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褥婦の退院後の生活イメージと

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J. Jpn. Acad. Mid., Vol. 14, No. 1, pp. 14-23, 2000. 8

褥 婦 の 退 院 後 の 生 活 イ メ ー ジ と

その 形 成 に か か わ る要 因 の分 析(1)

Analysis

of the Living

Images

of Puerperae

after Hospital

Discharge

and the Factors

Related

to the Formation

of These

Images (1)

片 桐 麻 州 美(Masumi KATAGIRI)*1 松 岡 恵(Megumi MATSUOKA)*2 要 約 本 研 究 は,褥 婦 が 形 成 す る退 院 後 の生 活 イ メー ジ お よ び そ の形 成 にか か わ る 要 因 を明 らか に す る こ と を 目的 とし,正 常 に経 過 した 褥 婦44名 を対 象 に,3回 の面 接 を行 い,イ メ ー ジ と実 際 の 生 活 時 間 を生 活 時 間 調 査 票 に記 入 し て も らっ た。 分 析 は,褥 婦 が 時 間 を追 っ て記 入 した1日 の行 動 を5項 目 に分 類 し, イ メー ジ と実 際 の 生 活 時 間 の 差,対 象 背 景 との 関連 につ い て統 計 的 に処 理 し,生 活 イ メ ー ジ の形 成 にか か わ る要 因 を考 察 した. そ の 結 果,褥 婦 は退 院 後 の 生 活 に つ い て育 児 時 間 以 外 は ほ ぼ実 際 の 生 活 に近 い生 活 イ メ ー ジ の形 成 が で きて お り,特 に退 院 直 後 は多 くの場 合,サ ポ ー トを得 て,ほ ぼ イ メ ー ジ どお りの 生 活 が 実 際 に で きて い た。1か 月健 診 後 の褥 婦 の 生 活 で は家 事 時 間 はイ メー ジ どお り増 加 した う え,育 児 時 間 は イ メ ー ジ よ り有 意 に増 加 し,睡 眠,休 息 時 間 の減 少 を まね い て い た 。 さ らに,生 活 イ メー ジ形 成 要 因 と して,褥 婦 の育 児 経 験 や 児 の 栄 養 方 法,退 院 後 の サ ポ ー トが 考 え られ た 。 キ ー ワー ド 褥 婦,イ メ ー ジ,生 活 時 間 Abstract

The purpose of this study was to clarify how puerperae perceive experiences they will face after hospital discharge and to identify the factors related to the formation of the living images. Forty-four puerperae who had normal pregnancies responded to a questionnaire regarding their anticipated and actual experiences . A statistical analysis was performed to assess the difference between the living images of daily activities and actual experience as well as to correlate these findings with the background of the subjects .

*1 聖 路 加 看 護 大 学(St , Luke's College of Nursing) *2東 京 医 科 歯 科 大 学 医 学 部 保 健 衛 生 学 科(Tok

yo Medical and Dental University) 2000年3月17日 受 付

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褥 婦 の退 院 後の 生活 イメ ー ジ とその 形成 にか かわ る要 因 の分 析(1)

Results :

1. Living images after hospital discharge were close to actual experience, except for the num-ber of baby care hours.

2. For the period immediately after hospital discharge, the puerperae experiences were close to what they perceived because of the support they received from family.

3. At the time of the medical examination, one month after delivery, the puerperae noted that housekeeping hours increased as they expected but baby care hours increased signifi-cantly more than they expected. Sleep and rest hours were reduced.

4. The following can be considered as factors used by the puerperae in forming living images after hospital discharge factors such as baby care experiences, the baby feeding method, and the amount and quality of support they received after discharge.

Key Words puerperae, image, time budget

I は じ め に 産 褥 期 は 身体 的 回復 をは か りなが ら母 親 として 新 し い生 活 に適 応 しな け れ ば な らな い時 期 で あ る。 褥 婦 が母 親 と して の行 動 を学 習 し,今 まで の 生 活 に そ の行 動 を組 み込 ん で生 活 を再 構 成 して い くこ とが産 褥 期 の生 活 適 応 で あ る。 しか し,こ れ まで の産 褥 期 の 研 究 は育 児 不 安 や 母 乳 育 児 に 関 す る もの1),2),産褥 期 ケ ア の ニ ー ズ や 評 価 に関 す る もの3),4)など,育 児 の み に注 目 し た もの が多 く,育 児,家 事 を組 み込 ん だ褥 婦 の 生 活 の全 体 像 を明 らか に した 研 究 はみ られ な い 。 一 般 に,人 の行 動 は学 習 に よ り習 得 され,コ トロ ー ル され る もので あ り,そ の 学 習 過程 にお い て イ メ ー ジ は重 要 な役 割 を果 た す5)。イ メ ー ジ は 直 接 体 験 され うる実 感 的 な もの で あ り,人 の適 応 行 動 にお いて 知 覚 を補 い,よ り具体 的 現 実 的 に 考 え,行 動 を 導 くの に役 立 つ と言 わ れ て い る6)。こ れ を褥 婦 の 生 活 適 応 に あ て は め て 考 え る と,退 院 後 の 実 際 の 生 活 に近 い 生 活 が イ メ ー ジで きれ ば, 退 院 後 の褥 婦 は ス ム ー ズ に母 親 と して の行 動 が で き,生 活 適 応 は容 易 で あ る と予測 され る。 そ して 分 娩 施 設 入 院 中 の ケ ア は,実 際 の 生活 に近 い生 活 イ メー ジ形 成 を促 す た め の もの で あ る こ とが必 要 で あ る。 そ こで,本 研 究 で は,褥 婦 が 形 成 す る退 院 後 の 生 活 イ メ ー ジお よ び そ の生 活 イ メ ー ジ の形 成 に か かわ る要 因 を明 らか にす る こ とを 目的 とす る。 本 研 究 に お い て,産 褥 期 と は 「分 娩 後6週 間 まで の 期 間 」,生 活 イ メ ー ジ とは 「褥 婦 の 具 体 的 な行 動 を1日 の 時 間 の 流 れ に 沿 っ て 表 現 し た も の」,サ ポー ト とは 「褥 婦 の 育 児 ・家 事 行 動 の一 部 を意 図 的 に分 担 して 行 った もの 」 を い う。 以 下,生 活 イ メー ジ はイ メ ー ジ とい う。 II 研 究 方 法 1.対 象 東 京都 内S総 合 病 院 お よびF助 産 院 で,継 続 し て妊 婦健 診 を 受 け て分 娩 し,産 褥 期 も正 常 に経過 し,研 究 の承 諾 が 得 られ た 褥 婦44名 で あ る。 病 院 群 は医 師 に よ る妊 婦健 診,医 師 の 立 ち会 い に よ る 分 娩,母 親 異室 ・チ ー ム ナ ー シ ン グ に よ る産 褥 入 院 ケ ア を受 けた褥 婦30名 で あ る。 一 方,助 産 院 群 は助 産 婦 に よ る妊 婦 健 診 と,自 然 分 娩 の介 助,母 児 同室 ・受 け持 ち制 産 褥 入 院 ケ ア を受 け た褥 婦14 名 で あ る。 2.方 法 生 活 時 間 調 査 票(資 料1)を 用 い た 面 接 調 査 法 。 面 接 は,① 分 娩 施 設 退 院 直 前,② 退 院 後1∼2 週 間 目,③1か 月健 診 後 の3回 行 い,生 活 時 間 調 査 と と もに,そ の時 点 で の 生 活 状 況 を確 認 す るた め の聞 き取 り調 査 も行 っ た 。 面 接 ① は,分 娩 施 設 入 院 中 に退 院 後1∼2週 間 目の 生 活 を イ メ ー ジ し た生 活 時 間 調 査 を行 っ た 。 面 接 ② は,自 宅 や里 帰 り先 の実 家,す な わ ち褥 婦 の 分 娩 施 設 か らの退 院 先 を訪 問 し,退 院 後1∼2週 間 目 の実 際 の 生 活 時 日本助 産 学会 誌 第14巻 第1号(2000.8) 15

