 向 ク レンチ ング の咬 合 力 の 方 向(θ お よ び φ)の 表 示 法(図8)は 出 力 荷重 試 験 と同 様 とし,φ につ い て は 規 定 したX軸 に対 し左 側 を+,右 側 を-と して示 した(図3). III.成 績 1.咬 合 力三 次 元 測 定 装 置 の 出 力荷 重 試 験 1)垂 直 荷重 試 験(θ=90°) 出 カ ベ ク トル の大 き さ と荷 重量 との差 は(表1-a),平

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1 6 2―3 7 2 補 綴 誌35巻2号 (1 9 9 1) 図10咬 合力指示装置 均 値 で0.0∼0.5kgfで あ り,CVは0.5∼3.3%で あ っ た.そ れ らのt-検 定 の 結 果(α=0.05)で は,有 意 差 を 認 め な か っ た. 荷 重 ベ ク トル と 出 力 ベ ク トル との 角 度 差 は(表1-b), 平 均 値 で0.2∼1.3° で あ っ た. 出 力 ベ ク トル の垂 直 展 開 角(の と 荷 重 方 向(θ=90°) と の 差 は(表1-c),平 均 値 で0.0∼0.4° で あ り,CVは 0.2∼1.8%で あ っ た.そ れ ら のt-検 定 の 結 果(α=0.05) で は,有 意 差 を 認 め な か っ た.水 平 展 開 角(φ)に つ い て(表1-d),荷 重 量3.0∼14.0kgfに お い て 測 定 不 能 が 測 定 回 数24回 中12回 認 め られ,さ ら に測 定 値 は0.0∼ 352.4° と散 在 して い た. 2)側 方 荷 重 試 験(θ=60° で φ=0°,90°,180° お よ び270°) 各 荷 重 方 向 に お け る 出 力 ベ ク トル の 大 き さ と荷 重 量 と 図11 3個 の圧力セ ンサ出力電位 曲線上 での分析 の 差 は(表2),平 均 値 で0.0∼0.8kgfで あ り,CVは 0.7∼3.4%で あ っ た.そ れ ら のt-検 定 の 結 果(α=0.05) で は(表2),有 意 差 を 認 め な か っ た. 各 荷 重 方 向 に お け る 荷 重 ベ ク トル と 出 力 ベ ク トル と の 角 度 差 は(表3),平 均 値 で0.5∼1.8° で あ っ た. 各 荷 重 方 向 に お け る 出 力 ベ ク トル の 垂 直 展 開 角(θ)と 荷 重 方 向(θ=60°)と の 差 は(表4),平 均 値 で0.1∼ 0.8° で あ り,CVは0.3∼3.5%で あ っ た.そ れ ら のt-検 定 の 結 果(α=0.05)で は,有 意 差 を 認 め な か っ た. 各 荷 重 方 向 に お け る 出 力 ベ ク トル の 水 平 展 開 角(φ) と 荷 重 方 向(φ=0°,90°,180° お よ び270°)と の 差 は (表5),平 均 値 で0.0∼1.6° で あ り,CVは0.6∼3.1% で あ っ た.そ れ らのt-検 定 の 結 果(α=0.05)で は,有 意 差 を 認 め な か っ た. 2.ク レ ン チ ン グ に よ る 咬 合 力 三 次 元 測 定 VC,PC,LCお よびRCの 上 昇 点 と維 持 部 に お け る 咬 合 力 値 は(表6お よ び7),す べ て が 指 示 を 行 っ た 指 定 範 囲 内 に 測 定 され,各 方 向 ク レ ン チ ン グ に お け る 指 定 範 囲 間 のt-検 定 結 果(表8お よ び9,α=0.05)か ら,す べ て に 有 意 差 を 認 め た, 各 方 向 ク レ ン チ ン グ にお け る 指 定 範 囲 の 咬 合 力 の 垂 直 展 開 角(θ)の 平 均 値 は(表6お よ び7),VCの 上 昇 点 で 68.9∼71.4° お よ び 維 持 部 で69.8∼73.0°,PCの 上 昇 点 で53.2∼59.8° お よ び 維 持 部 で55.0∼62.0°,LCの 上 昇 点 で52.2∼55.6° お よ び 維 持 部 で53.9∼55.8°,な ら び にRCの 上 昇 点 で59.7∼68.3° お よ び 維 持 部 で58.9∼ 68.1° で あ っ た.ま た,各 方 向 ク レ ン チ ン グ に よ る 咬 合 力 の 方 向(θ)は 指 定 範 囲 間 のt-検 定 結 果(表8お よ び 9,α=0.05)か ら,VCお よ びLCで は 上 昇 点 と維 持 部 の す べ て に有 意 差 を 認 め な か っ た.PCで は 上 昇 点 の100%

