香 川 大 学 経 済 論 叢 第74巻 第 1号 2001年6月 131-148
人口高齢化,政府支出の配分および成長*
平 井 健 之
I . は じ め に
わが国を含めて高齢化が進展する経済においては,今後も政府による年金や 医療等の社会保障支出(移転支出)の増加は避けられないであろう。さらに, それらの政府支出の負担の多くが若年(勤労)世代によるものであるとすれば, 社会保障支出の増加は,公共投資等,他の政府支出の規模や配分にも何らかの 影響を及ぽすと考えられる。それにより,例えば,政府支出が社会保障支出と 投資的支出にどのように配分されるかは,その経済の今後の成長とも関係する であろう。 とりわけ,社会保障支出の規模をめぐる問題については,税金等を負担する 若年世代と給付を受ける老年世代との政治的対立の観点から捉えることができ る。 Kemnitz(2000)は,このような世代聞の政治的対立を考慮に入れた2世代 重複モデルを用いて,人口高齢化が進展する経済における公的な教育支出と社 会保障支出との関係を検討している。人的資本を形成する公的な教育支出は将 来世代の所得増加を通じて退職期における社会保障給付を増加させるため,そ の規模は若年世代によって選択される。一方,社会保障支出については,政府 が若年世代と老年世代の政治的なロビー活動を受けてその規模を決定すること になる。このとき, Kemnitz (2000)の分析結果は次の通りであった。すなわち, 人口高齢化は,老年世代のロビー活動が相対的に弱まることを通じて,公的な 教育支出を拡大させ1
人当たりの所得の成長率を高める効果をもっ。またそ 本 本稿の作成に際して,坂上智哉助教授(熊本学園大学)より有益なコメントを頂いた。ここ に記して感謝いたします。れと同時に,公的な教育投資を行う誘因を若年世代にもたらす社会保障制度に 対する負担率も上昇させるというものであった。 そこで本稿の目的は,上記のKemnitz(2000)によるモデル分析の枠組みを利 用して,政府支出の配分,ここではとくに公共投資と社会保障への支出配分の 問題を若年世代と老年世代との政治的対立の観点から捉え,人口高齢化が政府 支出の配分および経済の
1
人当たり成長にどのような影響を与えるかについて 検討することである。本稿でのモデルは次の点で, Kemnitz (2000)のそれと異 なっている。 まず第lに, Kemnitz (2000)では,政府支出として公的教育支出と社会保障 支出とを考え,それらの支出に対する若年世代の負担率の決定が問題にされた のに対して,本稿では,教育支出を含めた生産関連の公共投資への支出と社会 保障支出とを考え,一定の税収に対するそれらの支出配分の問題を扱うことに する。このような政府支出の配分については, Kaganovich and Zilcha (1999) が,公的教育支出と社会保障支出の配分の問題を取り上げ 2世代重複モデル を用いて成長率を最大にするような配分比率について検討している。しかし, そこでは,政府支出の配分決定をめぐる政治過程は考慮されていない。 そして第2に, Kemnitz (2000)では,各世代グループの政治的なロビー活動 は金銭的な支出を伴い,それは財・サービスの消費を減少させると想定してい る。しかし,井堀・土居 (1998)において指摘されているように,実際のロビー 活動が集票行動や陳情等,時間を消費する行動であることを考慮すると,ロビー 活動の費用は時間の機会費用で与えられる。本稿のモデルでは,そのような機 会費用をロビー活動によって犠牲となる余暇時間と解釈する。これにより,政 治活動による機会費用の大きさが政治過程を通じて決定される政府支出の配分 とどのように関係するかが分析される。 上記の設定の下で,本稿の分析ではとりわけ次のような結果が導かれる。す なわち,もしロビー活動の増加による機会費用の上昇の程度がそれほど大きく なければ,さらにロビー活動を行う利益団体(世代グループ)の規模増加に伴 い各個人がフリーライダーの行動をとる度合が大きければ,人口高齢化が進む133 人口高齢化,政府支出の配分および成長 -133-状況で若年世代のロビー活動は相対的に活発化する。しかし,その逆の場合に は,若年世代のロビー活動は相対的に弱まり,人口高齢化は老年世代の意向を 反映した支出配分,つまり社会保障支出の拡大(または公共投資の縮小)をも たらす傾向にあり,経済の
1
人当たりの所得成長に負の影響を与える可能性を もつことになる。 本稿の構成は,以下の通りである。まず第II節で,基本モデルを提示する。 次に第凹節では,政府支出の配分をめぐる若年世代と老年世代のロビー活動と それを受けて政治的支持を最大化するように支出配分を決定する政府との一連 の政治過程を分析する。そして第I
V
節では,人口高齢化が政治過程を通じて決 定される政府支出の配分と,さらに 1人当たりの成長率に与える影響について 検討する。最後に,第V節で結論を述べる。I
I
.
