• 検索結果がありません。

ブドウの早期落葉に関する研究 III 早期落葉に及ぼす梅雨明け後の土壌乾燥の影響-香川大学学術情報リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ブドウの早期落葉に関する研究 III 早期落葉に及ぼす梅雨明け後の土壌乾燥の影響-香川大学学術情報リポジトリ"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

ブドウの早期落葉に関する研究

Ⅲ 早期落葉に及ぼす梅雨明け後の

土壌乾燥の影響

樽 谷 勝 Ⅰ 緒 口 前報(1$・14)において,当地方のキャンベルス・ア−リ鵬・園における早斯落葉のあらわれ方とその時期的推移 ならびに地形,土壌条件との関係を明らかにしたい この場合,梅雨明け期から盛夏期の落柔類型には,黄脈 間の黄変(Mg欠乏症類似1によるものがあることを述べた..さらに土壌湿度とブドウの生長ならびに養分吸 収との関係(11)において,土壌湿度の低いものほど生長が劣り,基部葉の落葉が多く,とくに生長前期に高い 土壌湿度で,7月上旬以降に土.壌湿度を下げたものでは,案内のMg含量が低下し,落葉がはなはだしかっ たことを報貸した小 本報は梅雨明け彼の土壌乾燥ならびに救わら法による土壌乾燥の防止法と早期落葉との 関係を実験,調査したものである.. 本実験にあたり種々こ∼指導を賜った京都大学教授小林章博士,ならびに本稿のご校閲をいただいた本学部 教授聾澤正義博士に対して深甚な謝意を表する..(本報告の要旨は園芸学会昭和37年皮春季大会において発表 したい) ⅠⅠ 材料および方法 1961年に,本学部付属農場大宮果樹園において,コンクリ・−・ト柩(15×1・0×1Om)植の3年生キャンベル ス・アーリ」−の結果樹を用い,裸地区と教わら区(厚さ 7cm)を設けて,梅雨期前後から盛夏期における土 壌湿度の変化,結果枝基部葉の要素含意ならびに黄変・落葉との関係を観察した. さらに1962年の同期に,大川郡志度町高橋忠氏のキャンベルス・ア−リ・一輝成木園で,裸地酒耕法と数わ ら法を実施している園地について−,前者と同様の調査を行なった.. 各種の調査および観察の方法は前報(14)に準じたが,葉分析についてはとくに記するほか,Nはガンニング 氏変法(16),Pは比色法(19),Kは焔光分析法(17),CaおよびMgはキレート法(16)によって行ない,乾物重% で表示したい ⅠIl 結 果 1。土壌湿度の変化 1961年のコンクリ・−ト柩試験における梅雨期から盛夏期にいたる間の,土壌湿度の変化を第1図に示す. すなわち,6月初旬から7月初旬にわたる梅雨期間中は,両区とも容水盛の60∼L7」5%の土壌湿度を保持し, 両区間の差も比較的小であるのに対し,7月上旬の梅雨明けとともに裸地区の土壌湿度は漸次低下し,7月中 旬から8月上旬の間には,地表下0∼15cm部位で容水盛の約1う%に,地表下30∼60cm部位で40%以下 になった∩ 救わら区では7月中旬以降においても容水盛の紛う0%前後の土壌湿度を保持した. つぎに,1962年6月19日から8月20日にわたる間,志度町高橋園における土壌湿度の変化を調べた結果を 第2図に示す= すなわち,裸地区は,7月上旬の梅雨明け以後急速に土壌湿度が低下し,7月下旬以降には容 水盛の20%以下になった.. これに対して救わら区では,梅雨明け後における土壌湿度の低下は比較的ゆるやかで,7月下㌧句以降にお

(2)

香川大学農学部学術報告 188 lノⅥ 了 13 19 251/11 7 13 19 25 316/1110 17 調 査 月 日 第1図 土壌湿度の変化状態(コンクリ−・ト枢試験‥1961年) 辞 訓 土 壌 湿 度 ︵容水最%︶ 19/Ⅳ ㌘ 2/Ⅶ 12 餌 缶 2/lt lO 20 調 査 月 日 第2図 ブドウ園の土壌湿度の変化(志度町高橋園:1962年)

(3)

いてもなお容水温の約40%の土壌湿度を保ったぃ 2… 結果枝基部葉の黄変および落葉 梅雨明け斯から盛夏期にわたる間の,結果枝基部葉における黄変菓の発生と落葉状態を観嬉した結果は第 1表と第2表のとおりである.すなわち,コンクリ一斗枢試験の場合,裸地区では7月上旬から徐々にMg 欠乏症状を呈するものがあらわれ,7月中旬にはすでに本楯全禁教に射し約53%の落葉をみた.これに対し て救わら区では,黄変葉の発生および落葉も比較的少なく,7月中旬における落葉は約27%にすぎなかった. また,果実の成熟期(8月上・中旬)における1果房当りの健全乗数は,裸地区で2.3∼1‖4枚,救わら区で 50∼40枚であった小 第1表 結果枝基部菓の黄変および落葉状態 コンクリーート梶試験:1961年

