1.はじめに
国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)のSG5(地上 業務研究委員会)関連会合が、2016年5月9日から24日に かけてスイス(ジュネーブ)のITU本部で開催されたので、 その概要を報告する。 SG5は、陸上・航空・海上の各移動業務、固定業務、無 線測位業務、アマチュア業務及びアマチュア衛星業務を 所掌しており、前回会合までは我が国の橋本明氏(NTTド コモ)が議長を務めていたが、本会合からのWRC-19会期 では英国のMartin Fenton氏が議長に就任している。SG5 は、表1に示すとおり、従前からの 4 つのWorking Party (WP)と本会合において正式設置された1つのTask Group (TG)から構成され、本2016年5月期はSG5会合、WP5Dを 除く3つのWP会合とTG5/1会合が開催された。 IMTを所掌するWP5D会合については、直近では2016年 6月14日から22日にかけて第24回会合が開催されており、そ の結果については本報告においては割愛させていただく。 以下では、5月9日に開催された SG5 会合、5月10日から 20日に開催されたWP5A、WP5B、WP5C会合及び5月23日 から24日に開催されたTG5/1会合の主要議題と主な結果に ついて報告する。2.SG5第11回会合
2.1 SG5の所掌及び会合の概要 地上業務を所掌するSG5会合では、WRC-19会期の初回 の会合であるため勧告案等の文書審議は行われず、SG5の 体制の検討等が行われた。本会合には、31か国から157名 が出席し、我が国からは11名が参加した。 2.2 主要議題及び主な結果 ① SG5の体制の検討 SG5の下のWPは前会期と同様4つのWP体制が維持さ れ、CPM19-1会合で要請されていたWRC-19議題1.13(将 来のIMT開発に向けた24.25-86GHz帯における移動業務 の追加一次分配を含むIMT特定のための周波数に関する 検討)のためのTask Group 5/1(TG5/1)の設立が承 認された。 ② 各WPとTGの議長の選出 WP5A、WP5B、WP5D の議長は前会期から継続され、 WP5C 議 長 は 中 国 推 薦 の Pietro Nava氏(Huawei)、 TG5/1 議 長 は カ ナ ダ の Cindy Cook 女 史(Industry Canada)が選出された。3.WP5A第16回会合
3.1 WP5Aの所掌及び会合の概要WP5Aでは、IMTを除く陸上移動業務、一部の固定業務 (FWA:Fixed Wireless Access)、アマチュア業務及びア マチュア衛星業務に関する技術的検討を実施している。本 会合には、42か国から229名が出席し、我が国からは15名 が参加した。前回会合と同様に、表2のとおり5つのWorking Group(WG)体制のもとで、検討が行われた。本会合で は114件の入力文書について検討が行われ、63件の文書が 出力された。
ITU-R SG5関連会合の結果について
大
おおむら村 朋
ともゆき之
前 総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課 新世代移動通信システム推進室 システム開発係長 (現 総務省 総合通信基盤局 電波部 電波環境課 認証推進室 国際認証係長)奥
おく井
い雅
まさ博
ひろ 総務省 総合通信基盤局 電波部 基幹・衛星移動通信課 国際係長阿
あ べ部 敏
としかず和
前 総務省 総合通信基盤局 電波部 基幹通信課 国際係長 (現 総務省 消防庁 国民保護・防災部 防災課 防災情報室 課長補佐)会合報告
■表1.SG5の構成 組織名 所掌 議長 SG5 地上業務 Martin Fenton 氏(英国)WP5A 陸上移動業務(IMTを除く)アマチュア業務、アマチュア衛星業務 (Ericsson Canada)Jose Costa 氏
WP5B 無線測位業務、航空移動業務、
海上移動業務 John Mettrop 氏(英国)
WP5C 固定業務 Pietro Nava 氏 (華為技術)
WP5D IMT (AT&T)Stephen Blust 氏
