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(1)

小径工具を用いた大口径ウェーハの揺動制御ラッピングに関する研究

大野 剛(SM3−11) 島倉 智弘(SM3−32) 指導教員:畝田 道雄 講師,

石川 憲一

教授 1.緒 言 現在,半導体材料として用いられているシリコンウェーハ にはさらなる高精度化と高生産性が求められており1),LSI 向けの 300mm ウェーハの需要が多くなってきている2).これ らの硬脆材料の研磨にはこれまで 4way ラッピング方式が用 いられており,一度に多数枚のウェーハを加工できるが,初 期形状にバラつきがあると所望の加工精度が得られない3) このことから,ウェーハを一枚毎に研磨する枚葉方式の必要 性が高まっており4),これまでに枚葉方式に関する研究が幾 つか行われている.しかし,加工を行う際の工具の偏磨耗等 による影響が懸念されていることから,さらなる実験による 検討が必要であると考えられている.このことより,本研究 では工具を小径化することで偏摩耗の影響を減少させ,小径 工具を用いて滞留位置や滞留時間を制御して行う「揺動制御 ラッピング方式」を検討している.本方式を用いることによ って,ウェーハを所望の形状に研磨することを目的としてお り,研磨精度・生産性の向上が望めるものであると考えられ る.本方式では前年度において,大体ではあるが所望の精度 を得られることが分かっており,本研究では本方式において さらなる加工精度の向上を検討するものである. 2.実験装置及び実験方法 本実験では,図 1 のように小径工具と工作物を矢印の方向 に回転させ,工作物の揺動制御を行うことで工作物の表面形 状を所望の形状に研磨するものである.小径工具を用いた基 礎研磨特性評価の実験では,工作物中心と工具中心の距離を 偏心量eとし,30 分毎の研磨量を測定するものである.こ の基礎研磨特性の評価は揺動制御ラッピングを行う上での 制御パラメータを決定するために必要となるデータであり, 今回行った実験条件は表 1 に示す通りである.また,図 2 は実験装置であり,実験条件によって定められた研磨圧力は デッドウェイト方式によって調整をした. 3.基礎研磨特性の評価 図 3 に基礎研磨特性の評価を行うにあたり,任意の偏心 量での研磨量のシミュレーション結果及び実験結果から抜 粋したものを示す.この図の結果から,研磨プロファイルの 特徴が偏心量を変化させた場合でもほぼ一致していること が分かる.また,偏心量が工具半径より小さい場合では,工 作物中心が研磨されにくいということが分かる.これは,図 4 に示すように偏心量が工具半径より小さい場合,研磨部分 において工具の軌跡が重なる部分が生じる.この部分におい て,工具と工作物との間にスラリーが進入しにくくなり,中 心部分での研磨が行われにくくなるものと考えられる.さら に,e=30mm の場合でも中心部分がほとんど研磨されない という結果になった.これは,図5 に示すように,e=30mm では工作物中心付近の工具の研磨領域は最外周付近の極め て小さい領域でしか研磨されない状態になることによって, ほとんど研磨されることがなかったものと考えられる 一方,偏心量(mm)×工具・ウェーハ回転速度(rad/s)で決 定される研磨速度ν(e)(rad/s)と研磨量の関係は,図 6 に示す通りである.ここで,研磨量とは各半径方向の研磨プ ロファイルの面積に各偏心量での円周長さを乗算した物で ある.この図から分かるように研磨速度が大きくなるにつれ て研磨量は徐々に増加していることが分かる.しかし,ν (e)=250mm/s あたりを過ぎてからは研磨量にほとんど増加 が見られない.このことから,ある偏心量を超えると研磨圧 力が飽和状態となることで研磨量は増加することはなく,一 定になると考えられる. 図 1 振動制御ラッピング 図 2 揺動制御ラッピングの実験装置 表 1 実験条件 研磨時間(測定時間)[min] 30,60,90,120 工具半径[mm] 30 工作物半径[mm] 150 偏心量 e[mm] 5,10,15,30,35 45,65,85,100,115 研磨圧力[kPa] 20 工具・ウェーハ回転速度 [rpm] 30 スラリー濃度[wt%] 20(GC#600) 小径工具 工作物 ラップ定盤 ラップ定盤 自転方向 小径工具自転方向 荷重方向 振動方向 小径工具 デッドウェイト ラップ定盤 工作物

(2)

(a)シミュレーション値 (b)実験結果 (1) e=5mm (a)シミュレーション値 (b)実験結果 (2) e=30mm (a)シミュレーション値 (b)実験結果 (3) e=85mm 図 3 基礎研磨特性シミュレーション及び実験結果 図 4 偏心量 e>30mm での工具軌跡 図 5 偏心量 e=30mm での工具軌跡 0 50 100 150 200 250 300 350 400 0 50 100 150 200 250 300 vc e = Rt e < Rt Rt < e 研磨量 m m 3 研 磨 速 度   mm/s 研 磨 時 間 30m in 60m in 90m in 120m in 図 6 研磨速度と研磨量の関係 -150 -100 -50 0 50 100 150 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 実験結果 目標形状 研磨プロ ファイル µ m 工作物半径 mm 図 7 揺動制御ラッピングの実験結果 4.制御ラッピング特性の評価 基礎研磨特性から得られた結果から制御パラメータを決 定し,制御ラッピング特性の評価を行った.図 7 に制御ラッ ピング特性評価について定めた目標形状と測定結果の比較 した結果を示す.この結果から,目標形状に近い結果が得ら れたと考えられる.また,制御ラッピング特性の測定結果と 目標形状の実際の差は全体を通して±0.5μm 以内であるこ とからμm 単位での制御ラッピングが出来ていると考えら れる.ここで,一般的な研磨においては表面形状を平坦に研 磨するものである.しかし,今回は目標形状のようなうねり を持たせた形状に制御ラッピング研磨を行うことで,その任 意の形状に研磨を行うことができるという結果を得ること ができた.よって,今回の制御ラッピング特性評価の実験結 果から,一般的な平坦に研磨加工することも可能であると考 えられる. 5.結 言 (1) 基本研磨特性は偏心量によって大きく変化するが,その 変化は偏心量の値と使用する工具の半径に依存する. (2) 研磨速度に対する研磨量は,ある一定の値に収束する傾 向がある. (3) 小径工具を用いた揺動制御ラッピングによって,任意の 形状での研磨が可能となる. 参 考 文 献 1) 吉永鴨男:最近の超精密ラッピング・ポリシングの研究 動向,2002 年度精密工学会春季大会術講演会演論集,(2002) 471. 2) 三宅常之:MICRODEVICE 次の本命デバイス MEMS を つかめ,(2004) 106. 3) 吉富健一郎,宇根篤暢,餅田正秋:研磨による大口径ウ ェハの形状修正(第 6 報)―揺動条件の最適化―,2004 年度精密 工学会秋季大会学術講演会公講演論文集,(2004) 505. 4) 吉富健一郎,宇根篤暢,餅田正秋:研磨による大口径ウ ェハの形状修正(第 4 報)―研磨ヘッドと圧力分布―,2003 年 度精密工学会秋季大会学術講演会公講演論文集,(2003) 262. -150-125-100-75 -50 -25 0 25 50 75 100 125 150 -20 -15 -10 -5 0 工作物半径 mm 研磨量  μm -150-125-100-75 -50 -25 0 25 50 75 100 125 150 -20 -15 -10 -5 0 工作物半径 mm 研磨量  μ m -150-125-100-75 -50 -25 0 25 50 75 100 125 150 -20 -15 -10 -5 0 研磨 量  μ m 工作物半径 mm -150-125-100-75 -50 -25 0 25 50 75 100 125 150 -20 -15 -10 -5 0 工作物半径 mm 研磨 量  μ m -150-125-100-75 -50 -25 0 25 50 75 100 125 150 -20 -15 -10 -5 0 研磨 量  μm 工作物半径 mm -150-125-100-75 -50 -25 0 25 50 75 100 125 150 -20 -15 -10 -5 0 研 磨 量  μm 工作物半径 mm 工具 工作物 工具軌跡が重なる 工具軌跡で重なる部分が無く, 工具最外周付近での研磨 工具 工作物

