Sapporo University
NII-Electronic Library Service Sapporo University 札 幌大 学総 合 論叢 第
22
号 (2006
年IO
月)〈
論文 〉
日
英 語 間
の
複 数 表 現
名 詞
に
ど
の
よ う
に
関
わ
る か
浅 見 吏 郎
1
. は じ め
に名
詞 は,
性(
gender
)
・
数 (
number>
・
格 (
case)
が文
に制約
を与
える。数 (
number)
は名 詞に関 連 する文 法 的カテ ゴ リ
ー
(石 綿・
高田1990
)
の一
つ である。英 語で は主 語 が 単 数
(
singular ) か 複 数(
plural)
か によっ て,
使 用す
る動詞
の形 が 決定
する
*
1。(
1
) a.
{
A
stldent stands /Two
students stand }atthe
window,
b
.
{Astudent
is
standiロg
/Two
students are standing }atthe
Window
.
しか し
,
日本 語では 主 語の数
に動 詞 が 影響
さ れ るこ と は ない 。 (2
) {一
人 /二 人}
の生 徒 が 窓 辺に{
立つ / 立っ てい る}
。 同 じ く,
補 語や 目的語
に現
れ ると き も英語
と日本語
で は違い が生 じ る。 (3
) a.
b
.
C.
Ihave
{ado9
/two
dogs
}.
This
is
a whitedog
.
These
aretwo
whitedogs
、
“
1英 語以外の言 語で は
,
両 数 (dual
form
)が 存 在 する もの もある が,
こ こ で は深 く採 り上 げない こ と にする。日本語 にも
.
「両手 」 「両足 」の ように表 現 する こ と もある。15
Sapporo University
NII-Electronic Library Service Sapporo University 浅 見 吏 郎
(
4)
a.
b
.
C.
犬
を(
1
匹/
2
匹)飼
っ て い る。 これ は白
い(
1
匹の)犬
で す。 こ れ(
ら)
は(
2
匹の) 白
い犬 (
??た ち)
です。
い
ず
れの場合 も,
英 語で は明確
に数
が示さ れ てい るの に対
し,
日本語
で は必ず
しもそう
とは限 ら ない 。(
2
>も(
4)
も特
に一
人・
二 人,
もしく
は1
匹・
2
匹 と述べ なく
と も意 味 を伝
達
する ことが できる。 ま た, (
4c
)
に おい て は,「
犬
た ち」
と表
記 し なく
と も複 数
である こ と が分か る*2 。英語
の数
につ い て はBond
(
2005
)
が,動
詞 :代名詞
:属性
:同格
:従属
の5
つ に呼
応 する こ とを述べ てい る。(
5) 数
の呼応 (
Number
Agreement
)
’
撫
takes
abath
・
・
撫
壁
aba 血.
’
鱇
took
埀
§time・
・
撫
…took
垂 塹
time.
’T
,Lnhg
.
gggd
is
ap1
!ppy
.
°
T
.Llhl9
−
999fid
are 四塵
・
’
触
,adalmation ,is
friendly
」’
贓
9
§,dalmations
, arefriendly
.
・
tt
§gdgg
Iooks
nice,
・
These
gdggS
look
nice.
(
動
詞の一
致単数
verb agreement :sg
)
(
同複数
verb agreement :
p1)
(
代名
詞の一
致単数 pronoun
agreement :sg)
(
同複数
pronoUn
agreement :pl)
(
属 性の一
致単数
ascriptive agreement :sg
)
(
同複数
ascriptive agreement ;
P1)
(
同格
の一
致単数
appositive agreement :sg)
(
同複 数
apPositive agreement :
pl)
(
従
属の一
致単数
dependent
agreernent ;sg)
(
同複 数
dependent
agreement :pl)
(
Bond
2005
;19
>
上記の
一
覧
の通 り,
英 語の名
詞に は厳 密 な単数 ・複 数
の形
が あるの に対
し,
日本語
の名
詞 に は,
文 法上 の カ テゴリー
として単 複の形が ない とされてい る。 従っ て,数
の概念
が 日 本 語に は存
在 し ないという考 え方 も存在
してい る。 し か し,名
詞を数
える手段
が存在
し て い る以上,
何 らかの数(
単 数・複
数)
の概 念 が存在
する はず
で ある。 英 語の可算名
詞は数
詞 を前 に 置い て数 を 数 え る。 不 可 算 名 詞 に おい て も助 数 詞(
numerative)
を使 用 して数 え
稔 ただし,
人 以外の犬とい う名詞 に 「たち」を付け るの が普通 か どうか は疑わ しい。
16 N工 工一
Eleotronio LibrarySapporo University
NII-Electronic Library Service Sapporo Unlverslty 日英 語 間の複 数 表現 ることもある。
楳 垣
(
1961
)
では 「日本 語で は,
数に対 する関 心 が 極めて薄 く,
漠 然 と単 複 未 分の考 え 方・
表 し方です ませ てお り,
必 要 な 時 だ け二次 的に考 え・
表 すに過 ぎ ない」 と し,
次の よう
な 記 述 が ある。 (6
) 複 数 化 しては忘 れ,
また複 数 化 して は忘 れ,
結 局は単 複 未 分表
現に逆 戻 りするの で,
これ は日本 人の数の
考
え 方 を 明 らかに反 映 してい る もの と思 わ れる。 す な わ ち,
数 は常に二次 的に考 え られ るの で,
名 詞の形 式で表 現 す るとい う一
次 的 表 現の習 慣 にな れてい ないか ら なので あろ う。
(
楳 垣1961
:189
)しか し
,
英 語では複 数 形 が 数 を表 してい る の に対 して,
日本 語に現 れる複 数 形は,
果た して単に数 だ け を示 してい るの で あろう
か。 も し数 だ け を 示 し,
さ らに 日本 人は数に対 す る意 識 が 弱い だけ
であれば
複
数 形は存在
しない はず
である。本 稿で は
,
日本 語の複 数 形と英 語の 複 数 形 が,
意 味 上で どの よ うに違っ てい るのか,
ま た 両 言 語の 間で,
複 数 形の もつ は た ら き はどう違う
のか を 考 えて み ること にする。名 詞 を 考 える上で
,
この稿で は英 語の冠 詞につ い て は深 く触
れ ない こと とす
る。2
.
