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スズの生化学的研究 : I スズの過剰摂取がシロネズミの成長および組織の銅, 亜鉛, カルシウム含量に及ぼす影響について

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(1)

昭 和51年11月(1976年) 一21一

ス ズ の 生 化 学 的 研 究

1ス

ズ の過 剰 摂 取 が シロ ネ ズ ミの 成 長 お よび 組 織 の銅,亜

鉛,カ

シ ウ ム含 量 に及 ぽ す 影 響に つ い て

平 岡 幸 枝*,新

納 英 夫**

Biochemical

Studies

on Dietary

Tin.

1 Effect of excess dietary tin on the growth of rat and on the levels of copper, zinc and calcium in varions tissues.

Yukie Hiraoka, Hideo Nihiro

1.緒 言 ス ズ は 我 々を と り ま く環 境 中 に は 広 く,不 規 則 に存 在 して お り,.動 植 物 か ら微 量 で は あ るが 広 く検 出 され る。 これ まで ス ズ は 生 体 内 で 特 異 的 な 生 理 的 役 割 を果 た す 元 素 で あ る とは 一 般 に考 えて お らず,こ の 面 で の 1) 研 究 も少 な い 。 しか し最 近 に な って,Schwarzら は ス ズ を 完 全 に 除 外 して 作 製 した 食 餌 に 異 った量 の ス ズ を 添 加 し て ラ ッ トを 飼 育 し,ス ズ の添 加 が そ の 生 長 に効 果 が あ る こ とを 認 め,ス ズ は 哺 乳 動 物 に と つて 必 須 で あ る と考 え た 。 しか し,生 体 内 で の生 理 的 役 割 や 必 要 2) 量 に つ い て は わ か っ て い な い 。 スズの毒 性の研究 は主 と して有機 ス ズ化合物 で検討 3」 され そ の 毒 性 が 認 め られ て お り,無 機 の塩 類 は 非常 に 大 量 に 摂 取 した 場 合 に の み 毒 性 が あ る と考 え られ て い た 。 しか し,近 年 カ ン詰 食 品 中 の ス ズ に 由来 す る と思 わ れ る食 中 毒 が 世 界 各 国 で 起 こ り,日 本 で も1963年 ∼ 1964年 の 夏 に,オ レ ン ジ ジ ュ ー ス カ ンヅ メ に よ るか な 4) り大 規 模 な食 中毒 が 発 生 した と報 告 され て い る。食 品 衛 生 法 中,清 涼 飲 料 水 の ス ズ 許 容 限 度 規 格 は,150ppm で あ る が,こ の時 の オ レ ン ジ ジ ュー ス は この値 を著 し く超 過 し,な か に は400∼500ppmの 溶 出 を 認 め た 例 も報 告 され て い る。 カ ンヅ メ食 品 中 の ス ズ の 溶 出 を 調 カ ン ヅ メ 中 の ス ズ

\闇缶後の時間

¥1

Ohr パ イ ン ア ツ プ ル

57ppm 106 6hr 160ppm ピ ー チ

30 80 フ ル ー ツ デ ザ ー トi液 48 100 54hr 550ppm 430 225 400 5」 べ た と ころ,表 の 結 果 が 得 られ た。 この よ うに 今 日我 々 が 食 して い る カ ンヅ メ食 品 のい くつ か に,比 較 的 多 量 の ス ズ 溶 出 が 認 め られ た が,食 品等 よ り溶 出 した 多 量 の ス ズ摂 取 が 生 体 に 及 ぼ す 影 響 *大 学 院生栄養学 専攻 **栄 養学研 究室 や 毒 性 を 示 す 限 界 な どに つ い て は,今 日ほ とん どわ か って い な い 。 また,ス ズ の 排 泄 は 主 と して 腸 管 か ら行 なわ れ,腎 臓 の 果 た す割 合 は少 な い と言 わ れ て い るが 明 らか に な って い な い 。 そ こで 今 回 は,ス ズ を シ ロネ ズ ミに 過 剰 摂 取 させ ス ズ の生 体 に及 ぼ す 影 響 を 調べ た ので そ の結 果 を 報 告 す る。

(2)

-

22-n

.