モ デ ル
本節では,人口の高齢化が政府支出配分の構造や成長に及ぽす効果を分析す るためのモデ、ルを提示しよう。本稿のモデルは,政府支出の配分をめぐる世代 聞の政治的対立に焦点を当てるため,小国開放経済を想定した2世代重複モデ ルである。 十 家 計 部 門 経済を構成する各個人の生涯は,2
期間(すなわち,労働期間と退職期間) に分けられるものとする。そのためt
期の期首に生まれた同一の各個人は, t期において1
単位の労働を企業に供給して賃金所得を得ると同時に,それを 消費と貯蓄に配分する。そしてt+l
期には,退職して労働を供給しないため, 当該期間の消費は t期の貯蓄と政府の社会保障給付から賄われることになる。 また,この経済の人口成長率を m とする。したがって,t
期に生まれた個人の 数 を 品 と す る と ,Nt+1=
(
l
+m)Nt=
M Ntが成立する。ここで,M=
l+m
とする。本稿でもKemnitz(2000)に従い,人口の高齢化に寄与する要因を出生 率の低下(すなわち ,M
の低下)と死亡率の低下,言い換えれば平均寿命の伸長の
2
つに区別し,それぞれの場合について人口高齢化の影響を分析する。そ のために,各個人は労働期間においては確実に生存できるものの 2期目の退 職期間も生存する確率はρ
であるとしよう。これにより,死亡率の低下,つま り平均寿命の伸長はρ
の増加として解釈することができる。さらに本稿では小 国開放経済を想定するため,この経済の利子率rは外生的に決まり一定である とし ,R=l+r
と表示することにする。 そこで,t
期に生まれた個人の効用関数は,次式で表される。U
t = logd+IH
,ρ
8
[
l
Oga+l+
l~+ll (1) ここで, δ三五1は主観的な割引要因,d
, C~+l はそれぞれ労働期間と退職期間の 消費量である。また,n
l~+l はそれぞれ労働期間と退職期間における余暇時間 である。 まず,次節でも述べるように,各期において,労働期間にある若年世代と退 職期を迎えている老年世代の各個人は,政府支出の配分をめぐってそれぞれ政 府に対して政治的なロビー活動を行うものとする。そのため,労働期間と退職 期間におけるロビー活動の水準をそれぞれX{,X~+l で表すことにしよう。本稿 では,ロビー活動の費用はそれに費やす時間で測られ,ロビー活動の水準に依 存するものとする。そこで,労働時間を除いた保有時聞は,労働期間と退職期 間においてそれぞれ一定であり ,HY, HO (HY<
HO )とする。このとき ,HYとH
Oはそれぞれ次式のように余暇とロビー活動に配分される。HY
=IH
C
Y
(
x
,
)
r
(
2
)
H
O = l~+l 十 CO(X~+1)(
3
)
ここで,CV(xD, CO(X~+l) はそれぞれ労働期間と退職期間におけるロビー活動 の費用であり ,CV'(x)>
0, CY"(.x)主主0
,CO'(x)>
0, CO"(x)孟Oを満たすもの とする。以下では,このような性質を満たす費用関数を具体的に,弾力性を一 定とする次の関数で表すことにする。 Cj(.