日本 語
の名詞
2
.
1
.
文 法 上の数日本 語に は文 法上 の数 が ない か
,
概 念 化 さ れてい ない とされて い る(
安 藤1996
,
石 綿・
高 田1990,
外 山1992,
千 野1975
他)
。 日本 語の 伝 統 文 法 ともい える山 田(
1936
)で は,
次の よう な 記 述 が 見 ら れる。 (7
) 国 語の名 詞に は文 法 上の数の 区 別 を な すの必 要 な し。 若 し その特に多
数 な ることを示 さ む とせ
ば
その語 を重 ねて示す
かt 或 は多数
を 示す
接 尾 辞 を 添へ ざるべ か らず
。 世の文 法 学 者 又 名 詞の数とい ふ こ と を説 け り。 これ も西 洋 文 典に心 酔 し たる弊 な り。(
山 田1936
二112)
西
洋文
典,
つ ま り英 語 などの諸外
国では,単
複 を 明 記 し な け ればな ら ない が,
日本 語に は存在
しない という
こ とで ある。 特に数 を述べ るときに は,
畳 語や接 辞 を使 うという
こ と で ある。同
様
な こ と が,
三浦(
1975)
に も見 ら れる。17
N工 工一
Eleotronlo LlbrarySapporo University
NII-Electronic Library Service Sapporo University 浅 見 吏 郎
(
8)
ヨー
ロ ッ パ の諸
言 語 と ちがっ て,文法
上 の格
も,性
も,数
も,〈
名
詞〉
そ れ自体
には
存在
し ない。格
を示す
ときに は「
人が」「
人の」 「
人 を」
の よう
に〈
助
詞〉
を加
え,
数 を
示す
と きに は「
人 び と」「
諸事
件 」 「子 ど も た ち 」「
彼
ら」の よう
に〈
名 詞〉
を重
加
し たり 〈
接頭語〉 〈
接
尾語〉
を加
え たりす
る。〈
名
詞〉
そ れ 自体
は語形変化
しない の で
あ
る。(
三浦
1975
:64
)
し か し
,
そ れ は文法
の範疇
とし て の「
数」
であ
っ て,実際
に は 日本語
で も名
詞の数
を数
えてい る。 ただ し,
総ての名
詞に当
て はまる とは限ら ない よう
であ
る。楳
垣(
1961
)
で は,
働日
本語
で も,名
詞での数表現
が ない わけ
で はない 。(
中略)
注 意す
べ き点
は,
第一
に,
こ の
種
の複 数表
現が用い ら れ る名
詞は,
主 とし て人問
を示す
もの で,事物
を示す
もの は
少
ない こ とであり,第
二 に英語
の‘
−
s’
と は 違っ て,単複
未 分の形式
に接 尾辞
を
付 け
て複 数形
だけ
に限定す
る表現法
であ
る点
である。(
楳
垣1961
:188
)
と述べ て おり,
何 ら かの階 層 が 根 底にある と考 えてい る。 これはSilverstein
(
1976
)
に述 べ られ てい る名詞
の階層性
に も関
連があると思わ れ る*3 。潜在
意 識の 中での複 数
とし て は,泉井 (
1987
)
に 以 下の記
述が見
ら れ る。 (1
一
口 に複 数 とい っ て も,
その内容
は常に流動
的である。 そ こに内 包さ れ る複 数の概念
もしく
は観
念は,
われわれの意識
に とっ て確
固と し た不動
の もので はない 。 そ れは くっ き りと顕 点
化
し て,
きわめ て明 瞭 な複数
性 をつ よ く示す
こ と もあ れ ば,
またそ れ が意 識の 下 にまさ に没し て
潜
点化
さ れ よう
としつ つ,単数
との区別
さえ定
かでは ない とこ ろ の
,
超数
的 ま たは没数
的 な もの も ある。(
泉井 1987
:8
)
複 数 とい
う
概 念 は,
意 識の中に存在
し てい る という
考 え 方である。日本 語の 意 識の 中で
複数
は,文脈
か ら推 測で きる。 森 住(
2005
)
で は 「犬」
を例に とり,
「犬 を 飼っ てい る」といえ ば 普 通 な ら ば 犬 は1
匹であるが,
デパー
トで 「犬 を売
っ てい る」 とい え ば複 数
であるこ と を 示 し てい る。 この よう
に,
日本 語で は文
脈 が 数 を 握っ てい る と’
S こ の 階 層は,
動 作 者のなりやすさ を示 すとい わ れて いる。
「代名 詞 (一
人称〉二人 称〉 三 人称)→
名 詞 (親 族 名詞・
固有 名 詞〉人名 詞〉動 物 名詞 〉無生物 名 詞 )」の順に表れ る。
18
N工 工一
Eleotronio LibrarySapporo University
