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販売士検定試験における資格取得に関する研究

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─ 目白大学短期大学部のケーススタディー ─

A Study in the Qualification Acquisition of the Official Business Skills Test

in Retail Sales

─ A Case Study of a Junior College Department, Mejiro University ─

井上 近子

(Chikako INOUE)

目 次 序 Ⅰ 大学教育と資格取得 Ⅱ 販売士の概況 Ⅲ 目白大学短期大学部のケーススタディー Ⅳ 販売士資格取得に向けた課題と展望 結語 近年、大学は進学希望者と大学入学定員の数が一致する状態にあり、特定の大学を選ばない 限り、大学全入時代に突入したと言われている。そのため各大学の入学試験制度は、AO入試、 指定校推薦、高等学校長推薦(公募)、体育推薦、3科目試験、2科目試験等、バラエティに富 んだ制度を導入し、入学定員の確保に務めている。受験生の人気を集められなく定員割れを起 こす大学は、大学経営に重大な影響を与えることは明らかである。このような現状を鑑みるな らば、もはや大学としては、入口(入学時)での絞り込みは容易ではないため、大学で特色の ある教育を施し、付加価値を高めた学生を出口(卒業時)で実社会へ送り出すことが、何より も大切であろう。 大学にとっては建学の精神は変わらなくても、時代の変化に対応したカリキュラム改革を実 施し、社会ニーズに合った人材を創出することが使命であることは言うまでもない。一方、大 学生に取っては、就職氷河期とも言われている就職難の時代の中で、積極的に卒業後の進路を 切り開いていくためには、大学で何を学んで、企業で何をアピール出来るか、チャレンジスキ ルの取得も必要となってくるであろう。文部科学省においては、大学生の就業力育成支援事業 として、「社会的・職業的に自立に繋がる就業力の育成に主眼を置き、全学的に教育改革を行お うとする意欲を持つ大学・短期大学」を支援しようと言う取り組みもスタートしている。 本論は、一般的に商学系の卒業生の約20~ 30%は、小売業・流通業業界へ就職している傾向

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にあることを踏まえ、学校教育と社会教育、さらには職業教育との融合の必要性が求められよ うとしていることに焦点をあててみた。目白大学短期大学部では、幅広い教養教育と高度な専 門教育を通して、特色ある資格取得に力を入れている。目白大学短期大学部において、特に正 規授業の中で販売士検定試験の資格取得に向けたカリキュラムの運営、授業方法、 さらにはそ の成果について、調査・研究を行ったものである。 Ⅰ 大学教育と資格取得 1.資格とは 資格の意味をいくつかの辞書でひもといてみると「あることが出来るという身分や地位。ま た、そのために必要な条件」などの記述がある。一般に資格とは、試験に合格した者に限らず、 社会のさまざまな場面で、行為にふさわしいと認める基準を満たした場合などにも、「入会資 格、入場資格」といって使われることもある。資格には、(1)国が法律に基づき、国家試験な どによって、能力や技能を判定し、有資格者に対して、特定の職務に従事することを認める資 格である「国家資格」。(2)省庁が認定した審査基準をもとに社団法人、財団法人、あるいは 地方公共団体などが実施する試験により認定される資格である「公的資格」。(3)民間企業や 業界団体、公的な協会などが社会の要請や技術の向上を目指して、独自の審査基準を設け、任 意でその能力を認定する資格である「民間資格」に分けることができる。現在、我が国には約 3,000種以上の資格が存在していると言われており、その中には取得に対して、かなり難易度が 高かったり、非常に人気があったり、あるいは世間では知名度や評価が高かったり、また高等 学校や大学において奨励しているものなどがある。 さらに、資格の類型について、大きく3つに分けて説明して見ることにしょう1) (1) 業務独占資格とは、特定の業務に際して、有資格者だけが従事することが可能であり、 当該資格を取得、保持せずに業務を行うことは禁止されている資格である。すなわち、その仕 事に携わるには資格が不可欠であり、高度で専門性と職業倫理が求められることになる。例え ば、医師、看護師、弁護士、公認会計士、税理士、建築士、電気工事士などがあげられる。 (2) 設置義務資格とは、必置資格とも呼ばれ、特定の事業を行う事業所で、法律によって 一定の割合で設置が義務づけられている資格である。その業界で一人前として認められるため には必要となってくる資格で、仕事をスムーズに支障なく遂行するために、その業務に従事し ながら機会を見て取得する場合が多く見られる。例えば、薬剤師、宅地建物取引主任者、旅行 業務取扱主任者、衛生管理者、危険物取扱者などがあげられる。 (3) 能力検定型資格とは、名称独占資格とも呼ばれ、有資格者でなければ呼称を名乗るこ とが禁止されている資格である。但し、有資格者でなくてもその業務に従事することはできる が、業界で活動する上では仕事の知識や能力の高さを証明する資格と言える。そのためには、 単に資格を取得しているだけでなく、それにプラスして実務経験や勤務実績なども能力として 位置づけられる場合がある。また、所持している資格が自分のキャリアアップにとって、重要

