主 思
A Method for Detellllining the Minilnum EInbedding Dilnension of Chaotic
Time Series Compted with Measurement Noise
Ken―
ichi ITOH
あ らま し カオス時系列 デー タの最小埋込み次元 を求める方法 として誤 り近傍法があるが,この方法 は雑
音 の影響 を受 けやす い とい う問題 が あ る。本論文 では,この問題解決 を図るため
,誤
り近傍法 を もとに した 雑音 にロバ ス トな方法 を提 案す る。Hこnon mapおよび Lorenz modclか ら生成 され るカオス時系列デー タにガウス分布型雑音 を加 えたデー タ,ならびに指尖脈波のデー タを用いて評価実験 を行 い
,提
案手法 の有効性 を 確 認 した。 キー ワー ド カオス,時
系列 デー タ,埋
込 み,誤
り近傍法,指
尖脈波一騰
伊
1。 ま え が き カオス時系列データの解析においては,通
常 埋込みの手法 を用いて相空間上にア トラクタの 再構成が行われる[11,〔2〕。ある 1変 数の時系列 データから最小埋込み次元を求めるために,こ
れまで多 くの研究が行われてきた。代表的な方 法 として,GP法
[31,特 異値分解法[4],誤 り近 傍法〔5]などがある。 しか しなが ら,こ
れ らの 方法は,最
小埋込み次元の決定においてやや客 観性 に欠けるとい う問題がある。 この欠点をなくすために,誤
り近傍法 を基に した改良手法が,CaOに
より提案 された〔6〕。こ の手法は次のような利点を有 している。すなわ ち,(1)埋
込みのための時間遅れ以外は,何
ら主観的なパラメータを含んでいない,(2)
利用で きるデー タの数 にあ ま り依存 しない,(3)高
次元のア トラクタか ら生 じた時系列 データに対 しても適用できるなどである。 しか し,実
在する時系列データにCaoの手法 を適用 する場合,次
のような問題がある。すなわち, 最小埋込み次元の値は,再
構成 した相空間にお けるある点 と,そ
の点に最 も近いただ一つの点 との間の距離を用いて推定 されるため,時
系列 データに含 まれる雑音 に大 きく影響 を受ける。 実データには通常雑音が含 まれているため,そ
のようなデータの最小埋込み次元を正確に決定 す ることは困難である。 本論文では,Caoの
手法 を基 に,雑
音 を含む カオス時系列データの最小埋込み次元を決定す る方法を提案する。更に,Hё■on map[7]および Lorenz model[8〕 か ら生成 されるカオス時系列 データにガウス分布型雑音を加えたデータ,な
らびに指尖脈波[9]のデー タを用いて評価実験 を行い,提
案手法の有効性 を示す。2.CAOの
手法 ここでは,時
系列データか ら最小埋込み次元 を決定するために,Caoに
より提案 された手法を説明する。 あ る
1変
数 の時系列 デー タχl,為,… ,れ か ら,一
定の時間遅れτを用いて次のど次元ベク トルを作成することにより,ア
トラクタの再構 成 を行 うことができる[11,[2〕。ど を埋込み次元 と呼ぶ。 ッ,(め=(〕身,x,十τ '・ ・・ '〕町+留I"),
テ=1,2,中●,Ⅳ_(ど -1)τ(1)
まず,誤
り近傍法[5〕の考 え方か ら類推 され る次式の量α(′,の を計算す る。 ゆ ゴ=1,2,ぃ。,Ⅳ―どT (2)
2:レ
)と ・J'昂
弐 鉱 爾 μ 死 蒲 係 光(ど+1)は
,埋
込み次元冴+1に
おけるブ番 目の再構成ベク トルを表す。すなわち, ノ.(′+1)=c,勇
.t,・・・,埼十ど■)で ある。 れ(′,の (1≦η(′,の≦N一流)は ある整数であ り,再
構成 された′次元の相空間の中で,最
大 ノルムで測った時の光(の の最近傍点が ノ刀t,の(の であることを示す。 次 に,α(′,め の平均値β(の を計算する。β
(の=占
督
τ
α
。
,のo
さらに,ど 次元か らど+1次
元への変化 を定 量化す る指標 として,次
式 のβl(の を計算す る。 βl(の=βO+1)/E(の
(4)
時系列データがあるア トラクタか ら生 じた ものであれば,ど がある値′0よ り大 きくなっ た ときにβl(の が収束 し,先
+1が
この時系列 デー タの最小埋込み次元 となる。 決定論的なデータと確率的なデータを区別 するために,
もう1つ の指標βキ(の が用いら れる。 β・④ =石 戸±巧焉士をす1考十れ 為 にrFl■Zτ1 0
さらに,次
式 の指標ど2(の が計算 され る。 E2(の =β・(ど+1)/E準(の(6)
ラ ンダムデー タの場合,過
去 の値 と将来の 値 とが独立 であるか ら,い
か なるど に対 して もE2(の は1に
なる。一方,決