3.2 主要議題及び主な結果 ① アマチュア及びアマチュア衛星に関する検討 WRC-19議題1.1(50-54MHz帯のアマチュア業務へ の分配の検討)に関する作業計画及びCPMテキスト案 に向けての作業文書、50-54MHz帯におけるアマチュ ア業務と既存業務との共用検討についての暫定新レポー ト草案M.[AMATEUR_50MHZ]に向けての作業文書 を作成した。また前回会合からキャリーフォワードされ た勧告M.1732「共用検討で使用されるアマチュア及び アマチュア衛星業務で運用されるシステムの特性」に関 し、次回会合での完成を目指して暫定改訂案として WP5A議長報告に添付した。 ② 鉄道無線に関する検討 WRC-19議題1.11(列車沿線間の鉄道無線通信システ ム(RSTT)に関する検討)のためのRSTTの技術運用 特性とスペクトラム要求についての暫定新レポート案 M.[RAIL.RSTT]の作業文書のほか、CPMテキスト案 のための作業文書、作業計画案等が、議長報告に添付 され次回会合にキャリーフォワードされた。またITU加 盟国等に鉄道無線システムに関する質問を行うための回 章が準備され、その後6月3日に5/LCCE/60として各国、 セクターメンバー等に発出された。 また2014年に日本提案により作業が開始された鉄道 無線リンクに関する暫定新レポート案M.[RAIL.LINK] 作業文書は、その内容が合意され、タイトルを「ミリ波 帯における特定鉄道通信システム」へ変更した後、暫 定新レポート案への格上げが合意され、議長報告に添 付された。次回エディトリアル修正を経て最終化される 予定である。 ③ PPDR(公共保安及び災害救援)に関する検討 WRC-15で改訂された決議646(Rev.WRC-15)の変更 結果を受け、PPDR用周波数を整理した勧告ITU-R M.2015 の改訂に関する作業文書を作成し、今後の改訂のため のガイドラインドキュメントを作成して議長報告に添付 された。 ④ 干渉と共用に関する検討 WRC-19議題1.16(5GHz帯RLANと他の業務との共用 検討)に関して、RLAN技術特性及び運用要求に関す る作業文書、RLAN航空計測に関する作業文書、RLAN 共用検討に関する作業文書に関する作業開始が合意さ れた。 ⑤ 高度道路交通システム(ITS)に関する検討 WRC-19議題1.12(ITS用周波数の世界的調和)に関 して、日本よりCPMテキスト案の骨子と、今後の作業 計画案を提案し、ドイツ・米国等のサポートも得られ、 合意された。ITS利用状況の調査レポートに関する新レ ポート案ITU-R M.[ITS USAGE]の作成作業は議長報 告に添付され、次回会合へキャリーフォワードされた。 ⑥ 275−450GHzの周波数帯における陸上移動業務への 周波数特定に関する検討 WRC-19議題1.15(275-450GHzの周波数帯における陸 上移動業務及び固定業務への周波数特定の検討)に関 して、日本提案を元に275GHzの移動無線システムの特 性に関する暫定新レポート案M.[300GHZ_MS_CHAR] の作業文書が作成され、議長報告に添付され次回会合 にキャリーフォワードされた。
4.WP5B第16回会合
4.1 WP5Bの所掌及び会合の概要 WP5Bは、無線測位業務、航空移動業務及び海上移動 業務に関する技術的検討を実施している。本会合には、 38か国から221名が出席し、我が国からは6名が参加した。 また、125件の文書について検討が行われた。 4.2 主要議題及び主な結果 ① 無人航空機及び決議155に関する検討 WRC-15議題1.5において、無人航空機システム(UAS) の制御及び非ペイロード通信(CNPC)のために固定衛 ■表2.WP5Aの審議体制 担務内容 議 長WP5A Jose Costa 氏(カナダ)
WG1 アマチュア業務、アマチュア衛星業務 Dale Hughes 氏(オーストラリア)
WG2 システムと標準 Lang Baozhen 氏(中国)
WG3 (公共保安及び災害救援)PPDR Amy Sanders 女史(米国)
WG4 干渉と共用 Michael Kraemmer 氏(ドイツ)
星業務(FSS)に分配された周波数帯を使用することが 検討され、WRC-15においてUAS CNPCの利用に関する 決議155が作成された。本決議にはUAS CNPC利用のた めの条件や行うべき検討事項が列挙されている。本会 合においては米国及び英国から決議155で指示されてい る検討事項を誰(WP5B、WP4A、ICAO等)が担当す べきか整理した寄与文書が入力された。本寄書につい てイランより、WP5BではWP5Bの所掌の内容のみ検討 すべきであるとの見解が示され、WP5Bが検討すべき項 目のみについて整理を行った。前研究会期に作成中で あったレポートM.[UAS-FSS]について、米国、ドイ ツ等からレポートとして完成させるべきとの意見があっ たが、WRC-15において決議155が作成されたことから、 フランス、ロシアから決議155に沿って新たな文書を作 成すべきとの意見もあり、結論は出ず、次回会合で継続 検討することとなった。 ② WRC-19議題1.8(GMDSSの更新及び近代化)に関 する検討 WRC-19議題1.8は、決議359(WRC-15改)による全 世界的な海上遭難・安全システム(GMDSS)の更新及 び近代化のための規制条項の検討であり、GMDSSの更 新としてイリジウム衛星システムの導入が議論の中心と なることが想定されている。本会合ではWP4Cの要求事 項の確認を求めるWP4Cのリエゾン文書について検討さ れ、決議359(WRC-15改)resolves2に関わる研究(追 加衛星プロバイダに関する研究)をWP4Cに要請すると ともに、本議題解決のMethodとしてイリジウム衛星の 使用周波数をRR付録第15号へ記載すること(RR第5条 の修正はしない)が考えられる旨が記載された。また、 米国より議題1.8の作業計画及びCPMテキスト案に向け た作業文書が提案され、議長報告に添付された。 ③ WRC-19議題1.9.2(衛星VDES及び海上通信の高度 化のためMMSSの周波数分配及び規則条項)に関す る検討 本議題は、WRC-15議題1.16において衛星VDEのため に海上衛星移動業務の分配が検討されたが、ロシアの 反対によりWRC-19議題1.9.2として持ち越すこととなっ たものである。本会合では、ロシアよりVDES衛星と宇 宙監視レーダーとの共用検討に関する新レポート案に向 けた作業文書の提案があった。また、国際航路標識協会 (IALA)より、ITU-R新レポート案の提案があり、160MHz 帯でAPPENDIX18に記載がない周波数帯(160.975- 161.475MHz)を衛星VDEのダウンリンクで利用するこ とが提案された。我が国及びドイツより、APPENDIX18 に記載のない周波数を候補とすることに懸念が示された。 結果として、作業計画、CPMテキスト案及びITU-R新レ ポート草案M.[VDES-SAT]に向けた作業文書(ロシア 及びIALAの入力を統合したもの)が作成され、議長報 告に添付された。また、WP4C、5A、5C、6A、6B及び 7Dへ宛てたリエゾン文書が作成され、VDES衛星への分 配検討対象となっている周波数帯(156.0125-157.4375MHz 及び160.6125-162.0375MHz)全域にわたり、当該及び 隣接周波数で運用中システムの技術及び運用特性を求 めた。 ④ WRC-19議題1.10(GADSSの導入、利用に関する周 波数要求及び規則条項) WRC-19議題1.10は、ICAOで検討されているGADSS (全世界的な航空遭難・安全システム)に関する周波数 等を検討する議題である。本会合では、アルゼンチン工 科大学から衛星搭載のADS-Bのようなメッセージ(位 置情報メッセージ)の受信確率のシミュレーション結果 が入力されたが、ITU-RにおけるGADSS検討はICAO 文書の最終化を待つべきとの共通認識から、本文書は 議長報告に添付され、次回WP5B会合へ持ち越された。
5.WP5C第16回会合
5.1 WP5Cの所掌及び会合の概要 WP5Cは、固定無線システム並びに30MHz以下の固定 及び陸上移動業務のシステムに関する技術的検討を表3に 示す体制のもとで実施している。このうち、WG5C-4の議 長については、本会合でNTTの大槻氏が就任した。会合報告
■表3. WP5Cの審議体制 担務内容 議 長 WP5C Pietro Nava 氏(華為技術) WG5C-1 30MHz以下のシステム Brian Patten 氏(米国) WG5C-2 30MHz−18GHzのシステム Nasarat Ali 氏(英国) WG5C-3 18GHz以上のシステム及び 一般的な寄与文書Haim Mazar 氏(ATDI)
WG5C-4 WRC議題に関連しない勧告、 レポート等の見直し
本会合には、34か国、18機関から171名が出席し、我が 国からは9名が参加した。日本寄書4件を含む63件の入力文 書等について検討が行われ、12件のリエゾン文書を含む 30件の出力文書が作成された。 5.2 主要議題及び主な結果 ① WRC-19議題1.15(275-450GHzの能動業務への特 定)に関する検討 WRC-19議題1.15は、現在、受動業務にのみ特定され ている275-1000GHzの周波数帯のうち、275-450GHzの 周波数範囲で固定業務等の能動業務への特定に関する 検討を行うものである。 本会合では、本議題に関する検討の促進のため、我 が国から275-450GHz帯固定業務アプリケーションの技 術運用特性に関する新レポートの作成等について提案を 行った。 審議の結果、日本提案に基づく暫定新レポート案に 向けた作業文書が議長報告に付され、次回会合で継続 検討することが合意された。 