一般化最高ウェイトユニタリ表現と等質ケーラー多様体
伊師英之(名古屋大 多元数理) 概要. 簡約型とは限らない実リー群に対し, 一般化最高ウェイトユニタ リ表現なる概念を導入し,それは等質ケーラー多様体上の等質正則直線束 の正則切断からなるヒルベルト空間に実現されるというボレル・ヴェイユ 型定理を紹介する. さらに分裂型可解リー群については,その一般化最高 ウェイトユニタリ表現を全て分類する.はじめに
0.1. 筆者自身の過去の仕事 [8] の紹介から始めさせていただきたい. 等質ジーゲル 領域 D に単純推移的に作用するアファイン変換群 G の 1 次元表現 χ : G→ C× に 対し, D 上の正則函数の空間 O(D) に実現される G の表現 πχ を πχ(g)F (z) := χ(g)F (g−1Z) (F ∈ O(D), g ∈ G) によって定義する. 表現 πχ がユニタリ化可能であるとは, 次の二条件をみたす非自 明なO(D) の部分空間 Hχ(D)̸= {0} が存在することをいう: (H1) Hχ(D) はヒルベルト空間の構造を持ち, O(D) のコンパクト開位相に関して, 包含写像Hχ(D) ,→ O(D) は連続. (H2) 任意の F ∈ Hχ(D) と g ∈ G について πχ(g)F ∈ Hχ(D) かつ∥πχ(g)F∥Hχ = ∥F ∥Hχ. このとき (πχ, Hχ(D)) は G のユニタリ表現であり, 常に既約である. 論文 [8] におい て πχ がユニタリ化可能となる χ は全て決定され, さらにユニタリ表現 (πχ,Hχ(D)) は可解リー群 G についての軌道の方法を用いて分類された. ジーゲル領域 D が対 称のとき, D の正則同型群の連結成分 S = Authol(D)◦ はエルミート型リー群であ り, G = AN となるような岩沢分解 S = KAN がとれる. さらに χ(g) が det g の累 乗のときは, πχ は S の正則離散系列表現の解析接続 ([24]) を G に制限したものと なっている ([20, 22] 参照). 一般に正則離散系列表現およびその解析接続は最高ウェ イト表現であり, 有界対称領域上の正則ベクトル束の正則切断の空間に実現される ことが知られている. このことから, 次の問を立てることは自然であろう: 『可解リー群 G のユニタリ表現 (πχ,Hχ(D) は何らかの意味で最高ウェイト表現だ ろうか?』 我々の答は『然り, ただし, とても広い意味で』であり, この「広い意味での最高ウェ イト表現」が本講演のテーマである.0.2. 我々の議論のアウトラインは以下の通りである. 第 1 節で, この研究の対象で ある一般化最高ウェイト (Generalized Highest Weight) ユニタリ表現なる概念を導 入する. これは Neeb [17, 18] の定義を拡張したもの (条件を落としたもの) である. 第 2 節では Lisiecki [14, 15, 16] の導入したコヒーレントステート (Coherent State) 表現と GHW ユニタリ表現が本質的には同等であることを説明する. GHW ユニタ リ表現を CS 表現として幾何学的に捉えることにより, 等質ケーラー多様体との結 びつきが自然に現れる. 第 3 節では GHW ユニタリ表現を等質ケーラー多様体上の 正則直線束の正則切断の空間に実現するというボレル・ヴェイユ型の結果を論じる. ここまでの話は本質的に既知の結果であり, Neeb [18] および Lisiecki [16] に記載さ れているが, 設定の違いのため本稿であらためてまとめる形となった. 第 4 節では [8] の拡張として, 分裂型可解リー群の GHW ユニタリ表現を全て分類する. これは [16, 18] の範疇には全く入らない表現である. 紙数の関係で証明を書くことができな かったが, 結果はかなり分かりやすいと思うし, 異なる GHW を持つユニタリ表現が 同値になる (言い換えると, 一つのユニタリ表現が様々な GHW を持つ) ことや, 軌 道の方法で対応する余随伴軌道がモーメント写像の像と異なることなどの新しい現 象が観察されたことは意義深い.
§1.
