※ 当誌は、株式会社 時事通信社がライセンスに基づき Dow Jones & Company, Inc.の発行する BARRON’S 誌の内容を利用して作成したものです。
※ 当誌は、情報提供を目的としてのみ作成したものであり、有価証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。また、当誌は当社が信頼できると判断した資 料およびデータ等により作成しておりますが、その正確性および完全性について保証するものではありません。また、将来の投資成果や市場環境を保証するもの ではありません。投資決定にあたっては、投資家ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
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Week of July 231. Wall Street Rushes Into a New Asset Class 新資産クラス→ - 2 - 【ダイレクトレンディング】 ダイレクトレンディングに資金が殺到
2. The 50 Best Annuities 年金保険ベスト 50→ - 5 - 【年金保険】 金利上昇で魅力が増し、商品設計も多様化
3. BlackRock, T. Rowe Price and Other Money Managers Look Like Bargains 割安→ - 10 - 【推奨銘柄】 株価下落で資産運用会社のバリュエーションと配当利回りが魅力的に
4. A Stockpicker Gets Ready for a Time to Buy 買いの好機に備える→ - 12 - 【インタビュー】 ストックピッカー、IVA のド・ヴォー氏の経済見通しと推奨銘柄
5. Up And Down Wall Street トランプ大統領の FRB 批判は裏目に出る可能性も→ - 14 - 【コラム】 2 年債と 10 年債のスプレッドはわずか 25bp に
6. Why Investors Shouldn’t Fall for Vladimir Putin ロシア株投資は慎重に→ - 16 - 【株式市場展望】 プーチン大統領に乗せられてはいけない
7. The Trader 好調な企業業績が引き続き相場を支える→ - 18 - 【米国株式市場】 マクロ懸念が広がらなければ、一時的な懸念による下落は買い場か
8. Alibaba, Tencent, and Sustainable Investing 新興国投資に ESG の視点を→ - 21 - 【ESG 投資】 新興国企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)に着目し、高いリターンを実現
9. Amazon, Netflix, and Tesla Face Tighter Capital Markets 金利上昇の影響→ - 23 - 【ハイテク】 資本市場の引き締まりに直面するアマゾン、ネットフリックス、テスラ
10. Preview 今週の予定→ - 25 - 【経済関連スケジュール】
1. Wall Street Rushes Into a New Asset Class 新資産クラス 【ダイレクトレンディング】
ダイレクトレンディングに資金が殺到
■ ダイレクトレンディングに資金が集まる 投資家は金融危機以降に、銀行にとっては規模が小 さ過ぎるかリスクが高過ぎる企業に対する融資から 利益を得ようとして、ダイレクトレンディングファ ンドに多額の資金を投入してきた。 ダイレクトレンディングは変動金利で、金利上昇が 予想されるたびに熱狂度が高まっている。データプロバイダーのプレキンによると、ダイレクトレンディン グファンドの過去1 年間のリターンは 20.3%で、過去 3 年と 5 年では平均年率約 13%となっている。 ダイレクトレンディングは貸し手と借り手の間で条件が交渉される。一般的には1000 万ドルから 2 億 5000 万ドルで銀行融資よりも規模が小さい。そして、利払い・税引き・償却前利益(EBITDA)が 5000 万ドル (あるいは1 億ドル)以下の企業に対する融資である。 個人投資家は、アレス・キャピタル(ARCC)、TPG スペシャルティ・レンディング(TSLX)、アポロ・イ ンベストメント(AINV)のような上場ビジネス・デベロップメント・カンパニー(BDC)の株式か、カー ライルグループとオッペンハイマーファンズの合弁会社が運用するOFI カーライル・プライベート・クレジ ット・ファンド(インターバル・ファンドと呼ばれる新しいタイプのクローズドエンドファンドで、上場し ていないが毎日1 株当たり純資産(NAV)で投資が可能な一方、売却は 3、6 カ月などの定期的に NAV で 買い戻しを請求できる)のようなクローズドエンドファンドへの投資で参加可能だ。 ダイレクトレンディングの拡大のきっかけは銀行に対する規制強化だが、現在は多額の資金がファンドに流 入している。けん引役は二つ。第一に、金利上昇の脅威のたびに、投資家は変動金利型商品を追いかけてき たこと。第二に、多くの投資家が金融危機の市場暴落で株式市場から離れ、退職を控えているベビーブーマ ーが資金を株式から債券へシフトしたことだ。債券市場が飽和状態に達した後、投資家はシンジケートロー ンに目を向け、さらにシンジケートではない融資に注目した。 ■ 内実は不透明 ダイレクトレンディングのリスクは、いかなる貸付業務にも常に存在するリスクと同じだ。企業の利払いが 困難になり、デフォルトを引き起こすと投資家の資金は戻らない。別の懸念は、損失吸収を可能にする利回 りの水準と保護を投資家が求めていないことだ。 融資が登録されておらず、内容も公表されていないため、非公開の融資市場の健全性評価は困難である。リ ターンを追跡する公開されたデータベースもインデックスも存在しない。引受の規律の低下の度合い、ある いは将来の損害を評価することは非常に困難になり得る。 情報不足を理由に、投資家はシンジケートローンに投資するか、あるいは非公開融資の代替として社債に投 資する。ダイレクトレンディングの市場は拡大しており、ムーディーズ・インベスターズ・サービスによる と、5 月の融資額は 1046 億ドルで、1 月に記録した過去最高の 914 億ドルを上回った。金融危機前の最高 は、2007 年 11 月の 818 億ドルだった。プレキンによると、「プライベートデット」に投資するための資金 は、2017 年には過去最高の 1070 億ドルが集まった。 ダイレクトレンディングは、資金が必要な企業に対する資金提供だが、貸し手はハイイールド債やローン市 場へ転売するのではなく、自身で保有し続ける。融資期間が満了となる3 年ないし 5 年後に、貸し手は資金 を回収できることを期待する。投資家がこの資産クラスを好む理由はたくさんある。ダイレクトレンディングは分散投資の手段を提供する。 貸し手は、多くの貸し手の一部であるよりも、相対交渉では条件をコントロールし易い。プライベートデッ トは、利払いによって投資家に還元するための資金を比較的早くかつ定期的に回収できる。 最も重要なこととして、プレキンとNXT キャピタルの調査によると、米国 10 年債利回りが 2.8%、ハイイ ールド債利回りが約 6%の時代に機関投資家は約 8%のリターンを期待している。実際ピッチブックのデー タによると、プライベートデット・ファンドの過去10 年間の内部収益率は 8.2%で、対してベンチャーキャ ピタルは8%、プライベート・エクイティは 9.6%となっている。 ■ リスク 融資は簡単な事業であるが、台無しになる可能性も大きい。そのため、マネジャーの経験と専門知識が必要 になる。大量の資金流入によってあらゆるレベルの人材が引き付けられているため、投資家は、自分の行動 を理解しているポートフォリオマネジャーを慎重に選ばなければならない。 経済が突然リセッション入りすれば、ダイレクトレンディングが良いアイデアに見えた理由が、逆に非常に 悪く見える可能性がある。例えば、2015 年と 2016 年に原油価格が暴落し、エネルギー関連企業の売上高が 急減した。その結果、BDC に影響が表れ、フィッチ・レーティングスはアポロやフィフス・ストリート・ ファイナンスのBDC の信用格付を引き下げた。状況が悪化すると突然、あるセクターへのエクスポージャ ーが大き過ぎる状態となり、レバレッジは高過ぎ、資金調達の選択肢も限られることになる。 ダイレクトレンディングが同様の運命をたどると言うつもりはないが、投資家が特定の資産クラスに熱狂し 過ぎると、問題が発生することになる。ダイレクトレンディングだけは違うと考えない方が安全だ。
