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「官民
ITS構想・ロードマップ2015」
見直しに向けた論点
平成28年3月2日
IT総合戦略室
【論点3】:
イノベーションに向けた体制整備
資料3
※本資料は道路交通分科会での議論用に作成されたものであり、今後、官民ITS構想・ロードマップ2015の見直
しに向け大幅に修正される可能性がある。
イノベーションに向けた体制整備
1.イノベーション促進に向けた体制整備
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イノベーション促進に向けた体制整備(全体像)
世界の先進各国が自動走行に積極的に取り組む中、我が国においても、自動走行に係
るイノベーションの世界的な中心地としてリードしていくことを目指す。
このため、研究開発面、実証環境面、市場化に向けた制度面それぞれで、国際的な連
携を積極的に進めつつ、世界的に魅力的な拠点となるよう体制整備を進めるとともに、国
内外の多様な主体が新ビジネス創出に向けた情報交換・連携できるような環境整備に取
り組むべきではないか。
<イノベーション促進に向けた体制整備(全体像)>
研究開発
市場化
実証
・国際的な実証拠点の整備
(海外企業の参加の促進)
・国際的な産学官研究体制
(海外人材の参加の促進)
・国際的な魅力的な市場環境の整備
(国内外の企業の活躍促進)
・国際的な研究交流
(オープンイノベーション)
・国際的な制度調和
(ハーモナイゼーション
)・国際的な基準・標準化の推進
世界的な自動走行のイノベーションの中心地に
多様な研究開発・事業主体による連携体制の構築
・・・P3
・・・P4~5
・・・P6
・・・P7
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AI・HMI等に係る国際的な研究開発環境の整備
自動走行システムについては、今後、人工知能(AI)、人間工学・ヒューマンインター
フェース(HMI等)の技術が重要になっていくと考えられる。
このような技術の実用化には、基礎・基盤的な研究との連携や人材育成が重要であるこ
とから、海外の人材の活用、海外企業の参加を含め、国内での産学官連携に向けた体
制整備を進めていく必要があるのではないか。
<政府・研究機関における動き>
人工知能(AI):文科省(理研)、経産省(産総研)、総務省 (NICT)の連携により、研究開発体制の整備を図る方針。 (出典)総合科学技術・イノベーション会議評価専門調査会(第114回)資料 HMI:産総研は、2015年4月、安全で楽しい運転の実現に向けて、ド ライバーとしての人間の特性を研究すべく、「自動車ヒューマンファクター研 究センター」を設立。<民間企業における動き>
トヨタ:2015年11月、人工知能技術の研究・開発を手掛ける 新会社を米国カリフォルニア州に設立すると発表。新会社は、マサ チューセッツ工科大学とスタンフォード大学と連携して研究を進め、 トヨタは新会社に5年間で10億ドルを投資。 日産:2015年1月、自動運転システムの発展、および、同技術 の商業的応用を目指し、アメリカ航空宇宙局(NASA)と共同 で研究・開発を行う5年間のパートナーシップの締結を発表。4
模擬市街地・テストベットなど国際的な実証環境の整備
自動走行システムの実用化を進めていくためには、研究開発だけではなく、それらの実証試
験を行い、実用化に向けた技術の高度化を進めていくことが不可欠。
このため、国内における積極的な公道実証実験を推進するとともに、国際的に開かれた模
擬市街地等のテストコースの整備を推進する。
<日本政府における動き>
経産省:FY28予算案に、「自動走行システム評価拠点整備事業」 (15億円)を計上。 NICT(総務省):中小企業も含めた様々な事業者が最適なIoTシ ステムの開発・検証を行うことができる環境(IoTテストベッド)を整備 (FY27補正予算)。また、これを通じた先行的モデル構築を支援。<海外(米国)における動き>
ミシガン州:ミシガン大学 Mobility Transformation Facility (M-City)(2015/7開所)。
・現在、主要メンバーとして17社(トヨタ、日産、ホンダ、デンソー 含む)、会員(Affiliate)として40社が参加。
カリフォルニア州:Contra Costa Transportation Authority GoMentum Station
(参考)各地域における公道実証実験等に係る取組
自動車業界の取組
トヨタ、日産、ホンダ:2013.11、国会前にて、安倍総理試乗の 下、公道実証実験を実施。 トヨタ、日産、ホンダ、富士重等:2015.10、東京モーショーと併 せ、東京湾岸にて試乗会を実施。 各社とも、常日頃から、研究所等で実証を実施。
