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線型計画法の経営経済学的展開-香川大学学術情報リポジトリ

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線型計画法の経営経済学的展開

井 上 勝 人 Ⅰ 序ⅠⅠ企業理論の吟味ⅠⅠⅠビジネス・.エコノミックスの発展 ⅠⅤ 線型計画法の基礎 Ⅴ ビジネス・エコノミックスと線型計画法 ⅤⅠ結 I 「経営に.関するオぺレーションズ・リサーチ(すなわちビジネス問題への数 学的方法の応用),意思決定理論,および企業の経済分析(計量経済学を含む) は実際ほ同山のものである。これら三つの例における分析の手続は四つの部分 から構成されている。(1)追求さるぺき代替可能な目標を配列する。(2)採用さる べき仮設を定義づける。(3)最適目標を選定した場合の純利益と不利益を決定 し,均衡させる。(4)企業の内外の制度的要因で特定の選択を非実際的ならしめ たり,またはそうでなくてもまずいものとするかもしれぬものを認識すること によって−選択を修正し,その結果最終的選択が企業の全般的な目的に適合する ようにさせる。」1)こ.れはスぺンサーとi/−ゲルマンが彼らの著書Managerial Economicsの中で述べたところであるが,われわれは彼らがこれらの用語を同 一・のものと規定したことについて,内容的にいかに同一・なのかを究明し,それ によってORの経営経済学的思想的意義を明らかにし,経営経済学がOR諸技 術を吸収する基礎たらしめたいと思う。殊に.,これらの用語がいろいろな意味 で使われ,そこに.混乱が生じているこ.とを思えば,これらの用語の関係を考察 することが必要である。而うしてスぺンサL−らの書名であるmanagericaleco nomicsないしbusinesseconomicsなる研究領域そのものが「経営紅おける意 思決定に応用された経済分析」と規定されるとき,2)その混乱は益々助長され 1)Spencer,M.・H.,and LりSiegelman,ManagerialEconomics,1959,p.226. 佐竹義昌,永澤越郎,渡辺修共訳,経営経済学入門(上),342−343頁。

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香川大学経済学部 研究年報 8 −Jヱ4− J96β ると思われるので,内容的具体的に.スぺンサ−らの同一・と主張する根拠を尋ね て−みたい。これらの用語が混乱しているのは種々な理由があるであろうが,そ の一ほこれらの研究の発展が時間的紅ほ極く最近のものであり,しかもその対 象が何れも経済的問題の鼻的規定ないし選択の問題に.関係するとこ.ろにJ求めら れるように思われる。元来,経済問題ほ比喩的に.言えば,すべて制限付き極大 化問題としての性格をもつのであり,3)究極に.於て経済問題の選択を内容とす るこれらの用語が,すべて同一・と見倣されるのは理由のあるところと言わねば ならぬ。しかしながら,内容が同じであるなら同じ用語ですみそうなものを, わざわざ叙上の如く区別して用いられるのは,そこに.何らかの差異が存する筈 であり,差異が存するとすれば,その差異を明らか紅すること紅よって,これ らの用語の概念が明確になり,やがてはそれぞれの領域が経営活動の体系にお いて如何なる地位を占め,また如何なる性質,如何なる内容をもつぺきかを明 らかならしめることを意味している。ここ紅於て,われわれはと.れらの用語の 概念を明確ならしめる一つの試みとして,ビジネス・・エコノミックスとORの 関係,就中ORの諸手法のなかで最もよく開発されていると言われる線型計画 法との関係紅ついて考察し,進んでほ関連的にこれらの諸概念を明らかに.しよ うと思う。けだし,線型計画法とどジネス・エコノミックスの関係を考察する ことほ,後述するように.,企業の経済分析,意思決定論などの関説が不可避で あり,したがって線型計画法とど汐ネス・エコノミックスの関係を中心として 考察すること紅よ.り,スぺンサ−らが指摘したところの用語をCOVer■し,こ.れ らの明確化に資するこ.とができると考えられるからである。 さて,線型計画法とビジネス・エコノミックスの関係を規定せんとする試み 紅ほ,ビジネス・エコノミックスの側面から或は線型計画法の問題からといろ いろな角度から考察することが可能であるが,われわれはこれを両者を連結す る媒介項として経済学に.おける企業理論(the theory of the firm)の考察か ら出発するのが適当であると考える。けだし問題の本質を把握するにはその発 生の基盤に潮って問題自覚的紅究明することが必要であり,而してビジネス・ エコノミックスほもとより,経営における線型計画法の発展もこれを経済学的

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線型計画法の経営経済学的展開 −エ紀トー な展開にその基底を求めることができるからである。4)そこで,われわれはど 汐ネス・エコノミックスと線型計画法の関係を考察する紅当って,まず企業理 論に.ついて検討しようと思うのであるが,それに先立ってど汐ネス・エコノミ ックスと企業理論,線型計画法と企業理論の関係を歴史的に概観し、以て企業 理論から考察することの根拠を山応明らかにしよう。 さて−,ビジネス・,エコノミックスと企業理論の関係ほ比較的自明のこ.とのよ うに見える。すなわちビジネス・エコノミックスとは読んで字の如く経営に.関 する経済学であり,経済学の企業理論と何等の差異はないものの如くである。 しかし,対象はおなじであるにせよ,両者の観点の差異ほ,後述するように, 甚だ重要である。企業理論の研究は既にマ−・ジャルをほじめとする新古典派経 済学の業績に.おいて,5)近くほヒックスの企業均衡の条件の解明6)などに・おい てゆるぎない形に.おいて−確立されているのであるが,それに.も拘らず,経済学 の企業理論とほ別に,ビジネス・エコノミックスの研究が,主として第二次大 戦後国際的なひろがりをもって展開されるに至ったのほ,7)如何なる理由紅よ 4)線型計画法はそれ自体としてみれば,一つの数学的手法であって−,線型不等式の制限 条件の下で線型関数の最大値(又は最小値)を与える方法である。したがってそれほ如 何なる問題にも,非経済的問題(例えば軍事問題)にも適用されるのはもちろんである が,本来的性格としてほ,代替的方法に.おける選択そのものが経済問題としての性格を 有するという意味でかく云うのである。 5)例えば,MalSha11,A、H{ZltdbLICh d([l,0[ksEL・jrts(Jzaffs!(hr(.(L〃.0,l:’Buch, insbesondere Kapite15und9。 6)Hicks,Jn,R.,yαJ〟¢α〝♂Cα♪よfαJ・の富力叩衰タ■.γ鋤由フ蝕糟柁f加外出〆βざク/■β以偶の矧c rゐβ〃γ.γ,Ch.6・ 7)われわれは今迄ピ汐ネス。エコノミック.スを主として琴二次大戦後アメリカにおいて 開花した研究と考えてきたが,正確にはこれは正しくない。同じような研究がイギリス やドイツにおいておこなわれた。したがってど汐ネス・エコノミックスはひとりアメリ カのみならず国際的な研究課題として新しい性格の経営学(経済学)として把握される ぺきである。何が新しいかは本稿全体で究明されるであろう。

Ashley,W。J。,Business Economics,1926.Florence,P.S.,The Logic qf Zndustri’a10rganiiation,1933.,Robinson,E.A.G.,The Structure qf.ComPe− わわぴβJ形dα.Sfγ・.γ,1931.(以上イギリス)

Gutenberg,E..,Die BetYiebswiY・ischqftslehre,Bd.1Die PY・Odukiion,ⅠIAufl. 55。かβγA∂∫αfg,1955..Roman,M.,戯〝ノ■払わ■〝〝g≠〝離βββわ′オβみざ紺ま7・fβぐカ年/ねJβカγ♂,