リスクが比較的小さく、より分散している可能性はある。借り 手企業は特定の業界や地域に偏ってはいない。ムーディーズは、 ハイイールド債のデフォルト率が、5 月の 3.7%から 2019 年第 1 四半期に 2%へ低下すると予想しているように、企業のデフ ォルト率は低水準にとどまると予想されている。しかし、非常 に多くの金融機関が関与している点や非公開市場に透明性が欠 けている点を勘案すると、見通しの不透明感は増している。 投資家は、信用格付が付与されている融資市場の指標である財 務制約条項(コベナンツ)を注視している。財務制約条項が緩い(コベナントライト)がシンジケートロー ンに広がっており、S&P グローバルによると融資残高の 77.6%がコベナントライトとなっている。プライ ベートデット市場も、コベナントライトの方向に向かっている。 ゴールデンツリーのスティーブン・タナンバウム氏が4 月に指摘したように、シンジケートローンの想定は、 前回の危機におおむね基づいている。金融危機以降は、融資の回収率は60~70%だったが、最近の回収率は 50%台の公算が大きいと同氏は語る。 また、投資家は調整後利益をますます受け入れるようになっている。一部のレバレッジ比率は、借入残高と EBITDA の比率に基づいている。しかし、数値を良く見せる手段はあり、例えば、買収によるコスト削減は、 以前は買収完了日からプロフォーマEBITDA の 10%と想定されていたが、現在では 20%と想定されること もある。通常であれば負債/EBITDA 倍率が 6 倍のところ、このような調整で 4 倍と表示されることもある。 金利が依然として低いため、企業はこれらの比率でも何とかなっているものの、変動金利が上昇すれば問題 となる。 さらに、レバレッジを高められる余地がある。BDC のレバレッジは、以前は 1 倍に限定されていた。しか し、零細企業信用利用可能法が3 月に施行されて以来、BDC はレバレッジを 2 倍まで高められる。 プレーヤーが増加したことで、案件獲得に向けた競争は激化している。プレキンが2017 年 11 月に 94 のプ ライベートデット・マネジャーを調査したところ、1 年前と比較して競争が激化したと 70%が答えている。 約半分が、金利の設定が最大の課題だと答え、案件発掘がこれに続いた。4 分の 3 のマネジャーが、今年投 入する資金を昨年よりも増加させる予定だと回答した。 クレジットに特化したヘッジファンドであるロンドンベースのチェイン・キャピタル・マネジメントのスチ ュアート・フィエルツ氏は、「多くの新規参入者がいることで、与信サイクルのこの後期に資金を投入する圧 力が高過ぎる状態となっている。新規参入者が既存企業に先駆けて融資する手段は、金利を引き下げるより も、与信基準を引き下げることだ」と語る。
Ares Capital Corp. (ARCC) TPG Specialty Lending Inc. (TSLX) Apollo Investment Corp. (AINV)
チャートは3 年
By MARY CHILDS (Source: Dow Jones)
2. The 50 Best Annuities 年金保険ベスト 50
【年金保険】
金利上昇で魅力が増し、商品設計も多様化
■ 全てのタイプの商品で契約条件が改善 金利上昇によって、年金保険の魅力が以前よりも高まってい る。昨年、利回りの上昇率や支払い保証額の増加率は10%以 上に上り、低コストの商品も増えている。数年後に退職を控 える米国人は、米国株式市場の強気相場が10 年目に入る中、 運用資産を下落局面から守りたいと考えており、年金保険に 引き付けられている。 契約条件は全ての種類の商品で改善している。単純な定額年 金商品(貯蓄額が固定金利で一定期間にわたり増加する商品) でみると、AM ベストによる財務格付けが A マイナス以上の保険会社による 5 年保証利回りのうち、最高の 利回りは3.60%で、1 年前の 2.65%よりも約 1%ポイント高い。長期保証付き商品は、金利上昇による追い 風を受けるのがやや遅いが、トレンドは前向きだ。60 歳の男性が 20 万ドルを投資して、70 歳時点の年間支 払い保証額を固定する場合、1 年前時点で最も魅力的な商品の支払額は年 2 万 1015 ドルだったが、現在は 9% 増の2 万 2888 ドルである。 年金業界は長年の低迷に苦しんできた。昨年の販売額は3 年連続減少の 1922 億ドルとなり、2008 年のピー クを27%下回った。不調の原因は低金利と規制圧力だ。低金利によって、保険会社は支払い保証が困難にな り、加入者への保証額が減少した。さらに、今年施行される予定だった労働省の受託者責任規則を遵守する ため、商品ラインやシステムの見直しに1 年以上を費やした。同規則は、販売手数料重視の不透明な販売慣 行から消費者を守るためのものだったが、トランプ大統領によって白紙に戻された。 ■ コミッションベースからフィーベースへ 上記は投資家にとってマイナスだが、良いニュースもある。業界は既に方向転換を果たしたのだ。商品ライ ンの見直しによって、保険契約の透明性と柔軟性が増した。例えばTIAA は、契約から 2 年間に限り、違約 金なしでインカム契約を破棄するオプションを新たに導入した。また、一部の保険会社は変額年金ポートフ ォリオの投資比率の制約を緩和した。従来の制約は2008 年の金融危機後に一般化したもので、投資家はマ ネージド・ボラティリティ・ファンドを選択するか、株式への配分を60%以下に抑えなければならない。だ が最近、リンカーン・ナショナルは株式エクスポージャーを無制限とした商品を発売し、オハイオ・ナショ ナルはある商品の株式への最大配分比率を80%に引き上げた。 さらに、ほぼ全ての保険会社は、運用資産額に応じてアドバイザーに手数料が支払われるタイプ(フィーベ ース)の年金保険を過去1 年以内に発売している。フィーベースの商品は通常、販売額に応じて手数料が支 払われるタイプ(コミッションベース)の商品に比べ、1%ポイント以上安い。フィーベースの商品は、昨 年の年金保険の販売額の 5%未満にすぎないが、唯一成長した販売チャネルだった。フィーベースの商品の みを扱うファイナンシャルアドバイザーが、顧客の高齢化に伴って年金への取り組みを本格化しているため、 保険会社は大きな成長余地があると見ている。 PNC インベストメンツのロブ・サンティロ氏は、「年金保険の価値提案は完全に変化している。かつてはあ らゆる顧客に一つの商品で対応しようとしており、コストがメリットを上回っていた。現在のオプションは 以前よりも合理化されている」と述べる。 本誌は年齢や投資額などの前提を踏まえ、多様な年金保険から最も魅力的な商品を選別した。年金契約は数 十年継続する可能性があるため、AM ベストの財務格付けが A マイナス以上の保険会社のみを対象とした。前提が変化した場合は異なる結果となる可能性があること、一部商品の見積もりは毎月更新されることにご 留意いただきたい。 ■ 仕組み年金 今年最大の注目商品は、爆発的に成長している「仕組み年金」である。2010 年に AXA エクイタブルが初め て導入した商品で、近年多くの保険会社が参入している。グロース投資を行いつつ、株式相場の下落リスク も回避したい投資家にとって画期的な商品だ。昨年の販売額は20%以上増加した。 仕組み年金は株価指数のリターンに連動し、一定の損失を吸収する。例えば10%の損失が吸収される場合、 市場が15%下落したときに投資家が負担する損失は 5%になる。その代わり、リターンがプラスの場合に上 限が課される。現在、S&P500 指数連動商品のリターンの上限は 10~14%で、インデックス連動型年金の 4% に比べて大幅に高い。インデックス連動型年金の販売額は近年急増していたが、2017 年に 5%減少した。 仕組み年金にはバッファー型とフロア型の2 種類がある。バッファー型は、10%または 20%まで損失を吸 収し、残った損失を投資家に負担させる。