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LP分割原理の経営経済学的意義-香川大学学術情報リポジトリ

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LP分割原理の経営経済学的意義

井 上 勝 人 Ⅰ.序。 ⅠⅠ.数学的考察。 ⅠⅠⅠ..経営経済学的考察。 ⅠⅤ… 結。 Ⅰ ダンツイー・クとヴカ■ルフェほ『オぺレーションズ・リサーチ』第8巻鰐1弓 で「LPの分割原理」を論ずるにあたり,LPシ/ステムを分割して解くことを 考察することは次の2点において大なる貢献をする甘ずであることを主張し た。1)すなわち,第1には大型の電子計算機にものらないはどの巨大なLPシ′ ステムのためのプログラムの設討技法の開発と,第2に.は企業の理論における 分権的意思決定過程についての基礎理論の充実という面である。彼らが単にL P分割の手法を考察しただけではなく,それが企業の分権的決定への適用に有 力な分析要具であることを指摘したことほ,きわめて卓見であったといわなく てはならない。けだし従来からこれら両面の研究ほ.それぞれ別個におこなわ れ,彼らの研究発表を契機としてこの分野の問題意識がもりあがり,その統合 的成果が次第に実り多きものとなってきたからである。2) 本稿はこのような意味をもつダンツイークらの分割原理についてそれが経営 計画に対して有する意儀を考察するものであるが,私にとっては彼らの論文ほ 難解であり,まず彼らの数学的展開を私に分る程度に初歩へと遡及して納得の

1)George B.Dantzig and Philip Wolfe,“Decomposition PIinciple for LineaI Programs”,Operations Research,Vol8,No1,(Jan−Feb1960),p101 2)LP分割の数学的考察に潤するもの:

George B.Dantzig and Philip Wolfe,“TheDecompositionAlgoIithmfor Linear Programs,”Econometrica,29,(1961),pp“767d768

GeorgeB,Dantzig,“CompactBasisTriangularizationfoItheSimplexMethod〃, in R.LGraves and PWolfe(edsh),Recent Advancesin Mathematical Programming,(1963),pp.125−132

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香川大学経済学部 研究年報11 J97」 ・−2∂一一 いくまでもみはぐす必要があり,その仕事から始め皐うと思う0さ) ⅠⅠ 最初に,これから考えていこうとするLP問題をつぎのように書き表わす。 〝官α.芳.芳0 (1,0) (1,1) (1,2) (1,3) (1,4) ,方0−Cl.方1−C2方2=O Al方1十』2.方2=∂ Al.れ =∂1 A2.方2=∂2 方1,.方2≧0 (1) ここで,瓦は∽。行〝た列の行列,Aたは雛ゐ行〝た列の行列,瑞ほ.〝た要素の行ベクト ル,∂ゐほ∽た要素の列ベクトル,未知数芳たは.打た要素の列ベクトルであり(ゐ=1,2),

PIeSented at thelOthInt′1Meeting of TheInstitute of Management Sciences, Tokyo,Japan,(1963)

Ⅰ‖Takahashi,“VariableSeperationPrincipleforMathematicalProgrammingけ, J.of Operations Research Society ofJapan,6,(1964),pp.82−105

小野勝章『計算を中心とした線型計画法』132−152ぺ一汐。 双対性と分擬制に潤するもの:

R,DoIfman,P.Samuelson,R.Solow,Linear Programming and Economic

Analysis,(1958),pp.59−63,p,184,p”286 安井琢磨他訳『線型封画と経済分析』くⅠ>69−73ぺ−汐,204ぺ−ジ。同く2>・, 286ぺ一汐。 WilliamJ。Baumol,EconomicTheoryandOperationsAnalysis,(1961),pp.115 −116,pp.366−377,pp.507−508 福場府訳『経済分析とOR』く上>,114−115ぺ−ジ。同<下>,367−368ぺ−汐, 512−513ぺ一汐。 古瀬大六「線型計画と分権的決定」『′ト柏商大創立50周年記念論文集』,(1961),261− 282ぺ一汐。 古瀬大六『生産の経済学』,(1969),99−130ぺ−汐。

3)以下若干の点に・おいて:ほ異なっているが,もっぱらGeorge BDantzig and Philip

Wolfe,“Decomposition Principle for Linear Programs”,Operations Research

Vol8,Nohl,(Jan,−Feb.1960),pp.101一−111。古瀬大六「線型計画と分権的決定」 『/ト椿商科大学50周年記念論文集』,261−269ぺ一汐。小野勝章『封昇を中心とした線型

封画法』29−−31ぺ一汐,132−138ぺ一−ジ。国沢格典,宇田川錬久『オぺレーージョンズ・ リサーーチ・入門.』,125−128ぺ・−ジ。に.よる。

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LP分割原理の経営経済学的意義 ーーご9一 2 2 g〝た=〝,g研虎=研とする。これらの関係を図に示すと次のようになる。 官=1 名望0 こ.の図から明らかなように,LP分 割の考え方は討辞せ簡単にするために 大行列を小行列に分割して計算する考 え方に基づいている。すなわち,Aと いう問題を一・括して解く代わりに.行列 』1,A2を係数として持つサブ・プログ ラムに分けて解くと.,計算盈が少なく なるというのである。そ・こでわれわれ の考察も次の三つの順序に.分けて進み

たいと思う。すなわち,サブ・プログ

Cl l C2 +、−′ 叫ノI C 籍1図 問題の係数 ラムの問題,マ.スター・プログラムの 問題,判定基準の問題である。 (1)サブ・プログラムの問題 よく知られているように,このサブ・プログラムが単独に解かれるのであれ ばその構成する凸多面体の角から角への移動によって.最通解に達することがで きるのであるが,この場合にはA一に共通する制約要素を含む瓦式が存在する ために,サブ・プログラムを肇独で解いた解がそのまま最適解に.なるのでほ.な く,全体の可能解の各サブ・プログラム紅対応する部分はサブ・プログラムに おけるいくつかの基底解の線型結合で表わされることに.なる。つまり,全体の 解ほサ:プ・プログラムの端点にでほなく,サブ・プログラムの構成する凸多面 体のなかの任意の点のどれかにあり,凸多面体のなかの任意の点は端点の線型 結合で表わされるのである。このことを数式で表現すると次のように.なる。す なわち仁方たもをサブ・プログラムゑの端点とすると, Aた.方た=∂た, 一方ゐ≧0 を満足する.粘は−・般に.,