NII-Electronic Library Service Sapporo University 日英 譜 間の複数表現 言 えよ
う
。類
別詞
に関す
る研究
の中で,今
里(
2004
)
は,「
日本語
の文脈
で現
れ る名 詞は 概 念 を表
しており,
類 別詞
の機
能 は その支
持 可 能 な部分
と しての具体
的 な構 成 素 を 取 り 出す
こと」
とし てい る*‘ ’5 。本多 (
2005
)
に は、 「
英語
は 日本語
とは異
なり,
モ ノ優位
の言語
で ある」
という
記 述 が ある。 こ の記 述が示 す とおり,
一
般に会 話の中で,
ある名 詞 が 存 在す
るか 否 か を 尋 ねる際 は,
まず名
詞その もの につ い て存在
の有無
を 聞 き,
その後で必要
に応 じて数 を 述べ る*6 。 (ID 「兄 弟はい ます かJ
「はい 。
兄
が一
人,弟
が二人い ます」
ま た,
買い物
などで注文す
る と き も1数
より先
に名詞
を 言う
こ とがある。 吻「
ノー
ト を 三冊く
ださい」
この よ
う
な例か ら も,数
よ り先
に名詞
そ の もの に焦点
を合 わせ るのが,
日本 語の特 徴であ
る と考
える ことが できよう。
さ ら に,
日本語
は単複
の概 念 を厳密
に気に せず,
必要
に応 じて数
を補 う
という
こと が考
え られる。
2
.
2
.
日本
語の複 数形
先
に述べ た とお り,
日本語
で複数
を表現
する に は,
畳 語 形や接辞
など に よる方 法 が ある(
仁
田1997
,
田村
1997
他)
。a
,
人々,
家々,
山々,
目々,神
々,
国々b
.
子 ど も た ち、少年
た ち,
入間
た ち,
息 子 た ちc
. 子供
ら,太郎
ら,
お前
らd
.
皆 様 方,
殿 方寧
4 「類 別 詞 」と は,
「名詞の意 味 的 分 類を表 す 晉 語手段 」と定 義 されて いる。 詳 しくはAikhenvald
(2000
) に述べ ら れ てい る。’
5 水ロ (20Q4a)で は,
類 別 詞に は二通 りあ り,一
つ は文 法 的 な一
致を,
も う一
つ は 「接 辞 」の形を と る,
とある。
錫英 語 な らば
,
“
Do you have anybrothers
or sisters ?”‘
Yes,
l have three brothers.
”
と な る。 質 問の 際,
“
any”
で数を尋ね る。
19
Sapporo University
NII-Electronic Library Service Sapporo University 浅 見 吏 郎
しか し
,
これ ら接 辞 な どは,
直接文法
の範 躊に入る と は 考 えら れない 。 野 元(
1978
)
で も述べ られてい るが 畳語
は ご く限 られ た和
語に し か使
えず,複数化す
る こ とで述 語動詞
の形 が 変 わる こ と も ない 。 仁 田 (1997
)
で も,
「畳 語 形 形 成 は 非 生 産 的で あ り,
非 規 則 的 である」 と述べ てい る。 安 藤(
1996
)
におい て も,
「無 生 名 詞につ けて,
*
本タ チ,
*
花 タチ,
“ 山タ チ と言 う
こ と は で き ない 」と述べ ら れて い る。 名 詞の階層性
で は左 側(
上 位)
の名
詞にの み許 さ れる形である’7 。ま た
,
英 語の複 数 形 と比 較 し て,指
示 内 容 が 異 なる場 合 が見
られ る。「タチ
・
ラ」 が 固 有 名 詞につ いた 場 合である。 「花 子 タ チハ,
モ ウ京 都へ 着 イタ カシラ。」の 「花 子タ チ」 は 「花 子 」 が
2
人 以 上い るの で はな く,
「花 子 を含 む グルー
プ 」ま たは
「
花 子 と その グルー
プ」
の意 味で ある。 しか も,
その 中に は男
の子 が 混 じってい て も さ しつ か え ない 。 対 応 する英 語は
Hanakos
では な く,
Hanako
and othersま た は
Hanako
andher
group であろう
。(
安
藤1996
:5
)
「固 有 名 詞 + たち 」は
,
代 表 とする人 物の名(
固 有 名 詞)
を含 む一
団と考 え ら れ,
固 有 名 詞(
を もつ 人 物)
の一
団で は ない 。 英 語 表 現での“
Hanakos
”
で あ れば.
「花 子という
名前
の人 物」
が二 人 以 上い る こ と になる。 橋 本(
1978
)
でも,「
日本 語や ア イヌ語で 「お じさんた ち」 といっ た ら,
そ れ は,
三 人のお じ さん であ ること も あ る が,
ふ つ う は.