フロア型はその逆で、例えば10%まで投資家に損失を負担させ、 残った損失を吸収する。10%以下の小規模な下落局面ではバッファー型が有利だが、2008 年の金融危機の ような大規模な下落局面ではフロア型の方が望ましい。 保険会社の手数料もリターンの上限に影響する。この傾向はコミッションベースのバッファー型商品で特に 顕著だ。保険会社がファイナンシャルアドバイザーに販売手数料を支払う場合、投資家に手数料を別途課す ケースと、リターンの一部を控除するケースがある。リターンの下限が10%の S&P500 指数連動商品で比 較してみよう。アリアンツ生命の最大リターンは 14%と非常に魅力的だ。しかし、同社は 1.25%の手数料 を別途課している。ブライトハウス・ファイナンシャルの商品の最大リターンは12.5%だが、手数料は織り 込み済みだ。 ■ 年金保険のトレードオフ 理解しやすい商品の増加にもかかわらず、将来の年金受取額を保証するインカム特約付き変額年金は、依然 として非常に複雑である。商品ごとに構造や手当が異なり、理解や比較が困難だ。保険会社は超低コストで 単純な変額年金商品を販売しているが、複雑かつ高額なインカム特約付きの商品が現在も最大のシェアを占 める。こうした商品は、注意深く選別すれば投資家の利益になる。契約期間の早期に運用が成功すれば、保 証額は増加する可能性がある。また、特約があれば、退職後の懸念事項のほぼ全てに対応できる。 アメリカンカレッジ・オブ・ファイナンシャルサービスのウエード・フォー教授によれば、固定金利の単純 な年金保険に投資した方が、同等の安全性がある米国債よりも税引き後のリターンが大きい。たとえ金利が 上昇局面にあり、1 年物米国債を毎年借り換えたとしても結論は変わらない。年金保険のリターンの方が大 きくなる一因は、米国債よりも高利回りであることだ。保険会社は投資家の資産を集約し、米国債よりも利 回りの高い社債に投資することができる。 しかし、年金保険には流動性という弱点がある。多くの定額年金商品では、固定金利に対応する期間中、契 約者の所有資産の10%を超える資産を引き出すことができない。期間の途中で資産を引き出す場合、違約金 を課されるため、米国債を上回るリターンは得られないかもしれない。受取額が生涯保証される年金保険の 場合、流動性や柔軟性といったトレードオフは重要な要素となり得る。デメリットに対するメリットの価値 は寿命に左右されるが、ほとんどの人にとって寿命は予測不可能だ。 DHR インベストメント・カウンセルのデービス・リーマー氏は、年金保険の購入をめぐる決断について、 最終的には安心感の問題だと述べる。同氏は「平均寿命が延び、資金不足に陥るリスクが高まる中、年金保 険は安心を提供してくれる。そのような商品は他に存在しない」と語る。
By KAREN HUBE (Source: Dow Jones)
3. BlackRock, T. Rowe Price and Other Money Managers Look Like Bargains 割安【推奨銘柄】
株価下落で資産運用会社のバリュエーションと配当利回りが魅力的に
■ 資産運用会社が割安 資産運用会社にとって、9 年も続く上昇相場は最高のプレゼントのはずだが、 資産運用会社の株価は精彩を欠いている。原因は、パッシブ運用の拡大、手数 料への圧力、投資ファンドへの資金流入の減少、上昇相場の終了懸念にあると みられる。株価の下落に伴ってバリュエーションが低下し、配当利回りは魅力 的な水準となっている。 業界をけん引するブラックロック(BLK)と T.ロウ・プライス・グループ (TROW)の2018年予想株価収益率(PER)は10倍台半ば、インベスコ(IVZ)、 フランクリン・リソーシズ(BEN)、レッグ・メイソン(LM)は 10 倍前後と なっている。S&P500 指数は 17.5 倍だ。クレディ・スイスのアナリスト、ク レイグ・シーゲンターラー氏は、資産運用業界は1990 年代以降で最も割安な 水準にあると指摘する。 インベスコとレッグ・メイソンの配当利回りは 4%を上回り、減配の可能性は低い。アライアンスバーンス タイン・ホールディングス(AB)は、リミテッド・パートナーシップという形態の特徴として利益のほぼ全 てを株主に配分するため、配当利回りは8.6%に上る。 ブラックロックの第 2 四半期決算では、業界全体が直面する課題が示された。資金流入は前年同期の 1040 億ドルから200 億ドルに減少した。とはいえ、今年後半には資金流入も回復するとシーゲンターラー氏は見 ている。一部の機関投資家は資産運用業界への投資に慎重になっているが、バリュエーションには懸念を上 回る魅力があるように見える。 ■ 買い推奨6 社 ブラックロック:運用資産6 兆ドル超、上場投資信託(ETF)最大手の i シェアーズブランド、成長するオ ルタナティブ資産部門、収益性の高い機関投資家向けリスク管理プラットフォームなど、業界の最有力企業 といえる。i シェアーズの運用資産は 1 兆 8000 億ドルと、業界第 2 位のバンガードの 2 倍近く、ETF 業界 全体の運用資産の約40%を占める。2018 年予想 PER は 18 倍、先週発表された 9%の増配で配当利回りは 2.5%となる。 シーゲンターラー氏は、自社株買いに加え、平均を上回る運用資産の増加がブラックロックの株価を押し上 げると見ており、2020 年予想 PER20 倍に基づき目標株価を 700 ドルとする(金曜終値は 502.78 ドル)。 T.ロウ・プライス:アクティブ運用による力強い運用パフォーマンスでパッシブ運用のトレンドに抵抗し得 る力がある。確定拠出年金(401k)の投資先として人気のあるターゲットデート・ファンドに強く、これら のファンドが運用資産(1 兆ドル)の約 4 分の 1 を占め、バンガードを上回るパフォーマンスを継続的に上 げている。シーゲンターラー氏は、運用資産の増加と費用の伸びの鈍化を好材料に挙げる。足元の株価約 120 ドルは 2018 年予想 PER17 倍、配当利回り 2.3%の水準にある。同社は負債がなく、1 株当たり約 17 ドルの現金を 保有する。同氏の目標株価は154 ドル。 インベスコ:ETF では運用資産 2110 億ドルで業界第 4 位(全社の運用資産は 9630 億ドル)。キャッシュフ ロー、純資産、売上高といった指標に基づいてポートフォリオを構築するファクター(スマートベータ)運 用ではi シェアーズに肉薄する。ロボアドバイザープラットフォームのジェムステップの開発を進めており、 今年中に収入を生み始める見通しである。 株価は利益率の低下と資金流出予想が嫌気されて年初来で30%下落している。足元の株価は約 26 ドル、2018 年予想PER は 9 倍と低く、配当利回りは 4.7%。シーゲンターラー氏の目標株価は 39 ドルである。 レッグ・メイソン:債券運用に特化したウエスタン・アセット・マネジメントやミューチュアルファンドを 運用するクリアブリッジ・インベストメンツなど、独立系の運用マネジャーを通じて7450 億ドルの資産を 運用する。株価は年初来で20%下落して 33 ドル、2018 年予想 PER9 倍の水準である。配当利回りは 4.1%。 利上げがウエスタン・アセットに及ぼす影響が懸念された。 自社株買いに積極的で、2010 年以降で株式数は半分近くに減少している。昨年 12 月に 2 億 2500 万ドルで 大株主から自社株を買い取ったため、今は自社株買いを中断しているが、第4 四半期に再開されれば株価上 昇のカタリストとなり得る。 アライアンスバーンスタイン:欧州の保険会社であるアクサが64%を保有する。パートナーシップ構造を取 っているために税率が低い。債券を中心に運用資産は5400 億ドル。富裕層の個人投資家向けブローカー部 門と機関投資家向け調査部門を持つ。本社移転などでコスト削減を進めている他、昨年は経営陣刷新の一環 で新たな最高経営責任者(CEO)を迎えた。足元の株価約 30 ドルは 2018 年予想 PER 約 12 倍。 フランクリン・リソーシズ:投資家の資金引き揚げが止まらず、バリュートラップに陥っている。株価は約 32 ドルで、2018 年 9 月期予想 PER11 倍、配当利回りは 2.9%。しかし、今年 4 月に特別配当で 17 億ドル を支払った後もネットキャッシュと有価証券で合計87 億ドル近くあると推定され、実質的な PER はもっと 低い。創業家が株式の約40%を保有しているため、アクティビストのターゲットになりにくい。
