第Ⅱ部
第Ⅱ部 その他の市場における電力改革の実態 1. PJMの概要 PJMとは、米国北東部地域における独立系統運用機関であり、かつ、卸電力市場の管理等 を行う機関である。その卸電力市場の運営方法は、現在、自由化の成功モデルとして評価され ている。 (1) 対象エリア、電源構成及び系統規模 ① 対象エリア PJMの対象エリアは、5州(ペンシルバニア州、ニュージャージー州、メリーラン ド州、バージニア州及びデラウェア州)及び ワシントンDCであり、北米最大の電力 システムの運用を行っている。なお、PJMとは、Pennsylvania, New Jersey,
Maryland の略語の組み合わせである。 グラフⅡ−1.PJMの対象エリア 出所:PJMホームページ ② 電源構成 主力は石炭火力発電であるが、原子力発電のシェアも大きく、全体的にバランスのとれ た電源構成となっている。 グラフⅡ−2.PJMの電源構成 出所:PJMレポート ③ 系統規模、設備投資 PJMは、北米最大の電力システムの運用を行っており、世界規模ではEDF、東京電力 石炭 32% 石油 25% 原子力 22% ガス 16% 水力 5%
に次ぐ第3位の系統規模である。同地域では、自由化後も順調に発電所の新設が行われてお り、地域内の発電能力も十分に確保されているとともに、今後についても活発な発電所の新 設意欲がうかがえる。 表Ⅱ−1.PJMの規模 ピーク電力(万k W) 発電設備 数 EDF(フランス) 7,240 608 東京電力(日本) 5,924 147 PJM 5,170 540 ナショナル・グリッド(イギリ ス) 4,970 212 カリフォルニアISO 4,500 1,300 イタリア 4,130 314 出所:PJMホームページより作成 グラフⅡ−3.PJMの発電能力推移 出所:1999年 PJMアニュアルレポート
グラフⅡ−4.PJMの発電能力推移 出所:ペンシルバニア州公益事業委員会 (2)規制緩和とPJM設立の経緯 ①PJM設立の経緯 1927年、電力会社3社によって世界初の電力プールが形成され、1993年に PJMが独立主体として設立されている。その後、PJMは、1998年 1 月にPX の管理運営を兼務する独立系統運用機関(ISO:系統運用を電力会社から独立して 行う主体)化し、同地域の電力会社の系統運用機能が移管された(送電線保有は既存 の私営電力会社のままである。)。なお、ISOは、FERCオーダー888により推 奨されたもので、発電部門の競争を促進するため、系統運用部門の独立性を担保する 組織形態である。 ②PJMエリア内における、各州の小売自由化状況 ・ニュージャージー州 1999年から小売全面自由化 ・ ペンシルバニア州 1999年から2/3の小売自由化。2000 年か ら小売全面自由化 ・メリーランド州 2000年から約3分の1を小売部分自由化。2001 年に約3分の2を自由化。2002年に小売全面自由化 予定 ・デラウエア州 2001年から小売全面自由化 ・バージニア州 2001年から900需要家を対象に小売部分自由化。 2004年に全面自由化 ・ワシントンDC 2001年から大口需要家向けを小売部分自由化
グラフⅡ−5.ペンシルバニア州の電力価格平均単価(名目) 注)1994年∼1999年は実績値、2000年は推定値 出所:米国エネルギー省EIA資料より作成 ペンシルバニア州では2/3の需要家に対して小売自由化を導入した99年に大幅な 電力価格の低下が実現する等、電力改革の効果がうかがえる。ペンシルバニア公益事業 委員会委員長のJohn Quain 氏は「ペンシルバニア電力改革は、料金引き下げ、供給者 変更による利益、燃料費用の節約により、およそ3億ドルの利益を生み出した。電力供 給を選択できる以前には、ペンシルバニアの電力料金は米国平均より15%高かったが、 今やそれは4.4%低い。州政府は自由化により納税者の金を節約している。」と述べ ている。 (3)組織形態 PJMにおいては、事業規制が州毎に異なることから、垂直的な事業区分について詳 述することは避けるが、給電指令の主体としてISOが存在し、従来型の電力会社の小 売部門は、他の新規参入小売事業者と同様にLSE(Load Serving Entity(後述))と いう位置付けになっている。 なお、カリフォルニア州の電力会社に対する措置とは異なり、電力会社の発電所の売 却を勧告せずに、事業者の判断に委ねている。 この他には、他の自由化州と同様にIPP、MP(Merchant Plant)といった発電事 業者、新規参入の小売事業者が存在する。 ① ISO
0
2
4
6
8
10
12
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
単位:セント/kWh
全セクター
住宅
商業
産業
PJMでは、全参加者へのオープンアクセスを可能にすることを目的とし、管内の 電力会社の給電指令部門を統合して独立系統運用機関(ISO)を設立している。P JMがISO化した背景には、1996年にFERCより発出されたオーダー888 においてISOという形態が推奨されたことがある。 ISOは、市場参加者から託送情報を収集してスケジューリングと系統管理、混雑 管理等を行うものであり、1日前市場やリアルタイム市場といった電力取引所も運営 している。 ② 電力会社 電力会社の形態については、州毎に規制が異なることから定型の形態を記述するこ とは難しいが、例えば、ペンシルバニア州の電力会社であるPECOは、発電・配電 小売・送電(所有)が持株会社の下に別会社化されている。また、供給区域外での活 動を行う会社も別会社化されており、送電給電指令部門はISOに統合されている。 グラフⅡ−6.PECOの例(持株会社形式) 出所:経済産業省作成 供給区域外 持株会社 送電会社 新規参入会社 供給区域内 長期契約 配電小売会 社 発電会社
(4)供給力確保の方策 PJMの協定においては、各州の州法等により最終需要家に電力を供給することを許 可された小売を行う主体 (既存の電力会社、新規参入小売事業者等)をLSE(Load Serving Entity)と定義づけたうえで、同じく協定の中でLSEに対して、必要発電容 量確保の義務が課されている。具体的には、各LSEは、それぞれの需要家分の需要予 測に一定の予備率を付加した量の設備容量を確保しておく義務が課されている。なお、 違反に対しては、罰金が科されることとなっている。この容量は、自社電源の建設や発 電事業者との相対契約及びPJM容量クレジット市場での容量クレジット取引という形 で調達することが可能である。また、各発電事業者の側では、自ら保有している発電設 備の容量を、クレジットという形態で各LSEに割り振り、市場価格ベースの対価を得 ることができる。 これは、あくまでも容量(kW)の確保であり、電力量(kWh)の確保ではない。 したがって、発電事業者は容量を他社に販売した後でも、電力量を別の主体に販売する ことが可能である。 グラフⅡ−7.LSEの供給イメージ図 出所:経済産業省作成
