• 検索結果がありません。

シンポジウムの記録 利用統計を見る

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "シンポジウムの記録 利用統計を見る"

Copied!
27
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

シンポジウムの記録

雑誌名

東洋大学社会福祉研究

7

ページ

21-46

発行年

2014-08

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006972/

(2)

第9回大会の記録(2013年8月)/シンポジウム「社会的弱者と自立支援をめぐって」 ● 東 洋 大 学 社 会 福 祉 学 会 第 9 回 大 会 / 【シンポジウム】

「社会的弱者と自立支援をめぐって』

シ ン ポ ジ ス ト : 第1報告森田明美(東洋大学社会学部)/第2報告林大介(東洋大学社会学部)/ 第3報告後藤広史(日本大学)/第4報告丸山晃(東洋大学社会学部) コメンテーター:中島修(文教学院大学)/司会:小林良二(東洋大学社会学部) 司会:本日の最後のプログラムです。「社会的弱者 と自立支援をめく、って」のシンポジウムを開始い た し ま す 。 本 日 は 司 会 を 小 林 先 生 に お 願 い し て お りますので、小林先生からシンポジウムの趣旨、 シンポジウムのコメンテーターの紹介等をしてい ただいて、進行をお願いしたいと思います。では、 小林先生、よろしくお願いします。 小 林 : コ ー デ ィ ネ ー タ ー を 務 め き せ て い た だ く 小 林です。ただ今の中島先生のお話を伺って、私が 福祉の勉強した1980年代、90年代とはまるで変わっ てしまったという印象を持ちました。コーディネー ターをうまくできるかどうかわからないのですが、 よろしくお願いいたします。これからの予定です が、このあとすぐ、、森田会員、林会員、後藤会員、 丸山会員から20分ずつそれぞれプレゼンをお願い いたします。その後10分休みを置いて、中島先生 に10分程度のコメントをお願いし、残りの時間を デイスカッシヨンにしたいと思います。 シ ン ポ ジ ス ト の 方 々 の ご 紹 介 で す が 、 皆 さ ん 、 ご存じの方が多いかと思いますので、それぞれ自 己紹介をお願いできればと思います。ただ、林先 生と丸山先生は今年着任された先生方ですので、 少し長めの自己紹介をお願いできればと思います。 そ れ で は 早 速 で す が 、 森 田 先 生 か ら 、 よ ろ し く お 願いいたします。 森 田 : 東 洋 大 学 の 森 田 で す 。 よ ろ し く お 願 い い た します。 林 : 4 月 か ら 東 洋 大 学 助 教 授 に な り ま し た 林 と 申 します。よろしくお願いします。大学を出たあと 十数年間ずっと、子ども系のNPOにいまして、最後、 チャイルドライン支援センターの事務局長になる んですけれども、2011年の4月までやって、その 後ちょうど文部科学省で公募があり、文部科学省 に2年間ぐらいいて、今回、縁があって東洋大学 で社会貢献活動入門や基礎演習を今は担当させて いただいています。よろしくお願いします。 後藤:皆さん、こんにちは、日本大学の後藤です。 3 月 ま で 林 先 生 が い ら っ し ゃ る ポ ジ シ ョ ン で 働 い て い ま し て 、 4 月 か ら 新 設 の 日 本 大 学 文 理 学 部 社 会福祉学科の助教に着任しています。十数年間、 NPOでホームレス支援を行いながら活動してきた 経緯があります。今日はそういった経緯から、こ こ で お 話 を さ せ て い た だ く こ と に な り ま し た 。 よ ろしくお願いいたします。 丸 山 : 4 月 か ら 、 東 洋 大 学 社 会 学 部 で 主 に 実 習 担 当の助教として着任しました、丸山晃と申します。 元 々 は 障 害 者 福 祉 の 現 場 の 職 員 で 、 本 学 の 福 祉 社 会 シ ス テ ム 専 攻 を 修 了 し て 、 そ れ か ら 一 旦 、 教 職 の 道 に 入 り ま し た が 、 こ の 3 月 ま で 数 年 間 は 、 主 に 現 場 の ほ う に ほ と ん ど シ フ ト を し て 、 そ れ で 、 また、東洋大学で教員に復帰した次第です。主に 障害関係の話の視点から今日は話題の投げかけを したいと思っております。 小 林 : あ り が と う ご ざ い ま し た 。 そ れ ぞ れ 自 己 介 をいただきましたように、子ども、若者、ホーム レ ス 、 障 害 に つ い て は そ れ ぞ れ の 切 り 口 か ら 、 中 島先生からは総括的なコメントを伺えるのではな い か と 思 っ て お り ま す の で 、 よ ろ し く お 願 い い た します。では、第1報告をお願いいたします。