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咬合力三次元測定装置 1 6 3―3 7 3 表1垂 直荷 重 試 験 結 果(θ=90°) a.出 力ベ ク トル の 大 き さ b.荷 重ベ ク トル と出 力ベ ク トルの角 度差 c.出 力ベ ク トルの垂 直展開角(θ) d.出 力 ベ ク トル の 水 平 展 開 角(φ) MCと75%MC,維 持 部 の100%MCと25%MCに, RCで は 上 昇 点 の100%MCと50%MC,75%MCと 50%MCを 除 く指 定 範 囲 間 に,維 持 部 の100%MCと 75%MC,75%MCと50%MCを 除 く 指 定 範 囲 間 に 有 意 差 を 認 め た. 各 方 向 ク レ ン チ ン グ に お け る 指 定 範 囲 の 咬 合 力 の 水 平 展 開 角(φ)の 平 均 値 は(表6お よ び7),VCの 上 昇 点 で -2 .8∼1.8° お よ び 維 持 部 で-2.2∼4.1°,PCの 上 昇 点 で-1.3∼3.2° お よ び 維 持 部 で-1.1∼4.4°,LCの 上 昇 点 で60.2∼91.3° お よ び 維 持 部 で56.2∼82.9°,な ら び にRCの 上 昇 点 で-60.1∼-56.3° お よ び 維 持 部 で -59 .4∼-57.9° で あ っ た.ま た,各 方 向 ク レ ン チ ン グ に よ る 咬 合 力 の 方 向(φ)は 指 定 範 囲 間 のt-検 定 結 果 (表8お よ び9,α=0.05)か ら,VC,PCお よ びRCで は 上 昇 点 お よ び 維 持 部 の す べ て に 有 意 差 を 認 め な か っ た. LCで は 上 昇 点 の100%MCと25%MC,75%MCと 25%MCお よ び50%MCと25%MCに,維 持 部 の 100%MCと25%MC,75%MCと25%MCの 指 定 範 囲間 に有 意差 を認 めた.ま た,各 方 向 ク レ ンチ ン グ に よ る相 対 咬 合力 値 お よび 咬 合 力 の 方 向(θ お よ び φ)で は, t-検 定 の結 果(表10,α=0.05)か ら,す べ て の指 定 範 囲 にお い て 上 昇点 と維 持 部 に有 意 差 を認 め な か った.

IV.総

括 お よび 検 討

咬 合 力 の 測 定 は,1681年 にBorelliが 始 め て以 来,科 学 技 術 の進 歩 と とも にそ の 測 定装 置 も改 善 され,き わ め て 小 さな ロー ドセル あ る い は圧 力 セ ンサ の使 用 に よ り, 正 常 生理 機 能 に障 害 を 与 え る こ とな く測 定 が可 能 とな っ た.ま た科 学 技 術 の進 歩 は,咬 合 力 ・咀嚼 力 と筋 放 電 活 動 との 同時 測 定15),筋 放 電 活 動 と下顎 運 動 と の 同 時 測 定16)をも可 能 と した. 近 年 で はバ イ オ メカ ニ ク ス の立 場 か ら,機 能 遂 行 のエ ネ ル ギ ー源 を咀 嚼 筋,機 能 遂 行 の 場 を顎 顔 面,生 じた機 能 結 果 を下 顎 運 動 あ る い は咬 合 力 と し て 解 析 す る 報 告17,18)がな され て い る.さ らに下 顎 運 動 に つ い て は,