一般化最高ウェイトユニタリ表現
1.1. 実リー代数 g の複素化を gC で表す. 複素リー部分代数 p⊂ gC が p + p = gC を満たすとき (ただし p :={Z ; Z¯ ∈ p}), p を一般化放物型部分代数とよび, gC-加 群 V が p に関して一般化最高ウェイト (generalized highest weight, 以下 GHW と 略す) 加群であるとは, 次の二条件を満たす v0 ∈ V が存在することをいう: (V1) p· v0 =Cv0, (V2) U (gC)· v0 = V . このとき p 上の線型形式 λ0 ∈ p∗ で Z· v0 = λ0(Z0)v0 (Z ∈ p) となるものが定まる が, λ0 を GHW, v0 を λ0 に対応する GHW ベクトルとよぶ. 定義から λ0 : p → C はリー代数の表現である. すなわち λ0([Z1, Z2]) = 0 (Z1, Z2 ∈ p) (1) が成り立つ. 以上の概念は Jakobsen-Kac [11] によって g がカッツ・ムーディ代数 の場合に考察されたが, 我々の用語法は Neeb [18] に従う. 1.2. 以後 g は有限次元連結リー群 G のリー代数とする. リー群 G のユニタリ表 現 (π,Hπ) が p に関して GHW ユニタリ表現であるとは, C∞ベクトルの空間 H∞πの稠密な g-部分空間 V で p に関して GHW 加群となるものが存在することをいう. Neeb [17, 18] はこの概念をコンパクトに埋め込まれたカルタン代数 t⊂ g (すなわ ち ead t が Aut(g) の中でコンパクト)の存在の仮定のもとに論じたが, 我々はこの仮 定を必要としない. リー群 G が半単純のとき, p は適当なルート系から定まる通常 の意味の放物型部分代数であり, (π,Hπ) も Harish-Chandra ([7]) の意味の最高ウェ イトユニタリ表現に他ならないことが証明されている ([16, 17]). ここで GHW ユニタリ表現の例を挙げよう. 上半平面 H を保存するアファイ ン変換全体からなる群 G = { gb,a : z 7→ az + b ; a > 0, b ∈ R } を考える. 群 G は SL(2,R) の可解部分リー群 { ( 1 b 0 1 ) ( a1/2 0 0 a−1/2 ) ; a > 0, b∈ R } として実現で き, よって G のリー代数 g は H = ( 1/2 0 0 −1/2 ) と E = ( 0 1 0 0 ) で張られる 2 次 元の線型リー代数と同型である. いま p :=C(H + iE) とおくと, gC= p⊕ p だから p は g の一般化放物型部分代数である. 上半平面H 上のルベーグ測度に関して二乗 可積分な正則函数からなるヒルベルト空間 (H のベルグマン空間) を L2 hol(H) と表 し, 群 G のユニタリ表現 (π, L2 hol(H)) を π(g)f (z) := a−1f (g−1· z) (f ∈ L2hol(H), g = gb,a∈ G, z ∈ H) と定義する. さて α ∈ C に対し H 上の正則函数 fα を fα(z) := ( z+i 2i )−2α (z ∈ H) と定めると, fα ∈ L2hol(H) となる必要十分条件は ℜα > 1/2 で, このとき ˙π(H + iE)fα = (2α− 1)fα が成り立ち, fα は p に関する GHW ベクトルになっている. このように一つのユニタリ表現が無数の GHW を持つことがあり得るというのは, 通常の最高ウェイト理論との大きな違いである. 一方で, ある特定の GHW をもつ ユニタリ表現は同型を除いて唯一に定まること, したがって既約であることを後に 証明する (定理 10). 1.3. 我々の目標は次のように述べられる. 問題 . GHW ユニタリ表現 (π,Hπ) を持つリー群 G を特徴づけ, 可能な (π,Hπ) を全て分類せよ. この問題を考えるにあたって G は単連結で Ker π は離散的であると仮定しても 一般性を失わない. 前節で述べたように, リー群 G が半単純のときは通常の最高
ウェイトユニタリ表現の分類に他ならないので, Enright-Howe-Wallach [4] および Jakobsen [10] によって解決された. この場合, GHW ユニタリ表現を許容する G は, コンパクト半単純群か, 非コンパクトエルミート型リー群である. この結果をふまえ て Lisiecki [15] は G がユニモジュラーの場合を解決した ([17] も参照). この場合の G は, 半単純リー群で GHW ユニタリ表現を許容する上述の群とハイゼンベルグ群 との半直積であり, その GHW ユニタリ表現の表現空間は, それぞれの群の表現空 間のテンソル積として与えられる. 我々の問題の完全な解答は未だ得られていないが, 本講演では G が分裂型可解 リー群の場合を解決する. 1.4. 次の補題は以後の議論で必要となる. 補題 1. リー群 G の GHW ユニタリ表現 π の GHW λ0 ∈ p∗ は, gC 上の線型形式で λ0( ¯Z) =−λ0(Z) (2) が全ての Z ∈ gC について成り立つように一意的に拡張される. すなわち実線型形 式 ξ0 ∈ g∗ が存在して λ0 = iξ0 とかける. 証明. まず π のユニタリ性から Z ∈ p ∩ g について, よって Z ∈ p ∩ p につ いても (2) が成り立つことに注意する. 一方 gC = p + p から, 任意の Z ∈ gC は Z = Z1+ ¯Z2 (Z1, Z2 ∈ p) の形で表せる. このとき λ0(Z) := λ0(Z1)− λ0(Z2) と定義すればよい. これが well-defined になるためには, もう一つの表示 Z = W1+ ¯ W2 (W1, W2 ∈ p) に対して, λ0(Z1)− λ0(Z2) = λ0(W1)− λ0(W2) が成り立てばよい. これは Z1− W1 = ¯W2− ¯Z2 ∈ p ∩ p より λ0(Z1 − W1) = λ0( ¯W2− ¯Z2) =−λ0(W2− Z2) から従う.
§2.
