一般論文~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
小 森 政 嗣* 、川 村 智**、横 山 卓 未***、森 下 佳 昌***
Quantitative Analysis of the Shapes of Liquid Soap Bottles
Using Elliptic Fourier Descriptors
Masashi KOMORI*, Satoru KAWAMURA**, Takumi YOKOYAMA*** and Yoshimasa MORISHITA***
本研究では、楕円フーリエ記述子と主成分分析を用いて、ボトル形状を定量的評価する手法の構築を試みた。楕円フ ーリエ記述子は、物体の輪郭などの二次元閉曲線を解析する手法であり、これまで生物の形態学的解析に用いられてき た。本研究では17 種のボディソープボトルの輪郭形状の楕円フーリエ解析で得られた多変量のフーリエ係数に主成分分 析を行うことで、ボトルの主要な形態上の特徴を検討した。その結果、各主成分はボトルの丸さ、重心の垂直位置、肩 部形状と関連していることが示された。さらに、SD 法によりボトル輪郭形状の印象評価をさせた結果、第 1 主成分は「美 しい」、「上品な」といった印象と、第2・第 3 主成分は「アクティブな」、「ユニークな」といった印象と関連している ことが示された。また、様々な印象に対応するボトル形状をフーリエ逆変換によって再構成し、再構成されたボトル形 状が意図した印象を与えることができるかも検証した。
This study aims at establishing a quantitative method to evaluate bottle shapes by using a combination of elliptic Fourier descriptors (EFDs) and principal component analysis (PCA). EFDs are used for analytically parsing closed, two-dimensional contours and have been applied to evaluation of biological shapes. Using EFDs, we converted the contours of 17 body soap bottle shapes into multivariate Fourier coefficients and performed a PCA on the Fourier coefficients to extract major morphological features of body soap bottles. The principal components (PCs) were found to be related to the roundness of the bottles, their vertical location of the center of gravity, and form of the shoulder of the bottles. Participants rated their impressions of the bottle contours on a seven-point semantic differential scale. The first PC of bottle shapes was linked to impressions of “beautiful” and “refined.” Both second and third PCs were related to impressions of “active” and “unique.” Moreover, bottle shapes corresponding to each impression within the set of impressions were reconstructed using inverse Fourier transformations. The reconstructed bottle shapes were assessed to determine if they conveyed the intended impressions. キーワード:形状、デザイン、楕円フーリエ記述子
Keywords : Shape, Design, Elliptic Fourier Descriptors
楕円フーリエ記述子を用いたボディソープボトル
形状の分析と評価
*大阪電気通信大学(〒572-8530 大阪府寝屋川市初町18番の8号), Osaka Electro-Communication University, Neyagawa, Osaka 572-8530, Japan, TEL: (072)824-1131, FAX: (072)824-0014, Email: [email protected]