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J97∫ 香川大学経済学部 研究年報11 g克 尤た=∑入勅.方た£ £=1 (2,1) g人・ ∑九鬼え=1 Jここ1 (2,2) 九た官≧0 (2,3一) 一新クー ただし,莞訂はザ・プ・プログラムゐの基底解,gゐほサブ・プログラムゐの端点の総 数である。 ここで,凸多面体のなかの任意の点ほ.その端点の線型結合で表わされ,(2)式 が成立する所以を考えよう。鵬・般紅,Pなる性質をもつベクトルぱの集合を記 号(・方げ〉で表わすと,欝2図で点方をとおる原点からの半直線は図から明らか なように, (αガ⊇α≧0〉で,また,2点方,.γを結 ぷ線分ほ〈〃.方+(1−「β).γjo≦α≦1) で与えられる。 なぜなら,位置ベクトル.#,.γの 示す点をそれぞれA,Bとすれば, −▲>

−−▲シ ーーナ ・→ OA=OB+BAからBA=X−.y

−一斗 えに,点Bを通り,ベクトルBA

=.好一・.γに平行な直線,すなわち2 点A,Bを結ぶ直線のベクトル方 程式ほ,AB上の1点Cの位置ベ クトルをZとすれば,ベクトルの 合成法則から知られるように, g=.γ+α(∬−.γ)すなわち, (3) 第2区12点をとおる直線のベクトル方程式 g=α∬十(1−「α).γ が得られる。ただし,〃ほ点Cが直線AB上を動くにつれて変化する実数で, 直線上の任意の点の位置ベクトルgほαの値を適当紅選ぶこと紅よって(3)式で与 えられる。したがって,とくに2点A,Bを結ぶ線分は 〈α.光+(1−α).γ10≦α≦1〉

r4)

と書かれる。

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LP分割原理の経営経済学的意義 ー♂∫− このよう把,凸多面体のなかの任意の点ほ(4)式から推察されるように・, ク各 みユ∬1一十鮎.ガ2+………… +転.ガ殉,0≦∂宜≦1,∑あ威=、1 宜ヲ1 という形にあらわされる。 あまりに初歩に遡るのもどうかと思われるが,私としては納得のいくまでと きはぐすというのが本稿の基本的態度であるので,もう少し(5)式について続け たい。 たとえば,〃=3のとき3点完,.γ,才力、ら生成される多面体のなかの任意の点画は つぎのようにあらわされる。まず,2点方,一γを結ぶ線分押上に点びを適当にとっ て点〟が2点g,少を結ぶ線う∋高上に.あるようにすることができるから,俸)式から 〝=αg+(1−α)が,0≦α≦1 が=み.方十(1−∂).γ,0≦∂≦1 よって, 祝==αg+(1−α)が =αZ十(1−α)〔∂.方+(1−∂).γ〕 =(1−α)あ一方+(1−α)(1−み).γ+αg ここで, (1−α)∂=れ(1−α)(1−∂)=α2, α=α3 とおけば 籍3図 凸多面体のなかの点のベクトル表示 仇・+・α2+αa=(1−α)∂十(1−α)(1−∂)+α=1 であり,また0≦α,み≦1であるから 0≦仇,〃2,釣≦1 したがって, 符=3の場合紅ほ 〝=軋方+α2.γ+α8g,0≦α1,α2,α3≦1,α十α2+α∂=1 となって−,(5)式が証明される。 以上によって,(2)式が成立する根拠が明らかとなった。 つまり,サブ・プログラム点の可儲領域内の任意の点はその端点の線型結合

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・−32− 香川大学経済学部 研究年報11 J.97J で表わされることが納得できた。そしてこのことほ,換言すれば,何らかの方 法でAL完た=∂んの非負基底解が得られると(通常は最も簡単なスラック・アクテ ィビティが選ばれる),これを(1,1)式に代入して−その条件が満足されるよ うに・,初期解の加重平均が(1,1)式の解を含むように決められるというこ とを意味する。したがって,加重平均した解の係数についてはここに新たに決 定しなければならぬ。かくして,われわれは次喧(1,1)式つまりマスダー・ プログラムについて考察することが必要になる。 (2)マスター・・プログラムの問題 サブ・プログラム烏の可能領域内の任意の点は,その端点の線型結合ゼ表 わされ,その式ほシステム(2)で示される。いま,(2,1)式をレスキム(1)の (1,0)式および(1,1)式に代入して,まとめると,次のように.なる。 ノー gi・ 和一ど∑(c兎.紬)九日=0 ぉご1i=1 p g克 ユ’ヱ’(A虎‰)入た£=㌃ た=官官=l g人・ ヱ九鋸=1(ゐ=1,,♪) 官=1 (6,0) (6,1) (6,2) 入鋸≧0(よ■=1,…,釣;烏=1,川,♪)(6,3) ここで♪は,サブ」プログラムの組数(システム(1)でほ2組)を表わすとするム 次に,システム(6)におい七,計算の便宜上簡約化のために 瓦鶴=J加,掴んl=Cたえ(∠=1,,gた;ゑ=1,少) とおくと, p gた .方0−g gC鬼ま九た乞=0 た=1£=1 J・g人 ∑之■J凡慮入ん乞=∂ た ̄1乞=1 (7,0) (7,1) 入た乞=1(々=1,・,♪) (7,2) 九鬼ま≧0(云=1,,釣;ゑ=1,,♪)(7,3)

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LP分割原理の経営経済学的意義 −−β3− が得られる。システム7、ほ変数九鬼£を未知数とする新しいLP問題になってお り,システム(1)に等価である。 システム(7)の解は上山つの基底許容解ではあっても最適解であるかどうかはま だ分らない。そこで次紅,われわれは判定基準の問題に進まなければならない。 (3)判定基準の問題 最適解であるかどうかの判断は云うまでもなく機会費用ないしShadowprice