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な影響を及ぼすことも考えられる。例えば、保育士、調理師、栄養士、介護福祉士、販売士、 中小企業診断士、情報処理技術者などがあげられる。 2.大学において取得できる資格の種類 大学において資格が取得できるのは、国立、公立、私立大学に関係なく、特定の学部や特定 の学科を卒業することで、申請をすると無試験で資格を取得することがでる場合がある。また、 大学の開講講座で文部科学省が定める科目や公的な協会が指定する科目を単位認定されること で資格が取得できる場合がある。さらに、国家資格や公的資格の授与認定校に指定されている 大学では、国家資格や公的資格の受験資格が得られる際、試験科目が一部免状される場合もあ る。そのためには、資格取得に必要な科目を開講して対応しなければならないことは言うまで もない。例えば、無試験で取得できる資格としては、教員養成課程や教職課程を履修すること により中学校教論や高等学校教論の資格が取得できるし、文部科学省指定の大学で、測量に関 する科目を修得し、卒業すれば測量士補の資格が得られる。また、厚生労働省が認定する大学 を卒業することで栄養士の資格の取得、保育に関する科目や実習単位を履修して卒業すれば資 格が得られる。国家試験の受験資格が得られる場合は、看護系の大学などで看護師になるため に必要な科目を修得し、卒業すれば看護師の受験資格ができるし、福祉系大学などで指定科目 を修得し、卒業すれば社会福祉士の受験資格ができる。 一方、多くの大学では、入学ガイダンスや履修ガイダンスなどの機会を通じて、 学生に対し て資格取得を促すために、学部・学科で履修ができるカリキュラムの中で資格取得が可能な科 目の説明を行ったり、就職部のようなキャリアセンターでは、各学部・学科共通カリキュラム と称して、資格取得用の講座を設けたりしている。さらに学部・学科とは関係なく、大学の付 属研究所において資格取得の養成講座を開講し、夜間講座や夏休み期間中を通じて、オープン 講座として社会人と一緒に取得機会を設けている大学も数多くある。例えば、経済学部、商学 部、経営学部などでは、簿記を必修科目に掲げているところが多く、簿記の資格を取得すると 多くの大学では単位認定をしている。そして大学の付属研究所とタイアップして、将来、公認 会計士、税理士の資格までフローしている場合がある。外国語学部に限らずその他の学部でも 語学関連としては、英語のTOEIC、TOEFL、フランス語や中国語などの資格取得を学生に啓 蒙している。また、最近の小売業・流通業業界へ就職している傾向を鑑みて、流通業界唯一の 公的資格と言われている販売士に挑戦する学生も目立ってきた。 3.大学における資格取得の意義 日本の企業社会はバブル崩壊後、産業構造、企業組織、労働市場のあり方が大きく変容して いる。大学に入り、大企業に就職をし、終身雇用による安定し生活というモデルはすでに行き 詰まっており、卒業後は「自分は何をしたいのか」、「自分の生き甲斐は何か」などについて、 在学中に明確にしなければならない。将来、プロフェッショナルとして技術的・職業的な専門