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ヱ96β 香川大学経済学部 研究年報 8 ーヱJ6− るのであろうか。表面的に見れば,企業理論の単なる延長としてビジネス・エ コノミックスを経常に.関する経済学として片付けるのほ至極簡単である。しか しそれだけでほ,上述した第二次大戦後の斯学の国際的ひろがり紅対する答辞 紅はならない。 あらためて言うまでもなく,経常研究の基盤はかの産業革命を経て次第に成 .立し急速紅発展せる近代的大規模企業の出現に求められるが,経営の経済学的 研究も亦,かかる傾向と軌を共に.して展開され発展してきたといい得るであろ う。すなわち,経済学虹おける企業理論として∴マ−ジャル,ロビンソン,チェ ンバリンなどによって考察された市場の客体的均衡の成立のための企業の主体 的均衡条件の解明は,企業規模拡大と共に次第に現実の企業行動紅,より密着 した形でひきつがれることとなる。よく知られているように,ロビンソン,8) チェンバリン9)らにおいては不完全競争の前提に.おける企業行動モデルが考察 されたが,さらに.ビッグ・ビジネスとオリゴポリーの成立ほ管理価格制の形成を 招来し,こ.こにおいて巨大企業ほ自らの行動を律する経済的基準を欲するよう になったのである。而して二,かかる巨大企業ほそれ自体が利潤拡大機構である と同時軋,かかる経済準則に.立脚して景気循環の波動に.めげずに.価格を管理 し,景気安定装置でもあることを期待されるのである。かくて.企業理論を越え て実践的な経済準則が要求されるに至る。もとより,企業理論にねける完全競 争モデルないし不完全競争モデルが全く役に立たないなどと言うのではない。 企業理論において.は,後に.詳述するように.,企業の均衡条件の分析から生産物 ・生産要素のそれぞれ生産鼠・価格などを同時的に.決定するところの客観的法 則を考究するから,いついかなる時でも経営の立脚すべき客観的必然的関係を 与えるものである。しかし,かかる客観的法則が経営者の行動基準として機能 するためには,さらに・その経営者の目的設定紅応じて法則の妥当する範囲内に 於て修正され具体化されて行動原理とならねばならない。かくして,一・般的客 観的法則に立倒しつつ,かかる客体的法則の行為的把握としての原理は,経営 者の行動基準としてその日的遂行を可能ならしめるのである。10)企業理論とビ 8)Robinson,J.,Ⅴ…,r如㌧毘化明の如cざq/J∽♪¢γ/おcf C∽材扉紬∂紹,1933. 9)Chamberlinり,E.,The TheoY・.y qfMonopolisiirc Combeiition,1933い 10)山本安次郎,経営管理論,187真。

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線型計画法の経営経済学的展開 ーJJ7− ジネス・エコノミックスの関係ほ,かかる客観法則と行動原理との関係紅ひと しく,ビジネス・エコノミックスほまさに巨大企業の行動原理としての役割を になうものと言えるのである。ディーンはこ.れらの関係を次の言葉であらわし ている。すなわち,「経営計画の樹立に役立たしめるためには,経済理論ほ各 企業のそれぞれの経済的特性紅応じて拡大解釈されると共に.,その抽象概念を 数学的な推測に変換しなければならない。」11) ところで,経営の客体的法則に.関する行為的把経としての経営の原理は,企 業行動を体現するところの経営者の経営原理として,さらにほ経営者の決定権 限を委譲されたところの管理原理として機能する。したがって,ビジネス・エ コノミックスの役割は経営原理ないし管理原理として経営の意思決定に資する 実践的原理を与えるものと考えることができる。かくして,ビジネ.ス・エコノ ミックスは経営法則としての企業理論紅依拠しながら,実践的政策を数最的に. 与える応用科学と規定することができよう。かかるが故に.,われわれほ.ビ汐ネ ス・エコノミックスと線型計画法との関係を考察するに当って,ビジネス・.エ コノミ.ックスの理論的支柱である企業理論に湘って論究することが必要である と思うのである。 他方に.おいて,線型計画法ほ.制限付極大化問題に.ついての最適解の選択とい う課題からも一応明らかなように,その本性上すぐれて経済的問題としての性 格を有するのであり,しかも,それ自体,徽分による制限付極大化の解法紅代 って,企業理論の発展として意味づけられる起動動機を形成する。しかしドー プマンらも述べているように,「線型計画の実りゆたかな結実ほ,部分的にほ これほ.標準的な経済分析の多くが,線型計画であるという事実の結果にすぎな い」12〉とも言えるのであり,このことは,例えば,線型計画論の基本概念の山 つとされている生産方式ないし生産過程(production process)の概念13)の構成 11)Dean,.丁.,肋〝αgβ7■よαJ居cα削卵矧㍑・S,pl・164,田村市郎監訳,経営者のための経済学, 第2分冊,36−37ぺ−ジ。

12)Dorfman,R“,P A・・Samuelson and R.M“Solow,Linear Programming anp 茸粥明卯扇cA〝αJ.γ・S∠・ざ,FoIeWOId‖ 安井琢磨,福岡正夫,渡部経彦,小山昭雄共訳,線 型釘画と経済分析1,はしがき参照。

13)production pr’OCeSSは,OR研究者からは生産方式,ないし生産方法,経済学専攻者 からは生産過程と呼ばれているが,本稿では以降,生産方式と統一することにする。け・

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香川大学経済学部 研究年報 8 J96β −7ヱβ− に関係する生産要素の組合わせの可変性の問題が,線型計画法の開発される以 前に,14)コップ・ダグラス関数15)あるいはディ−ンの固定設備の分割と要素結 合可変の問題,16)またグーづトンベルクのA型生産関数とB塾生産関数の区別17) などとして考察され,規模に対する収益不変と加変性の問題18)が論議されてい たことを思えば,一応首肯されるところであろう。まこ.とに.,最近に.至るまで 経済学者ほそれと気付かずに.線型経済学を研究してきたのである。19) 以上の意味にて,われわれほ線型計画法とビジネス・エコノミックス紅つい て考察するに当り,両者の基底をなすと考えられる企業理論の研究を出発点と だし,生産過程なる語は線型計画と離れても,文字どおり生産過程として使用せられ, まぎらわしいばかりでなく,線型計画固有の用法としては生産方式の方が,そ・の意味す る内容から考えて明確であるからである。 14)線型計画法の考え方の崩芽ほ,更に湖ることができるが,−・応1949年紅Geoge B DantZigが下記の論文によって,その基本的定式化と解法を最初に確立した,Dantzig, G.B..,肋.祓扁■瑠路用q/αム乃♂α7・ダ〝兜ぐf孟■0〝げⅤαγ・よα∂JβSS〟∂.ブ♂Cf如 上査形♂〃タ・′〝β・ qualities,Headq11arterS,U・SいAirForce,November1949.そして:Koopmans,

T.C.,ed.,Aciivit.y Anal.ysis qf.Production and Allocaiion,Cowles Commission for Researchin Economics,MonogIaph No・13,Ch・21。,1951.やDorfman,R.,

4如蛸cα如〝q/エ之−〝βαγ’タ′8gγの椚戒邦gね〃iβTゐβ07\γげf如ダオブ−沼,1951n CbaI−

nes,A.,W.W…Cooper..and A.Henderson,An Zniroduciionio Linear Prog・ ㌢■の椚扇紹g,1953・らを加えることによって,線型計画論ほ理論的,実際的に深く掘り

下げられるようになったので,ここで云う開発以前とはこの頃の年代以前を指す。 15)】乱 DouglasとC.W… Cobbによっておこなわれた生産関数に関する先駆的実証研

究として知られている。1900−1922年の期間のアメリカの製造工業に対する調査の結 果,−・次および同次の生産関数を提出した。Douglas,P..H… and CW.Cobb,A