(3)

東洋大学社会福祉研究第7号(2014年8月) 森 田 : 先 ほ ど 中 島 先 生 か ら 地 域 で の 若 者 支 援 に 関 す る 取 り 組 み の 構 想 に 関 す る お 話 が あ り ま し た 。 私 が 專 門 と す る 児 童 福 祉 の 分 野 に 引 き 寄 せ て お 話 し す る と 、 こ れ ま で の 日 本 の 児 童 福 祉 の 体 系 の 中 に は 、 長 く 地 域 福 祉 の 概 念 は ほ と ん ど あ り ま せ ん でしたし、地域福祉は児童福祉を対象としたり、 若者を支援することはほとんどなかったといえま す 。 中 島 先 生 の お 話 し と 私 の 問 題 意 識 が 重 な る 部 分 で す 。 つ ま り 、 児 童 福 祉 の 分 野 は 、 家 族 や 親 族 にほとんどの子育て役割を依存しており、社会的 役 割 と し て 家 庭 で 発 生 し た 児 童 福 祉 問 題 に 対 応 し よ う と す る と き は 、 保 護 の 段 階 に な っ て か ら 対 応 す る 歴 史 が 長 く 続 い て き ま し た 。 私 は 、 こ の 考 え 方 に 基 づ き 作 ら れ た 児 童 福 祉 の 制 度 設 計 が 問 題 で あると考えています。 児 童 福 祉 を 理 解 し て も ら う た め に 、 私 が 大 学 院 生に話をするエピソードを紹介します。 私は1970年代に大学で学び、70年代の後半に大 学 院 で 勉 強 し ま し た が 、 そ の と き に 私 は 保 育 政 策 研 究 を 専 門 に し て い ま し た 。 最 近 も 、 保 育 は 児 童 福祉の事業ではないと言う人が増えてきています。 特 に 教 育 学 関 係 の 人 達 の な か に は 、 保 育 は 幼 児 教 育の1つの仕組み<、らいに思っている人達がいる ようで、‘そうした人が、保育者養成をしている現 場 で す ら 増 え て い る と 聞 き ま す 。 地 域 の 社 会 福 祉 施 設 と し て 最 大 の 施 設 数 で あ っ た 保 育 所 が 、 幼 稚 園 を 意 識 し て 、 乳 幼 児 の 保 育 以 外 活 用 が あ ま り な されず、地域の子どもの育ちや子育て支援施設と して有効な活用をされてこなかったことの影響が 大きいと思います。 私が1970年代に保育政策研究を始めていたとき も、この分野の研究は児童福祉の分野から切り離 されていて、保育研究で大学に職場を得たいのだっ た ら 、 保 育 内 容 の 研 究 を や り な さ い そ う す れ ば 求 人があるかもしれないと多くの保育者養成をして いる大学関係者にいわれました。保育所の保育内 容 の 質 を よ く す る こ と に よ っ て 、 地 域 で 暮 ら す 乳 幼児の教育施設としてどのような保育内容を提供 するのかということに保育士養成の興味関心が強 く 、 地 域 で 子 育 て を 支 援 す る 保 育 サ ー ビ ス と し て の保育政策研究は評価が低かったといえます。 90年代に入り、少子化問題が顕著になっていく 中で、保育が就労支援として注目されるようになっ て き ま し た 。 し か し 、 あ く ま で も そ れ は 就 労 支 援 で し か な く 、 子 育 て 課 題 に 対 応 す る よ う な 形 で の 子育て支援施策の担い手としての保育とか、ある いは子育て支援としての児童福祉を研究するとい うことはなされません。1994年から作られ始めた エ ン ゼ ル プ ラ ン な ど 自 治 体 の 子 育 て 支 援 計 画 の 策 定 に と も な っ て 、 よ う や く 子 育 て 支 援 と し て の 保 育研究がはじまっていったのです。 その結果が、数値を説明する時間はないので、 今日は項目だけ提示していますが、見ていただく と わ か り ま す よ う に 、 虐 待 の 増 加 、 貧 困 化 、 あ る いは地域環境の悪化、ひとり親家庭の増加など、 子 ど も の 成 長 発 達 に 深 く か か わ る 問 題 や 、 課 題 が 発生するようになっています。 図 1