BlackRock Inc. (BLK) T. Rowe Price Group Inc. (TROW) INVESCO Ltd. (IVZ)
Franklin Resources Inc. (BEN) Legg Mason Inc. (LM) AllianceBernstein Holding L.P. (AB)
チャートは3 年
By ANDREW BARY (Source: Dow Jones)
4. A Stockpicker Gets Ready for a Time to Buy 買いの好機に備える
【インタビュー】
ストックピッカー、IVA のド・ヴォー氏の経済見通しと推奨銘柄
■ 上位保有銘柄バークシャー・ハサウェイの自社株買い 創業者のチャールズ・ド・ラルドメル氏と最高投資責任者(CIO) を務めるチャールズ・ド・ヴォー氏が率いるインターナショナル・ バリュー・アドバイザーズ(IVA)は、典型的なストックピッカ ーという評判を築いてきた。彼らの投資はテーマに縛られていな い。 同社の旗艦ファンド、IVA ワールドワイド(IVWAX)は普通株、 社債、金地金、大量のキャッシュを保有している。何でもありの投資マンデートにもかかわらず、ド・ヴォ ー氏とド・ラルドメル氏は最近、魅力的な投資を見つけるのに苦戦してきた。IVA は本源的価値よりも大幅 に割安なものにしか投資しない。また同社の 2 本のファンドは新規の投資家を受け付けていない。IVWAX ではキャッシュが保有資産の38%を占めるため、パフォーマンスは MSCI ACWI インデックスをアンダー パフォームしているが、モーニングスターのワールド・アロケーション・カテゴリーにおいては他のファン ドをアウトパフォームしている。 ド・ヴォー氏が見込んでいるマクロ経済環境を踏まえると、これから買いの好機が増えていくかもしれない。 同氏は本誌とのインタビューで幾つかの推奨銘柄を教えてくれた。本誌:IVA の上位保有銘柄の一つ、バークシャー・ハサウェイ(BRK.A)はこの 10 年間、S&P500 指数を アンダーパフォームしてきたが、自社株買い条件を緩和した今、急騰している。そうした措置は得策なのか? ド・ヴォー氏:現在の株価と推定本源的価値を踏まえると、バークシャーの手元資金は総本源的価値の20% に相当する。足元の株価は20%割安だとわれわれは見ており、同社は手元資金の一部を使って自社株買いを 行う可能性がある。そうすれば1 株当たり本源的価値は増大するだろう。現金はほとんどリターンを生み出 さないという悪材料が減ることで、同社の本源的価値の成長は加速する可能性がある。まさに一石二鳥とい うわけだ。 Q:それは良さそうだ。他の予想についても聞かせてほしい。 A:興味深い現象が二つある。一つ目は労働市場がかなり逼迫(ひっぱく)しているにもかかわらず、これ までのところ賃金上昇圧力がほとんどないということだ。しかし、その状況も変わると思う。二つ目はフェ デラルファンド(FF)金利の誘導目標が引き上げられてきたにもかかわらず、金融環境は相変わらず緩和的 だ。シカゴ連銀が公表している全米金融環境指数(NFCI)は、かなり緩和的な水準であるマイナスの値を 示している。株価が上昇し続けているのも当然と言えるが、この状況も変わろうとしている。 Q:ドルについてはどう見ているか? A:年初から今日までのように「下げては戻す」を繰り返すようなら、新興国市場や米国の多国籍企業にと ってかなり悪影響を及ぼすだろう。米国で収益を上げている欧州企業にとっては追い風になるだろう。米ド ル建ての投資家であれば、対ユーロで完全にヘッジしておきたいところだ。ドルの価値はさらに高まりそう だが、それを予測するのは難しい。 Q:IVWAX がアンダーパフォームしているのはキャッシュの保有高が 40%近くに達しているからでは? A:率直に言って、われわれの銘柄選択は他のバリューファンドの大半よりも優れている。昨年、IVWAX は 13.5%、MSCI ACWI インデックスは 23%の上昇を示した。ところがわれわれが保有している株式は 28% も上昇した。それほど多くはないが、さまざまなタイミングで解約する顧客もいた。著名投資家ウォーレン・ バフェット氏は「必要のないものを手に入れるために、自分が保有していて必要なものをリスクにさらすの はどうかしている」と述べている。既に裕福であれば、必要なのは裕福であり続けることだけで、貧乏であ
れば損失を出すわけにはいかないということを顧客は理解している。法人顧客のほとんどはわれわれをオル タナティブ投資のカテゴリーに入れ、強気相場ではアンダーパフォームするものと見込んでいる。われわれ がリスク資産のカテゴリーに入ることもあるだろう。2010 年のようにほぼ全額を投資したこともあった。現 在は金利が非常に低いことを背景に株式のバリュエーションがかなり高まっている。そのおかげでリスク/ リターン比率はわれわれにとって有利になってきている。 Q:自分のファンドのパフォーマンスに満足しているということか? A:振り返って考えると、保険仲介大手のエーオン(AON)やマーシュ・アンド・マクレナン(MMC)な ど、多くの銘柄でより大きなポジションを取っておくべきだった。実質的価値が時間の経過と共に大きくな る銘柄を保有し続けることに関してわれわれはおおむね成功してきたが、一部のポジションについてはより 長く保有しておくべきだったかもしれない。 ■ 金地金を大量に保有する理由 Q:IVWAX では金を 5%も保有している。暗号通貨にも逃避できる時代になぜ金なのか? A:金は株式や債券と負の相関関係があるので興味深い。明らかな例を示そう。2011 年の 5 月から 10 月ま での期間に世界の株式市場は24%急落した。その間、金の価格は 1 トロイオンス=1400 ドルから 1900 ドル 近くにまで上昇した。現在の価格は1222 ドルである。農地や事業と違って金は利子もキャッシュフローも 生み出さないと批判されがちだが、銀行に預けておくのに0.75%の手数料がかかるスイス・フランやスウェ ーデン・クローナを保有するよりも、何も生み出さない金を保有することを選好する。将来的に株式や債券 が非常に割安になれば、金を保有する必要はなくなるだろう。 Q:だから金地金を保有するのか? A:そうだ。鉱山会社の多くでは、経営しているのは無能な人々で、政治的リスクもある。わざわざ金鉱株 に投資するには、今よりも20~30%割安でなければならない。 ■ シマレックス・エナジーとAIB グループ Q:最近は投資すべき銘柄の発見が増えているようだ。 A:IVWAX は昨年、総資産の 50.3%を株式に投資していた。今ではその割合が 55%になっている。拡大は 始まったばかりだ。特に選好しているのは石油・天然ガス開発生産のシマレックス・エナジー(XEC)であ る。シマレックスの時価総額は90 億ドル、売上高の 55%はパーミアン盆地、残りは北米内陸部(ミッドコ ンチネント)で上げている。バランスシートは株式や債券を発行し続けている大半の探鉱・生産(E&P)会 社よりも健全だ。レースで1 番になるにはまず完走しなければならない。シマレックスには素晴らしい資本 配分、優秀な地質学者、数十年分に及ぶ在庫などがある。原油と天然ガスの現在の価格――1 バレル=69 ド ルと1000 立方フィート(mcf)=2.77 ドル――が維持されれば、同社は向こう数年間の生産量を年率 10% 以上のペースで増やしていけるはずだ。天然ガスの見通しがそこまで芳しくなく、シェールオイルの在庫が 輸送用パイプラインの不足でかなりだぶついていることもあり、同社の株価は落ち込んできた。しかし、14 ~20 カ月以内に十分なパイプラインが建設されれば、輸送のボトルネックは解消されるだろう。現在の株価 は96 ドルだが 125~130 ドルの価値があり、それも生産量の増加に伴ってさらに上昇するだろう。 Q:最後にアライド・アイリッシュ銀行(AIB)グループ(AIBG.アイルランド)を選好している理由を聞 かせてほしい。 A:AIB は金融危機後に国有化された が、アイルランド政府が保有する株式 の30%近くの売却を決めた 2017 年に 民営化された。金融危機以来、同国の 金融システムは基本的に寡占的だ。わ れわれがAIB に注目するのは、アイル ランド銀行の価値の 35%が英国の企