Theor.y qflProduciion,AmericanEconomic Review,1928

16)Dean,Obu citlppl274−278… 前掲訳書,籍2分冊,201−207頁。 17)Gutenberg,E.,Aaい0.,Bd‖1Die Produktion,1955S。193−225い 港口一・雄, 高田容共訳,経営経済学原理,第1巻生産論,202−235頁。 A塾生産関数ぼ要素投入量の自由な変化可能性を前提とサーる。すなわち,ある要素群 を−・定としてある要素の限界生産力が測定できる関数である。これに対し,B塾生産関 数は要素投入鼠の自由な変化可能性が否定される。すなわち,要素投入盈の変化は機械 ・設備などの技術的特性によって規定されるとするものである。

18)規模にたいする収益の不変性(COnStant returnS tOSCale)ほ生産関数の一・次同次性 を仮定するものであり,新らしい企業理論の基礎的前提を形成する。その詳細の吟味は 後述する。

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線型計画法の経営経済学的展開 −ヱヱ9− することの理由を一応明らかにしてきた。すなわち,経営という主体的行為の 行動基準としての管理原理を与えるビジネス・エコノミックスは,かかる原理 の拠るぺき客体的法則の展開としての企業理論を媒介とし,こ.れを批判的に考 察することによって問題の所在を明らかにし,これを実践的に展開すべき方向 を理解することができるし,微分による制限付き極大化問題の解法軋代って新 しい企業理論の展開と言われる線型計画論は,新しいとすれば従来の企業理論 と比較して如何なる点に.おいて:新しいのか,これらの点を究明すること紅よっ て線型計画論の企業理論に.おける地位が明らかとなる。われわれほ.企業理論の かかる分析から,ビジネス・エコノミックスと線型計画論の結節点を発掘しよ うと思うのである。 ⅠⅠ 上述の如く,われわれほ.企業理論を分析することに.よって線型計画法とどジ ネス・エコノミックスの関係を考察しようとするのであるが,本節ではまず企 業理論そのものについての検討を試みる。企業理論とは,よく知られているよ うに.,近代経済学のミクロの経済理論を中心とするが,一・般にミクロ経済理論 は前節で述べた如く近代経済学の創始者であるマーシャルやワルラスの競争的 な市場を前提とする理論とロビンソンやチ・エソバリンらに.よって代表される不 完全競争論,そしてさら紅ビッグ・ビジネスの寡占的な市場を前提とする理論 へと発展してきていると言える。しかし,そこに共通に.みられる分析視角は, 第一・に価格体系分析の−・階梯として企業理論が構成されていること,第二紅理 論構成の方法として演繹法であること,第三に分析用具として限界分析を用い ていることの8点を挙げることができる。われわれは以下においてこれらの 3点,つまりその観点,方法,分析用具という面からそれぞれ紅つき考察し よう。 第一・に.,企業理論の上位概念であるミ.クロ経済理論ほ,企業なり消費者なり 個々の経済主体の経済行動を分析するにしても,それはあくまでも,市場の客 体的均衡条件を解明するための必要なまわり道として例えば企業の主体的均衡 条件が吟味されているのであって,換言すれば,主体的均衡を論ずる時に・も常 に目は市場へと向け,市場均衡を通じての価格の決定にこそ関心があるのであ

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香川大学経済学部 研究年報 8 ヱ96β −∫2クー る。したがって,企業理論ほ.経済学の中心課題からみればあくまでも付属物で あって,価格理論あって.の企業理論であり,それ以上のものではない。かく て,企業理論ほ理論経済学の−・部門として当然ながら,企業を対象とする場合 においても市場との関連において企業を観察する。このこ.とは前節において簡 単に.触れたところであるが,重要であるのでさらに考察する必要がある。とこ ろで企業の行動ほかかる観察的態度のみで考察することは不充分であり,かか る態度だけでほ.企業行動ほ解明し得ない。もっとも企業理論は企業行動を分析 するのを目的とするのでほなく,市場機構のメカニズムを分析する−・階梯とし て考察されるのであるから,ここ/で企業理論の企業行動解明の不完全性を批判 す・ることほ適当ではないが,われわれは企業理論のかかる観点を充分に認識し なければならぬ。けだしこの認識を通して,後述するように企業行動解明のた めにど汐ネス・エコノミックスが必要となるのであるからである。かくしてビ ジネス・エコノミックスは企業の内部に.も目を向けて,最適経営計画編成の実 際的解法の研究を通して,企業行動の解明を主体的紅志向しようとする。換言 すれば,ビジネス・エコノミックスほ企業行動そのもののために研究されると

言えるのである。第二に,企業理論の理論構成が演繹法によることである。こ

れほ企業理論のみではなく大体において近代経済学の方法が演繹的であるこ.と にもよるが,企業の経済行動の分析も,ある−・定の前提に基づいて企業行動の 合理性を予想するこ.とによってその論理が形づくられている。したがって−,そ の論理の前提が現実に.妥当性をもっていないとすれば,彼らの理論はもろくも 崩れてしまうという性格を有しているのである。例えば,企業行動の解明の前 提としてよく挙げられるものに.,①企業の行動は個人企業家の行動であるこ と,②各企業ほ利潤極大化を目的として行動する,⑨企業の行う経済的決定 すなわち生産鼠,価格や投資の決定はすぺて利潤極大化を目的として行われ る,④利潤極大化は限界収益と限界原価とが均衡する点に価格や生産品の決定 を行うことによって達成される。それに.よって一客企業ほ均衡状態に達するな どがある。30)これらの前提のうち④ほ直ちにほ前提というよりも⑨の前提の下 に帰結せられる命題であるが,しかし市場均衡という点からほこれもーつの前 20)占部都美,現代の企業行動,1真。

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線型引画法の経営経済学的展開 ーヱ2J− 提とみることもできる。何れにしても,こ.れらの前提の下に合理的思考の結果 演繹される命題が近代経済学ひいて:はミクロ経済学を形成している。したがっ て,オック.スフォ・−ド調査の価格決定に.おけるフルコスト原則21)などがあらわ れると,ミクロ経済学ほ.根本的にその前提を再検討せざるを得なくなる。かく て,ある場合紅ほ経済学の企業理論は抽象的でありすぎ,現実ばなれがしてい ると言われる原因ほこのようなところにあると思われる。すなわち,「理論と しては美しく欠点のないものであるが,しかしそれが現実の企業におけるさま ざまな変革をとり入れて発展してきているかということに.なると,そこにほ大 きな疑問が提出されざるを得ない」22〉と言え.るのである。以上の如く企業理論 ほ.ある前提のもとに合理的に.行動すればかくの如くなると言う演繹方法紅よっ て構成されて−いるが,演繹の出発点となる前提ほいかに.して得られるかという に,概して−・般的な前提は自明な公理的事実と思われてきたが,経験現象に関 するかぎり,それほノ絶対的のものでほないことを注意しなくてほならない。企 業理論における前提は純粋科学の公理とは異なり,それ自身すでに歴史的意味 を有する。しかるが故に.,上述の如く価格決定における限界方式ほ,ビッグ・ ビ汐ネスの寡占状況によって招来されるフル・コスト方式に道を譲らざるを得 なかったのであり,理論上特殊や個別ほ−・般や普遍を批判し破壊するカをもつ のである。 かぐて演繹理論たる企業理論はそれだけでは不充分であり,個別的特殊的実 証性を基調とするビジネス・エコノミックスを必要とするのである。かくし て,企業理論が演繹的ならど汐ネス・エコノミックスは帰納的と言うぺく,企 業理論の単なる拡大解釈に甘んずることなく,実証的調査を中心に経営経済現 象を理解しようとして,それ自体独自の発展方向を示しているのである。しか しながら,理論における演繹と帰納の関係が示している如く,帰納とは基礎的 認識を前提して,その上に成立する概念構成である。したがって,これら両者 が相互に予想し合い,相互に媒介しあうものであることほ明らかである。即ち ビジネス・エコノミックスは企業理論の産業別ないし商品別特性にもとづく