定論的 なデー タの場合,E2(の は′ に関係があるため, β2(の≠1と なる′が存在す る。 ある時系列 デー タの最小埋込み次元 を決定 し,同
時 に決定論的 デー タとランダムデー タ を区別す るため には,ど1(の と虚(の の両方 を 計算す る必 要が ある。3.提
案手法 Caoの 手法 は,ま
えが きで述べ た ように従来 の手法 に比べてい くつかの利点があ り,人
工的 につ くられた時系列データの最小埋込み次元 を 決定す るには大変有効である。 しか し,実
在す る時系列デー タにCaOの 手法 を適用す るのは困 難 と考 え られる。す なわち,caOの
手法では再 構成 した相空 間 において,あ
る点光(の に最 も 近 いただ一つの点が選択 され,式
(2)のα(J,の の値が計算 される。 このため,α(′,の の値 は 実在す る時系列デー タに通常含 まれている雑音 に大 き く影響 を受け,El(め の値 を正 しく計算 す るのは困難 と考 えられる。 ここでは、caOの 手法 を基 に,時
系列 デー タ に含 まれる雑音 にロバス トな最小埋込み次元決 定方法 を提案す る。ど次元の相空間において, あ る点労④ の近傍点 を近い順 にた個探索 し, これ をノヵデt,め(の (ブ=1,2,…,た)と す る。近傍 点 の探 索 には,ユ
ー クリッ ド距離 を用 いる。 光の とノ打デぐ,め(の との間のユークリッ ド距離の 平均値 を,次
式 に よ り計算す る。 の ノ 一 の ノ 上 〒 盈 デ〓︲ 1 一 た 〓 (7)次 に
,短
時 間∫を経 過 した後 の光十す(の と ノ″デT,め.d(の との間のユ ー ク リッ ド距離 の平均 値 を,次
式 に よ り計算す る。1 0
β(の を計算p
て
,
く , , ど , 十 騨﹁
難
④
こ次
︱
・
,
世
・
翔
々 Σ デ〓︲ 代 1 一 た の行
一
岬
する。
PV― (′-1)τ 一S また,式
(5)の代わ りに次式 を用いて,β ネ (の を計算する。 ゴ⑭ = N(2た S虐 1埼 +lFりτキd一為 ブt,ぉ十ば―Dτttdl(10) βl(の とβ2(め の計算 には,式
(4)と式(6)を その まま用 いる。 以上の ように,提
案手法で は,再
構成 した 相空 間において複数個 の近傍点 を探索 し,こ
れ を時系列 デー タの最小埋込み次元 の決定 に 用 い るため,時
系列 デー タに含 まれ る雑音 に ロバ ス トであると想定 される。提案手法で は,近
傍点の数たをい くつ に設定す るか につ いての検討が必要である。た力Ⅵヽさす ぎると βl(の の値 は雑音 に大 きく影響 を受ける。一 方,た が大 きす ぎる と,光の か ら離 れた点が 光(め の近傍点 と して選 ばれるため,脱
(め の 値 は'の
値 に関わ らず ほぼ1にな り,決
定論 的デー タとランダムデー タとを区別す ること が不可能 となる。たの最適値 は,調
査対象 と なる時系列 デー タにある程度依存す る と考 え られ るため,試
行実験 に よ りたの値 を決定す るこ とが重要 となる。4.評
価 実験 提案手法の有効性 を確認す るため に,Hёnonmap〔7〕お よびLorenz model〔 8]から生成 される時 系列 デー タにガウス分布型雑音 を加 えたデー タ
,な
らびに指尖脈波[9]のデー タを用 いて評 価実験 を行 つた。 Hёnon mapは,次
の2次
元写像である。 為.I=ノ″+1 A婿
, ノ打+l=BX几(11)
式(11)にお い て,パ
ラ メー タftLA=1.4, β=0.3,初
期値為=0.3,ノ
。=0.3と した とき のアを時系列 デー タと した。 Lbrenz mOdelは,次
の3変
数微分方程式であ る 。 元=一 σ(χ―ッ), )=―ノーえて十虜 , 之=メッーうて(12)
式(12)に お い て,パ
ラ メ ー タ値 σ=10,
r=28,
♭=8/3,
布D期4直X=0・1 , ノ=0,
て=0,時
間刻 みδ′=0.01と して4次
の ル ン ゲ・ クッタ法でχの時間変化 を求め,こ
れ を時 系列 デー タとした。 雑音 デー タを生成す るため に,上
記 のHこnonmapと Lorenz modelの時系列 デー タに, 10/0と
30/Oのガウス分布型雑音 を加 えた。時系列デー
タの デ ー タ長Ⅳ は,1,000と lo,oo01こ設定 し
た。時間遅れτは,Hёnon mapで は1に,Lorenz
modelでは10に設定 した。経過時 間∫は,τ と 同一 とした。 HOnon mapおよび これ にガウス分布型雑音 を 加 え た 時 系 列 デ ー タの相 図 を図1に示 す 。 Lorenz modelお よび これにガウス分布型雑音 を 加 えた時系列 デー タの相 図 を図2に示す。 指尖脈波のデー タについては