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能力を活かした仕事をするか、ゼネラリストとして組織能力を活かすとか、または専門的スペ シャリストとして独立起業を目指すとか、チャンスは大きく広がっていることに気づくことで ある2)。自分の夢を託すためにも資格は重要な能力開発の一つと言えよう。 最近、オープンキャンパスにおいても受験生からは、「この学部や学科に入学したらどんな資 格が取れますか」などの質問が多く寄せられているのも事実である。親の口からは「手に職を つけなさい」とか「資格を持っていることにこしたことはない」などの言葉が聞かれることを 目の当たりにする。このように資格に対して、受験生や父母は関心を持っていることが窺える。 資格取得の意義を考えてみると、第1には、在学中に学生が資格取得という明確な目標を持 つことで、履修する際や授業を受ける際に積極的な姿勢で取り組むことが見いだせるであろ う。学生生活において問題意識を持ち、努力をした結果として資格の取得ができるのであり、 その行動プロセスについても大いに評価されるはずである。第2には、学生が自分の受講して いるカリキュラムと連動させて、自分の強みや得意分野を伸ばすことになるだろう。資格取得 の勉強を始めると、全く知らなかった世界が見えたりすることで、ますますその分野に興味を 持ち、向上する意欲が増すことなる。例えば、3級販売士からスタートして1級販売士へとス テップアップを目指したり、あるいはファッション販売能力検定やカラーコーディネーターの 資格など、関連する分野へと範囲を広げることも可能性である。第3には、学生が就職活動で 希望する業種に自信を持ってチャレンジすることができるであろう。就職活動において、公的 資格を取得して履歴書に記載できることは、在学中に何を勉強したか、あるいは何に努力を傾 けたのかの証であり、他の学生より一段有利となるはずである。特に不動産や旅行関連のよう な産業分野では、採用の際に資格がクローズアップされることが多いようである。第4には、 学生が卒業し就職をしてからであるが、新規事業、企業買収による出向などによる社内登用が あった際に、学生時代に資格を取得していたことにより、運よくチャンスをつかむことができ る。身近な事例としては、某百貨店において専務秘書が寿退社をし、社内で後任の秘書を探し ていた。婦人服売場で販売員スタッフとして勤務していた女性社員が、在学中に秘書検定の資 格を取得していることを履歴書に記入してあったため、専務秘書に異動になったケースを知っ ている。このように、我々は社会、組織で働いて行く上で、資格は持っていて邪魔になるもの ではなく、自己責任による能力開発やキャリア開発によって得られることが重要である。資格 は、自分自身の能力を高めるために欠かせないものであり、新たなる道が開ける可能性を秘め ており、大学生活の中で資格取得の意義は大いにあると考えるべきである。 Ⅱ 販売士の概況 1.販売士とは 販売士とは、小売業・卸売業・流通業などをはじめとして、消費者志向の目指すメーカーや サービス業に携わる人々にとって、業界の健全な発展に寄与し、消費者に満足の行くサービス を提供できるプロフェッショナルである3)。販売士は1973年に中小企業庁の指導で、1974年3

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月から日本商工会議所や全国商工連合会が主催してスタートしており、流通業界において唯一 の知名度が抜群の公的資格である。現在、従事している仕事において、売場責任者、管理職に キャリアアップを目指す人にはもちろんのこと、商品開発、仕入、販売、物流などに関する小 売・流通のプロとして、自分の強みや得意分野で実力を発揮するために役立つ必要な資格であ る。経済、社会を取り巻く環境は厳しく、小売業においても閉店や廃業あるいは合併、統合な どの状況にある企業が多くある。流通業界では、小売業者をはじめとして、 それらに従事する 社員、販売スタッフの人材育成、自己啓発が強く求められており、販売士の果たす役割は大き く、社会的評価も高いと言われている。 2.販売士の検定試験 販売士の資格を取得するためには、日本商工会議所が実施する販売士検定試験に合格しなけ ればならない。受験資格は、 学歴、年齢、性別、国籍制限はなく、誰でも受験することができ る。筆記試験の時期については、1級販売士が2月、2級販売士が10月の年1回、3級販売士 だけが7月、2月の2回、実施されている。資格の有効期限は5年間で、更新がある。資格取 得時の「販売士」としての能力維持・向上を図るため、有効期限更新の際には、講習会、通信 教育を受けると5年間延長される。 販売士検定試験は、現在小売業、流通業に従事している人々や将来従事しようと人々に対し て、商品知識や販売技術、 仕入や在庫管理、マーケティング、店舗運営などに関して、より高 度で専門的な知識と資質の向上を狙った試験制度である。検定試験は1級販売士から3級販売 士まで3つの等級に分かれており、どの等級からでも受験することが可能である4)。各等級で 求められる知識や技能の水準、及び対象クラスについては下記の通りである(表Ⅱ-2-1)。 表Ⅱ-2-1 販売士の等級別レベル内容 等級 レベルの内容 1級販売士 小売業経営に関する高度の専門的な知識を身につけ、経営計画を立案し、総合的な管理業務を遂行できる。大規模小売店の店長や部長クラス、中小小売業の経営者クラス が対象である。 2級販売士 小売業について、主として販売に関する専門的な知識を身につけ、ある程度の管理業務を遂行し、かつ部下を指導することができる。売場主任、部課長などの中堅幹部ク ラスが対象である。 3級販売士 小売店舗運営の基本的な仕組みを理解し、販売員としての基礎的な知識と技術を身に付けている。売場の担当者などが対象である。  資料:日本商工会議所 http://www.kenntei.ne.jp より。 検定試験科目は、(1)小売業の類型、(2)マーチャンダイジング、(3)ストアオペレーシ ョン、(4)マーケティング、(5)販売・経営管理の5科目で、各等級の試験問題には難易度 の差があり、制限時間は1級販売士が250分、2級販売士が200分、3級販売士が150分となっ

