資
料
女子大学生の子育て意識の差
―日本,アメリカ合衆国,インドネシア共和国の比較―
Comparison of attitudes toward childrearing among female college students
in Japan, the United States, and Indonesia
平 岡 敬 子(Keiko HIRAOKA)
* 抄 録 目 的 日本,アメリカ,インドネシアの女子大学生の子育て意識を比較することで,日本の女子大学生の特 徴を明らかする。 対象と方法 2015年12月から2016年4月にかけて,日本,アメリカ,インドネシアの女子大学生を対象に質問紙 調査を実施した。調査内容は子供の教育・子育て役割など子育てを問う11項目(4件法)及び基本属性 から構成される。収集したデータの分析にMann-WhitneyのU検定,カイ二乗検定,Spearman相関分析 を用いた。 結 果 日本185名,アメリカ101名,インドネシア188名の計474名から回答を得られた。どの国の学生もそ のほとんどが子供を望んでおり,教育に男女の差をつけるべきではないと回答した。アメリカとインド ネシアの学生の99.0%以上は,子供にはできるだけ高い教育を受けさせるべきだと回答したが,日本の 学生の場合,そのように回答したものは 66.1% であった(p<0.01)。反対に,「そう思わない」が 3.3%, 「どちらかというとそう思わない」が30.6%で,合わせて33.9%は高い教育を受けさせるべきとは思って いなかった。また,日本の学生は,「子育ては女性の仕事である」と考える割合が31.4%で,アメリカの 学生(28.0%)やインドネシアの学生(20.7%)より高く,インドネシアの学生とは有意な差が見られた (p<0.05)。子育てにおける父親と母親の役割を別と考えている学生は,日本の場合67.6%,インドネシ アの場合75.0%であり,アメリカの学生(25.0%)と比べて有意に多かった(p<0.01)。親権については, 日本の学生(54.1%)とインドネシアの学生(72.2%)は,「子供が小さい場合,離婚後の親権は母親が持 つ方が良い」と回答し,アメリカの学生(19.0%)に比べると有意に多かった(p<0.01)。 結 論 日本の学生は,子供の教育や進路指導に関しては性別による差をつけるべきではないと考えているが, 「幼い子供は母親が育てるべき」など子育てに関しては性別による役割の差があると考えていた。また日 本の学生にとって,子供にかかる高い教育費が子育てをするうえでバリアとなる可能性が推察された。 2018年2月23日受付 2019 年5月30日採用 2019年10月5日早期公開*安田女子大学看護学部看護学科(Department of Nursing, Faculty of Nursing Yasuda Women's University)
Abstract Purpose
The aim of this study was to compare attitudes toward childrearing among female college students in Japan, the United States, and Indonesia.
Methods
Survey questionnaires were distributed to samples of students in these three countries between December 2015, and April 2016. The questionnaires included the following: eleven questions on childrearing (a four-point Likert scale), their desirable educational policy, and their demographic characteristics. A Mann-Whitney U test, chi-squared test and Spearman correlation analysis were used to analyze the data.
Results
A total of 474 female students (185 Japanese, 101 Americans, and 188 Indonesians) completed the questionnaires. Most of the participants responded that they wanted to have children in the future. In addition, respondents from all countries expressed their belief in gender equality in education. Some differences were also found. While more than 99.0% of both American students and Indonesian students believed that children should receive the highest level of education possible, 66.1% of Japanese students respond in the same way (p<0.01). Oppositely, 30.6% of Japanese
students answered,“Somewhat Disagree”, and 3.3% of them answered “Disagree”. In addition, a larger percentage of
Japanese students viewed that “the childbearing was a woman's job” at 31.4% in contrast to 28.0% of American
students and 20.7% among Indonesian students. The difference between Japanese students and Indonesian students was especially large and statistically significant (p<0.05). Large portions of the Japanese students (67.6%) and In-donesian students (75.0%) believed that the roles of the father and mother in childrearing were different while sig-nificantly smaller portion (25.0%) of American students held the same view (p<0.01). Regarding child custody, 54.1%
of Japanese students and 72.2% of Indonesian students agreed to the statement“child custody should be given to
mothers if children are young in the event of a divorce” where a significant difference was observed in a much smaller
portion (19.0%) of American students agreeing to this statement (p<0.01). Conclusion
While Japanese students believed in gender equality regarding children's education and career paths, they be-lieved in appropriateness of gender specific tasks in parenting which was reflected in their agreement to the
state-ment,“young children should be raised by the mothers.” In addition, for the Japanese college students, high cost of
education appears to be a potential significant barrier to parenting.