子育て家庭の役割と、

親宙皇の宙臼実現のバランス

グ親 自 己 実 現 「子どもの後見」と「親自身の自己実現」が、 「家計の確保」と「生活運営」の犠牲になり、苦しい。 ここに示している図lは、私が考える今の子育 て 家 庭 の 役 割 と 課 題 を 整 理 し た も の で す 。 左 側 が 現在の部分、この一番外側に薄く細くなっている グレーの部分は個人、親自身の自己実現の状況を 現 し た も の で す 。 こ の 部 分 が 現 代 的 な 大 き な 課 題 となっています。子育て家庭の中で「生活を運営 している」とか、「家計を維持していく」とか、「子 どもの後見をしていく」とかという、役割バラン スが取れることと同時に親自身の自己実現ができ ていかないと、なかなか子どもを育てることを生 活 の 一 部 と し て お こ な っ て い く と こ ろ ま で た ど り 着けないという状況になります。

(4)

第9回大会の記録(2013年8月)/シンポジウム「社会的弱者と自立支援をめぐって」 図 2 もう一つの図2をご覧〈だ言い。これは、ひと りの子どもが保護者の支援を受けながらどのよう に 育 っ て い く の か と い う こ と を 示 し た も の で す 。 一番上に横にひかれている黄色い線ですが、私は、 こ こ を 子 ど も の 成 長 の た め の 最 低 の ラ イ ン と 表 し ます。元々子どもたちはそれぞれに力を備えてい ま す 。 と き に 病 気 や 障 が い が あ る 場 合 は 、 生 き る ためにスタートとなる「ゼロ」地点よりも前提と し て 医 療 や 療 育 と い っ た 特 別 に 支 え な け れ ば い け ない部分がありますが、子どもの力と親の養育力 が 合 わ き っ て 、 こ の 辺 り に こ の 子 は い る と か 、 こ の 辺 り に こ の 子 は い る と か い ろ ん な 状 況 が 作 ら れ て い き ま す 。 そ の 状 況 に よ っ て は 、 子 ど も は 一 人 で は 生 き て い か れ ま せ ん か ら 成 長 ・ 発 達 が 担 保 で きないという場合には社会的な支援を受けて、よ うやくこの最低ラインというのが構成されていく のです。家庭や社会における子どもたちの養育や 支援にかかわる大人たちの努力によって、成長ラ イ ン が こ の ラ イ ン よ り 上 回 っ て い け ば い い の で す が、子どもの力がなかったり、親の養育力がなかっ た り 、 社 会 的 支 援 が な い と 最 低 の 成 長 ラ イ ン 以 下 の 状 況 に 子 ど も の 状 況 は 置 か れ て し ま う と い う こ とを表現しています。 今日はあまりお話しできませんが、地域環境が 震 災 な ど で 激 し く 壊 れ て し ま っ た り 、 子 ど も の 安 全を家庭だけでは守れない繁華街など危険な環境 で の 子 育 て で は 、 地 域 環 境 を 補 完 す る た め に 社 会 的支援がもっと必要になってきます。 次に、まだ完成している整理ではないのですが、 み な さ ん と 一 緒 に 考 え る た め に 、 現 代 の 児 童 福 祉 政策の特徴を6点にわたって整理してみました。 一 つ の 問 題 提 起 と と ら え て 、 い た だ け れ ば と 思 い ます。 第 1 は 、 児 童 福 祉 政 策 の 中 で 子 ど も へ の 直 接 的 な政策が少ないことです。 第 2 は 、 中 島 先 生 の お 話 で 、 地 域 福 祉 の 中 で 今 若者支援が取り込まれはじめていることを伺いま した。これまで児童福祉は地域福祉にはほとんど 入っていませんでした。今から7,8年前に私が 埼 玉 県 児 童 福 祉 審 議 会 会 長 を し て い た 時 、 埼 玉 県 の社会福祉計画を考えるにあたって作られた検討 会 に 埼 玉 県 社 会 福 祉 審 議 会 の 会 長 が 児 童 福 祉 の 分 野 を 考 え る 人 が 入 っ て い な い と 言 っ て 下 さ り 、 加 わ っ た こ と が あ り ま し た 。 そ れ ま で の 社 会 福 祉 計 画では、子どもの分野の支援が別に考えられてい たのです。児童福祉審議会が別にあったことで、 か え っ て 大 人 の 社 会 福 祉 の 在 り 方 の 議 論 に 子 ど も の 福 祉 は 入 れ て も ら う こ と が で き な か っ た と い え ま す 。 児 童 福 祉 を 一 部 会 に す る か 、 独 立 し た 組 織 にするのか、自治体によって考え方は違いますが、 社 会 福 祉 全 体 の 中 で 位 置 づ け る こ と と 、 固 有 の 問 題として考えることの両方の視点が求められると 思います。いずれにしても21世紀に入っても、よ ほ ど 意 識 さ れ な い と 地 域 で の 社 会 福 祉 計 画 に 児 童 福祉分野が入らない状況であったのです。 また、自治体の長期計画などでも、子ども政策 は家庭教育、義務教育、社会教育といった教育に か か わ る 制 度 が 中 心 で 、 そ れ に 就 労 支 援 を 中 心 と した乳幼児保育や学童保育といった児童福祉、子 ど も に 関 す る 健 全 育 成 な ど と い っ た 地 域 支 援 が 書 か れ れ ば よ い 状 況 と い え ま す 。 高 齢 者 に 続 き 、 障 が い 者 へ の 対 応 が 行 わ れ る よ う に な っ た 地 域 福 祉 でも、1990年代から社会福祉協議会などでわずか に 地 域 子 育 て 支 援 の 取 り 組 み が は じ め ら れ た く ら い で 、 子 ど も や 子 育 て 支 援 の 取 り 組 み は ほ と ん ど 地域福祉の中には入ってこない状況でした。 第3は、児童福祉分野は、対応がそれほど深刻 ではなく、量的な希望が多い事業というのを基礎 自治体に任せて、対応が深刻で専門性を要求され る対象で、量がそれほど多くないと言われるもの は、いくつかの自治体が共同して実施したり、主