(3)

ダイヤモンドペレットによる研削加工特性に関する基礎的研究

酒井 王(SM3-26) 指導教員:畝田道雄 講師,石川憲一 教授 1.緒 言 現在,シリコンウェーハの精密研磨としてスラリーを用い たラッピングが一般的に行われている.一方,新しい研削加 工法として,高能率で且つ,環境にも配慮したダイヤモンド ペレット(DP)による研削・研磨加工(DPG)がある.DPG は光 学ガラスをはじめとする数多くの素材の重加工や仕上げ加 工法として使われており,この加工法に関する特徴を実験面 と理論的な背景から明らかにすることによって,精密研削技 術としても使用できる範囲が拡大すると考えられている1) しかしながら,DPG に関して現在までに行われている諸 研究は,ある特定の材料の研削・研磨特性に限定したものが 多い2).このため,現在行われている DPG 研究に検討を加 えた研究や,シリコンウェーハの精密研削などに使用する場 合の DP の最適配置などに言及した研究は少ないのが現状 である3).そこで,DP を利用したより効率の良い研削方法 を実用化し,シリコンウェーハなどの研削に移用できる新し い加工法を研究するのが目的である. そこで,本研究では DPG の研削加工特性に関して,理論 的並びに実験的に検討し,その研削特性に及ぼす諸要因を明 らかにすることによって,DP 配置の最適化等を図ることを 目的としている.本報告では,第一段階の検討として,特に 画像処理技術を援用して,DPG 特性を考察した結果を述べ る. 2.実験方法 2.1 試作した装置の概要 本研究を実施するにあたり,図 1 に示す装置を試作した. 研削荷重は,おもりを取り付け,荷重を与えるデッドウェイ ト方式を採用した.また,加工特性を把握しやすいよう,比 較的研削しやすいソーダガラスの研削加工実験を行った. 2.2 DP の研磨距離測定方法 DP による研削量は,工作物と DP 相互間における研削距 離に依存すると考えられる2).すなわち,研削量と研削距離 との相関を評価するが,そのためには DP の研削距離を測定 する必要がある.研削距離の測定は,画像処理を用いて行っ た.その方法としては,研削時間ごとに DP の研削面を黒マ ジックで塗りつぶし,削った部分と削っていない部分の色を 明確に区別できるようにした. 研削面の画像取得方法として,同条件の環境が作りやすく, 照明を必要としないスキャナを用いた.スキャナで取得し, パソコンに保存した画像は,図 2(a)の状態である.この図 から,しきい値(th=80)処理を行うことによって,図 2(b) に変換し,白い部分を研削されたものとして画像処理を行い, 図 2(c) のように研削距離を求めた. 2.3 研削実験の方法 研削距離と研削量の関係を調べるため,次のような実験を 行った.この場合,表 1 に示す実験条件を設定した.実験に 供する DP が SD#200 レジンボンドという粗めのダイヤモン ド砥粒を使用しているため,ドレッシング後は,DP 研削面 が粗い.そして,その状態で研削することにより DP 研削量 がばらつき,研削距離との相関関係に十分な結果が得られな い可能性があると考えられる.このため,DP 表面を SS400 の定盤で 30 分間研削し,DP 研削面のダイヤモンド砥粒が 摩滅された状態でソーダガラスの研削実験を行った. 一方,研削圧力としては,厳密には図 2 で示したように DP 全表面で研削することにはならないことから,正確に設 定することは難しい.すなわち,実験毎に DP と加工面の当 たり方が幾分変化してしまうが,研削圧力は DP 全面で研削 荷重が均一にかかっているとみなして平均研削圧力を定義 した.また,研削プロファイルの測定は表面形状測定装置(東 京精密株式会社製)を用いて行った.

Fig.1 Schematic drawing of DPG apparatus

Fig.2 An example of image processing of DP surface for calculating grinding distance

モータ 定盤 カップ リング リニアブシュ アーム DP おもり (a) (b) 研削方向 (c) -2 -1.5 -1 -0.5 0 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 工作物半径方向距離[mm] 研削距 離[( -)m m ]

(4)

Table 1 Experimental conditions 工作物回転速度 平均研削圧力 研削液 研削時間 19 [rpm] 30 [kPa] 加工液(水道水で 2%に希釈) 1 分ごと

(a) Photograph of pellet surface

-2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 工作物半径方向距離[mm] 研 削量[ μ m ] -5 -4 -3 -2 -1 0 研削距離[ (-)m m ] 研削量 研削距離

(b) Grinding profile and grinding distance on pellet surface

R = 0.9843 0 0.5 1.0 1.5 2.0 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 研削距離[mm] 研削量[ (-)μ m ]

(c) Correlation of grinding distance on pellet surface and grinding profile

Fig.3 Grinding result by one pellet 3.単一 DP による基礎研削加工特性 図 3(a)は DP を置いた位置と研削後の DP 表面であり,図 3(b)に示す研削プロファイルは単一の DP による結果であ る.また,同図に示す研削距離は,DP 研削面がガラス面と 接触し研削した距離を,工作物半径方向距離ごとに画像処理 によって求めたものである. この研削距離と研削量がどのくらい近似しているのかを 表すために,横軸に研削距離を取り,縦軸に研削量を取った 相関グラフを図 3(c)に示した.相関グラフはプロットが直 線に近くなれば,横軸にとった研削距離と縦軸に取った研磨 量の関係が相対関係にあることを示せることになる.また, グラフ中の R 値は相関の度合いを示す相関係数である. この結果から,相関グラフのプロットがかなり直線に近く なっており,DP による研削量は,工作物と DP 相互間にお ける研削距離におおよそ依存すると考えられる. 4.複数 DP による基礎研削加工特性 複数 DP の実験として,図 4(a)のように,工作物半径方 向距離が同じ軌道上に 2 つの DP を固定し,その他は表 1 の 実験条件と同様に設定した.また,研削距離は 2 つの DP の 研削距離の和とした.研削距離と研削量を図 4(b)に示す. 研削距離と研削量の相関結果を図 4(c)に示す.この結果

(a) Photograph of pellets surface

-1.00 -0.75 -0.50 -0.25 0 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 工作物半径方向距離[mm] 研削 量[ μm ] -4 -3 -2 -1 0 研削距離[ (-)m m ] 研削量 研削距離

(b) Grinding profile and grinding distance on pellets surface

R = 0.9473 0 0.25 0.50 0.75 1.00 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 研磨距離[mm] 研磨量[ (-)μ m ]

(c) Correlation of grinding distance on pellets surface and grinding profile

Fig.4 Grinding result by two pellets

から,ほぼ直線形状のプロットが得られていることが分かる. すなわち,この結果からも,DP による研削量は,工作物と DP 相互間における研削距離におおよそ依存すると考えられ る.一方,図 3 の場合と比較すると幾分か直線性の低下が見 られることが分かる. 5.結 言 本研究で得られた結果を要約すると,以下のようになる. (1) DP による基礎研削特性を把握するための実験装置を製 作した. (2) 単一 DP 実験において,加工面測定から求めた研削量と 画像処理から求めた研削距離を比較した結果,おおよそ 研削量が研削距離に依存する傾向がある. (3) 複数 DP 実験においても同様の傾向が得られたが,その 精度は幾分低下する. 参 考 文 献 1) 安永暢男:固定砥粒研磨加工技術実用化への条件と課題, 機械と工具,46,5(2002)10. 2) 雫石正人,高橋昭夫,田中勇,柳和雄,荒井彰,高島幸 史:ダイヤモンドペレットによる光学面の研磨Ⅱ,東北 大学科学計測研究所報告,40,1(1992)59. 3) 福西利夫:ワイヤソーもラッピングも固定砥粒化 ダイ ヤモンド超砥粒で高精度加工と環境対策をすすめる,ツ ールエンジニア,44,2(2003)30. 工作物半径方向距離 DP 研削方向 DP 研削方向 工作物半径方向距離

(5)

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 0 10 20 30 40 50 60 外周刃側振動 工作物側振動 無振動 切断 抵抗 [N ] 切断送り速度[mm/min]