お じ さん とその家 族や友 人のこ とであ る」 と あるよう
に,
日 本 語の 「た ち」には,
同 質の名 詞 を複数
として扱 う
の で はなく,異質
な名
詞 を も含
めた複 数
となりう
る の で ある。接 辞 を 使
う
こ と に よっ て,
述 語 動 詞 が 変 化 する場 合 が ある。 い わゆ る 「敬 語 」 表 現であ る (楳 垣1961
,
野 元1978
)
。泉
井(
1978
>
に お い て,
次の よう
な 記 述が ある。 (15
) 複 個 数 的 な 表 現 は,
日本 語におい ても 別の手 法に よっ て,
統 辞 法 的にあ ら わ れる。「神 々」 「人々 」 「山々」 「家々」 などが そ れであっ て
,
これ らは意 味 的 な その 価 値 判 断におい て第一
級のグルー
プに属 する存 在である。 そ れ ぞ れ が 個 々において鮮 明 な個 性 を 持 ち
,
ま た そ れ ぞ れの神
能,
性 能,
霊 能,
機 能,
性 格におい て尊 ば れ,
あ が廓
7 た だ し,
擬 人 化 する際に は許され る。 (例)き れいな お 花 さ ん た ち ね。
(安Pt
1996)20
N工 工一
Eleotronio LibrarySapporo University
NII-Electronic Library Service Sapporo University 日英語間の複数表現 め ら れ る
存在
である。(
泉井
1978
:26
)
「
神
々」
とい っ た表現
は,単数
で表
さ れる よ り も重い表
現 と な り,
敬 意 をは らっ てい る様 子
が窺
える’6。「
人々」
も敬
意 が伝
わる であ
ろう
。 逆に,
一
人 称で使
用 する と その意 味 が 変 化 する。私
ど もの方
で処
理い た します
。この形は
,
私 ど も という
複 数 形 を取
ることによっ て焦 点 をぼか し,
畏 怖の念 を 表 現 し たり,自
ら遜
っ て相手
を高
め る働
き をし てい る。は
謙譲表現
と なっ てい る。実際
には「
私」
一
人 が 対 応す
るの か も しれ ない が,
私 だ けで はな く全員
が ある物 事に誠 心 誠 意 を 持っ て対 応 し,相手方
に敬
意 を 払う,
という
こと を示 し てい る。 モ ノ を直
示で表現
する よ り も,
複数
にす
ることに よっ て暗喩
し,軟
ら かい表
現に し てい る。敬 語 とし ての複
数
は,
一
人 称で は 謙 譲 を示 し,
二人 称や 三人 称で は尊 敬 を 示 す こ とも あ る*9 。 人称
に関す
る代
名 詞は直 示 的で,
し か も 人 を表
してい る(
仁田1997
)
とい う 特 性 があ
るので,対象
をぼ かす
た め に は複数化
は必要
不可欠
な 配 慮であろう
’1° 。2
.
3
.数表現
の特徴
実際
に数
は どの様
に表
現さ れ てい る の か。名
詞の数
を数
える と きt「
助数 詞」
を 使う
。 これは 英 語の不 可算名
詞に似てい る部分
が 見 られる。 という
よ り,
日本 語の名 詞に は文 法範疇
の数
が存
在しない の であるか ら,
数 えると きに使 用 すること は 必 然であろう
。水
口(
2004b
)
に,
日
本語
の名詞
は 必要
が なけ
れ ば 数 を指定
するこ と な く使
わ れることがで き,
その 場合には 可
算名詞
であれば単数
と も複 数
と も解釈す
るこ と がで きる。数
量表
現 が 現 れて数 が 指 定 さ れる と
,
可 算,
不 可 算 を 問わず,
類 別 詞 が 数 量 詞 句 に義 務 的に付 与 さ’
S 日本は多神 教の た め,
「八百 万の神」と言わ れ る が,一
神教の宗 教の場 合は,
違う意味に な る かもし れ な いDs9 「お 前 ら」と二 人 称 を複 数にする と,
相 手を非 難 する様 な 感がある が,
南 (1987
)で,
相 手や話 題の 人 を低め る用法 を 「マ イ ナス敬語」 と述べ ている。
相 手で は な く 「自分 を」高 く評 価 することでもある の で,
一
種の敬 語と して もよい と思われる 。 q ° 代 名詞の特性につ い て の考察は,
次の機会 にする。
21
N工 工一
Eleotronio LibrarySapporo University
NII-Electronic Library Service Sapporo Unlverslty 浅 見 吏 郎 れ な け ればな ら ない。
(
水口2004b
:63
) と ある よう
に,
その ま ま名
詞を使え
ば単・複
を問わない 名 詞 も,数
量 詞を付
ける こ とに よ っ て複数
形の表
現となる。助 数 詞の特 徴は
,
「〜
本 」 「〜
人 」 「〜
冊 」に見 ら れるよ うに,
数 え ら れる名 詞の 形 状や性質
を示 して い る。 言い換
える と,
形を先 に表 現 して か ら,
その名 詞 を 決めてい る。 井上(
1999)
に述べ ら れて い る とお り,
「助 数 詞は具 現 化のプロ セ ス を 担っ て い る」の で ある。 しか し, 影 響 を受
ける の は形だけでは ない 。例 え ば
,花
は通常 「
〜輪」
と数
えるが,「
〜
本」
と数 える こ とも
ある。 こ の違い は,
花 を取 り扱 う
者の状
況 や立場に よっ て変 化 する(
濱
野2005)
。 生 産 者 や 販 売の 立場では 「本 」 と数え
るであろう
。 しか し,
華 道 や 消 費 者の 立 場では 「輪 」と数 える に違い ない 。 これ は 生産者
が花 と茎,
葉を含
め た形 状に注 目 し,
ある程 度の長 さ を持つ た め 「本」
と呼ぶ と思 われる。 しか も 開 花 して い るかどう