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褥婦 の退 院後 の 生活 イ メー ジ とそ の形 成 に かか わ る要 因 の 分析(1) 資 料1生 活時間調査票 間 お よ び1か 月健 診 後 の生 活 をイ メー ジ した 生 活 時 間 調 査 を 行 っ た 。 面 接 ③ は,主 に 自 宅 を訪 問 し,1か 月 健 診 後 の実 際 の生 活 時 間 の 面 接 調 査 を 行 っ た。 生 活 時 間調 査 と は,褥 婦 が 睡 眠 ・食 事 ・ 入 浴 な どの生 活 必 需 行 動,授 乳 ・お む つ 交 換 ・沐 浴 な どの育 児,炊 事 ・洗 濯 ・掃 除 な どの 家 事,テ レ ビ を見 る ・本 を読 む,休 息 な ど,1日 の 行 動 を 時 間 の流 れ に沿 っ て生 活 時 間 調 査 票 に記 入 した も の で あ る。 さ らに,育 児 は授 乳 ・沐 浴 な ど直 接 的 に児 の 世 話 をす る直 接 育 児,搾 乳 や調 乳 な どの 直 接 的 に は児 の世 話 を す るの で はな い が 育 児 に含 ま れ る間 接 育 児,経 産 婦 の上 の 子 の 育 児 の3種 類 に 分 けた 。 分 析 は,退 院 直 後 と1か 月健 診 後 の2つ の 時 期 に褥 婦 が 生 活 時 間 調 査 票 に記 入 した イ メー ジ と実 際 の 生 活 時 間 を表1の 生 活 時 間分 類 に従 って5項 目 に分 類 し た 後,各 項 目 ご との1日 の 生 活 時 間 量,各 生 活 時 間 項 目 に含 まれ る細 項 目数 お よ び生 活 時 間 延 べ 項 目数 を算 出 し,イ メ ー ジ と実 際 の 差 に つ い てt検 定 を行 っ た。 さ らに生 活 時 間 量,生 活 時 間項 目数,生 活 時 間延 べ 項 目数 を対 象 者 の背 景 と ク ロ ス してx2検 定 した 。 検 定 結 果 と対 象 者 の 背 景 か ら イ メ ー ジ形 成 に か か わ る 要 因 を分 析 表1生 活 時間分 類 16 日本助 産 学会 誌 第14巻 第1号(2000.8)