コヒーレントステート表現
2.1. ヒルベルト空間H (ただし 1 < dim H ≤ ∞) に付随する射影空間 (H\{0})/C×をP(H) と表し, その元 Cv (v ∈ H \ {0}) を [v] と書く. 射影 p : H \ {0} ∋ v 7→ [v]∈ P(H) の v での微分 dpv : Hπ → T[v]P(Hπ) は線型同型H/Cv ≃ T[v]P(H) を引 き起こすが, これによって接空間 T[v]P(H) には複素構造 J が定義され, P(H) は複 素多様体となる. リー群 G のユニタリ表現 (π,Hπ) について, dimHπ > 1 のとき G はP(Hπ) に g· [v] := [π(g)v] (g ∈ G, v ∈ Hπ\ {0}) によって作用する. 軌道 G· [v] ⊂ P(Hπ) を O[v] と書く. 部分集合 P(H∞π ) := { [v] ; v ∈ H∞ π } ⊂ P(Hπ) は G 不変であり, その上の無限小変換が X·[v] := dpv( ˙π(X)v) (X ∈ g, [v] ∈ P(H∞π )) と定義される. さらに [v] ∈ P(H∞π ) のとき O[v] ⊂ P(H∞π ) は C∞ 多様体であり, 接空間 T[v]O[v] は { X · [v] ; X ∈ g } に等しい. ユニタリ表現 (π,Hπ) がコヒーレントステート (coherent state, 以下 CS と略す) 表現であるとは, 軌道O[v] が P(Hπ) の複素部分多様体となるような [v]∈ P(H∞π ) が存在することを いう (Lisiecki [14, 15, 16]). このとき [v] を CS, v を CS ベクトル,O[v] を CS 軌道と よぶ. 群 G の作用はP(Hπ) の複素構造を保つので, O[v] が CS 軌道であるためには 接空間 T[v]O[v] ⊂ T[v]P(Hπ) が J -不変であることが必要十分である. 2.2. CS 表現と GHW ユニタリ表現の関係を考えよう. 命題 2. リー群 G の GHW ユニタリ表現 (π,Hπ) (dimHπ > 1) の GHW ベクトル v0 ̸= 0 について, O[v0] ⊂ P(Hπ) は CS 軌道であり, よって π は CS 表現である. 証明. 前節終わりの注意により, X · [v0] ∈ T[v0]O[v0] (X ∈ g) に対し J(X · [v0])∈ T[v]O[v0] であることを示せばよい. ここで X ∈ gC = p + p だから X = Z1 + ¯Z2 と なる Z1, Z2 ∈ p がとれる. このとき X = (X + ¯X)/2 = (Z1+ Z2+ ¯Z1+ ¯Z2)/2 だか ら Z := Z1 + Z2 とおくと X = (Z + ¯Z)/2. よって Z = X + iY となる Y ∈ g がと れる. このとき X· [v0] + J (Y · [v0]) = dpv0( ˙π(X + iY )v0) = dpv0(λ0(Z)v0) = 0 より J (X· [v0]) = Y · [v0]∈ T[v0]O[v0]. したがって主張は示された. 命題 2 の逆に当たる次の事実も成り立つ (前半は容易).
命題 3. リー群 G の CS 表現 (π,Hπ) について, CS ベクトル v1 ∈ H∞π に対し pv1 := { Z ∈ gC; ˙π(Z)v1 ∈ Cv1} とすると pv1 は一般化放物型部分代数. さらに v1 が π の巡回ベクトルならば, π は GHW ユニタリ表現で, v1 は GHW ベクトルで ある. 2.3. 前節により, GHW 表現と CS 表現は本質的には同値な概念であることが分か るが, CS 表現として捉えることには複素幾何と複素解析が援用できるというメリッ トがある. ポイントは, CS 軌道 O[v0] には等質ケーラー多様体の構造が入るという 事実である. 一般にヒルベルト空間 H の内積から, P(H) 上の計量 (フビニ・スタ ディ計量) が次のように自然に定義される: 接空間 T[v]P(H) の元 dpv(u) (u∈ H) に 対し, u の (Cv)⊥⊂ H への直交射影を u1 としたとき ∥dpv(u)∥2F S := ∥u1∥2 ∥v∥2 = ∥u∥2∥v∥2− |(u|v)|2 ∥v∥4 . この計量はユニタリ群 U (H) の P(H) への自然な作用に関して不変なケーラー計量 である. よってフビニ・スタディ計量を CS 軌道 O[v0] ⊂ P(Hπ) に制限したものは, O[v0] 上の G-不変なケーラー計量となる. 言い換えると O[v0] は G が自己同型群と して推移的に作用する等質ケーラー多様体である. 等質ケーラー多様体の具体例と しては, 一般旗多様体 (コンパクト半単純リー群 K をトーラス部分群 T ⊂ K の中 心化群 C(T ) で割った商空間 K/C(T )), 平坦な等質ケーラー多様体 (複素ベクトル 空間 CN の格子 Γ による商 CN/Γ), および有界等質領域があるが, 一般の等質ケー ラー多様体は, これら 3 種類のものから構成されるという次の基本定理が知られて いる. 定理 4 (Dofrmeister-Nakajima [3]). 等質ケーラー多様体 M は有界等質領域 D を底 空間とし, 一般旗多様体 K/C(T ) と平坦な等質ケーラー多様体CN/Γ の直積をファ イバーとするようなファイバー束の構造をもつ. ケーラー計量を無視して複素多様 体としてみると, M は直積空間 D× (K/C(T )) × (CN/Γ) と正則同値である. 定理 4 は等質ケーラー多様体に推移的に作用するリー群 G およびそのリー代数 g の構造を詳細に分析することによって証明される. Lisiecki [15, 16] は基本定理の 結果と, g の構造定理の両方を利用して, G がユニモジュラーの場合の CS 表現を分 類した. Dorfmeister-Nakajima [3] 以前にも, 等質ケーラー多様体の理論を援用して リー群のユニタリ表現を研究するという着想は Rossi-Vergne [20] や藤原英徳 [5, 6] にみられる.