** 千歳科学技術大学, Chitose Institute of Science and Technology *** クラシエホームプロダクツ㈱, Kracie Home Products, Ltd.
1. 緒 言 ボ デ ィ ソ ー プ や シ ャ ン プ ー な ど の 香 粧 品 を 購 入 す る 際 、 消 費 者 は 製 品 を 実 際 に 使 用 し て 確 認 す る こ と は 通 常 難 し い 。 そ の た め 、 製 品 が 消 費 者 の 求 め る 特 性 を 有 し て い る か を 消 費 者 が 判 断 す る 手 が か り は 限 ら れ て い る 。 そ れ ら の 手 が か り の 中 で も パ ッ ケ ー ジ デ ザ イ ン は 重 要 な 要 素 の 一 つ で あ る 。 パ ッ ケ ー ジ デ ザ イ ン が 製 品 の 特 性 や イ メ ー ジ を 反 映 し た も の で あ る な ら ば 、 ま だ 商 品 を 購 入 し た こ と が な い 消 費 者 で あ っ て も 商 品 の 特 性 を 把 握 す る こ と が 可 能 に な る 。 こ の よ う に 、 香 粧 品 や 石 鹸 等 な ど の パ ッ ケ ー ジ デ ザ イ ン に お い て は 、 タ ー ゲ ッ ト と な る 消 費 者 の ニ ー ズ に 合 致 し た パ ッ ケ ー ジ デ ザ イ ン を 行 う こ と が 非 常 に 重 要 と な る 。 香 粧 品 の 容 器 の デ ザ イ ン の 中 で も 、 容 器 形 状 は 容 器 プ リ ン ト と 並 び デ ザ イ ン を 構 成 す る 重 要 な 要 素 で あ る 。 し か し 、 形 状 を 定 量 的 に 扱 う こ と は 簡 単 で は な い 。 こ の た め 、 従 来 、 工 学 的 な デ ザ イ ン 支 援 手 法 に お い て は 、 形 状 は な ん ら か の カ テ ゴ リ 変 数 ( た と え ば 丸 、 四 角 と い っ た 分 類 ) と し て 扱 い 、 数 量 化 理 論 な ど に 基 づ き 解 析 さ れ る こ と が 一 般 的 で あ っ た 。 し か し 複 雑 な 形 状 の 違 い を 十 分 に 網 羅 で き る カ テ ゴ リ を 構 成 し 、 ま た そ れ ら の カ テ ゴ リ に 客 観 的 に 分 類 す る こ と は 容 易 で は な い 。 そ の た め 、 従 来 の 形 状 評 価 手 法 で は 複 雑 な 形 状 を 扱 う こ と は 難 し か っ た 。 現 状 で は 、 デ ザ イ ナ ー の 経 験 や 知 識 に 頼 っ て 容 器 形 状 の デ ザ イ ン が 行 わ れ て い る 。 そ こ で 、 本 研 究 で は 輪 郭 形 状 を 多 変 量 デ ー タ に 変 換 す る こ と が 出 来 る 楕 円 フ ー リ エ 解 析(Elliptic Fourier Analysis) 1)に 着
目 し た 。 こ こ で 形 状 と は サ イ ズ や 向 き の 違 い や 変 位 ( 位 置 移 動 ) と 独 立 し た 幾 何 学 的 情 報 と 定 義 す る 。 形 状 を 定 量 的 に 比 較 す る 手 法 は 、2次 元 や 3次 元 の 標 識 点 座 標 を 用 い る 手 法2)3)と 、輪 郭 な ど の 曲 線 を 用 い る 手 法 に 大 別 さ れ る 。 こ れ ら の 手 法 は と も に 、 形 状 を カ テ ゴ リ に 分 類 す る 手 法 と 異 な り 、 分 析 結 果 を も と に 形 状 を 再 構 成 す る こ と が で き る と い う 長 所 を 持 つ 。 本 研 究 で 用 い る 楕 円 フ ー リ エ 解 析 は 、 輪 郭 に 基 づ く 形 状 比 較 の 代 表 的 な 手 法 で あ り 、 輪 郭 の よ う な 閉 曲 線 を 周 期 関 数 と し て 捉 え 、 そ の フ ー リ エ 級 数 展 開 に よ り 導 出 さ れ た フ ー リ エ 係 数 に よ り 形 状 を 近 似 し 解 析 す る も の で あ る 。 こ れ ま で 、 楕 円 フ ー リ エ 記 述 子 は 、 穀 物 の 種 子 判 別 な ど 動 植 物 の 器 官 の 形 状 解 析 や4)-6)、工 業 製 品 の 評 価7)、出 土 品 の 考 古 学 的 分 析8)な ど に 利 用 さ れ て き た 。 こ れ ら の 例 か ら も 楕 円 フ ー リ エ 記 述 子 は 微 細 な 形 状 の 違 い を 定 量 的 に 比 較 す る こ と が で き る 手 法 で あ る と い え る 。 本 研 究 で は 、 日 常 的 に 使 わ れ る 香 粧 品 の 代 表 的 な 例 と し て ボ デ ィ ソ ー プ ボ ト ル を 取 り 上 げ 、 楕 円 フ ー リ エ 解 析 に よ り ボ ト ル 容 器 形 状 を 定 量 的 に 解 析 す る 。 解 析 対 象 と な っ た ボ ト ル 形 状 は 楕 円 フ ー リ エ