21)Hal1,R“L.and CいJい Hitch,Price TheoY・y and Business BehaviouY・,0Ⅹford

Economic Papers,1939.,

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香川大学経済学部 研究年報 8 −ヱ22− J96β 具体化を内容とし,企業理論膚T・般的,普遍的法則を提供するものということ ができる。われわれが前に,企業理論ほ.管理原理の立脚する法則性を与えると 述べたことは,ここにおいて一層明瞭紅理解されるであろう。 第三に,あらためて言うまでもなく,従来の企業理論の分析手法はいわゆる 限界分析であるが,この点について考察しよう。前二点が企業理論の吟味に.よ るど汐ネス・エコノミックスの導出に.関する事項であるのに対し,第三点は限 界分析の吟味による線型討画法の問題である。限界分析に対してはマー・ジャル を始め−・般に主観主義経済学の人々によって普及せられた一・定の解釈がある。 われわれは,消費財価格の決定から生産用役価格の理論に発展した限界分析の 考え方を,主として後者についでその解釈の枠組の考察から出発するのを適当 とするだろう。いまある企業における生産鼠の決定を,利潤極大化ならびに 完全競争の前提にもとづいて考察しよう。生産還:.ガは任意の与えられた投入最 (机,び望,・,が物)に.より生産されるものとすると, (1).先=ノ■(が1,び望,,び肌) と書くことができる。生産物の種類が紹種類ある場合を考えると,乃種類の生 産物の数還:を領,.方2,,.ガ殉とすれば,次の陰関数を得る。 (2)此方1,.ガ2‥,‰,が1,ガg,・,が偶)=0 (2)は微分可能でかつその−・次及び二次の偏微係数ほいずれも連続であると仮定 する。そうして一生産物.和の単価を動(オ=1,2,・,〝),生産要素びグの単価を射(.グ= 1,2,・,研)とすれば,企業の総売上高㌢および総生産費cは Jl −Jル γ=∑か方わ C=∑吼勅で与えられるから,利潤関数方=γ−−Cを目的関数とし £=1 タ=1 て,(2)の生産関数を制限条件とする条件付き極大問題として解くことができ る。ラグヲ)/ジ.ユ乗数を九とすると,新しい関数 1Z TJも ダ(∬ゎびグ)=∑み町−∑錮町→げレ,〃プ) 名=1 J=1 を定義する。極大またほ極小のための必要条件は,関数ダ(.勘,ぴプ)の偏導関数を 0としている。すなわち,

ほ)動∠(∬ゎがタ)=勿一入告=0(向,2…,め

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線型計画法の経営経済学的展開 −J23一

(4)神慮,勘)=−・射一入告=0炬l,2,,∽)

これらの2方程式は,(2)の条件方程式と共に,−・般紅3未知数.芳,針および入を 定めることができる。かくて,企業がどれだけの要素を用い,どれだけの生産 物を生産するかほ利潤極大の条件(3),(4)によって決定される。かくして−,(3)式 の中の任意の二つの比を考えると, 初「なる式を得る。 i玩 (5)式の左辺は生産物よと生産物タの価格比を表わし,また右辺は生産物よと生産 物.グの限界代替率に.等しい。したがって利潤が極大であるために.は,任意のこ 生産物間の限界代替率はそれらの価格比紅等しくなければならない。同様に(4) より任意の二生産要素について ∂./’ (6)式の左辺は生産要素オと生産要象グの価格比を表わし右辺ほ生産要素オと生産 要素柁)限界代替率に等しい。したがって,利潤が極大であるためには,任意の こ生産要素の間の限界代替率ほそれらの価格比に等しくなければならない。23) かくして−,生産物であれ生産要素であれ,企業の最大利潤点の決定には,ニ 財の間の限界代替率がそれらの財の価格の比に等しくなくてほならぬと言う限 界生産力説の命題を得る。ところで,以上の論述にて明らかな如く,限界分析 の要諦ほ微分可能ということを出発点とする。換言すれば,関数の連続性と有 限確定の微係数を持つことが前提とせられる。したがって,諸生産要素が互い に代替可能であり,そうしてある一・要素だけを増加することによって生産物の 23)以上若干の点紅おいては異なっているが,もっぱらヒックス「価値と資本」(安井琢磨 ・熊谷尚夫訳)Ⅱ,数学註23−25頁。DoIfman,R.巨AAか領αf∠鋸=が■エ玩励卯・jケ〃gグか 矧ぬ一児g f¢ ≠如rゐβ♂′−.γ q/■〃ねj粥7∽,1951,ppい 5−12・森嶋壌子,限界生産力説と 線型計画論,大阪大学「経済学」第4巻第3号に.よる。

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香川大学経済学部 研究年報 8 −ノブメ− ヱ96β 増加が生じうるという場合紅,限界分析手法が適応できるのである。まさに.−・ 生産要素の限界生産力とほ,他の生産要素忌を一・定としてこの一・生産要素の新 たなる一嘩位の付加によって増加せられる生産物の増分であり,限界生産力説 とほこれを以て.一生産要素の生産力の測定に.当らんとするものに.はかならない。 ととろでとの場合,生産物m・単位に.おけるこれら生産要素の割合,つまり生産 係数は可変的なることを要するが,果してこれは普遍的現実妥当性を有するで あろうか。企業理論でほ,既紅魂てきたように−・般に生産係数は−・方において ほ生産技術の如何に.よって,又他方において−は生産要素の価格によって異なる とされる。けだし生産要素の組合わせほ,限界生産力説の命題の得られるプロ セスすなわち技術の問題を経済問題として.考察サーるために.生産関数の概念を設 定した如く,第一・に技術の内容によって決定せられ,第二に技術の内容からの 関係を−L定とすれば生産要素の価格によって決定せられるからである。かくし て生産係数がかくの如き関係を前提として成立する限り,それは生産費の変動 ひいては生産量の変動によって変動するものであり,生産係数の可変性が限 界分析に.おける基本的地位をもつとされるのである。しかしながら,周知の如 く,かかる企業理論の基本的思考は最近に至り大巾な修正を迫られている。す なわち,前述のコップ・ダグラス塾関数やグー・テンペルクのB塾生産関数,そ・ してディ、−ンの生産過程の分割の程度と要素組合わせの可変性の主張などにみ られる如く,生産係数固定性ないし比例性の展開であり,いわゆるprinciple of Variationの問題をめぐる限界分析のウイ・−クポイントの指摘であった。常識 的紅考えても,ある一・つの要素のみを変動させた場合,生産物が増加するのほ 典型的紅は農業における種子もしくほ肥料紅みられるが,近代的大規模企業に おいて,例えば化学工業における化学方程式にみる如く,24)生産物を増加する ためにほ.それに必要な多くの生産要素を同時に.増加させねばならず,生産要素 間の比率ほ固定的ないし比例的に変動することが一応一・般のよう紅思われる。 このprinciple of variationの問題については,古くから論争のおこなわれ ていたところであり,生産関数の1次および同次性25)をめぐって,例えばスぺ 24)これは原料どうしの組合わせの可変性の問題で,ここに例として挙げるのほ必ずしも 適当ではないが比喩的な例示としてかく云うのである。 25)経済学の多くの分野において,望要な特別の形をもつ関数ほいわゆる同時関数(血om一