また、関連する外部標準化機関やWPに対して、本件 に関する作業状況を周知するとともに、関連する技術運 用特性について情報提供を求めるリエゾン文書を発出 した。 ② ITU-R勧告F.1777の改定に向けた検討 ITU-R勧告F.1777は、放送補助業務で用いるシステム と他業務との共用検討用パラメータを記載している勧告 である。 本会合では、我が国から、日本国内で使用されてい るSTL(Studio to Transmitter Link)のパラメータと、 700MHz帯FPU(Field Pickup Unit)の周波数移行に 伴う新周波数帯のシステムに関するパラメータを追加す る提案を行った。 審議の結果、上記の提案に基づく作業文書が議長報 告に付され、次回会合で継続検討することが合意された。 ③ 自動車レーダーと固定業務の両立性に関する暫定新レ ポート案の検討 71-76GHz及び81-86GHz帯で運用される固定業務の P-P/P-MPアプリケーションと76-81GHz帯で運用される 自動車レーダアプリケーションの両立性に関する暫定新 レポート案 ITU-R F.[FS/RLS COMPATIBILITY IN 71-86GHZ]の作成が進められている。 本会合では、前回議長報告に付された暫定新レポー ト案に向けた作業文書において、ITU-R勧告M.2057から 引用されている我が国で使用される自動車レーダーが、 他のものよりもFSとの両立性が低いものとして扱われて いる点について、参照されているパラメータの扱いが適 切でないことから、修正を行う提案を我が国から行った。 審議の結果、これを反映した暫定新レポート案が議 長報告に付され、次回会合で継続検討することが合意さ れた。 ④ 固定無 線システムに対するLarge/Massive MIMO (Multiple Input Multiple Output)技術の適用性に関
する検討 我が国から、多数のモバイルバックホールを展開する ための将来技術として、固定無線システムにおける Large/Massive MIMOの検討を開始すること、その検 討結果として、固定無線システムの利用動向に関する ITU-RレポートF.2323にLarge/Massive MIMOの記 述 を追加することを提案した。 審議の結果、上記の内容を追加したITU-Rレポート F.2323改定に向けた作業文書が議長報告に付され、次 回会合で継続検討することが合意された。
6.TG5/1第1回会合
6.1 TG5/1の所掌及び会合の概要 TG5/1は、WRC-19議題1.13(将来のIMT開発に向けた 24.25-86GHz帯における移動業務の追加一次分配を含む IMT特定のための周波数に関する検討)の検討に必要な ITU-Rの研究を実施する責任グループであり、IMTと他業 務の共用検討等を行い、CPMテキスト案を完成させること となっている。今回は第1回会合であるため、具体的な共 用検討やCPMテキスト案の作成には着手せず、検討体制、 議長、マネジメントチーム、今後の会合計画に関しての審 議を行った。本会合には、31か国から161名が出席し、我 が国からは8名が参加した。また、13件の文書について検 討が行われた。 6.2 主要議題及び主な結果 ① TG5/1での審議体制の検討 TG5/1での審議体制について、日本、CEPT、中国、 ブラジル、カナダ提案に基づき検討を行った結果、CPMテキスト案作成担当WG、3つの周波数レンジごとの共 用検討担当WGを設置することとなった。併せて、各 WGの作業目的の設定、WG議長の選出を行い、本TG5/1 の運営管理を行うマネジメントチームに関して、TG5/1 議長・副議長、各WG議長、SG5議長に加え、各地域会 合とTG5/1の連携を強化するため、6地域の各地域グ ループ(APG、ASMG、ATU、CEPT、CITEL、RCC) の議題1.13コーディネータで構成することとした。TG5/1 の審議体制については図のとおり。 ② 作業計画の検討 日本、中国、カナダ提案をベースとした議長提案を元 に審議を行った結果、大まかなスケジュール、作業内容 として表4の内容が合意された。各会合の具体的なスケ ジュールについては調整を継続することとした。 ■表4.TG5/1のスケジュール、作業内容 スケジュール 作業内容 第1回会合(2016年5月、今回) 体制構築、作業計画策定 第2回会合(2017年4 〜 7月) CPMテキスト案作成開始、共用検討ひな形検討、共用検討開始 第3回会合(2017年中盤) CPMテキスト案作成、共用検討 第4回会合(2017年終盤) CPMテキスト案作成、共用検討 第5回会合 (2018年、必要に応じて) CPMテキスト案作成、共用検討完了 第6回会合(2018年) CPMテキスト案作成完了