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褥 婦 の退 院 後 の生活 イメ ー ジ とその 形成 にか かわ る要 因 の分 析(1) 表2 対象 の背景 した 。 統 計 処 理 に は 統 計 パ ッケ ー ジHALBAUを 用 い た 。 III結 果 1.対 象 背 景(表2) 年 齢 は 平 均30.6(20∼37)歳 で,初 産 婦24名 (54.5%),経 産 婦20名(45.5%)で あ り,分 娩 様 式 は 自 然 分 娩32名(72.8%),促 進 ・誘 発 分 娩6 名(13.6%),帝 王 切 開 分 娩6名(13.6%)で あ っ た 。 分 娩 時 期(週 数)は 平 均38(37∼41)週,出 血 量 は 平 均309(50∼3,960)g,新 生 児 は 全 員 正 常 児 で,体 重 は 平 均3,069(2,480∼3,960)g, Apgar Scoreは 平 均9.2(8∼10)点 で あ っ た 。 ま た,在 院 日 数 は 病 院 で は 平 均6.4(5∼9)日, 助 産 院 で は 平 均4.5(4∼7)日 で あ っ た 。2日 目 の 面 接 実 施 は 分 娩 後 平 均17.1(10∼27)日,退 院 後 平 均11.1(5∼21)日 で あ り,こ の 晴 点 で の 児 の 栄 養 は,母 乳 の み が21名(47.7%),混 合 ・ 人 工 が23名(52.3%)で あ っ た 。3回 目 の 面 接 実 施 は 分 娩 後 平 均49。5(30∼71)日 で,こ の 時 点 で の 児 の 栄 養 は,母 乳 の み が19名(43.2%),混 合 ・人 工 が25名(56.8%)で あ っ た。 退 院 後 の サ ポ ー ト期 間 は,平 均22.4(0∼64)日 で あ った 。 さ ら に,初 産 婦 で 姉 妹 の 子 ど もな どの育 児 経 験 が あ る と答 え た褥 婦 は8名(33.3%),子 ど もを も つ友 人 が ま っ た くい な い と答 え た 初 産 婦 も4名 (16.6%)で あ っ た 。 2.生 活 時 間 分 析(表3) 1)褥 婦 の 実 生 活 の 変 化 褥 婦 の 実 際 の 生 活 につ い て退 院 直 後 よ り1か 月 健 診 後 の ほ う が 生 活 必 需 時 間(p<0.01),睡 眠 時 間(P<0.05),休 息 時 間(P<0.01>で 有 意 に 低 く,育 児 時 間 は 間 接 育 児 時 間(p<0.01)が 低 か っ た 。 そ して,家 事 時 間(p<0 .01)は1か 月 健 診 後 の ほ うが 有 意 に高 か っ た。 す な わ ち,退 院 直 後 の 実 際 の 生 活 で は,家 事 時 間 は短 く,睡 眠, 休 息 時 間 は確 保 で きた が,1か 月健 診 後 に な る と 家 事 時 間 は長 くな り,睡 眠 休 息時 間 は減 少 した 。 しか し,育 児 に関 して は間 接 育 児 時 間 は減 少 した が,直 接 育 児 時 間 は退 院 直 後 も1か 月 健 診 後 も ほ ぼ 同 じで 変 化 は なか っ た。 日本 助 産学 会誌 第14巻 第1号(2000.8) 17

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褥婦 の退 院後 の生活 イ メー ジ とそ の形 成 にか かわ る要 因 の分 析(1) 表3 生 活時 間 注)1日(24時 間)の 総 項 目数 2)褥 婦 の イ メ ー ジの 変 化 褥 婦 の イ メー ジ した生 活 に つ い て退 院 直後 は1 か 月 健 診 後 よ り睡 眠 時 間(p<0.01),休 息 時 間 (p<0.05)で 有 意 に高 く,家 事 時 間(p<0.01) で は退 院 直 後 の ほ うが1か 月 健 診 後 よ り有 意 に低 か っ た が,育 児 時 間 に は有 意 差 を認 め な か っ た。 す な わ ち,退 院 直 後 は 家 事 時 間 は 少 な く,睡 眠,休 息 時 間 は確 保 で き る とイ メー ジ し,1か 月 健 診 後 の家 事 時 間 は退 院 直 後 よ り長 くな る とイ メ ー ジ し て い た。 しか し,育 児 時 間 に 関 して は退 院 直 後 も1か 月 健 診 後 もほ ぼ 同 じイ メ ー ジで 変 化 が な か った 。 3)生 活 時 間 項 目 (1)1日 の 延 べ 項 目 数 1日 の 延 べ 項 目 数,す な わ ち,生 活 時 間 調 査 票 の 中 に 記 入 さ れ て い る1日 の 生 活 時 間 の 項 目数 の 総 和 の 平 均 は 退 院 直 後 の イ メ ー ジ は25 .2,実 際 は 33.8で あ り,1か 月 健 診 後 の イ メ ー ジ は30 .0,実 際 は38,5で あ っ た 。 退 院 直 後,1か 月 健 診 後 と も イ メ ー ジ よ り 実 際 の ほ う が 有 意 に 高 か っ た(p< 0101)。 ま た,退 院 直 後 よ り1か 月 健 診 後 の ほ う が イ メ ー ジ(p<0.05),実 際(p<0 .01)と も に 有 意 に 高 か っ た 。 18 日本 助 産学 会 誌 第14巻 第1号(2000.8)