自動車関連業界の取組
デンソー、NEC、JAXA:2014.4から、沖縄久米島にて、超小型 モビリティ(EV)の自動走行システム「久米モビ」の実証実験を開 始(既に終了) デンソー:2014.7、愛知県の「南知多道路」等での実証試験開 始を発表。(知事が試乗) 日立オートモーティブ:2016.2、常陸那珂有料道路での公道実 証実験等を発表。 コンチネンタル:2014.10、公道実証実験の開始を発表(千葉 県旭市のテストセンターでデモ) ボッシュ:2016.1、東北自動車道(栃木県)と圏央道(神奈 川県)、テストコース(塩原と女満別)での実証開始を発表。 ヴァレオ:2016.2、同社つくばテクノセンター内に新たに自動運転 車のテストエリアの新設を発表。
ベンチャー企業の取組
ロボットタクシー社は、以下の取組を実施。 2015.10、内閣府による国家戦略特区における「完全自動走行(レ ベル4)の実現に向けた具体的プロジェクト」の発表と併せ、神奈川県 (湘南)、仙台市、愛知県等での実証プロジェクトを発表。 2016.2、神奈川県藤沢市(中央けやき通り)において、レベル3の 実証実験を開始。 2016.3、仙台市(災害危険区域 荒浜小学校校庭)において、レベ ル4のデモンストレーションを実施予定。
大学プロジェクト
名古屋大学、長崎大学、産総研:2014.7から名古屋市守山区の 県道15号線にて、公道実証実験を開始(ZMP、アイサンテクノロジー 等支援)。 金沢大学:2015.2から珠洲市市街地等で公道実証実験開始。 長崎大学:2016.2、3月から南島原市での公道実証実験を発表。 九工大、北九州市大、早大:2014.4「自動運転・安全運転支援総 合研究センター」を設立、2017年実証予定。 早大、九大、九工大の研究者の「九州・ひびきの自律走行研究会」: 2016春からの1人乗り小型電気自動車の公道実証実験を計画。 (注)各社報道資料等より、内閣官房作成
自動走行システムの公道実証実験に関しては、日本では他国とも比較して、その実施が容
易であり、海外企業も実施中。また、今後、必要に応じ、特区制度の活用も想定。
また現在、警察庁において、交通の安全と円滑を図る観点から、公道実証実験のためのガ
イドライン案を検討中。
<日本における公道実証実験等の取組(例)>
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国際的な基準・標準への戦略的取組
基準に関しては、日本は、国連WP29の会議において共同議長を務めるなど、国際的な
議論を主導。また、標準に関しては、ISO内の会議体の関係が複雑になってきたことを踏
まえ、国内の体制を整備し、横断的な議論の円滑化に取組。
今後、基準、標準それぞれの検討体制を基本に、基準と標準をつなぐ戦略的な検討の
場を設置し、人材育成を含め、国際的な活動をリードできる戦略づくりを進める。
<自動運転に係る基準・標準の検討組織>
(出典)SIP 自動走行システム推進委員会第20回国際連携WG(2015年9月30日) 公益社団法人 自動車技術会報告資料7
<ITS Japan>
地域ITS推進団体として、15の団体と連携を推進中。イノベーション促進に向けた社会全体での連携体制整備
ITS・自動走行に対する関心の高まりの中、そのイノベーションを推進するには、多様な業
界・主体が情報交換を行い、現場のニーズを踏まえた新たな取組が創発されるような場を
構築し、地域、中小・ベンチャーを含む社会全体の底上げを図ることが重要。
このため、自動車業界、電機業界だけでなく、IT業界、金融業界、中小・ベンチャー企業
など分野横断的に幅広い業界、自動走行に関連する大学・研究機関、関心・ニーズを有
する地域等が意見交換を行い、具体的地域での取組につながるような場(フォーラムな
ど)の在り方について、今後検討を進める。
<自動走行を巡る各業界団体の動き>
ITS・自動走行に係る関心の高まりの中、各業界内では、検討会などが設置。
今後、分野横断的な業界等が、課題解決に向けて具体的な意見交換が行われる場を作っていくことが必要ではないか。
更に、それが、ITS・自動走行の導入に向けたニーズ・関心を有する地域における具体的取組につながるようにすべきではないか。
<ITS Japan>
ITS Japanメンバーを対象に、世界を舞台とした機会創出を目的に、 「自動運転研究会」を設置(2015年6月)。43社が参加。 現在4つのテーマ(交差点、HMI、地図、管制・遠隔運転)を対象に SWGを設置し研究活動を実施中。<日本自動車工業会>
安全・環境技術委員会に「自動運転検討会」を設置(2014年7月) 「自動運転ビジョン」を発表(2015年11月)<JEITA>