2.4. リー群 G のユニタリ表現 (π,Hπ) について, µπ :P(H∞π )∋ [v] 7→ µπ([v])∈ g∗, ただし ⟨X, µπ([v])⟩ := 1 i ( ˙π(X)v|v) ∥v∥2 (X ∈ g), と定まる写像をモーメント写像とよぶ ([14, 17]). ここで g∈ G に対して ⟨X, µπ(g· [v])⟩ = 1 i ( ˙π(X)π(g)v|π(g)v) ∥π(g)v∥2 = 1 i ( ˙π(Ad(g−1)X)v|v) ∥v∥2 =⟨Ad(g−1)X, µπ([v])⟩ = ⟨X, Ad∗(g)µπ([v])⟩ だから, µπ は G-同変である. 表現 π が GHW ユニタリ表現のとき, 補題 1 におけ る ξ0 ∈ g∗ は µπ([v0]) に等しい. よって CS 軌道 O[v0] の µπ による像は余随伴軌道 O∗ ξ0 := Ad ∗(G)ξ 0 ⊂ g∗ と一致する. 多くの場合O∗ξ0 とユニタリ表現 π は軌道の方法 によって対応するが, 我々はそうでない例を後に観察する (定理 14). 2.5. GHW ユニタリ表現のデータを用いて, 接空間 T[v0]O[v0]上のフビニ・スタディ 計量を記述しよう. まず Z = X + iY ∈ gC (X, Y ∈ g) と [v] ∈ P(H∞π ) について Z· [v] := X · [v] + J(Y · [v]) = dpv( ˙π(Z)v) と定義する. 命題 2 の証明の議論から, Z· [v0] = 0 (Z ∈ p) および T[v0]O[v0]= { ¯ Z· [v0] ; Z ∈ p } が分かる. 補題 5. 任意の Z ∈ p について ∥ ¯Z · [v0]∥2F S = iξ0([ ¯Z, Z]). 証明. フビニ・スタディ計量の定義から ∥Z · [v0]∥2F S = ∥ ˙π( ¯Z)v0∥2∥v0∥2− |( ˙π( ¯Z)v0|v0)|2 ∥v0∥4 . ここで ∥ ˙π( ¯Z)v0∥2 =−( ˙π(Z) ˙π( ¯Z)v0|v0) = −( ˙π([Z, ¯Z])v0|v0)− ( ˙π( ¯Z) ˙π(Z)v0|v0) =−( ˙π([Z, ¯Z])v0|v0) +∥ ˙π(Z)v0∥2 =−( ˙π([Z, ¯Z])v0|v0) +|λ0(Z)|2∥v0∥2 および ( ˙π( ¯Z)v0|v0) =−(v0| ˙π(Z)v0) =−λ0(Z)∥v0∥2
から ∥ ˙π( ¯Z)v0∥2∥v0∥2− |( ˙π( ¯Z)v0|v0)|2 =−( ˙π([Z, ¯Z])v0|v0)∥v0∥2. したがって ∥Z · [v0]∥2F S = ( ˙π([ ¯Z, Z])v0|v0) ∥v0∥2 = i⟨[ ¯Z, Z], µπ([v0])⟩ であり, 右辺は iξ0([ ¯Z, Z]) に他ならない. GHW ベクトル v0 ∈ H∞π に対し pv0 :={ Z ∈ gC; Z · [v0] = 0} とおくと p ⊂ pv0 であり, pv0 も一般化放物型部分代数である (命題 3 も参照). ユニタリ表現 π は pv0 に関しても GHW 表現であり, 補題 1 より v0 に対応する GHW は iξ0|pv0 である. 補題 5 を適用して, 次を得る: (P1) pv0 + pv0 = gC, (P2) ξ0([pv0, pv0]) = {0}, (P3) 任意の Z ∈ pv0 に対し, iξ0([ ¯Z, Z])≥ 0. さらに, 補題 5 と pv0 の定義から (P4) Z ∈ pv0 について iξ0([ ¯Z, Z]) = 0⇐⇒ Z ∈ pv0 ∩ pv0 これらの性質 (P1)∼(P4) は (pv0 ではなく) pv0 が ξ0 ∈ g ∗ における正の全複素的
分極環 (positive totally complex polarization) であることを意味する. よって, 余随 伴軌道 Oξ∗ 0 ⊂ g ∗ 上には G-不変なケーラー構造が p v0 を用いて定まる (Auslander-Kostant [1]). さらに, モーメント写像 µπ の G-同変性と補題 5 から, µπ は O[v0] 上 のケーラー構造を, 余随伴軌道O∗ξ 0 上のそれへと移すことが分かる.
§3.