の考え方紅よる。LP問題において機会費用ないしShadow priceを体現する

のはシンプレックス判定基準とシ∵/プレックス乗数である。したがってここで もこの両者を使うから,まずシ∵/プレックス乗数の求め方から考えよう。 システムけ)紅おいて,マスター・・プログラムの基底βに入っている目的関数 の係数から構成されるベクトルをPoと書くと,シンプレックス乗数方は, 方=Poβ ̄1 (8) で与えられる。この関係はバ/ンプレックス乗数と基底の逆との関係であり,β を別行研列の基底行列,房を目的関数の係数を含んだ椚十1行憫十1列の基底行 列,′仇を椚行研列の単位行列を表わすものとすれば,行列と逆行列の関係から 百(β)−1=Im+1 と雷けるから,この関係を分解して 1岳汀 二亙工至=

L

._ 0】β のように書くと,これから(釣 ̄1の第0行ベクトル料は 方=Poβ ̄1 と表わすことができる。ここに.,既に述べたよう紅Poほ月的関数の係数のうち 対応する変数が基底にはいっているものをその順序に並べた行ベクトルであ る。 このようにして1/ンプレックス乗数が求まると,これに.よって非基底ベクト ルを評価するのであるが,その考え方は次のようになる。 まず,システム(7)の基底解入が実行可能であるとすると,

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香川大学経済学部 研究年報11 J97ヱ 一∂lll⋮l β + ニ 、入 が成り苛つ。この入が最通解であるかどうかを調べるには,基底に属さない変 数入離紅対してそれに対応するシ∵/プレックス判定基準が非負かどうかを調べ ればよい。変数入た電の第0行の要素ほ L⊥竺 0 靂β−1 から, α07=符0α・グー、Cプ=勾−Cグ4) と書くことができるから,九鬼バこおいてはそのシンプレックス判定基準ほ ・も目 諸 ↑ 柏0⋮l︰・0 , /‘11︻.■L﹁ gた宜−Cた£=方 (9) のように.表わされ,この値が非負かどうかをみればよいこ.とになる。ただし, α品は目的関数である0行ノ番目の要素を表わし,gほ目的関数の値を表わす。 ところでさきにJた乞=鹿.ガ加であったから,(9)式はシステム(1)の表現によると, zた名−C如=(打点たま−Cた宜).方た乞 となる。そして,これの全体の最小値が非負ならば,最適解が得られたことに なる。したがって, / − ・/lヽ− − し タ〝多〝 α/1 紺.一(汀Al−Cl)れ=0,.芳1≧0 ぴ2−(方A2−C2).粁が=0,∬2≧0 ∽Z乃 紺2 4)ベクトル方。はもとの係数列紅乗ずると判定要素が得られるところから,レンプレック ス乗数と呼ばれる。

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−35− LP分割原理の経営経済学的意義 と表わすことができる。ここで注意しなければならないのほ,ここで得られた 解が負である場合に.は,それを新しい基底ベクトルに加えた(7)の解が・方0の値を 増加させることは明らかであり,こうして得られた(7)の新しい基底ベクトルを もとにして,そのシ∵/プレックス乗数を計算し直して,この新しいシンプレッ クス東数を使ってシステム(1功を再び解くということである。この手順は・方0の増 加の可能性がなくなるまで反復される。つまり,システム(1αの解は.そ・れが負で あるかぎり,システム(7)の新しくとり入れようとする非基底ベクトルでも‘あり, このことは,換言すれば,シンプレックス乗数で評価しようとする非基底ベク トルを必要の都度作り出していくことを意味する。この点はダンツイーク分割 原理の横杵をなすところであると思われる。けだし各サブ・プログラムの基底 許容解を最初からすべて求めておくことは,いかなる大型電子計算機をもって しても不可能であり,したがってマスター・・プログラムの基底にとり入れるぺ き非負基底ベクトルをその都度作り出していくというエ夫がなかったら,分割 法ほ成立しなかったと思われるからである。 それはさておき,(9)式が負になる場合について−しばらく考えたい。(9)式ほい わゆるシ∵/プレックス判定基準で,変数方ブの判定要素の関係ほ,既に触れたよ うに gグーぐプ=方α.グーCプ=α0タ (川 と表わすことができる。また,基底に.とり入れる変数弟のきめ方のル・−ルの一 つとして, ヨ臼監 αos=研去■形(α0メiα0ブ<0) タ がある。ただし,α雨ほ目的関数に対応する要素である。さて,(用と(1効から,汀 をPoに.対応する研0個の要素と,残りの♪個の要素に.分けて,前者をα(=的,…, 〝肌0),後者をぴ(=ぴ1,,ぴp)と書くと,(9)式ほ ぞた官−Cた乞=〝Jた豆+ぴた−C如 と表わすことができ,これの全体の最小値 ぞたsた−C加た=酢飯(〝Jた乞+ぴた−Cた慮) お £ 3日劃 が得られる。かくして,(13)式が非負なら最適解が得られることになり,負ならサ ブ・プログラムゑの第翫基底解に対する入たぎ克が基底にとり入れられることになる。

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香川大学経済学部 研究年報11 −36− J97J ところで,(1謝式は次のノように書き直せる。 豹朝一CたSゐ=∽査乃(〝J舶十勒−C加) 烏,オ =研玩∴ 〈印加(〝ん宜−Cゎ官)+勒) 烏=1,…,♪ ダ=1,…,gた =沼加(批一肌α∬(C如一郎Jた官)〉 ゐ=1,…,♪ ∠ト=1,…・,gた そこで,各サブ・プログラムどとに. Cゐざた−〟J如ゐ=研α・方(cた官・−〝g加)=雛α・㌘(C鬼−〝鹿)耳如 も を求め,つぎに Z如た−Cた沌=∽α.ガ(がた−(c加た一扉摘)〉 ㈹ a‖監 を求めればよいこ.とになる。14(式)の右辺の∽α∬(cた一〟Aた).方舶を求めるという のは,第ゑサブ・プログラムの目的関数を修正して