振動援用型外周刃スライシング加工に関する研究

中島大輔(SM 3−49) 指導教員:畝田道雄 講師,石川憲一 教授 1. 緒 言 近年における電気・電子分野の発達に伴い,セラミックス 等の硬脆材料をより精密に切断する技術が必要とされてお り,これらの材料を切断する技術として一般的に,外周刃切 断方式が用いられる1).しかし,この外周刃切断方式に使用 される外周刃は横剛性が低く加工中に弾性変形を生じ,加工 精度を低下させ,工具寿命を低下させるという問題もある. このような背景から,図 1 に示すような,外周刃方式に振 動を付与した振動援用型外周刃切断方式3)が検討されてい る.振動方式は,外周刃あるいは工作物に振動を付与するこ とによって切断抵抗を減少させ,加工精度,工具寿命が向上 することが明らかにされてきている.一方,これまでに報告 されている実験検討では工作物側に振動を付与する場合の みに留まっている. そこで,本研究では,外周刃側に円振動を付与することで 切断抵抗を減少させ,加工精度の向上や,工具寿命が延長す ることを実験的に検討することを目的としている.本研究で は,振動援用型外周刃スライシング装置を用いて,ソーダガ ラスを工作物として一連の条件で切断実験を行い,切断中の 状態を検討して得られた結果を述べる. 2. 切断抵抗の比較 ここでは,無振動で加工を行った場合と外周刃側に振動を 加えた場合,工作物側に振動を加えた場合の切断抵抗を比較 する.表 1 に主な実験条件を示し,図 2 に切断送り速度と切 断抵抗の関係を示す.切断抵抗は外周刃と工作物が接触する 面積が最大となる範囲で得られる抵抗を平均したものを使 用する. 図 2 から無振動方式に比べ,振動方式で切断を行った場合 の切断抵抗が減少していることが分かる.また,外周刃側に 振動を加えた場合と工作物側に振動を加えた場合を比較す ると,外周刃側に振動を加えた場合の切断抵抗が工作物側に 振動を加えた場合の切断抵抗よりも若干値が大きくなって いる. ここで振動切断における切断抵抗の減少に寄与する値で ある接触抵抗について説明する.振動方式での平均切断抵抗

)

( X

F

nv



は,式(1)のように切断送り速度

X

に接触抵抗

F

c と接触率

η

( X

)

の積を足したものになり,

ϕ

は増加率を示 す3)

)

(

)

(

X

X

F

X

F

nv



=

ϕ



+

c

η



………(1) つまり接触率が小さくなると平均切断抵抗も小さくなる. ここで,本実験の条件から接触率を求めると,切断送り速度 が 40mm/min で鉛直方向に 170µm の振幅で振動を付与した場 合,接触率が 9.15%となることに対して,振幅 100µm の円振 動を付与した場合は 11.50%となる.このことから,外周刃 側に振動を加えた場合よりも,工作物側に振動を加えた場合 において接触抵抗が低いため,切断抵抗がわずかに小さくな ったと考えられる.これらのことから,外周刃側に振動を加 えた場合よりも,工作物側に振動を加えた場合において接触 図 1 振動援用型外周刃方式 表 1 各項目の実験条件 図 2 無振動方式と振動方式の切断抵抗 抵抗が低いため,切断抵抗がわずかに小さくなったと考えら れる.これらのことから,外周刃側に振動を加えた場合にお いて,工作物側に振動を加えた場合と同様に切断抵抗を減少 させる効果があるということが実験結果からも分かった. 切断抵抗の比較 回転数[rpm] 5000 振動数[Hz] 10 外周刃側[μm] 100 振幅 工作物側[μm] 170 切断送り速度[mm/min] 18,42,60,78,102,120,168 切断長さ[mm] 60

(6)

0 2000 4000 6000 8000 10000 40 50 60 70 実験条件 回転数 5000rpm 音圧 レベル (LA )[ dB ] 周波数[Hz] 0 2000 4000 6000 8000 10000 40 50 60 70 実験条件 回転数  5000rpm 送り速度 102mm/min 音圧 レベル( LA )[ dB] 周波数[Hz] 0 2000 4000 6000 8000 10000 40 50 60 70 回転数  5000rpm 送り速度 102m/min 振動数  20Hz 振幅    25μm 音圧 レベル( LA )[ dB] 周波数[Hz] 0 10 20 30 40 50 15μm(42) 25μm(42) 100μm(42) 無振動(42) 25μm(102) 100μm(102) 無振動(102) (mm/min) 表面う ね り 量  μm 3. 振動切断における切断精度 振動方式の場合,加工精度にどのような影響を及ぼすかを 調べた.実験は無振動方式と振動方式(外周刃側振動と工作 物側振動)の場合の表面うねりを比較した.(a)に無振動方 式の場合の結果,(b)に振動方式の場合の結果,(c)に表面う ねりの測定位置を示し,図 4 に各条件で切断を行った際に生 じた表面うねりの最大値のばらつきと,表面うねりの最大値 を平均化したグラフを示す. 図 3 より,振動方式の場合に表面うねりが減少しているこ とがわかる.また,図 4 より,無振動方式と振動方式を比較 した場合,無振動方式において表面うねりの最大値のばらつ きが大きいという結果となった.これは振動を付与すること で切断中の外周刃の弾性変形が抑制されたため4),うねり量 が小さくなり,ばらつきも小さくなったと考えられる.次に, 表面うねり形状が途中で湾曲した形状になっていることが 分かる.これは,切断終了間際に弾性変形していた外周刃が 工作物から分離する過程で元の形状に戻り,その影響を受け て表面うねりが大きくなったものと考えられる. 4. 切断中の騒音測定実験 工作物を切断した場合の騒音を測定した.測定条件は普通 騒音計を使用し,モータ音,無振動方式での騒音,振動方式 での騒音を測定し,FFT 解析を行った.その結果を図 5 に示 す.(a)は主軸モータのみ回転させた場合の騒音,(b)は無振 動方式での騒音,(c)は振動方式での騒音の結果である. 無振動方式と振動方式を比較すると,音圧レベルにほとん ど差がないことが分かる.このことから,振動方式の場合で も切断中の騒音は増加しないといえる.モータ音,無振動方 式,振動方式を比較すると,モータ音のみの場合と比較して 無振動方式と振動方式の 4000Hz から 8000Hz の音圧レベル が大きくなっている.このことから,加工音はこれらの周波 数の音ではないかと考えられる. 5.結 言 本研究では,振動援用型外周刃スライシング装置を用いて, 様々な条件での加工特性を実験によって確認した.得られた 結果を要約すると,以下のようになる. 1) 外周刃側に振動を加えた場合と,工作物側に振動を加え た場合では同様の切断抵抗を減少させる効果があると いうことが分かった. 2) 工作物を切断した場合の表面うねりは,振動を付与する ことで減少し,ばらつきが減少した. 3) 無振動方式と振動方式の切断中に発生する騒音は,ほぼ 変わらないことが分かった. 参考文献 1) 丸井悦男:超精密加工学,コロナ社,(1997) p122, 123,125. 2) 大下秀男:セラミックスの切断加工 (1982) p39. 3) 畝田道雄,塚田広昌,石川憲一,諏訪部仁:機械式円 振動スピンドルを用いた振動外周刃切断方式の基本加 工特性評価に関する研究,2005 年度砥粒加工学会学術 講演会講演論文集,(2005) p31. 4) 畝田道雄,石川憲一,諏訪部仁,畝田道雄:外周刃ス ライシング方式におけるブレードの原点復帰効果に関 する理論的研究,精密工学会誌,66,7 (2000) 1115. (a)無振動方式 (b)振動方式(工作物側振動) (c)測定位置 図 3 切断面の表面うねり 図 4 表面うねりの最大最小値と平均値 (カッコ内の数値は切断送り速度) (a)モータ音 (b)無振動方式 (c)振動方式 図 5 騒音測定結果 工作物側 工作物側 外周刃側 工作物側 外周刃側

(7)

0 100 200 300 400 500 600 700 0 500 1000 1500 Distance mm E rro r fr o m t ru e s o u n d so u rc e po si ti o n m m 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 0 100 200 300 400 500 600 700 0 100 200 300 400

