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*** 看護学科 2 年生 4/15 4/22 治療学 Ⅰ( 市立四日市病院 Dr. 石田 ) 課題以下の文章を一読し 理解に努めること 特に提出等はなし 呼吸器外科疾患の病態と治療 1 気道確保 1 気道気道 : 呼吸に伴う空気の通り道気道確保 : 気道が狭窄や閉塞により空気の通過が妨げられている

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*** 看護学科 2 年生 4/15・4/22 治療学Ⅰ(市立四日市病院 Dr.石田) 課題 以下の文章を一読し、理解に努めること。※特に提出等はなし。 呼吸器外科疾患の病態と治療 1 気道確保 ① 気道 気道:呼吸に伴う空気の通り道 気道確保:気道が狭窄や閉塞により空気の通過が妨げられているときにその通過を容易 にすること。場所と原因の見極めが必要(場所と原因が決定されればおのずと対処方法は 決定される。 Ex.1 脳血管障害や呼吸不全(CO2 ナルコーシス)患者の意識レベルの低下(←原因)に よる舌の筋肉群の弛緩(舌根沈下という←場所) 対処法:肩枕による頭部後屈、エアウェイの挿入 Ex.2 正月にもちをつまらせて(←原因)呼吸困難を呈して救急搬送された老人 場所は?→口腔~咽頭部の閉塞 よって対処法は?:輪状甲状間膜穿刺による気道確保後、異物(もち)の除去 ② 気管挿管 口(経口側管)又は鼻部(経鼻挿管)より挿入し、気管まで挿入(深く挿入しすぎると通 常右側への片側挿管となる→挿管後、左右の呼吸音の聴診は重要) 利点:気管・気管支内の喀痰の吸引ができる 人工呼吸管理ができる 欠点:患者の苦痛(鎮静が通常必要) 鼻部潰瘍や口腔内感染→長期の管理は不適当 ③ 気管切開 頚部の皮膚・前頚筋を切開し、気管前壁を露出し気管に穴をあけてカニューレを挿入 利点(適応):口腔・咽頭部の狭窄・閉塞による呼吸不全の治療(救命処置) 喀痰吸引が気管挿管より容易 気管挿管より患者の苦痛が軽減され(必ずしも鎮静の必要がない)長期の 人工呼吸管理が可能 解剖学的(生理学的)死腔が減り呼吸に有利な状態を安全に作り出すこと ができ、人工呼吸からの離脱(人工呼吸から自発呼吸に戻すこと)が安全 に効率よく行うことができる 欠点:声が出なくなる(発声できない;ただし、スピーキングカニューレというものが あり、それを用いれば発声はある程度できる。)

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嚥下(飲み込みのこと)運動が阻害されるため、食事がとりずらくなる(誤嚥の リスクが高い) ④気管切開患者の看護 気管切開術(手術)への患者の不安・恐怖への対応 手術合併症の早期発見(特に手術創の後出血の有無と程度・感染、皮下気腫) 発声ができなくなった患者への支援 嚥下障害への対応(誤嚥の予防・嚥下リハビリテーション) 口腔ケア 2 胸腔ドレナージ ①胸腔と胸腔ドレナージ 胸腔:肋骨と呼吸筋群によって形成されたかたい胸郭に囲まれた空間。肺により満たさ れている 胸腔ドレナージ:胸腔に空気・浸出液・膿・血液が貯留して肺のふくらみが阻害された 場合、それらを体外に排出するための処置(胸腔内は閉鎖空間であり、排出するには排出 するための道をつくってあげる必要がある。通常肋骨と肋骨の間より皮膚と筋肉を小切開 しドレナージチューブを挿入する) 重要:胸腔ドレナージの特殊性の理解 肺を広げておくためには胸腔内の圧を大気圧に比べ、常に陰圧にしておくことが重要 →水封式ドレナージが必要:ドレナージチューブの直接大気に開放してはならない。必ず チューブ(チューブ(+廃液バック)と大気との間に水(蒸留水)を挟まなければならない) チューブを直接大気に開放するとどうなるか? 胸腔内と大気(外気)がチューブを通じて自由に交通できる→胸腔内圧=大気圧となり、 自由に外の空気が胸腔内に入り込むことができるようになり、その空気に押され肺が虚脱 する。肺を膨らます目的が達成できないばかりか、状態悪化につながる。 水封式ドレナージでは肺を積極的に拡張させる作用は弱く、肺拡張が不十分であれば低圧 持続吸引を行う。 ②胸腔ドレナージを受ける患者の看護 1)大気に直接ドレナージチューブが開放される場合は? 水封ドレナージになっていない(ドレーンバックの適切な場所に適切な量の蒸留水を入れ 忘れた;特に廃液バック交換時) ドレーンが抜去された。(自己抜去・自然抜去) ドレーンと廃液バックをつなぐチューブの接続のはずれ →患者さんの命にかかわる事項であることを十分認識しておく 2)感染予防 ドレーン挿入部の創の観察(創の後出血に関しても観察)