かはそ れ 程 問 題で はない 。一
方,
華 道 や 消 費 者は花の み(
華 道の場 合は違 うと思 うが ) に 注 目 してい る。 し か も,
「輪 」と呼ぶ に は基 本 的 に 開花
してい る こと が条件
であ
ろう
。助数
詞の発 展に関 して は,
三保(
2006
)
で 次の よう に 述べ ら れてい る。鯛
日
本
人は, も
の ご との形状 ・性質 ・様 態
な ど を確
か めなが ら数 え,
かつ t伝達す
るとい
う,類
別 的表
現方法 (
助数
詞)
を 習 得 した。生活様式
が多様
化 し,
社会
関 係 が複雑
化 してい く につ れて情報
量は増
大 し,
正 確 さ が 要 求 さ れる。 もの ご とを類 別 しな が ら
数
える という方法
は, 分析
的 表 現方法
の一
つ で あ り,時
代の流れ に沿っ た必然
的 な情報
処 理方法
でも
あっ た。(
三保2006
:215
)
名
詞 を伝 達す
る数
が増
える につ れ,助数
詞 もその表
現さ れ る名
詞の形
に伴
っ て増加
して い っ たの であ
ろう
。日
本
語の数表
現は, も
ともと数
の概念
の ない名
詞 に 対 して,
形 や 状 況を示 す 語として発展
し た。
その た めに,莫大
な数
の助数
詞が登 場し た と考
えら れ る。名
詞の性質
を示 す 語も
含
ま れ てい るので,
その呼
称に よっ て取 り扱
わ れ方
も判 断で きる とい う,意
思 伝 達の働 き もしてい るの で あろう
。22
N工 工一
Eleotronlo LlbrarySapporo University
NII-Electronic Library Service Sapporo Unlverslty 日英 語 間の複 数 表 現
3
.
英 語
の名詞
3
.
1
.
可 算 名 詞・
不 可 算 名 詞石 田
(
2001
)
で述べ られ てい る よう
に,
「英 語は 「数
」(
number)
に関す
る情
報 を 明確
に表
示す
る」言語
で ある。 日本 語 とは違い,英語
で は「
数」
が大
き な位置
を占
める。数
え ら れる名 詞 が 可 算 名 詞,
数 え ら れ ない 名 詞 が 不 可 算 名 詞である。 可 算 名 詞 とは,
「特 徴 的 な 輪 郭・
境界
線 を もっ てい て,
周 囲 か ら 区 別 され る必要
が ある〈
モ ノ〉
」(
野 村2005
)
で あ り 「空 間 的,
時 間 的,質
的 な 境界
線」
を もつ(
ibid
.
)
。 ま た「
不可算 名
詞と は特 徴 的 な 輪 郭・
境 界 線 を も たず,
内部
が 均質
な〈
物質〉
」(
ibid
.
)
,
ま た は「
最
小の部分
を 考 慮す
る こ と な く,
全体
と部分
の関係
を持つ もの」 (
水口2004a
)
を指す
。可
算
・
不
可算
の別 を まと める と,
(19
)・
可算名
詞 :特 徴 的 境界
線 を もつ モ ノ を表す
。a
.
空間的
境界
線(
例 :cat,
bicyde
)
b
.
時 間 的 境 界 線(
例 :beep
,
flash
)
c
. 質
的 境 界 線(
例 :丘ne wine,
tasty
beer
)
・
不
可算名詞
:特徴的境界線
を もた ない T 内部
が均 質
な物質
を表す (
例
:water,
air)
(
野 村2005
:14
)
となる。 また,学
校文法
などで は 固有名 詞
を 不可算名詞
に区分
し てい るが,
Greenbaum
&Quirk
(
1990)
で は,
ま ず一
般 名 詞と固 有 名 詞 を 区 分 してい る。
Nouns CommonProper
Count
<
一く
Concrete
egbun,
P埴,
.
.
.
Abstract
ConcreteAbstract
ditficulty
,
remark,
.
.
,
butter
,
gold,
.
.
.
music,
1uziless,
_
(
Greenbaum
&Quirk
1990170
)
可算 ・
不 可算
それ ぞ れ に,
具体名
詞,
抽 象名
詞と区 分 されてい る。23
N工 工一
Eleotronlo LlbrarySapporo University
NII-Electronic Library Service Sapporo University 浅 見 吏 郎
集合 名
詞 が 可算
に な る か不 可算
になる か に関 して,高
見(
2005
)
は明確
な形,境
界に注
目 し,
連 続 体 を示 す集
合 体は数え
ること がで きず, 明 確 な 形 や 境 界 をも
つ 集 合 体は数 え
る こ とができ
る, と ま とめ てい る。
(
A
)
集
合体
の成
員 が,
そ れ ぞ れ 単一
体
を成
すと認 識 されるも
の(
ゆえ
に*much.
.
.
と言 えない
)… team
, committee , crowd ,
people
な どa
。
集
合体
を表 す集合名
詞で は数
えない もの… team
, committee , crowd(
ゆ えに*
ten
・team
,*
many
team 等
は言え
ない)
b.集合体
を表 す 集合名詞
で数
えるもの…
people (
ゆ えにten
people
, manypeople
と言 える)
(
B
)集
合体
の成
員が,連続体
を成 すと認 識 され る もの(
ゆ えに much..
と言 える)
… family
,fUrnltUre
, cattle, audience な どa
.
集
合体
を表 す集
合名
詞で は数
えない もの…
family
,fUrnitUre
, audience(
ゆえに*
ten
audience ,*many audience等
は言え
ない)
b
.