解 析 に よ っ て そ れ ぞ れ が 多 変 量 の 数 値 デ ー タ に 変 換 さ れ る 。 ま た 、 ボ ト ル 形 状 の 印 象 評 価 実 験 を 行 い 、 ボ ト ル 形 状 と 印 象 と の 対 応 関 係 を 明 ら か に す る 。 ま た 、 印 象 語 か ら ボ ト ル 輪 郭 形 状 を 再 構 成 す る 手 法 を 提 案 し 、 手 法 の 有 効 性 を 検 討 す る 。 2. ボトル輪 郭 形 状 の分 析 2.1 サンプル 日 本 国 内 で 一 般 に 市 販 さ れ て い た ボ デ ィ ソ ー プ の う ち 、 相 対 的 に 高 い シ ェ ア を 持 つ 製 品 か ら17 種 類 を 解 析 対 象 と し た ( こ れ を サ ン プ ルA—Qと する )。サン プル A,D,Gは特 にシ ェアが 高い 製品で ある 。 た だ し 、 デ ィ ス ペ ン サ の 形 状 が ワ ン ド ロ ッ プ 型 の も の の み を 解 析 対 象 と し 、 形 状 が 大 き く 異 な る ポ ン プ フ ォ ー マ ー 型 の ボ デ ィ ソ ー プ は 解 析 対 象 外 と し た 。 各 ボ デ ィ ソ ー プ ボ ト ル の 正 面 画 像 を ス キ ャ ナ に よ り 取 得 し た 。 こ の と き デ ィ ス ペ ン サ の 向 き は 全 て 左 向 き と し た 。 さ ら に 、取 得 し た 画 像 に 対 し ノ イ ズ の 除 去 と2 値 化 処 理 を 行 い( Fig.1)、輪 郭 抽 出 処 理 を 行 う こ と で 輪 郭 座 標 を 求 め た 。
Fig.1 Binarized frontal view images of liquid soap bottles (Sample A, B and C)
2.2 楕 円 フーリエ解 析 各 ボ ト ル に つ い て 求 め ら れ た 輪 郭 に 対 し て 楕 円 フ ー リ エ 解 析 を 行 う 。 楕 円 フ ー リ エ 解 析 で は 、 輪 郭 上 の あ る 点S か ら 出 発 し 、 輪 郭 上 を 一 定 の 速 度 で 周 回 す る 点 P を 考 え る 。 こ こ で 、 点 P の 時 刻 t に お け るx, y 座 標 を そ れ ぞ れ x(t), y(t) と 表 す と 、 点P は 輪 郭 上 を 1周 す る ご と に 出 発 点S に戻っ てく るため 、x(t),y(t) は周 回 時 間T を 周 期 と す る周 期 関 数 とな る 。 周期をもつ関数はフーリエ級数により記述 で き る の でx(t),y(t) は以下のようになる。
∑
= ⎟ ⎠ ⎞ ⎜ ⎝ ⎛ + + = N n n n T t n b T t n a a t x 1 0 cos2 sin2 2 ) ( π π∑
= ⎟ ⎠ ⎞ ⎜ ⎝ ⎛ + + = N n n n T t n d T t n c c t y 1 0 cos2 sin2 2 ) ( π π こ のan,bn,cn,dn が 楕 円 フ ー リ エ 記 述 子 の 係 数 に な る 。 た だ し 、 取 得 さ れ た 輪 郭 は 互 い に 大 き さ や 向 き が 異 な る た め 、 以 下 の 式 で 、第1調和 楕円 の半 長軸の 長さ を 等 し く す る ス ケ ー リ ン グ を 行 う と と も に 、 半 長 軸 の 向 き が 同 一 に な る よ う 位 相 を 揃 え る 標 準 化 を 行 っ た ( Fig.2)。Fig.2 Standardized contours of the 17 samples
) 0 ( ) ( ) ( 2 arctan 2 1 ) 2 0 ( arctan sin cos ) ( cos sin sin cos cos sin sin cos 1 2 1 2 1 2 1 2 1 1 1 1 1 * 1 * 1 * 1 * 1 2 1 2 * 1 2 * 1 * * * * * * * * * * π θ θ π ψ ψ θ θ θ θ θ θ ψ ψ ψ ψ ≤ ≤ ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎣ ⎡ − − + + = ≤ ≤ ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎣ ⎡ = ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎣ ⎡ ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎣ ⎡ = ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎣ ⎡ + = ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎣ ⎡ − ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎣ ⎡ ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎣ ⎡ − = ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎣ ⎡ ただし d b c a d c b a a c d c b a c a c a E n n n n d c b a E d c b a n n n n n n n n n n n n 標 準 化 さ れ た 係 数 を an**, bn**, cn**, dn** と し 、本 研究 ではこ れら の係数 を用 い る 。 