(5)

東洋大学社会福祉研究第7号(2014年8月) に都道府県や国の事業に委ねてきました。ですか ら、現在のように問題が地域生活をしている人の 中でも深刻化な課題を抱えている家庭があったり、 対応しなければならない量が増えてくると自治体 では対応できなくなってきます。 第 4 に 、 児 童 福 祉 は 介 護 保 険 や 支 援 費 の 制 度 が 作り上げられた高齢者や障がい者分野と異なり、 措置と措置費制度が多く残った分野です。ですか ら、措置や措置費に関わらない事業というのは費 用と利用者を自分で開拓し、また多くの場合に費 用を支払うのは保護者であるために、子ども自身 が求めている事業はなかなか取り組まれないこと になります。 第5には、国家政策として少子化施策が中心の 取 り 組 み に な っ て し ま い 、 子 ど も ・ 子 育 て 支 援 に は向かいにくい特徴があります。政治のなかで最 も重視されたのが1990年代に入った少子化対策。 それに対して、ようやく民主党政権になったとき に、子ども・子育てビジョンや子ども・若者ビジョ ン策定の中で取り入れられたのが子ども・子育て 支援という視点でした。子ども子育てビジョンで は、「チルドレンズ・ファースト=子どもの最善の 利益」をその視点に取り込み、その後の取り組み で は 、 そ の 視 点 を 中 心 に 展 開 す る は ず で し た 。 こ の点は、最近では選挙の争点にすらなっていない という状況です。 第6に、自立支援です。児童福祉法制定50年の 1997年に児童福祉法を大改正したときに重視され た自立支援は、施設の名称や、具体的施策を自立 支援と名付けたりしました。けれどもその結果、 実際は自立支援という形で対象者を追い込んだけ れども、自立のために実施される地域での支援の 施策や、支援をする人は、増えていないという状 況です。 これが今の児童福祉の取り組み状況です。その 結 果 と し て 、 先 ほ ど 中 島 先 生 が 報 告 さ れ た よ う な 若者の貧困とか若者達の厳しい困難をもたらして きていると思います。おそらく、あとで林先生が お話しくださることは、まさにそこにあるだろう と思っています。 若者たちというのは、ちょうど家族を形成する ス タ ー ト ラ イ ン の と こ ろ で す 。 こ の よ う な 状 況 を 図 3 子育て世帯の地域での暮らしを支える 予防と回復支援の構築