x
)
=εyf
,
j = y,
O ここで,ε
j>
0
,σ
孟1
である。 そして次に,労働期間と退職期間の消費はそれぞれ次式で示される。135 人口高齢化,政府支出の配分および成長 ι~ =
(
1
-
r
)
ωt
-
S
t
,
a+1与
S
t
十 九 135ー (4)(
5
)
ここで,W
t
とrはそれぞれ賃金とそれに課せられる所得税率である。また,S
t
は貯蓄であり,ここではKemnitz(2000)と同様に,個人の私的年金への投資を 示している。 αt+1を退職期に受け取る私的年金額とすれば,保険会社聞での競 争は,ゼ、ロ利潤条件以VtR=
仇+1ρ#t
をもたらすことになる。そのため,退職 期に個人はぬ+1=
R.s
d
p
だけの支払いを受けることになる。さらに ,T
t
+lは退 職期において政府から受け取る公的年金等の社会保障給付の水準である。 これより ,t
期に生まれた個人は,2
期間における予算制約式(4),(
5
)
の下で効 用関数(1)を最大化するような貯蓄れを選択する。そのような貯蓄れに関する 最大化の条件は,a
+l =dRd
,
(
6
)
になる。さらに,(
4
)
,(
5
)
を考慮すると,労働期間と退職期間における個人の最 適な消費量がそれぞれ,次式で導かれることになる。t
=ーよ
1
+dD τ[(l-r)wt+
~Tt+l],
dR
r 1, , Da
+l百 万 [
(
1
-
2"')叫+香川
2.. 生 産 部 門 (7)(
8
)
この経済における t期の生産物Y
tは,次のような生産関数に基づいて生産 されるものとする。五
=
ANf Kl-a gf,
0 <α< L (9) ここで,Nt,ι
はそれぞれ t期における労働総量,民間資本ストックであり, & はl人当たりの公共資本ストックである。また,A
は生産性を示す正のパラ メータで,一定の値をとるものとする。なお,資本は各期間において完全に減 耗すると仮定する。本稿では小国開放経済を想定しているので,民間資本は自 国と外国の生産部門を自由に移動することが可能である。上記の生産関数(9)より,企業の利潤最大化条件は次式で表される。 Wt=αYt
,
(10) (1I) ktR =(
1
一α)Yt ただし ,Yt=
Y
!
t
Nt, kt=
K
!
t
Ntである。ここで,ω
より,次式の成立が確か められる。ま
=
(
巡
;
r
a
)
t
α,
;
r
( l u) 。,ま
=A
1/a(う
竺
)
日
)/α=。
) 0 4 J v l ( ( 12), (13)より,競争均衡では,kt, Yt, gtの各変数の成長率はすべて等しくなるこ とがわかる。さらに,これより(1めから,賃金叫について, Wt=α<jJgt,
(14) が成立することがわかる。ω
より,賃金仙の大きさは1
人当たり公共資本ス トック gtに依存しており ,giが増加すればそれに比例して叫も増加すること になる。 3. 政 府 部 門 t期における政府は,現在労働期間にある若年世代の個人が得た賃金所得叫 に対して税率rで所得税を課し,その税収を公共投資と現在すでに退職期間を 迎えている老年世代への社会保障給付に配分して支出するものとする。そこで, t期の税収に対する公共投資への配分比率をη(0
壬 Yt孟1
)
とすれば1
人当 たりの公共投資 lfへの支出は次式で表すことができる。 lf= YtrWt. (15) 一方,社会保障支出については,若年世代からの総税収のうち社会保障への支 出品(1一 Yt)
r
叫 が 現 在 生 存 し て い る 老 年 世 代ρN
ト1人 に 分 配 さ れ る こ と か ら,老年世代が受け取る1
人当たりの社会保障給付Z
は次式で示されること になる。 T,=
M(1-Yt)
r
叫 ーρ
( 16)137 人口高齢化,政府支出の配分および成長 137-ー 以下では政府支出の配分に焦点を当てて分析を行うため,税率 rは時間を通じ て一定であるとしよう。 また,公共資本は民間資本と同様に完全に減耗すると仮定して,公共資本と (1) 公共投資の関係は,次式で表される。
I
f