Key words: attitudes toward childrearing, female college students, Japan, the United States, Indonesia
Ⅰ.緒 言
政府は 2018 年度の予算として,少子化対策に 2 兆 1437億円を決定した。これは社会保障関係費全体の 6.5%に相当する。少子化が日本の将来を脅かす問題 であると国民に認知されるようになってから,10 年 以上が経過した。政府もこの問題の解決のために内閣 府に少子化対策担当の特命担当大臣を置き,毎年血税 を投じてきた。しかし今のところ,この問題に対して 何ら好転の兆しは見えてこない。政府による少子化対 策が功を奏さない理由の一つとして,これから子供を 産み育てる世代の意向が反映されていないことが考え られる。日本の場合,少子化に最も影響を与えている 要因の一つは,学業とキャリアの追求により晩婚・晩 産となる可能性がきわめて高い高学歴の女性たちであ る。女性の最終学歴別合計特殊出生率をみると,学歴 が高くなればなるほど,合計特殊出生率が下がってい ることがわかる(ラザフォード他,2004)。高学歴の 女性が将来の妊娠・出産に対してどのようなライフプ ランを思い描いているのか,そして少子化問題をどの ようにとらえているのかを知ることが,少子化対策の 第一歩であると考える。しかし,そのようなテーマで 論じられた文献は少ない。 女子大学生の結婚,出産,育児に関する意識を調査 した森らの報告によると(森本他,2000),高学歴女 性の大半は結婚や出産に対する願望を持ち,「仕事も 家庭も」という希望があることが明らかになった。ま た女子学生の少子化社会観を調査した梅澤は,女子大 生は少子化の原因を女性の職場進出や高学歴化,高い 教育費の負担と捉えており,少子化問題は女性の多様化した価値観に呼応した対応が重要であると結論付け ている(梅澤,2002)。また,女性の高学歴化と少子 化の関連を分析した白波瀬は,学歴よりも結婚年齢が 高くなることが少子化に大きく影響していると述べて いる(白波瀬,1999)。同様に少子化の原因として, 女性の社会進出に伴う非婚率の増加を指摘する研究者 もいる(Bumpass, et al. 2009)。これらの文献からは 日本の女子大学生たちの結婚,出産あるいは少子化に ついての捉え方は見えてくるが,これらの課題につい て,彼ら自身がもつ意識の特徴がわからない。 そこで,私たちは日本の女子大学生たちが抱く,出 産や育児に対する意識の特徴を明らかにし,少子化問 題を考えるための指標とするために横断的調査を 行った。その一環として,本研究では女子学生たちが 考える子供への教育を含む子育てに対する意識に焦点 を当てた。すなわち,これから妊娠・出産をする高学 歴の女性が子供への教育を含む子育てに関して,どの ような考えを持っているのかを明らかにし,少子化対 策の基礎データとすることが本研究の目的である。日 本の女子大学生が子育てに関して,どのような意識の 特徴をもっているのか,それを知るための方法とし て,アメリカ,インドネシアの女子大学生の意識との 比較を試みた。アメリカは恒常的にとりわけ中南米 からの移民による人口の流入があり,他の先進工業国 ほど少子化問題は深刻ではなく,合計特殊出生率は置 き換え水準である 2.0 前後を保ってきた(内閣府, 2017)。しかし,現政権は移民政策を厳格化しており, 今後,自国民だけで置き換え水準を保持することは厳 しくなると予測される。一方,インドネシアはむしろ 人口を抑制することが国家的課題であったが,家族計 画等の普及により1971年に5.1であった合計特殊出生 率を今日は 2.3 まで減少させた(関山,2014)。しか し,2030年以降,合計特殊出生率は2.0を下回り,将 来的にはシンガポールやタイなど他の東南アジア諸国 と同様,少子高齢化社会となることが予測される。人 口問題に関する過去の歴史や社会背景は異なるが,い ずれの国においても少子化は今後の社会問題となり, それに大きな影響を与えるのが,これから子供を産む 世代となる若い女性たちである。そこで,こうした異 なる国々の未来に影響を与える女子大学生の意識を比 較することによって,日本の女子大学生の子育てに関 する考え方の特徴を明らかにした。