自社電源
L S E
クレジットPJM容量
市場
発電事業者
発電事業者
相対契約(5)供給体制の概要 ① 取引方法 ISOであるPJMが、電力取引所(PX)の機能を兼務している。短期スポッ ト市場としてのPXが存在するが、いわゆる強制プール市場ではなくプール市場を 介さない取引も容認される任意プール市場となっている。 したがって、電力会社をはじめとする市場参加者は、長期相対取引やOTC (Over The Counter)で取引されるフォワード取引を行うことにより、価格変動の リスクをヘッジすることができる。 また、電力会社(配電会社)は、発電設備の売却を強制されていないことから、 自己供給することも可能であり、現時点では、これが取引の約3割を占めている。 なお、スポット市場における取引は、全体の約2割となっている。 グラフⅡ−8.PJMの取引シェア 出所:PJMインターコネクションより入手 相対取引 52% 自己供給 27% スポット市場 18% 輸入 3%
グラフⅡ−9.PJMの電力供給フロー (注)網掛けは既存電力会社 出所:経済産業省作成 ② PJMの市場 PJMには、エネルギー市場、容量クレジット市場、金融的送電権市場及びアンシ ラリーサービス市場が存在する。 ア)エネルギー市場 エネルギー市場としては、1日前市場とリアルタイム市場が存在し、1日前市場は、 電力の物理的な取引を行う短期スポット市場として機能している。リアルタイム市場 は、実際の需要と相対取引や1日前市場で確定した需要との差分を調整するための市 場である。 イ)容量クレジット市場 前述のとおり、LSEは課されている発電容量確保義務について、自己調達、相対 取引の他に容量クレジット市場で調達することが可能である。 発電会社 Aエリア Bエリア PJM ① 給電指令(連系事務所:Office of Interconnection) 全取引 ② 取引所(スポット:1日前、リアル市場) 約2割 新 規 参 入 最終消費者 新規参入会社 (他地域への新規参 発電 送 電 ( 系 統 運 用) 配電 小売 電力会社 長期契約 送電会社 送電(所有) 電力会社
ウ)金融的送電権市場 送電線の混雑が発生すると、基本的な託送料に加えて混雑料金を利用者から徴収す ることとなるが、混雑が発生するかどうかは、事前に予測できない。このため、混雑 料金に対する支出にはリスクが発生する。金融的送電権は、物理的な送電の予約では ないが、保有している送電権の割合に応じて混雑料金収入をうけとることができるの で、前もって金融的送電権を購入していれば送電を依頼しようという事業者は混雑料 金支払いのリスクを減殺することができる。 エ)アンシラリーサービス市場 PJMでは、アンシラリーサービスのうち周波数維持のためのサービスのみが市場 で取引され、その他のアンシラリーサービスはPJMが長期契約によって発電事業者 から調達することになっている。 (6)混雑管理 PJMでは、まずプール市場への入札結果に基づき、送電制約を一切考慮しない単 純な需給曲線による需給マッチングを行う。次に、相対契約も併せてスケジューリン グを実施し、送電線に混雑が発生すれば、その解消のために給電計画を修正する。送電制 約が存在する場合には、送電に制限を受ける前提でその地点の需要を満たす最も効率 的な発電設備の組合せを割り出し、利用される発電設備のうち最も高い限界費用がそ の地点のLMP(Locational Marginal Price)となる。PJMでは、2,000地点を
超える系統内のすべてのノードでLMPが算定される。これは、ノーダル・プライシン グ方式と呼ばれるモデルである。 具体的には、送電線混雑が生じない場合、すべてのノードのLMPは均一となり、混雑 費用は発生しない。送電線混雑が発生すると、地点毎にLMPの価格差が生じ、その 地点間の差額が送電線混雑費用として徴収される。この混雑費用が上乗せされること により、混雑が発生している送電線を利用して送電を行うことが経済的に見合わなく なり、他の電源からの送電に振り返られ、混雑が調整される。この方式により発生す る混雑料金徴収のリスクに対し、前述の金融的送電権市場が保険的な役割を果たして いる。 (7)PJM地域の特徴的な規制(ペンシルバニア州) ①ストランディッドコストの回収方法 卸価格水準の如何にかかわらず、凍結された小売料金と変動する卸価格の差額を ストランディッドコスト回収に充てるカリフォルニア州の方式と大きく異なり、ペ ンシルバニア州では対象価格に一定額を加算して回収する方式を採用し、比較的長 期間(最長12年)での回収を想定している。また、回収期間は、各社毎に交渉し た上で、企業体力差にかんがみて決定している。 ②需要家振替制度 一部の需要家は、入札で選ばれた供給先に強制的に変更させられる(ただし、当
該需要家が変更前の事業者を再度選択することは認められている)。結果として、
PJM地域内のPECO Energy では、産業用需要家の32.8%、家庭用需要家の
34.1%が供給先を変更している(2001年4月時点、口数ベース)。
③需要家教育プログラム
Consumer Education Scheduleを各社毎に策定することになっている。PECO では、総額1,900万ドルを支出する予定である。メディア(TV、新聞、ラジ オ)の使用等、きめ細かくプログラムが決められている。 ④デフォルト・サービス 代替供給者(既存電力会社以外の供給者)を選択しない需要家、代替供給者からの供 給を受けられない需要家、選択した代替供給者が供給不能に陥った需要家等に対し、既 存電力会社が供給サービスを提供する条件をあらかじめ公表しておく制度として、デ フォルト・サービスが規定されている。 (8)ガバナンス PJMは、関係する事業会社が出資する非営利の有限会社であり、必要となる運営 費も、年会費という形で民間事業者が支出する自主的な集合体である。 日常の運営については、自主的に各事業者毎の委員会をはじめとする目的毎のグ ループで行われているが、重要案件については組織の最高意志決定機関である独立委 員会により決定される。独立委員会は、公正・中立である必要性から非利害関係者の みで構成されており、その委員は会員委員会の投票により選出する仕組みとなってい る。 グラフⅡ−10.PJMの組織図 独 立 委 員 会 会 員 委 員 会 最 終 需 要 家 配 電 事 業 者 他 供 給 者 送 電 設 備 保 有 者 発 電 設 備 保 有 者