(Cた−〝Aた).方元一一寸研α.方

Aた.ガた=鮎 方克≧0 (摘( としてシステム仕切を解くことにはかならない。したがって,この計算偲目的関 数の変更であるから,感度分析の手法を援用して求めることもできる。すなわ ら,非基底変数みのシンプレックス判定基準は最適解が得られているのである から, gクーCプ≧0 である。CグにdCグの変化があってなお最適解が最適であるための条件は (gブ十dgプ)−(cグ+dCタ)≧0 である。この式の第1項は.α慮ブで方拡ついて解いた結果の∂ブの係数を表わすと m g+∠g=∑α官グ(汀乞+∠方乞) 官コ1 肋 =∫α宜パα1官(cl+dの)+α鋸(ぐ2十∠c2)+・…‥… 電圧1 ・…+αm乞(cm+∠cm))

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LP分割原理の経営経済学的意義 ーβ7一山 9γL =g(cゐ・十dc克)(∑αりαたぜ) たヱ1 したがって JJJ JIJ ∑(cた+加た)(∑α豆グα舶)−(cブ+』cプ) た詠1 iロ1 汀乙7ル ナ花m =∑cた(見物αた豆)−C7十方』cたgα豆グαた乞一加プ≧0 お∬1名=1 た:=1官三1 前の2項は既に算出されているから,これをC/′とすれば 耽〝と どdC虎g勒αた乞TC′グー∠cプ≧0.ブ=∽+1,…,兜 た=1 名声1 脚 (川式がすべての非基底変数について成り立つとき最適解に・変化ほないから,目 的関数め増加分』gは 仇 」g=ヱ’ガfJ(−∼・ 乞ヨl となる。(17)式の条件を鱒る変数があれば,その変数を基底変数とすることに・よ って利益は増大することを知る。これは旧最適解を利用して直ちに基底の変更 がなされる。 われわれは、以上において,ダンツイークらの分割原理を,サブ・プログラム, マスター・プログラム,判定基準の三つに分けて,それぞれに関連する数学的 考察をやこない,彼らの分割法を理解することに虜めてきた○そこに・おける手 法を要約してみると次のよう紅なる。 (1)適当な方法で,マスター・プログラム〔システム(2)〕の実行可能基底βを 求める。これはサブ・プログラムの任意の初期基底許容解の加重平均として, 元問題に対する新しい変数を導入した新しいシステムを解くことを意味する。 すなわち,それぞれのサブ・プログラムAた.方た=∂た,∬鬼≧∂たの初期基底許容鰍先・之を シ∵ノブレックス法で求めてから,次のLPシ′ステムを解く。

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香川大学経済学部 研究年報11 桝Z花 王〟 い(、l●..‥. イI J、 い ∑(包1.方去)入た±録mem=み たユ1 ヽ、・ ご1 m ∑占た_αド=0 たニ1 入た,ど ≧0 ーーー3β−− J97J (18J ただし,〝乞は∠番目の要素が1で他ほ全部0の単位ベクトル,ノ占mは人為変数をあ らわす。 (2)βに.対応するシ∵ノブレックス乗数オを求める。そして,方を各サブ・プロ グラムに.渡す。 (3)サブ・プログラム烏(ゐ=1,,♪)で,マスター・から受取った方に.よって 目的関数を修正し,システム(16)を解き,その解を使って力舟.取締=んざ々,Cゐ駄々=C加々 を計算してマスターに返す。 (4)マスターは各サブから返されたJ掴,C虎Sんを使って,Z虎Sた−CたSたを求める (式㈹)。最小値が負の場合は㍑/ンプレックス法のルールにしたがって基底か ら追い出すべクトルと基底に.とり入れるベクトルを決め,(2)以下をくり返す。 このような手順に.よって−,終局的にダンツイ−クらの目指したところのもの ほ,大きなLPシステムをいくつかの小さなLPシステムに分け,相互庭情報 を交換することをくり返すことによって,計算機の所要能力を低い値におさえ ることにあったと云える。そしてこのことほ同時に,相互にへだたるかに㌧見え る分権的決定の分野にも,同じ数学的形式が役立つということを彼らは示唆し たのであり,われわれも次に.この問題について一考察しなければならない。 Ⅰ王Ⅰ ダンツイークらの分割療理が経営経済学的に意味するところほ多大であると 思われるのであるが,われわれとしてはこれが次の3点において顕著であると の 符号土は,e上がプラスになるようにイ⊥・Jれか一つを選ぶ。

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LP分割虎理の経営経済学的意義 ・一Jクーー 思われるので,これらの点について順次考察しようと思う。ただし(3)の基準価 格とシ∵ンプレックス乗数については既に.論述したのでここでは割愛する。8) (1)全体討画と部分討画との関係 (2)収益拒否率と利潤標潤との関係 (3)基準価格とシ∵/プレックス乗数との関係 (1)全体計画と部分計画との関係 われわれは以上常.おいてダンツイークらのLP分割の考え方について:数学的に 紹介を試み,かくてその考え方がン∵/プレックス乗数つまり振替価格に.よって 分権的意思決定を最適なコースに沿わせるものであるこ.とを知った。つまり, 各事濃部の計画をあつめてそれぞれの共通資源制約をあわせて新しいLP問題 をつくり,そのシンプレックス乗数を求めて,これに.よって各事業部計画を修 正していくというのであった。思うに,かかる分割の原理は同時にまた袈を返 せば総合の原理でもあることにわれわれほ注目したい。すなわち,経営計画は 種々の視点からいろいろに分類し得るのであるが,その一つの仕方として部分 計画と全体ないし給合計画の分け方がある。部分計画ほ全体との関連において 部分的目的を達成するための計画であり,全体計画は相互依存的な部分計画を 総合化したものである。部分計画の最適点ほともすると部分的目的に.目を奪わ れて,企業全体の最適とならないことが旺々にしてあり,従来から論議を呼ん だところであった。ダソツイー・クらの分割原理はかかる部分計画の総合化に.対 して,部分的最適と全体的最適を調整する方法の−−一ノ一つのバターンを示したもの としてわれわれは評価したいのである。 われわれの考えるところ紅よると,分割原理の考え方はベルマンの動的計画 法における逐次法、(sequentialprocedure)の試行錯誤のプロセスと共通する ものである。7)すなわち,逐次法はまず問題の小部分から出発してこの小分割 6)拙稿「基準価格とリンプレックス乗数」『香川大学経済論叢』第44巻第1号(1971年4 月) 7)R。Bellman,Dynamic Programming,(1957),Pp.81−89.