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褥 婦 の退 院 後の 生活 イメ ー ジ とその 形成 にか かわ る要 因 の分 析(1) (2)生活 必 需 時 間 退 院 直 後 の 実 際 は,1か 月 健 診 後 の 実 際 よ り時 間 量(p<0.01),延 べ 項 目 数(p<0.05)で 有 意 に 高 か っ た 。 ま た,項 目 数 に お い て も実 際 が イ メ ー ジ よ り有 意 に 高 く(p<0 .01),さ ら に,延 項 目 数 で は1か 月 健 診 後 の イ メ ー ジ よ り有 意 に 高 か っ た(p<0.01)。 生 活 必 需 時 間 の 中 で も 睡 眠 時 間 は24名(54.5 %)が イ メ ー ジ と実 際 の 差 を 感 じた と答 え た が, 退 院 直 後,1か 月 健 診 後 の イ メ ー ジ と実 際 に 有 意 差 を 認 め な か っ た 。 一 方,退 院 直 後 の 実 際 は1か 月 健 診 後 の イ メ ー ジ よ り時 間 量(p<0.05),延 べ 項 目 数(p<0.01)と も 有 意 に 高 か っ た 。 さ ら に,イ メ ー ジ で は,睡 眠 時 間 量 が 退 院 直 後 は1か 月 健 診 後 よ り 有 意 に 高 く(p<0.01),同 様 に, 実 際 で は 睡 眠 時 間 量(p<0.05),延 べ 項 目 数 (p<0.01)と も 退 院 直 後 が1か 月 健 診 後 よ り 有 意 に 高 か っ た 。 睡 眠 の 時 間 帯 が イ メ ー ジ と実 際 で 一 致 し て い た の は退 院 の 前 後 で55.0%,1か 月 健 診 前 後 で66.4 %で あ り,睡 眠 時 間 が 分 断 さ れ た 者 は 退 院 直 後, 1か 月 健 診 後 と も13名(29.5%)で あ っ た 。 睡 眠 以 外 の 生 活 必 需 時 間 量 で は 有 意 差 を 認 め な か っ た 。 (3)育 児 時 間 退 院 直 後 の 直 接 育 児 時 間 で は 項 目 数(p< 0.01),延 べ 項 目 数(p<0.05)と も 実 際 は イ メ ー ジ よ り有 意 に 高 く,間 接 育 児 時 間 の 項 目 数 で も 実 際 は イ メ ー ジ よ り有 意 に 高 か っ た(p<0.05) が,時 間 量 に は 有 意 差 を 認 め な か っ た 。 1か 月 健 診 後 の 直 接 育 児 時 間 で は 時 間 量(pく 0.05),項 目 数(p<0.01),延 べ 項 目 数(p< 0.01)と も 実 際 は イ メ ー ジ に よ り 有 意 に 高 か っ た 。 直 接 育 児 時 間 と間 接 育 児 時 間 の 和 で あ る総 育 児 時 間 で は,1か 月 健 診 後 の 時 間 量 で も 実 際 は イ メ ー ジ よ り有 意 に 高 か っ た(p<0.05)が,間 接 育 児 時 間 で は 有 意 差 を認 め な か っ た 。 ま た,上 の 子 の 育 児 時 間 の1か 月 健 診 後 の 延 べ 項 目 数 で,実 際 は イ メ ー ジ よ り有 意 に 高 か っ た(p<0.05)。 さ ら に,退 院 直 後 の 実 際 と1か 月 健 診 後 の イ メ ー ジ を 比 較 し て み る と,直 接 育 児 時 間 の 時 間 量 (p<0.01),項 目 数(p<0.01),延 べ 項 目 数(p< 0.01),間 接 育 児 時 間 の 時 間 量(p<0.05),項 目 数(p<0.01),延 べ 項 目 数(p<0.05)の す べ て で 実 際 は イ メ ー ジ よ り も 有 意 に 高 く,総 育 児 時 間 で も 実 際 は イ メ ー ジ よ り 有 意 に 高 か っ た(P< 0.01)。 ま た,間 接 育 児 時 間 で は 退 院 直 後 の 実 際 は1か 月 健 診 後 の 実 際 よ り,時 間 量(p<0.01),項 目 数(p<0.01)と も 有 意 に 高 か っ た が,直 接 育 児 時 間 に は 有 意 差 を 認 め な か っ た 。 そ し て,退 院 直 後 の イ メ ー ジ と1か 月 健 診 後 の イ メ ー ジ も 有 意 差 を 認 め な か っ た 。 (4)家事 時 間 1か 月 健 診 後 の 実 際 は イ メ ー ジ よ り延 べ 項 目 数 (p<0.05)で 有 意 に 高 か っ た が,そ れ 以 外 は イ メ ー ジ と実 際 の 有 意 差 を 認 め な か っ た 。 一 方,退 院 直 後 の 実 際 よ り1か 月 健 診 後 の イ メ ー ジ の ほ う が 時 間 量(p<0.01),項 目 数(p<0.01),延 べ 項 目 数(p<0.01)と も,有 意 に 高 か っ た 。 さ ら に,イ メ ー ジ で は 退 院 直 後 よ り1か 月 健 診 後 の ほ う が 時 間 量(p<0.01),項 目 数(p< 0.01),延 べ 項 目 数(p<0.01)と も 有 意 に 高 か っ た 。 そ し て,実 際 で も 退 院 直 後 よ り1か 月 健 診 後 の ほ う が 時 間 量(p<0.01>,項 目 数(p< 0.01),延 べ 項 目 数(p<0.01)と も 有 意 に 高 か っ た 。 (5)自 由 時 間 1か 月 健 診 後 の 実 際 は イ メ ー ジ よ り 項 目 数 (p<0.01),延 べ 項 目 数(p<0.01)と も 有 意 に 高 か っ た が,時 間 量 に 有 意 差 を 認 め な か っ た 。 ま た,退 院 直 後 の 実 際 は1か 月 健 診 後 の イ メ ー ジ よ り 項 目 数(p<0.05),延 べ 項 目 数(p<0.05)と も有 意 に 高 か っ た 。 (6)休息 時 間 1か 月 健 診 後 の 実 際 は イ メ ー ジ よ り 時 間 量 (p<0.01)で 有 意 に 低 か っ た が,項 目 数 に 有 意 差 を 認 め な か っ た 。 ま た,イ メ ー ジ で は 退 院 直 後 は1か 月 健 診 後 よ り 時 間 量(p<0.05)で 有 意 に 高 く,実 際 で も退 院 直 後 の ほ う が1か 月 健 診 後 よ り 時 間 量(p<0.01),延 べ 項 目 数(p<0 .01)と も有 意 に 高 か っ た 。 3.イ メ ー ジ 形 成 に か か わ る 要 因 1)育 児 の 経 験(表4) 育 児 時 間 の 変 化 を 初 産 婦,経 産 婦 に 分 け て み る 日本助 産学 会 誌 第14巻 第1号(2000.8) 19