出所:PJM Interconnection L.L.C.“Introduction and PJM Governance” 2.英国(イングランド・ウェールズ)の概要 (1)電源構成・発電設備容量・電力価格 1999年における電気事業者の保有する発電設備容量は7,009万kWであり、 その75%が火力発電となっている。特に、注目すべきは電源構成の変化である。石炭 火力が中心の構成から、1990年代以降、コンバインド・サイクル・ガス・タービン (CCGT)の建設が相次ぎ、1999年で23%を占めるまで拡大している。全体の 発電設備容量としても1992年以降増加基調にあり、積極的なCCGT投資が行われ ている。
グラフⅡ−11.発電設備容量と構成比(発電事業者)
(出所)DTI “Digest of United Kingdom Energy Statistics 2000”
0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 1990 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 その他 水力 原子力 CCGT 混焼火力 石油火力 石炭火力 MW
電力価格については、電力改革が実施された1990年以降低下する傾向にあり、199 0年と1999年の産業用電力価格の比較においては実質ベースで2割以上の低下が実現し ている。しかしながら、旧プール制度を放棄し新たな電力取引制度に移行することからも明 らかなように、電力価格の低下は十分ではなかったと考えられている。
グラフⅡ−12.英国産業用電力価格の推移
出所:DTI, "Digest of United Kingdom Energy Statistics 2000"
(2)規制緩和の経緯と送電部門組織形態の変遷 ① 規制緩和の経緯 英国では、1989年の「電気法」により電気事業の再編・民営化が行われ、発 電・送電・配電の垂直統合の分離と卸電力取引制度(プール制度)の導入に特徴付け られる電力供給体制が形成され、1990年より段階的に自由化範囲が拡大され、1 999年5月に小売市場の全面自由化が実現した。 その後、1997年より旧プール制度の見直しに着手。2001年3月より旧プー ル制度が廃止され、相対取引や私設取引所を中心に電力取引が行われる新たな電力取 引制度(NETA::New Electricity Trading Arrangements)がスタートしている。 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0 110.0 120.0 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 名目 実質 1990年=100
表Ⅱ−2.規制緩和の経緯 1979 年 サッチャー政権誕生以来、多くの国有企業民営化を実施。 1983 年 エネルギー法によって、発電部門への新規参入が認められる。 1989 年 7 月 「1989 年電気法」が成立。 1990 年 3 月 1989 年電気法により、国有電気事業者は分割・民営化され、発電・大口 小売供給事業の自由化、電力取引所 (プール)の設立、送配電網の公平 なアクセスの確保を導入。 1990 年 4 月 1MW 以上の小売市場(約 5,000 口)が自由化。 1994 年 4 月 1MW∼100kW(約 50,000 口)が自由化。 1997 年 11 月 プール制度見直しに着手(政府の意向を受けて) 1998 年 7 月 プール制度改革素案発表 1998 年 9 月 100kW 以下の小売市場(約 2,360 万口)も順次自由化。 1999 年 5 月 すべての需要家が電力会社を選択できることとなった。 2001 年 3 月27 日 プール制度廃止、新たな卸電力取引制度(NETA)がスタート。 ② 組織形態の変遷(1989年電気法施行時) 1989年電気事業法の施行により、国有電気事業の再編・民営化を行い、以下の ような分類となった。 ・ 発電部門:中央発電局(CEGB)の発電部門が発電会社3 社(National Power
社、Power Gen 社及び Nuclear Power 社(後に British Energy 社)) に分割。株式会社として民営化。さらに、IPPやフランスEDF社が 発電市場に参入し競争体制となった。 ・ 送電部門:中央発電局(CEGB)の送電部門が分割。送電会社(National Grid Company:NGC)1 社で株式会社として民営化。 ・ 配電部門:12地域配電局は、それぞれ株式会社化され12の地域配電会社 (RECs)が設立。 ・ 供給部門:地域配電会社が従来の供給地域への供給を行うとともに、新たにライセ ンスを与えられた第 2 種供給事業者も供給部門に参加し、競争体制と なった。 ・ その他:スコットランドでは、民営化後も発送配電一貫体制の形態(Scottish &
Southern Energy 社、Scottish Power 社)であるが、会計分離(発 電・送電・配電・供給)を義務付けており、運営面では事業部制として 機能分離されている。 その後、米国企業や英国発電会社・水道会社により、地域配電会社・小売供給会社 の企業買収・合併が相次いでいる。また、地域配電会社が、他の配電会社の供給事業 部門買収や配電事業の共同企業体化する動きもある。 グラフⅡ−13.規制緩和の経緯
需 要 家 発 電・送 電 CEGB 発 電 NP、PG、BE(旧NE)、 IPP、EDF等 送 電 NGC 配 電・供 給 12地元配電会社 規制緩和以前 発・送・配電一貫 独占供給体制 規制緩和後 発・送・配電分離 発電・供給自由化 配 電 12地域配電会社 供 給 供給事業者 供 給 (出所)各種資料より(財)日本エネルギー経済研究所作成 (3)供給体制 市場制度は、卸売レベルでの強制プール制となっている。市場参加者の事業形態に 関しては、1989年電気法の「ライセンスの発給」において認可された者以外の電気 事業行為は禁止されている。 ライセンスには、「発電ライセンス」「送電ライセンス」「一般供給ライセンス」 「第 2 種供給ライセンス」「発電・送電・一般供給ライセンス」があり、それぞれの基準を遵守 することでライセンスが発給された。 現在、新公益事業法が適用されておりライセンス基準について見直しが行われ、一 般供給ライセンスを配電ライセンスと供給ライセンスに分離し、第 2 種供給ライセン スを供給ライセンスに統合している。