Ⅱ.方 法
1.研究の対象 日本,アメリカ,インドネシアの大学に通っている 女子学生を対象に 2015 年 12 月から 2016 年 4 月にかけ て,質問紙調査を実施した。女子学生の専攻は問わ ず,それぞれの国の国籍と文化的背景を持つ学生を対 象者としたので,外国からの留学生は除外した。 日本の学生と比較する外国の学生として,アメリカ とインドネシアの学生を選んだ理由は,社会背景は日 本と異なるが,いずれの国も将来的には少子化問題を 抱えることが予測され,彼女たちがそれぞれの国の未 来人口に影響を与えるからである。また,アメリカは 先進工業国を代表する国の一つとして,その文化やラ イフスタイルに憧れ目標とする日本の学生が多いこと から選定した。インドネシアは大家族や家父長制をは じめとする伝統的な家族形態が存在し,彼らの両親あ るいは祖父母世代が若かった頃の日本と重なることか ら選定した。すなわち,現在のアメリカとインドネシ アは,日本の未来あるいは過去の思考を俯瞰できるの ではないかと考え,それぞれの国の学生の意識と日本 の学生のそれとを比較することにした。 2.調査方法 データ収集には無記名自記式の質問紙調査方法を用 いた。調査票はまず日本語で作成し,日本語と英語, 日本語とインドネシア語を解する研究者間でそれぞれ の言語に翻訳した。調査内容の一貫性を保つために, 翻訳された調査票を再度,研究者間で検討し,質問内 容に関する対象者のとらえ方が一致するよう修正し た。それぞれの対象国で,研究者もしくは研究協力者 が調査に協力できる学生を募り,調査の目的,方法等 を説明した。そのうえで,調査に協力できる対象者の みに調査票を配布した。研究対象者はその場で調査票 に回答し,研究者もしくは研究協力者が回収した。 3.調査項目 調査項目は,文献と事前に行ったフォーカス・グ ループ・ディスカッションから抽出された質問等を参 考に研究者間で協議のうえ決定した。その内容は,子 供の教育に関する5項目と子育て役割に関する 6項目 で構成される。子供の教育に関する項目は,「子供に はできるだけ高い教育を受けさせるべき」という高等 教育を受けさせることの是非,「女子も経済的に自立 女子大学生の子育て意識の差―日本,アメリカ合衆国,インドネシア共和国の比較―育てるべき」という教育内容の平等性,「進路指導は性 別を意識して行われるべき」という進路指導に性別を 意識することの必要性,「子供は親に示された道を進 むべき」という子供の進路に親が介入することの是非 などの5項目である。子育て役割に関する項目は,「子 育ては女性の仕事である」,「男が働いて子供の教育費 を稼ぐべき」,「子育てにおける父親と母親の役割は異 なる」など家庭内における性別役割分業の必要性,「父 親も育児休暇を取るべき」という父親が育児休暇を取 ることの是非,「離婚後の親権は母親が持つ方がよ い」,「子育ては生みの親が一番」などの子供の親権, 主たる子育ての担い手に関する6項目である。いずれ も4段階評価(「そう思う」,「どちらかというとそう思 う」,「どちらかというとそう思わない」,「そう思わな い」)で回答を求めた。将来欲しい子供の数と,子供 を欲しいと思う気持ちの程度を4段階評価(「必ず欲し い」,「できれば欲しい」,「あまり欲しくない」,「欲しく ない」)で回答を求めた。質問項目に関する意識が高 い回答ほど点数が低くなる設定にしており,逆転項目 はない。さらに対象者の基本属性として,国籍,年齢 等を尋ねた。 4.分析方法 統計解析には SPSS Statistics ver.22 を使用した。子 供の教育と子育て意識に関する各項目は国籍とクロス 集計を行った。2 か国ずつ,3 つのパターンで組み合 わせてクロス集計を行い,カイ二乗検定を用いてそれ ぞれの違いを分析した。さらに,子供を欲しいと思う 気持ちと子育て役割に関する意識の各項目との相関を みるために,Spearmanの相関分析を用いて調べた。 5.倫理的配慮 本調査は,安田女子大学倫理委員会からの承認(承 認番号:150013)を受けてから実施された。また,研 究協力機関には,研究の目的と方法を口頭と文書で説 明し,文書で研究協力への同意を得た。