なお,ベルマンの用語では,最適性の原理(the principle of optimality)であり, 最初の状態,最初の決定がいかなるものであろうと,その後の決定ほ最初の決定の結果

招来された状態に閲し,最適となっていなければならない,というのである。逐次法は 過去の実験結果によって,将来の実験する点ないし位置をきめていく計界方法であって,

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香川大学経済学部 研究年報11 −Jり − J97.7 問題の最適解を求め,それから順々に問題を拡大していって,前の最適解から新 しい部分の最適解を求め,ついには問題全体の解を導き出すというエ合に.,部 分の最適解と全体の最適解との統合を図るための有力な分析要具なのである。 ダンツイー・クらの考え力ほ部分の実行可能解から出発するというちがいぼ.ある が,マスター・プログラムとサブ・プログラムとの間の情報の循環的交互作用 によって全体と部分の調和を図るという点では多分に共通するところがあると 思う。かくして総合的経営計画と部分的事業部討画とほ.情報通知の循環的試行 錯誤的交互作用のうちに.調和が達成され,このような情報の認定過程紅おける 試行錯誤のプロセスは部分計画の総合化への−・つのパターンを示すものであ り,ダソツイ−・クらのLP分割モデルは分権的決定におけるこのような計画総 合化のあり方を明らかに.していると考えられるのである。分割原理から総合化 のあり方をさぐるというのは些か逆説的めくが,既に明らかにしたように.,分 割原理の中心はシンプレックス乗数を求めるための新しいLPシ′ステム(6)の設 定に.あり,システム(6)は部分計画総合化の滞一段階にほかならないのである。 以上を要するに,分割原理ほこれを経営経済学的にみると,事業部の初期計 画を出発点とし,事業部と泉社との間で振替価格の通知と事業部計画の修正の 通報という循環的情報交換操作を通じて,ついには総合計画を得ることができ るという,部分計画の総合化紅おける試行錯誤のプロセスとしで理解できるの である。いや,ここで単に.試行錯誤のプロセスとのみ云うのでほ云い足りない かもしれない。何故なら,従来から計画の総合化とか調整化とか云われる場合 には試行錯誤方式以外には適当な方法がなかったからである。タンツイークら の示したのは抽象的に試行錯誤というのではなしに・,走塁分析にもとづく試行 錯誤,科学的に言†節約根拠の示された試行錯誤である点に意義を認めたいので ある。しかし,かくいえばとて,ここに示された全体計画ほ部分計画と同質の これを最適値探求に・適用すると,叔適性の原理となる。つまり,最適佐原理は逐次法の 一つの具体化と載ることができる。 また,逐次法と試行錯誕のプロセスは,厳密に云えば,同じではない。すなわち,前 者は情報をできるだけ集めて,情報収集の経済性・可能性から部分的決定より出発する が,後者はどのような手段をとったならばどのような目的を達するかについての情報を 欠く場合にとられる。しかし,ここでは同義として論をすすめる。河野豊弘『経営計画』, (1966),285ぺ一一汐参照。

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LP分割頗理の経営経済学的意義 ・一イノ・ 短期計画であることを見落しては.ならない。したがって,全体計画とは去って も全社的な長期総合計画とほ異なるものであることを注意されねばならないの である。すなわち,既に.明らかに.した如く,8)各事業部に.課せられる利潤標準 は.,事業部が管理可能な利潤であり,したがってそれは彼らが管理し得る費用 と収益に.より決定されるものである。彼らが管理し得る費用とは,事業部長の 権限段階において意思決定とともに変り得る費用,つまり管理可能費と考えら れるものであって,それは生産諸因子の結合様式の決定および生産忌の増減決 定とともに.変る,いわゆる変動費である。かくして事業部長は与えられた部門 利潤(=収益一変動費=純益+固定費)を達成するように.,変動費を可及的に 引下げるべく努力することによって,総利潤へ寄与することが求められるので ある。したがって−,(6,1)式で示される全社的制約式も各事業部と共通の 資源制約,つまり固定的変動費を内容とするに過ぎないのである。固定的変動 費とは矛盾する言葉であるが,その意味するところは,要するに機械設備の使 用料とか社内計算センターの使用費とか社内銀行からの借入金に対する利子と かの如く,全社的な共通資産を利用することによって発生する使用費であり, 源泉は固定費的でありながら利用する度数に比例して支出すればよいところの 変動費としての使用費ということである。しからば,事業部から管理不能費と して排除された固定費,意思決定の視点からいえば投資封画の問題はどうなる かと云うに,この問題に関してはLP分割原理ほLPの本質から当然のことで あるが何も語ってはいないのである。したがって,この辺にLP分割原理の経 営計画への適用に際しての限界があると思えるのであるが,ただ分割原理の考 え方はさらに次元を異に.する討画との関係についても重要な示唆を与えてくれ るのであり,次にわれわれはこの問題に関してど汐ネス・エコノミックスの内 容に.即して考察したい。したがって,以降はLP分割原理の拡大解釈である。 t2)収益拒否率と利潤標準との関係 われわれはこれまでダンツイ−・クらのLP分割原理の考え方を紹介し,つい でそれが経営計画においていかなる意義を有するかを考察してきた。まず,彼 らはサブ・プログラムの最適解ほ,ある端点で得られるが,マスダー・プログ 8)拙稿「不確実性構造と経ぎくの機能的階層関係」く2>,『層川大学経済論叢』貨42巻第 3号(1969年8月),6【7ぺ・−ジ。