Distance between sensors mm

E rro r fr o m t ru e s o u n d so u rc e po si ti o n m m 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

MUSIC アルゴリズムを用いた音源位置の同定法に関する研究

−同定精度に及ぼす各種因子の影響に関する実験検討−

新井康平(SM3−2) 指導教員:畝田道雄 講師,石川憲一 教授 1.緒 言 近年,機械工学は目覚しい発展を続けている.それに伴い, 各種機械に対して騒音に関する問題が多く扱われるように なっている1)2).それを受け,工作機械など,各種機械の騒 音をできるだけ抑えるという,静穏化技術が必要となってい る. 機械の低騒音化を図るには,まず機械のどこからどれくら いの音が発せられているのかを知ることが大切であり,音源 位置の同定法は,機械の低騒音化と機械の故障の改善にあた る非破壊検査の分野において役に立つと考えられる. そこで本研究は各種工作機械や自動車といった機械の騒 音をできるだけ抑えるという機械の静穏化の観点から,異音 源を特定することを目的とする.また,それら静穏化技術, 異音源特定技術として MUSIC アルゴリズムを適用し,その 性能評価を実験的に検討することにより,機械の診断技術へ の実用化,またはそれらへの応用を目的とする. 2.単一理想音源による実験検討 2.1 実験方法 本実験では,信号発生器を用いてスピーカから理想的な音 を発する場合において,素子間隔,音源までの距離,周波数 をそれぞれ表 1 に示すように変化させ,各種条件下におけ る音源位置の同定精度の比較・検討を行った.実験を行う際 は,図 1 のように音響実験室を使用し,音の反射などがな るべく少ない理想的な状態で行った.音源として用いたスピ ーカは原点(アレー開口中心の延長線上)を基準として,図 1 中の X 軸方向に 50mm 毎に 500mm まで移動させ,それぞ れの位置から発せられる音をサンプリングし解析を行った.

Table 1 Experimental conditions

Distance between sensors [mm] 100,200,300,400 Distance [mm] 500,1000,1500 Frequency of source [Hz] 100,500,1000,2000

Fig.1 Experimental apparatus 2.2 素子間隔を変化させた場合の結果 図 2 に距離 500mm,周波数 1000Hz とした場合の,それぞ れの素子間隔における同定位置の真の音源位置に対する測 定誤差をまとめた結果を示す.ここでの測定誤差は,X 軸方 向の測定誤差

ε

xと Y 軸方向の測定誤差

ε

yの絶対値の和

)

(

=

ε

x

+

ε

y で評価した.また,素子間隔 100mm,200mm のときに解析不能となったものについては,大きな測定誤差 であると見なし,真の音源位置からの測定誤差を解析不能数 ×100mm として黒丸のプロットで示す.この結果から,素子 間隔が狭い場合に比べ,素子間隔を広くした場合のほうが誤 差は小さく,同定精度が高くなることが考えられる. 2.3 距離を変化させた場合の結果 図 3 にそれぞれの距離での,同定位置の真の音源位置に 対する測定誤差をまとめた結果を示す.ここでの測定誤差は 上述と同様の方法で評価した.これらの結果から,距離が離 れるほど同定精度が低下していくことがわかる.

Fig.2 Comparison of error of true sound source location and identified location

(Distance: 500mm, Frequency of source: 1000Hz)

Fig.3 Comparison of error of true sound source location and identified location

(Distance between sensors: 400mm, Frequency of source: 1000Hz) 100∼400mm 500∼1500mm Microphone array Loudspeaker Z Y X

Scanning area based on true location

X-axis:±500mm, Y-axis:±200mm Location of source

Scanning area based on true location

X-axis:±500mm, Y-axis:±200mm Location of source

(8)

-100 0 100 200 300 400 500 600 700 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

Sound source location mm

Id e n tif ie d lo c at io n m m

True sound source location Ex.No.1(X-axis) Ex.No.1(Y-axis) Ex.No.2(X-axis) Ex.No.2(Y-axis) -100 0 100 200 300 400 500 600 700 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

Sound source location mm

Id ent ifi e d lo ca ti o n m m

True sound source location

Cellular phone identified location(X-axis) Cellular phone identified location(Y-axis) Speaker identified location(X-axis) Speaker identified location(Y-axis)

0 50 100 150 200 250 300 0 500 1000 1500 2000 2500 Frequency of source Hz E rro r fr o m t ru e s o u n d so u rc e m m 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 図 4 に距離 500mm,素子間隔 400mm とした場合の,それ ぞれの周波数での,同定位置の真の音源位置に対する測定誤 差をまとめた結果を示す.ここでの測定誤差は上述と同様の 方法で評価する.この結果から,周波数が高いほど同定精度 が向上していくことがわかる. 2.5 考察 上述してきた結果に関して,いずれの場合においても各素 子で受信する音波の位相差がつきやすい条件ほど精度が向 上していることがわかる.このことは,本方式では受信する 音波の位相差から音源位置を同定するため,位相差が大きい ほど精度が向上したものだと考えられる. 3.単一音源による実験検討 上記までの実験では,音源は理想的な単一音(正弦波音) を対象とした実験であるが,ここでは多周波成分を有する音 源として,携帯電話の着信音を対象として実験を行った. 基本的な実験方法は,これまでと同様の方法で行うが,どの ような周波数の音が発生しているのか調べる必要があるた め,周波数解析を行った.図 5 はその結果であり,今回使 用した携帯電話の着信音では,2500Hz が最も強く発せられ ている周波数であることがわかり,この周波数に対して解析 を行なった.図 6 に携帯電話までの距離を 500mm,素子間 隔を 400mm とした場合の実験結果を示す.この結果により, ある程度の同定精度が得られることが確認され,多周波成分 を有する音源に対しても音源位置同定が可能であると考え られる. 4.複数音源を対象とした検討 この実験では,スピーカから 1000Hz の音を発生させると 同時に携帯電話の着信音を発生させ,それぞれの位置を同時 に同定できるか検討したものである.このとき,スピーカは 常に原点に固定しておき,携帯電話は原点から 50mm ずつ X軸方向に移動させ,それぞれの点で音源位置同定が可能で あるか確認した.基本的な実験方法はこれまでと同様である. 図 7 に音源までの距離 500mm,素子間隔 400mm とした場合 の実験結果を示す.この結果から,2つの音を同時に発生さ せた場合であっても,両方同時に音源位置同定を行うことが 可能であると考えられる.

Fig.4 Comparison of error of true sound source location and identified location (Distance between sensors:400mm, Distance:500mm)

Fig.5 Result of frequency analysis on ring tone of cellular phone

Fig.6 Relationship between true sound source location and identified location when cellular phone as

sound source was used (Distance between sensors:400mm, Distance:500mm)

Fig.7 Relationship between true sound source location and identified location when cellular phone and loudspeaker as sound sources were used (Distance between sensors:400mm, Distance:500mm) 5.結論 本研究で得られた結果を要約すると以下のようになる. 1) 素子間隔が狭いと精度が低下する. 2) 距離が離れると精度が低下する. 3) 発生している音の周波数が高い方が精度は向上する. 4) 多周波成分を有する音源の位置同定は可能である. 5) 2 つの音源を同時に同定することが可能である. 6.参考文献 1) 大野麻理恵,佐藤太一,田中基八郎:異音評価に対する 擬音語適用の基礎的検討(第 2 報:擬音語の発生音に着 目した検討),日本機械学会第 3 回評価・診断に関する シンポジウム講演論文集,(2004)29. 2) 畝田道雄,石川憲一,新井康平:マイクロホンの指向性 を考慮した音源位置同定法に関する研究,日本機械学会 第 4 回評価・診断に関するシンポジウム講演論文集, (2005)15.