表Ⅱ−3.ライセンスの種類と概要(旧法下) ライセンス 概 要 発電ライセンス ・一定規模以上(設備容量10 万 kW 未満で系統注入量 5 万 kW 超過、 又は設備容量10 万 kW 以上で系統注入量 1 万 kW 超過)の発電事業 者は、発電ライセンスを取得し電力プールへの参加を義務付け ・1999 年 7 月現在で 57 社がライセンスを取得 送電ライセンス ・送電線の建設・維持・運営を行う ・プール市場の運営を行う ・NGCによる独占 一般供給ライセンス ・特定の供給区域内で、配電事業と小売供給事業を行う ・地域配電会社は配電事業と小売供給事業を会計分離し、配電事業部門 は、自社の供給事業部門に対しても第 3 者(2 種供給事業者)と同じ 条 件を適用しなければならない。 ・12 社の地域配電会社(RECs)がライセンスを取得 第 2 種供給ライセン ス ・一般供給事業者以外の小売供給事業者で、地域を問わず供給できる事 業 者配電会社が供給区域外へ供給する場合や発電事業者が小売供給を行 う場合は、第 2 種供給事業者として供給する。 ・発電事業者による供給の場合も、発電事業と小売供給事業の会計分離 を 義務付け。小売供給部門は、他の供給事業者と同様にプールから引き 出 す形態をとる。 ・1999 年 7 月現在で 43 社がライセンスを取得 発電・送電・一般供給 ライセンス ・スコットランドの電力会社2 社が取得 (4)プール制度 電気事業改革以来、2001年3月まで運用されてきたプール制度は、いわゆる強制プー ルであり、原則すべての発電事業者は発電した電気を全量プールに入れ、供給事業者も全量 をプールで調達しなければならない。 プール市場に参加する発電事業者は、前日の午前10時までに翌日の時間ユニット毎の価 格、供給力、運転特性データ等入札に必要なデータをNGCに提示する。NGCは、給電計 画プログラムの中で発電事業者の提示データを低い価格から順に並べ、独自の需要想定量と 均衡するだけの量を落札させる。落札した事業者のうち最後の落札となる最も高い価格が、 市場決済価格として全発電事業者に適用されるメリットオーダーシステムを採用している。 この手法に基づき30分毎のプール価格が算定される。 プール市場における価格変動リスクをヘッジするため、発電事業者と供給事業者は、通常、 あらかじめ将来の取引価格を決め、実際のプール価格とこの取引価格の差額を調整する差額 契約(CFD:Contract for Difference)を締結する。
グラフⅡ−14.電力供給体制(イングランド・ウェールズ:旧プール制度) National Power British Energy Power Gen IPP等 EDF 輸入 発電 送電 配電 供給 Scottish Power等 送電、系統運用、プール取引(National Grid) 配 電 供 給 一 般 供 給 事 業 者 供 給 第 2 種 供 給 事 業 者 家庭用需要家等 大口需要家等 託送 託送 電力 取引 規制 TPA プール (出所)各種資料より(財)日本エネルギー経済研究所作成 (5)新たな電力取引制度(NETA)について ①旧プール制度の概要 旧制度の強制プール制度では、すべての発電所を入札プロセスを通じた価格決定プロセ スにかける点において、英国の競争的な市場環境を育成する母胎を提供してきた。しかし ながら、電力市場の発展の中で、より有効な競争を促進するための制度改正を行う必要性 が生じてきた。 具体的には、現行の強制プール制度の問題点として、規制当局は、ア)一部の大手発電 会社の市場支配力により入札価格の操作が可能である点、イ)プール規則が複雑かつ柔軟 性に乏しいため、新規事業者の市場参入の障害となりつつある点、ウ)本来的な市場価格 は多数の需要家、供給者の価格交渉を経て発見されるが、現行制度は需要家と供給者を切 り離した上、供給者のみの入札により価格が決定されるという片面的な性格であり、需要 家サイドが価格決定に参加できず価格メカニズムが機能しにくい点等を指摘している。 ②新たな電力取引制度(NETA)の概要 新たな電力取引制度(NETA)を導入するに当たり、まず従来のプール市場取引を 廃止し、スポット取引をNGCから分離し、原則的に市場参加者(発電事業者、供給事 業者、需要家、私設取引所事業者、トレーダー等)に任せる新たな電力取引制度を開始
した。また、新たな取引として、先物取引、 先渡契約、短期取引、需給調整取引等の取 引が可能となっている。NGCによる運用は、需給調整市場及びインバランス決済に限 られ、先物取引、先渡取引及び短期取引はトレーダーや私設取引所等に任せることと なった。さらに、同時に、長期相対契約も自由に締結できることとなった。また、3.5 時間前より手前での取引となる需給調整取引においては、需要曲線が導入された。 表Ⅱ−4.新電力取引制度の概要 取引名 概 要 先物取引 ・NGC とは異なるマーケットオペレーター(MO)が運営 ・比較的長期的な契約が取引され、市場参加者にオープンな価格を表示 先渡契約 ・取引所を通さず、直接又はブローカーを通じて取引を行う ・現物取引量は、NGCへ通知する 短期取引 ・電力受け渡しの24時間∼3.5時間前までに取引される市場で、マーケッ トオペ レーターが運営 ・先物契約が実情に沿うよう調整するために設けられた市場 需給調整取 引 ・「短期相対取引」終了後、電力受け渡し日の3.5時間前から取引される市 場。 ・NGCがシステムオペレータとして需給調整を目的に、発電事業者や供給事 業者と 取引を行う ・NGCの想定需要量と先物市場・短期市場・相対取引の現物取引契約量との 差分を 取引する インバランス 決済 ・同時同量との乖離分(インバランスチャージ)や送電制約による需給インバ ランス の調整分を取引する
グラフⅡ−15.新たな電力供給体制 National Power British Energy Power Gen IPP等 EDF 輸入 発 電 電力取引市場 ・先物取引、短期取引 需給調整市場 送電、系統運用(National Grid) 送電 配 電 供 給 一 般 供 給 事 業 者 供 給 第 2 種 供 給 事 業 者 家庭用需要家 大口需要家 託送 配電 供給 託送 電力 取引 相対取引 Scottish Power等 (出所)各種資料より(財)日本エネルギー経済研究所作成 (6)送配電線の運用と情報公開 ① 送電系統 NGCが、送電線(400kV、275kV の基幹送電設備)の建設 ・維持、系統運用、 プール電力取引(旧制度。NETAでは需給調整取引の運用に移行)、他地域(ス コットランドやEDF)との電力取引等を独占的に運用している。 NGCは、送電線利用を希望する者(発電事業者、小売供給事業者)に対し、不当 に差別することなく送電線を利用させる義務がある。送電線利用希望者の申請に対し 3 ヶ月以内に条件提示(技術要件等)を行い、合意するとNGCによって接続設備を 建設することになる。 また、NGCは、周波数調整、無効電力供給等のアンシラリーサービスの提供も行 う。アンシラリーサービス費用は、送電線使利用料金に組入れられ小売供給事業者か ら回収(料金は規制対象)される。 託送料金は、接続料金と送電線使用料金で構成されている(注)。料金表に加え、電 力潮流図、託送可能容量、工事計画、技術要件等送電線利用に必要な情報も公開され る。 (注)接続料金:接続設備費用、接続設備維持運営費用、メーター設置費用等 送電線使用料金:ゾーン料金、送電サービス費用 ② 配電系統 地域配電会社が独占的に運用しており、各々の供給区域内で当該地域配電会社が