13/Ⅶ 1 20 1 27 1 3/Ⅷ 1 10

裸地区 救わら区 裸地区 倣わら区 裸地区 敷わら区  ̄−  ̄二・ __、_ !喜了二; 4 ■hlJ L 乱 8 一ヽ︶ 3 0 2.5. 注:黄変葉率は調査時の健全英数に,落葉率は本梢総菜数に対する比率である. 第2表1結果枝当りの黄変薬の発生と落葉状態 志度町高橋園:1962年 12/Ⅶ 1 20 1 2/Ⅷ l 10 裸地区 倣わら区 黄(褐)変葉数 裸地 区 教わら区 裸地区 救わら区 累加落英数 (ぎ箪l ___...− 落 葉 率 ▼一、____【 (塑 注:1供試樹は南面階段畑の9年生U字形整枝,短栴暫定である. 2,落莫率は本栴葉数に対する比率である.. さらに,志度町高橋園での調査結果をみると,教わら区は裸地区にくらべて,1結果枝当りの糞変菓の発 生および落葉数が少なく,8月上旬の落葉率は28%であった.同時期における裸地区の落葉率は,救わら区 よりもはるかに高く約43%であった.. 3・甚部葉の案内要素含意 コンクリーー・ト枢試験の場合,7月13日における結果枝基部柴の15要素(N,P,K,Ca,Mg)含量を分析した結 果は第3表のとおりである..これによると裸地区のNおよびMg含意は,ともに教わら区のそれらに比し, それぞれ約72%にすぎず,NとMgの含量が低かった”P,K,Caの含意はむしろ裸地区において高い 値を示した一. また,志度町高橋園のものについて基部柴のN含意の変化を比較すると第4表のとおりで,両区とも漸次

(4)

香川大学農学部学術報告 190 第3表 結果枝基部葉の要素含畳(乾物垂%) リーート梶試験‥1961年7月13日 コンク N l I〉 1

K 】 Ca i Mg

裸 地 区 敬 わ ら 区 裸地区/教わら区比 第4表 結果枝基部菓Nの含鼻の変化(乾物蚤%) 志度町高橋園=1962年 23/Ⅵ ‡ 2/Ⅶ 減少の傾向がみられ,とくに裸地区では教わら区よりもその傾向がいちじるしく,7月下旬ではその差が大 であった. ⅠⅤ 考 察 土壌湿度の不足がブドウ樹の発育や果実の形質のみならず,草書(3・4)などに及ぼす影響についてはすでに 多くの報告がある.ノJ、杯および筆者ら(11)は,土壌湿度とブドウの生長ならびに養分吸収との関係において−,土 壌湿度の低いものは新梢伸長や結実ならびに果実の発育が劣り,新梢基部の落葉が多いことを観察した..こ の場合とくに生長前期(梅雨期に相当する時期)に土壌湿度を高い状態で経過し,7月上旬以降に土壌湿度 を下げたもの(多湿∼少湿)では,前・後期とも多湿状態(多湿∼多湿)に保ったものにくらぺて,葉内の Mg含意の低下がほなはだしく,新梢基部の落葉が多かったことを認めた.. また,葦渾,樽谷(2)がキャンベルス・アーーリ」−・稗の深耕棉について,6月上旬乾燥区および7月上旬乾燥区 を設けて,草書に関する実験,観察を行なったところ,両乾燥区とも乾燥処理開始後次第に結果枝基部菜の 落下を生じ,8月中旬における落葉率および赤うれ果の発生ほともに6月上旬乾燥区が多かった. 当地方におけるキャンベルス・ア・−リーー・種の早期落莫の実態については,すでに本多ら(5)ぉよび聾者(13・呵 によって明らかにされ,時期によって落葉の類型を異にし,地形や土壌条件によってもその落葉状態が異な ることを確かめた. これらの報告より,ブドウの早期落葉の原因と考えられる事項には,梅雨期の多雨,滞水,地下水位の過 高,排水不良などによる根の機能障害(1さ,15)ならびに土壌水分の激変,波状変化(6)があげられる.また盛夏期 には土壌水分の低下および草書による葉焼け症状の黄・褐変葉の発生に起因する落葉がある. −・般に梅雨明け後の高温,乾燥は,土壌湿度の低下をきたすとともに,果樹体における蒸散および炭酸同 化などの生理作用に影響することがきわめて大きく,この時期における果樹園の土壌および水分管理上に重 要な対策が望まれる.. 葦滞ら(い)の実験によると,果樹はその土壌湿度に応じた生長を示し,土壌乾燥の影響は乾燥状態に入る以 前の生長状態と,その後の乾燥程度によっていちじるしい差がある.. 本実験の結果,梅雨明け後において裸地区の結果枝基部葉の落下が多かったことば,上記の報告の事実を 証する現象であって,梅雨明け後の急速なる土壌湿度の低下によって,蒸散と吸水との間に急激な不均衡を 起こしたことによるものと考えられる. 養分吸収と生長との関係については数多くの報告があるが,ブドウの早期落葉と直接的な関連をもつもの として,微量要素の欠乏症があげられ,とくにMg欠乏に関する記載(8,10,18)が多い..Mg欠乏症の発生原因