IT・エレクトロニクス業界の視点・立場に立った活動を行うため、「自動走 行システム研究会」を設置(2015年8月)。メンバー33社が参加。 8つのWGを設置(通信、セキュリティ、人工知能、HMI、位置測位、 3Dマップ、センシング、ビジネスモデル)【業界団体等における動き】
【地域との連携】
イノベーションに向けた体制整備
1.イノベーション促進に向けた体制整備
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パーソナルデータに係る検討体制の整備
ITS・自動走行におけるデータ利活用が進展する中、2015年9月に改正・公布された個
人情報保護法を踏まえ、ITS・自動走行に係るパーソナル・データ等に係る取扱いについ
て、官民連携による検討体制を含め、今後検討を進める。
<自動走行に係るデータ利活用>
<個人情報保護法改正を巡る動き>
(出典)IT総合戦略本部 情報通信技術(IT)の利活用に関する制度整備検討会(第4回) 日産自動車資料
特に自動運転に関しては、自動車業界からは、個人の位置情
報の同意やカメラデータへの周辺車両、歩行者等の情報の扱い
が課題との指摘。
2015.9、改正個人情報保護法が公布。2016.1、
同法に基づき、個人情報保護委員会が設置。(全
面施行は、公布から2年以内。)
• 個人情報の定義を明確化することによりグレーゾーンを解決 し、また、誰の情報か分からないように加工された「匿名加工 情報」について、企業の自由な利活用を認めることにより経済 を活性化。 • 他方、いわゆる名簿屋問題対策として、必要に応じて個人 情報の流通経路を辿ることができるようにし、また、不正に個 人情報を提供した場合の罰則を設け、不正な個人情報の 流通を抑止。
同改正法(全面施行後)では、従来の認定個人情
報保護団体は、今後、個人情報保護委員会が認定
することとなる。
• 現在、自動車関連では、日本自動車販売協会連合会が 認定(経産省)を受けている。【改正法のポイント】
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(参考)米国における自動車関連のパーソナルデータに係る動向
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米国自動車業界(Auto Alliance)は、2014年11月、米国連邦政府の動きに対応
して、自動車業界としての「消費者プライバシー保護原則」を発表。
<米国自動車業界における消費者プライバシー保護原則>
米国自動車業界(Auto Alliance)は、2014年11月に、「消費者プライバシー保護原則」を発表。
これは、米国FTCの「公正情報慣例原則」、ホワイトハウスの「消費者プライバシー憲章」を踏まえたもの。
①消費者に対する透明性、②機微な情報に対する高い保護、③政府に対する情報提供の限定、がポイント。
(注)19社: GM, Chrysler, Ford, Honda, BMW, Hyundai, Jaguar Land Rover, Aston Martin, Ferrari, Kia, Maserati, Mazda, Mercedes– Benz, Mitsubishi Motors, Nissan, Porsche, Subaru, Toyota, Volkswagen, Volvo
〇消費者プライバシー保護原則(自動車技術及びサービスのためのプライバシー原則)2014年11月12日
•
透明性:対象とする情報の収集・利用・共有に関して、所有者等に対して明確にその通知
にアクセスできるようにする。
•
選択:対象とする情報の収集・利用・共有に関して、所有者等が選択できるようにする。
•
コンテキストの尊重:対象とする情報の利用・共有に関して、その収集されたコンテキストと
一致する方法で行う。
•
データ最小化、脱ID化と保存:対象とする情報は、合法的なビジネス目的のためだけに収
集。合法的なビジネス目的に必要と決めた期間内のみ保存する。
•
データセキュリティ:対象とする情報に関し、紛失や非許可のアクセス・利用から保護するべ
き合理的な措置を取る。
•
統合性とアクセス:対象とする情報の正確性を維持するべく適切な措置を取るとともに、情
報の見直しや修正を行う手段を所有者等に与える。
•
説明責任:対象とする情報が、本原則に従って扱われていることを確保するための適切な
対応を行う。
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サイバーセキュリティに係る体制整備
自動車に係るサイバーセキュリティが高まる中、これまで政府系機関において取組ガイドを
作成するとともに、SIP等において、産学官連携のもと、研究開発等の取り組みを開始。
今後、自動車業界における体制整備も含め、産学官での連携体制の検討を進めていく
ことが必要。
<政府におけるサイバーセキュリティを巡る動き>