等質正則直線束と一般化最高ウェイトユニタリ表現
3.1. 連結な複素多様体 M 上の G-同変な正則直線束 L→ M を考える. 点 z ∈ M でのファイバーを Lz と表し, g ∈ G の引き起こす Lz から Lgz への線型写像を JL(g, z) と書く. 正則直線束 L の正則切断の空間 Γhol(L) 上に G の表現 TL が TL(g)s(z) := JL(g, g−1z)s(g−zz) (s∈ Γhol(L), z ∈ M, g ∈ G) (3) によって定義される. 表現 TL のユニタリ化可能性を, 次の性質を持つ非自明な部分 空間HL ⊂ Γhol(L) が存在することとして定義する (0.1 節で述べたものの一般化で ある): (T1) HL はヒルベルト空間の構造を持ち, Γhol(L) のコンパクト開位相に関して, 包 含写像HL ,→ Γhol(L) は連続. (H2) 任意の s∈ Γhol(L) と g∈ G について TL(g)s∈ HL かつ∥TL(g)s∥HL =∥s∥HL.以後, L には G-不変なファイバー計量が定義されているとする. 条件 (T1) から z ∈ M に対して δz : HL ∋ s 7→ s(z) ∈ Lz は連続な線型写像であり, その共役写像 δz∗ : Lz → HL が考えられる. 点 z, w ∈ M について線型写像 δz◦ δw∗ : Lw → Lz を KL(z, w) と書く. この定義から, ℓ ∈ Lw について δ∗wℓ = KL(·, w)ℓ ∈ HL であり, よって s∈ HL に対し (s|KL(·, w)ℓ)HL = (s(w)|ℓ)Lw (4) が成り立つ. とくに s = KL(·, w′)ℓ′ (w′ ∈ M, ℓ′ ∈ Lw′) のとき (KL(·, w′)ℓ′|KL(·, w)ℓ)HL = (KL(w, w ′)ℓ′|ℓ) Lw (5) である. ヒルベルト空間 HL は「KL(·, w)ℓ, (w ∈ M, ℓ ∈ Lw) という形の元から生 成される Γhol(L) の部分空間に内積を (5) で定義して完備化したもの」と特徴付け られる. この意味でHL は KL から「再生」されるので, KL をHLの再生核とよぶ (函数空間の再生核の場合は Lz = Lw =C なのでスカラー値である). 正則直線束 L の複素構造を反正則にとったものを L とすると, L のファイバー計量を用いて L は L の双対束と同一視でき, KL(z, w) : Lz → Lw は Lz⊗ Lw の元とみなすことができ る. このとき KL は直積空間 M × M 上の直線束 L L の正則切断と考えられる. 定理 6 (小林昭七 [12]). リー群 G が M に推移的に作用するとき, (T1) と (T2) をみ たす非自明なヒルベルト空間HL は, もし存在すれば唯一つに定まる. とくに, ユニ タリ表現 (TL,HL) は既約である. 証明. 表現 TL の定義 (3) から δgz ◦ TL(g) = J (g, z)◦ δz (z ∈ M) であり, TL(g) がユニタリ作用素であることから z, w∈ M について KL(gz, gw) = (δgz◦ TL(g))◦ (δgw◦ TL(g))∗ = (J (g, z)◦ δz)◦ (J(g, w) ◦ δw)∗ = J (g, z)◦ KL(z, w)◦ J(g, w)∗ となる. いま (T1) と (T2) を満たすもう一つのヒルベルト空間HL′ ̸= {0} が存在す るとし, その再生核 KL′ とすると, KL′ も同じ変換法則 KL′(gz, gw) = J (g, z)◦ KL′(z, w)◦ J(g, w)∗ (z, w ∈ M) をみたす. よって G が M に推移的に作用することから KL′(z, z) = CKL(z, z) (z ∈ M)
となる定数 C が存在することがわかる. さらに前述のように KL と KL′ を L L の正則切断とみると, 解析接続の一意性から KL′(z, w) = CKL(z, w) (z, w∈ M) が成り立つ. したがってHL と H′L は, 内積に C 倍の違いは或るものの, ベクトル 空間としては同一である. 3.2. リー群 G の GHW ユニタリ表現 (π,Hπ) を前節の TL のユニタリ化として実 現することを考えよう. ヒルベルト空間 Hπ の複素構造を反正則にしたものを Hπ で表し, その元を v (v∈ H) と書く. 対応 v 7→ (· |v)Hπ によって,Hπ は Hπ 上の連 続線型汎関数の空間と同一視できる (リースの表現定理). むしろ我々は Hπ を Hπ の双対空間とみなし, さらに射影空間 P(Hπ) 上の超平面束 (トートロジー的直線束 の双対束) LH π の正則切断の空間 Γhol(LHπ) と Hπ を次の対応によって同一視する: 元 u∈ Hπ に対応する su ∈ Γhol(LHπ) を su([v]) :Cv ∋ av 7→ (u|av)Hπ ∈ C (v ∈ Hπ\ {0}, a ∈ C) で定める. さて, 複素共役表現 (π,HL) は p に関する GHW ユニタリ表現であり, v0は GHW ベクトルである. 命題 2 よりO[v0]⊂ P(Hπ) は複素部分多様体だから, 正則直線 束 LH πのO[v0]への制限 Lπ := LHπ|O[v0] を考えることができる. 1.1 節の条件 (V2) よ り v0 は (π,Hπ) の巡回ベクトルなので, 制限写像 Γhol(LHπ)∋ su 7→ su|Ov ∈ Γhol(Lπ) は単射である. 以後は su|Ov を su と書くものとすると, 我々は埋め込み写像 Φπ :Hπ ∋ u 7→ su ∈ Γhol(Lπ) を得ることになるが, 計算により TLπ(g)su = sπ(g)u (g ∈ G) が確かめられるので, 結局 Φπ により (π,Hπ) が TLπ のユニタリ化として実現され たことが分かる. したがって, 定理 6 より, 次を得る: 命題 7. GHW ユニタリ表現は既約である. 3.3. GHW ユニタリ表現と正則直線束を結び付けるもう一つの方法を説明するた めに, まず Tirao-Wolf [21] による等質正則ベクトル束の一般論を, 直線束の場合に 限定して紹介する. 連結実リー群 G の閉部分リー群 H の 1 次元表現 χ : H → C×