132kV 以下の配電線の建設・維持・運営を行い、配電線利用を希望する者(自社供給部 門や第 2 種供給事業者)に対しては、不当に差別することなく配電線を利用させる義務が ある。配電線利用料金は、接続料金と配電線使用料金で構成され、料金表を公表しなけれ ばならない。 公平な競争確保のため、旧法下では一般供給事業者(地域配電会社)は配電事業と小売 供給事業を会計分離することを義務付けられていた。2001年公益事業法では配電部門 と供給部門を分離(配電ライセンス、供給ライセンスに分離)することとなった。 また、メーター関連事業に競争を導入するため、2000年4月より検針業務が配電部 門から供給部門に移管され、供給業務との会計分離が行われている。 ③ 託送料金規制 ア)送電部門 送電事業による総収入額は、レベニューキャップ方式(RPI−X で規制)で規制 される。同方式による規制の対象は、送電線利用料金と接続料金の一部(1990 年以前に運用されている接続設備)。 1990年以降の接続設備は総括原価方式によって設定され、最大40年で回収 される(報酬率は規制対象)。 イ)配電部門 RPI−X で規制するプライスキャップ方式を適用している。規制対象は、配電線 使用料金とメーター施設料金である。
65 3.北欧(ノードプール及びノルウェー国内市場)の概要 (1)電源構成 北欧諸国全体での発電設備容量は、1999年末時点8,621.1万kWであ り、そのうちスウェーデン及びノルウェーが各々3 割程度占めている。 各国電源構成の違いは大きく、デンマークは火力中心、ノルウェーはほとんどが 水力、フィンランドとスウェーデンは火力・水力・原子力のミックスとなっている。 全体としては水力のシェアが54%と大きく、次いで火力29%、原子力14%、 風力2%となっている。 表Ⅱ−5.北欧各国の発電設備容量(MW、1999年12月31日時点) デンマーク フィンランド ノルウェー スウェーデン 合計 総発電設備容量 10,934 16,458 27,934 30,885 86,211 水力 11 2,937 27,616 16,192 46,756 原子力 0 2,640 0 9,542 12,182 火力 9,156 10,843 305 5,026 25,330 風力 1,767 38 13 215 2,033
(出所)Swedish National Energy Administration, "Electricity market 2000"
グラフⅡ−16.北欧各国の発電設備容量構成比(1999 年 12 月 31 日時点) 0.1% 17.8% 98.9% 52.4% 54.2% 16.0% 30.9% 14.1% 83.7% 65.9% 16.3% 29.4% 1.1% 0.2% 0.7% 2.4% 16.2% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% デンマーク フィンランド ノルウェー スウェーデン 合計 風力 火力 原子力 水力
66 (2)輸出入 ①「(1)電源構成」でも述べたように、各国の電源構成が異なることから、北欧諸 国間での電力輸出入は、従来から活発に行われてきた。北欧諸国の電力輸出入パタ ーンは、スウェーデンとデンマークが電力輸出国、フィンランドは輸入国、ノルウ ェーは水力発電の発電量により輸出入バランスが決定する(豊水期には輸出を行い、 渇水期には輸入)。ノードプール外では、ロシアからは純輸入、ドイツへは純輸出 となっている。 表Ⅱ−6.輸出入電力量(GWh、1999 年
)
デンマーク フィンランド ノルウェー スウェーデン ドイツ ロシア 輸入国 デンマーク 0 0 2,759 2,046 622 0 5,427 フィンランド 0 0 107 6,737 0 5,209 12,053 ノルウェー 622 104 0 5,929 0 232 6,887 スウェーデン 1,614 825 5,904 0 93 0 8,436 ドイツ 5,356 0 0 1,312 0 0 6,668 ロシア 0 0 0 0 0 0 0 7,592 929 8,770 16,024 715 5,441 輸出国 輸入計 輸出計(出所)Swedish National Energy Administration, "Electricity market 2000"
グラフⅡ−17.ノードプール参加諸国の電力純輸入量の推移(1999 年、国別) -2,000 -1,500 -1,000 -500 0 500 1,000 1,500 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ロシア フィンランド デンマーク スウェーデン 合計 月 GWh (1) ノルウェー -2,000 -1,500 -1,000 -500 0 500 1,000 1,500 2,000 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 フィンランド ドイツ デンマーク ノルウェー 合計 月 GWh (2) スウェーデン -200 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ロシア ノルウェー スウェーデン 合計 月 GWh (3) フィンランド -800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ドイツ ノルウェー スウェーデン 合計 月 GWh (4) デンマーク西部 (注)デンマーク東部地域は、1999 年時点未加入。 (出所)Nord Pool ホーム・ページ