<

闇鰔礎鹸 もたらすように児童福祉制度がつくられてしまっ たということになると思います。その結果、この 図3に表れるような要支援のところに地域生活の 中で要支援の人が集まってしまうメタボ状態が今 日 本 の 中 で 形 成 さ れ て し ま っ て い る の で す 。 加 え て、要保護対象者や世帯に対する地域での適切な 支 援 が 、 予 防 や 回 復 と い う 形 で 十 分 に 整 備 さ れ て い ま せ ん 。 地 域 で 暮 ら す 人 達 に と っ て 、 そ れ が な いということは、大変な問題です。 今 日 の 報 告 は 限 ら れ た 時 間 で す の で 、 詳 細 な 説 明 は で き ま せ ん が 、 残 さ れ た 時 間 で 、 今 年 研 究 が 11年目に入った10代の親の暮らしを例にして、地 域で暮らす困難について検討したいと思います。 ま ず 、 思 い 出 し て い た だ き た い の で す が 、 先 ほ ど 現 代 の 子 育 て 家 庭 の 役 割 図 の 説 明 で 、 子 育 て 家 庭 を 取 り 巻 く 周 り の と こ ろ に 保 護 者 の 自 己 実 現 の 輪 が 薄 く な っ て い る と い う 話 を し ま し た 。 実 は こ の図を作った初期にはこの輪はなかったのですが、 10代親と出会って一緒に活動していく中で、この 親自身の自己実現というのが、この10代親にとっ て非常に重要なことなのだということに気付きま した。 14歳で妊娠して出産した子どものケースで考え て み ま し ょ う 。 そ の 子 は 中 学 生 の 子 ど も で す が 、 出産すれば親になります。大人になる準備もせず、 心も体も生活条件もすべて子どものままで親にな るわけです。子どもを産んだとたんに、親として、 しつけから自分がつらいときの子どもの世話まで 大人でも辛い対応を、子ども期に迫られていくこ とになります。結果的にですが、10代の子どもが、

(6)