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褥 婦 の退 院後 の生 活 イ メー ジ とその 形成 にか か わ る要 因 の分 析(1) 表4 初経 別,生 活 時間(分) と,直 接 育 児 時 間,総 育 児 時 間 と も退 院 直 後 の イ メ-ジ に は有 意 差 を認 め な か っ た 。 しか し,直 接 育 児 時 間 で は 退 院 直 後 の 実 際(p<0.01),1か 月 健 診 後 の イ メ ー ジ(p<0.05),お よ び 実 際 (p<0.01)の す べ て に お い て 初 産 婦 の ほ うが 有 意 に高 く,総 育 児 時 間 に お い て も同様 で あ っ た 。 また,1か 月 健 診 後 の イ メ ー ジ と実 際 の比 較 に お い て も,初 産 婦 で は 直 接 育 児 時 間(p<0,01), 総 育 児 時 間(p<0.01)は 有 意 に高 く,休 息 時 間 (p<0.01)は 有 意 に 低 か っ た が,経 産 婦 で は 有 意 差 を 認 め な か っ た 。 す な わ ち 退 院 直 後 は 初 産 婦,経 産 婦 とも育 児 を 中心 に ほ ぼ イ メ ー ジ どお り の生 活 が で きて い た が,1か 月 健 診 後 に は初 産 婦 は経 産 婦 ほ ど実 際 に近 い イ メー ジが 形 成 が で きて い な か っ た。 2)児 の 栄 養 方法(表5) 次 に,児 の栄 養 方法 別 に1か 月健 診 後 の イ メ ー ジ と実 際 を比 較 して み る と,混 合 ・人 工 栄 養 群 は 総 育 児 時 間 が 有 意 に 増 加 し て い た(p<0,05) が,母 乳 栄 養 群 で は 有 意 差 を認 め な か っ た 。 一 方,休 息 時 間 に つ い て1か 月健 診 後 の イ メー ジ と 実 際 を比 較 す る と,混 合 ・人 工 栄 養 群 は有 意 に減 少 し て い た(p<0.01)が 母 乳 栄 養 群 で は有 意 差 を認 め な か った 。 また,睡 眠時 間 に お い て も1か 表5 児 の栄 養方 法別,生 活 時間(分) 月 健 診 後 の イ メ ー ジ で は10分 程 度 の 差 で あ っ た が,実 際 に は母 乳栄 養 群 の ほ うが30分 以 上 長 か っ た 。 す なわ ち,母 乳 栄 養 群 の ほ うが1か 月 健 診 後 で は育 児 時 間 が 少 な く,睡 眠,休 息 時 間 を確 保 し て い た 。 3)分 娩 施 設 また,施 設 別 に比 較 す る と,病 院,助 産 院 と も 20 日本 助 産 学会 誌 第14巻 第1号(2000.8)

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褥 婦 の退 院後 の生活 イメ ー ジ とその 形成 にか かわ る要因 の分 析(1) 母 乳 栄 養 群 で は1か 月健 診 後 の 総 育 児 時 間 の イ メ ー ジ と実 際 にお い て 有 意 差 を認 め なか った 。 しか し病 院 の 混 合 ・人 工 栄 養 群 で は イ メー ジ よ り実 際 は有 意 に長 か っ た(p<0.05)が,助 産 院 で は有 意 差 を認 め な か っ た。 同様 に1か 月健 診 後 の休 息 時 間 で も母 乳 栄 養 群 は病 院,助 産 院 と も有 意 差 を 認 め なか っ た の に対 し,病 院 の混 合 ・人 工 栄 養 群 で は 実 際 は イ メ ー ジ よ り有 意 に 短 く(p<0.05), 助 産 院 で は有 意 差 を認 め な か っ た 。 す な わ ち,分 娩 施 設 に か か わ らず母 乳 栄養 群 の ほ うが実 際 の生 活 を イ メ ー ジ で きて い た。 4)退 院 後 の サ ポ ー ト さ らに,分 娩 施 設 退 院直 後 で は36名(81.8%) の 褥 婦 が サ ポ ー トを得 て,ほ ぼ イ メ ー ジ どお りの 生 活 が で きて い た 。 しか し,退 院 直後 の サ ポ ー ト が ほ とん ど得 られ な か った,あ るい は退 院 前 に 予 測 して い た よ うな サ ポ ー トが 得 られ な か っ た褥 婦 8名 は,退 院 直 後 の イ メー ジ と実 際 に お い て生 活 時 間 全 般 で 差 が み られ た 。 特 に,育 児 時 間 に お い て は イ メー ジ と実 際 に は150分 以 上 の差 が あ った 。 す なわ ち,退 院 直 後 の 生 活 にお い て褥 婦 は サ ポ ー トが 得 られ な い,あ るい は どの よ うな サ ポ ー トが 得 られ る か予 測 で き な い と,イ メー ジの形 成 は困 難 で あ っ た。 IV 考 察 1.褥 婦 の 退 院 後 の イ メー ジ 退 院 直 後 の イ メー ジ と実 際 の 生 活 時 間 にお い て 生 活 必 需 時 間,家 事 時 間,自 由 時 間,休 息 時 間 と も有 意 差 を認 め な か った こ とか ら,褥 婦 は退 院直 後 の 生 活 につ い て あ る程 度 の イ メ ー ジ が で きて い た 。 そ れ は退 院 直 後,多 くの 褥 婦 は実 際 にサ ポ ー トを得 て,家 事 や 育 児 を分 担 し,睡 眠,休 息 時 間 を確 保 で き,分 娩施 設 入 院 中 の 生 活 とほ ぼ 同 じ生 活 を送 れ て い た た め,イ メ ー ジ と実 際 に は 大 きな 差 が 生 じな か っ た と考 え られ る。 しか し,育 児 時 間 に関 して は,有 意差 を認 め な か っ た が60分 以 上 の 差 が み られ た こ とか ら,他 の生 活 時 間 に比 べ て イ メー ジ形 成 が難 しか っ た こ と を示唆 して い る。 1か 月 健 診 後 の イ メ ー ジ で は,家 事 時 間 は有 意 に増 加 し,そ れ に伴 い睡 眠時 間 は減 少 し,育 児 時 間 も退 院 直 後 の実 際 の生 活 よ りは有 意 に減 少 す る とイ メ ー ジ して い た 。 この こ とか ら,1か 月健 診 後 の家 事 は褥 婦 自身 が や らな け れ ば い け な い こ と と して イ メ ー ジで きて いた が,育 児 の 負 担 は軽 減 す る とイ メ ー ジ して い た と考 え られ る。 これ は褥 婦 の 身体 が 回復 し,家 事 も自分 で行 い,育 児 に も 慣 れ る と考 えて い た と思 わ れ る。 そ して,1か 月 健 診 後 の 実 際 の 生 活 で は,家 事 時 間 や 睡 眠 時 間 は ほ ぼ イ メ ー ジ どお りで あ った が,実 際 の生 活 で 育 児 時 間 が あ ま り減 らな い こ とを イ メ ー ジで きな か っ た。 一 般 に妊 娠 中 に 得 られ る情 報 や 分 娩 施 設 で の 母 親 学 級 は,分 娩 準 備 に 重 点 が 置 か れ て い る こ とが 多 く,退 院 後 の 実 際 の 生 活 につ い て知 る機 会 が 少 な い。 本 研 究 の対 象 者 も市 販 の 雑 誌 な どか ら情 報 を得 て い た人 が ほ とん どで あ り,妊 娠 中 か ら家 族 と退 院 後 の具 体 的 な 役 割 分 担 につ い て話 し合 っ た 褥 婦 が い な か っ た こ と も退 院 後 の イ メ ー ジ形 成 を 困難 に した と考 え られ る。 2.褥 婦 の育 児 の イ メ ー ジ 褥 婦 が母 親 と して の 新 しい 行 動 を学 習 して い く 過 程 に お い て イ メ ー ジ は 大 きな 役 割 を果 た し,イ メ ー ジ を 形 成 す る た め に は モ デ ル が 必 要 で あ る7胸。 しか し,本 研 究 の対 象 者 の 初 産 婦 で,子 ど も を もつ友 人 が ま った くい な い,あ る い は 身近 に子 ど も と接 した こ との な い 褥 婦 が あ っ た。 つ ま り,初 産 の褥 婦 は育 児 を現 実 の 生 活 と して経 験 す る こ とな く,か つ,身 近 な 母 親 と して の モ デ ル が な い ま ま育 児 をせ ざ る を え な い状 況 で あ っ た。 す な わ ち,こ れ まで の 家庭 生 活 を生 活 時 間 と して イ メ ー ジす るの は容 易 で あ って も,新 しい経 験 で あ る育 児 に つ い て は イ メ ー ジが 形 成 しに くか っ た と 考 え られ る。 一 方,児 の 睡 眠 覚 醒 リズ ム が24時 間 周期 にな る の は 生後2か 月 以 降 で あ り,そ れ まで は児 の 睡 眠 覚 醒 リズ ム は一 定 で は な い9),10)。そ の た め褥 婦 は 児 が い つ 起 きて 泣 くか リズ ムが つ か め ず,生 後1 か 月 で も児 の 睡 眠 覚 醒 に褥 婦 の 生 活 は左 右 さ れ る。 さ ら に,褥 婦 が 児 の い る生 活 と して リズ ム が つ か め て くるの は分 娩 後1か 月以 降 で あ る11)。す な わ ち,褥 婦 が 児 の 生 活 リズ ム を つ か み,そ れ に 合 わ せ た 生 活 が で き る よ うに な る に は,分 娩 後1 か 月 以 上 の 時 間 を要 す る と考 え られ る こ とか ら, 日本 助産 学 会誌 第14巻 第1号(2000.8) 21