67 グラフⅡ−18.ノードプール参加諸国電力純輸入量の推移(1999年) -2,500 -2,000 -1,500 -1,000 -500 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 スウェーデン ノルウェー フィンランド デンマーク西部 合計 GWh 月 (注)デンマーク東部地域は、1999年時点未加入。 (出所)Nord Pool ホーム・ページ グラフⅡ―19.Nord Pool の地域間総取引量(MWh、2000年10月31日) (出所)Nord Pool ホーム・ページ
68 (3)国際連系 北欧諸国では、以前より、国際電力協調機関 NORDEL の下、電源構成の違い等を 利用した国際電力輸出入が盛んに行われてきた。そのため、国際連系線は古くから整 備されている。 表Ⅱ―7.北欧における国際連系 送電可能容量(MW) スウェーデン=ノルウェー To スウェーデン To ノルウェー 北ノルウェー 1,350 1,350 北ノルウェー 300 300 中央ノルウェー 500 500 南ノルウェー 1,800 1,650 スウェーデン=フィンランド To スウェーデン To フィンランド 北フィンランド 900 1,500 オーランド 35 35 南フィンランド 550 550 スウェーデン=デンマーク To スウェーデン To デンマーク ユトラント半島 640 670 ジーランド島 1,600 1,750 ボルンホルム島 60 60 デンマーク=ノルウェー To デンマーク To ノルウェー ユトラント=南ノルウェー 1,040 1,040 ノルウェー=フィンランド To ノルウェー To フィンランド ノルウェー=フィンランド 100 100 ノルディック諸国以外 To ノルディック諸国 To 他国 スウェーデン=ドイツ 600 600 スウェーデン=ポーランド 600 600 ノルウェー=ロシア 50 50 フィンランド=ロシア 1,200 60 デンマーク=ドイツ 1,400 1,800
69 グラフⅡ−20.北欧諸国の送電網
(出所)Swedish National Energy Administration, "Electricity market 2000" (4)規制緩和とノードプール設立の経緯 1991年 ノルウェーは、エネルギー法により電気事業の再編と電力市場の自由化 を実施。 1996年 スウェーデンは、新電気法により国内の電力市場は自由化を行うととも にノルウェーと電力市場を統合。 両国は、共同の電力スポット市場(Nord Pool)を開設。国際電力取引 の機関として、Svenska Kraftnät 社と Stattnet Marked 社の共同出資 によりNord Pool 社を設立。 1998年 フィンランドは、ノードプール取引所に参加しゾーンの1つを形成。 1999年 デンマーク西部地域(ユトラント半島及びヒュン島)は、ノルディック 電力市場の一部となり一つのゾーンを形成。 2000年 東部地域(ジーランド島等)は、ノードプール市場に参加し1つのゾー ンを形成。 現在 ノードプールは、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド及びデンマ ークを統合した電力市場となっている。
70 (5)供給体制の概要 北欧(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド及びデンマーク(西部及び東部)) は、ノードプールという共通の電力市場を有しており、国内の電力取引及び国際連系 線を用いた電力輸出入に関する取引を行っている。 ・発電部門:国内に多数の電気事業者が存在する。域内、域外(ロシア、ドイツ等) からの輸出入も重要な地位を占めている。 ・送電部門:基幹系統は各国毎に単一のNational Grid として、独立した機関により 運 営 さ れ て い る 。( デ ン マ ー ク の み 二 つ の 地 域 に 分 か れ て い る 。) その下位に地域送電会社があり、National Grid との協力・指令の下、 運用を行っている。各National Grid はそれぞれがそれぞれの管内の系 統安定に責任をもつ。 ・配電部門:多数の地域配電事業者等により所有・運営されている。 ・供給部門:各国とも小売市場は自由化(デンマークのみ完全自由化に至っていない) されている。なお、通常、配電部門と供給部門はアンバンドリング(会 計分離又は経営分離)が義務付けられている。 グラフⅡ―21.北欧諸国供給体制 出所:(財)日本エネルギー経済研究所 スポット市場 (非強制市場) 需給調整市場 (規制市場) 相対取引 国内発電事業者 National Grid Statnett
(ノルウェー) Svenska Kraftnät(スウェーデン) (フィンランド)Fingrid (デンマーク西部)Eltra (デンマーク東部)Elkraft System
電力輸入(北欧域内) 電力輸入(域外、ロシ ア、ドイツ等) Nord Pool 発電 送電 配電 供給 地域配電・供給事業者 供給事業者 託送 需要家 アンバンドリング 託送 取引 電力
71 (6)ノードプールの概要
① 概要
ノードプール(The Nordic Power Exchange)は、世界初の多国間共通電力市場 である。1993 年に設立され、資本構成はノルウェーの Statnett SF が 50%、スウ ェーデンのSvenska Kraftnät が 50%であり、Physical Market(Elspot Market、 Elbas Market、Regulatory Market)、Financial Market(Eltermin、Eloption)、 Clearing Service(Elclear)を提供している。1999年実績では、Elspot 市場で 75TWh の電力が取引され、総消費量の 5 分の 1 以上にあたる電力がノードプール を通じて取引されている。
表Ⅱ―8.ノードプールでの取引量・金額の推移
T W h Bill.NOK T W h Bill.NOK T W h Bill.NOK T W h Bill.NOK
Elspot market 10.2 0.9 14.8 2.7 20.0 2.3 40.6 10.5
Financial market 2.6 0.2 7.1 1.2 15.4 2.2 42.6 10.5
Regulating power market 5.6 0.4 6.1 1.1 5.5 0.6 5.9 1.5
取 引 量 18.4 1.5 28.0 5.0 40.9 5.1 89.1 22.5 Clearingサービス(OTC) - - -