gt+l= M これより, (14), (15)を考慮すると, (17)からさらに次式が導かれる。 乏E土.L主宰並=
1+8
,
g,
凶 ( 17) (18) ここで,8
, = gt+l/g,-lはI
人当たり公共資本の成長率を示している。そこで, (12), (13)より 1人当たりの変数が閉じ率で成長することを想起すると,この経済 における t期の1人当たり成長率は仇であることがわかる。したがって, 1人 当たりの成長率は,所得に占める労働のシェア α,公共資本の平均生産物ム公 共投資への支出配分yの増加とともに上昇することになる。また,税率rの上 昇に対しては,公共投資への支出自体の増加が成長率を引き上げる効果をもつ が, Bellettini and Berti Ceroni (1999)のように徴税費用の存在を考慮すると, (2) 徴税費用の増加が逆に成長率を低下させる効果をもつことになるであろう。I
I
I
. 政治活動と政府支出配分
本節では,政府支出配分の決定をめぐり,若年世代と老年世代の各世代グルー プによる政治的なロビー活動と政治的支持を最大化する政府からなる政治過程 を分析する。これにより,人口の高齢化がロビー活動による各世代グループの 政治的影響力に及ぽす効果を検討する。 (1) 公共資本が各期聞において完全に減耗するという仮定は簡単化のためであり,この仮 定を緩めても本稿での分析結果は変わらないことが示される。 ( 2 ) Bellettini and Berti Ceroni (1999)が想定したように,政府が賃金所得から rだ砂の 税を課した場合に ,r2だけの徴税費用を要するものとして,実際にはピ r一戸だけが政 府支出のための税収になるとすれば, 1人当たり成長率は1+仇 Ytr'α砂川5で与えられ る。1. 政治的支持の最大化 政府は毎期,有権者からの政治的支持を最大化するように政府支出の配分を 決定するものと想定する。そのため,政府支出の配分は現在生存している世代 の関心によってのみ決まるものとする。そこで,有権者は若年世代と老年世代 の
2
つのグループからなる。それぞれの世代グループは利益団体を形成し,政 府による予算配分決定の際に,ロビー活動を通じて政府への政治的支持を表明 するものとする。 そのため本稿では,t
期における政府は,次のような政治的支持関数を最大化 (3) するように公共投資への配分比率れを選択するものとしよう。 Wt=π
(Xt)MUt+[l-π
(Xt)]ρUト 1.. 側 ここで, π(Xt)Mは政府支出の配分を決定する際の若年世代の相対的なウエイ トを表しており ,[l-7r(Xt)]ρ
は老人世代の相対的なウエイトを表している。 Xtは若年世代によるロビー活動の総水準Xlと老年世代によるロビー活動の 総水準X?との比率を示しており ,Xt= Xl/X?である。そして ,XlとXfは, Kemnitz (2000)と同様に,それぞれXl= xiNf, Xf = xf(ρ
#t-1)βで表される。 さらにここで, 0 <β 三五1であり,この βは,ロビー活動を行う利益団体の規 模の増加に伴い,その団体に属する各個人がフリーライダーの行動をとりうる ようになることを意味している。したがって ,s
の値が小さいほど,フリーライ (4) ダーの発生する程度は大きくなる。また以下では,π
(Xt)は, 0<
π
(Xt)<
1,π
'(Xt)>
0
を満たすものとする。すなわち,π
(Xt)はXtの増加関数であり,各 世代によるロビー活動の増加は,自らの政治的影響力を相対的に増大させるこ とになる。 上記の想定の下で,Kemnitz (2000)と同様に,毎期,次のような3つの段階 からなるゲームが行われることになる。まず、第1段階では 2つの世代グlレー( 3 ) 政府の目的関数として,政治的支持関数はこれまで, Weizsacker (1990), Verbon and Verhoeven (1992), Meijdam and Verbon (1996)による公的年金のモデル分析や Kem-nitz (1999)による公的教育補助に関するモデル分析等で用いられている。