集合体
を表
す集合名
詞で数
える もの…
caUle(
ゆ えにten
cattle, many caUle
と言 える
) (
高
見2005
;33
)
集合
を示す事象
が,「
単
一
体」
なのか「連続体 」
なのか に より,
可算
・
不 可算
が分 け
ら れ る という
ことになる。ピ
ー
ター
セ ン(
1990
)
にもあ
る通 り,
可算 ・
不 可算
は意
識の違
い に よ る。 つま り実際
の数
や量より も「
もの を一
つ一
つ として意
識す
る意味
があ
る か どう
か という
問 題」
である。
可
算 ・
不 可算
の 概念
は,
物事
を 全体
と して捉
える か,個
別と して捉
える か に よっ て異
な るの で ある。3
.
2
. 単数 ・複数
単数
及び複数
の形
があるのは,当
然な が ら可算名
詞である。安
井(
1983
)
に もあ
る よう
に,「
英米
人が英語
の名
詞 を 用い る とき,単数形
であ
る か,複数形
である かのいず
れ か を 必ず
用い,
それ 以外
の形 を用い る こ と は許さ れない」
と さ れ る*11 。複 数
の概 念は,「
英 語の名
詞の複
数 化は個体
か ら そ れ ら を含む集合
を 生成
するこ と に相“
11安 藤 (
2005
)で は,OE
に は 両 数 (dual
)が存在 し,
both
, either , neither な ど は その概 念 上 の対 応 物 で
ある (同
396
)とある。24
Sapporo University
NII-Electronic Library Service Sapporo University 日英語 間の複 数表現
当」 (
小林
2004
)す
る。一
つ の個体
と認
識さ れ るモ ノ が,
二つ 以 上(
正確
に は一
つ よ り多
くであろう)
認 識 さ れ る集合体
が複数
であ
る。ま た
,語
自体
の 意 味は複数
であり
な が ら も,
単 数の形で表
現 される名 詞 も存 在 する。 単複
同 型(
Zero
plural)
で示
さ れ る,
一
部
の動
物 な どである。⇒
a
.
This
sheephas
just
had
alamb
.
b
.
These
sheephave
just
had
Iambs
. (
Greenbaum
&Quirk
1990
:95
)
動物
や個
々 の個体
を示す昆
虫 な ど を指す
と きは,
一
つ の集 団と して認 識 さ れるた め,
単数
で表
さ れ る。
ただし,
こ の稿
で は,単数形
の考察
につ い て は深 く述べ ない こ ととする。通 常 複 数 形で用い ら れ る
名
詞があ
る。 二項名
詞(
Binary
nouns)
が そ れ に当 たる が,
これ ら は
対
の概念
として用
い られ る。
衣服
を表す名詞
や,
道具
を表す名
詞 が ある。@
a
.
jeans
,pants
,trousers
,_
b
.
binoculars
,f6rceps
, scissors ,,
.
. (
Greenbaum
&Quirk
1990
:98
)
また
,
群名
詞(
Aggregate
nouns)
と呼
ばれ る,
不特定
の数
の部分
か ら成り
立つ名詞
も複 数
で表す (
Greenbaum
&Quirk
1990)。
囲
arms , communications ,
data
,goods
, media,
outskirts,
remains,
troops,
works,
.
.
,
(
ibid.
)
の 二 項
名
詞は,複数
と言う
よ り,
む し ろ両数
の名残
であ
る と考
えら れ る。 ジー
ンズ も ズ ボ ン も,
また は双眼鏡
や ピン セ ッ ト も一
対で一
つ の名 詞 を示 してい る。 の群 名 詞 も,
単体
で は本来
の使
用目的
に当
た らない もの である。 例 え ば 通 信 は 相 手 が 存 在 し な け れ ば 成 立 し ない もの であ
る。
安藤 (
2005
)
で は,
注 意す
る複数
形 とし て例 を挙
げてい る。 そ れ を下の よう
に まとめて み ることにす
る。 [A
] 複 合 語の 複 数 形玉
B
]絶
対複数 (
p
正uraletantUm )
対
の部分
か らなる衣 類・
器 具25
N工 工一
Eleotronio LibrarySapporo University
NII-Electronic Library Service Sapporo University 浅 見 吏 郎
一
iCS
で 終 わる学 問 名その 他 a
.
身 体の部 分b
.
ゲー
ムc
.
病気
d
,
場 所・
建 物 e.
その他匚
C
]
弖蚕
意複数
(
intensive
plural)
抽象名
詞の場 合は,程度
の強大
さ を 表 す具 象 名 詞の場 合 は 「広 が り
・
重 な り・
連 続」
を表
す [D
] 相互複 数 (
plural
of reciprocity)
[E
]二重 複 数(
double
plural)
[F
] 分 化 複 数 (differentiated
plural)
[
G
コ
on allfours
(
四つ んばい で)
(
安藤
2005
;402
−
406
)
匚
A
]の複 合 語 と [G
コの 「四つ ん ばい で」
を 別 とす ると,
その他
の複数
にはある程 度
の 特 徴が見ら れ る。 対の表
現につ い て は言う
ま で も ない が,
いず
れ もその名
詞単
独で使
用 さ れる語で はな く,
何 ら かの状 況に おい て一
方
的 な 使 用 がな さ れ ない モ ノ を表
して い る。 ま た,
学 問の様に連 続 性 が あるモ ノ もそう
である。 さ らに は ひ と か たま りの集
団 性を表
すモ ノ も複数形
に な りう
る。単
数
形は,
概念
か ら個 別 化さ れ たモ ノ が単体
で認 識 され る名
詞 と考
えら れ る。対
し て複
数 形は,
対 となるモ ノか.