に対して, M = G/H 上の等質直線束 Lχ = G×H C の, 開集合 U ⊂ M での C∞ 切 断は, ˜U :={ g ∈ G ; gH ∈ U } ⊂ G 上の函数 f で f (gh) = χ(h)−1f (g) (g ∈ ˜U , h∈ H) (6) をみたすものと同一視できることは良く知られている. さて G, H のリー代数をそ れぞれ g, h とし, 複素リー代数 q⊂ gC で gC = q + q かつ q∩ g = h となるものを とると, 空間 M = G/H 上には G-不変な複素構造で, その G-不変反正則ベクトル 場が q と一致するものがとれる. さらに q のリー代数としての表現 λ : q→ C で, h への制限 λ|h が dχ と一致するものを考える. このとき直線束 Lχ には G-不変な 複素構造で, その U 上の正則切断が (6) および ˙ R(Z)f(g) = −λ(Z)f(g) (g ∈ ˜U , Z ∈ q) (7) をみたす函数 f と同一視されるようなものが唯一つ定まる ([21, Theorem 3.6]). ただ し ˙R は G の右正則表現の微分表現である (すなわち X ∈ g と f ∈ C∞(G), g ∈ G に ついて ˙R(X)f(g) := d dt|t=0f (g exp tX)). すべての等質正則直線束はこのようにして 得られる. 正則切断の空間 Γhol(Lχ) は, ˜U = G として (6) と (7) を満たす G 上の函 数空間 C∞(G, q, λ, χ) と同一視でき, G の表現 TLχ は左正則表現L の C∞(G, q, λ, χ) への制限と一致する. さて G の GHW ユニタリ表現 (π,Hπ) に対し G[v0]:={ g ∈ G ; g · [v0] = [v0]} と し, 一次元表現 χ0 : G[v0]→ C×を π(g)v0 = χ0(g)v0 (g ∈ G[v0]) となるように定める. 2.4 節で定義した pv0 ⊃ p を考えると, 上述の H, χ, q, λ の関係を G[v0], χ0, pv0, iξ0 が満たすので, 函数空間 C∞(G, pv0, iξ0, χ0) := { f ∈ C∞(G) ; f (gh) = χ0(h) −1f (g) (g ∈ G, h ∈ G [v0]) R(Z)f = −iξ0(Z)f (Z ∈ pv0). } (8) は G/G[v0] 上の或る等質正則直線束 L G π の正則切断の空間 Γhol(LGχ) と同一視でき る. 実際 LG π は 3.2 節で考察したO[v0] ≃ G/G[v0] 上の正則束 Lπ と同値である. い ま u∈ Hπ に対し, fu ∈ C∞(G) を fu(g) := (u|π(g)v0) (g ∈ G) によって定めると, fu ∈ C∞(G, pv0, iξ0, χ0) が確かめられる. さらに fu は行列要素に他ならないので Hπ ∋ u 7→ fu ∈ C∞(G, pv0, iξ0, χ0) は G-同変な埋め込みである. 以上をまとめて, 定理 8. 埋め込みHπ ∋ u 7→ fu ∈ C∞(G, pv0, iξ0, χ0) によって, GHW ユニタリ表現 π は (L, C∞(G, pv0, iξ0, χ0)) のユニタリ化として実現される.
3.4. これまでは GHW ユニタリ表現が, 等質正則直線束 L から定まる表現 TL の ユニタリ化として実現できることを示したが, ここでは逆に, TL のユニタリ化が存 在すれば, それは GHW ユニタリ表現となることを示そう. 3.3 節で述べたように, 一般に G の表現 TL は函数空間上の左正則表現 (L, C∞(G, q, λ, χ)) として実現され ることに注意する. 定理 9. リー群 G の表現 (L, C∞(G, q, λ, χ)) をユニタリ化する非自明なヒルベルト 空間H(G, q, λ, χ) ⊂ C∞(G, q, λ, χ) が存在するとき, (L, H(G, q, λ, χ)) は一般化放物 型部分代数 q に関する GHW ユニタリ表現である. 証明. 条件 (T1) とリースの表現定理により, 次が成り立つような ve ∈ H(G, q, λ, χ) が唯一つ存在する: (f|ve) = f (e) (f ∈ H(G, q, λ, χ)). この ve は表現 L に関する Cω ベクトルであることが証明できる. 等式 (7) より任 意の f ∈ H(G, q, λ, χ) について ˙
L(Z)f(e) = − ˙R(Z)f(e) = λ(Z)f(e) = (f|λ(Z)ve).
一方 f が微分可能ベクトルならば ˙ L(Z)f(e) = ( ˙L(Z)f|ve) =−(f| ˙L( ¯Z)ve) これらから ˙ L( ¯Z)ve=−λ(Z)ve. すなわち条件 (V1) が成り立つ. なお補題 1 のように λ を拡張すると, 右辺は λ( ¯Z)ve とかける. 空間 V := ˙L(U(g))ve と直交するベクトル u ∈ H(G, q, λ, χ) をとる. このとき G 上の函数 ϕu を ϕu(g) := (u|π(g)ve) (g ∈ G) によって定めると, ϕu は実解析函 数で g = e での全ての (高階) 微分係数が 0 だから恒等的に 0. 一方, 定理 6 より (L, H(G, q, λ, χ)) は既約だから u = 0. したがって V ⊂ H(G, q, λ, χ) は稠密だから ve は GHW ベクトル. 3.5. さらに 3.3 節の応用として, 次の定理を証明する. 定理 10. リー群 G のユニタリ表現 (π1,H1) と (π2,H2) がどちらも一般化放物型部 分代数 p に関する GHW λ0 ∈ の GHW 表現であるとき, π1 ≃ π2.