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ている。なお、3級販売士については、2012年7月に実施の検定試験より制限時間が150分か ら120分に変更される予定である。筆記試験はマークシート方式で5科目とも100点満点で行 い、合格基準は全科目の平均点が70点以上で、各科目において50点未満の得点がない場合に 合格となる。なお、1級販売士については、上記の科目の記述式や面接試験が、合否の判定に 加わることになる。 3.検定試験の概況 表Ⅱ-2-2 3級販売士の受験者数と合格者数(2010年2月~ 2011年2月) 実受験者数 合格者数 2010年2月 2010年7月 2011年2月 2010年2月 2010年7月 2011年2月 人数 構成比 人数 構成比 人数 構成比 人数 構成比 人数 構成比 人数 構成比 百貨店 253 1.6 224 1.4 227 1.5 136 1.6 135 1.5 128 1.4 スーパーマー ケット 818 5.2 920 5.7 654 4.4 388 4.6 503 5.6 358 4.0 総合品ぞろえ スーパー 100 0.6 128 0.8 299 2.0 69 0.8 101 1.1 227 2.6 専門店チェー ン 553 3.5 468 2.9 102 0.7 404 4.8 339 3.8 79 0.9 コンビニエン スストア 93 0.6 82 0.5 642 4.3 66 0.8 62 0.7 506 5.7 一般小売業 1,749 11.1 1,562 9.6 82 0.5 1,051 12.5 1,006 11.3 62 0.7 その他 358 2.3 356 2.2 1,455 9.7 269 3.2 253 2.8 1,002 11.3 小売業合計 3,924 24.8 3,740 23.0 3,461 23.2 2,383 28.3 2,399 26.9 2,362 26.6 卸売業 573 3.6 818 5.0 646 4.3 361 4.3 542 6.1 465 5.2 製造業 434 2.7 381 2.3 419 2.8 354 4.2 308 3.5 370 4.2 大学生 2,037 12.9 2,318 14.3 1,858 12.4 1,270 15.1 1,392 15.6 1,243 14.0 短大生 419 2.7 382 2.4 269 1.8 126 1.5 178 2.0 111 1.3 専門・各種 2,665 16.9 2,242 13.8 2,689 18.0 1,099 13.0 1,073 12.0 1,278 14.4 高校生 3,029 19.2 3,586 22.1 2,989 20.0 905 10.7 1,066 11.9 1,121 12.6 学生合計 8,150 51.6 8,528 52.5 7,805 52.3 3,400 40.3 3,709 41.6 3,753 42.3 その他 2,716 17.2 2,771 17.1 2,602 17.4 1,932 22.9 1,968 22.0 1,927 21.7 合計 15,797 100.0 16,238 100.0 14,933 100.0 8,430 100.0 8,926 100.0 8,877 100.0  資料:日本商工会議所 http://www.kenntei.ne.jp より作成。 日本商工会議所ホームページから、 販売士検定試験の受験者、合格者数、合格率を過去3年 間で見ることにする。(1)1級販売士については、3年間の実受験者数合計が3,758名、合格 者数合計688名、平均実受験者数は1,253名、平均合格者数は229名で平均合格率は18.3%であ る。(2)2級販売士については、3年間の実受験者数合計が34,832名、合格者数合計18,094 名、平均実受験者数は11,611名、平均合格者数は6,031名で平均合格率は51.9%である。(3) 3級販売士については、3年間に6回実施されており、実受験者数合計が92,708名、合格者数