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廃液逆流による胸腔内感染(特に医師からの指示がなければ、重力に従いスムーズに廃液 がバックに流出する位置にチューブの位置を調整すること) 重要 再膨張性肺水腫 肺の虚脱が長期間あった患者が胸腔ドレナージを受け、急激に肺のふくらみが改善するこ とにより生じ、急激に呼吸不全が進行することがある。ぜひ、知っておいていただきたい。 この病態を疑うためにはまず、アナムネが大事。「ずいぶん前から(1 週間とか、1・2か 月)息苦しかった」「ずいぶん前から胸が痛かった」と訴えている患者(我慢強い患者、病 気より仕事を優先した患者)には要注意。胸腔ドレナージ直後「ずいぶん楽になった」と 喜んでいたが、その2~3 時間後、呼吸状態やバイタルサインの悪化がみられたら・・・。 ③胸腔ドレナージが行われるおもな疾患 1)胸膜炎 胸膜に炎症が起こり、多くは胸水が増量し胸水貯留がおこるためにドレナージが必要とな る 胸膜炎の原因 感染性:一般細菌・結核菌・ウイルスなど。抗菌薬投与等も併用され、発熱や胸痛を伴う ことも多いが、無症状の場合(特に結核性のとき)もある。 腫瘍性:がん細胞が胸膜にこぼれる(播種という)ことにより胸膜に炎症がおこり胸水が 貯留する(これをがん性胸膜炎という)。ドレナージチューブより抗がん剤や癒着剤投与が 考慮される場合がある。 その他、胸膜炎の原因は多彩 →原因は胸水の検査(細菌検査、細胞診、生化学検査)等を行い診断する。 2)膿胸 胸腔に感染が波及して胸腔に膿が貯留した状態。高熱、胸痛、呼吸困難感、咳嗽などの症 状を呈する。 a)膿胸の原因 肺内感染症の胸腔への波及・外傷・食道穿孔など b)急性膿胸と慢性膿胸 急性膿胸は感染のコントロール(胸腔ドレナージや抗生剤投与)により肺の再膨張が期待 できるが、炎症が長期化すると肺の拡張が不可逆的に阻害された慢性膿胸となる。慢性膿 胸は手術(肺剝皮術・胸郭形成術)が考慮される。 3)気胸 胸腔内に空気が入った状態を気胸という。 a)気胸の種類(原因) 自然気胸(特発性気胸):明らかな基礎疾患がない患者。原因は肺のう胞(ブレブ・ブラ) の破裂。 続発性気胸:肺の基礎疾患(多くは慢性閉塞性肺疾患(COPD;肺気腫等)やびまん性肺疾