な お 、 式 中 の Eכ は 第 1 調和 楕円 に 基 づ く 大 き さ の 標 準 化 係 数 、θ は 第 1 調 和 楕 円 に 基 づ く 向 き の 標 準 化 係 数 、Ψ は 計 測 開 始 点 の 位 置 を 揃 え る 標 準 化 係 数 で あ る 。 本 研 究 で は 第 80 調和 までの 係 数 に よ り 輪 郭 形 状 の 近 似 を 行 っ た 。 こ の と き 1 枚の画 像の 輪郭よ り an**, bn**, cn**, dn**の 4 係数 × 80 調 和で 320 の 楕 円 フ ー リ エ 記 述 子 の 係 数 が 得 ら れ る 。 2.3 形 状 の主 成 分 分 析 楕 円 フ ー リ エ 解 析 に よ り 、 所 与 の ボ ト ル の 側 面 輪 郭 形 状 は320 次 元の変 数( an**, bn**,cn**,dn**の4 係数× 80調 和 )で 表現 さ れ る 。 し か し 、 こ の ま ま で は 次 元 が 多 く 解 釈 が 困 難 で あ る 。 楕 円 フ ー リ エ 解 析 で は 、 係 数 に 対 し 主 成 分 分 析 を 行 う こ と で 、 形 状 の 差 異 の 主 要 な 成 分 を 抽 出 し 、 形 状 を 少 数 の 主 成 分 得 点 で 表 現 す る こ と が し ば し ば 行 わ れ る9)。本 研 究 で も 、分 散 共 分 散 行 列 に 基 づ く 主 成 分 分 析(PCA) を 行 い 、寄 与 率 の 高 か っ た 第3主 成分 まで を 解 析 対 象 と し た ( 寄 与 率: PC1, 71.5%; PC2, 9.5%; PC3, 6.4%; 累 積 寄 与 率,87.4%).各 ボト ルの主 成分 得点を Fig. 3 に 示 す 。 M I K Q B A P F J L H G O R D E PC2 SCORE 2.00 1.00 .00 -1.00 -2.00 PC1 SCORE 2.00 1.00 .00 -1.00 -2.00 C (a) M I K Q B A P F J L H G O R D E PC3 SCORE 2.00 1.00 .00 -1.00 -2.00 PC1 SCORE 2.00 1.00 .00 -1.00 -2.00 C (b)
Fig. 3 Principal component scores on (a) the first and the second principal components and (b) the first and the third principal components
各 主 成 分 軸 と 輪 郭 形 状 の 関 係 を 理 解 す る た め 、 逆 変 換 に よ り 各 主 成 分 軸 に 沿 っ た 輪 郭 形 状 の 変 化 (±SD) を 再 構 成 し た ( Fig. 4)。第1主成分 は縦 長の 形状か 丸み を 帯 び た 形 状 で あ る か の 違 い に 対 応 し た 主 成 分 で あ り 、 寄 与 率 が 非 常 に 高 い こ と か ら 、 ボ デ ィ ソ ー プ ボ ト ル 形 状 の 違 い の 多 く は こ の 主 成 分 軸 に 沿 っ た 違 い で 説 明 が で き る 。第1主成分 得点 の低 いもの ほど 縦 長 の 形 状 と な る(e.g.,サ ンプ ル B)。ま た 第2主 成 分 は ボ ト ル の 重 心 の 位 置 と 対 応 し て お り 、 第2主 成 分 得 点 が 小 さ い も の (e.g.,サ ンプル A)は 、ボト ル下 部に重 心が あ る 。 -S.D Mean +S.D. PC1 PC2 PC3
Fig. 4 Bottle shape ±SD variation along the principal components