-合 計 18.4 1.5 28.0 5.0 40.9 5.1 89.1 22.5
T W h Bill.NOK T W h Bill.NOK T W h Bill.NOK T W h Bill.NOK
Elspot market 43.6 6.3 56.3 7.0 75.4 8.9 96.2 11.1
Financial market 53.0 8.0 89.1 12.5 215.9 27.7 358.9 43.3
Regulating power market - - -
-取 引 量 96.6 14.3 145.4 19.5 291.3 36.6 452.1 54.4 Clearingサービス(OTC) 147.3 - 373.4 - 683.6 89.0 1,159.5 122.5 合 計 243.9 14.3 518.8 19.5 974.9 125.6 1,611.6 176.9 2000 1997 1 9 9 8 1999 1993 1 9 9 4 1995 1996 (出所)Nord Pool ホーム・ページ ② Physical Market 電力の物理的な取引を行う市場としては、ノードプール全域をマーケットとする Elspot 市場というスポット市場、相対契約及び各国各地域で運用されている調整市 場が存在する。 ア)Elspot 市場(スポット市場) Elspot 市場とは、ノードプール全域を対象とし、次の24時間における物理的 な電力の取引を行う翌日渡しの1 時間毎の電力取引に関する量と価格を決定する 市場である(1日前市場)。市場参加者は、それぞれの時間にいくらの価格でどれ だけの電力を供給するか、又は調達するかの情報をノードプールに入札する。つ まり、150NOK(ノルウェー・クローネ)/MWhの価格では50MW購入 し、160NOK/MWhの価格では25MW購入、170NOK/MWhの価 格では0MW購入、171NOK/MWhでは30MW供給に転じるというよう なデータで提出する。ノードプールでは各参加者の入札情報を集計し、市場全体
72 での需要曲線と供給曲線を作成し、均衡する点で市場取引が行われる。 英国で採用されていた旧プール制度との大きな違いとして、ノードプールでは 市場の需要曲線が作成され、英国はNGCの需要予測のみが使用されたことがあ げられる。 グラフⅡ−22.スポット市場への入札フォーム (出所)Nord Pool ヒアリング時提供資料(2001年1月) 1999年には、75.4TWh、89億NOKが行われた。1999年の電 力取引対象地域の電力消費は合計で350TWhであり、スポット市場はこのう ち約22%をカバーしていることになる。(1998年は16.5%) 1999年における市場全体の基本となる決済価格である。システム価格の平 均は112.11NOK/MWh、1988年は116.35NOK/MWhで あった。 グラフⅡ−23.システム価格の推移(月平均) 0 50 100 150 200 250 300 350 1 5 9 1 5 9 1 5 9 1 5 9 1 5 9 1 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 NOK/MWh (出所)Nord Pool ホーム・ページ
73 グラフⅡ−24.Elspot 取引量と価格動向 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 00-01 12-13 00-01 12-13 00-01 12-13 0 5 10 15 20 25 取引量 価格 11月13日 11月14日 11月15日 EUR/MWh MWh/h (出所)Nord Pool ホーム・ページ グラフⅡ―25.Elspot 市場における国別取引シェア スウェーデン 31.9% フィンランド 6.9% デンマーク西 部 3.6% ノルウェーー 57.6% (出所)Nord Pool ホーム・ページ イ)Elbas 市場 Elbas 市場とは、スウェーデン、フィンランドを対象とした需給バランス市場 であり、ノードプールが運営している。これは、1999年3月1日より開始さ れており、Elspot 市場やバランスサービスを補完する機能を有するものである。 Elspot 市場が1日前市場であるのに対して、Elbas 市場は、実際の送電の2時間 前までの市場である。1時間単位の個々の時間について、前日から2時間前まで 連続的に取引が行われる。なお、2時間より手前で発生する電力需要のインバラ ンスの処理は、National Grid が提供するバランスサービスにより調整されるこ ととなっている。
74 グラフⅡ−26.Elbas 市場動向(スウェーデン) 0 5 10 15 20 25 30 1 5 9 13 17 21 1 5 9 13 17 21 1 5 9 13 17 21 0 50 100 150 200 250 300 取引量 高値 低値 平均 11月13日 11月14日 11月15日 MWh/h EUR/MWh (出所)Nord Pool ホーム・ページ
ウ)調整市場(Balance and Regulating Market)
調整市場とは、ノルウェー国内を対象とした需給バランス市場であり、系統運 用者であるStatnett 社が運営している。ここでは、相対取引及び Elspot 市場で の電力取引を、最終的にバランスさせるために行われる調整市場的電力取引がな されている。 調整市場は、指令を受けてから15分以内に自らの発電量・消費量を増減でき る発電事業者・需要家により構成され、需給の不一致が生じた場合にStatnett 社 の指令により調整が実施される。 参加者は、取引前日19時30分までに、翌日の各時間において自ら増減でき る発電電力・消費電力の価格と量を提示し、Statnett 社は、取引当日、予想外の 気温の変化等により需給の不一致が発生した場合、参加者の提示した条件に基づ き、各参加者に対し発電量又は消費量の増大又は縮小を指令する。 需要家は需要減の指令を受けた場合、調整市場で決まる価格に対応する額を受 け取り、発電事業者は発電電力量を減少させても、契約上の販売電力量は維持さ れるため、燃料費節約となり市場に参加するインセンティブが生じる。市場参加 者間の契約上の電力取引量と実際の売買量との差分は、調整市場で決定された価 格(1時間毎)に基づいて、Statnett 社により決済される(スウェーデンでは、 このインバランスはSvenska Kraftnät が提供するバランス・サービスにより調 整されている。)。