Scanning area based on true location

X-axis:±200mm, Y-axis:±200mm

Scanning area based on true location

X-axis:±150mm, Y-axis:±150mm

Location of source Scanning area based on true location

X-axis:±200mm (in 2000Hz)

(9)

サブピクセル画像処理を用いた構造物の非接触変形・応力計測法に関する基礎研究

曽根俊和(SM3-37) 指導教員:畝田道雄 講師,石川憲一 教授 1.緒 言 近年,デジタルカメラの高性能化,特に画素数の増加に伴 う画素分解能の向上によって,構造物のひずみ計測に画像処 理を応用する研究が盛んに行われている1).しかし,この 計測法は幾つもの計測誤差要因を有しており,一部実用化さ れているものがあるが,未だに研究レベル的にも十分と言え る状態ではないと考えられている.特に,被測定物のカメラ 方向における剛体移動を誤ったひずみとして計測してしま う特徴を有しており,その補償法の確立が望まれている.そ こで本研究では,計測誤差に及ぼす要因として,被測定物の 剛体移動の影響に注目し,一連の検討を行った.本報告では, 四点曲げ試験を通してこれらを検討した結果を述べる. 2.被測定物の剛体移動が計測精度に及ぼす影響 2-1 剛体移動の再現方法 本方式において,被測定物がカメラ方向に剛体移動する場 合,その移動量を⊿L,レンズと被測定物の距離を L とする と,実際にはひずみを生じないにもかかわらず,理論値とし てε=⊿L/L となるひずみを誤って計測してしまうことに なる.そこで,実際に被測定物を剛体移動させ,それによっ て本方式が受ける影響を計測し,理論値との比較検討を行っ た.図1に剛体移動の実験を行った実験概要を示す.実験 は図 1 のように最小分解能が 0.5μm の精密ステージに固定 した試験片をカメラ方向に前進・後退させながら撮影を行 う.なお撮影に際しては,剛体移動を 0 とする基準位置にて ピント調節を行い,その後は設定変更を行わずに連続して画 像取得を行った. 2-2 剛体移動の実験結果と考察 剛体移動による影響の実験結果を図2に示す.図2で示 す縦軸のひずみは,計測領域全面で得られたひずみの平均値, 横軸の移動量は試験片の前後にわたる移動量の絶対値を表 している.この結果から,理論値と実験結果は試験片の移動 量が 50μm 以下と小さい範囲では一致しているが,試験片の 移動量が大きくなると理論値と計測値の差は大きくなる.こ れは,ひずみの理論値(⊿L/L)はカメラのピントの影響を 考慮しておらず,試験片の移動によって,カメラピントのず れが生じるため,理論値と計測値に差が生じたと考えられる. 以上の結果から,実際の剛体移動による影響の計測は,理論 値とは幾分違った結果が得られた.しかし,得られたひずみ の実験結果にはある程度の直線性が見られ,実験値を用いる ことによって剛体移動による影響の補償は可能であると考 えられる.したがって,この結果を用いて,次より四点曲げ 試験機を用いた剛体移動補償の実験を行うものとする. 3.四点曲げ試験による剛体移動補償実験 3-1 四点曲げ試験の実験装置と実験方法 試験片の剛体移動を測定し,先の実験から得られた値を用 いて計測結果の補償を行う.実験では図3に示すような本 研究用に製作した四点曲げ試験機を用いた.四点式の曲げ試 験は中央部でせん断応力の発生しない純曲げが再現できる など,安定した試験が可能である.試験片には板厚 4mm のア

Fig.1 Experimental set-up configuration

Fig.2 Test result of effect on test piece movement ルミ板を使用した.試験片に加える荷重はロードセルによっ て計測し実験を行う.治具は試験片にねじれの力が発生しな いように上下共に固定はしていない.ここで,本試験機はさ らに治具上部にスラストボールベアリングを設置し,ハンド ルの回転に伴って試験片に加わる回転方向の力を分散させ ることが出来るようになっている.そこで,本実験ではスラ ストボールベアリングを設置する場合と,ボールベアリング を使用せずに試験片が回転方向の力で微小な剛体移動を起 こす場合の 2 通りの方法で検討した.また,撮影領域は試験 片の中央部で,計測領域は撮影領域中央の図3に示した領域 である.撮影は試験片とレンズとの距離が 123mm となる位置 での接写として行った. 実験は無負荷状態の画像と5k N 加えた画像を比較して 行った.試験片の剛体移動の測定に関しては,四点曲げ試験 機の裏側に接触式変位計を設置した.図4に測定位置とし て,撮影領域の裏側に設置した変位計の座標を示す.これら の変位計より得られた値から,試験片の移動後の面の状態を 最小二乗法に基づく計算で求め,先の実験より得られた値か ら計測結果の補償を行う. 0 100 200 300 400 500 -4000 -3000 -2000 -1000 0 1000 2000 3000 4000 T h e o r e t i c a l v a l u e E x p e r i m e n t a l v a l u e F o r w a r d B a c k w a r d Strai n  μ

Test piece movement μ m

Digital camera ⊿L

L=123mm

Area in photograph

(10)

Fig.3 Bending fatigue tester

Fig.4 Set point of displacement sensor Table 1 Measurement result of movement at unit of µm

3-2 曲げ試験を用いた補償実験の結果 はじめに,計測結果の比較検討を行うために,ANSYS によ って計算した四点式曲げ試験の理想的なⅩ軸方向のひずみ 分布を図5(a)に示す.また,図5(b)にスラストボールベ アリング用いて,剛体移動を抑えて実験した計測結果,図5 (c-1)にスラストボールベアリングを使用せずに行った実験 の計測結果,図5(c-2)に(c-1)の結果を補償した結果を示す. 結果はいずれも 5kN の荷重を加えたもので,ひずみ分布図の 左にあるグラフは実線が計測領域の中心,点線はそれぞれ中 心から上下に 9mm の位置のひずみを示している. 図5(a)と(b)を比較すると,計測結果はひずみ分布が ANSYS の解析結果に近い形状を有しており,四点曲げ試験の 特徴である計測領域中心を 0 として上下にひずみ分布が広 がる様子が確認できる.次に,剛体移動を与え,補償を行っ ていない図 5(c-1)のひずみ分布を図 5(a)の ANSYS の結果と 比較すると,図 5(c-1)の結果はひずみ分布が傾いているこ とが確認できる. ここで,変位計による剛体移動の計測結果を表1に示す. 計測値の符号は画像奥手方向に移動していることを示し,表 1 から①・④と③・⑥で計測結果が大きく異なることから 試験片が y 軸周りに回転していることがわかる.そこで,試 験片が回転した場合の影響を,図2の結果を用いて考察する と,計測領域の右辺がカメラに接近し,左辺はカメラから遠 ざかるため,本方式は接近した側にプラス,遠ざかった側に マイナスのひずみを誤って計測してしまうことになる.この ことから,図 5(c-1)の計測結果は計測領域右側がカメラに

Fig.5 Comparison the results of the examination and ANSYS 接近し,左側が遠ざかったため,同図のようなひずみ分布の 傾きが見られたと考えられる. 次に,変位計の計測値から 補償を加えた図5(c-2)を見ると,(c-1)で見られたひずみ分 布の傾きは補償されており,(a)の ANSYS の解析結果に近い 形状をしていることがわかる. 4.結 言 本研究で得られた結果を要約すると,以下のようになる. 1) 被測定物の剛体移動は計測結果に大きな影響を及ぼす. 2) 剛体移動の測定からひずみ分布図の補償が可能である. 参考文献 1) 山口一郎,村田正義,西田聖一,植田敏嗣,萩原英治: レーザー・スペクトルひずみ計の進展,応力・ひずみ測 定シンポジウム講演論文集(第 18 回),61,(1986) ① -130 ② -42 ③ -60 ④ -132 ⑤ -86 ⑥ -4 -15 -10 -5 0 5 10 15 -2500 -2000 -1500 -1000 -5000 500 1000 1500 2000 2500 Y-ax is s tr ain μ X-axis mm -10 -5 0 5 10 15 10 5 0 -5 -10 -15 (μ) X-axis mm Y-a xi s m m -2500 -2000 -1500 -1000 -500.0 0 500.0 1000 1500 2000 2500 -15 -10 -5 0 5 10 15 -2500 -2000 -1500 -1000 -500 0 500 1000 1500 2000 2500 Y -ax is s tr ai n μ X-axis mm 15-10 -5 0 5 10 10 5 0 -5 -10 -15 (μ) X-axis mm Y-axi s m m -2500 -2000 -1500 -1000 -500.0 0 500.0 1000 1500 2000 2500 -15 -10 -5 0 5 10 15 -2500 -2000 -1500 -1000 -500 0 500 1000 1500 2000 2500 Y -ax is strain μ X-axis mm -15 -10 -5 0 5 10 15 -2500 -2000 -1500 -1000 -500 0 500 1000 1500 2000 2500 Y -ax is strain μ X-axis mm 15-10 -5 0 5 10 10 5 0 -5 -10 -15 (μ) X-axis mm Y -axis mm -2500 -2000 -1500 -1000 -500.0 0 500.0 1000 1500 2000 2500 -10 -5 0 5 10 15 10 5 0 -5 -10 -15 (μ) X-axis mm Y -axis mm -2500 -2000 -1500 -1000 -500.0 0 500.0 1000 1500 2000 2500 (a)ANSYS