(5)

として土壌湿度の過湿による通気不良(12),土壌乾燥による有効水分の不足(11)ならびに土壌酸性の強度(9)な どがその吸収を妨げているとされている.. 本実験の場合,7月13日における新梢基部菓のMg含意が,裸地区で0.184%を示したことは,杉山ら(20) がブドウのMg欠乏症発現の限界含意は0け25%であるとしているのに対して,このときすでにその限界を下 まわっていたことになるり このように裸地区において案内Mg含畠が低いのは,おそらく梅雨期中の過温ま たは多湿状態と,梅雨明け後における急速な土壌湿度の低下の双方の影響にともなう,根の吸収機能の不調 によるものと思われる. また,案内のN含意において,裸地区が救わら区にくらべて低い億を示し,その傾向が明瞭であること ば,本多ら(5)が弱勢樹においてはN成分が早い時期(7月上・中旬ごろ)から急減しており,これが早期落 葉と関連があると考えられると述べていることと一徹する点がある..このことば新梢基部葉の老化現象の−・ 因とも考えられるが,N含盈の低下が土壌乾燥によってのみ起こるものであるかどうか,またN含盈の低 下が早期落葉の直接的な要因であるかどうかは,今後の究明にまたなければならないり 以上の結果より,梅雨明け彼の土壌乾燥は,ブドウの発育障害をきたすのみならず,新梢基部菓における 要素含盈の不均衡ならびに早期落葉の重要な原因となっていることが明らかに認められる.したがって,梅 雨期からの敷わら(澤)および准水法など,適切な土壌管理によって,急激な土壌の乾燥を起こさないように することが望ましい,. Ⅴ 摘 要 香川県地方のブドウ固における早期落葉の原因と対策を究明するため,キャンベルス・アーリ−・種の結果 樹を用い,裸地区と教わら区について,とくに梅雨明け彼の土壌乾燥と結果枝基部葉の莫内要素含量および 落葉との関係を調査したり (1)裸地区の土壌湿度は梅雨明けとともに漸次低下し,7月中旬にほ地表下.0∼115cm≡部位で容水盛の15 %に,地表下30∼60cm部位で40%以下になった.. (2)土壌乾燥にともなって新棺基部築にMg欠乏症状を呈するものがあらわれ,哉変菜の発生と落葉が起 こり,7月中旬には裸地区で全案の52%,教わら区で26%が落葉した. (3)結果枝基部菓の5要素(N,P,K,Ca,Mg)を・分析したところ,裸地区ではNおよびMg含急が少なく, 黄変,落葉の−・原因と考えられる.. (4)梅雨明け彼の教わら法による土壌乾燥の防止は,この時期の早期落葉の軽減に効果があることが認め られた.. 文 (1)茸沢正義,樽谷勝:果樹の水分生理に関する 研究,Ⅱ土壌水分の変化と果樹の生態,園芸 学会昭和30年度春季大会発表(1955)け

(2)_

,叫:葡萄の深耕樹における夏 季乾燥の影響,香川大農学報,13(2),133∼140 (1962)

(3)仙

,井上宏,大久保美智也:香川県にお ける果樹園の草書に関する研究,Ⅲ主に夏季 間の土壌水分の低下がブドウの発育に及ぼす 影響,園芸学会昭和34年度秋季大会発表(1959). (4)∴:香川県における葡萄の草書に関す る研究,香川大農紀要,丁7,(1964)・ (5)本多昇,岡崎光良:水田地帯のキャンベル種 葡萄の早期落葉の実態,岡山大農学報,28,37 ∼150(1962) ,…,高橋健二,寒川紳也:キャ ンベル・ア・−リ」−の早期落葉に関する研究, Ⅱ 土壌管理の効果について(1),岡山大農学報, 26,19∼25(1965) 巨+ ,上田浩次:キャンベル・ アーrリ・−・の早期落柴に関する研究,Ⅲ土壌管 理の効果について(2),岡山大農学報,26,27∼ 34(ユ965) (7) (8)岸 光夫:葡萄栽培全壬L 262∼264,束京,朝 倉書店(1959)・ (9)小林章,熊代克巳,福長信吾,北川博敏:土壌 反応が葡萄の生長並に果実の収畳・品質に及ぼ す影響(第2報),園芸学研究集録,8,1∼9