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線型封画法の経営経済学的展開 −J2β− ンサーらは,「コップ・ダグラ.スの関数によって\示された収益−・定の存在に対 する経済的説明は必ずしもすべての生産用役がその分析に含まれていた訳では なかったという事実に.よっておそらく与えられるであろう」26)として,一−・次お よび同次関数の導出をすべての生産要素を考慮しなかったことに.その原因を見 出さんとしているが,このことはまたサミエルソンの挙げている例証のよう に,「生産物がすべての変数の1次の同次関数であり,こ.れが成立しないのは. 不可分性のためか,すべての要素が考慮に入れられなかったからにちがいな い」27)として1次同次の生産関数の主張者の側からもそれぞれすべての生産要 素を考慮に入れないと反論されているのである。すべての要素が,賛成側反対 側の両方の主張者から原因として挙げられていることに,われわれは.注意しな ければならない。これらの点紅ついてほ後述すノるとして−,ここでサミエルソン 自身の立場を明らかにしておこう。彼ほ言う。「すべての生産要素を2倍にす れほ,生産物も2倍紅ならなければならないというのほ科学的には意味のない 主張である。叙述が意味がないのは,むしろいかなる仮設的に考えられうる実 験をもってしても主張される原理を論駁できないという意味で,けっして反論 できないからである。これほ,かりに生産物が2倍にならなかったとき紅は, いつでもある要素が稀少であったからだと結論できるからである」28ノとしてサ ミエルソン自身は生産関数は1次同次である必要ほないとしている。 以上の諸主張から明らかなように,生産関数の1次および同次性紅関する見 地紅ほ.,賛否全く相反する見解がみられるのであるが,実ほこ.のことが線型計 画法を論ずる出発点となると思われるので,われわれほこれらの点を解明する ためにさらに・考察を進展させよう。われわれの見解でほ,元来,生産関数なる OgeneOuSfunction)である。例えば2変数の関数Z=ノ(方,.γ)の場合,ノー(f.方,f.γ)= 材■(、ガ,.γ)が成り立つならば,次数烏なる同次関数と呼ばれる。すなわち,ある関数に おいて,もし独立変数のすペて紅正の定数≠を乗じたとき,新しい関数がもとの関数の ト倍であるならば,それを次数ゐの同次関数という。詳細についてはティソトナ−「経 済数学入門」(馬場吉行訳)147−150頁参照。 26)Spencer andSiegelman,ibid,,,pP・212−213・邦訳,322貴参照。 27),28)サミ.ユ,エルソン「経済分析の基礎」(佐藤隆三訳)88頁参照,なお,即の主張 の内容はサミ、エルソンが文中の引用例として挙けているものであって,彼自身の見解で はない。

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J96β 香川大学経済学部 研究年報 8 −J26− 概念は生産の技術的基礎に.関する問題を経済分析のうちに導入するために構成 された概念であり,現実在の関係をそのまま投影するものではないと解する。 したがって生産関数の1次および同次性を肯定するも否定するも何れも奏であ ると断ぜざるを得ないのである。けだしこ.の問題ほ個々のケースに.ついて−の実 証的研究によって得られる答が異なると共に,1つのケースにおいても観察の 範囲によって:生産要素の投入増加の生産性弾力性(the elasticity of produc− tivity)29)は異なってくるからであり,より根本的に漉かかる範囲を探究して 主体的に.われわれの側から1次および同次の生産関数を作り出すからである。 而して経済学老が同次性の仮定を立てようとしたのは,現実在の関係から帰納 されたのではなく,それを仮定しなかったときに,限界生産力の理論を無効に するような矛盾が出てくるのではないかとの懸念からである30)ことを思えば, 少なくとも同次性の仮定は限界生産力理論を補強すべく仮定されたものと解す ぺきである。すなわち,限界生産力ほ生産要素の数以上の生産方法が存在しな 29)視点を短期に.とれは,変数である可変要素複合体の変化によって生ずる産出量の変化 率を生産性の弾力性(ないしポイント弾力性(point elasticity)という。すなわち諸要 素の投入盈が九α0,入∂0から(入+△九)α0,(九+△入)∂0紅増加することによって産出藍

ほ∬から頼△・芳に増加するものとすれば,ポイント弾力性e=普/今で表わされ

る。通常,固定設備の能力限界に達するまでは∂=1,すなわち限界費用曲線が近似的 紅水平線とみなされてよい範囲において,産出盟の意思決定がなされる。したがってコ ングェンぺ/ヨブルなU字塾費用曲線における場合でも,範囲を限定して近似的には収 益比例法則の準用は可能である。しかし,これはサミエルソンの指摘するように,理 論的には生産の理論と費用の理論との間の統合の欠如を示すものであるから,あくまで も1次同次の生産関数設定の実際的便宜的な説明方法と解すべきである。Cf..Spencer and Siegelman,ibid,pp”208q209= 同訳書,314−315頁。熊谷尚夫,現代経済学入 門80嶋81貢。 30)サミ.ユエルソンほこのような見解に対しては誤った考えとして排斥している。すな わち,限界生産力の理論において議要なのほその難点を埋めるための同時性の問題では なく,すべての余剰を限界生産力分析で説明しようとするところにある,としているが, たしかに企業はいくつかの技術的に可能な生産方式の中から取捨選択を行い,また種々 の生産方式を種々のスグーールで平行して運転すること紅よって,さまざまに異なった生 産活動を行うことができるから,ここでの選択問題は生産関数の同次性を本質的契機と しないかもしれない。しかし,少なくとも,生産関数の連続性と個々の生産要素の独立 的変化の可能性を期待することは,極めて非実際的であることもまた認めなぐて−はな

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線型計画法の経営経済学的展開 −J27− ければならないし,印その上収益逓減の法則に示される如く,要素の使用量が 変る紅したがって限界生産力は連続的紅変化しなければならないから,かかる 前提を満足させるにほ結局生産方法が無限に存在することを要するのである。 かくて,生産方法が無限に存在するということは極めて非現実的であり,限界 生産力理論のかかる難点を解決するために,新らしい生産関数の概念が必要紅 なったと解すぺきである。しかし,種々の生産方式を利用可能な,大規模経営 における経済的選択の問題としてほ,線型計画法は本質的に.は限界分析と異な るものではなく,有限個の生産方式の場合に適用されるべく造られたものであ り,その適用に.おいてより実際的であるといい得るのである。 かくして,新しい生産関数として−の,コップ・ダグラス生産関数やB塾生塵関 数などを総括して−,生産過程ないし生産方式(production process)の概念が生 成するに至ったのである。生産方式においては線型同次他の関係を現象間の関 係の中から構成するのであって,現実の綿密な分析から−・次同次性を作り出す のである。したがって,現実現象の関係そのものが一㌧次同次性であることを必 ずしも問わない。すなわち,例えば従来同じ生産要素ないし生産物と考えられ ていたものでも,生産鼠との関係において:ほ,全く異なった特質の存在が発見 される場合ほ,これらを異なる生産方式として扱うか,さ2)或いはまた連続関数 的な現象であっても,これを垣線現象に分解し近イ以値をうることにすれば,現 実との誤差を無視できることも多いのである。そしてかかる生産方式の概念を 基礎として,最大利潤点の解明を志向する理論が線型計画論に外ならないので ある。 らないであろう。サミュ志ルソン同訳書,89−91見参照。熊谷尚夫,近代経済学, 143見,参照。 31)生産要素が∽種類の場合紅は,生産方法が∽種類以下しか存在しないならば限界生産 力は存在しないが,生産方法の数が揮および椚以上となれば限界生産力が存在する。こ の点についての詳細は,森島珠子,前掲論文参頗。 32)例えば,労働力でも熟練工と未熟練工の区別,固定給と時間給の区別など適当に分離 することに.よって,1次同次性を構成することができる。逆に.言えば,生産方式とは生 産物および生産要素のそれぞれ紅ついて,その各単位の質的一・様性を前提すると定義す ることができる。詳細は,野志功,線型計画法,48−49貢。横山保,生産紅おける線型 計画,大阪大学経済学第3巻第3号参照。