,こ
れまでの研 究[9]によ リカオス的特徴 を有す ることが指摘 されてお り,最
小埋込み次元 は4で
ある と推定 されてい る。 本実験では, 3人
の健常者の指尖脈波 につい て,各
々安静状態で測定 したデー タを用いた。 デー タのサ ンプ リング時 間は5msである。パ ラ メー タⅣ,τ,dの
値 は,Lorenz modelの場合 と同一 とした。 指尖脈波 デー タの相 図 を図3に示す。 本実験 では,ま
ず近傍点の数たの値 を決定するため に
,H6non mapお
よびLorenz modelのβ(の
=T〒
昇N屯
府
ぃ + ︻ 崇 う ぃ + ヽ ム ぃ + ヽ k χJ χ】 死f
O ginal data +1%Gaussian whitc noise +3%Caussian whitc noisc
図l Hるnon mapの相 図
Fig.l Phase plots ofthe H6non map.
ぃ + ︻ 状 ︶ キ 一 ム , + ヽ k ︶ + ヽ 崇 ﹁ ぃ + 、 崇 ﹁ い 十 一 ︺ 一 ぢ `J onginal data 死j SubieCt A ズど
+1ワ5(〕aussian white noisc
図2 Lorenz modelの 相 図
Fig。 2 Phase plots ofthe Lorenz model.
死 】
+3%Gaussian white noisc
死J
SutteCt C
づri
SubieCt B
図
3
指尖脈 波データの相図データ
,指
尖脈波データ,ラ
ンダムデータを用 いて,E2(1)と たの関係 を調べた。なお,指
尖 脈波データは,図
3のSutteCt Bのデータを使用 した。結果を図4に 示す。ラングムデータの場 合,近
傍点の搬 の値 に関わ らず,E2(1)の
値 はほぼ1と なる。一方,Hё
nOn mapお
よび Lorenz modelの デー タ,指
尖脈波 デー タの場 合,た がデータ長Nの
約10%以 下では,β2(1) の値 は1よ り小 さ くなる。たがNの
5%に
なる と,E2(1)の
値 は0.5か ら0.6の間 となる。本実 験では,雑
音にロバス トであ り,か
つ決定論的 データとランダムデータとを区別できるように するため,た の値 をNの
5%に
設定 した。 Hёnon mapの データについて,n(の
と埋込 み次元どとの関係を求めた結果を図 5に 示す。 図 5に おいて,従
来手法 とはCaOの手法 を意味 す る。 これ は,以
降の 図で も同様 で あ る。 Lorenz modelの データについて,ど1(の とが と の関係を求めた結果を図 6に 示す。図5,図
6 から,雑
音 を加える前のオリジナルデータに対 しては,従
来手法および提案手法 ともに最小埋 込み次元を正 しく決定できることがわかる。す なわち,Hこnon mapの場合は2で
あ り,LorenzmOdelの場合は
3で
ある。 しか し,ガ
ウス分布 型雑音を加えたデータに対 して従来手法 を用い ると,El(の が収束するゴの値は正 しい値 より も大 きくなる。従って,従
来手法は雑音を含む データに対 して有用ではない。一方,提
案手法 は,ガ
ウス分布型雑音を加えたデータに対 して も最小埋込み次元 を正 しく決定で きる。 指尖脈波データについて,El(の と埋込み次 元ど との関係を求めた結果 を図 7に 示す。提案 手法では,こ
れまでの研究[9]の結果 と同様 に 最小埋込み次元はほぼ 4と なる。一方,従
来手 0 ・ 8 0 ・ 6 0 ・ 4 → 百 ﹃ 1 10Number of nearest neighbors(%Of Ⅳ )
図
4
近傍点 の数 とE2(1)の 関係Fig。 4 E2(1)vs.number of nearest neighbors. Hこnon map(N=llX30) ― " OW=lCXXXl) ――B……Lorcnz modc1 9V=1000) ― J ?V=llJt100)Pulsation data(Ⅳ =1000) J ?V=10000) ―●―Random data(Ⅳ=10CXl) ―■― “ ば =10CX10)
― PrOpOSCd method ω =1000J ― " ω =10000D -0-Convendonal method(rV=lαЮ) -4- J 17V=100001 ―O PЮposed method?V=llXXl) A― " ?v=laXXl) -0-Conventional method(Ⅳ =1000J _も_ 中 ?v=icml) 貶 1 ∝ 06 ∝ ψ 0 ︵ ← ︻ 噌 ︵ e H 晴 08 母06 中 04 2 3 4 5 6 7 8 9 Embedding dimellsion(ど)
(a)O ginal data