そ れ以 上の数
が認 識 された形
と な る。 二 項名
詞 や絶
対複数
な ど の形
は.常
に対
と なっ て存在
し,単体
で はその役割
を果
たす
ことがない か,単体
で は扱 う
こ と が で き ない モ ノを 示 す。 こ れ は む しろ集 合 名 詞の よう
な役割
を担
っ てい る であ
ろう
。3
.
3
.
不 可算名
詞の助数
詞可
算名
詞は, 数
詞をその まま名
詞の前
に付 ける こ と に よっ て, 数
を表
し複 数化 す
るこ と がで きる。 しか し,
不 可算
名 詞はそれ自
体数
を数え
るこ と が でき
ない 。 固有名
詞は唯
一
(
と さ れ る)存在 す
るモノ を述べ,
抽象名
詞で は形
そのも
の を見
る ことが でき
ない(
た だし,
日 本 語で は抽象 名
詞 を,「
3
本の情報 」
や「
10
大
ニ ュー
ス」
の様
に数
える表
現があ
る)
。物
質名
詞 につ い ては,
その物 質
を 取 り扱 う
モ ノ,
また は物質
が変化
した(
形 とし て切 り
取ら れ た)後
に,
代わ りと な る名
詞 を使
っ て数
える こ と が できる。言
い換
える と,
助数
詞26
N工 工一
Eleotronio LibrarySapporo University
NII-Electronic Library Service Sapporo University
日英 語 間の複 数 表 現
を使っ て
数
える こ と が でき
る。
◎
a
.
1
drank
tWo
glasses
of water.
b
.
Iate
two
pieces
of cheese.
“
water”
や“
cheese”
自体
は不可算
の ま まであ
る が,
“
glass
”
や“
piece
”
という
名 詞 は複数
形に な る。“
glass
”
は“
water”
を飲
むの に使
用 し た道具
であ り,
“
piece
”
は“
cheese”
を切 り取っ た
後
の形で ある。 この よう
な表
現は,
日本
語 と似
た構 造
とな っ てい る。不可
算名
詞 も,可算名
詞の よう
に複数形
を取
るこ とが ある。Greenbaum
&Quirk
(
1990
)
に よ る と
,
吻
Both
quantity
andquality
partition
maybe
expressedby
treating
the
nounitself
asthough
it
expressed aquantity
orquality
.
Thus
a noncount noun canbe
given
countcharacterisdcs and
two
coffees mayin
appropriate contexts mean either‘
tWo
cupsOf
coffee
’
or‘
two
types
Ofcoffee
’
.
という
よう
に,
名 詞 その ものが持
つ 性質
か ら, (
上 の コー
ヒー
の場合) 「
2
杯 」
また は「
2
種類」
という意味
を持
つ こ とになる。 これ は文脈
か ら推測す
る 日本語
の場
合 と似てい る。不 可
算名
詞 を数 え
る場合
は,
可算名
詞に一
度置 き換
えて か ら数
える。 そ のため,置
き換
え
ら れた可算 名
詞に影響
を受
ける た め,数 え方
は一
通り
で は なく,
その都 度変化 す
るこ と に な る。
また,
20
の様
に可算 名
詞に置
き換
えず
に 可算
として扱 う
と きは,文
脈に よ る判 断 が必 要 と な る。 不 可算名
詞は元々一
定
の形
が存在
し ない ので,何
通り
に も数
えるこ とが で きるの である。4
.
表
現
の差
異
4
.
1
.
可算
と不 可算
の概念
英語
で は,漠
然 とし た概 念か ら事象
を取 り
出す
の に数
を数
える。 そ れが はっ き りと した形
とし て現れ たと き,
可算名
詞に な る と考
えら れ る。 不可算名
詞は,
明確
な 境界
が ない の で数
える ことは で きない が,道
具 を使
っ て はっ きり
と区別
し た と きに,
その 道具
を使
っ て 数 える。 ま たは.
変 化 した 後の 形 を見て数 える。 全 体の 漠 然 とし た 中 か ら具 体 化 させ る と きに は,複数
と なる こ と も ある。 た だし,
その場 合 は一
通 りの解 釈で はな く,
名 詞 自体 が持
つ性 質
に よっ て多
義 的になるこ と も ある。27
N工 工一
Eleotronio LibrarySapporo University
NII-Electronic Library Service Sapporo Unlverslty 浅 見 吏 郎
一
方日本 語で は,
元々個々 に取 り
出す
という
こ とに は視点
が置
か れ な かっ た。 この よう
な 考 え 方 は,§
3
.
3
で見 える よう
に,
日本
語 と英
語の不
可算名詞
は似て い る よう
に思 える。
しか し,
個々 と しては 数に関 心 を 持 た ない 日本語
で も,数
を伝
える必要性
が 出て きた。 そ こで使
用 さ れる のが「
類別詞」
である。今
里(
2004
)
で,
結 局
,
名 詞の数 概 念 を表現
する場 合,
二 つ の類 型で は文法
の表
現手法
は全く異
なって はい るが
.