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J96β 香川大学経済学部 研究年報 8 ーJ2β− われわれは以上に.於て,経済学の企業理論を分析することにより,企業理論 のより一層の展開のためにほ必然的にど汐ネス・・エコノミックスと線型計画論 が導出されることを明らかにした。本節に於ては,企業理論を母胎としてビジ ネス・エ.コノミックスと線型計画法とが生成せざるを得なかった理由を解明す れば足りるのである。われわれほ次に.節をあらためて,経営に・関するORの位 置づけの論拠としてのど汐ネス・エコノミックス(その理由に・ついては後述) の体系について考察しよう。 ⅠⅠⅠ これまで考察をすすめてこきて生ずる疑問は,−・体経済学の企業理論といわゆ るど汐ネス・エ.コノミックスと称せられる−・連の研究とを区別する必要がある かどうかということである。われわれはこれを区別する必要ありと思考するが 故に.その根拠を追求してきたのであり,これらの点は本節において一層明らか にせられるであろう。ところで,われわれほ.前節に.おいて経済学の企業理論を 考察し,企業理論の発展のために.はビジネス・エコノミックスと線型計画法と が展開せられねばならないことを明らかに.した。すなわち企業理論は一億の前 提の下に.企業の合理的行動を予想した演繹理論であり,現実の進展の前には必 らずしも充分紅その前提を満足し得ないこ.と,したがって各企業の経済的特性 に応ずる業態別帰納研究であるビジネス・エコノミ.ックスによって補充せられ ねばならないこと,また企業理論の分析手法は限界分析であり,そこにおいて ほ諸生産要素が代替可能であること,そしてある−・要素だけを増加することに・ よって生産物の増加が生じうることを仮定していたが,・そ・の難点を修正すると ころの1次同次性の生産関数を構成し生産方式の概念に・よって限界分析の拡充 を図らねばならず,かかる課題を負うものとして線型計画論が登場することを 明らかにした。換言すれば,ビ汐ネス・エコノミックスと線型計画論の役割, したがってそれぞれの課題を分析する成る程度の手がかりを得ることができた と思われる。われわれはここ.に於て,−・歩進めてビジネス・エコノミックス自 体の発展過程について考察を加えねばならない○これによって,後述するよう に,線型計画法を含めたOR諸技術がそれぞれところを得て整序することがで き,ひいてほ線型計画法とど汐ネス・エコノミックスとの関係をより一層明ら

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線型計画法の経営経済学的展開 −J29− か紅することができるからである。なお,その際一・言注意すべきは,ORを整 序することの意味についでである。つまり,ORの性格は臨床的であり問題に 直面してよりべダーな解決を志向するmethod−Orientedなものであるが,それ が繰返される似たような問題に.対しては定型化された手続きをもつようにな り,それが蓄積されて経常経済学的に位眉づけられるにすぎず,われわれがO Rの体系とか整序とか言うのはかかる意味のものであって,ORそのものの体系 を意味しているのでほ.ないということである0 さて,一・口にビジネス・エコノミ.ックスと言ってもその内容は論者によって 多少のニュアンスの相異を認めることができるが,総じてこれまで屡々繰返し 述べたように.,経営の意思決定にん、かに.経済学の概念を適用するかを示し,実 証研究を重視して企業理論の修正をも意図するものであると云うこ.とができよ う。而してビジネス・エコノミックスの視点や内容も時に応じて力点のおきど ころを変えて発展してきているのであって,例えば斯学の創始者的立場にある プカナン欄)と中期鋸)の代表者と目されるディ−ンとを対比すればディ−ンに・お いてより一層の管理的視点の強調と計晶経済学的分析用具の導入が図られてい ることは既に指摘したとおりである。35)そしてディ−ンからさらに.スぺソナ ー・,シーダルマン,ネムマ−,ハーレン,クリステンソン,グァン1ンル,ノ\イ

33)Buchanan,N.Sい,The Economics qfCorPorate Enier♪rise,1940. 34)ここで中期というのは.現在を基準として内容的関連から,斯学の創始者的立場にあ

ると考えられるJM… Clark(The Economics qfOverhead Cost,1923),やN・S

Buchananを前期,W、Rautenstrach(Economics oFEnierPY’ise1939),M.P”Mc・ Nair and R‖ S.Merriam(Problemsin Business Economics,1941),W。Rauten・ StraChand R Villers(The EconomicS OfZndusirialmanagemeni,1949),G”J Cady(Economics qf’BuSiness Enterbrise,1950),Jo Dean(ManageY・ialEcono−

mics,1951),M.RColberg,W巾 C.BIadfor’d and Rい M.Alt(Business Econo一

掬∠cぶ,1951)やLいA..Doyle(品川肌用琉5〟β〝・ざよ〝β∫ざβ乃≠β7・♪7ゐ♂,1952)らを中期

M.H。Spencer and L Siegelman(ManagerialEcono7nics,1959),EいE”Nemmer・s (ManagerialEconomics,1962),N”Eい Harlen,CトJlChtistenson and R.F Vancil(ManagerialEconomircs1962)やW”W‖ Haynes(Managerid Economics A,2α才一γS∠.sα搾d Cα.Sβざ,1963)らを後期として,これらの中期の発展に属する人々を拇 す。

35)拙稿,会社設立と均衡分析−ゼ汐ネス・エコノミ.ックスの課題分析を中心とし て−,香川大学経済論叢籍41巻籍2号参照。

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ユタ6β 香川大学経済学部 研究年報 8 −−J∂0− ネスと次欝に.OR的色彩が濃厚となり,ノ、イネスに.おいてはORをいか把定義し ようともそれとビジネス・エコノミックスとをはっきり区別することは難しい と述べて心るはどである。36)われわれはかかるピ汐ネス・エコノミックスの発 展を文献史的に.展開するのではなく,それぞれの内面的関連といぅ視角から考 奏し;われわれがビジネス・.エコノミックスとORとの結び付きに.着眼する過 程を明らか紅しよう。 上述の如く,ビジネス・エコノミニック女の系譜は便宜上内容の上から現在を 基準としてクラーク,タープェンポート,プカナンなどの創始者的グループと 々クネア,メリアム,ラクグッシ.コ.トラッハ,ヴィラーズ,キャディ,ディー ン,コルバーグ,プラヅドフォード,アルトブ コポック,シ.ユ.ビンなど中期に 属する人々と,スぺソサ⊥,ジ−ゲルマン,ネムマース,ハ−レン,クリステ ンソン,プァン1ンル,ハイネスなど最近の研究に.属する論者の三つ紅分けて考 えることができる。われわれの関心は叙上の主旨から第3番目のグル−プ,す なわちOR的色彩の次第に.顕著に.なりつい紅はハイネスをしてORと区別し難い と云ぁせるに.壷ったグル十ブにあり,これらの理由を尋ねることにあるが,こ のこ.との解明にほ第一・のグループから次第に.発展せる歴史的論理的究明を必要 とするであろう。ビジネス・エコノミックスほ.前節で論じた如く企業理論か ら派生したものであるが,第一・のグル−プでほそれのより実用的見地紅立脚し た展開に.とどまり,次に管理的視野を導入して企業理論の管理論的展開と云わ れるように.一なり,第三のグル−プ紅至って一っいに.マクロ経済理論に分析要具を 求め,主として予測の問題に・関して企業の立場から理論を展開するように・なっ たが,第一と第二のグループに.ついては既紅各所で関説したので37)第三のグル ープに.至る推論紅必要な限り触れるに.とどめ,主として第三のグループについ て重点的紅考察しよう。その際われわれは第一・のグル−プとしてプカナシをと りあげ,第二のグループとしてディ」−ソを,第三のグループとしてノ\」−・ラン らを代表せしめて,ビ汐ネス・,エコノミックスめ発展をそれぞれの内面的関連 におい七とらえ.,以てビジネス・エコノミックスの発展過程を跡づけてみよ 36)Haynes,〃♪・ぐれ・?・5・ 37)拙稿,経営「経済管理」の展望/香川大学経済論叢第35巻第3号,前掲書論文,会社 設立と均衡分析など。