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患(間質性肺炎等)であるが、さまざまな疾患で気胸は発症する)が原因で発症。難治性 で呼吸不全を併発していることもあり治療法の選択に苦慮することも多い。 外傷性気胸:多くは肋骨骨折の骨片が肺を損傷することが原因 医原性気胸:経皮的に胸腔に針を刺入する医療行為(中心静脈ルート確保・経皮針生検) や気管支鏡下生検による肺損傷により発症する 月経随伴性気胸:30 歳代の女性に多く、月経時期に一致して右側に多く発症する。なぜ気 胸になるかの定説はない。 b)気胸の治療 軽度であれば安静経過観察だが、症状が出現したり、一定以上の肺の虚脱を認める患者に は胸腔ドレナージを行う。ドレナージを行っても、空気漏れが軽快しない場合は手術が考 慮される。自然気胸の場合は再発が50%程度の患者に発症するため、再発を繰り返す患者 に対しても手術が考慮される。最近では胸腔鏡下に手術を行うことが多い。 重要 緊張性気胸 一方弁(チェックバルブ)様になって胸腔内に空気がもれ続けると胸腔内圧が非常に高く なると肺が完全に虚脱するばかりか、心臓への血流の還流が阻害され重度の心肺不全(シ ョック状態)となることがある。緊急胸腔ドレナージが必要な病態である。 →あまり認識されていないが、世の中にはたくさんの病気・病態が存在するがこの緊張性 気胸が世の中のすべての病気・病態に優先し、第一に迅速に治療を行わなければいけない 病態であることを知ってください。 4)自然気胸患者の看護 左右の呼吸音の聴診 呼吸状態の観察 ドレナージ管理 再発の可能性についての理解 飛行機の使用やスキューバーダイビングを控えるように指導 3 呼吸器外科の手術 1)開胸と胸腔鏡の手術への導入 開胸とは、胸壁を切開して胸腔を開放する操作をいう。 標準開胸(後側方開胸):背部~側方にかけて約20~25cm 程度の切開で行う。広背筋が切 断され、上腕の挙上しずらい状態となるので手術早期よりリハビリを行うことが重要であ る。その他前方開胸・前側方開胸と言った開胸法がある。近年胸腔鏡が手術に導入された。 開胸と併用して行う方法と、テレビモニターのみをみて(全く直接みない)行う方法があ る。 2)肺切除 部分切除・区域切除・肺葉切除・肺摘除術(全摘術)・胸膜肺全摘除術の順に切除範囲が大 きくなり、侵襲も大きくなることになる。肺癌の標準術式(根治術式)は肺葉切除である

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が、肺葉切除で切除が不可能な場合は肺摘除術(全摘術)が考慮されるが、侵襲が強いた め、術前に心・肺機能検査を十分に行う。部分切除や区域切除は良性の肺腫瘍や転移性肺 腫瘍に行われる。最近では小型の早期肺癌に対しても選択されつつある。胸膜肺全摘除術 は主に悪性胸膜中皮腫に対する術式である。 3)呼吸器外科手術に伴うおもな合併症とその対策 a)肺炎:予防として術前に腹式呼吸の習得・禁煙(できれば 3 週間以上)・口腔ケア(必要 に応じ術前歯科受診)が重要。術後は何といっても、早期離床 b)無気肺:痰や血液の貯留による気道閉塞により、閉塞をうけた気道の末梢領域の肺に空気 が入らない病態。予防法は肺炎予防とほぼ同様。 c)不整脈:上室性頻拍、心房細動(粗動)の頻度が多い。 d)肺血栓塞栓症:呼吸器外科手術はほかの手術に比べ頻度は少ないが、起こりえる。 e)皮下気腫:手術でなくても、胸腔ドレナージのみで起こりえる。空気漏れが多い場合やあ るいはドレナージチューブの効果不足のため空気漏れが吸引しきれず皮下や筋肉へ空気が 漏れ出た状態で、体表から握雪感として触知される。対応はドレナージチューブの効果を 上げて対応(低圧持続吸引の圧を上げる・有効なドレナージチューブを再挿入する) 4)呼吸器外科手術を受ける患者の看護 a)呼吸器外科手術の対象 肺・縦隔・胸壁に対する手術であり、対象患者は青年期から老年期まで幅広い。臨床症状 のない患者も多く手術を突然のできごととして受け止めている場合も多い b)手術前の看護 術前検査は外来でほとんど行われ、治療内容の説明も終了している場合が多いので病棟看 護師は外来看護師より引継ぎを密にする必要性がある。入院から手術までの期間も短く病 態生理に関する情報を早急に収集しアセスメントする能力を高めていただきたい c)手術後の看護 手術室担当看護師より手術内容を確認するとともに胸腔ドレーン・静脈ライン・動脈ライ ン・硬膜外麻酔ラインの挿入部位の把握を速やかに行い全身状態の観察・呼吸状態の観察 と適切な酸素療法の実施・確実な胸腔ドレナージ管理・疼痛や苦痛への援助を行っていた だきたい d)開胸術を伴う手術法と術後の看護 一側肺全摘術後とその他の術式のドレーン管理は異なることを知っておいていただきたい。 e)回復期の看護 日常生活指導や職場復帰にむけての援助、また術後補助療法(術後抗がん剤治療を行う場 合もある)の可能性もあり(退院時、手術病理結果が判明していないことの方が多く、手 術後の追加治療が必要な状態かどうかわからない状態である)、いずれにせよ体力の回復に むけて援助していただきたい。 4 肺腫瘍