(6)

香川大学農学部学術報告 リー・園における早期落葉の実態,香川大農学 報,18(1),96∼102(1966) (15)∴:ブドウの早期落莫に関する研究, Ⅲ梅雨期の湛水,多湿が早期落葉に及ぼす影 響,園芸学会昭和41年度秋季大会発表(1966) (16)京都大学農学部農芸化学教室編:農芸化学実 験苔第1巻,124,237,束京,産業図書(1957) (17)+:農芸化学実験苔第3巻,917∼922, 束京,産業図書(195‘7) (18)中川昌一・:葡萄,249∼253,東京,朝倉書店 (1960) (19)関根隆光他:化学の領域増刊34,光電比色法 Ⅱ,21,東京,南光堂(1958) (20)杉山宙俵,岩田正利,八代仁夫:ブドウのマグ ネシウム欠乏症,園学誌,21(3),161∼164 (1952) 192 (19・57) (10)+:果樹の栄養生理,88∼99,束京,朝 倉沓店(1958) (11)KoBAYASHI,A一,KuRETANI,M.,0TO,H.,: Effbcts of soilmoisture onthe growth and

nutrientabsorptionofgrapes,.JlHort・Assoc

Japい,32(2),トノ8(1963)

(12)KoBAYASHI,A.,IwASAXI,K,SArO,Y・: Growthand nutTient absorptlOn Of grapes as

a翫ctedbYSOilaeration‖Ⅰ・Withnon−bearing Delawaregrapes,J‖HortAssoc.Jap一32(3), 181∼18−5(1963) (13)樽谷 勝:ブドウの早期落葉に関する研究, Ⅰキャンベルス・アーリ一種の早期落葉の実 態,香川大農学報,16(1),103∼108(1963) (14)仁:ブドウの早期落葉に関する研究, Ⅱ地形,土壌条件の異なるキャンベルス・ア−

Studiesonthedefbliationofgrapevinesinthesummerseason

III Theefftctofsoildryingaftertheralny

SeaSOnOntheearlydefbliation

MasaruKuRETANI

S11mmary

Early defbliation of Cambell’s Early vine after theralnySeaSOninKag■aWaPrefbcture

wasinvestlgatedoncleancultureandgrassmulchinl961and1962.

(1)Soonaftertherainyseason,the soilmoisture ofclean culture decreased rapidly,

andinthemiddleofJulyitwasabout15%ofwaterholding・CaPaCityunder O−15cm f王・Om

thesurfaceoftheearth.In the grIaSS mulch,however,the decrease of soilmoisture was gr・adualandevenafterthemiddleofJulysoilmoisturcwasabout50%.

(2)withthcsoildrying,1eavesatthebasalpartofshootchangedintoyellowshowing

thesymptomofmagnesiumdeficicncyandtheear・1ydefbliationoccurred.Inthemiddleof

July,52%ofallleavesincleancultur・eand26%ingrassmulchdefbliatedrespeCtively.

(3)Astheresultofleafanalysis,it was thought that the de丘ciency ofnitrog・en and

magnesiumintheleavesofcleanculturemayinducetheyellowlngandthedefbliation.

(4)ItwasfbundthatthemulchingforIPreVenting・SOildryingwillhave a fAvourable

e庁ectfbrreductionoftheearlydefbliation.

参照

関連したドキュメント

脱型時期などの違いが強度発現に大きな差を及ぼすと

ポイ イン ント ト⑩ ⑩ 基 基準 準不 不適 適合 合土 土壌 壌の の維 維持 持管 管理

1. 東京都における土壌汚染対策の課題と取組み 2. 東京都土壌汚染対策アドバイザー派遣制度 3.

参考のために代表として水,コンクリート,土壌の一般

(2)工場等廃止時の調査  ア  調査報告期限  イ  調査義務者  ウ  調査対象地  エ  汚染状況調査の方法  オ 

土壌溶出量基準値を超える土壌が見つかった場合.. 「Sustainable Remediation WhitePaper

3 学位の授与に関する事項 4 教育及び研究に関する事項 5 学部学科課程に関する事項 6 学生の入学及び卒業に関する事項 7

土壌は、私たちが暮らしている土地(地盤)を形づくっているもので、私たちが