業と結び付いているのに対し、AIB が純粋にアイルランドの銀行だからだ。AIB の企業向け融資市場のシェ アは36%である。銀行業務は非常に単純明快だ。昨年に株式を売却した時、政府は国内の投資家に購入して ほしいと考え、1 株当たり価格を 1 株当たり有形純資産額である 4.40 ユーロに設定した。現在の株価は 4.80 ユーロで有形純資産額をわずかに上回っている。同行の価値は調整済み有形純資産額の1.5 倍になる可能性 がある。つまり、1 株の価値は 6 ユーロになるが、今後さらに上昇するはずだ。
IVA Worldwide Fund;A (IVWAX) Berkshire Hathaway Inc. Cl A (BRK.A)
Aon PLC (AON)
Marsh & McLennan Cos. (MMC) Cimarex Energy Co. (XEC) AIB Group PLC (UK:AIBG)
チャートは3 年(UK:AIBG は 1 年)
By LESLIE P. NORTON (Source: Dow Jones)
5. Up And Down Wall Street トランプ大統領の FRB 批判は裏目に出る可能性も 【コラム】
2 年債と 10 年債のスプレッドはわずか 25bp に
■ トランプ大統領は利上げに批判的 先週の政治的ニュースはヘルシンキでのトランプ大統 領発言に対する集中砲火に終始したが、金融市場にと っては、大統領が米連邦準備制度理事会(FRB)や各 国中央銀行と戦う新たな戦線を敷いたことの方が重大 だ。木曜日に放送された CNBC のインタビューで、 大統領は FRB の利上げに対して「ワクワクしない」 と発言した。金曜日にはツイッター上で「中国、欧州 連合(EU)なども通貨安に向けた操作を行っている。 一方米国は利上げを行っており、ドル高が日々進行し、 米国の競争優位性を奪っている」と述べた。また、中 央銀行の独立性を尊重する政権の方針に対しても攻撃が向けられた。大統領は、FRB が自分の思い通りに行 動していない時に批判するという点で首尾一貫している。 2016 年の大統領選挙運動中は、トランプ大統領は「低金利支持者」と自称していた。不動産事業のために多 額の負債を抱えた「借金王」でもあり、「私ほど負債について知っている人間はいない」と豪語し、「私は負 債で財産を築いた。事態が悪くなれば、負債について交渉する」と発言していた。しかし、発言に首尾一貫 性があるわけでなく、2016 年後半には当時のイエレン FRB 議長を、「低金利維持を恥じるべきだ。きちんと貯蓄した人間が利息を得られない」と責めたこともあった。2 年後には口調が変化し、CNBC の報道によ ると、トランプ大統領はFRB が今年さらに 2 度も利上げする予定であることを心配していると発言した。 ブルームバーグによると、今年0.25%の利上げが既に 2 回実施されたが、9 月の同水準の利上げの確率は 90%、 12 月の確率は 62%だ。 中央銀行の独立性の尊重の姿勢は比較的最近に確立されたもので、クリントン政権当時のルービン財務長官 がFRB の領域に対する不可侵の方針を確立し、続く 2 政権も追随した。しかし、これはむしろ歴史上例外 で、堅実な経済と低金利政策の綱引きは米国史の中で常に存在した。古くは、1896 年に平均的労働者を犠牲 にして金本位制を擁護しているという趣旨のウィリアム・ジェニングス・ブライアン氏の「黄金の十字架」 スピーチがある。ジョンソン大統領もニクソン大統領もFRB に影響力を行使しようとした。 ホライズン・インベストメンツのチーフストラテジストのグレッグ・バリエール氏は、FRB 批判が裏目に出 る可能性があると考える。「パウエルFRB 議長は、賢明な専門家で、政治的圧力に抵抗力があるが、市場の 見方も考慮しているに違いない」とバリエール氏は顧客へのレターで述べている。今年さらに 2 回、2019 年に3 回の利上げを実行すると、パウエル議長はトランプ大統領だけでなく多くの批判にさらされるだろう し、利上げのペースを緩めれば、政治の圧力に屈したと疑われるだろう。 中国との戦いはもっと大きな問題かもしれない。中国からの輸入品への追加的関税についてのトランプ大統 領の発言に反応して、中国の人民元は大幅に下落し、貿易摩擦における武器として為替レートが利用されて いるとの懸念につながっている。しかし、人民元安は、第1 四半期のアウトパフォームを受けたもので、そ もそもドル高に対して起きているとの声もある。中国当局は通貨の安定化のため口先介入を行ったもようだ。 もっと大きな疑問は、米国経済が好調で、株式市場が過去最高値近辺にある時にトランプ大統領が利上げや ドル高に反対するなら、事態が悪化したらどうなるのかということだ。 ■ イールドカーブは黄信号 トランプ大統領が先週イールドカーブについて言及する以前から、イールドカーブが景気後退を示唆してい るか否かが激しい議論の的になっていた。通常ならイールドカーブに関心を持つのは債券トレーダーくらい だが、とりわけ多くの注目を集めているのが、2 年物国債と 10 年物国債の利回りの差(スプレッド)だ。2 年債の利回りは将来の短期金利の変化に対する予想を反映しており、10 年債は長期債のベンチマークとなっ ている。2 年債と 10 年債のスプレッドは着々と縮小し続けてきたが、先週はわずか 25 ベーシスポイント(bp) になった。これは2007 年 7 月以降で最もフラット化したイールドカーブとなる。ちなみにグレートリセッ ションは同年12 月に始まった。 イールドカーブのフラット化は気圧計の低下に似ており、経済の嵐が醸成されつつあることを示唆する。と いうのも、イールドカーブのフラット化は中央銀行の利上げによる短期債利回りの上昇が原因であることが ほとんどだからだ。現在の短期債利回りは、2015 年 12 月に始まった 0.25%ポイントずつ 7 回の利上げを受 けたもので、最近では 6 月に実施され、フェデラルファンド(FF)金利は 1.75~2.00%の範囲になった。 次の0.25%ポイントの利上げで、2 年債と 10 年債のスプレッドはゼロになる公算が大きく、景気後退が示 唆される。 しかし、他のスプレッドを見るとさほど深刻ではないようだ。本誌への寄稿者の一人によると、3 カ月債と 10 年債の比較では景気後退の確率はかなり低いという。元 FRB 理事でコロンビア大学教授のフレデリッ ク・ミシュキン氏らによると、今後1 年以内に景気後退に陥る確率は 10%程度である。 イールドカーブは海外の中央銀行の行動によっても影響を受ける。金融危機を受けた世界的な超低金利がイ ールドカーブを押し下げている。JP モルガンの推定によると、7 月 11 日時点で利回りがマイナスになって いる国債が世界中で9 兆 2000 億ドル相当あるという。バンクオブアメリカ・メリルリンチのエコノミスト
は、欧州の利回りの低さが米国債の利回りを押し下げていると述べている。 利回りと別の先行指標を組み合わせることで、強力な予測が可能になることもある。MKM パートナーズの チーフエコノミストで市場ストラテジストのマイケル・ダーダ氏によると、1 年債と 10 年債のスプレッドが マイナスで実質成長率がマイナスになった場合は 3~8 四半期以内に景気後退に陥るというが、現在のとこ ろいずれもマイナスではない。 ノーザン・トラストの元チーフエコノミストで現在はレガシー・プライベート・トラストの上級経済投資顧 問のポール・L・カスリール氏のモデルは、1 年債と 10 年債のスプレッドをマネタリーベースと貸し付けの 伸びと組み合わせている。一般にFRB がマネタリーベースの伸びを抑制し、FF 金利が上昇すると、銀行の 貸し出しも鈍化し、最終的に消費も鈍化する。1 年債と 10 年債のスプレッドは 2014 年以降縮小を続けて先 週は43bp で、マネタリーベースや銀行の貸し出しの伸びも歩調を合わせるように鈍化してきている。9 月 にFRB は再度 0.25%ポイントの利上げを行う公算が大きいが、12 月にも利上げを実施した場合、2019 年 の景気後退を覚悟する必要があると、カスリール氏は述べる。第 2 四半期の国内総生産(GDP)成長率は 4.5%と堅調が予想されているが、同氏は、「聖書に、高ぶりは滅びに先立つとあるように、一致指数は景気 後退前に上昇する」と言う。 現時点では警告の黄信号は点滅し始めたばかりだ。ドル高再燃ならびに金および銅などの産業用コモディテ ィーの価格下落は流動性の伸びの鈍化を示唆している。経済は好調で、株価が最高値近辺で推移している間 は、金融引き締めは逆風ではあるが強風とまではいかない。 By RANDALL W. FORSYTH (Source: Dow Jones)