研究に関する 説明文を含む調査参加への依頼書は研究対象者となる 女子大学生に配布した。同時に対象者に研究の目的, 参加の自由性,協力の有無による不利益回避,守秘, 匿名性の担保等を口頭で説明し,本調査に参加する意 思のある者のみが質問調査票に回答した。あわせて研 究対象者は同意書に署名をした。 1.対象者の基本属性 日本の 1大学,アメリカの 1大学,インドネシアの 2大学に調査を依頼し,すべての大学の学生から調査 の協力を得た。日本の学生 196 名,アメリカの学生 120名,インドネシアの学生 197 名に調査票を配布し た。そのうち回答が得られた学生は,日本185名,ア メリカ 101 名,インドネシア 188 名の計 474 名であっ た(回収率 92.4%)。平均年齢は日本 19.4 歳(±0.5), アメリカ 20.4 歳(±1.2),インドネシア 20 歳(±1.5) で,対象者全体の平均年齢は19.8歳(±1.2)であった。 欲しい子供の数の平均値は日本2.3人(±0.7),アメリ カ2.5人(±0.9),インドネシア2.4人(±0.8)で,国籍 による差は見られなかった。どの国の学生もその大多 数は,将来,子供を望んでいた。「将来,子供が欲し いですか」という問いに対して,日本の学生の94.6%, インドネシアの学生の 93.5% が「必ず欲しい」もしく は「できれば欲しい」と回答した。アメリカの学生で そのように回答したのは85.9%で,日本,インドネシ アの学生に比べると有意に少なかった(p<0.05)。 2.子供への教育観 まず,教育内容についてであるが,いずれの国の学 生もその大多数は,女の子も経済的に自立するように 育てるべきであり,男の子も家事ができるように育て るべきであると回答していた。その点に関しては日本 と他の二か国との間で有意な差は見られなかった。 有意な差が見られたのは,アメリカの学生の40.0% が進路指導は性別を意識して行われるべきであるとい う質問に対して,「そう思う」あるいは「どちらかとい うとそう思う」と回答したのに対し,日本の学生でそ のように回答したものは15.8%であり,アメリカの学 生に比べて有意に少なかった(p<0.01)(表1)。また, インドネシアの学生の23.8%は,親の示す道を進むべ きと回答しており,その割合は日本(3.3%)に比べ有 意に多かった(p<0.05)(表2)。 日本の学生の特徴は,他国の学生ほど子供に高い教 育が必要だと思っていないことだった。インドネシ ア,アメリカの学生の99.0%以上が子供にはできるだ け高い教育を受けさせるべきだと回答していたが,日 本の学生の場合,そのように回答したものは 66.1% だった(p<0.01)。日本の学生の 33.9% は必ずしも高 い教育を受けさせるべきとは思っていなかった。
表 1 日 本 とアメリカの 子 育 て 意 識 の 比 較 日 本 n=185 ( % ) アメリカ n=101 ( % ) 有 意 水 準 そう 思 う・ どちらかというと そう 思 う どちらかというと そう 思 わない そう 思 わない そう 思 う どちらかという と そう 思 う どちらかというと そう 思 わない そう 思 わない *p<0.05 **p<0.01 子 供 の 教 育 に 関 する 項 目 子 供 には 高 い 教 育 を 受 けさせるべき 121 ( 66.1 ) 62 ( 33.9 ) 101 ( 100 ) 0( 0) ** 女 子 も 経 済 的 に 自 立 できるよう 育 てるべき 180 ( 98.4 ) 3( 1.6 ) 100 ( 99.0 ) 1( 1.0 ) 男 子 も 家 事 ができるように 育 てるべき 179 ( 97.8 ) 4( 2.2 ) 100 ( 99.0 ) 1( 1.0 ) 進 路 指 導 は 性 別 を 意 識 して 行 われるべき 29 ( 15.8 ) 154 ( 84.2 ) 40 ( 40.0 ) 60 ( 60.0 ) ** 子 供 は 親 に 示 された 道 を 進 むべき 6( 3.3 ) 178 ( 96.7 ) 10 ( 10.0 ) 90 ( 90.0 ) 子 育 て 役 割 に 関 する 項 目 子 育 ては 