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合計50,376名、平均実受験者数は15,451名、平均合格者数は8,396名で平均合格率は54.3%であ る。2級販売士、3級販売士については、実受験者数が1万名を超えており、合格率も50%台 を維持しているが、1級販売士については、合格率から判断するとかなり難易度が高いことが 見て取れる。 この中で1回の平均実受験者数が1万5千名を超える3級販売士の検定試験について、少し 詳しく見ることにしよう(表Ⅱ-2-2)。 過去3回に実施された3級販売士検定試験結果において、1回当たりの大学生、短大生、専 門学校・各種学校、高校生、すなわち学生の平均実受験者数は8,161名で、全体の52.1%を占め ている。その中でも、第1位は高校生で実受験者数が平均3,204名、全体実受験者数でも20.4% と高い数値となっている。第2位は専門学校・各種学校で平均実受験者が2,532名、第3位は大 学生で平均実受験者が2,071名、第4位は短大生で平均実受験者が357名の順となっている。特 に高校生の実受験者がトップの理由としては「高等学校で奨励している」、「高校生に人気があ る」、「将来、ショップの販売スタッフ、バイヤーになりたい」などが主な要因だと伝え聞かれ る。3級販売士検定試験における学生の1回当たりの平均合格率は44.4%(平均合格者数3,621 名)とかなり高くなっている。その内訳は、第1位が大学生で62.9%(平均合格者数1,302名)、 第2位が専門・各種学生で45.4%(平均合格者数1,150名)、第3位が短大生で38.8%(平均合 格者数138名)、第4位が高校生で32.2%(平均合格者数1,031名)となっており、大学生、専 門学校・各種学校、高校生については、1回の平均合格者数は1,000名を超えている。 次に同じく3級販売士検定試験の小売業について見てみよう。1回当たりの平均実受験者数 は3,708名で、全体の23.7%を占めている。業態別において、第1位は一般小売業で平均実受験 者数が1,131名、全体実受験者数では7.2%となっている。第2位はスーパーマーケットで平均 実受験者数が797名、第3位はその他で平均実受験者数が723名、第4位は専門店チェーンで 平均実受験者数が374名、第5位はコンビニエンスストアで平均実受験者数が272名、第6位 は百貨店で平均実受験者数が235名、第7位は総合品ぞろえスーパーで平均実受験者数が176 名の順となっている。流通業界では、「売場責任者」や「スーパーバイザー」あるいは「バイヤ ー」などの職務者には、販売士の資格取得を奨励している。企業によっては、営業担当者教育 の一環や自己啓発の講座として、販売士の資格を位置づけているところもあり、資格取得する と受験料や通信教育講座費を負担してくれる場合が多い。小売業の1回当たりの平均合格率は 64.2%(平均合格者数2,381名)となっており、学生と比較すると平均合格率は高いが、平均合 格者数は少ない。その内訳は、第1はコンビニエンスストアで77.6%(平均合格者数211名)、 第2位は総合品ぞろえスーパーで75.3%(平均合格者数132名)、第3位は専門店チェーンで 73.2%(平均合格者数274名)、第4位はその他で70.3%(平均合格者数508名)、第5位は一般 小売業で62.5%(平均合格者数706名)、第6位は百貨店で56.7%(平均合格者数133名)、第7 位はスーパーマーケットで52.2%(平均合格者数416名)となっている。業種・業態によって、 全体実受験者数、平均合格率、平均合格者数の違いが現れており、各企業の実情によって資格

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に対する取り組み方や活用方法の温度差があることが窺える。 Ⅲ 目白大学短期大学部のケーススタディー 1.講座のあらまし 本章では、目白大学短期大学部による「3級販売士」の資格取得について実践実例を記すこ とにする。短期大学部では、基礎教育、専門教育の学習を通じて、一定のカリキュラムを履修 することで、「3級販売士」の受験が可能となる授業展開を行っている。この試みは、2008年 に生活科学科のA先生が中心となって、流通・マーケティング科目の担当者間で検討し、2009 年から実施している。それまでは「ファッション販売能力検定試験3級」の受験を奨励してい たが、これを機に資格のバリエーションを増やす目的で、「3級販売士」の試験制度に対応した カリキュラム改革を行ったのである。 主軸となる教員は、2007年から短期大学部の非常勤講師として、流通・マーケティング関係 科目を担当しているB(筆者)先生が受け持つことが決定した。B先生は大学卒業後、株式会 社ザ・ギンザに約20年間勤務しており、社内では婦人服飾品(アクセサリー、婦人靴など)の 販売スタッフ、海外婦人服ブランドのフロアチーフ、マーケティング開発部など、売場から後 方部門までを経験している。会社の許可を貰い在籍しながら毎週金曜日に短期大学部におい て、講義を行っている。2006年10月に「2級販売士」、2010年2月に「1級販売士」を取得し、 2011年3月に「ファッション販売能力検定試験1級」を取得している。短期大学部としては企 業で実務に携わっており、実践的な教育指導ができるとの判断で担当を任されたものと考えら れる。 表Ⅲ-1-1 2010年度開講科目と販売士試験科目対比表 目白大学短期大学部科目名 担当教員名 3級販売士試験科目名 流通論 B先生 小売業の類型 マーチャンダイジング B先生 マーチャンダイジング ストアオペレーション C先生 ストアオペレーション マーケティング D先生 マーケティング 販売管理 B先生 販売・経営管理 ファッション販売論 B先生 関連する科目 ファッション販売の技術 B先生 関連する科目 2009年度においては、新規に開講した「小売業論」、「商品計画」をB先生が担当し、関連す る科目としては2008年度から担当している「ファッション販売A」、「ファッション販売B」と ともに、「3級販売士検定」に対応したカリキュラムの第一歩となった。2010年度においては、 新規に開講した「流通論」、「マーチャンダイジング」、「販売管理」をB先生が担当し、関連す る科目としては、同年度に「ファッション販売論」、「ファッション販売の技術」を開講して、 同じくB先生が担当した。これらの科目は、新カリキュラムとして「3級販売士検定」を意識