( 4 ) 利益団体の規模拡大に伴うフリーライダーの発生は,例えばBecker(1983)による利益 団体モデルにおいても明示的に考慮されている。
139 人口高齢化,政府支出の配分および成長 139ー プが同時にロビー活動の水準を選択する。第
2
段階では,政府が政治的支持関 数院を最大化するように,公共投資への配分比率れを決定する。そして最後 に,これを受けて若年世代に属する各個人は貯蓄 5tを選択する。以下では,こ のモデルの部分ゲーム完全均衡の解を求めるために,後ろ向きに解くことにす る。まず,貯蓄 5tの選択についてはすでに前節で解かれている。 そこで,政府が政治的支持関数慨を最大化するように,公共投資への配分比 率%を選択する問題を考えよう。関数W
tをYtで微分す"ると,次式が得られる。 dWt dYt Mrwt[ザ
(1-31)叫-弓戸]
=0
,
Yt+1宇1
のとき, 1-π(X,l -Mrw,~子主ム< O. Ct れ+1=1
のとき。。
。
これより,将来の公共投資への配分比率 Yt+1が1でなければ,次の最大化条件 が導かれる。互主よ(
1-Yt+1)raφ 1
二互〔孟よ
c
r
R
c
f
(2])ω
は,政治的支持を最大化する配分比率れが,政治的にウエイト付けされた公 共投資の拡大による若年世代の限界利得と老年世代の限界損失とを等しくする ように選択されることを示している。本稿のモデルでは,公共投資の拡大は, 若年世代にとって,将来世代の賃金の増加を通じて退職時における社会保障給 付の増加をもたらす可能「性がある。しかし,将来の Yt+1が仮に1
であれば,す なわち現在の若年世代が退職したときに社会保障給付を受け取ることができな いのであれば,もはや若年世代にとっては公共投資を行う誘因が働かないこと になる。 ここで,政府によって選択されるれの値は,若年世代と老年世代のそれぞれ ( 5) 政治的支持関数帥において,若年世代の個人の効用仏は, (1)と(7), (8)で与えられる。 一方,老年世代の個人は貯蓄の選択S'-1をすでに前期で行っているので,その効用 U'-1 は,U
ι
ト 山F→1 =臨 で与えられる。次式が導かれる。
。
2) のロビー活動の水準に依存している。そのため,仰より,生
E
.
-d
x
i
(23) x'Nfd
j(Xt) (xf
)
可
ρ
#t-1)βπ(Xt "^M
(1-
Yt +l)'t"αφwLí互主1 ..L~二五亙2J\VL ρ
, (1+dP)M J
九 一
が
これより,若年世代によるロビー活動の増加は公共投資を拡大 (yを増加)させ, 老年世代によるロビー活動は社会保障給付を拡大(yを減少)させるように作用 することがわかる。 若年世代と老年世代によるロビー活動 次に,若年世代と老年世代の各個人のロビー活動に関する最適条件を求めよ う。各世代に属する個人は,それぞれ次式のように自らの効用を最大化するよ2
.
うに政治的なロビー活動の水準を決定する。 aUtー (l一γt+1)r2α
φ
ω
tdYta
.
x
i
dR
務 -
eyo
(
.
;
d
)
6
-
1
=0
,
(24) (25) ここで, (24,) (25)にそれぞれ(22),仰を代入して整理し,さらに仰を考慮すると, それぞれ次式のように最適条件が導かれる。 aUt-1 _ Mrwt dYt axf一ーワ
fp務
-ω(xf)σ1=0 (26) (幻) このモデノレのナッシュ均衡 これより,各個人は1ロビー活動による限界便益と限界費用とを等しくさせるよ うに活動の水準を決定する。そこで,上記の2
つの最適条件を同時に満たすナッ シュ均衡を考えよう。そのために仰と (27)を用いて, では,次式の成立が確かめられる。(
i
f
r
P
I
l
l -141 人口高齢化,政府支出の配分および成長-141-空
安
婆
=
(
会
)
ト
岬
。
。
ここで,eεJε
。である。 (28)より ,Xtの値はe
,M,ρ
の値のみに依存して決 まり,時聞を通じて一定であることがわかる。さらにこのとき,仰と(幻)から, 若年世代や老年世代に属している各個人のロビー活動の水準.