証明. それぞれの表現 πk (k = 1, 2) の GHW ベクトルを vk ∈ Hk とし, 前節 のように 閉部分リー群 G[vk] ⊂ G と一次元表現 χk : G[vk] → C × を考える. さて H :={g ∈ G[v1]∩ G[v2]; χ1(g) = χ2(g) } とすると H も閉リー部分群で, H の 1 次 元表現 χ1|H = χ2|H を χ とする. さらに H のリー代数を h とおき, q := p + hC と おくと C∞(G, q,−iξ0, χ) は或る G-同変直線束 L の切断の空間とみなせるから, 定 理 6 よりユニタリ化は唯一である. 一方, 前節の議論より k = 1, 2 に対して Hk ∋ u 7→ fu ∈ C∞(G, pk,−iξ0, χk)⊂ C∞(G, q,−iξ0, χ) はユニタリ化を与えている. したがって (π1,H1) と (π2,H2) は同値である.
§4.
分裂型可解リー群の場合
4.1. 以後, 連結かつ単連結な分裂型可解リー群の GHW ユニタリ表現を論じる. 考 察の基礎となるのは, 有界等質領域上の等質ケーラー構造に由来する代数構造の入っ た, 正規 j 代数とよばれる可解リー代数である. この節の内容は Piatetskii-Shapiro [19] および Rossi-Vergne [20] による. 分裂型可解リー代数 b と j2 = −id b となる線型写像 j : b → b および線型形式 ω∈ b∗ の三つ組 (b, j, ω) は次の条件を満たすとき正規 j 代数とよばれる:(J1) [Y1, Y2] + j[jY1, Y2] + j[Y1, jY2]− [Y1, Y2] = 0 (∀Y1, Y2 ∈ b),
(J2) 双線型形式 (Y1|Y2)ω := ω([Y1, jY2]) (Y1, Y2 ∈ b) が b 上の j-不変な内積を定め る. この内積 (·|·)ω に関する [b, b]⊂ b の直交補空間を a とすると, a は b の可換なカル タン部分代数になり, r := dim a は b の階数を呼ばれる. 線型形式 α∈ a∗ について bα :={ Y ∈ b ; [C, Y ] = α(C)Y (C ∈ a) } とおく. 定理 11 (Piatetskii-Shapiro [19]). (i) 次の分解が成り立つような a∗の基底{α1, . . . , αr} が存在する: b = b(1)⊕ b(1/2) ⊕ b(0), ただし b(1) := ∑r ⊕ k=1 REk⊕ ∑⊕ 1≤k<m≤r b(αm+αk)/2, b(1/2) := r ∑⊕ k=1 bαk/2, b(0) := a ⊕ ∑⊕ 1≤k<m≤r b(αm−αk)/2. さらに {α1, . . . , αr} の双対基底を {A1, . . . , Ar} ⊂ a とし, Ek := −jAk とすると bαk =REk. (ii) [b(p), b(q)] ⊂ b(p + q) (p, q = 0, 1/2, 1), ただし p > 1 のときは b(p) := {0}. (iii) jb(αm−αk)/2= b(αm+αk)/2 (1≤ k < m ≤ r) かつ jbαk/2= bαk/2 (k = 1, . . . , r).
可解リー代数 b に対応する連結かつ単連結な可解リー群を B とする. この B は次のように構成されるジーゲル領域 D のアファイン変換群として実現される. 定理 11 (ii) より部分群 B(0) := exp b(0) は b(1) に随伴表現によって作用する. 点 E := E1 + · · · + Er ∈ b(1) を通る B(0)-軌道 Ω := Ad(g(0)) は直線を含ま ない開凸錐であり, B(0) は単純推移的に作用している. 一方, 定理 11 (iii) より j は b(1/2) 上の複素構造を定める. 複素ベクトル空間 (b(1/2), j) 上の b(1)-値エ
ルミート形式 Q を Q(u, u′) := ([ju, u′] + i[u, u′])/4 (u, u′ ∈ b(1/2)). と定める. ジーゲル領域 D とは b(1)C× (b(1/2), j) の中の次のような複素領域である: D := { (z, u) ; ℑz − Q(u, u) ∈ Ω } . リー群 B は D に以下のようにして単純推移的に作用
している.