(-SD/average/+SD) 第3主 成 分 は ボ ト ル 肩 部 の 形 状 と 関 連 し て お り 、 主 成 分 得 点 が 低 い ほ ど 「 な で 肩 」、高 い ほ ど「 い か り 肩 」(e.g.,サ ンプ ルC)の 形状と なる 。 こ の よ う に 、以 上 の3主成 分で ボディ ソ ー プ ボ ト ル の 主 要 な 形 状 の 違 い を 記 述 で き る こ と か ら 、 以 下 で は 第1—第 3主 成 分 得 点 に よ り ボ ト ル 形 状 を 記 述 す る 。 す な わ ち 、 各 ボ デ ィ ソ ー プ は3次 元 空 間 の 1点 と し て 表 現 さ れ る こ と に な る 。 こ の 空 間 を 本 稿 で は 形 状 空 間 と 呼 ぶ 。 3. ボトル輪 郭 形 状 印 象 の調 査 輪 郭 形 状 の 違 い が ボ ト ル の 印 象 に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 す る た め 、 ボ ト ル の シ ル エ ッ ト 画 像 を 用 い て 、印 象 の 調 査 を 行 っ た 。 3.1 方 法 私 立 大 学 に 在 籍 す る85名 (男性 : 82名 、 女 性: 3名 ; 平 均年 齢 = 20.95、 SD = 0.76) が 調 査 に 参 加 し た 。 前 述 の17種 類 の ボ デ ィ ソ ー プ ボ ト ル の 輪 郭 内 を 黒 く 塗 り つ ぶ し た も の を 刺 激 と し た 。こ の 輪 郭 に は 、2.2に て大きさ と向 き が 規 格 化 し た も の(Fig. 2)を 用 いた 。各 画 像 は 評 価 用 紙 の 各 ペ ー ジ に 高 さ 約 10cmで 印 刷さ れた 。 評 価 用 紙 に は 各 画 像 と と も に 各 画 像 の 印 象 を 問 う19項 目 の 双 極 の 評 価 語 対 が 示 さ れ て い た(Table1)。この 評価 語対は 予備 調 査 に 基 づ い て 決 定 さ れ た 。 印 象 評 定 に
先 立 ち 、 順 序 効 果 を 低 減 す る た め 調 査 参 加 者 に 全 て の 評 定 用 紙 の 画 像 を 確 認 さ せ 、 そ の 後 各 項 目 に つ い て 画 像 の 順 に7段 階 で 評 定 を 行 わ せ た 。 評 価 刺 激 お よ び 評 価 語 対 の 順 序 は ラ ン ダ ム 化 さ れ て い た 。 全 て の 調 査 参 加 者 が20分 以 内 に 評 価 を 終 え た 。
Table 1 Set of bipolar adjective pairs
健康的な 不健康な 家族向けの 個人向けの ありきたりな 個性的な 洗練された 野暮な 爽やかな むさ苦しい 子供っぽい 大人っぽい 自然な 人工的な 肌にやさしい 肌に悪い 美しい 醜い 新鮮な 古くなった 今風な 古くさい かわいい かわいくない 親しみやすい 親しみにくい 落ち着いた 活動的な 地味な 派手な 元気がない 元気がある 軽やかな 重苦しい 信頼できる 信頼できない 上品な 下品な 評定語対 3.2 印 象 と形 状 空 間 の関 係 各 ボ ト ル に 対 す る 各 評 価 値 の 平 均 に 対 し て 主 成 分 分 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 第 1 お よび 第 2 主 成分の寄 与率 が非常 に高 か っ た た め(PC1, 63.0%; PC2, 25.9%)、 こ れ ら の 主 成 分 を 検 討 対 象 と す る 。 こ の 空 間 を こ こ で は 評 価 空 間 と 呼 ぶ 。 各 評 定 語 の 主 成 分 負 荷 量 を Fig. 5 に 示 す 。 双 極 の 尺 度 で あ る た め 、 対 に な る 評 定 語 は 原 点 を 挟 ん で 反 対 側 に 示 さ れ て い る 。 さ ら に 、 評 価 空 間 の 各 主 成 分 と 形 状 空 間 の 各 主 成 分 の 相 関 係 数 お よ び こ れ ら の 相 関 係 数 に-1 を 乗 じ た 値 を も 重 ね て Fig. 5 に プ ロ ッ ト し た 。 こ れ ら を 結 ぶ 線 は 、 形 状 空 間 の 主 成 分 の 変 化 と 印 象 の 対 応 関 係 を 示 し て い る 。 PC1 LOADING 1.00 .50 .00 -.50 -1.00 PC 2 LO AD IN G 1.00 .50 .00 -.50 -1.00 PC3- PC2- PC1-PC3+ PC2+ PC1+ 上品な 信頼できる 軽やかな 元気がない 地味な 落ち着いた 親しみ やすい かわいい 今風な 新鮮な 美しい 肌にやさしい 自然な 子供っぽい 爽やかな 洗練された ありき たりな 家族向けの 健康的な 下品な 信頼できない 重苦しい 元気がある 派手な 活動的な 親しみにくい かわいくない 古くさい 古くなった 醜い 肌に悪い 人工的な 大人っぽい むさ苦しい 野暮な 個性的な 個人向けの 不健康な SHAP E PC 3 SH AP E P C2 SH AP E P C1