x
i
,xfもそれぞれ 時聞を通じて一定の水準をとることがわかる。 これより最後に,人口の高齢化,すなわち出生率の低下(M
の減少)または死 亡率の低下 (ρの増加)がロビー活動にどのような影響を与えるかについて検討 しておこう。仰をM
とρ
でそれぞれ微分することにより,次式が導かれるo dXtー (1-0
β
)
[
1
-
π
(Xt))2ρ
ト 仰MrJs-2dM
eXl-1{
iT'(Xt)X
t
+
on(X
t
)[l一π(X
t
)
]
}
, (29) (30) ビー活動をより活発化させることがわかる。σ
孟1,0<β孟1を想定している ことを考慮すると,このようなケースは,図1
においてI
の領域に相当する。 一方,o
s
>
1
であれば,逆に老年世代のロビー活動を相対的に活発化させるこ とがわかる。これは,図lにおけるIIの領域に相当するケースである。また,o
s
=1
のときには,人口の高齢化はロビー活動による各世代グループの相対的 な政治的影響力には何ら影響を及ぼさないことになる。 そこで,これらの結果は次のように解釈されるであろう。まず,0の値が小さ くなればロビー活動の増加による余暇活動への負の影響の度合も小さくなり, ロビー活動の限界費用は低下する。そのため,σ
の値が小さいほど,人口の高齢 表1 ロビー活動への影響 dX/dM 0+
函1 人口高齢化の影響 B 1 σs=I O 1 σ 化に対して,若年世代は社会保障支出の拡大(あるいは,公共投資の縮小)に より活発に抵抗することになる。次に ,
s
の値が小さければ,利益団体を形成す る世代グループの人口規模が増加すると,ロビー活動において各個人がフリー ライダ}の行動をとる傾向が強くなる。したがって,人口に占める高齢者の割 合が相対的に増加する状況の下では,s
の値が小さいほど,若年世代のロビー活 動は相対的に活発化することになる。I
V
.
人口高齢化による政府支出配分および、成長への影響
前節でみたように,政府は毎期,政治的支持関数を最大化するように政府支 出の配分を決定するが,各世代の政府への支持は世代グループ聞の政治的なロ ビー活動の結果として側で決まることが明らかにされた。本節では,人口高齢 化が政府支出の配分およびl人当たりの成長率に及ぽす影響を検討したい。し かし,政府の政治的支持を最大化する公共投資への配分比率は将来の配分比率143 人口高齢化,政府支出の配分および成長 143 に依存し,そのことはまた連続して将来の配分比率に依存するということが連 鎖的に生じることになる。 そのため,
K
e
m
n
i
t
z
(
2
0
0
0
)
と同様に定常状態に限定して分析を行うことにし よう。定常状態では,公共投資への配分比率は時間を通じて一定となり,生涯 の所得や各期の消費は(18)より ,e
= (rya<
t
/
M)-lの成長率で成長することにな る。このとき,政治的支持最大化の条件は,次式に書き換えられる。。 円
z m怖が
X
J
I
¥
引
幻
l
π
J
U
4
仰
は
)
X
X
︿
π
P
い。
D
(32) ここで, (幼より ,y =0
または y=lが成立するケースは除外されることが確 かめられる。 そこでいま, (3D, (32)を用いて,はじめに,人口高齢化,すなわち出生率の低 下(M
の減少)または死亡率の低下 (ρの増加)が政府支出の配分に及ぽす影響 を検討しよう。ω
,(32)より,それぞれ次式が導かれる。 dy _ 1-n(X) σー1d M - t r { y e X IM)X
十 何(X)(l一市))]
+(σβ-l
)
n
'
(
X
)
[
l
-
π
(X)][d(l-y)M+
y]Mσ
β
-
l
p
l
-
ω
}
, (33)告
=
去
(1σs
)π
(X)[δ(
1
-y)M+γ
]
[
1
-
π
(X)]γ
吋一部ω
ここで,ム =e
X
σ
ーl
{
π
'(X)X+σ
π
(X)[l一π
(X)])[π
(X)dM+(1一π
(X))]>
0
, である。 この(33),(3~の符号は,表 2 に要約されている。 σ と β の値が相対的に小さい ときには,出生率の低下が配分比率γに及ぽす影響は明らかではないが,死亡率 の低下による人口高齢化は,公共投資への支出配分を増加させるように作用す ることがわかる。この場合には,前節で述べたように,若年世代によるロビー 活動が老年世代に比べて相対的に活発化することになる。そのため,若年世代 の意向を反映した支出配分が実現しやすいと考えられる。しかし逆に ,0とβ表2 政 府 支 出 配 分 お よ び1人 当 た り 成 長 率 へ の 影 響 dr/dM dr/dP 掛 川 dB/dP す 一 討 中 を ム 口 場