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線型計画法の経営経済学的展開 一Jβユー う。けだし上述の人々ほ.それぞれのグループの典型を示すものであっ㌔ 内容 的に.同じグルニプめ他の研究者の説を代表するとみることが出来ると思われる からである占 Ⅰ プカナンのビジネスJエコノミックス プカナンはビジネス・エコノミ.ックスを企業の設立から解散に.至る全経済過 程の経済学的研究と規定し,それらの分析要具として均痴理論を援用する占も ともと均衡分析ゐ基礎は需要関数,供給関数および市場均衡の概念把凍あられ るが,彼に.おいても企尭の設立から解散に至る全経済分面を市瘍均衡条件の吟 味を主軸に.展細し,いわゆる集団均衡ないし産業均衡の成立過程に点ける庵凛 の生産費素ならび紅生産物の需要量・供供患および価格の決定を解明しようと す・る。換言すれば,均衡原理にもとづく企業の最適行動の決定を論じたもので あるが,既にこれだゆの論述で看取し得る如く彼のど汐ネス・エコノミック スは企業理論と大差ほない。それに.も拘らず,彼の主張では企業の生成から消 滅に.至る全生涯の経済過程の分析がビジネス・エコノミック.スの存在理由であ る′とするが,われわれほ企業の生成や消滅の問題は経済学のいわゆる長期的適 応過程のうち紅論ぜられるので,ビジネス・.エコノミックスの独自性の恋拠把 はならないと考える。われわれの見解は,ビジネス・エコノミックス由独自性 は対象領域に.求あられるぺきものではなく,観点の相異に・求める。すなわち, ビジネスJェゴノウクスと企要理論は対象が同じであるのは当然であっ七;両 者とも企業の経顔過程を問題とするが,企要理論が企業を対象とするにしても 日はあくまでも市場関係に.そそがれるの虹対し,ビジネス・エコノミックスほ 企嚢の実用的最適計画の東成紅目的がおかれるのである古けだし,去ゝ・くの如き 観点に差異を認めない限り,ビジネス・エコノミックスの存痙感由祓か、から である占而して・,ブカナンが企業の仝経済過程を企業の全生涯における痙済過 程とみたの紅対し,われわれほこれを企業の構造な↓、し過程に.おける全経済過 程と解したい。次に,かかる見地を意醜的にビジネス・エコノミックス紅導入 した人をディーソに.よって代表せしめ以てプカナンからの轟展に.おける媒介者 たらしめよう。 2 ディ−ンのど汐ネス・エコノミックス 上述の如く,ビジネス・エコノミックスの独自性は実用的な最適経営計画の

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香川大学経済学部 研究年報 8 −J32− J96β 編成に.資する企業の経済分析たることにJ求められるが,こ.のことは企業の主体 的行為的把握の導入に外ならない。ここ虹至ってど汐ネス・.エコノミックスは 企業の経済学としての性格から脱皮して∴著しく経営学に傾斜することに.なる。 これらの動向を端的に具現するのが,ディ−ンのマニジェリアル・一エコノミッ クスである。 彼ほ.経営計画の樹立庭企業理論を役立たしめるに.ほ.企理理論の抽象概念を数 学的な推測紅変換しなければならず,かつ経営者が管理し得る測定可能な要因 のみを選択すべきである38)として,ビジネス・.エコノミックスの管理性を強調 する。かくてビジネス・・エコノミックスほ経営者の意思決定のための経済分析 としての自覚を明らかにし事前的計算のための費用概念である機会原価と未来 原価を駆使して,実践的経営計画の編成を目的として企業の主体的構造に.応ず る計数的管理の体系を形成する。彼の企業の主体的構造に.閲す−る分化基準は, i述した如く,管理可能性(controllabe)である。すなわち,計数管理の対象 は大ざっば紅云えば固定費と変動費に.分つことができるが,固定費を管理する のは経営層であり,変動費を管理するのが部門管理者層である。換言すれば, 固定費は工場長など肢体経営者にとっては管理不能費であるが,最高経営層に. とっては投資の形態に.おいて管理可能費と化する。而してかかる管理体系を 制度的に保証する方法が経営層に.おいては資本予算制皮(capitalbudgeting) であり,管理層に.おいては与えられた部門利潤を達成すべき損益分岐分析に. 基づく操業管理である。とこ.ろでかかる計数管理が効果的に.機能するために. は,さらに.彼は諸々の生産要因の予測が必要であるとして,こ.れを重点予測 (SpOt PrOjection)と称して将来の一膚期間に・おける損益計算苔と,環境分析 (environmentalanalysis)と云われる企業の外的諸変数と企業利潤との相関 関係紅基づく将来の企業利潤との,いわば企業の内的外的変数の予測紅よって 補完されなければならないとする。 以上がディ−ンのピ汐ネス・エコノミックスの主として管理的主体的展開の 説明である。かくして,ディ−う川こおいては競争構造の分析に.基づく企業行動 の8つの形態として製品政策,販売促進政策,価格政策などが上述の主体的構 38)DeanゆCよf.,ppい164−165邦訳,第二分冊37貢。

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線型計画法の経営経済学的展開 −ヱ33− 造紅かからわしめて展開されるが,ビ汐ネス・エコノミックス発展の内面的関 連という見地からは彼の管理的見地の導入という点を指摘すれは足りるであろ う。とにかくかかるディーンの考え方はビジネス・エコノミックスの一・典型を 示すものであって,われわれの後の研究の参考とすることができるであろう。 それはとも角として,彼のど汐ネス・エコノミックスについてわれわれの関心 をそそるのほ予測に.関して相当の部分がさかれていることである。もとより経 営紅おける意思決定が常に.将来の不確実性の条件下でなされることを思えば, 予測の問題が重視されるのは当然であるが,それ濫滝拘らずわれわれがこの点 を強調するのは,後述するように,この部分(不確実性分析も含めて)がORへ の1つの橋渡しの役割を果していると考えられるからである。彼のビジネス・ ・エコノミックスほ.かかる点において更に.計鼠経済学的に.ないしマクロ経済学的 紅考察すべきと.とを暗示するのである。かくしてど汐ネス・.エコノミックスは 次第にその分析手法を拡大しつつその内容を整備し明確の度を増して−きたと云 わねばならぬ。かくてど汐ネス・・エコノミックスの管理論的展開から現代的展 開への発展の考察を必要とする。かかる発展への道は種々の人々の努力に.侯つ のであるが,われわれはそれらの努力の代表者としてノ、−ラン・クリステンソ ン・グァン1ンルを挙げ,彼らのビジネス・エコノミックス紅ついて概観しよう。 3 ノ\」−ラン・ ク.リステンソン・プァン1/ルのビジネス・エコノミックス 彼らのピ汐ネス・ユ・コノミックスの主要な特徴ほ,前述したように,’不確実 性の下での決定の分析が論じられ,・そ・こに収録されているケ−スはORの書物 の例題と異ならないということである。すなわち,彼らのビジネス・エコノミ ツクスがORに/著しく接近してせでおり,実質上ORと区別がつけ難くなって きて1、るこ.とである。このこ.とは既にノ、イネスの言葉を引用して閲説したとこ ろであるが,彼らのど汐ネス・エコノミックスの中枢をなすところの計画紅関 する論議も,相関活動計画(programminginterdependent activities)39)と して−数学的計画法を対象としでおり,まさにORそのものである。かかる展開 はど汐ネス・エコノミックスが新しい分析用具を導入すること紅よって,意思 決定のための経済分析の中身を次第に.豊富に.していくことを物語るものである