女 性 の 仕事 である 58 ( 31.4 ) 127 ( 68.8 ) 28 ( 28.0 ) 72 ( 72.0 ) 子 供 の 教 育 費 は 父 親 が 働 いて 稼 ぐべき 55 ( 29.7 ) 130 ( 70.3 ) 19 ( 19.0 ) 81 ( 81.0 ) * 父 親 も 育 児 休 暇 を 取 るべき 130 ( 70.7 ) 54 ( 29.3 ) 92 ( 92.0 ) 8( 8.0 ) 子 供 が 小 さいうちは 母 親 が 親 権 を 持 つべき 100 ( 54.1 ) 85 ( 45.9 ) 19 ( 19.0 ) 81 ( 81.0 ) ** 子 供 にとって 生 みの 親 による 子 育 てが 一 番 142 ( 77.2 ) 42 ( 22.8 ) 24 ( 24.0 ) 76 ( 76.0 ) ** 子 育 てにおける 父 親 と 母 親 の 役 割 は 異 なる 125 ( 67.6 ) 60 ( 32.4 ) 25 ( 25.0 ) 75 ( 75.0 ) ** ( カイ 二乗 検 定 における 有 意 水 準 ) 表 2 日 本 とインドネシ アの 子 育 て 意 識 の 比 較 日 本 n=185 ( % ) インドネシア n=188 ( % ) 有 意 水 準 そう 思 う どちらかという と そう 思 う どちらかという と そう 思 わない そう 思 わない そう 思 う どちらかという と そう 思 う どちらかという と そう 思 わない そう 思 わない *p<0.05 **p<0.01 子 供 の 教 育 に 関 する 項 目 子 供 には 高 い 教 育 を 受 けさせるべき 121 ( 66.1 ) 62 ( 33.9 ) 186 ( 99.5 ) 1( 0.5 ) ** 女 子 も 経 済 的 に 自 立 できるよう 育 てるべき 180 ( 98.4 ) 3( 1.6 ) 186 ( 99.5 ) 1( 0.5 ) 男 子 も 家 事 ができるように 育 てるべき 179 ( 97.8 ) 4( 2.2 ) 183 ( 97.9 ) 4( 2.1 ) 進 路 指 導 は 性 別 を 意 識 して 行 われるべき 29 ( 15.8 ) 154 ( 84.2 ) 15 ( 8.1 ) 171 ( 91.9 ) 子 供 は 親 に 示 された 道 を 進 むべき 6( 3.3 ) 178 ( 96.7 ) 44 ( 23.8 ) 141 ( 76.2 ) * 子 育 て 役 割 に 関 する 項 目 子 育 ては 女 性 の 仕事 である 58 ( 31.4 ) 127 ( 68.8 ) 39 ( 20.7 ) 149 ( 79.3 ) * 子 供 の 教 育 費 は 父 親 が 働 いて 稼 ぐべき 55 ( 29.7 ) 130 ( 70.3 ) 84 ( 44.7 ) 104 ( 55.3 ) ** 父 親 も 育 児 休 暇 を 取 るべき 130 ( 70.7 ) 54 ( 29.3 ) 140 ( 74.5 ) 48 ( 25.5 ) 子 供 が 小 さいうちは 母 親 が 親 権 を 持 つべき 100 ( 54.1 ) 85 ( 45.9 ) 135 ( 72.2 ) 52 ( 27.8 ) 子 供 にとって 生 みの 親 による 子 育 てが 一 番 142 ( 77.2 ) 42 ( 22.8 ) 159 ( 84.6 ) 29 ( 15.4 ) 子 育 てにおける 父 親 と 母 親 の 役 割 は 異 なる 125 ( 67.6 ) 60 ( 32.4 ) 141 ( 75.0 ) 47 ( 25.0 ) ( カイ 二乗 検 定 における 有 意 水 準 ) 女子大学生の子育て意識の差―日本,アメリカ合衆国,インドネシア共和国の比較―