実験方法 (1) 実験動物 市販の70,...._,80gの Wistar系シロネズミを購入し, 市販粉末飼料で飼育して体重約100gになったオスシ ロネズミを用い,一群5匹として実験に供した。 (2) 飼育方法 飼育は,市販の粉末飼料に酢酸第一スズの形で添加 し,スズ量0,0.,1 0.2, 0.3%になるように調製し た飼料を用いた場合と, スズ量0,0.3, 0.6, 1.0 ~ぎ になるよう調製した飼料を用いた場合との 2回にわけ 表

1

.市販の粉末飼料中の金属成分

一~--食物学会誌・第31号 て行なった。なお,市販の粉末飼料中の金属成分を調 べると表1のように異なっており, 第1回飼育の Sn 含量が高くなっていたことから, 0.3%や対照のネズ ミにおいて後で述べる実験データの値に少しの差異が みられるのは,このような条件の違いによるものだと 思われる。飲料水は水道水を用い,水道水中金属成分 は表2に示したっ各実験とも飼料及び飲料水は

n

巾摂 取させた。飼育はすべて 24土

1

0

C

の室内で行い

1

日 12時間照明とした。 ( 1 g中) 第 1 回 飼 育 6ω0.0 7η2.0 7.0 6.8 1.8 第 2 回 飼 育 1 45 1 4必6.5 6.4 表

2

.

飲料水中の金属成分 Sn Zn Cu 1.64 0.002

(3) Sn, Zn, Cu, Ca, Mg, Feの測定

血液や臓器については硝酸と過塩素酸により湿式分 解した液を原子吸光法によって測定した。測定は,島 津原子吸光/フレーム分光光度計 AA-610S形を用 いて行なった。なおCa,Mgの測定には共存するイオ ンの影響を除くため塩化ランタンを添加し, La++ 1000ppmの存在のもとに測定したc

I

H

.

実験結果及び考察 (1) 成長に及ぼす影響 ネズミの体重増加は, Sn量 0,...._,0.3%までの添加 の範囲では,図 1に示したように対照と比較してほと Ca 9.20 f本

w

;

t曽力H五t ~5ll ←→ー→ 0% 250i ()o時ベ)--""" (1.1 』ー』・....{; (1.2 決 ー -.持・・~ (I.:i 2(1(1~ LiO戸 んど影響はなかった。しかし, 0.6, 1.0 %とSnの添 lOOト 加量が増すにつれ図 2に示すように体重増加が著しく 減少した。また,食餌の蛋白消化吸収率が対照75.3% に比べて0.6% Sn添加食では 71.4 %, 1.0%Sn添 ろoト 加食では70.9%と有意に低下していた。

l ワ ppm : i1)~;I;l~) 〆 7 一一」一一一一一一---'一一一-: :; ; j つ 6 i ネズミは,飼育 7週間後にエーテル麻酔し心臓より 採血後,解剖した。解剖時の体重と体重当りの臓器重 量比を表3に示した。体重当りで 0.6,1.0 %の腎臓 と1.0 %の牌臓が大きいことを除いては,外観や臓器 図1

5KQ

( 飼 料 中 に 添 加 )

?022z添加の影響

(

!

2

(week吋 重量に異常は認められなかった。

(3)

- 23ー (2) 血液に及ぼす影響 血液は,へマトクリット値,血清蛋白量.A/G比, 血清中コレステロール量に Snの添加量の増加にとも ない若干の低下がみられた。 血清

4

r

ー1の金属成分は.Sn添加量0"-'0.3%範囲内の 飼育(第1回飼育〉のネズミについてを表4に.Sn添 加量0.3. 0.6.1.0 % (第2回飼育)を表5に示した。 ここに見られるように Sn添加量の増加にともない, 血清中 Sn含量の増加と Cu含量の有意な減少が認め られた。 Sn添加量0"-'0.3%では Zn・Ca・Mgにほ とんど影響はなかったが. 0.6. 1.0 %と Snの添加 量が増すにつれ, CaとMgに減少している傾向がみ られた。 昭和51年

1

1

月 (1976年〉 ←ー←→

o

?f6 0ーベ,_-<>0.3% ¥ 5 [/L.平均) b-.-&-・-A0.6% 持一ーパー--.<1.0% (3) 臓器に及ぼす影響 飼料中 Sn添加量0"-'0.3%範囲内でのネズミの肝 臓では,表 6に示したような結果が得られた。 Sn添 加量0"-'0.3%まででも Sn含量のわずかな増加がみ られ. Cu含量は1 %の危険率で有意に減少している のが認みられた。続いて 0.3. 0.6.1.0 % と Snの 添加量が増すにつれ,より著しく肝臓中 Sn含量が増 加しており. 1.0 % Sn添加食では 21.7μgと 対 照 (13.9μg)の約2倍の Sn量が認められた。 また, Cweeks) ~ , 〆 メ 〆 メ / ノ 〆

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敏 一 加 一影一添 ﹂ U の 一 ↑ 加 一 に 4 ポ 一 中 ¥ / 一

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一 円 切 一 飼 / t ¥ 一 / l 、 n 一 2 Q U 一 図

2

3

.