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して設置されたものである(表Ⅲ-1-1)。 2.講義要項(シラバス)の内容 2010年度の学生に提示した講義要項(シラバス)おいて、「3級販売士検定」を意識して開 講した(1)流通論、(2)マーチャンダイジング、(3)販売管理の3科目について、それぞ れ科目の授業のねらいを述べることにする5) (1) 流通論 講義要項では、この科目のねらいを「近年、小売業を取り巻く環境は厳しい状況にあり、小 売業者が生活者ニーズに合った店づくり、商品の品揃えなど満足のいく対応が求められていま す。本講座では、流通における小売業の基本的役割を理解し、流通経路の重要性や店舗形態別 小売業の特徴を解明していきます。さらに中小小売業の現状と役割、商業集積の変遷や課題に ついても取り上げて講義をします」。そして、「本講座の最終目的は、流通業界におけるバイヤ ーや店長となる人材を育成することにあります。さらに『販売士検定試験3級』の取得を目指 し、2月に実施される検定試験に備えて、授業の中で傾向と対策の時間を設けてあります」と 記載されている。講義項目の主な内容としては、「小売業の歴史的変遷」、「流通経路政策」、「卸 売業の機能と役割」、あるいは「商店街の課題」など、15回に渡って流通業界の基本構造や商 品流通のしくみを学ぶものである。 この講座を販売士試験科目に置き換えてみると「小売業の類型」に対応しており、①流通に おける小売業の基本的役割、②流通経路別小売業の基本的役割、③形態別小売業の基本的役割、 ④店舗形態別小売業の基本的役割、⑤チェーンストアの基本的役割、⑥商業集積の基本的役割 と仕組み、などの出題範囲が盛り込まれた授業内容となっている。 (2) マーチャンダイジング 講義要項では、この科目のねらいを「商品計画は、一般にマーチャンダイジングと呼ばれて おり、小売業における商品に関する管理活動であるといわれています。本講座では、商品の基 本知識を学習し、マーケティングの基本的な考え方を明らかにしていきます。商品の選定、仕 入活動、在庫管理などを核にして、POSの有効活用や価格設定の考え方、利益の構造などにつ いても解説していきます」。そして、「また、本講座の最終目的は、流通業界におけるバイヤー や店長となる人材を育成することにあります。さらに『販売士検定試験3級』の取得を目指し、 2月に実施される検定試験に備えて、授業の中で傾向と対策の時間を設けてあります」と記載 されている。講義項目の主な内容としては、「マーチャンダイジング構成要素」、「仕入計画の立 て方」、「在庫管理の意義」、あるいは「POSシステム」など、15回に渡ってマーチャンダイジ ングの基礎と実務知識を学ぶものである。 この講座を販売士試験科目に置き換えてみると「マーチャンダイジング」に対応しており、 ①商品の基本知識、②マーチャンダイジングの基本、③商品計画の基本、④仕入計画の基本的 役割、⑤在庫管理の基本的役割、⑥販売管理の基本的役割、⑦価格設定の基本的考え方、⑧利