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1)良性腫瘍 過誤腫が最も多く、次に中年女性によく発生する硬化性血管腫が多い 2)悪性腫瘍 a)原発性肺がん 疫学 日本人の悪性腫瘍による死亡の第一位。人口の高齢化により増加傾向が続いている。(肺癌 は60 歳以上に好発する)喫煙は肺がんの発生率と関係が深くブリンクマン指数(Brinkman index; B.I.とよく略される)=1 日の喫煙本数×喫煙年数が、400 以上で危険群となる。受 動喫煙も肺癌発生に関与が指摘されている。女性の喫煙率の低下が鈍く、以前は男性の方 が肺癌発生数が大変多かったが(5~10:1)であったのが、3:1 まで差が縮まった。 病理 扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌、小細胞癌の4 つの組織型が多いが、その他さまざまの組織 型が存在する。その組織型により特徴の違いがある。組織型により治療方針にも違いがあ り(特に抗がん剤種類の選択)、その特定はますます重要となってきている。 症状 がんが比較的太い気管支に発生すれば、血痰、咳嗽がおこり、気管支閉塞がおこると肺炎 となる。(肺癌による閉塞性肺炎という) がんが胸膜に浸潤すれば、胸痛がおこる 癌が胸腔内を通る反回神経に浸潤すれば、嗄声(声がれ)が生じる 癌が上半身の静脈が集まる上大静脈を閉塞すると顔面。上肢の腫脹が生じる。(これを上大 静脈症候群という) 癌が、肺尖部(肺の上部、頚部に近い位置)に発生する(これをパンコースト肺癌という) とそこを通る腕の神経に浸潤し上腕痛を生じる。また交感神経に浸潤し縮瞳、眼瞼下垂、 顔面の発汗停止を生じる。これをホルネル(Horner)症候群という。 その他、肺癌の遠隔転移先の症状など(肺癌は症状が出ずらく、肺癌が転移した先の症状 で発症することも珍しくない;Ex. 意識障害にて救急搬送された患者さんがその後の精密 検査で肺癌(脳転移を有する)であることがわかる。) 検査 肺癌の確定診断のための検査 喀痰細胞診・気管支鏡による生検(経気管支肺生検、擦過細胞診など)・経皮針生検(主に CT ガイド下で行う)・胸腔鏡下生検がある。(この順で検査のリスク(侵襲)が高くなる。) 肺癌の広がり(病期)診断のための検査 広がりとは=転移の有無(転移にはリンパ節転移・遠隔転移・胸膜播種性転移がある) 検査は胸部CT、FDG-PET、脳 MRI を行うことが多い →肺癌の遠隔転移はどこに多い? 脳、肺、肝、骨、副腎が多い。