Fig. 5 Principal component loadings of each adjective. The solid lines show changes in shapes along each principal component of shape space. 形 状 空 間 で の 第 1 主成分 の変 化は「 上 品 な―下 品 な 」、「 美 し い ―醜 い 」、「 爽 や か な―む さ 苦 し い 」 と い っ た 評 価 の 違 い と 関 係 し て お り 、 形 状 の 第1 主 成分 得点 が 高 い ほ ど ( Fig. 4-PC1 右 ) ネ ガ テ ィ ブ な 印 象(e.g., 「 下品 な 」、「 醜い 」、「む さ 苦 し い 」 な ど ) と 関 連 付 け ら れ て い る 。 ま た 、 評 価 空 間 の 第 1・ 第 2 主 成分 と形 状 空 間 の 第 1 主成 分の相 関係 数の絶 対値
が 大 き い こ と か ら 、 形 状 空 間 の 第 1 主成 分 は 印 象 と 密 接 に 関 連 し て い る こ と が 分 か る 。 形 状 の 第 2 主 成分 は形状 の 第 1 主成 分 と は 異 な り 、「 落 ち 着 い た 」、「 元 気 が な い 」 と い っ た 印 象 と 関 連 付 け ら れ て い る 。 ま た 形 状 の 第 3 主成 分に沿 った ボトル 形状 変 化 の 印 象 に 及 ぼ す 影 響 は 、 第 2 主 成分 に 沿 っ た 変 化 が 及 ぼ す 影 響 に 似 通 っ て お り 、「 親 し み や す い 」「 あ り き た り な 」、「 地 味 な 」 と い っ た 印 象 と 関 連 付 け ら れ て い た 。 4. 印 象 に基 づく形 状 の合 成 と評 価 4.1 印 象 を反 映 したボトル形 状 の再 合 成 3節 で は ボ ト ル 形 状 空 間 と そ の ボ ト ル 形 状 か ら 受 け る 印 象 の 対 応 関 係 が 明 ら か に な っ た 。 一 方 、 本 節 で は 対 形 状 空 間 と 個 々 の 評 価 語 の 関 係 を 詳 細 に 検 討 す る 。 そ の た め 、 形 状 空 間 の 第1―第 3主 成 分 得 点 を 独 立 変 数 と し 、 各 印 象 評 定 値 を 従 属 変 数 と し て 強 制 投 入 法 に よ る 重 回 帰 分 析 を 行 っ た ( Table 2)。 特 に 「 軽 や か な 重 苦 し い 」、「 爽 や か な む さ 苦 し い 」、「 美 し い 醜 い 」、「 上 品 な 下 品 な 」 の 重 決 定 係 数 (R2)は 高 く 、 こ れ ら の 印 象 評 価 に は ボ ト ル 形 状 が 大 き く 影 響 し て い る こ と が わ か る 。一 方 、「 地 味 な 派 手 な 」、「 元 気 が な い 元 気 が あ る 」、「 肌 に や さ し い 肌 に 悪 い 」、 「 あ り き た り な 個 性 的 な 」 の 決 定 係 数 は 低 い こ と か ら 、 こ れ ら の 印 象 評 価 に 対 し て 輪 郭 形 状 が 及 ぼ す 影 響 は 小 さ い と 言 え
Table 2 Relationship between impressions and principal components of shape space PC1 Score PC2 Score PC3 Score R2
健康的な 不健康な -0.293 0.168 0.429 0.298 家族向けの 個人向けの 0.652 0.064 0.250 0.491 ありきたりな 個性的な -0.050 0.227 0.359 0.183 洗練された 野暮な -0.711 0.025 -0.154 0.530 爽やかな むさ苦しい -0.857 0.011 -0.017 0.735 子供っぽい 大人っぽい 0.703 -0.040 0.059 0.499 自然な 人工的な 0.279 -0.024 0.333 0.189 肌にやさしい 肌に悪い 0.291 0.080 0.274 0.166 美しい 醜い -0.840 -0.047 -0.053 0.711 新鮮な 古くなった -0.279 -0.209 -0.294 0.207 今風な 古くさい -0.333 -0.175 -0.211 0.186 かわいい かわいくない -0.113 -0.419 0.212 0.233 親しみやすい 親しみにくい -0.058 0.156 0.428 0.211 落ち着いた 活動的な -0.212 0.169 0.347 0.194 地味な 派手な -0.016 0.194 0.212 0.083 元気がない 元気がある -0.333 -0.013 0.044 0.113 軽やかな 重苦しい -0.914 -0.014 -0.163 0.862 信頼できる 信頼できない -0.243 0.186 0.337 0.207 上品な 下品な -0.770 0.067 0.059 0.602 標準偏回帰係数(β) 評定語対