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1 6 4―3 7 4 補 綴 誌35巻2号( 1 9 9 1) 裏2側 方 荷重 試 験 結 果(θ=60°) 出力 ベ ク トル の大 き さ φ=0°(図5aのB) φ=90°(図5aのC) φ=180°(図5aのD) φ=270°(図5aのE) ME機 器 の発達 に伴 い三 次 元的 に計測 ・分 析 さ れ て い る19).し か し,機 能 結 果 の重 要 な 因子 の1つ で あ り,下 顎 運 動 あ るい は ク レン チ ン グ に伴 い生 ず る咬 合 力 につ い て は二 次 元 的 に分 析 され て い る に過 ぎ ない 。 そ こ で,著 者 らは咀 嚼,嚥 下 お よび 咬 合 な どの顎 口腔 領 域 にお け る機 能 活 動 結 果 の1つ と して 現 れ る咀嚼 力 お よび 咬 合 力 の分 析 を行 い そ の メカ ニ ズ ム を解 明 し,顎 機 能 異 常 の診 断 お よ び治 療 の 一助 とす る 目的 で,咬 合 力 三 次 元 測 定 装 置 の 調製 を行 った. 1.咬 合 力三 次 元 測 定 装 置 各 方 向 ク レ ンチ ン グ によ る咬 合 力 の大 き さ と方 向 を測 定 す る には,側 方荷 重 試験 に先立 っ て咬 合 力 の 大 き さ と 方 向 の基 準 とす る原 点 を検 討 す る垂 直 荷 重 試 験 に お い て,本 装 置 が高 い正 確 性 と再 現 性 を有 して い る こ とが最 も重 要 で あ る. 咬 合力 ・咀 嚼 力 の 大 き さ に関 す る研 究 は数 多 くみ られ る が,装 置 の精 度 検 定 を行 っ て い る研 究20∼23)は少 な い. 森 谷 ら20)は半 導 体 歪 素子 を応 用 した装 置 の く り返 し精 度 が ±1%以 内 で あ る と,棟 久21)はfoil straingaugeの 測 定 誤差 が0.06kg以 内 で あ る と,長 尾 ら22)は三 分 力 計 の 装 置特 性 が非 直 線 性 で3.8∼6,3%FS,再 現 性 で1.1∼ 2.5% FSで あ る と,尾 形23)はス トレイ ン ゲ ー ジ を用 い た圧 測 定 用transducerの 荷 重 によ る誤 差 が ±6%お よ び 角 度 が ±1° で あ る と報 告 して い る.菊 地 ら14)は,本 研 究 と同様 に3個 の 圧 力 セ ンサ を 用 い た 咬合 力 測 定 装 置 の5kg荷 重 の 誤 差 が3.5%以 内 お よび10kg荷 重 が 3.6%以 内 で あ り,そ の 方 向 につ い て は 矢状 面 角 を5度 ず つ25度 まで 変 化 させ て得 られ た 出力 電 位 か ら幾 何 学 的 計 算 を行 い,実 測 の角 度 が比 較 的 良好 な結 果 で あ った

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咬合力三次元測 定装置 1 6 5―3 7 5 表3側 方 荷重 試 験 結 果(θ=60°) 荷 重 ベ ク トル と出力 ベ ク トル の 角度 差 φ=0°(図5aのB) φ=90°(図5aのC) φ=180°(図5aのD) φ=270°(図5aのE) と報 告 して い る. 顎 口腔 領 域 にお け る機 能 活 動 の観 察 に用 い られ る筋 放 電 筋電 図 につ い て,豊 岡 ら24)は正常 人 の 咀嚼 筋 筋 活 動 が 日時 に よ って どの 程 度 相違 す る か を チ ュ ー イ ン ガ ムや ピ ナ ッツ な どの4種 試 験 食 品 を 用 い,咀 嚼 時 の筋 電 図 か ら中 間 の10ス トロー ク にお け る放 電 持 続 時 間,放 電 間 隔,周 期 お よび 筋 活動 量 につ い て検 討 を行 い,測 定 日が 異 な った 場 合 最 も安 定 した値 が得 られ る のは チ ュ ーイ ン ガム で,約10%のCVが 認 め られ た と報 告 して い る. 以 上 の 報 告 と比 較 し,本 装 置 に よ る 出力 ベ ク トル の 大 き さ(平 均 値)に よ る測 定 誤 差 は,垂 直 荷重 試 験 の3.0, 7.0お よび21.0kgf荷 重 時 に認 め られ ず,14.0kgf荷 重 時 に0.1kgfお よび42.0kgf荷 重 時 で も0.5kgfと 小 で あ った.側 方 荷重 試 験 にお け る測 定 誤 差 は,φ=0° 荷 重 で0.0∼0.8kgf,φ=90° 荷 重 で0.0∼0.7kgf,φ= 180°荷 重 で0.0∼0.6kgfお よび φ=270° 荷 重 で0.0∼ 0.4kgfと 小 で あ った.し か も出力 ベ ク トル の 大 き さの CVは0.5∼3.3%で 上 記 の 報 告14,20∼24)と比較 して も き わ め て 小 な る 値 で あ っ た. 出 力 荷 重 試 験 に お け る 荷 重 ベ ク トル と出 力 ベ ク トル の 角 度 差(平 均 値)は,3.0kgf荷 重 で0.8∼1.6°,7.0 kgf荷 重 で0.4∼1.4°,14.0kgf荷 重 で0.2∼1.1°,21.0 kgf荷 重 で0.2∼1.3° お よ び42.0kgf荷 重 で1.1∼1.8° と小 で あ っ た. 咬 合 力 の 方 向(平 均 値)で は,垂 直 荷 重 試 験 の 垂 直 展 開 角(θ)の 測 定 誤 差 は,3.0お よ び14.0kgf荷 重 に お い て 認 め られ ず,他 の 荷 重 量 に お い て も0.1∼0.4° と小 で あ っ た.側 方 荷 重 試 験 の 測 定 誤 差 は,3.0kgf荷 重 で0.2 ∼1.6°,7.0kgf荷 重 で0.1∼1.2°,14.0kgf荷 重 で0.1 ∼0.9°,21.0kgf荷 重 で0.0∼1.0° お よ び42.0kgf)荷 重 で0.1∼1.4° と小 で あ っ た.し か も 出 力 ベ ク トル の 方 向 のCVは0.2∼3.5%と 上 記 の 報 告20∼24)と比 較 して も, 出 力 ベ ク トル の 大 き さ の 結 果 と同 様 に き わ め て 小 な る 値 で あ っ た. これ よ り本 装 置 の 測 定 精 度 は き わ め て 高 い 正 確 性 と再 現 性 を 持 っ て い る こ と が 明 らか とな っ た..