6. Why Investors Shouldn’t Fall for Vladimir Putin ロシア株投資は慎重に【株式市場展望】
プーチン大統領に乗せられてはいけない
■ 悪化するロシア経済 7 月 15 日にヘルシンキ入りしたトランプ大統領が示した 恭順は、プーチン大統領が成し遂げた地政学的大成功の一 つである。トランプ大統領が気まぐれな目的で世界を怒ら せる一方で、プーチン大統領は意見の相違の中に一致する 見解を見いだす。まさに政治的手腕だ。 確かにプーチン大統領は外交感覚に優れているし、また米 国の政治心理におけるロシアへの偏見も否定はできない。 しかし、これらの特性もロシア経済の悪化を覆い隠せるわ けではない。ストックホルムを本拠とするイースト・キャピタルの東欧担当責任者、ヤコブ・グラーペンギ ーサー氏によると、ロシアの経済成長率はうまくいっても年1.5~2%だという。それに対し、世界の成長率 は平均3~4%、ロシアとともに新興 5 カ国(BRICS)に含まれるインドや中国は 6%を上回る。 ロシア企業は競争力を失いつつあり、世界の新興国市場指数に占めるロシアの割合は、2007 年以降、10% から 3%に低下している。一般的に、投資家は成長を見込んで新興国市場に投資するため、ロシア株の後退 は続くと予想される。 世界の新興国市場の今後12 カ月の予想利益に基づく株価収益率(PER)が平均で 11 倍であるのに対し、ロ シア株は平均で7 倍程度と割安であり、ロシアの株価指数は、ロスネフチ(ROSN、英国)やガスプロム(OGZD、 英国)といった国営の巨大エネルギー企業(PER はそれぞれ 5.1 倍と 2.7 倍)に引きずられて低下している。米国による経済制裁の強化が脅威となっていることは言うまでもない。人気があった最大手銀行で国営のズ ベルバンク(SBER、英国)の株価も、米国が 4 月初めに追加制裁を発表して以来、対象ではないのに 30% 近く下落している。 ■ 投資対象は民間セクター それでも、ロシア株を完全に回避するべきではない。石油市場や制裁による混乱にもかかわらず、ロシアは 実質的にプラスの経常収支と健全な財政を保っており、原油価格が1 バレル=45 ドルを超えた場合の臨時収 入を準備金として蓄えている。ルーブルの為替レートは、4 月の一時的な制裁ショック以降は堅調に推移し ている。新興国市場は今年10%値下がりしているが、この堅調な財政基盤とエネルギー価格の追い風により、 上場投資信託(ETF)のバンエック・ベクターズ・ロシア(RSX)の値下がりは 3%にとどまった。約 3% の実質金利(インフレ率とベンチマーク国債利回りの差)は、安定を求める債券投資家を引き付けるかもし れない。オッペンハイマーファンズの新興国市場株式ディレクター、ジャスティン・レベレンツ氏は、「トル コ、ブラジル、南アフリカの状況を考えると、ロシアはかなり良い方だと思う」と話す。 「ロシアには、5 社程度と少数ながらも、長期的勝者としての全ての特性を備えた質の高い企業がある」と 同氏は言う。それらの少数精鋭の中で同氏が選好するのは、北極圏に大規模な液化天然ガス生産施設を有す るロシア第2 位の天然ガス生産会社のノバテク(NVTK、英国)だ。同社は運用資産 390 億ドルのオッペン ハイマー・デベロッピング・マーケッツ・ファンド(ODMAX)の保有銘柄中、第 4 位である。 一方、グラーペンギーサー氏は小型株セクターを詳しく分析し、子供用品小売りチェーンのジェーツキー・ ミール(DSKY、ロシア)を選好する。同社の利払い・税引き・償却前利益(EBITDA)は、今年の上半期 に38%増加している。同氏はまた、ロシアに残された最後の独立系大手石油会社といえるルクオイル(LKOD、 英国)も選好している。最近、同社の経営陣は、投資を回収し、フリーキャッシュフローの半分を自社株買 いに充てることを約束しているが、グラーペンギーサー氏は、これによって配当利回りは事実上 9%超に上 昇すると見ている。 ■ ロシア経済の先行きに待ち受けるリスク 民間企業に注目することは、選挙への介入や毒殺に関与する国に西側の資本を投入することに対する投資家 の道徳的ジレンマをうまく解決することにも役立つ。グラーペンギーサー氏は、「ロシアの国にではなく、企 業に投資しているというのが私の主張だ。われわれのお金はプーチンのポケットには入らない」と述べる。 レベレンツ氏は、特にサウジアラビアなど、一部の発展途上国への投資を「極めて不愉快」に感じるが、ロ シア、中国、トルコのような他の非民主主義国に関しては、「ある程度の文化相対主義が必要条件となる」と いう。同氏は、「ロシア国民が基本的にプーチン大統領を支持しているのは、今は過去200 年間よりも、ま しな暮らしをしているからだ」と話す。 それは、妥当な理由といえる。しかし、スターリンが大粛清を行った1937 年と比べてましな程度の生活条 件や、東アジアの4 分の 1 にとどまる経済成長率では、多くの投資家をそう長くは魅了できない上、それら は、プーチン大統領が自国の国民や世界全体に売り込んでいる国家復活のためのレシピにもならない。経済 的な現実は、いずれ政治的エンターテイナーの能力に追いついてくる。その時、ロシアは投資家にとって本 当の意味で危険な存在になる可能性がある。
VanEck Vectors Russia ETF (RSX) Novatek GDR (UK:NVTK) Oppenheimer Developing Markets Fund;A (ODMAX)
Lukoil PJSC ADR (UK:LKOD)
チャートは3 年
By CRAIG MELLOW (Source: Dow Jones)
7. The Trader 好調な企業業績が引き続き相場を支える
【米国株式市場】
マクロ懸念が広がらなければ、一時的な懸念による下落は買い場か
■ マクロ懸念をかき消した企業業績 世界全体に広がる懸念に対抗する地域独自のファンダメンタ ルズ。先週の株式市場の動きはヘビー級の格闘技のように大 きな材料が組み合ったものとなったが、結果は引き分けだっ た。ただ、ウォール街から聞こえてくる歓声から判断すれば、 ファンダメンタルズ要因がノックアウト勝ちしたような勢い だった。 ただし、実際の株価指数に大きな動きは見られなかった。ダ ウ工業株30 種平均(NY ダウ)は 0.2%上昇して 2 万 5058 ドル12 セントとなったが、ナスダック総合指数は 0.1%下落して 7820.20 で引けた。S&P500 指数はわずか 0.52(0.02%)の上昇で 2801.83 となった。小型株のラッセル 2000 指数は 0.6%高の 1696.81 で週末を迎え た。 先週は株式市場が下落するような大きな材料が幾つかあった。トランプ大統領はテレビのインタビューで連 邦準備制度理事会(FRB)の利上げについて「好ましくない」と述べ、これはしばらく耳にしていなかった FRB に対する干渉と考えられる発言だった。日常のこととなった貿易摩擦に関する懸念では、中国による不 公正な貿易慣行に対する対抗措置を検討するとの発言があった。一方、中国元がドルに対して急落し、世界 の株式市場を動揺させた2015 年 8 月の下落をわずかながら思い起こさせた。 しかし、こうした懸念は企業からの力強い業績発表によって打ち消された。確かに映像配信のネットフリッ クス(NFLX)からは新規加入者数を懸念させる数字が発表されたが、マイクロソフト(MSFT)、産業機器 のハネウェル・インターナショナル(HON)、IBM(IBM)および製薬・医療機器大手ジョンソン・エンド・ ジョンソン(J&J、ティッカーは JNJ)など、その他の業績発表の影響力の方が上回った。 ■ 想定外のことがなければ上昇基調か 実際、これまでS&P500 指数採用企業の中で 75 社が業績発表を終えたが、71 社が市場の予想を上回った。