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益追求の基本知識、などの出題範囲が盛り込まれた授業内容となっている。 (3) 販売管理 講義要項では、この科目のねらいを「小売業における販売管理とは、事務管理から人事管理、 店舗管理まで多岐にわたります。本講座では、販売管理の基本知識を学習し、販売に関わる事 務管理や計数管理の必要性、主な法規とリスクマネジメント、店舗施設の管理について明らか にしていきます」。そして、「本講座の最終目的は、21世紀において、流通業界の第一線で活躍 できる人材を育成することにあります。そのためにも『販売士検定試験3級』にチャレンジし、 この資格を取得することをねらいとします」と記載されている。講義項目の主な内容としては、 「販売員の目的と役割」、「小売店経営における計数管理の必要性」、「販売活動に関する法規」、 あるいは「小売業におけるリスクマネジメント」など、15回に渡って商業の経営管理と販売員 管理の各活動について学ぶものである。 この講座を販売士試験科目に置き換えてみると「販売・経営管理」に対応しており、①販売 員の基本業務、②販売員の法令知識、③販売事務と計数管理の基本的知識、④売場の人間関係、 ⑤店舗管理の基本的役割、などの出題範囲が盛り込まれた授業内容となっている。 なお、これらの各科目の評価方法としては、期末の定期試験を実施せず、授業中の小テスト 8回、および課題提出点で80%、出席点で20%プラスα、とすることを明示した。教科書とし ては日本商工会議所編『販売士検定試験ハンドブック3級』を指定した。 3.履修者の状況 表Ⅲ-3-1 2010年度の履修者数 科目名 1年生 2年生 合計 流通論 60名 8名 68名 マーチャンダイジング 65名 0名 65名 販売管理 67名 13名 80名 2010年4月に短期大学部への新入生は、228名であり、その内訳は生活科学科が86名、製菓 学科が83名、ビジネス社会学科が59名入学している。2010年度の3科目に対する履修者数を 見てみよう(表Ⅲ-3-1)。新カリキュラムの関係で1年生が圧倒的に履修していることがわ かる。 4.販売士の試験対策 授業時間は、90分授業で実施している。人間が継続的に精神を集中して保てる時間は、概ね 60分程度であると言われており、いかにメリハリのある内容にするかに注意を払った6)。最初 の10分間は、前回実施した小テストの返却とその解説を行い、次の60分間は、短期大学の授業

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としての講義を行った。また、意識的に板書の量を多くし、説明する際には、このような項目 は販売士の試験にも良く出題されるなどと言って、緊張感を保つことに配慮した。最後の20分 間は、小テストを実施した。小テストの内容は当日講義を行った箇所から出題し、自筆ノート を参照しても良い場合、参照を不可にした場合など、問題内容を考慮しながら指示をした。当 該科目の受講学生による授業評価アンケートによると、「板書から小テストの流れによって、頭 に入ってきたので良かった」という意見が多くあり、理解を容易にする点では大きな教育的効 果をもたらしたことが窺える。また、興味を持った学生から強い要望があり、希望する学生に 対しては検定試験の1ヶ月前から、授業時間外や土曜日などを利用して勉強会を開催したが、 数人から時には十数人が参加してきた。これらの学生は、3級販売士に必ず合格するとの意気 込みが伝わってきた。 試験対策を実施して感じことは、学生達は「何かにチャレンジしなければ自分の評価を高め ることができない」、「短期大学での足跡として資格取得をしよう」などと、目標を明確にして いることが理解できた。その後、3級販売士取得者は、切磋琢磨してさらに上を目指そうと、 2級販売士の問題集に自ら進んでチャレンジするようになってくるのが目に見えてよくわか る。 5.検定試験の結果 予備試験及び本試験について見ていこう(表Ⅲ-5-1)。まず学内で実施した免除科目とな る「販売・経営管理」の予備試験については、受験者数が58名、合格者数が56名、合格率は 96.6%と大変高かった。次に資格取得の本試験については、受験者数が56名、合格者数が18 名、合格率は32.1%と第Ⅱ章第3節で述べた短大生の合格率38.8%と比較して6.7ポイント低い が、30%台をクリアしており、初年度としては大いに胸を張れる数値と言えるだろう。 表Ⅲ-5-1 予備試験及び本試験 予備試験及び本試験 受験者数 合格者数 合格率 予備試験(販売・経営管理免除科目) 58名 56名 96.6% 本試験 56名 18名 32.1% Ⅳ 販売士資格取得に向けた課題と展望 1.就業力の育成 大学は各学部、各学科の教育を通して、専門性の高い知識、技能、問題解決などが培われる べきカリキュラム編成に努力し、 実行に心がけているのは事実である。大学設置基準第42条の 2によれば、「大学は、当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ、学生が卒業後自らの資質を 向上させ、社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を 通じて培うことができるよう、大学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整えるも