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J968 香川大学経済学部 研究年報 8 −−J34− が,・その母胎である企業理論・そ・のものが既述申よう紅新しい展開をし??ある 芦・と翠思えば,当然の発展動向であろうと思われる0分析軍兵申観ノ尊からす叫 ば,この事・とはまたミクロ経済学からマクロ経済学へ,す額わら,需要の弾力 性,限界琴周なぎのいろいろ寧概念の援用から統計操倖可儲な定革労析申援用 へ,換言すれば,企業の主体的均衡の演繹理論から統計的数値卑うらやけとレ た操作可財経紅もとづく蓼学的翠革へ甲発展を意味していや○これはマタワ鱒 経済学の予鱒の理論がビジネスエコノミックスに与える琴響紅雛贋看取 し得ると亭・学であるが,羊・のことは全体的紅ビ㌢ネス・羊コノミッグ不の性格 笹木きな影響を与えるものと奉うことができる0すなわち,実用的経営政策申 樹立湛専ら定患的分析を援用するところのすぐれ七現代的な発展を意味するも のである0かくレて,彼らのビジネス・エコノミックス鱒生産ないし企業の意 思決定匿閲す挙現代経済学の展開であり,しかもこれらの新い、分析的要具が 異体的な個々特定の場合紅応じていかに用いられるかを示すすぐれて実践的な 栢用経済学としての性格を与えているということができや0 以上概説したど㌢ネス・エコノミックスの発展過程は,企業琴論鱒拡大解釈 からそれの管理的鱒開を経て経営の各種鱒計圃や政策の決定準・マクロ経済的走 塁分析を導入すろ鱒牢として,いわゆる経営の意尽決定甲科学化の志向として 理解することができる。そしてかかる動向は必然的紅O買手法との結び付きを 搾来し,極論すれば経営に関するOR=ビ汐ネろ・エコノミックス≒亭われる はど甲密着した関係を現出するに雇?たこ・とを明らか牢・し得たと思う0かくし てわれわれほピ汐ネス・エコノミックスとPRのか中る関係紅着目するこ.とに よって,ORのど汐ネス・エコノミックスに・おける忠義や地位を問題とし,そ れらの考察をとおしてORの経営経済学的整序ないし体系化に資したいと思 う。以下紅おいて−ほかか卑考え方の順序から,qRの特に・その中でもも・?とも 窄展せる手法といわれる線型計画法をとりあげ,諸学者の所説を研究しつつそ の琴義を明らや、紅しよう0けだしそのことに・よって一層0撃とど汐ネ不・エコ ノミックスとの関係が明嘩となり,0琴の経営経済学的展開にとっての叫階鱒 を与えることができると思われるからである。

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線型討画法の経営経済学的展開 −J35− ⅠⅤ 以上に・おいて,われわれはビジネス・エコノミックーネの発展過程を明年かに し,特にそれが最近の発展に・かかる(鱒技術と抜放すろ動向学者察してきた。 それほ屡々述べたよう紅,ビジネス・エコバックスが企業理論の一腰堕抽象 的な形で定立された経済法別に・たいして一兵体的数畢的内容を与えるも鱒であ り,企業に閲すろOR手法が企業理論の与え.る帝大利潤点に串いしてそれを達 成する定鼠約管理現術に・はかならないという点にこ・の傾向の理由を求め予こと ができろ0いまやわれわれはかかる界解紅たいするOR側や、らの考察を試み串 噂ならない0そ・レてかかる考察はORのなかでも最もよく開琴されてい挙と亭 われる線型計画法を代表せしめておこ額われるであろラ。 線型計画法紅つ叶ての研究は立場の相異や精粗甲差はあれ内外の多くの∧々 笹・よって発表されているところである0しかし,そのなかでわれわれに凝勢計 画法の名を知らしめ,その普及に貢献したと∈・ろの労作はド−フマン申「線型 計画法の理論と会社への適用」40)とチャンズ・クー・パ−・へ・ソダーソ㌢の「線 型計画法入門」,41)ク十プマンスの「生産と配分のための活動分析」42)の亭つゃ 著作であった0これらの研究ほ.また線型計画法の発展の過程でもっとも重要な 役割をも果したものであり,わが国の研究者に・よるものもこれら亭つの著作 のどれかに依拠する箪述が多い0とこ・ろで,われわれの考察鱒企業を主体とレ た線型計画法の展開であろところから,当然上記のド「フマンの論述を主とし て−参考砿・し,一部の数学的展開についてはチャ・−・ンズ紅依って魔撃計画法のエ ツスンスを浮彫りに・することを試みよう。上述の如く線型計画法紅ついては既 に魔大な数の研究がおこなわれたのであり,われわれがそれにたいしてもう一 つの研究を加えることの意義は線型計画法の経営経済学的観点からの整理に.と 40)Dorfman,Rn,4♪〆∠cα如〝q/■エゴ〝βαグ・タ′クg7・の椚磁紹g fク≠ゐβTゐ♂〃′.γ扉≠カeダ∠㌢・∽, 1951い邦訳,小官隆太郎訳,リニヤープログラミ.ングーそ申理論と企業への適用。 41)ChaITleS,A”,W・W・Cooper,andA・鱒enderson,AnZ7droductironfo Li’near アブ〃gγα∽∽よ乃g,1953・邦訳,小宮隆太郎,福拘禁生訳,リニヤー・プPグラミング入 門。 42)Koopm叩S,T・・C.,ed.,Aciivit.yAnal.ysisqfProduciionan4Allocption, Cowles Commission for Researchin Economics,Monograph No..13,1951.

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香川大学経済学部 研究年報 8 ヱ96∂ −J36− どまる。そしてかかる整理をおこなうに当っては,最初に.線型計画法の基礎理 論についての必要なかぎりの概観が必要であると思われる。けだし,線型計画 法の経営経済学的意味を究明するにほ,その基礎概念と数学的構造を把握する ことが前提となるからである。先ず線型計画法の基礎的諸概念であるが,これ は企業の生産計画を想定すとるきには,資源・生産物・生産方式の三つが指摘 されて−いる。43)資源および生産物の概念は限界分析紅よる生産要素や生産物の 概念と同じであるが,生産方式の概念ほ限界分析の生産関数の概念と若干その 趣きを異にする。dj)したがって,われわれが検討凌要するのほ.生産方式の概念 であるが,これについてほ既に開説したところであるので,後に.本節紅必要な かぎり触れるにとどめ,まず生産方式の概念を使用して線型計画法を定義すれ ば次の如くである。すなわち,「生産物および生産に必要とせられる資源につい てその各単位の質的−・棟性と,それらの量的関係において生産のあらゆるレベ ルに対しての比例的関係とが成立し得るとき,これを生産方式と呼ぶのであ る。かかる生産方式に.おいて,生産物−・単位を生産するのに必要とせられる各 資源の題せαけとし,資源の数を招とし生産方式の数を搾とするならば,αりを 常吉成分とする∽次元空間のベクトルほ第.グ番目の生産方式を表わす。したが って,われわれほ〝個の生産方式に.対応して〝個の沼次元のベクトルを得る。 さて−,次なる仮定として,われわれは各生産方式ほ同時的におこなわれ得るこ と,資源およぴその生産物の晶ほ各個の方式が個別的におとなわれる場合のそ れらの和に.等しいものとする。しかるとき各生産方式があらゆるレベルにおい て考えられることにより,生産方式を表わすべクトルの間に通常のベクトル的 43)Dorfman,ibid,pp・12−528,括孤内の論述ほ主として,Charnes,Cooper,Henderson, ま一朗d,PaI−tII.横山保,生産に於ける線型計画,大阪大学経済学第3巻第3号,などに 従って行うことにする。 44)因みに,生産方式の概念と限界分析(限界生産力説)の生産関数とを比較すると,生 産関数./■(ズ1,ガ2,…,.方兜,ぴ1,γ2,‥,び仇)=0を・満たす二つの組をA=(.方1,ガ2,l…,∬れ, が1,ぴ2,‖,叫軌)およびβ=(∬′1,.ガ′2,.方′犯,ひ′1,む′2,,かふ)とし,β=九Aならしめ る入(ただし九>0)が存在するならばβとAとは同一・の生産方式をあらわし,β=九A ならしめる九が存在しないならばβとAとほ.異なる生産方式を表わす。それ故生産 関数があらわす超曲面上のすべての点はいずれも生産方式をあらわしている。かぐて生 産関数はすぺての可能な生産方式の集合である。そして生産関数はこの集合がスム−ス な超曲面を形成することを主張する。森嶋琢子,前掲論文,参照。

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