人 間にとっ て基本
的 な認知
能力
で ある「
個別性」「境界 」
お よび「
図地 関 係 」 が ど ち らの 言 語で も共 通 して使 わ れてい る要 因で ある とい える
。 (
今
里2004
:55
) と述べ られる ように,
「個 別レベ ル」,
「境界
」,
そし て 「図 地 関係
」が大 き く左 右 さ れ てい る。 指 し示 す 名 詞 が どの様 な ものか,
どの様
な 性質
を持つ の か,
どの様
な形
をし てい るの か,
ま た は 用 途 は何 か という条件
を満
たす助数詞
が考案
さ れ たの であ
る。さ らに
,
日本 語 名 詞で は 「敬 語 表 現 」 を 示 す た めに も複 数 形 が 使 わ れてい る と考 えるこ とがで きる。 相 手の立 場 を 高 め た り,
自 ら立 場 を 低 め た りする働 き を 持つ 。 つ まり,「
立 場に よる分 類 」 も関 係 して くる と言 える であろう
。日本 語と英 語の複 数 形 表 現 を まとめる と
,
次の よう
になる。英 語は
,
まず 数
が存在す
る。抽象
的 な もの で さえ,
目 に見
える道
具な ど を使
っ て具 体 化 し
,
数 を数 える。 また,
対の概 念 が あるもの,
一
方 的には使 用 するこ とがで き ない もの
,
そ して連 続 性 を持つ もの は複 数 形で表現
する。日本 語 数 は
,
単 数 形で表
されて も文
脈 か ら単数
か複 数
を推
測す
る こ とが で きる。必 要に応 じて複 数 形 を 取る。 その 際
,
まず
形 か ら判 別 して,
その形 を数
える。数
える基
準
は,
性質
であっ たり,
用 途であっ たりす
る。 ま た,直示
を避け
るため に複
数
形に し,
対象
をぼか して暗喩す
る こと も ある。4 ,2 .
数 と 形英 語 は 個 体 を分 別 するため
.
数 を数
える。今
里(
2004
)
で は 英 語 を類 別 詞 言 語と考 え,
数の概 念 は,
「構 成 素の個 別 性レベ ル」に あ るとし,
以 下の よ うに定 義 してい る。(1 )
非 類 別 詞 言 語にお ける 「個 別 性 レベ ル の 法 則 」28
N工 工一
Eleotronlo LlbrarySapporo University
NII-Electronic Library Service Sapporo Unlverslty 日英 語 間の複 数 表現
非類
別 詞 言 語では,名
詞の指
示対象
の個
別性
レベ ル に従
っ て名
詞 を分 類 し,
そ の分 類 ご と に数
を文法
に反映
さ せ る。(
今
里2004
:46
)
名
詞の持
つ特性
か ら分類
し,数
を数
える。
可算名
詞は 目 に見
えた ま ま数
えるこ とがで き る が,
不可算名
詞の場合
は,何
に よっ て分 ける ことが で きる か,
その分 け方
を使
い分類
し,
複数化
する。 黒 川(
2004
)
の記 述の 中に,
商
品と し て加
工 され る 以前
の材料
で さ え無料
な もの は この世 に は ほ と ん ど ない 。有
料
である という
こと は量 られ計算
さ れる とい うこ と である。 英 語は物 質 それ自体
と商
品
と を厳密
に区 別 して言葉
を使
い 分 ける言 語である。
H
本
語は英
語 とは対
照的 な言 語で ある が
,
英 語に おい て も物質
が値
段を必 要 とす
る商
品に変
わ れ ば,当然
そ れは
数 えざ
る をえ
ない 。 そう
で な け れば売
買 が 成 り立 た ない 。 た だ し数え
る た めの文
法法則
があ
っ て, ただ数字
を付
せ るだ けで は済 ま
さ れ ない の であ
る。 それ らは,周
知
の通 り以 下の よう
な形態
を 取っ て「
数 え
られる」 言葉
に転化
するの であ
る。(
黒
丿
i
[2004
:274
)
とある。 本 来物質名
詞は数
が話
題に な る こ と はない 。 しか し,
原材 料
が商 品 化 され た とき,
売 買 目的で数え
る ようになっ た。 そのた め,
助 数 詞 が 必 要になっ た という
こ とであ
る。英語
が 可算
・
不可算
を 問わず数
に こだわ るの に対
し,
日本語
は数
に重点
を置かず ,
むし ろ形
に こだわ る。上 述 し た
今
里(
2004
)
では,
日本
語を類 別 詞 言 語 と し,次
の よう
に定義
して い る。幽 (
1
)
類 別 詞 言 語に おける「
個
別レベルの法
則」
類 別 詞 言 語で は
,名
詞が指
示 可能
な 具 体 的対象
の構 成素
の個 別 性 レベ ル に従
い,
類
別詞
を分類
し,
次に その類 別
詞に よっ て,名 詞
が分類
さ れ るという
2
重構
造を もつ 。
(
今
里2004
:52
)
B3
)(
皿)
類別詞言語
に おけ
る「
図
地関係
の法則」
類
別 詞 言 語で は,名
詞は概念 ・
カ テ ゴリー
を指
示 し,常
に こ れを「
地」
と認識
し
,「
図」
と し ての 具体
的な構 成素
を個 別 性レベ ルに従
っ た各
類 別 詞で具体 化
し て
取 り
出す
。(
今
里2004
:53
)
29
N工 工一
Eleotronlo LlbrarySapporo University
NII-Electronic Library Service Sapporo Unlverslty 浅 見 吏 郎