<自動車のサイバーセキュリティに係る事例>
(出典)「自動車の情報セキュリティへの取組ガイド~繋がる自動車に情 報セキュリティを」独立行政法人情報処理推進機構(2013.3)
2015.9、政府は「サイバーセキュリティ戦略」を閣議決定。
【サイバーセキュリティ戦略におけるITSに係る記述】
• 例えば、高信頼度のITS(Intelligent Transport Systems)の開発・実現においては、関係府省庁、産業界、 研究機関等、数多くの産学官の主体が関係する。 • これらの関係主体は、まず、ITS導入によってもたらされるメリット とリスクは不可分であり、その両面を客観的に捉え、採られるべ きセキュリティ対策やその実装方法、期限等の認識を共有し、そ の上で、各主体の任務を明確化する。 • こうすることによって、関係主体間の相互信頼に基づく連携と各 主体の自律的な対策実施による協働が加速化され、効果的で 付加価値の高い事業の実現に結び付けることができる。
2015.7、著名なハッカーは、自動車を乗っ取って、アクセル/
ブレーキ操作を無効化する等の実験を動画公開。
Fiat Chrysler Automobiles(FCA)は、同月、ネット接
続機能を備えた車のソフトウェア更新のため、米国で約140
万台のリコールを発表。
<これまでの政府系機関における取組>
IPA(経産省):2013.3、自動車のサイバーセキュリティ
に係る取組ガイドを発表。
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(参考)米国における自動車関連のサイバーセキュリティの体制整備
2016年1月15日、米国運輸省NHTSAは、自動車へのサイバーセキュリティ等に関し、
自動車メーカー18社と協力することで合意(積極的安全原則2016)。
特に、2015年に創設されたAuto-ISACを通じた情報交換・共有等の推進。
<NHTSA積極的安全原則2016(抄)>
1.積極的安全の強化・促進(略)
2.初期警告報告データの分析・審査の強化(略)
3.安全リコールの参加率の最大化(略)
4.自動車のサイバーセキュリティの促進(略)
•
自動車産業内外の経験を踏まえたベストプラクティスの作成
•
サイバーセキュリティ研究者との連携のための適切な手法の開発
•
Auto-ISACの支援と発展のための以下の取組:
Auto-ISAC及びそのメンバーに対する、サイバーセキュリティに係る脅威・ 脆弱性情報に係る継続した自発的共有の促進 Auto-ISACに対して、共通した脅威・脆弱性に対する対応するための共 通・汎用的な対抗策の共有を促進 Auto-ISACのメンバーを、自動車部品サプライヤーや、他の Connected Vehicleの関係者も参加できるよう拡大。<Auto-ISACの設立>
•
2015年7月、Auto Alliance(米国自動車製造
者連盟)はAuto-ISACの創設を発表。
Auto Allianceメンバー12社(GM, Ford,
FCA, Volkswagen, Mercedes-Benz,
BMW, Porsche, Jaguar Land Rover,
Volvo, Toyota, Mazda, Mitsubishi
Motors)
•
同10月、ボードメンバーを公表(Auto Alliance,
Global Automakers)。
Chair :Toyota, Vice chair :GM
Secretary :Honda, Ford
他BMW, FCA, Hyundai, KIA, Mazda,
Mercedes-Benz, Mitsubishi, Nissan,
Subaru, Volkswagen
(注)18社: GM, FCA, Ford, Honda, BMW, Hyundai, Jaguar Land Rover, Kia, Mazda, Mercedes–Benz, Mitsubishi, Nissan, Porsche, Subaru, Tesla, Toyota, Volkswagen, Volvo
(注)ISAC: Information Sharing and Analysis Centers • セキュリティ脅威に係る情報を収集、分析、共有することによって、リ スクを低減し、強靭性を高めるための組織。 • 米国では、現在、航空、通信、防衛産業基盤、防衛セキュリティ、 天然ガス(下流)、電力、危機管理、金融、ヘルスケア、IT、海 運、複数州、国民医療、石油・天然ガス、不動産、研究・教育、 小売、サプライチェーン、道路交通・公共交通・バス、水道の19分 野のISACが、ISACのNational Councilに参加。 (出典)http://response.jp/article/2016/01/18/268015.html