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胸部CT でリンパ節転移や胸膜播種性転移や肺内転移の有無、FDG-PET でリンパ節・胸膜 播種・肺・肝・骨・副腎の転移の有無、FDG-PET でわかりずらい脳転移を脳 MRI で確認 する。FDG-PET で転移が疑われた場合その疑われた転移先により、腹部 CT・腹部超音波 (肝・副腎)、骨シンチグラフィー・MRI(骨)などを行い最終確認を行うこともある。 →最終的な広がりの評価(TNM 分類) T:肺癌の大きさや周囲臓器への浸潤の有無、N:リンパ節転移の有無と程度、M:遠隔転 移の有無(他臓器転移)の3つの因子を総合的に評価して決定される。 肺癌患者に行われるその他検査 腫瘍マーカー:CEA、CA19-9、NSE(小細胞癌で陽性率が高い)、Pro-GRP(小細胞癌で 陽性率が高い)、CYFRA21-1(扁平上皮癌で陽性率が高い)がある。陽性であることが肺 癌を確定するわけではない。また高値でも癌が進行しているとは断定できない。(進行して いることが多いのは事実であるが・・・) 手術を計画する場合は肺機能検査、心機能検査(心エコー・負荷心電図など)、血液ガス、 一般末梢血・生化学検査を行い、耐術能を評価する。 治療 治療方針決定には病期が重要である 肺癌の治療は局所療法として外科療法・放射線療法、全身療法として化学療法・分子標的 治療・免疫療法がある。 外科療法 肺葉切除とリンパ節郭清が根治手術(標準手術) 最近では小型の早期肺癌に対して広範囲楔状切除や区域切除が選択されることもある。 周術期死亡率が下がり、安全に手術が行われるようになった 放射線療法 I 期の年齢や他臓器機能の問題で外科療法の対象にならない症例に行われる。(近年定位放 射線照射SRT、重粒子線、陽子線治療により治療成績が向上) II 期の外科療法の対象とならない症例や III 期の局所進行肺癌に対しては抗がん剤と併用し 放射線化学療法がおこなわれる 放射線肺炎・食道炎などの副作用が生じることがある 化学療法 小細胞肺癌において高い効果を示す(ただし、小細胞癌は再発率が高く生存率は低い。手 術療法の効果は低く、手術はI 期のみに考慮される。) 小細胞肺癌以外の肺癌(非小細胞肺癌という)は抗がん剤の効果は小細胞がん程よくなか ったが、新規抗がん剤や血管内皮成長受容体阻害作用を有する分子標的治療剤との併用で 治療効果が改善されつつある。可能な患者には2~3剤の併用化学療法がおこなわれる。 副作用は白血球(好中球)減少、血小板減少、貧血、吐き気・嘔吐、末梢神経障害などが ある。

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分子標的治療 癌細胞が分裂、増殖していく過程を阻害する作用を有する薬剤。EGFR 阻害剤、ALK 阻害 剤は遺伝子検査にて効果が期待できる患者が予想できるため、遺伝子検査で陽性の患者で は効果的な治療が行える。ただし、副作用に重症の薬剤性肺炎を発症することがあり、投 与に際しては注意を要する。その他前述の血管内皮成長受容体阻害剤がある。 免疫療法 効果の十分な薬剤がなかったが、近年ヒト型抗ヒトPD-1 モノクローナル抗体が適応となり 今後この治療方法が期待されている。 b)転移性肺腫瘍 とくに肺に転移を起こしやすい腫瘍は骨肉腫・軟部組織の肉腫・肺がん・大腸がん・子宮 がん・乳がん・腎細胞がん・甲状腺がんである。 手術適応 原発巣のコントロールがよく肺以外に転移がなく、肺への転移の個数がすくないもの 手術成績良好な腫瘍 子宮がん・大腸がん・腎細胞がんなど 5 肺・肺血管の形成異常 1)肺分画症 体循環系(多くは大動脈)からの異常な血液供給を受ける異常な肺組織が存在する。正常 肺と同じ胸膜に包まれる肺葉内肺分画症と独立した肺葉外分画症がある。感染を繰り返す ため、外科切除される。 2)肺動静脈瘻 肺動脈と肺静脈がシャントを形成したもの。脳膿瘍や脳梗塞を起こす危険があるため、治 療が必要で、以前は手術が行われたが、近年は血管内治療である、動脈塞栓術が多く行わ れる。 6 胸膜・縦隔・横隔膜の疾患 1)巨大肺のう胞 ブラが巨大化したもの。胸腔の1/3 を占めるまで巨大化したものをいい、外科的切除が考慮 される 2)胸膜腫瘍 a)悪性胸膜中皮腫 アスベストの曝露歴がある人に多く発生。(曝露後30~40 年後に発生)片側の胸膜に限局 したリンパ節転移のないものには外科手術が考慮されるが、多くの場合胸膜肺全摘術にな るため、手術死亡率・合併症率が高く、再発率も高い。化学療法や放射線療法も行われる が、成績が悪く、予後不良な疾患である。