(b)Test result when rigid movement was canceled by thrust bearing

(c-1)Test result without compensation when rigid movement was applied

30mm 30mm

26mm

O

1

Anvil Compressre load cell

Area in photograph Area in measurement

(c-2)Test result with compensation when rigid movement was applied

(11)

0 2 4 6 8 10 12 14 16 1 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8 比率 本数

日本刀に関する科学的研究

−刀剣形状の関数近似について−

日比野純也 (SM3-57) 指導教員:畝田道雄 講師,石川憲一 教授 1.緒 言 日本の技術の発展は,新しい技術を開発していくもので はなく,「極める」という言葉に代表されるように,今あるコ ンセプトの中でより良いものへと改良をかさねていくもの である.これからの技術開発においても「極める」という基本 的思想は変わらないものだと考えられる.そのような意味で 伝統的な技法を用いて作られている日本刀は,最も洗練され た技術の一つであり,日本を代表する技術の一つであるとい える.このことは刀の性能の点でも金属学的分析により,こ れ以上のものは考えられないほど合理的な物理的構造にな っていることが明らかにされている 1).また,日本刀は「折れ ず,曲がらず,よく切れる」という普通には矛盾する三つの特 性を一体で表現したもので,刀剣中心部分の柔らかい鋼の刀 心で「折れず」が得られ,刀剣の外周を包んでいる薄層構造の 硬い刃金によって「曲がらず,よく切れる」が得られる.この 二種類の鉄の個性を限界まで引き出した造刀技術は,鎌倉時 代にすでに確立されている.日本刀が世界の刀剣史上最高傑 作といわれていることからも,この技術がいかに洗練された 完成度の高いものであるかを知ることができる 1).また,反 りを持った日本刀独特の形状も同様の時代に確立されてい た.しかし,この完成度の高い技術に対する研究のほとんど は,金属学や材料力学的な研究しかなされていないのが現状 である.そこで本研究では日本刀の形状に着目し,力学的に 解析を行うことによって,力学的側面から日本刀の形状の違 いによる機能の違いを解明することを目的としている. ここで本研究において使用される,日本刀の各部分の名 称を記載したモデルを図 1 に示す.日本刀は「棟区」と「切先」 を結ぶ直線を,「長さ」と定義している.「長さ」の直線から 「棟」に至る垂線の最大の長さを,「反り」と定義している. 図1 刀剣各部の名称 2.日本刀の反りの分布について 図 2 は日本刀の比率を測定したモデルである.ここで図 2 のように,切先と棟区を同じ高さに合わせたとき,反りの一 番深くなる点で分け,切先方向①の長さを 1 としたときの茎 尻(なかごじり)方向②の長さを測った.図 3 は図 2 のモデル を元にして「草創期の日本刀−反りのルーツをさぐる」,「日 本の刀―鉄のわざと武のこころ」,「正宗―日本刀の天才とそ の系譜」という文献三冊の中からランダムに選んだ 50 振り について比率を調べ,分布をグラフで表したものである. 図 3 から分かるように,図 2 のモデルは 1:1.3 の比率を中 心とした正規分布を取った.このことから,日本刀の形状 は,1:1.3 の比率で分かれるものが最も多いと考えられる. 図2 刀剣長さの比率定義 図3 刀剣長さの比率分布 3.日本刀の関数化 デジタルカメラ及びスキャナを用いて本研究室所有の模 擬刀と文献の『草創期の日本刀−反りのルーツをさぐる』の 中から毛抜き型太刀と國友を,パソコン上に取り込み画像デ ータを作成した.画像データを MATLAB で作成された刀剣形 状解析プログラムを用いて解析し,図 4 で示す 1∼5 の各曲線 を関数化した.関数は 2∼7 次まで求め,実際の刀剣形状に近 く,有限要素法を用いた解析プログラム ANSYS で解析を行う ことに最も適している日本刀モデルを選定した.2 の部分の 関数曲線と 5 の部分の関数曲線の重なっている各接点間の, 開きの大きさを求め,これを元に 2∼7 次の中で最適な次数 を決定した.図 4 で表されている 2 の部分の関数曲線と 5 の 部分の関数曲線の刃の部分は,同じ部分を解析しているため 本来重なるはずである.しかし 5 の部分の関数曲線は,茎部 分を含む解析をおこなっているため 2 の部分の関数曲線と 完全に重なることはない.そこで刃の部分で重なっている 2 つの関数の,同じ X 座標をもつ各点での開きの平均を求めた. ここでいう開きとは,刃の部分を画いている二つの曲線の間 の大きさである.表現された刀剣形状は開きが小さくなるほ ど,正確な解析が行われていることになるので,開きが小さ くなるほど良い形状であるといえる.図 6 から解るように, 次数が大きくなるほど開きは小さくなっている.このことか ら次数が大きくなるほど,正確なモデルができると考えられ る.しかし 6 次の開きと 7 次の開きでは,ほとんど差がなくな っている.そのため今後の解析では,時間短縮のため次数の 少ない 6 次のものを使用する. 図 4 は MATLAB によって解析された各関数曲線の位置を示 したものである.図 5 は解析した関数データを元に Excel を 用いてグラフ化したものの一例である.MATLAB の解析結果 は,解析する日本刀の長さを 1000 としたときの形状を表し て い る た め , 実 際 の 形 状 の 相 似 図 形 と な っ て い る . ま た Excel は MATLAB の解析データを元にしているため,Excel グラフは単位を持っていない.図 6 は最適なモデルを決定す るための評価グラフである.この評価グラフも,Excel デー タを元にしているため単位を持たない.