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褥 婦 の退 院後 の 生活 イ メー ジ とそ の形 成 にか か わ る要 因 の分 析(1) 褥 婦 は育 児 時 間 の イ メ ー ジ形 成 が 困 難 で あ っ た と 言 え る。 さ らに,23名(52.3%)の 褥 婦 が1か 月 健 診 後 に生 活 の 場 所 を実 家 か ら 自宅 へ と変 え て い た 。 環境 の 変 化 は よ うや くつ か み か けた 新 しい生 活 の リズ ム を変 化 させ,1か 月健 診 以 降 の 生 活 で も特 に育 児 の イ メ ー ジ形 成 を困難 に した と考 え ら れ る。 矢 野12)は,生 活 時 間 の う ち 忙 し さ を表 す 指 標 と して 睡 眠 時 間 に注 目 して お り,さ ま ざ ま な時 間 の圧 力 は 「睡 眠 時 間 へ の しわ寄 せ 」 とい う形 で 現 れ る と述 べ て い る。 本 研 究 の褥 婦 の場 合 も育 児 時 間 をつ く り出 す た め に睡 眠,休 息時 間 は時 間 量, 項 目数 と も に減 少 し,褥 婦 の生 活 時 間 は育 児 時 間 に よ り圧 迫 され て お り,「 育 児 」 で 褥 婦 は 忙 しか った こ とを表 し て い る。 この結 果 は,乳 幼 児 の い る女性 は子 どもの 世 話 が 生 活 の 中 心 で あ り,子 ど もの世 話 や 家 事 が 長 い分,睡 眠 時 間 な ど生 活必 需 時 間 や 自 由 時 間 が 短 く な る と い う,1995年 の NHK生 活 時 間調 査 の結 果3)と も一 致 す る。 3.イ メー ジ 形 成 にか か わ る要 因 1)育 児 の 経 験 褥 婦 が イ メー ジ を形 成 しに くか っ た育 児 時 間 で は,初 産 婦 よ り経 産 婦 の ほ うが よ り実 際 に 近 い イ メ ー ジ を形 成 した 。 これ は イ メ ー ジ を形 成 す る要 因 と して 育 児 経 験 の 有 無 が 影 響 した と考 え られ る。 水 島14)は,イ メ ー ジ は 具 体 的 な る が ゆ え に, 公共 的概 念規 定 を越 え て,は る か に そ の人 の個 人 的 生活 体 験 を反 映 す る と述 べ て い る。 す な わ ち, 経 産 婦 は上 の 子 の 育 児 経 験 が あ る こ とで,新 生 児 の育 児 に つ い て も イ メー ジ形 成 が 容 易 で あ った と 考 え られ る。 前 述 した よ うに育 児 の経 験 が な い 初 産 婦 は,育 児 そ の もの の イ メ ー ジ も形 成 さ れ て い な い た め,そ れ を1日 の 生 活 時 間 と して 組 み 込 み,表 現 す る こ と は難 しか っ た と言 え る。 さ ら に,分 娩 施 設 入 院 中 に 母 児 同 室 で あ っ た と して も,育 児 は毎 日が 試 行 錯 誤 の連 続 で あ るた め,約 1週 間 の 入 院 期 間 で は 育 児 に慣 れ る まで に 至 ら ず,特 に初 産 婦 は 先 の 予 測 が つか ず,退 院 後 の イ メ ー ジ まで を形 成 で きな か っ た と考 え られ る。 2)児 の 栄 養 方法 次 に,児 の栄 養 方 法 も褥 婦 の イ メ ー ジ形 成 の 要 因 と考 え られ た 。 す なわ ち,母 乳 栄 養 が確 立 し て い た 褥 婦 の ほ うが よ り実 際 に近 い イ メ ー ジ を形 成 し て い た の で あ る。 堀 内15)は 妊 娠 末 期 か ら産 褥 6週 まで の 母 親 の 睡 眠 を追 跡 し,母 乳 授 乳 を達 成 して いた 母 親 は産 褥 期 の 睡 眠 変 動 に う ま く適 応 し て い た と報 告 して い る。 これ は母 乳 栄 養 で は児 の 欲 求 に 合 わ せ て授 乳 を す るた め,褥 婦 が 児 を よ く 観 察 して 児 の 睡 眠 覚 醒 リズ ム に合 わ せ た 生 活 を確 立 し よ う とし て い た た め と考 え られ る。 さ ら に, 母 乳栄 養 群 は哺 乳 ビ ン を洗 う な ど,間 接 育 児 時 間 も有 意 に少 な く,睡 眠 ・休 息 時 間 が 多 か った こ と か ら,混 合 ・人 工 栄 養 群 に比 べ 育 児 の 負担 が 少 な か っ た とい え る。 す な わ ち,母 乳 栄 養 を確 立 し た 褥 婦 は混 合 ・人 工 栄 養 の褥婦 よ り余 裕 の あ る生 活 を送 れ た こ と を示 唆 して い る。 ま た,早 期 か ら児 の睡 眠覚 醒 リズ ム を把 握 で きた た め,イ メ ー ジ形 成 が容 易 で あ った と考 え られ る。 さ らに,病 院,助 産 院 と も母 乳 栄 養 群 の ほ うが 混 合 ・人 工 栄 養 群 よ り も実 際 に近 い イ メ ー ジ形 成 が で きた こ とか ら,イ メ ー ジ形 成 は分 娩 施 設 問 の 違 い で は な く,児 の 栄 養 方 法 に よ る違 いが 大 きい と考 え ら れ る。 す な わ ち,退 院 後 の 褥 婦 の 生 活 は,ど れ だ け早 く子 ど も との生 活 リズ ムが 確 立 す る か が重 要 で あ り,そ の た め に は母 乳 栄 養 の確 立 が 重 要 で あ る こ とが 示 唆 さ れ た 。 これ まで母 乳 育 児 の利 点 は,栄 養 学 的,免 疫 学 的,心 理 学 的 な側 面 か ら強 調 され て い る こ とが 多 か った が,今 回 の 結 果 か ら も母 乳 育 児 の 確 立 は,間 接 育 児 時 間 を減 らし,睡 眠 ・休 息 時 間 を確 保 し,母 親 の生 活 に ゆ と りを生 み 出 す こ とが 明 らか に な った 。 3)退 院 後 の サ ポ ー ト 第3の イ メ ー ジ形 成 要 因 と して,退 院 後 の サ ポ ー トの 量 お よ び 質 が 考 え られ る 。 松 下 ら16)は褥 婦 の心 配 事 と実 母 の 援 助 との 関 係 に つ い て,実 母 の 援 助 態 度 に よ って 心 配 事 の 出 現 や 解 決 方 法 に違 いが あ る と報 告 し,サ ポ ー トに よ り褥 婦 の生 活 や 育 児 へ の適 応 が 影響 を受 け る こ とを示 唆 した 。 す なわ ち,退 院 後,褥 婦 が期 待 して い た サ ポ ー トが 得 られ る とイ メー ジ に近 い 生 活 が 送 れ るが,サ ポ ー トが ほ とん ど得 られ な か った り,期 待 した サ ポ ー トが 得 られ な い場 合 に は イ メ ー ジ した 生 活 は送 れ な い こ と に な り,イ メ ー ジ と実 際 の 生 活 に は差 が で きた と考 え られ る。 本 研 究 で も1か 月 健 診 ま 22 日本 助産 学 会 誌 第14巻 第1号(2000.8)