75 グラフⅡ―27.ノルウェー(第一地域)における調整市場動向 -400 -200 0 200 400 600 800 1,000 00-01 12-13 00-01 12-13 00-01 12-13 0 5 10 15 20 25 30 取引量 価 格 11月13日 11月14日 11月15日 MWh/h EUR/MWh (出所)Nord Pool ホーム・ページ エ)相対契約 ノードプールは任意型の電力取引市場であるため、市場外での相対契約も可能で ある。自由化以前、事業者間で10年、15年、20年という長期契約が結ばれ、 卸電力供給が行われてきた。1991年エネルギー法により、従来の契約は再交渉 に付されたり、契約の変更が行われている。一般的に近年ではより短期の契約が増 加している模様である。また、スポット市場の占める比率が相対取引に対して高ま りつつある。 グラフⅡ―28.ノルウェーにおける物理取引種別のシェア
76 グラフⅡ―29.スポット市場の取引高推移
(出所)Nord Pool ヒアリング時提供資料(2001年1月) ③ Financial 市場
Financial 市場とは、電力価格変動のリスクを回避するために組織された市場で あり、取引はNord Pool の electronic trading system 又は電話を通じて行われ、物 理的な電力取引の場ではない。Financial 市場は、Eltermin 市場と Eloptions 市場 から構成されている。 Eltermin 市場では、3年先までの先物・先渡し契約が扱われている。これは、電 力取引における価格リスクをヘッジするために用いられる金融市場である。先物・ 先渡し契約は、引き渡し期間より前の取引期間に行う精算方法において異なる。先 物契約においては、市場参加者のポートフォリオの価値はその折々の市場価格によ って変動することから市価による値洗いを行い精算を取引期間中に行う。これに対 して、先渡し契約は引き渡し期間が始まるまで、このような精算を行う必要はない。 Eloption 市場では、オプション契約を扱い、1999年秋に導入された。電力取 引に関連する将来の収入・費用のリスク管理と価格ヘッジのための金融的手法であ る。 ・1999年の取引量は215.9TWh、276億NOKに達する。 Eloption:1.7TWh Futures contracts:59.9TWh Forward contracts:154.3TWh
77 グラフⅡ―30.Financial 市場における国別取引シェア フィンランド 3.7% デンマーク 0.5% その他 7.4% スウェーデン 28.7% ノルウェー 59.7% (出所)Nord Pool ホーム・ページ ④ Clearing Service
Nordic Electricity Clearing (NEC)は、スポット市場、先物市場のみならず相対 取引契約にも提供されるノードプールの精算サービスである。ノードプールが清算 を行うことで、金融取引に伴う相手先の信用リスクを減殺することができる。19 99年一年間で880億NOKに値する合計684TWhの相対取引(OTC)が、 ノードプールで清算された。 グラフⅡ―31.ノードプールの概要 ノルウェー Statnett スウェーデン Svenska Kraftnät フィンランド Fingrid デンマーク西部 Eltra デンマーク東部 Elkraft System El-Ex/Nord Pool -Elbas-Hourly contract Nord Pool -Elspot-Hours Next day Physical delivery Nord Pool -Financial Market-(Eltermin/Eloptions) Days,weeks,blocks, seasons,years, 3years ahead
Actual day 24 hours 3 years
Clearing Servives(NEC)
78 (7)ノルウェー国内市場の概要 ① 規制緩和の推移 1991年 エネルギー法により電気事業の再編と電力市場の自由化を行 った 1992年 国営発送電力公社は、系統運用を担当するStatnett 社と発電 を担当するStatkraft 社に分割された 1993年 Statnett 市場という国内電力取引所を開設 1996年 スウェーデンとの共通市場としてノードプールと名称を変更 ② 供給体制 発電部門は99%が水力発電であり、大小合わせて約148社の発電会社がある。 国有電力会社のStatkraft 社は発電市場の約30%を占めており、送電部門は送電 会社Statnet 社が、基幹送電線の8割を所有し、残りの2割を他社から借り受ける ことで独占的に運営している。送電設備はコモンキャリアとして開放され、第三者 の送電線へのアクセスが認められている。配電部門では、最終需要家へ電力を販売 する電力供給会社は約200社あり、そのほとんどが配電設備を所有する地方公営 の配電会社である。これらの多くは小規模な発電設備を有している。 なお、独占事業として規制を受ける送配電部門と、競争に委ねられる発電・供給 部門は、少なくとも会計上分離することが必要となる。 グラフⅡ―32.ノルウェーの供給体制(1998年11月現在)
Oslo Energi(大手配電会社)
その他の配電会社
Statnett
Statkraft
約140社の発電会社
(発電)
(送電)
(配電)
輸 入
( Nord Pool)79 ③ 送配電線の運用と情報公開 ・送電線 ノードプールは、需要予測に基づき毎週、入札可能エリアの需要及び予想価格 を提示する。ノードプールと相対契約を締結している系統利用者は、電力取引量 に関する情報をStatnett 社に提出する義務がある。送配電設備の所有者は、当該 ネットワークへ投入された全電力量と損失電力量をStatnett社に報告する義務が ある。Statnett 社は、上記の方法で得られた情報を基に、契約上の取引量と実際 の計算値の差分を算定し、各市場参加者との間で決済を行う。 ・配電線 Statnett 社の指令に従い、地域送電系統、地方配電系統は各々系統運用を行う。 ④ 送配電線の建設について Statnett 社の設備投資計画、送電料金方法を決定する Statnett 役員会に電力供 給会社と一般最終需要家の代表者が参加できる。 Statnett 役員会がその意見を不当に無視した場合、各代表者は NVE(ノルウェ ー水資源庁)に通告できる。プール市場に参加している系統利用者機関は、Statnett 社が送電線利用に関する重要事項を決定する際、その会議に出席し交渉することが できる。送電系統所有者はNVE から送電ライセンスを取得する必要があり、送電 設備建設に当っては環境アセスメントをNVE から得る必要がある。