る 。 上 記 の 重 回 帰 分 析 の 第1―第 3主 成 分 得 点 の そ れ ぞ れ の 回 帰 係 数 を 要 素 と す る ベ ク ト ルβは 形 状 空 間 内 で 各 印 象 評 定 値 を 最 も 変 化 さ せ る 方 向 を 示 し て お り 、 こ の よ う な ベ ク ト ル は 一 般 に 理 想 ベ ク ト ル と 呼 ば れ る 。 全 て の 印 象 評 定 語 に つ い て 、 平 均 形 状(Fig. 4 中 央 ) お よ び サ ン プ ル A(Fig. 1左 )を 形 状 空 間 内 で 理 想 ベ ク ト ル の 方 向 に ±1SD変 化 さ せ た 形 状 の 主 成 分 得 点 を 算 出 し た 。 さ ら に こ の 主 成 分 得 点 を も と に 、 フ ー リ エ 逆 変 換 に よ り 各 印 象 に 対 応 し た ボ ト ル 輪 郭 形 状 を 再 構 成 し た (Fig. 6、 Fig. 7)。 4.2 再 構 成 された輪 郭 形 状 の印 象 評 価 4.1 節 の 手 法 に よ り 再 合 成 し た ボ ト ル 輪 郭 形 状 ( Fig. 6、 Fig. 7) が 、 意 図 し た 印 象 の 違 い を も た ら す か 検 証 す る た め 、 こ れ ら の 輪 郭 形 状画像を用いて強制選択 による評価実験を行った。 4.2.1 方 法 男子大学生37 名(平均年齢 = 21.0, SD = 0.8)が実験に参加した。いずれの参加者も関 連する他の評価実験への参加経験はない。 実験には4.1節で作成した輪郭形状画像を 用いた。刺激は平均形状を変形した輪郭画 像を評定語対ごとに対にした19ペア(38種 類)の画像および、サンプルAを変形した輪 郭画像を対にした19ペア(38種類)である。 評価シートの各ページに各ペアを構成する 輪郭形状画像(それぞれをA、Bとする)を 並べて表示し、さらにその下に選択肢を表 示した。選択肢は、仮に評定語対が「今風 な―古くさい」であった場合、「Aが「今風 な」、Bが「古くさい」ボディソープボトル であると感じられる」という選択肢と「Aが 「古くさい」、Bが「今風な」ボディソープ ボトルであると感じられる」という選択肢 を示し、実験参加者にこの二つの選択肢か ら一つを強制選択させた。各ペアを構成す る輪郭画像の左右の位置は被験者間でラン ダマイズされていた。実験参加者は二つの ブロックに分割され、一方のブロックには ま ず 平 均 形 状 を 変 形 し た19セ ッ ト の 画 像 (Fig. 6)を評価させ、次にサンプルAを変 形した19セットの画像(Fig. 7)を評価させ た。またもう一方のブロックにはサンプルA の変形画像、平均形状の変形画像の順で評 価させた。 4.2.2 結 果 と考 察 印象評価実験の結果をFig. 8に示す。ここ では、所与の印象と対応した理想ベクトル 方向への変形に対し、実験参加者のその方 向と合致する印象判断を行った場合を「一 致」、実験参加者が理想ベクトルと逆の印象 を持った場合には「不一致」とした。
(a)健康的な-不健康な (b)家族向けの-個人向けの (c)ありきたりな-個性的な (d)洗練された-野暮な (e)爽やかな-むさ苦しい (f)子供っぽい-大人っぽい (g)自然な-人工的な (h)肌にやさしい-肌に悪い (i)(美しい-醜い (j)新鮮な-古くなった (k)今風な-古くさい (l)かわいい-かわいくない (m)親しみにくい-親しみやすい (n) 活動的な 落ち着いた (o)地味な-派手な (p)元気がある-元気がない (q)軽やかな-重苦しい (r)信頼できない-信頼できる (s)上品な-下品な
(a)健康的な-不健康な (b)家族向けの-個人向けの (c)ありきたりな-個性的な (d)洗練された-野暮な (e)爽やかな-むさ苦しい (f)子供っぽい-大人っぽい (g)自然な-人工的な (h)肌にやさしい-肌に悪い (i)美しい-醜い (j)新鮮な-古くなった (k)今風な-古くさい (l)かわいい-かわいくない (m)親しみにくい-親しみやすい (n)活動的な 落ち着いた (o)地味な-派手な (p)元気がある-元気がない (q)軽やかな-重苦しい (r)信頼できない-信頼できる (s)上品な-下品な
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 健康的な -不健康な 家族向けの -個人向け の あ り き た り な -個性的な 洗練さ れ た -野暮な 爽やか な -むさ 苦し い 子供っ ぽ -い 大 人 っ ぽ い 自然 な-人 工 的 な 肌に やさ し い -肌 に 悪 い 美し い -醜い 新鮮な -古 く な っ た 今風な -古 く さ い かわいい -か わい くな い 親し みやすい -親 し み に … 落ち 着い た -活動的な 地味な -派手な 元気が な い -元気が あ る 軽やか な -重苦し い 信頼で き る -信頼で き な い 上品な -下品な 不一致 一致 * * * * * * * * * * * * *: p<.05 (a) 平均形状の変形画像に対する判断 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 健 康的な -不 健 康 な 家族 向け の -個 人 向 け の あり き た り な -個 性 的 な 洗練 さ れ た -野 暮 な 爽や か な -む さ 苦 しい 子供 っ ぽ -い 大 人 っ ぽ い 自然 な -人 工的な 肌に や さ しい -肌 に 悪 い 美しい -醜い 新鮮 な-古 く な っ た 今風 な -古 く さ い か わいい-か わいくな い 親 し みや すい -親 しみ に … 落ち 着 い た -活動 的 な 地味 な -派 手 な 元 気 がな い-元 気 があ る 軽や か な -重 苦 し い 信 頼 で きる-信 頼 で き な い 上品 な -下 品 な 不一致 一致 * * * * * * * * * * * * * * * *: p<.05 (b) サンプル A の変形画像に対する判断