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褥 婦 の退 院後 の 生活 イメ ー ジ とその形 成 にか かわ る要 因 の分 析(1) で は何 らか の サ ポ ー トを受 け て い た褥 婦 が ほ とん どで あ っ た が,退 院 前 にサ ポー トを受 け る期 間 や 内容 に つ い て 家 族 は話 を した 褥 婦 は ほ とん どな か った 。 この こ とは,褥 婦 と家 族 の考 え る サ ポ ー ト に 食 い 違 い を生 じ させ,結 果 と して褥 婦 の イ メ ー ジ と実 際 の生 活 の差 を引 き起 こ して い た と考 え ら れ る。 この よ うに褥 婦 の退 院 後 の イ メ ー ジ形 成 に は褥 婦 の育 児 経 験,児 の栄 養 方 法,退 院後 の サ ポ ー ト が あ る と考 え られ る。 以 上 の こ とか ら,退 院後 の 生活 適 応 を促 進 す る た め の 分 娩施 設 にお け る産褥 期 保 健 指 導 は,育 児 の技 術 指 導 や ル チ ー ン化 され た退 院後 の動 静 の 変 化 の 説 明 だ けで な く,褥 婦 が 育 児 を組 み 込 ん だ 退 院 後 の イ メー ジ形 成 が で き る よ う,個 々 の 生活 背 景,サ ポ ー ト状 況,育 児 経 験 な ど を考 慮 した 内 容 を組 み入 れ る こ とが 必 要 で あ る と考 え られ る。 さ らに,育 児 に関 して は1か 月 健 診 後 もイ メー ジ形 成 が 不 十 分 で あ る こ とか ら,今 ま で以 上 の 継 続 的 な ケ アや 母 乳 育 児 の確 立 を促 す ケ アが 重 要 で あ る こ とが示 唆 され た。 V 結 論 1.褥 婦 の退 院 後 の生 活 に つ い て,育 児 時 間 以 外 は ほ ぼ実 際 の生 活 に近 い イ メ ー ジ形 成 が で き て い た。 2.分 娩 施 設 退 院 直 後 の褥 婦 は,多 くの場 合 サ ポ ー トを得 て,ほ ぼイメージ どお りの生活 がで き て い た。 3.1か 月健 診 後 の褥 婦 の生 活 で は,家 事 時 間 は イ メ ー ジ どお り増 加 した う え,育 児 時 間 もイ メ ー ジ よ り負担 が大 き く,睡 眠,休 息 時 間 は減 少 した。 4.褥 婦 の退 院後 の イ メ ー ジ形 成 要 因 と して,育 児 経 験,児 の栄 養 方法,退 院 後 の サ ポ ー トが考 え られ た。 謝辞 本 研 究 を進 め るにあ た り,デ ー タ収 集 の場 を ご提 供 いた だ い た対 象施 設 の看 護 部長,病 棟 婦長,ス タ ッフ の皆様 お よび助 産 所 の助 産婦 の皆様,そ して, 育 児 で お忙 しい時 に快 く研究 に ご協 力 い ただ い た お 母 様 方 に 心 よ り感 謝 い た し ま す 。 な お,本 研 究 結 果 は,東 京 医 科 歯 科 大 学 大 学 院 医 学 系 研 究 科 修 士 論 文 の 一 部 を 加 筆,修 正 し た も の で あ り,第2回 聖 路 加 看 護学 会 に お い て 一 部 発 表 した もの で あ る。 引用 文献 1)皆 川 恵 美 子,他:わ が 国 の母 性 性 に 関 す る 文 献 の動 向,神 奈 川県 立衛 生短 期 大 学紀 要,16,16-22,1989. 2)皆 川恵 美子,他:母 性 性 に関 す る研究 第2報-文 献 「母 子 関 係 ・母 性 意 識 に対 す る働 きか け」-,母 性 衛 生,34(1),34-42,1993. 3)神 谷 整 子,他:母 子保 健 にお け る助 産 婦 の あ り方 に関 す る研 究 一産 後1ヶ 月 まで の ケ ア及 び支 援 に関 す る産 褥 婦 の ニ ー ズ ー,平 成6年 度 厚 生 省 心 身 障 害 研 究, 308-313,1995. 4)小 田切 房子,他:母 子保 健 に お け る助 産 婦 の あ り方 に 関 す る研究,助 産 婦 に対 す るニー ズ調 査 一母 子 に対 す る産 後 支援 へ の ニ ーズ ー,平 成6年 度 厚 生省 心 身 障害 研究,299-307,1995. 5)上 杉喬:イ メー ジ心 理学1イ メー ジ の基礎 心 理 学 第1章 イ メー ジの 知 覚 的 性 質 第2章 イ メ ー ジの 記 憶 ・学 習 に お ける機 能,7-102,誠 信書 房,1993. 6)田 鳥誠 一:講 談社 現 代新 書1117イ メ ー ジ体 験 の 心理 学,講 談 社,1992.