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のとする。」と述べられている。近年の大学は、学習成果の明確化、キャリア教育やインターシ ップ、さらに社会に出てからも役に立つような資格を身に付けるなど、積極的な活動を展開し、 学生の学習インセンティブを向上させるしくみづくりを取り入れている。すなわち、大学は学 生が社会に出てから「生きる力」を身に付けることが重要であるとの認識に立っている。本短 期学部から社会に送り出される学生に対して、流通・マーケティング科目の担当者教員が一丸 となって販売士の資格取得に向けた努力が一層必要となるだろう。 2.資格に対する課題 学生は就職時期になっても自らの適性にこだわるため、職業選択に迷いが生じる場合を目の あたりにする。相談を受けて話し合ってみると自分自身に、これはと言う何か確固たるものが ないと感じられる。言い換えれば、自分の売りは何であるかが分からないと言えよう。その点、 資格取得者は、何か職業選択に対して自信をもって訴えていることを肌で感じることができ る。 一方、企業で資格があまり評価されない理由のとしては、学生が取得する多くの資格がペー パーテストによる知識の有無によって付与されている点があげられよう。しかし、資格を企業 が採用時に全く評価しないということではない。それはビジネス上、必要とされている資格で ある。例えば、不動産業関係や旅行業関係、あるいは通関業関係の採用では、資格取得者が有 利であった場合を耳にする7)。本短期大学部の3級販売士を取得していた学生は、有名なセレ クトショップで難関の採用枠を突破して内定を勝ち取って来ている。多くの企業は、資格取得 している大学生に対して、資格を取得するために目標を設定し、その受験勉強に努力し、合格 したプロセスを評価することが大切である。企業が成長するための人材として、将来事業拡大 する際の予備軍として、採用を考えて欲しいものである。 結語 大学は学生に対してどのようなサポートを実施し、付加価値を付けることができるか、そし て大学のカリキュラムやそれを取り巻く施策を真剣に考えるべきであろう。大学は、 学生の知 識や興味、及び関心に合わせた教育内容・方法の開発と共に、学生の大学で学ぶ目的や通学の 楽しさを高める工夫が一段と求められる。例えば、ある大学では、年に1回、資格取得者に対 して、資格の難易度を設定し、学長、学部長、学科長表彰(賞状及び副賞)を実施している。 その大学の基本的な方針は、学生が資格試験に挑戦することは、学習のきっかけになるととも に、目標を定めた学習努力を促すことに繋がると指摘している。資格取得は一定の学力到達を 客観的に評価でき、その大学にとっても名誉であると考えている。まさに資格取得に対する考 え方のモデルと言えよう。本短期大学部でも、是非導入したい表彰制度である。最後に資格取 得の支援を実施するに際し、学生の自主的な参加にだけにゆだねるのではなく、大学がどれだ け親身になって学生一人一人のことを考えてくれるかが重要になってくると言えよう。

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【注】 1)大久保幸夫著『キャリアデザイン入門Ⅱ専門力編』日本経済新聞出版社、2011年、94~ 97頁参照。 2)渡辺峻・伊藤健市編『学生のためのキャリアデザイン入門』中央経済社、2010年、32~ 33頁参照。 3)一般社団法人日本販売士協会 http://www.hanbaishi.com(2011/09/23確認)、参照。 4)日本商工会議所 http://www.kenntei.ne.jp(2011/09/24確認)、参照。 5)目白大学短期大学部編『2010年度講義要項』2010年、参照。 6)森田保男・大槻博著『大学教授法』PHP研究所、1995年、118~ 119頁参照。 7)根本孝著『どうする就職歩きながら考える“就活法”』TAC出版事業部、2005年、127~ 128頁参 照。 【参考文献】 1.大久保幸夫著『キャリアデザイン入門Ⅰ基礎力編』日本経済新聞出版社、2009年。 2.大久保幸夫著『キャリアデザイン入門Ⅱ専門力編』日本経済新聞出版社、2011年。 3.太田聡一著『若年者就業の経済学』日本経済新聞出版社、2010年。 4.中央教育審議会大学分科会制度・教育部会『学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)』2008 年3月25日。 5.東洋経済新報社編『週刊東洋経済第6356号』東洋経済新報社、2011年10月22日。 6.一般社団法人日本販売士協会 http://www.hanbaishi.com (2011/09/23確認)。 7.日本商工会議所 http://www.kenntei.ne.jp (2011/09/24確認)。 8.根本孝著『E-人材開発』中央経済社、2002年。 9.根本孝著『就職力』ビジネス社、2003年。 10.根本孝著『どうする就職歩きながら考える“就活法”』TAC出版事業部、2005年。 11.藤渡辰信著『21世紀への大学改造計画』大学教育研究所、2000年。 12.堀場厚著『京都の企業はなぜ独創的で業績がいいのか』講談社、2011年。 13.目白大学短期大学部編『2010年度講義要項』2010年。 14.森田保男・大槻博著『大学教授法』PHP研究所、1995年。 15.渡辺峻・伊藤健市編『学生のためのキャリアデザイン入門』中央経済社、2010年。

参照

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