+
い
0
+
+
一 対 一 一 分 I l l i -L 寸 一 、 、 A l 一 、 ヵ く l d一
d d = ( 一 ま く d ト一* ハ H V 山 在+
0+
。
一 0,十* の値が相対的に大きくなると,出生率の低下と死亡率の低下による人口高齢化 はともに,社会保障支出への配分を増加(または,公共投資への配分を減少) させるように作用する。このような結果は,若年世代によるロビー活動が老年 世代に比べて相対的に弱まり,今度は老年世代の意向を反映した政府支出の配 分が実現しやすくなることを示している。 これより次に,政府支出配分の変化を考慮に入れて,人口高齢化がこの経済 の1人当たりの成長率。に与える影響を検討しよう。そこではじめに, θ =(
r
y
a
r
t
/
M) -1をMで微分して(33)を考慮すると,次式が得られるoa
b
一 躍
π(X){ 6'yeXd -1[π'(X)X+oπ(X)(l一市))]
十(1-o
s
)
7
r
'(X)[δ(1-y)M+
y][l-π
(X)]2M酔 γ-σβ}“ 倒 (35)より, σと3
の値が相対的に小さく σβ話1を満たすとき,右辺括弧内の第2 項は正またはゼ、ロとなり,出生率の低下による人口高齢化(M
の減少)はつねに より高い1人当たりの成長率をもたらす。またo
とβの値が相対的に大きく。
βの値が1
を超えても,それが十分に大きくなければ,出生率の低下は依然と してより高いl人当たりの成長率をもたらすことがわかる。このような結果が 生じるのは,M
の減少が,公共投資への配分比率γの変化を通じての間接的な 効果だけではなしもともと直接的にI人当たりの成長率を上昇させる効果を もつためと考えられる。すなわち1
人当たりの公共投資額を一定とすれば, Mの減少は次期の1人当たりの公共資本を増やすことができるからである。そ のためこの場合,若年世代のロビー活動が相対的に弱まり公共投資への配分が 減少しでも,上記の直接的効果が大きければ1
人当たりの成長率は上昇する ことになる。しかし ,osの値が1
を超えて十分に大きい場合には,出生率の低145 人口高齢化,政府支出の配分および成長 -145-下による人口高齢化は逆に
1
人当たりの成長率を引き下げる可能性をもつであ ろう。 一方,死亡率の低下による人口高齢化の影響については,。をρ
で微分する と,次式が得られる。d
B
笠c
!
!
l
L
d
ρ
M dp。
。
これより,死亡率の低下 (ρの増加)に対して, 1人当たりの成長率は公共投資へ の配分比率yの変化を通じてのみ影響を受げることになる。そのため,側の符 号は帥の符号と全く同じになることがわかる。 Oとβの値が相対的に小さけれ ば,死亡率の低下による人口高齢化は,公共投資への支出配分を増加させ,よ り高い1
人当たりの成長率をもたらすことになる。しかし逆に, σとβの値が 相対的に大きい場合には,これとは逆の結果が生じることになる。このような 分析結果も表2に要約されている。 ところで,同じロビー活動の水準でも,若年世代と老年世代との間では,ロ ビー活動の機会費用は異なるであろう。本稿のモデルにおいて,もし若年世代 によるロビー活動の機会費用が老年世代に比べて相対的に高いとすれば,む>ε
。が成立するであろう。そこで最後に, 2つの世代聞における機会費用の格差 の増加,ここではe(=
ε
J
ε
。)の増加が政府支出の配分および1人当たりの成長 率に及ぽす影響についてふれておこう。若年世代にとって,機会費用の相対的 な上昇(
e
の増加)は,ロビー活動の限界費用を上昇させることによって,若年 世代のロビー活動を相対的に弱めることになる。このことはまた,公共投資へ の配分比率の低下をもたらすことになり,これによりさらに 1人当たりの所 (6) 得成長を引き下げる方向に作用するであろう。 ( 6 ) (3]), (32)より,表=ーシ
(
X
)
π(X)X
σ[
8
(
1
-
r
)
M
+
r
]
[
1
-
7r(
X
)
]
<
0, が導かれる。さらに, θをeで微分すると,次式が得られる。i旦=
E
!