「 ,・・・ ぉ ……‐・ ‐ r r rr rぉ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Emttding dmellsion(ど 〉 (b)+19/p Gaussian white noise
3 4 5 6 7 8 9 Embedding dmension(ど ) (a)Original data
ヨ
06 噛 04 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Embedding dimension(tr)(b)+1%Caussian white noise
「、二==Tと “・
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Embeddhg dimension(ど)
(c)+3%Gaussian white noise
図6 Lorenz modelに お ける埋込み次元 とE4(d)
の関係
Fig.6 El(d)VS.embedding dimension forthe
Lorenz model. 朦 1 ∝ 06 ” 02 0 ︵ ← ︻ 哨 聰 1 ∝ 06 04 屹 0 ︵ ヽ ▼ ﹃
/rr″
汗
r十
r●` 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Embedding dimension(ど )(c)+3%Gaussian white noisc
図5 Hるnon mapに お ける埋込み次元 とEI(d)
の関係
Fig.5 日 (d)vS.embedding dimension forthe
HるROn map. ″ イ T , . ,,” ” ”・ ,・ / ′ ︲ ︲ , イ F
1 08 “ ∝ ︵ ヽ ▼ 菊
― PЮ pOSed method uv=llxD) 一 " ?V=10000) -0-Conventional method(/V=ICXXJ) -4- " (N=lCXXXJ) 法 を用 いる と,El(の が収束す るどの値 は4よ りも大 きくな り
,誤
つた結果 となる。 この誤 り は,指
尖脈波デー タに含 まれている雑音 に起因 す る もの と考 え られ る。 以上の評価実験 よ り,提
案手法 は時系列デー タに雑音が含 まれる場合で も最小埋込み次元 を 正確 に決定 で きることを確認 した。5.む
す び 本論文では,CaOの
手法 を基 に,雑
音 を含 む カオス時系列データの最小埋込み次元 を決定す る方法 を提 案 した。更 に,Hёno■ mapお よび Lorenz modelか ら生成 されるカオス時系列 デー タにガウス分布型雑音 を加 えたデータ,な
らび に指尖脈波のデータを用いて評価実験 を行 い, 提案手法の有効性 を示 した。 今後の課題 は,提
案手法 を他の実デー タに も 適用 し,評
価 を行 うことである。 文 献F.Takens,“I)ctecting strange attractors in
turbu―lenceデ'in Dyna■ lical Systems and
Turbulence,eds,D.A.Rand and L.S.
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pp.43-50,1997. Embedding dinaension(ど) (a)Subiect A
″
酒
r'IFFi'1「予
L´を
P' メ・・´「
子
イ
(b)SubiCCt B (C)Sub」ect c 図7
指 尖 脈 波 デ ー タに お け る埋 込 み次 元 とfI(d) [6]
の 関係Fig.7 fl(d)VS.embedding dirnension for the
pulsation of human finger capiIIary vesseis.
︵ し ︻ 噛 ︲2 1 08 06 伽 ︵ し H 瑣 8 ど 7 ・Ю 膵 6 m 5 肥 4 ed 3 一 E m [21 [4] [5] 7 ・Ю 西 6 m 4 ed 3 ・ E m
.メ
一
∵
/
〆′′′
/ 中・止
一十∵・
〔7]
[8]
[9]
M.Hる
non,“ A two‐dilnensional mappingwith a strange attractorr C〕確加′ぬ
`Ma加
.Pれ》工,V。1.50,pp.69‐77,1976.
E.N.Loren4“Deteministic non.pe五。sic
now;''■ Aサ胞ο∫.S'.,v01.20,pp■ 30-141ぅ
1963.
I.Tsuda,T.Ttthara,and H.Iwanaga,
`・Chaotic pulsa_tion in hw即an capillary
vessel.s‐and its dependence on mental and
phyttal cOndmons,"rP2テ