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1 6 6―3 7 6 補 綴 誌35巻2号( 1 9 9 1) 表4側 方荷 重 試 験 結 果(θ=60°) 出力 ベ ク トル の垂 直 展 開 角(θ) φ=0°(図5aのB) φ=90°(図5aのC) φ=180°(図5aのD) φ=270°(図5aのE) 2.ク レ ンチ ン グに よ る 咬 合 力三 次 元 測 定 咬 合 力 三 次 元測 定 装 置 を 口腔 内 に付 着 して,被 検 者 に 各 方 向 ク レ ンチ ン グ を行 わ せ,そ の咬 合 力 の大 き さ と方 向 を検 討 した. 咬 合 力 と筋 放 電 活 動 との 関 係検 討 には,被 検者 に咬 合 力 の大 き さを指 定 す る方 法15,25)が行 われ て い る。 咬合 力 の大 き さ につ いて,Hosmanら25)に 最 大 咬 合 力 の80,50 お よび20%の4段 階 に,鈴 木15)は5∼50kgfま で5kg 単 位 で10段 階 に規 定 し,両 者 は とも にモ ニ タ上 で そ れ ら の指 定値 を確 認 させ な が ら測 定 を行 った.し か し,咬 合 力 の 大 き さの指 定 を数 値 にて行 った 場 合,被 検者 は モ ニ タか ら得 られ た 視 覚 的 情 報 を も とに指 示 され た 咬合 力 の 大 き さを 発揮 しよ う と咬 合 力 の大 き さ の調 節 を行 い, そ の結 果 と して測 定 時 に咬 合力 の大 き さお よび 方 向 は種 々 変 動 す る と考 え られ る.咬 合 力 の方 向 の相 違 に よ っ て,咬 筋 の運 動 単 位 の 発 火頻 度 や 動 員 順 序 に は相 違 が生 じる26)ので,咬 合 力 の 方 向 の変 動 は筋 放 電 活 動 観 察 の支 障 とな る.そ こで,被 検 者 へ の咬 合 力 の大 き さ の指 示 に は,そ の大 き さ を数 値 で 指 定 をす る方 法 で な く,咬 合 力 指 示 装 置 の オ シ ロ ス コー プ 上 に0か ら最 大 咬 合 力 の 大 き さま で均 等 に4段 階 に指 定 範 囲 を 表示 ・指 定 す る こ と と し,咬 合 力 の大 き さへ の調 節 機能 の働 きが可 及 的 に少 な くす るよ うに配 慮 した.さ らに,咬 合 力 発現 開始 か ら指 示 した 咬合 力 の大 き さ に達 す るま で の 時 間 は,予 備 実 験 の結 果 か ら上昇 部 にお け る圧 力 セ ンサ の 出力 電 位 曲線 が 直線 的 で あ り,し か も そ の時 間 内 に指 示 した 咬合 力 の大 き さ を発揮 で き る時 間 として200msに 規 定 した. 被検 者 に各 方 向 ク レ ン チ ン グ に よ る咬 合 力 の 大 き さ を,咬 合 力 指 示 装 置 のオ シ ロ ス コー プ 上 の4段 階 の指 定 範 囲 で指 示 す る本 法 の成績 で は,各 方 向 ク レ ンチ ング に

