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糖蔵に関する研究 (第1報) : 耐糖性微生物の分離

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(1)

昭 和49年11月(1974年) 9

糖 蔵 に 関 す る 研 究(第1報)

一 耐 糖 性 微 生 物 の 分 離 一

坂 田由紀 子* 太 田 馨*

Stadies

on the Preservation

by Sugar

(Part

1)

—The Isolation of osmophill Microorganisms .— Yukiko Sakata and Kaoru Ohta

ま え が き 糖 蔵 は 塩 蔵 と 同 様 に 微 生 物 の生 育 を 防 止 す る た め, 食 品 を 高 浸 透 圧 の も とに お い て貯 蔵 す る方 法 で あ るが, 同 時 に 結 合 水 を 増 大 し,遊 り水 を 減 少 させ るた め 食 品 の水 分 活 性(water activity)は 微 生 物 の生 育 に 必 要 な 水 分 活 性 以 下 とな り,保 蔵 中 の変 敗 を 防 止 す る もの で あ る。 塩 蔵 は 我 国 の食 品,中 で も魚 類 な どに 多 く用 い られ て い る が,比 較 的 食 品 の種 類 も多 く又 好 塩 性 菌 の も た らす 細 菌 学 的 な 問 題 もあ って よ く研 究 され て い る。 しか し糖 蔵 に 関 しては シ ロ ップ,果 汁 濃 縮 物,ジ ャ ム, 菓 子 な ど応 用 され る範 囲 が 比 較 的 限 られ て い る た め そ の 報 告 は 少 な い 。 そ こで 著 者 らは糖 蔵 に 関 し て基 本 的 な 研 究 を 行 な い,糖 蔵 の 際 に よ りそ の効 果 を 上 げ た い と考 え検 討 を試 み た。 糖 蔵 の 際 に 関 与 す る微生 物 は糖 液 の 浸透 圧 に 耐 え る耐 滲透 圧 の菌 と考 え られ るが,本 研 究 に あ た って 先 ず 使 用 す る供 試 菌 の分 離 を 行 った 。 分 注 して常 法 に て滅 菌 し,滅 菌 シ ャ ー レに 注 いで 平 板 と した 。 ◎培 養 温 度 は30℃,4日 間 と した 。 ◎ 菌 の分 離 上 記 の平 板 を実 験 室 の 地 上 約75㎝ の実 験 台 に一 定 時 間 暴 露 し後 恒 温 器 に て 培 養 し コ ロ ニ ー の 出 現 を 待 った 。 得 た コ ロ ニ ーは 同培 地 に て 培 養 を く り返 し分 離 した 。 カ ビ 得 た コ ロ ニ ー よ りカ ビ と予 想 され る もの は,シ ョ糖 1.5∼1.7molに 調 整 したCzapex・dox寒 天 培 地 に 移 し, 各 々の 濃 度 に て コ ロニ ー を 生 育 させ 測 定 期 間10日 間 で コ ロニ ーが1㎝ 以 上 に生 育 す る も の を 耐 糖1生菌 と した 。 実 験 の 部 L耐 糖 性 菌 の 分 離 第1表 の ご と き 普通 寒 天 培 地 を 用 い,こ の 培 地 に シ ョ糖 を1.5molに 調 整 して 添 加 し,7m1宛 試 験 管 に 第1表 Nutrient agar Meat extr. Peptone NaCl Agar agar pH H20 1°o I°0 0.3°0 1.5°0 7.2 1! 図1 シ ョ糖 濃 度1.7molに お け る カ ビ の 生 育 *本 学食 品加工研 究室 これ らの カ ビは,図 の よ うな 培 養 法 で 培 養 し顕 微 鏡 1) に て 観 察 し,そ の 形 態 的 特 徴 か らCharchら の 分 類 検 索 表 に よ りstrainを 検 討 した 。

(2)

- 10- 食物学会誌・第29号 1. Asp. glaucus. conidia とげのあるのが見られる 5. -'/ 5

x

10 ZOx40 6. Asp. versicolor. vesicle 2 . -'/ ascospore 20 x 20 7. Pen. luteunr 3 . -'/ conidiaはだえん形である 20X20 8. Sacch. logos. 100 x 20 長径1O ~20μ 短径 2μ 4. Asp. niger. Vesicle 20 x 40 9.不 明 100 x 20

(3)

昭和

4

9

1

1

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1

9

7

4

年)

5

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.