解剖時のネズミの体重・臓器重量/体重

I¥¥J

体 重(g) I 肝 臓(g) I肝臓/体重(%)I腎臓/体重(%)I牌臓/体重

ω

o

% ( ι

払)

370 :1:43

14.

2.6 3.98 土0.8 0.14 土0

0.63

φ-01 (6匹 ク ) 矧 土70 I 121 土3.0 I3.51 土03 0.16 土0.02I 0.64 土0.02 0.2 (5匹 タ 〉 363 土43 I14.5 土1.6 I 4.00 土0.2 0.17 土0.04 I 065 土0.02 0.3(10匹 タ 〉 l

m

土32I 126 土2.0 I 376 土04 I

O

.

15 :1:

O

.

06 0.64 土0.04 268 土22 9.2 土1.6 I 3.46 土0.2 I O. 19 土0.04 0.63 土0.03 ;9.0 :1:2.6 3.56 土0.5 I 0.19 土0.14 I 0.73 土0.02 (5匹 タ 〉 0.6 土48 252 (5匹 ク 〉 1.0 *標準偏差

ぷ豆一¥一一一_

_

-1 Sn(μE) Z

g) I

c

g) Ca(mg)

o

% 90 土90.6 453 土308 102 土47.5 I 9.7 土0.89 0.1 255 土9 3 . 3 l ω 土101 72 土21.9 I 9.3 土0.73 I 3.4 土1.12 0.2 254*土45.6 I 506 土198 25**:1:12.8 I 98 土0.86 I 3.0 土0.84 l354*叫 33 710 土450 27*土18.7 I 9.0 土0.74 * pく 0.05 ** pく 0.01 (血清100ml中〉 3.1 土0.74 Mg(mg) 表

4

.

血液成分に及ぼす影響一第1回飼育一 土0.97 2.5 0.3

(4)

- 24-表

5

.

血液成分に及ぼす影響ー第2回飼育一

五三-

_

_

_

_

_

_

_

-

-

-

J

O %

Sn(μg) Zn(μg) Cu(μg) 108 360 132.0 0.3 250 288 42.6 0.6 270 216 20.6 1.0 300 300 23.5 表

6

.

肝臓に及ぼす影響-第1回飼育一 Sn(μg) Zn(μ.g) Cu(μg) Ca(μg) 13.3 108 土 4 12.8 57.2 土19 0.1 16.9 106 .::!:5 48.6 土19 0.2 13.9 94**土 5 56.5 土28 0.3 17.0 95*土11 46.2 土33

μg/g

(S

n

)

μg/g

1

2

1

0

8

6

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2

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%

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0.6 1

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o

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2

0

0%

3

.

肝臓に及ぼす影響一第 2回 飼 育 -食物学会誌・第31号 (血清100ml中〉 Ca(mg) Mg(mg) 12.2 3.6 11.6 3.6 11.4 3.3 8.5 2.5 (乾燥重量1g中) Mg(μg) Fe(μg) 644 348 土 86 706 394 土103 601 380 土 70 610 390 土 68 Pく 0.05 料 P<0.01

(

C

u

)

0

.

3

O

.

6

1

.

0

N

o

.

2

0

(5)

昭和51年11月 (1976年〉 Cu含量は著しく減少しており, 1.0

%

Sn添加食では 5.5μgと対照(12.3μg) の約%の Cu量になってい た。さらに Cuの他に Znと Caに減少している傾向 がみられた。1.0

%

Sn添加食のネズミの中で体重増 加が少なく特に弱っていたNo.20のネズミでは,図 3 に示したように Sn量 33.1μg, Cu量 4.6μg とさら 表

7

.

臓器に及ぼす影響-第1回飼育一 - 25-に著しい変化が認められた。 肝臓以外の他の臓器においても, Sn添加量 0"-'0.3 %までの範囲内で表7に示したような Sn含量の増加 とCu含量の減少がみられた。その他の金属には著し し、差はみられなかった。続いて

O

.3

O

.