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-250 0 250 -1000 -750 -500 -250 0 250 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 模擬刀 毛抜き型太刀 国友 開き 2次 3次 4次 5次 6次 7次 0 10 20 30 40 50 0 0.5 1.0 1.5 2.0 相当 応 力 [M P a] 時間[ms] 0 10 20 30 40 50 -0.008 -0.006 -0.004 -0.002 0 0.002 0.004 0.006 0.008 変位 [ µ m] 時間[ms] 0 10 20 30 40 50 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 相当 応 力 [M P a] 時間[ms] 0 10 20 30 40 50 -4 -2 0 2 4 6 変位 [ µ m] 時間[ms] 図4 関数曲線図 図5 Excel グラフ 図6 適正次数評価グラフ 4.日本刀形状の CAD 化とそれを用いた有限要素解析 6 次の関数の各節点の値を,打ち込みポリラインで CAD 上 に日本刀の形状を画き尺度を合わせた.これを有限要素解析 プログラムである ANSYS に取り込み,厚みを与えメッシュを 切った.模擬刀の CAD 形状を図 7 に示す.図 8 は図 7 を ANSYS に取り込み ANSYS 上で 0.007m の厚みを与え,メッシュを切っ たものである. 図7 CAD モデル 図8 ANSYS モデル 5.拘束条件による実験結果の違いに付いて 実際の日本刀の固定は,茎を柄でおおい目釘を打ち込み固 定するというものである.しかし過去の研究では,茎を全自 由度固定したものを解析していた.そこで茎を全自由度固定 したものと,任意の目釘穴一点で固定したものを比べ拘束条 件によって結果に違いが出るのか,目釘穴の位置によって刀 剣への影響に違いがあるのかを調べた.図 9 は切先から 100mm の点に 5N の荷重を 0.001s 間かけ,茎を全自由度拘束し たものである.図 10 は目釘穴のみで全自由度固定をしたもの である.図 11 は,図 9 の条件で模擬刀の刃区を解析したもの である.図 12 は,図 10 の条件で模擬刀の刃区を解析したもの である.このときの目釘穴の位置は,X 軸は原点から茎尻方向 に 80mm の点,Y 軸は茎を半分に分ける点である. 図 11 と図 12 を比較すると,相当応力では目釘穴で固定し た方が振幅は小さくなり,周期は長くなっている.また,変位 でも同じような変化が見られる.これは,固定法が解析結果 に大きな影響を与えていることを示しており,正確な解析結 果を得るためには,実際の固定方法に近づける必要があると 考えられる.また,これらの結果から目釘のみの固定の方が, 刀剣内部にかかる負担が少ないことが分かる. 図9 全拘束図 図 10 目釘穴拘束図 (a) 相当応力 (b) 変位 図 11 茎全拘束解析結果(刃区) (a) 相当応力 (b) 変位 図 12 目釘 80mm 解析結果(刃区) 6.結 言 本研究で得られた結果を要約すると,以下のようになる. 1)日本刀の形状は 1:1.3 の比率で分かれるものが最も多い. 2)解析プログラムを用いることにより,一つの画像データか ら誰が作っても同じ形状のモデルを作成することができ るようになった. 3)日本刀の画像データさえあれば,正確な応力解析が簡単に 出来ようになった. 4)固定法が解析結果に大きな影響を与えている. 5)正確な解析結果を得るためには,実際の固定法に近づける 必要がある. 6)目釘のみの固定の方が,刀剣内部にかかる負担が少ない. 参 考 文 献 (1)風見 明『「技」と日本人』工業調査会(1995 年)pp26 ∼28 (2)朴木 卓『工学設計Ⅲファイナルレポート 日本刀に関 する科学的研究』(平成 15 年) (3)財団法人佐野美術館『草創期の日本刀−反りのルーツを さぐる』(平成 15 年) (4)東京国立博物館『日本の刀―鉄のわざと武のこころ』 (1997 年) (5)財団法人佐野美術館『正宗―日本刀の天才とその系譜』 (平成 14 年)

(13)

ANSYS 基礎解析用操作手順マニュアルの作成

齋藤 惠里(SM3-25) 指導教員:畝田 道雄 講師,石川 憲一 教授 1. 緒 言 3 次元 CAD が製品開発現場に導入され定着しつつある今, 3 次元 CAD データを CAE 等の専用プログラムを用いて解 析し,製品開発に反映させる設計手法が取り入れられている. CAE は,コンピュータ内において仮想の製品モデルを作 成し,応力やひずみを含む構造解析や機構解析,伝熱解析等, あらゆる状況を設定してシミュレーションするプログラム の略称である.著者が在学する金沢工業大学では有限要素法 を用いた CAE プログラムの一つである ANSYS が導入 されている.世界的にみて3 次元 CAD を高等教育機関の設 計教育に使用し始めたのは1995 年前後であると考えられ, 日本の3 次元 CAD を使用した設計教育はここ数年前から本 格的に始まったに過ぎない(1).CAE を用いた製品開発が主 流になると考えられる現在,CAE の知識,経験を持つ人材 が求められることは想像に難くない.しかし,CAE を使用 した設計教育環境は,文献不足や指導教員不足等から十分に 学べる環境状況下ではないのが現状である.金沢工業大学の ANSYS においても,実際の設計に大いに活用するためには, 基本操作手順や有限要素法の基礎知識などを知っておかな くてはならないものの,少ない参考文献,英訳のHelp 機能 等が必要な知識を得る上で大きな障害となっている.そのた め,本プロジェクトでは ANSYS を実際の設計に大いに活 用させていくために,基礎解析用における ANSYS の操作 手順マニュアル(以下:マニュアル)を作成した. 2. 作成したマニュアルの目次と概要 マニュアルの簡易目次を図1 に示す.ANSYS は有限要素 法を用いたCAE プログラムであるため,有限要素法の基礎 をある程度知識として知っておく必要がある.このことから, 第1 章では CAE の定義,活用にあたっての心構えや,有限 要素法における最低限の基礎を説明している(解析対象が有 限要素法によってどのようにモデル化されるか等). 第2 章では,ANSYS を使用する際の注意事項や画面構成 について説明している.また,第 3 章では解析モデルの作 成における補助的な機能を主に説明している.ここでは,モ デルを作成する基本的な操作(線,面の作成等)は簡潔に説明 した.補助的な機能としては WP(ワーキングプレーン: ANSYS における座標系)の操作方法,ブーリアン演算(演算 子を組み合わせて演算処理を行いモデルを作成する技法の 1 つ)等がある(2) 第 4 章では静解析について簡単に説明している.また, この第 4 章において接触解析と自重解析(重力による解析) の解析事例を説明した. 第5 章では動解析について説明している.動解析に焦点 をあてて説明しているのは,動解析が静解析に比べ使用頻度 が高いものの,分かりやすい参考文献が少なく,明確な定義 が必要と判断したためである.この第 5 章において,第 6 章から第 8 章の各動解析が,どのような分野でどのような 物を対象として解析が行われているかを例にあげ,解析を行 う際の指針として説明した. 目次 緒言 1.ANSYS の定義 1.1 CAE の定義 1.2 CAE を活用するにあたって 1.3 ANSYS について 1.4 有限要素法の基礎 2.ANSYS の基礎的機能解説 こ2.1 ANSYS の起動

こ2.2 GUI(Graphical User Interface)

3.解析モデルのモデリング解説 4.静解析 5.ANSYS による動解析 こ5.1 動解析の定義 こ5.2 線形構造解析と非線形構造解析 6.時刻歴応答解析 こ6.1 時刻歴応答解析の定義 こ6.2 時刻歴応答解析の機能説明 こ6.3 時刻歴応答解析の基礎解析 7.モーダル解析 8.周波数応答解析 9.応用解析事例 こ9.1 外周刃による振動切断状況下における変形挙動 結言 参考文献 謝辞 付録A:画像から CAD データに変換する方法 ※6 の項目のサブタイトル形式は 7,8 の項目も同様. 図1 簡易目次 第6 章から第 8 章では動解析の中でも代表的な解析方法 である時刻歴応答解析,モーダル解析,周波数応答解析につ いて説明している.ANSYS ではこれらの他にスペクトル応 答解析,ランダム振動解析といった解析方法があるが,プロ ジェクト期間や使用頻度等から解説を見合わせた. 本プロジェクトでは基礎解析の手順だけではなく,実際に 研究として解析を行えることを考えてマニュアルを作成し た.そのため,所属している研究室の研究テーマの中から 外 周刃の振動切断状況下における変形挙動(以下:外周刃の解 析) の解析手順を第 9 章で解説する.外周刃の解析は作成 したマニュアルを実際に実用したものであり,これまで説明 してきた基礎解析の応用となる.この第 9 章は本プロジェ クトのオリジナリティを象徴するものである. 以下ではマニュアルの主要部分である第6 章から第 9 章 までの各内容の特徴を述べる. 3. 第 6 章∼第 8 章:各種動解析 マニュアルにおける主要部分は,第6 章から第 8 章の各 動解析が説明されている部分である. 第6 章では,時刻歴応答解析について説明している. 時 刻歴応答解析(Transient Dynamic Analysis) とは,時間軸 に依存する荷重を入力することによって,時間と共に変化す る構造各部の応答(変位,ひずみ,応力,反力等)を求める解 析手法である.説明後,時刻歴応答解析の基礎理論である直 接時間積分法(時間を微小な刻みΔt に分割した後,運動方程 式を差分近似し,初期条件をもとにして微小な時間刻みΔt ずつ進みながら応答を求める方法の総称)について簡単に説 明している.