exp(x0+ u0)h0· (z, u)
:= (Ad(h0)z + x0+ 2iQ(Ad(h0)u, u0) + iQ(u0, u0), Ad(h0)u + u0)
(x0 ∈ b(1), u0 ∈ b(1/2), h0 ∈ B(0), (z, u) ∈ D). 4.2. 正規 j 代数 (b, j, ω) に対し, p := { Y − ijY ; Y ∈ b } ⊂ bC とおくと, p は −ω ∈ b∗ における正の全複素的分極環 (2.5 節参照) であることが条件 (J1), (J2) か ら分かる. さらに RAr ⊂ b の直交補空間を b′ とし, p′ := CEr⊕ (b′C∩ p) および ω′ := ω|b′ ∈ (b′)∗ とおくと, p′ は −ω′ における正の全複素的分極環である. 定理 12. 単連結分裂型可解リー群が GHW ユニタリ表現 π で Ker π が離散的なも のを許容するとき, そのリー代数, 一般化放物型部分代数および GHW の組は, 正規 j 代数から上述のようにして構成された (b, p,−iω) または (b′, p′,−iω′) のいずれか に等しい. 正規 j 代数 (b, p,−iω) のデータを用いて GHW ユニタリ表現の存在条件を記述し よう. 定理 11 より, 任意の Y ∈ b は Y = r ∑ k=1 (ckAk+ xkkEk) + Y0 (ck, xkk∈ R, Y0 ∈ (a ⊕ ja)⊥) と分解される. このとき βk := ω(Ak), γk := ω(Ek), (k = 1, . . . , r) とおくと ωY =∑rk=1(βkck+γkxkk) となり, 一方 γk > 0 (k = 1, . . . , r) である. パラメータ ε = (ε1, . . . , εr)∈ {0, 1}rで εr = 1 となるものに対し, qk(ε) := ∑ m>kεmdim g(αm−αk)/2 (k =
1, . . . , r) とし, X (ε) := { s ∈ Rr ; sk > qk(ε)/4 (if εk = 1), sk= qk(ε)/4 (if εk= 0)} , X := ⊔ ε∈{0,1}r X (ε) とおく. 定理 13. 一般化放物型部分代数 p に関して −iω を GHW とする B の GHW ユ ニタリ表現 π−ω が存在する必要十分条件は γ := (γ1, . . . , γr) が X に属することで ある. 続いて, GHW ユニタリ表現の分類について述べる. 定理 14. (i) 定理 13 の γ がX (ε) に属するとき, ωε ∈ b∗ を ωε(Y ) := ∑r k=1(βkck+ εkγkxkk) によって定義すると, GHW ユニタリ表現 π−ωは軌道の方法 (Kirillov-Bernat 対応) により余随伴軌道 Ad∗(B)(−ωε)⊂ b∗ に対応する. (ii) π−ω と π−˜ω が同値である必要十分条件は, ω, ˜ω に対応する γ, ˜γ が同一の X (ε) に属し, かつ εk= 0 のときは βk = ˜βk となることである. 定理 13 と 定理 14 (i) は B, p, ω の代わりに B′ := exp b′, p′, ω′ に置き換えても成 り立つが, 定理 14 (ii) では, 条件に γr = ˜γr を加える必要がある. 4.3. 群 B の 1 次元表現 χ−ω : B → C× を χ−ω(exp C) = e−iω(C+ijC) (C ∈ a) が 成り立つものとして定義する. ジーゲル領域 D 上の正則函数の空間 O(D) に B の 表現 Tω を Tω(b)F (z) := χ−ω(b)F (b−1z) (F ∈ O(D), b ∈ B, z ∈ D) と定義すると, GHW ユニタリ表現 π−ω は Tω のユニタリ化として得られる. 正数 κ > 0 に対して
O(D; κ) :={F ∈ O(D) ; F (z + cEr, u) = eiκcF (z, u) ((z, u)∈ D, c ∈ R)
} とおくと, 表現 Tω の B′ への制限 (以後 Tω′ と書く) はO(D; κ) を保存する. 群 B′ の GHW ユニタリ表現 π−ω′ は (Tω′, O(D; γr)) のユニタリ化として得られる. ここで π−ω′ の表現空間であるヒルベルト空間Hω′(D)⊂ O(D; γr) を具体的に構 成しよう (π−ω についても同様にできるが, 省略する). 任意の x∈ Ω は h ∈ B′(0) := B(0)∩ B′ と c ∈ R によって x = Ad(h)E + cEr と唯一通りに表される. そこで Ω 上の函数 Υω′ を Υω′(Ad(h)E + cEr) := e−γrc|χ−ω(h)|2
によって定義する. 定理 14 (i) の ωε ∈ b∗ を b(1) に制限したものを ξε ∈ b(1)∗ と し, B′(0)-軌道 Ad∗(B′(0))ξε⊂ b(1)∗ を O∗ と書く. 命題 15. 軌道 O∗ 上の B′(0)-相対不変速度 dµω′ で次が成り立つものが唯一つ存在 する: Υω′(x) = ∫ O∗ e−⟨x,ξ⟩dµω′(ξ) (x∈ Ω). 命題 15 より, 函数 Υω′ は次の式によって Ω + ib(1) ⊂ b(1)C 上の正則函数に解析 接続される. Υω′(z) = ∫ O∗e −⟨z,ξ⟩dµ ω′(ξ) (z∈ Ω + ib(1)). 命題 16. (i) ヒルベルト空間Hω′(D) の再生核 Kω ′ : D×D → C は次で与えられる: Kω′((z1, u1), (z2, u2)) = Υω((z1− ¯z2)/i− 2Q(u1, u2)) ((z1, u1), (z2, u2)∈ D).
(ii) D 上の函数 Kω′((z, u), (iE, 0)) = Υω′((z + iE)/i) ((z, u)∈ D) は表現 Tω′ に関
して−iω′ を GHW とする GHW ベクトル. 線型形式 ξ ∈ O∗ に対し, ガウス核 e2ξ◦Q を再生核にもつような (b(1/2), j) 上の フォック・バーグマン空間を Fξ とする. 定理 17. ヒルベルト空間Hω′(D) は次のような積分変換 Φω′ の像として記述される: Φω′ : ∫ ⊕ O∗Fξ dµω′(ξ)∋ f 7→ F ∈ Hω′(D), ただし F (z, u) := ∫ O∗ ei⟨z,ξ⟩f (ξ)(u) dµω′(ξ) ((z, u)∈ D). References
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Hideyuki ISHI
Graduate school of Mathematics, Nagoya University, Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya 464-8602, Japan [email protected]