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香川大学経済学部 研究年報11 ー42− J97」 ラムの制約があるから,全体としての最適解はサブ・プログラムの可能領域内 の任意の点になるとし,その点ほ端点の線型結合で表わされると考えた。しか し,マスター・・プログラムの存在ほこの線型結合の係数を未知数とするから, これを書きかえもことによって新しい変数(重みづけ変数)を未知数とする新 しいLPシ′ステムを構成し,そのシ∵/プレックス乗数を求めて,これによって サブ・プログラムを改訂するとし,これらの手順をくり返して,サブ・プログ ラムの改訂が利潤を増加しなくなる迄続けると最適解が得られるものと考え た。かくて分割原理による手続きほサブ。プログラムの総合に.よる新しいLP システムの設定と,それから求められるシンプレックス乗数の機能を中心とす るものであることが明らかとなる。そこでサブ。プログラムの総合について は,・それを部分計画の調整による全体計画の構成という視点からとらえて,部 分計画の総合化の一つのパタL−ンとして試行錯誤のプロゼスを主張するものと して評価したのである。かくしてここ匿.至れば,われわれの次に考察すべき問 題はシンプレックス乗数の機能ということに.なる。 これまで度々触れたように,分権管理の制度を効果的たらしめるためにほイ可 よりも資源の社内移転価格である振替価格を科学的客観的に把挺することが必 要となる。け−だし振替価格ほ.ダンツイークらの分割原理に㌧見られるとおりに, 本社が分権化された事実部を全社的観点から統制する機能を有するものであ り,その客観的把握の成否ほ事業部制運営の死活の鍵となると思えるからであ る。ついでながら,これらの点紅関して古瀬教疲ほ,「分梅管理は個々の決定 者と,その決定をむすびつける自由市場的機構,その市場に.よって−自動的に決 まる価格,といったものがその内容であり,そこ.では,個々の分権的決定者が 主権者であり,彼らに直接命令を下すような上級支配者は全く存在しなかっ た。しかし,ダンツイークの分解原理に.もとづく分権的決定機構に.おいてほ, 本社がいぜんとして重要な役割をもち,その最終的決定権を留保している。」9) と述べられ,教授の「何らの上級支配機構なしに,全く分権的に解く方法がな いものだろうか』10)という問題提起紅なり,それがResourcesMarket Method の展開に.なられたのであるが,この点に関してはわれわれほ.教授の意見に.賛成 9)古瀬大六,前掲論文,268ぺ・−ジ。 10)同上,269ぺ−ジ。

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LP分割原理の経営経済学的意義 ・・JJ・ できないのである。すなわち,古瀬教授のご意見は分権を国民経済的視点に.た って考えられていγるようであるから,個々の分権的決定者が主権者であり,彼 らに直接命令を下サような上級支配者ほ.存在しなかった,と主張されるが,ダ ンツイークらはその序でも述べているように「この原理ほ企業理論の基礎理論 を充実させるであろう」11)というこ.とであって,企業の分梅管理を問題として いるのである。企業の分権管理紅おいてほ,個々の分権的決定者が主権者であ って,彼らに.直接命令を下す上級支配者が存在しないような分梅ほ,これほ分 権でほなくて分散である。分権というからにほ裏には必ず事務ないし情報の集 中があるのであって,組織的分権と事務的集中ほ楯の両面なのである。したが って,権限を事業部に委譲すればするはど,本社の集中管理機能は強化されな くて:はならないのである。そしてこの集中管理ほ事務や情報のそれであって, この場合も,本社では振替価格ないし計算価格の操作を通じて,事業部の行動 を全社的に.統制するのであり,・そ・の間の経緯をダンツイークらほ明らか紅示 しているのである。したがっで,古瀬教授の指摘にほ企業の分権制度に関する かぎり賛成できないと云わざるを得ないのである。われわれの問題点ほむしろ ダンツイー・クらの考える共通資源の管理の問題紅あるのである。 とも角,このように本社に・おける計辞的集中隠事業部制に必然であり,本社 で計算された振替価格,この場合は.シンプレックス乗数,を事業部に通知し, 事業部長は.このシ∵/プレックス乗数を指針として生産計画を樹立するから,ま さ陀」/ンプレックス乗数は事業部制運営の横杵となるのである。われわれほこ のようなバ/ンプレックス乗数の機能に着目して,事業部から管理不能費として 排除された固定費(意思決定の視点からは投資計画)の扱いについて考察し, 事業部計画一・・・一全体計画…Ⅳ 投資計画の関係を検討したいと思う。 さきに,われわれの考察した部分計画と全体計画の関係ほ部分計画の総合化 として同質の計画間の問題であった。しかし,投資討画の問題ほかかる部分計 画と全体計画とは異なる要因を多分にもって−いる。すなわち,事業部から管理 不能費として排除された固定費は,事業部の上級支配者つまり全般管理者ない し最高経営者紅担われざるを得なくなり・,固定費はここにおいて管理可能費と なり,最高経営者の意思決定とともに変る費用となる。最高経営者のかかる意

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香川大学経済学部 研究年報11 J97.7 一寸▲ノー 思決定ほ資本支出の計画と統制に.よっでおこなわれ,経営体全体の基礎構造を 決定する。け・だし,最高経営者が管理する固定的生産要素は事業部長が自由裁 還:のできる変動的生産要素の組合せを技術法則的に規制するものであるからで ある。かくして事業部計画とその全体計画のLPシ′ステムにおける制約式なら びに目的関数の係数や定数項ほ,この投資計画に・よって決定されることに・な る。このような機械装置や施設に関する投資計画は.事業部計画やその総合化さ れた全体計画とほ異なり,企業のあらゆる局面と不確定性を考慮したものでな ければならず,主として大型シミ.ユレー・ジョンモデルに.よぅて考察さる、ぺき ものである。すなわち,部分計画の総合化としの全体計画への原理は逐次法で あったが,設備投資計画設定の原理ほ.同時法(simultaneousprocedure)であ り,切捨法(cut−Off method)が中心となる。12)っまり,設備投資計画では部 分計画の全体計画のような総合さるべき部分計画を持たないから,部分計画の 調整に.よる試行錯誤のプロセスという段階をもつことができない。したがっ て,当初から考慮さるぺきあらゆるデータを整備して,そのデー.タだけが利用 され,途中で得られる情報ほ利用できない。しかも,企業の多くの局面を有機 的に関連せしめて一計画紅組昂込むから,目的が多数あってベクトルの形をなし ているため数学的に極値化ができず,多目標指標に.よる切拾原理が援用され る。 このように設備投資討画と全体計画とでは本質的に異なる性格を有するので あるが,同じ企業の計画である以上,それらがバラバラであってよい嘗ほな い。われわれがダンツイ−・クらの分割原理を考察していて思い当ったのほ,こ れらの計画を結ぶ靭帯として;/ンプレックス乗数が考えられないか,というこ とである。以下,この点について考察する。 既に述べたように,設備投資討画では同時法と切捨原理が中心となる。同時 法に.関しては.後に.触れるとして,さきに切捨原理に.ついて換討する。切捨原理 は多目標指標の存在のため極値化ができず,ある−・定の標準値をあらかじめき めておーいて,それ以下の結果をもたらす計画案を排除するという考え方であ る。この多目標指標ということがすでに周時法における対境的関数や意思的閲 12)清水龍璧『経営計画設定理論』(1966),51−54ぺ−ジ,224ぺ・一汐 ,255ぺ−ジ。 JoelDean,ManagerialEconomics,(1951),pp.586−598