次に子育てに関する性別役割意識を比較したとこ ろ,「子育ては女性の仕事である」と思っている学生は どの国も半数に満たなかった。学生の大多数は子育て が女性だけの仕事とは思っていない。ただし,日本の 学生は,「子育ては女性の仕事である」と考える割合が 31.4%で,アメリカ(28.0%),インドネシア(20.7%) の学生に比べて多く,特にインドネシアと比較すると 有意に多かった(p<0.05)。 日本の67.6%の学生は,子育てにおける父親と母親 の役割は別と考えていた。しかし,アメリカの学生で そのように考えている者は25.0%で,その割合は日本 の学生と比べて有意に少なかった(p<0.01)。 インドネシアの学生の44.7%は,「子供の教育費は父 親が働いて稼ぐものである」と回答しており,日本 (29.7%)の学生に比べ有意に多かった(p<0.01)。日本 の回答は両国の中間に位置し,インドネシアの学生よ りも有意に少なく(p<0.01),アメリカの学生よりも 有意に多かった(p<0.05)。 また親権については,日本の学生の54.1%は,「子供 が小さい場合,離婚後の親権は母親が持つ方が良い」 と回答していたが,アメリカの学生でそのように回答 した者は19.0%であり,日本の学生に比べると有意に 少なかった(p<0.01)。 さらに,日本の学生の77.2%は,「子供にとって生み の親による子育てが一番である」と回答していた。反 対にアメリカの学生でそのように回答した者は24.0% で,その割合は日本の学生に比べて有意に少なかった (p<0.01)。 4.各国学生の教育観と子育て意識の特徴 総合的に見て,「子育てにおける父親と母親の役割 は異なる」「教育費は父親が働いて稼ぐもの」「子供が 小さいうちは母親が親権を持つべき」「子供にとって 生みの親による子育てが一番である」などの保守的あ るいは伝統的な教育観や子育て観を重視する傾向が強 かったのは,インドネシアの学生であり,日本の学生 の回答と比べると,有意な差が見られた(p<0.01)。 反対にアメリカの学生はそれらをほとんど重視してい なかった。日本の学生の回答は両国の学生の回答の中 間にあったが,どちらかというとインドネシアの学生 の回答に近く,両国の学生の回答には有意な差は見ら れなかった。 また,これらの保守的あるいは伝統的な子育て意識 ろ,インドネシアについては,「子供にとって生みの 親が一番(r=0.29, p<0.01)」「子育てにおける父親と 母親の役割は異なる(r=0.203, p<0.01)」「子供は親に 示された道を歩むべき(r=0.159, p<0.05)」という項目 と相関しており,これらの伝統的な子育て意識が強い 者ほど,子供を欲しいと思う気持ちも強いことがわ かった。また,アメリカについては,子育て意識のど の項目にも相関していなかったが,教育観の中で,唯 一「進 路 指 導 は 性 別 を 意 識 し て 行 わ れ る べ き (r=0.274, p<0.01)」という項目に相関していた。しか し,日本の学生については,子育て意識と教育観のど の項目にも明らかな相関は見られず,子供の欲しいと いう気持ちに伝統的な子育て観は全く影響していない ことがわかった。
Ⅳ.考 察
今回の調査では,欲しい子供の数の平均値は日本 2.3人,アメリカ 2.5 人,インドネシア 2.4 人で,国籍 による差は見られなかった。しかし,この数値をそれ ぞれの国の合計特殊出生率と比較すると,インドネシ ア(2.3)とアメリカ(2.0)については,概ね一致して いたが,日本(1.4)は大きく乖離していた。この理想 と現実のギャップを明らかにする一つの方法として, 日本の学生の子育て意識の特徴について,教育観と子 育てに関する意識を中心に考察する。 まず教育についてであるが,日本の学生は教育に関 して男女間で差をつけるべきではないと考えており, 進路に関しても親の勧める道を進むべきであるとは考 えていなかった。インドネシア,アメリカの学生の 99.0%以上が子供にはできるだけ高い教育を受けさせ るべきだと回答しており,彼らは高いレベルの教育が 子供の将来を担保するものと考えていた。しかし,日 本の学生は必ずしもそうは思っていない。その違いは 何なのかを考察する。 まず,学歴が子供の将来をどの程度決定づけるかで ある。インドネシアでは,学歴によって将来就く職業 が決まり,学歴のないメイドと大卒のホワイトカ ラーの給与格差は 10 倍以上である。学歴によって子 供の将来が決まるため,親の立場になって考えた時, できるだけ高い教育を子供に受けさせたいと願うのは 自然であろう。