発表後の株価の上昇率の平均は 0.9%となっており、 好決算の発表が売り場だと考えられた前四半期の市場 の反応とは異なっている。ウェルズ・ファーゴ・セキ ュリティーズの株式戦略部門の責任者を務めるクリス トファー・ハービー氏は、こうした業績発表を受けて 投資家はファンダメンタルズに注目するようになって おり、それが世界全体に関わる懸念材料を相殺してい ると指摘する。同氏は「業績発表シーズンにマクロ要 因を消化するのは難しく、市場はスイートスポットに 入った状態のようだ」と述べる。 そうしたスイートスポットのおかげで S&P500 指数 は2800 を少し上回った水準まで上昇した。同指数は 調整後になかなか2800 を超えられなかったが、よう やく超えようとしているようだ。この点を踏まえてウ ィリアム・オニールのチーフ・インベストメント・ス トラテジストであるランディ・ワッツ氏は、株式市場 に対する見方を上方修正した。同氏は「市場に対して より明るい見通しを持っており、もしマクロ要因で想 定外の悪材料が出なければ、株式市場は一段高となり そうだ」と述べる。 ただし、想定外のことが起きる可能性はすぐにでもあ り、今後数週間内に、貿易関連やFRB、その他に関し て懸念材料が持ち上がりそうだ。それでもファンドス トラット・グローバル・アドバイザーズの調査責任者 を務めるトム・リー氏は、大統領などからのツイート や発言で急落すれば、買い場になる可能性が高いと指 摘する。トランプ大統領は過去100 年に在任した大統 領の中で三本の指に入る政治の素人であり(他の二人 はフーバー大統領とアイゼンハワー大統領)、経験不足 による間違いが起きる可能性があるとリー氏は見ている。「そうした場合に市場の反応は過大になり、単純ミ スであっても深刻な政治上の間違いだと受け取る可能性がある。従ってネガティブなニュースが出て市場が 下落すれば押し目買いの機会となるだろう」と同氏は指摘する。 少なくとも世界全体の懸念と企業業績のどちらかがマットに沈むまでは、この戦略が奏功するかもしれない。 ■ 電気通信セクターの変更 S&P500 指数の中で利回りを求める投資家は、現時点で 5.8%の利回りの電気通信セクターがそれに該当す ると考えてきた。しかし、同セクターは9 月に予定されているセクター再編成の際に、利回り面では魅力の 低いものになってしまいそうだ。 今回の変更によって電気通信セクターはコミュニケーション・サービスセクターに名称が変わり、新たにア ルファベット(GOOGL)やフェイスブック(FB)が加わるほか、現時点で一般消費財・サービスセクター に分類されているネットフリックスや旅行サイトのトリップアドバイザー(TRIP)も含まれるようになる。 これらの銘柄はいずれも無配で、7 月 12 日の株価で計算すると同セクターの利回りは 1.3%となり、S&P500 指数全体の1.9%を大きく下回る水準となる。
今回の変更は、通信会社がコンテンツの提供会社に変身し つつあるという、セクター全体の大きな変革の動きに対応 したものだが、調査会社CFRA の投資ストラテジストであ るリンゼイ・ベル氏は「セクター全体で債券投資の代替手 段ということにはならなくなる」と述べ、「新たに追加され る銘柄の影響でセクター全体のボラティリティも上昇が見 込まれる」と指摘する。 現在の通信セクターは、ベライゾン・コミュニケーション ズ(VZ)と AT&T(T)が 2000 億ドルを超える時価総額 でセクターのほとんどを占めており、もう一つの採用銘柄であるセンチュリーリンク(CTL)の時価総額は 210 億ドルにすぎない。一方、セクター全体が S&P500 指数全体に占める時価総額の比率はこれまでは 2% にすぎなかったが、新たな銘柄が採用されることから、コミュニケーション・サービスセクターの比率は 10.7%に上昇するという(7 月 12 日現在)。 注意したいのは、これまで通信サービスセクターをそのままフォローする上場投資信託(ETF)がなかった 点だ。ETF を組成するには同セクターの銘柄数が少な過ぎたからであり、投資家が通信サービスセクターに ETF で投資するには、SPDR S&P テレコム ETF(XTL)への投資などしかなかった。この ETF には小型 株が多く、全部で46 銘柄だが等金額ウエートであり、利回りは 2.35%だ。ETF を使わずにベライゾン、AT&T およびセンチュリーリンクの株を直接保有する選択肢の方が良いという考えもある。 今回のセクター再編では上記の銘柄の他に、メディア・娯楽大手のウォルト・ディズニー(DIS)、放送の CBS(CBS)、映像産業の 21 世紀フォックス(FOX)、および本誌を発行するダウ・ジョーンズ社の親会社 であるニューズ・コープ(NWSA)が含まれることになる。ただし、これらの銘柄の配当利回りはそれぞれ 1.5%、1.3%、0.8%および 1.3%で、とても利回りを追求する際の投資対象とはならない。 一方、新たなコミュニケーション・サービスセクターの指数に連動するETF として、コミュニケーション・ サービス・セレクト・セクターSPDR(XLC)が最近設定された。上述したように、これは配当利回り狙い ではなく、成長期待の投資に向けたETF だろう。
Netflix Inc. (NFLX) Microsoft Corp. (MSFT) Honeywell International Inc. (HON)
International Business Machines
Facebook Inc. Cl A (FB) TripAdvisor Inc. (TRIP) Verizon Communications Inc. (VZ)
AT&T Inc. (T) CenturyLink Inc. (CTL) SPDR S&P Telecom ETF (XTL)
Walt Disney Co. (DIS) CBS Corp. Cl B (CBS) 21st Century Fox Inc. Cl B (FOX)
News Corp Cl A (NWSA) Communication Services Select Sector SPDR Fund (XLC)
チャートは3 年(XLC は 3 カ月)
By BEN LEVISOHN and LAWRENCE C. STRAUSS (Source: Dow Jones)
8. Alibaba, Tencent, and Sustainable Investing 新興国投資に ESG の視点を 【ESG 投資】
新興国企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)に着目し、高いリターンを実現
■ 社会的責任と投資リターンの両立 ゲーリー・グリーンバーグ氏は、ロンドンの投資運用会社ヘ ルメス・インベストメント・マネジメントで、運用資産 11 億ドルのカルバート・エマージング・マーケット・エクイテ ィ・ファンド(CVMAX)のサブアドバイザーを務めている。 ファンド運用に当たって環境・社会・ガバナンス(ESG)の 要素を考慮しており、過去5年間の年平均リターンは7%と、 新興国市場ファンドの上位6%以内となっている。 「責任ある投資と成功の両立が可能であると示すことができ た」と同氏は述べる。高いリターンが期待できる一方、ガバナンスと社会的責任の欠如が懸念される開発途上国投資においては、ESG の重視は一段と重要であると考え られる。 ヘルメスではボトムアップの銘柄選択というアプローチを中心としている。グリーンバーグ氏と共同マネジ ャーのエレナ・テデスコ氏のチームは、3000 社以上のスクリーニングを通して長期的に持続可能なリターン を生み出す最良のポジションにある企業を抽出し、最終的に約50 銘柄のポートフォリオに絞り込む。 資本利益率が資本コストを上回り、企業文化、コスト優位性、または技術において競争力を有する企業が、 主な投資対象となる。テンセント・ホールディングス(騰訊控股、700.香港)やアリババ・グループ・ホー ルディング(阿里巴巴集団、BABA)が良い例だ。保有構造や優先議決権が ESG 投資家の不満を招いてい るものの、両社とも医療や教育といった社会的活動に力を入れている。 グリーンバーグ氏のファンドは幅広い企業に投資する選択肢を有しているが、マクロ要因のコントロールの ために、国とセクターのウエートを年に 2 度見直している。