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き車急水

図2 Slide culture slide cultareは,滅菌したシャーレに図のようなガ ラス管とスライドグラスを無菌的に置きシャーレには 無菌水を少量入れ,スライドグラス上に無菌的に

1cm

角に切ったうすい寒天平板培地をのせ,その上にカピ を1白金カギ宛殖え300Cにて培養し,培養後顕微鏡に て観察した。 結果および考察

-11-@

Asp. glaucus Asp. glaucusはクサイロカビ、などといわれ乾燥し た植物質,皮革などに生育し min.A w値が0.73...,0.75 で,高法透圧に対しても強いカピであって今井らは羊 かんよりこの菌種を分離している。コロニーはくさ色 の粉状であり, ascosporeが特徴的である。

Asp.niger Asp. niger は黒カビと呼ばれシュウ酸, クエン酸 を生産するカピとして有名である。コロニーはしっ黒, こげ茶,などでありその生理などが最もよく研究され ているカピの1つである。繁殖力が強く,食品はもと よりアルミニウム,電気製品,木,プラスチック等に も生育し,人体にはアスペルギルス症として病気の原 因ともなる。 酵 母 酵母菌としては 2種分離したo @ Sacch. logos 比較的巨大な細胞で、マルツエキス寒天培地にて24時 間培養のもので,長径

1

0

...,

2

0

μ

, 短 径 み で あ り , コ ロニーの端ほど長い細胞がみられた。耐糖

i

生が強く

1

.

6molの砂糖添加培地でもよく生育する。 その生理 的性質は第3表のようになり Saccha.logos と考えら れる。 他の主種につレては同定出来なかうた。 第3表 酵 母 の 生 理 的 性 質 Fermentation of sugar glucose galactose maltose lactose sucrose raffinose inulin Precipitated yeast Ring of yeast Film Assimilation of nitrate Assimilation of alcohol

+

+

+

十 十 一

+-十

+

Formation of spore

+

前述したように食品保蔵上重要な意義を持つのは, 微生物が生育出来る最低限界の水分活性 (min.Aw) である。食品の水分が40%以下で生育するのはカピに 限られ,その中でも Aspergillusが水分約15%まで生 育するとされている。特に Asp.glaucusは 300Cに 於て A W値が O.7とされ,ショ糖濃度60%でも生育し Assimilationof sugar glucose

+

galactose

+

maltose

+

lactose sucrose 十 うるとされている。これは著者らの実験に於ても同様 の結果を得,極めて耐浸透圧性の菌であり,今井らも 生菓子より極めて耐浸透圧性の高い同種の菌を分離し ている。以上の事から Asp.glaucusは非常に高い耐 凄透圧性を有し,濃厚な味つけの食品の変敗の原因菌 となると考えられる。糖蔵の実験の際にこの菌の使用

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- 12ー は原因菌として有効であると考えられる。 ま と め 糖蔵について実験を行うにあたり,その供試菌とす るカピ,酵母を空気中から分離した。 1. 糖濃度の高い培地に得た落下菌はカビが大半であ って耐糖性が特に強いものは Aspergillus 7種, Penicillum, 3種であった。酵母は2種分離した。 2. 分離したカピ,酵母について特に耐糖

i

生の強し、ヵ ピ6種についてその形態を顕微鏡で観察を行い, strainを推定した。 3. 特;'こ耐糖庄の強いカピ, Asp. glaucusを分離し た。これは60%糖液でも充分に生育し,この菌は今 食物学会誌・第29号 井らも指摘しているように,濃厚に調味された食品 に対する変敗の原因菌と考えられる。 4. 酵母2種について生理的作用から strainを推定 したが, 1種は Sacch.logosと判明したが, 1種 は不明であった。 参 考 文 献

1) C. Thom and M. B. Clurch: A Manual 01 Aspergilliam& Wilkis Co (1945)

2) 安斉博他,微生物学実習指針, 170(1970) 3) 京都大学食品工学研究室,食品工学実験書下巻,

10

参照

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