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LP分割原理の経営経済学的意義 −4∂ − 数と密接な関係を有サーるのであるが,それは暫らく措くとして,多計標指標ほ 例えば経営者のいわゆる社会的責任が前面に打ち出さざるを得なくなったと き,あるいは,経営者支配を強固にするために負債を極力回避して高い流動性 を選択しようとするときなど,もろもろの対填関連を考慮するとき生ずるもの である。したがって,切捨てを定める標準値もいかなる目標を取り入れるか紅 よって変動することに.なるが,いやしくも,標準値である以上,理論的紅は何 らかの値に収束するこ.とが考えられ,この理論的収束点が資本配分過程におけ る資本需要曲線と資本供給曲線との交点に成立する収益拒否率である。 かぐて,収益拒否率ほ投資計画を評価する基準として,資本配分を指導する 機能を有することになるが,われわれの見逃してならないと.とほ,収益拒否率 がどの水準となる所まで投資をおこない得るかということを示すことによっ て−,計画される利益の決定者ともなることである。つまり,収益拒否率はもっ とも直接的にほひろく資本予弊制度の管理者として機能するものであるが,そ れはまた利潤標準の決定者ともなるのである。かくして,収益拒否率は−・種の 基準価格の性格をもち,こ.れを各事業部門に.分解して各事業部長に・賦課するこ と紅なり,事尭部の利潤標準と結合されることになる。われわれほこの収益拒 否率と利潤標準の−・致を保証する機能を,ダンツイ−クらの分割原理のレンプ レックス乗数のうちに見出し,設備投資計画と全体討画との結びつき,ひいて は経営機能とマネ汐メソトとの接合を主張したいのである。 ダソツイー・クらの分割原理でほ,古瀬教授の指摘される如く,本社が重要な 役割をもち,その最終的決定権を留保しているのであるが,それらほ具体的に は,シンプレックス乗数の計穿とそれによる新しい基底ベクトルの評価紅はか

ならない。すなわち,事務の集中と計画案採択の決定権の確保である。本社は

これらの機能を留保した上で,その都度シンプレックス乗数を事業部に通知す るという操作を通じて,事業部の行動を全社.的統制の枠内に.規制するのであ る。したがって,設備投資封画の影響もこれをシンプレックス乗数に反映せし めることによって,設備投資計画と全体計画さらには事業部計画との間の連繋 性が確保できるはずである。ここ紅,設備投資計画の影響をシ∵ノブレックス乗 数に反映するとは,投資計画と前述の固定的変動費の性格から,本社管理の共 通資源に・関する制約式の係数項と定数項,ならび紅目的関数の係数項を,設備

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香川大学経済学部 研究年報11 ・−46− J97.Z 投資討画における大型シミュレーションモデルの結果に対応せしめて変更する こ.と.である。けだし,分割法のマスタ−・プログラムはシステム(6)に見るよう に,サブ・プログラムの端点ベクトルの線型結合を含んでおり,かつ,も/テ ム(6)の実行可能基底に対応するシンプレックス乗数ほ,この基底の逆とこの基 底に入っている目的関数の行ベクトルとから求められるから,この実行可能基 底を規制するシステム(6)の係数を変更することは,連鎖的にJ/ンプレックス乗 数ならびにサブ・プログラムを改訂することに.なるからである。 かくして−,収益拒否率→利潤標準→振替価格を結ぶ縦の糸を基軸として,設 備投資計画→全体計画→事業部計画の血貫性を保証する機能をづ/ンプレックス 乗数紅見ることができるのであり,われわれはこれ凌ダンツイークらの分割原 理のマスタ−・プログラムとサブ・プログラムとの関係の拡大解釈として考察 したのである。けだし,経営計画ほそれ自体一つの体系を構成し,すべての封 画は相互に有機的に.関係をもつ金一・体として考えるぺきだと思われるからであ る。 以上述べたところは,設備投資計画庭.おける切捨原理に関する考察であった が,次にわれわれほそれに伴うもう−・つの原理である同時法について考察しな ければならない。けだし,同時法に.関する考察は七れわれがダンツイークらの 分割原理を考察して学び得た最後の主張点である経営機能とマネジメントとの 接合の視点についてさらに明らかにするであろうと思われるからである。 同時法は逐次法と異なり,実験をする点ないし位置が実験結果を知る前にす べて分っている計算手法,換言すれば,計画設定プロセスのはじめに.得られる 情報だけが利用され,途中で得られる情報ほ利用できない計算手法を云う。し たがって,討画のほじめにあたっですべての要素がモデルのなかに組み込まれ るこ・とになる。ここにすべての要素とは設備投資計画の影響するあるいは影響 される,例えば,対境的関数関係ならび紅意思的関数関係などである。対墳的 関数関係とほ,政府,地域社会,金融集団,株主,労働組合,消費者集団など 経営計画実行に・対して制約ないし拘束を与えるものである。つまり,エ場建設 に対する公害に・よる地域住民のための公害防除装置の設置などを見ればこれら の関係は明らかであろう。意思的関数関係とほ,過去に繰り返しがなかったた め,関数関係を大数的ないし工学的に・推定することが困難である場合,経営者