「新興国市場では特に、そうした前提を明示す る必要があると考えている」と同氏は述べる。 企業の ESG 評価は複数の段階でなされる。まず、数十の項目から成るヘルメス独自のダッシュボードを用 いて、企業の ESG 要素を評価する。さらに、企業と投資家の対話状況を示すヘルメスのデータベースも参 照する。「企業文化と取締役会の姿勢、つまりどれだけ変化にオープンかをこれで知ることができる」とグリ ーンバーグ氏は言う。そして投資対象となるには、気候変動対策、男女平等、医療など、国連が定めた持続 可能な開発目標(SDG)が示す分野で何らかの貢献をしている必要がある。 ■ 中国やロシアに展開するポートフォリオ銘柄 ESG の改善は投資のきっかけとなることが多い。例えば中国の乳製品大手、蒙牛乳業(2319.香港)では、 約 10 年前、牛乳のメラミン汚染が判明したときに投資家離れが起こった。同社はその後、清涼飲料大手コ カ・コーラ(KO)、デンマークの乳製品企業アルラ・デイリー、そして直近では食品大手ダノン(DA)か らの新しい経営陣のもとで大きな変化を遂げた。グリーンバーグ氏のチームは同社施設を訪問した後、2012 年後半に株式を取得した。当時の株価は11 香港ドル、株価収益率(PER)は約 17.6 倍だった。 グリーンバーグ氏は数度、蒙牛乳業への投資を拡大している。「同社は、ガバナンスと社会的責任の改善が事 業の改善に直接結び付いた好例だ」と同氏は述べ、流通網の再編と乳児用ミルク事業の拡大に伴い、さらな る業績改善の可能性があると指摘する。同社の直近の株価は25 香港ドルを超えている。 ロシア国営ズベルバンク(SBER、英国)は、米国の対ロシア制裁の影響への懸念により 4 月に株価が下落 する前から課題を抱えていた。だがグリーンバーグ氏は、経営陣は2013 年以来、事業を正しい方向に進め ており、マネーロンダリング防止や、融資するプロジェクトの環境・社会的リスクを低減するための対策を 講じていると指摘する。同行の株価純資産倍率(PBR)は 1 倍、配当利回りは 5.5%となっている。 長期保有するテクトロニック・インダストリーズ(669.香港)は、低価格帯の機械メーカーから、高級電動 工具で知られる企業に生まれ変わった。株価は投資を開始した2013 年後半の 20 香港ドルから直近で倍以上 になっているが、グリーンバーグ氏は、新市場開拓やコードレス電動工具などの新製品分野を含めて、今後 も多くの成長機会があると見ている。 グリーンバーグ氏は、テクトロニックの企業文化と継続的にプロセスを改善する姿勢も評価している。同社 の売上高に対するコストは毎年下がり続けている上、廃棄物削減とリサイクル率の向上を通して、コスト削 減のみならず環境影響の縮小も進めてきた。同氏はこれを、スチュワードシップの強さが業績の強さに反映 されている多くの例の一つと考えている。ESG に注目する投資家が増えているのも、これが一因に違いない。
Calvert Emerging Markets Equity Fund;A (CVMAX)
Tencent Holdings Ltd. (HK:0700) Alibaba Group Holding Ltd. ADR (BABA)
China Mengniu Dairy Co. Ltd.
(HK:2319) Sberbank Rossia ADR (UK:SBER) Techtronic Industries Co. Ltd. (HK:0669)
チャートは3 年
By SARAH MAX (Source: Dow Jones)
9. Amazon, Netflix, and Tesla Face Tighter Capital Markets 金利上昇の影響 【ハイテク】
資本市場の引き締まりに直面するアマゾン、ネットフリックス、テスラ
■ 借り入れによる投資が大幅な株価上昇をもたらした グレートリセッション(大不況)以降、借入金利が非常に低い水準 を維持する中、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、ネットフリッ クス(NFLX)、テスラ(TSLA)の 3 社は資産と設備(ネットフリ ックスの場合はビデオコンテンツの取得)に合わせて930 億ドルを 投資した。これら3 社の長期債務は合計 440 億ドル(ネットフリッ クスの将来のコンテンツ使用のための長期的な支払い義務を含める と540 億ドル)に上る。 こうした借り入れは目覚ましい株価上昇をもたらした。アマゾンとネットフリックスの2008 年 7 月以降の 株価上昇率はそれぞれ2524%、9226%で、S&P500 の 122%はおろか、アルファベット(GOOGL)の 397%、 アップル(AAPL)の 711%をも大きく上回る。テスラの上場は 2010 年 6 月で、それ以降の株価上昇率は 1533%だ。 だが、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げする中、巨額の債務を抱える 3 社が今後の 10 年間もアウト パフォームするのだろうか。 全ての企業が低金利の恩恵を受けたとはいえ、これら3 社ほどではない。アルファベットとフェイスブック (FB)の場合、事業資金をほぼ自前で賄ってきており、両社合わせて 1380 億ドルものネットキャッシュを 蓄えている。 ■ 投資利益率は3 社の中でアマゾンが最も優れている 資本市場が引き締まりに向かう中、3 社の中で最も安定感があるのがアマゾンだ。約 100 億ドルの純債務を 抱えるものの、2008 年から 2018 年第 1 四半期までの間に 440 億ドルも投資したにもかかわらず約 350 億ドルの現金を創出している。このことは、同社が膨大な投資から巨額の利益を生む方法を知っていることを 示している。 一方、ネットフリックスとテスラは大幅なキャッシュフローの赤字で悪名高い。それぞれ過去 10 年間で約 40 億ドル、100 億ドル以上のマイナスになっている。さらにネットフリックスの場合、総額 180 億ドルのコ ンテンツ債務を抱え、そのうち103 億ドルが同社のバランスシートに計上されていない。 テスラの場合、過去10 年間で利益が黒字化したことはない。さらに来年には 14 億 9000 万ドルの転換社債 が償還期を迎える。株価が先週の終値の313 ドル 53 セントから 360 ドルに上昇した場合は投資家が同社の 株式を手に入れるだけのことだが、360 ドルに届かなければ同社は現金で償還することになる。同社の債務 残高は100 億ドルを超えるのに対し、手元現金は 30 億ドル未満。しかも 1 四半期当たり約 10 億ドルのペー スでキャッシュが失われている。アナリストの中には同社が債務を返済できるかを疑問視する向きもある。 同社の最高経営責任者(CEO)であるイーロン・マスク氏は今年、差し迫った増資は不要だと繰り返し述べ、 キャッシュフローの今四半期からの黒字化を約束している。それが守られるかどうかは、モデル3 の生産上 の問題を解決して利益をどれだけ早期に改善するかにかかっている。 ■ 金利上昇が株価に影響を及ぼす可能性がある ネットフリックスとテスラが直面している課題はこれまで、資金調達環境が緩和的だったことからあまり問 題となっていない。社債市場は冷却しつつあるが、それによって両社の事業が危機にさらされることはない かもしれない。だが、両社の株価への熱狂を覚ます可能性はある。 最後に残る疑問は、アマゾン、ネットフリックス、テスラの投資にそれだけの価値があったのかどうかだ。 3 社が生み出すものが素晴らしいと感じる消費者にとって、答えは断固としたイエスであるに違いない。そ こまで肩入れしていない人から見ても、3 社は業界全体を総じて良い方向に変革してきたと言えそうだ。 では仮に、3 社が巨額の投資をしていなければどうなったのか。この質問に答えるのは難しい。930 億ドル もの資金が他のどこに向けられたのかを知るのは困難であるからだ。
Amazon.com Inc. (AMZN) Netflix Inc. (NFLX) Tesla Inc. (TSLA)
Alphabet Inc. Cl A (GOOGL) Apple Inc. (AAPL) Facebook Inc. Cl A (FB)
チャートは3 年
By TIERNAN RAY (Source: Dow Jones)