但し,インドネシアの大学進学率は 30.0%程度で,大学に進学できる層は限られている(日本リサーチ総合研究所,2015)。 次に,学費や生活費など大学進学に伴う費用を誰が 負担しているかである。アメリカの大学進学率は 74.0%で,3か国の中で最も高い(文部科学省,2016)。 但し,アメリカの場合,大学に進学する年齢は必ずし も 18 歳とは限らない。社会人を経て大学に進学する 者,あるいは仕事をしながら,パートタイムの学生を する者など,学びの方法は様々である。そして彼らの 多くは親に頼らず,自分でその費用を捻出するか,返 済義務のない奨学金を得るなどして学費等を賄ってい る。 日本の大学進学率は 51.0%であり,入学者の 9割以 上が高校卒業後の 18 歳から 19 歳で占める(文部科学 省,2016)。彼らに社会人経験はなく,主たる学費等 の負担者は親である。親が負担している教育費が高額 なわりには十分に生かしきれていない,あるいはその 対価に見合うだけの将来が保障されていないという思 いが,日本の学生たちにあるのではないかと推察され る。その結果,3 分の 1 の学生が高いばかりの教育費 の投入に疑問を感じる回答を示したと考えられる。そ してこのことは同時に高い教育費が子育ての負担に なっているという彼ら自身の思いが示唆される。 次に,子育てにともなう意識についてであるが,日 本の学生は,子育ては女性の仕事と考える割合が3か 国の中で一番多かった。また,子供の小さい時は女性 が育てるべきであり,子どもは生みの親が育てるのが 一番良いという伝統的な子育て観を持つ学生の割合 が,インドネシアの学生に次いで多く,対象者の過半 数を形成していた。大多数の者がそのように考えてい ないアメリカの学生の回答と比べると対照的であっ た。日本の学生の意識の中に,「子育てには性別によ る役割の違いがあり,特に子供が小さいうちは母親 (実母)が面倒を見るべきである」という保守的あるい は伝統的な子育て観があることは否めない。このこと はインドネシアの学生の回答にも同様に見られた。但 し,インドネシアの学生との大きな相違は,インドネ シアの学生はこういった伝統的子育て観と子供を欲し いと思う気持ちとが相関していたが,日本の回答には 何ら相関が見られなかったことである。つまり,イン ドネシアの学生は伝統的子育て観が強いものほど,子 供を欲しいと思う気持ちが強いことが推察される。し かし,日本の学生の場合,伝統的子育て観もリベラル な子育て観も子どもを欲しいと思う気持ちとの間に関 連性が見られず,子供を欲しいという気持ちにインセ ンティブを与える子育て観が見当たらなかった。この ことは,日本の学生の中には,子育てそれ自体をネガ ティブに考える価値観が存在している可能性があり, 日本における少子化の背景にある原因の根深さと,そ れを取り除くための対策の困難性が示唆される。 なお,本研究のデータは日本,アメリカ,インドネ シアの大学に通う一部の学生から得られたものであ る。対象数は474名と少なく,それぞれの国を代表す るものではない。今後は対象地域を拡大し,対象者数 を増加させることで,日本の学生の子育て意識の特徴 をより明確に分析する必要がある。
Ⅴ.結 論
日本の学生は,子供の教育や進路指導に関しては性 別による差をつけるべきではないと考えているが,子 育てに関しては保守的あるいは伝統的な価値観を 持っており,性別による子育て役割の差があると考え ていた。日本の学生は,他国の学生に比べ,子供に高 い教育が必要と考える割合が少なく,むしろ高い教育 費が将来,子育てをするうえで障害となることが推察 され,それらの分析については今後の課題とする。 謝 辞 本研究にあたり,調査票の回答にご協力いただきま した対象者の皆様に感謝いたします。なお,本研究は 安田女子大学学術研究助成費を受けて行った。 利益相反 論文内容に関し開示すべき利益相反の事項はない。 文 献Bumpass, L. L., Rindfuss, R. R., Cho, M. K., & Tsuya, N. O. (2009). The Institutional Context of Low Fertility The
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