!
t
泣 く.
o
de M dev
.
む す び
本稿では,政府による公共投資と社会保障への支出配分を若年世代と老年世 代との政治的対立として捉えて,そのような政治過程を考慮に入れた2
世代重 複モデルで,人口高齢化が政府支出の配分や1人当たりの所得成長に及ぼす影 響について検討した。そこでは,K
e
m
n
i
t
z
(
2
0
0
0
)
のモデノレでの政治過程と同様 に,各世代グループによるロビー活動とそれを受けて政治的支持を最大化する 政府を想定した。さらに,本稿のモデルでは,とりわけ政治的なロビー活動に かかる費用を時間の機会費用と解釈し,ロビー活動によるそのような費用を明 示的に考慮した。 本稿で得られた結果は,次のように要約されるであろう。もしロビー活動の 増加による機会費用の上昇の程度がそれほど大きくなければ,さらにロビー活 動を行う利益団体(世代グループ)の規模増加に伴い各個人がフリーライダー の行動をとる度合が大きければ,人口高齢化は若年世代のロビー活動を相対的 に活発化させるであろう。これにより,人口高齢化が進む状況でも,公共投資 への支出配分が拡大し,より高い1人当たりの所得成長がもたらされることに なる。しかし,その逆の場合には,若年世代のロビー活動は相対的に弱まり, 人口高齢化はむしろ老年世代の意向を反映した支出配分,すなわち社会保障支 出の拡大(あるいは,公共投資の抑制)をもたらすことになる。そのため,こ のような場合には,人口高齢化が1人当たりの成長率を引き下げる可能性をも つことになるであろう。これらの結果は,今後,高齢化が進展する経済におい て,例えば個人の余暇活動が充実しロビー活動の機会費用が高まれば,老年世 代の意向を反映した政策が実現されやすくなることを示唆しているといえよ フ。 また,同じロビー活動の水準でも,若年世代と老年世代との聞では政治活動 の機会費用は異なると考えられる。そこで,もし若年世代におけるロビー活動 の機会費用が老年世代に比べて相対的に高まれば,若年世代のロビー活動は相 対的に弱まることになり,老年世代の意向を反映した政府支出の配分が実現さ147 人口高齢化,政府支出の配分および成長 147 -れやすくなるであろう。 ところで,本稿のモデルでは,社会保障支出の増加はその給付を受ける老年 世代にとって望ましく,逆に公共投資の拡大は将来世代の所得増加を通じて退 職期間に受けとる社会保障給付に正の影響を及ぽすため,若年世代にとって望 ましいと想定した。そこ、では,公共投資による費用負担と便益との聞には時間 のラグが存在していた。一方,老年世代が政治的な決定力をもっ政府による社 会資本への投資を分析したKonrad(1995)のモデルのように,そのような時間 のラグがなければ,人口高齢化によって老年世代の意向を反映した社会保障政 策が実現するとしても,若年世代にとって不利になるような公共投資政策が政 治的に決定されるとは限らない。井堀・土居 (1998)において指摘されるように, 例えば公共投資が若年世代の経済環境を改善し,そこから多額の税収を確保で きるとすれば,それを老年世代の便益に回すことができるためである。したがっ てこの場合には,老年世代が政治的決定力をもっとしても,そのような決定が 若年世代にも便益をもたらす可能性は存在するであろう。 参 考 文 献
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