6

, 1.

0

%とSn の添加量が増すにつれ,より著しく Sn含量が増加し (乾燥重量1g中) 臓 器

1

5

o

%

臓 O.1 Sn(μg) 26.4 27.4 26.2 28.0 腎 d〉じ 臓 10.1 17.9 20. 7 20. 7 23.5 26.3 28.3 32.0 ー i ワ U M q d 一 1 4 ヮ “ q d n u n U A H V 一 A U A U A H V 臓 牌 醇 臓

l

o

;

10.9 12.8 15. 7 16.9 Zn(μg) 75.2 67.9 81. 9 76.6 表

8

.

臓器に及ぼす影響一第 2回飼育一 Cu(μg) Ca(μg) Mg(μg) 28.4 13.4 13.6 10.6 165 256 185 234 697 526 590 689 1000 984 995 996 14.4 16.0 8. 1 8.1 4.7 6.4 3.5 2.2 160 82 164 188 239 145 119 150 810 865 881 876 859 590 884 847 4.2 2.0 1.4 3.1 77 42 75 169 (乾燥重量1g中〉 臓 器│エサ中 Sn(μg) I Sn添加量│ μ

o

%

I 21.2 I 0.3 18.4 腎 臓 I v. v i 0.6 28.6 1.0 3 2 . 6

o

16.8 日 I 0.3 25.1 d、し 出該 │ I 0.6 36.5 1.0 32.3

o

26.5 0.3 27.8 牌 臓 I v.U LI 0.6 34.2 1.0 38.6 Zn(μg) 15.5 58.8 74.5 60.5 Cu(μg) 24.0 12.9 14.2 12.3 806 784 899 889 Mg(μ.g) 16.8

1

1.

4

9.0 3.7 705 696 685 522 722 804 827 1142 醇 0 0.3 0.6 1.0 十 37.8 33.9 35.

61. 8 67.0 79.8 76. 7

9

1.

2

87.9 99.8 108.2 82.6 60.4 40.6 64.3 5.1 6. 7 4.3 2.6 5.8 5.2 3.9 4.6 171 202 192 187 862 620 660 713

(6)

- 26ー ていた。特に, 1.0

%

Sn添加食で飼育したネズミの 心臓では32.3μgと,対照(16.8μg)の約2倍の Sn 量が認められた。 また同時に, Cu含量の減少が認め られ, 1.0 % Sn添加食の心臓では 3.7μgと, 対照 (16.8μg)の約%になっていた。(表8) なお,ネズミの体内には骨の中に最も多量のスズの 存在することがわかったが,このことについては次の 機会に報告する予定である。

N

.

総 括 市販の粉末飼料に酢酸第一スズを過剰添加した場合 についてシロネズミの生体に及ぼす影響を検討し,次 の結果を得た。 (1) 飼料中 O.3, O. 6, 1. 0 %の酢酸第一スズの過剰添 加によりネズミの体重増加の減少がみられたことから, スズの過剰摂取がネズミの正常な成長を限害する因子 になることがわかった。 (2) 飼料中酢酸第一スズの過剰添加によりネズミの自 液・各臓器中に広くスズの蓄積が認められた。同時に, ネズミの血清・腎臓・肝臓中の銅含量が減少しており, 肝臓中の銅含量は0.3%では8.4μg/g,0.6%では 食物学会誌・第31号 5.8μg/g, 1.0 % で は 5.5μ,g/gと対照の 12.3μg/g と比較して著しい減少を示した。このことより,スズ は亜鉛やモリブデンなどと同じくその食餌中の過剰は 体内の銅含量の低下をもたらすことがわかった。その 機構については今後調べていくつもりである。 (3) スズの過剰添加は組織内の亜鉛とカルシウム含量 を減少する傾向がみられたが,銅の過剰の場合と異り 亜鉛含量の低下はわずかであった。 文 献

1) K. Schwarz, D. B. Milne & E. Vinyard: Biochem. Biophys. Res. Comm 40, 22(1970)

2) E.

J

.

Underwood: Trace Elements in Human

and Animal Nutrition, 3rd edition, 450-452,

Academic press, New York and London (1971)

3)大森義仁:池田良雄他編,中毒症一基礎と臨床-,

266-272,朝倉書庖,東京 (1975)

4 )大森義仁,高仲正,田中悟,池田良雄,隆矢強: 食衛誌14号, 69-74(1973)

参照

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