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図2 内容説明時に交える図の一例 その後,ANSYS において時刻歴応答解析を選択した際に 関係する基礎的な機能に対して,図 2 のように,図を交え ながら解説している(各章全てに共通). 第 7 章では,モーダル解析について説明している. モ ーダル解析(Modal Analysis) は,構造物の振動特性(固有 振動数,モード形状等)を求める解析手法である.説明後, 固有値問題の説明から,固有値解法の簡単な理論について説 明している.そして,ANSYS において選択できる様々な固 有値解析法を,前述した固有値解法の理論のもとで定義と特 徴を述べていく.このとき,数学的な説明は行わない. 第8 章では,周波数応答解析について説明している. 周 波数応答解析(Frequency Response Analysis) は,時間と 共に正弦波的(周期的)に変化する荷重に対して,構造物の定 常応答を求める解析手法である.説明後,周波数応答法につ いて説明している.周波数応答法とは,伝達関数の物理的意 味を利用し,様々な角周波数の正弦波を入力することにより, 解析対称の動的特性を近似する伝達関数を求めるための方 法である.数ある周波数応答法の中でも,周波数解析に最も 広く用いられているのが高速フーリエ変換(通称:FFT)で ある.ANSYS においても,この FFT が用いられており, FFT の基礎であるフーリエ級数展開,フーリエ変換,離散 フーリエ変換,高速フーリエ変換までの一連の流れを簡単に 説明している.このとき,フーリエ変換における数学的説明 は省略している. 4. 第 9 章:応用解析事例【外周刃の解析】 第9 章では,外周刃の解析について ANSYS の一連の解 析手順を説明している.この外周刃の解析はあくまでも 1 つの事例を示したものであり,他にも数多くの解析方法が存 在する.ここでは,外周刃の解析について具体的に述べると 共に,CAE を用いて解析することの位置付けを示す. 図3 実際に解析で用いる外周刃の状態図 図 3 は,実際に解析を行う外周刃の状態図を示したもの である. 外周刃による切断は,非常に薄い砥石(ブレード[blade]) を使用(図 3 の外周刃の厚さは 1.0 [mm])し工作物を切断す る研削切断法であり,大きな切込みを与え,工作物を低速で 送り一度に切断するクリープフィード(creep-feed)方式にあ たる(3).外周刃の解析に用いる研削砥石はその薄い形状から, 撓みに対する剛性が低く,剛性は厚さの 3 乗に影響するた め,厚さが1/2 の場合における剛性は 1/8 となる.よって, 厚みが薄くなるほどブレードの弾性撓みが問題となる.その ため,図 3 のようなフランジを用いて外周刃を固定するこ とになる.弾性変形を測定する方法は,一般的に弾性リング 式動力計や圧電型動力計を用いることが多い.しかし,これ らの測定方法は,動力計挿入による研削系への影響,電化増 幅器の低域特性など問題点が指摘され,CAE によるシミュ レーションが期待されている.図 4 に本プロジェクトの ANSYS における外周刃の解析の様子を一部分であるが,紹 介する. 図4 ANSYS における解析の様子 5. 結言 本プロジェクトから得られた結果をまとめると以下のよ うになる. 1:基礎の動解析を中心に詳しく機能説明をすることで, 1:解析の初級者に分かりやすいマニュアルを作成するこ 1:とが出来た. 2:ANSYS の機能説明だけでなく,解析全般における基礎 2:的な説明をマニュアルで説明することによって,様々 2:なCAE を用いて解析することが出来る. 3:外周刃の解析は一例に過ぎず,より良い解析方法を模 3:索することが今後の課題として求められる. 参考文献 (1) 創造的設計研究会Ⓒ,CAD/CAE で学ぶ実践機械設計,工業調 査会,(2002) (2) 日本機械学会,計算力学ハンドブック JSME Computational Mechanics Handbook,日本機械学会,(1998) (3) 庄司 克雄,研削加工学,養賢堂,(2004) ※ 本プロジェクトで作成されたマニュアルは,金沢工業大学にお いてANSYS を通じて有限要素法による構造解析を行う学生を対象 に,教育・非営利を目的として作成されたものです. フランジ 外周刃 工作物

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自動押印機の改良設計・製作

指導教員:畝田道雄 講師,石川憲一 教授 1137570 SM3-68 宮原貴之 1.緒 言 現在,本学での学位記(卒業証書)の押印には平成 14 年度 に作成された自動押印機(回転機構型)が用いられている. その自動押印機は昨年度までの3 年間にわたって使用され てきたが,使用に当たっての不具合の発生,また故障を生じ ていた. そこで,今年度の卒業製作として,本プロジェクトでは改 良型の自動押印機の設計・製作に着手することになった. 過去3年間の押印作業は朱肉を印鑑に塗布するスポンジ が回転式のものを主に使用している.これは連続して押印を 繰り返す際に安定して朱肉を塗布できる機構であるためで ある.この発案はとても優れたものであり,今年度の自動押 印機の製作にも用いられている. 2.製作した自動押印機の概案 2−1 外観 今年度製作した自動押印機の外観を図1に示す. 図1 今年度製作の自動押印機 2−2 問題点と改善点の提示 表1 平成 14 年度製作の自動押印機の問題点と改善案 問題点 改善案 スイッチが押しにくい 新型スイッチボックスの 製作 朱肉の固定が甘い 朱肉固定器具の設置 押印作動中に 止められない 緊急停止,原点復帰 ボタンの新規設置 LED の照射位置が 分かりずらい レーザポインタ に変更 マイクロスイッチの故障 押しボタン式のスイッチに 変更 印鑑の固定が弱い 印鑑固定器具の見直し 2−3 問題箇所と改善後の比較 上記した2−2の6個の問題点を実物の写真図を用いて 比較,検討する. 問題点1:スイッチが押しにくい スイッチとは学位記に押印する際に押すボタン式スイッ チのことで,そのスイッチが押しにくにというのは性能的な ものではなく物理的なものである.具体的にはスイッチの位 置,大きさがある. 図2 H14 製作スイッチ 図3 今年度製作スイッチ 図2に示した写真が平成14年度製作もののスイッチであ る.次に図3に示した写真が今年度製作のスイッチボックス である.外見も大きく変化しているが一番の違いはスイッチ ボックス本体の取り付け位置である.H14 年度製作のスイッ チボックスは押印機本体でなくその下のラックに固定され ている.それに対し今年度製作のスイッチボックスは押印機 本体に設置されている.そのうえ取り付け位置が前方になる. これらによって押印の度に大きな動作が必要なくなる.そし て,ボタン自体の大きさにも配慮し,大型のものに変更され ている.その上メンテナンス性も考慮した設計になっている. 問題点2:朱肉の固定が甘い H14 年度に製作された押印機は図4に示すように朱肉を 固定する機構が無い.そのため朱肉台の上にセットする際に は輪ゴムで固定している.実際これは押印を繰り返すうちに 朱肉がずれてしまうことや異音が発生することがある. そこで今年度の製作では朱肉固定機構を設けた.製作にあ たり問題点は朱肉のケースが円形であることである.より安 定感と取り外しの安易さを考慮し図5に示すように1面と 2点で朱肉を固定する機構とした. 1面と1点は固定されている.残る1点がねじ式になって おり,取り外しの際はそのねじを調整する機構になっている. また,ねじは工具を使わずに使用できるように蝶ねじがセッ トされている. 図4 H14 製作朱肉台 図5 今年度製作朱肉台

Table 1   Experimental conditions  工作物回転速度  平均研削圧力  研削液  研削時間  19 [rpm] 30 [kPa]  加工液(水道水で 2%に希釈) 1 分ごと 
Table 1  Experimental conditions
Table 1  Measurement result of movement at unit of µm
図 2  内容説明時に交える図の一例  その後, ANSYS において時刻歴応答解析を選択した際に 関係する基礎的な機能に対して,図 2 のように,図を交え ながら解説している(各章全てに共通).    第 7 章では,モーダル解析について説明している.“モ ーダル解析(Modal Analysis)”は,構造物の振動特性(固有 振動数,モード形状等)を求める解析手法である.説明後, 固有値問題の説明から, 固有値解法の簡単な理論について説 明している.そして, ANSYS において選択できる様々な固 有値

参照

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