b)孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor of the pleura ; SFT) 胸膜中皮の直下の間葉系細胞から発生。良性のものが多い

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3)縦隔疾患 a)縦隔炎 食道穿孔・歯科・頭頚部領域の感染症の波及、胸部外科手術創の感染が原因となることが 多い。すみやかな切開排膿ドレナージを行わないと致命的となる。 b)縦隔気腫 激しい咳嗽・嘔吐・胸部外傷後にみられる。(カラオケの歌いすぎに注意)気道損傷・食道 損傷に伴うことがあり原因検索が必要。治療は安静のみでよいが、抗菌薬投与や食道損傷 が否定できなければ禁食とする c)縦隔腫瘍 縦隔に発生する腫瘍を総称して縦隔腫瘍という。 胸腺腫 最も頻度が高く、前縦隔に発生する。がんに比べれば進行が遅いが周辺臓器への浸潤、胸 膜播種、遠隔転移を起こすことがあり、(臨床的)悪性腫瘍として扱う。自己免疫疾患(重 症筋無力症など)を合併することがあるため注意する必要がある。治療は完全切除可能で あれば手術を行う。放射線治療も有用である。 胚細胞性腫瘍 前縦隔に発生することが多い。最も多い成熟奇形腫は手術切除を行えば予後良好である。 その他はタイプにより治療感受性が異なるため、そのタイプにより集学的治療を行ってい く その他、神経原性腫瘍(後縦隔に多い)、気管支原性のう胞・心膜のう胞(中縦隔に多い) などがある。 3)横隔膜疾患 a)横隔膜ヘルニア 横隔膜が脆弱化すると腹部臓器が胸腔に脱出する現象がおこることがある。これを横隔膜 ヘルニアという。食道裂孔ヘルニア、ボコダレク孔ヘルニア(新生児期~小児期に発症)、 モルガニーヘルニア(成人の胸骨の後ろに発症)がある。その他外傷性ヘルニアがある。 外傷性ヘルニアは外傷直後に発症するとは限らない。 7 肺移植 脳死となったドナーの肺は感染のため移植の適応となりずらく、血液の一致した2 人の親 族から左右の下葉を1つずつ提供してもらう生体間移植も行われている。適応疾患は原発 性肺高血圧症、閉塞性肺疾患、特発性間質性肺炎、肺リンパ脈管筋腫症、気管支拡張症な ど。 8 胸部外傷 1)肋骨骨折 肋骨骨折は気胸・血胸を併発するため注意が必要である。複数の肋骨が1 本につき 2 か所 以上で骨折すると吸気に胸壁が陥凹、呼気に膨張する胸郭動揺(フレイル-チェスト;Flail

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chest)がおこり、換気量の減少。二酸化酸素の蓄積から胸郭の固定が必要となることがあ り、人口呼吸器による陽圧換気により内側から固定する方法を内固定、手術による肋骨固 定を外固定という。 2)横隔膜破裂 左側に多くみられる。胸腔内に脱出した腹部臓器の還納と破裂横隔膜の閉鎖を行う。 3)肺損傷(肺挫傷) 受傷後数時間から24 時間以内で肺内に浸潤影が出現し呼吸不全を伴うが安静、酸素療法の みで数日で軽快する場合が多い。 4)気管・気管支損傷 疑う場合は気管支鏡で精査を行う。気道内圧を低下させる(気管挿管・気管切開)で治癒 する症例も多いがひどい場合は外科的な断裂部閉鎖が必要である

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