7 ) Bandura, A. Psychological moderig. Chiago :

Al-dine-Atherton.1971b(原 野 広 太 郎,福 島 脩 美 訳:モ デ リ ン グ の 心 理 学-観 察 学 習 の 理 論 と実 際-,金 子 書 房,20-32,1975)。

8) Bandura, A. Social learning theory.

Prentice-Hall,Inc,,Englewood Cliff,N.J., 1977(原 野 広 太 郎 訳:社 会 学 習 理 論-人 間 理 解 と教 育 の 基 礎-,金 子 書 房,3-32,1979). 9) 島 田 三 恵 子,他:環 境 要 因 と 神 経 系-睡 眠 覚 醒 リズ ム の 発 達 と 中 枢 神 経 系-,臨 床 環 境 医 学,2(2),93-97,1993.

10) Megumi Matsuoka et al.: The Development of Sleep and Wakefulness Cycle in Early Infancy and Its Relationship to Feeding Habit, Tohoku J. Exp Med., 165, 147-154, 1991. 11)片 桐 麻 州 美:効 果 的 な 産 褥 家 庭 訪 問 の 確 立 に 向 け て, 助 産 婦 雑 誌,50(10),42-45,1996. 12)矢 野 眞 也:生 活 時 間 の 社 会 学 社 会 の 時 間 ・個 人 の 時 間,東 京 大 学 出 版 会,1995. 13)NHK放 送 文 化 研 究 所 編:日 本 人 の 生 活 時 間1995-NHK国 民 生 活 時 間 調 査-,NHK出 版,1996. 14)水 島 恵 一:人 間 心 理 学 体 系 第9巻 イ メ ー ジ 心 理 学 六 章 イ メ ー ジ の ト ピ ッ ク ス,大 日本 図 書,219-231, 1988. 15)堀 内 成 子:褥 婦 の 睡 眠 パ タ ー ン の 経 時 的 変 化 に 関 す る 研 究,日 本 看 護 科 学 学 会 誌,14(1),38-47,1994. 16)松 下 き よ子,他:産 褥1か 月 の 褥 婦 の 心 配 事 と,実 母 の 援 助 と の 関 係-実 母 の 援 助 態 度 別 分 析-,日 本 助 産 学 会 誌,6(1),31-37,1992. 17)前 掲 書14) 日本 助 産学 会 誌 第14巻 第1号(2000.8) 23

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