また、平均ボトル形状の輪郭およびサンプ ルAの輪郭形状の変形が意図した印象の変化 をもたらしていたか検討するために、評定結 果に対して二項検定を行った。その結果、平 均ボトル形状では19項目中12項目で、またサ ンプルAでは19項目中15項目で「一致」の判 断が「不一致」の判断よりも有意に多かった。 また、有意に「不一致」の判断が多い項目は 平均形状を変形した画像にもサンプルAを変 形した画像にも認められなかった。「一致」 の判断が有意に多かった項目の多くは、理想 ベクトルを求める際の重回帰分析において 重決定係数が高い値を示した項目(e.g., 「軽 や か な―重苦しい」「爽やかな―むさ苦し い」)である。これらの項目は、形状と印象 の関係が強い項目であり、このような項目に おいて輪郭形状の変形が印象を変化させる うえで有効であるといえる。 5. 結論 本研究では、楕円フーリエ解析をボディソ ープ容器形状の評価に適用し、この手法が容 器形状を定量的に比較検討する手法として 有効か検討を行った。楕円フーリエ解析によ り得られたフーリエ係数は、容器の輪郭形状 を表す多変量の数値データとして扱うこと ができる。本研究では、この多変量データに 対し主成分分析を適用し、商品間での容器形 状の違いを特徴づける主要な形態的差異を 視覚的に示した。 また、 SD法による調査に基づき、心理的 な評価空間と輪郭形状の特徴の関係を検討 することで、複雑な形状と多様な印象の関係 を簡潔に示した。これにより、所与の輪郭形 状がもたらすおおよその印象を推定するこ ともできた。 ただし、形状との関係が明確 ではない印象語(e.g., ありきたりな―個性的 な)も存在することも明らかになった。 楕円フーリエ解析は輪郭形状の可逆変換 であるという特性を利用することで、印象か ら輪郭形状を再構成することも容易である。 本研究では、平均的容器形状および既存の容 器(サンプルA)の輪郭を、特定の印象を強 めると推定される方向に変形することを試 みた。変形画像に対する評価実験の結果、こ の手法による輪郭形状変形は、形状と関連の ある印象(e.g., 「家族向けの―個人向けの」) において、ターゲットとなる印象をより強め ることが示された。 以上のことから、楕円フーリエ解析による 容器形状の解析と多変量解析、およびSD法に よる印象評価の組み合わせは、(1) 多様な商 品デザインの中で、ある商品の形状デザイン のポジショニングを客観的に理解する、(2) 商品の形状とそれらがもたらす印象の対応 関係を系統的に理解する、(3) 特定の印象の 強度を変化させるようなデザイン特徴を可 視化する、という3つの点において有用な手 法であることが示された。すなわち本提案手 法は、製品の特性やイメージを反映したパッ ケージデザインを行うプロセスにおいて、有 効なデザイン支援手法となりうると言える。
<参 考 文 献 >
1) F.P. Kuhl, C.R. Giardina, Comput. Graph. Image Process., 18, 236-258(1982)
2) F.L. Bookstein, “Morphometric tools for landmark data”, Cambridge Univ. Press. (1991)
3) I.L. Dryden, K.V. Mardia, “Statistical shape analysis” Wiley & Sons. (1998). 4) L.J. Segerlind, B. Weinberg, Trans.
ASAE, 16, 324-327 (1973)
5) R. White, H.C. Rentice, T. Verwist, Can. J. Bot., 66, 450-459. (1988)
6) H. Iwata, S. Niikura, S. Matuura, Y. Takano, Y. Ukai, Breeding Sci., 50, 73-80 (2000) 7) 伊 藤 豪 俊, 平 田達 也 , 石 井直 宏, 電 子 情 報 通 信 学 会 論 文 誌D, J71-D(6), 1065-1073(1988) 8) 矢 野 環 , “文化系統学―歴史を復元す る” (村上征勝編) 文化情報学入門, 勉 誠 出 版 pp. 36-48 (2006)
9) F.J. Rohlf, J.W. Archie, Syst. Zool. 33: 302-317 (1984)
( 原 稿 受 付 2012 年 8 月 17 日 ) ( 審 査 受 理 2012 年 10 月 4 日 )