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LP分割原理の経営経済学的意義 ・一々7・− の希望ないし欲求水準が計画の申に織り込まれるものう云う。いずれに・しろ, これらの関数関係は主観的判断が・その中核となっている。われわれほこれらの 意思決定を経営機能と呼んでマネジメントとほ区別している。この区別ほ経営 計画設定に.関して重要であるので,若干附諭しよう。 経営機能は組織化機能,最高人事機能ならびに最高決定機能を意味するが, すでに生成した経営体の活動または生活に.関するもののみに.限定すれば,設立 における組織化と最高人事ほ除外し,日常の活動についてほ最高決定機能が・そ の中心機能となる。決定機能は単に経営体のトップのみに.存する機能でほな く,経営構成員のすべてに存するとも云えるが,経営体の機能汚勒は金一・的に 統御された最高決定紅塞き,この実現のために営まれる。かかる意味で,ここ に云う決定激能とは最高決定機能を意味する。最高決定機能は経営体の内的最 高政策と外的最高政策に分けて考え.ることができるが,前者はさらに自らの立 場で決定し合理化してこれをル−サン化し得るものと,過去に経験がなく繰り 返しが少ないためルーチン化し得ないものとに分けられる。18)前者は管理層に 委譲せられて−いわゆるマネ汐メソトの対象となり,後者は自然に・対する情勢判 断が多少なりとも経営者の希望ないし欲求の織り込まれることが多く,葺観的 判断ないし主観確率の作用する局面が多くなってくる。かくして,このような 意思決定を意思的関数による決定と呼ぶことにする。こ.のような意思的関数に ょる決定は,さらに経営をとりまく種々の利害者集団への配慮によって規制さ

れる。この決定ほいぉば対墳関係紅対する調整的決定であり,経営体の各種の

機能を包摂する。われわれほかかる決定を対墳的関数による決定と呼ぶ。かく て,経常機能とほすぐれて意思的対境的関数による決定となり,主として大型 ジミュルL−ジョンモデルに練馬込まれる関数関係を意味することになる。14)以 上によって,経営機能ほ執行的計画の設定と・そのフィ」−ドパックによる監査を 主要機能とするいわゆるマネジメントとほ本質的に異なるものであり,したが ってそれぞれの分析原理も文具なることほ既紅明らか紅したとこ.ろであるが, 前述のシ∵/プレックス乗数による連繋性の連繋とほ経営学的紅みれば実は経営 13)山城章『−経常政鼠』(1957),179−187ぺ−・汐。 14)このような経営機能のシミュレーションとレてわれわれは既にノ、一・ツのモデルを考 察した。拙稿「不確実性構造と経営の機能的階層関係」<2>,『香川大学経済論叢』 算42巻発3号(1969年8月),17−20ぺ−汐参照。

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香川大学経済学部 研究年報11 ーJg− ヱ9アJ 機能とマネジメントとを接合する機能であることが明らかとなったと思う。 かくの如く,経常機能にかける大型ジミュレ、岬ジョンモデルほ同時法原理に よって意思的関数関係ならびに対墳的関数関係を当初よりモデル紅含み,その 定性判断は切拾原理の収益拒否率に反映する。また,ジミュレ■−ジョンに対応 して全体計画庭.おけるLPモデルの係数項ならびに定数項は変更させられ,そ れほ.シ∵/プレックス乗数に反映する。かくして,収益拒否率一利潤標準一振替 価格の三位一体性ほ経営討画の階層的統合を保証し,経営計画の−・体性を保持 すること.になるのである。これらのことは全体的に見れば,定性分析と定患分 析の交互作用紅よる試行錯誤のプロセス,つまり意思的対墳的関数の設定とそ のシミュレーションモデルへの組み込み,ならび紅その結果のLP分析との交 互作用によって成立するのである。 ⅠⅤ 以上において,われわれほダンツイークらのLP分割原理を媒介とすること によって,事業部計画の総合化七して−の全体計画の問題から,さらに必然的に 展開されるところの設備投資計画の問題を,・それらの統合性という視点から考 察してきた。そ・こにおいてほ,シンプレックス乗数が一つの基準価格として決 定的に.重要な役割を果すことほ以上みてきたとおりである。そしてこのシ∵ンプ レックス乗数を軸としてわれわれは経営棟髄と管理機能の計数的接合の可能性 を論じたのである。しかし,そこには.なお究明さるべき問題が残されている。 それほ経営機能のシミ.ユレ、−ジョンモデルと管理機能の事業部LPモデルを実 際に計算してみて,ミ/ンプレックス乗数による接合を試み7気づかなかった誤 りを訂正するとともに検証していくことである。今後におけるわれわれの課題 もこの線に沿うて一・つ山つ問題を解明していくことにある。 以上によってダンツイークらのLP分割原理の概観とそれが経営計画に適用 された場合の意義についてビジネス・エコノミックスの体系に即して一考察した のであるが,彼らの原理が係数行列が特殊な構造をしている場合や制約式ある いほ変数が多数になる問題を逐次法によって変数を減少するためのエ夫を中心 にしつつも,これを分権的決定と対比せしめることによって問題を技法と経済 的適用の総合において取扱っているのであって,われわれの経営計画問題の考

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LP分割原理の経営経済学的意義 ー・49− 察に稗益するところ多大であったと云わねばならず,ここに彼らの功績が見ら れるわけである。 われわれほ経常というものを考えるにあたって,経営ほ生産低能を果す機能 的組織体という見地にたち,かかる機能ほ生産を統一的有機的に果すために,

経常(administration)一魯理(management)一作業(operation)の三者の

包摂的階層関係をなすと考え.る。そしてかかる包摂的階層にしたがって内容的 にビジネス・、エコノミックスを展開し,それが事業部管理と全般管理さらに贋 本支出の計画と統制を担う経営機能紅分たれると思い,そこにダンツイークら の分割原理の適用を考察したのである。従来から,ビジネス・・エコノミ.ックス に関する文献ほ多いが,すべてその考察方法は経営の職能別に例えば財務一生 産一販売といった平面的な接近方法ばかりである。1さ)これら紅対しわれわれは 職能的にでほなく機能的に垂直的な縦割りの方法で考察すべく,ここにダンツ イークらのLP分割原理を媒介として−,ビ汐ネス・エ?ノミックスの機能的展 開を図り,経営機能と管理機能の接合を論証する試みとしたのである。 15)機能と職能の区別に関しては,拙稿,前掲論文「不確実性構造と経営の機能的階層 関係」<2>,3−4ぺ一−ジ参照。

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