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咬合力三次元測定装置  1 6 7―3 7 7 表5側 方 荷 重 試 験 結 果(θ=60°) 出力 ベ ク トル の 水 平 展 開角(φ) φ=0°(図5aのB) φ=90°(図5aのC) φ=180°(図5aのD) φ=270°(図5aのE) よ るす べ て の咬 合 力 値 は,4段 階 の指 定 範 囲 内 に測 定 さ れ,さ ら に指 定範 囲 間 に お け るt-検 定 の 結 果(α= 0.05)で も上 昇 点 お よび 維 持 部 で 有 意 差 を認 め た(表8 お よび9). そ の結 果 と して,咬 合 力 指 示 装 置 によ る方 法 は,咬 合 力 の大 き さ と方 向 を検 討 す る には きわ め て有 効 で あ る と い える. 各 方 向 ク レン チ ン グ に よ る咬 合 力 の 垂 直 展 開 角(θ) は,指 定範 囲 間 のt-検 定 の結 果(α=0.05)か ら,VCお よびLCで 上 昇 点 お よび 維 持 部 の す べ て に有 意差 を認 め なか った.し か し,PCお よびRCで は 上 昇 点 と維 持 部 に有 意差 の あ る項 目が一 部 で認 め られ た.指 定範 囲間 の t-検 定 の結 果(α=0.05)か ら,有 意 差 を認 め な か っ た VCに よ る咬 合 力 の垂 直 展 開 角(θ)は,咬 筋 浅部 の筋 走 行 方 向9,27)と近似 して お り,今 後 さ らに詳細 な分 析 が必 要 で あ る と推 察 され る. 各 方 向 ク レン チ ン グ によ る咬 合 力 の水 平 展 開 角(φ) にお い て もt-検 定 の結 果(α=0.05)か ら,左 側 方 方 向 ク レ ンチ ング の上 昇 点 お よ び維 持 部 に有 意 差 の あ る項 目 が一 部 認 め られ た. 以 上 につ い て は不 明な 点 が 多 く,今 後 ク レ ンチ ング の エ ネル ギー 源 とな る咀 嚼 筋 筋放 電 活 動 ,さ らには そ の発 現 の場 とな る顎 顔 面 形 態 との 関係 をふ ま え検 討 す る必 要 性 が高 い とい え る.

V.結

咀嚼筋筋放電活動 と咬合力発現様式 の関係 を解明す る

目的 で咬合力をベク トル として分析 し,そ の大 きさ と方

向を三次元的 に分析 するために調製 した咬合力三次元測

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1 6 8―3 7 8 補綴 誌35巻2号( 1 9 9 1)

表6各 方 向クレンチングによる咬合力 の大 きさおよび方 向(上 昇点)

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咬合力三次元測定装置 1 6 9―3 7 9 表8 各方向 クレンチ ングによる咬合力値お よび 咬合力の方向の指 定範囲間 に お け るt-検 定結 果(上 昇 点) 表9各 方向 クレンチングによる咬合力値および 咬合力 の方向 の指定範 囲間 にお け るt-検 定結果(維 持 部) 定 装 置 の 出力 荷 重 試 験 お よび そ の 測 定例 を検 討 し,以 下 の結 果 を得 た. 1.咬 合 力 三 次 元 測 定 装 置 は,垂 直 荷 重 試験(θ=90°) お よび θ=60° で90° 単 位 で 方 向 を変 化 させ た側 方 荷 重 試験 にお い て,荷 重 ベ ク トル と出 力 ベ ク トル の大 き さお よ び 方 向 を分 析 した結 果 か ら,き わ め て高 い正 確 性 と再 現 性 を持 って い る こ とが判 明 した. 2.咬 合 力 三 次元 測 定 装 置 を垂 直 荷 重 試験 時 の測 定 精 表10 各方向ク レンチングによる相対咬合力値 および 咬合力の方向の上昇部 と維持部 のt-検 定結果 度 で使 用 す る には,上 下顎 クラ ッチ規 定 用 ジ グを用 い上 下顎 ク ラ ッチ を垂 直 荷重 試 験 時 と同 一 の位 置 関係 に設 定 す る こ とが有 効 で あ る と判 明 した. 3.被 検 者 に咬 合 力 指示 装置 のオ シ ロ ス コー プ 上 に示 した4段 階 の指 定 範 囲 で各 方 向 ク レンチ ン グを行 わせ た 結 果,そ の咬 合 力 は 指 定範 囲 内 にす べ て 測 定 され た. 4.以 上 の結 果 か ら本 装 置 お よび 方 法 は,咬 合力 の大 き さ と方 向 を 三次 元 的 に検 討 す る有 効 な手 段 で あ る こ と が判 明 した.

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