第9回大会の記録(2013年8月)/シンポジウム「社会的弱者と自立支援をめぐって」 そこで充実した子ども期を過ごす支えもなく、大 人としての対応するための体験や学習の機会など の 支 え も な く 、 地 域 に 親 子 で 放 り 出 さ れ る こ と に なります。 この図4は、10代親の暮らしから見た子育て支 援の実態と暮らしの選択の展開です。私達も第1 期の10代親支援研究の科研を終了するときまで、 こ う し た 構 造 も あ ま り わ か っ て い ま せ ん で し た 。 地域生活は、基本的に家族に支えられていると考 え ら れ て お り 、 特 別 な 支 援 を 作 っ て は い ま せ ん の で、10代で妊娠した子どもに家族的支援がない場 合には、具体的には母子一緒に施設で暮らすか、 あるいは子どもと分離されて、子どもを社会的養 護の施設などに入れるかという子育て支援の構造 に な り ま す 。 先 ほ ど 中 島 先 生 の デ ー タ に も あ り ま したけれども、原家族自体が、ひとり親であったり、 あるいは子ども自身が施設で暮らしていたという ようなケースもたくさんあるということが分かっ てくる中で作り出した構造です。 しかし、10代で子どもを産んだ母親達が一体ど のように地域で暮らしているかというと、現在は 一般施策として妊娠、出産、子育てのところでの プ ロ グ ラ ム な ど が バ ラ バ ラ と あ り ま す 。 し か し 、 一番大きい問題は、性的な関係を持つときに妊娠 を し な い た め の 知 識 や 、 妊 娠 し た か な と い う 時 に き ち ん と 相 談 で き る 体 制 や 、 ま た 、 そ の 後 も 地 域 で出産・子育てをしていく過程で、多様で、親密 な一貫したサポート体制がないということです。 子育てを自分たちだけで行っていくには脆弱な 家庭を支えていく、あるいは、そうした家庭で育 つ子自身を支えていくような人や場所やシステム が非常に少ないのです。実はずっと繋がっている の は 、 地 域 や 市 民 グ ル ー プ 友 人 と か 近 所 の 人 か ら の イ ン フ ォ ー マ ル な 支 援 で す 。 ま た 保 健 セ ン タ ー は母子健康手帳を交付に行った、交付してもらう ために行って、丁寧な対応をしてもらった人は繋 がりますけれども、母子健康手帳をもらわなかっ たり、転居したり、よいサポートを受けなかった 人は繋がらなくなっていきます。結果的には家族・ 親族のサポートが受けられない人は、こういう仕 組みのなかで支援の仕組みからはずれてしまいま す。 研 究 は 、 第 1 期 約 6 年 間 の ま と め を 踏 ま え て 調 査票を作成し、今第2期の量的調査に入っていま す 。 私 ど も が 研 究 を し た そ の 中 で 明 ら か に な っ た 支援課題については、この12ページから13ページ の と こ ろ に ま と め て 書 い て お き ま し た 。 あ と 残 さ れ て い る 時 間 、 わ ず か な 時 間 で す が 、 お 話 を し た い と 思 い ま す 。 先 ほ ど 中 島 先 生 の お 話 が 、 具 体 的 にはこの10代の親の暮らしで具体的に表れてくる と思います。以下、限られた時間内ですのでポイ ン ト だ け の く さ せ て い た だ き ま す の で 、 レ ジ ュ メ の 番 号 と は 必 ず し も 合 わ な い こ と を ご 了 承 く だ さ い。 第 1 は 、 妊 娠 を 機 に 、 あ る い は 妊 娠 前 に 学 業 を 中断しているということです。先ほど述べたよう な高校中退あるいは不登校という形にして、多く の場合に学校との関係はあまりよくない状況で出 産まで至った子どもがたくさんいます。 第 2 に 原 家 族 の 問 題 を 引 き ず っ て い る と い う こ とです。これは今、量的調査をしていますので、 そ こ で は っ き り し て き ま す が 、 第 2 期 調 査 で 、 今 まで約30人と継続的な支援を続けてきました。こ の中で約半数以上が、先ほどお話があったように、 ひとり親家庭で育っています。もちろん生活保護 の受給もかなり多い状況です。 第3に子どもの父もほとんどが若年です。そう いう意味で若年の男女双方が問題を抱えて、新し い家族を形成していくことになりますから、抱え ている問題は更に深刻化します。 第 4 に 結 婚 、 再 婚 、 そ れ か ら 、 第 2 子 、 第 3 子 の出産、別れなど、10代親は、短期間に家族状況 を大きく変化させます。こういった家族イベント を 短 期 間 に 次 々 と や っ て い っ て し ま い ま す 。 原 因 は、おそらくコミュニケーション能力が弱いので、 粘 り 強 く 調 整 し て い く と い う 力 が な い か ら で は な い か と 思 い ま す 。 相 手 と の 調 整 が 付 か な い と な る と ス パ ッ と 切 っ て し ま っ て 、 次 の ス テ ー ジ に 切 り 替えます。 私 は こ れ ま で 、 東 洋 大 学 の 人 間 科 学 総 合 研 究 所 を使って3年ほど、この10代の親達のグループ支 援活動をやってきましたが、その過程で来なくなっ た10代のママから毎月のようにメールアドレスを 変えたという連絡が来ています。すぐ、にこれまで

(7)

東洋大学社会福祉研究第7号(2014年8月) の 関 係 を リ セ ッ ト し た 生 活 に 行 っ て し ま う の で 、 ワ ー カ ー と か 、 保 健 師 と か 公 的 な 機 関 の 人 達 と も 全然繋がっていない。繋がりようがないわけです。 特 に 、 地 域 の 子 育 て 支 援 が 自 分 た ち を 受 容 し て い ないと感じる場合は、10代ママはその活動への参 加を拒否します。 第5に今年、東京都保育士会と協力して10代親 への量的調査をかけています。10年前の調査では、 保育所からちょっと声を掛けただけで120人く、らい のサポートきれている10代の親達が調査に協力し てくれました。今回、私達は4,500枚のチラシ、調 査票を配布し、約1,300所の保育所に協力を求めて 郵送調査をかけましたけれども、今の段階で返っ てきているのが70件です。それは認可保育所に入 れているlO代親が少ないと同時に、サポートをさ れ て い た り お 世 話 に な っ て い る か ら 協 力 し な け れ ば と い う 意 識 が な か な か 持 て な い 、 関 係 し か 作 れ て い な い 状 況 で 、 保 育 所 と 共 同 の 子 育 て を す る と いう関係には至っていないということです。 第 6 に ア ド ボ カ シ ー に つ い て で す 。 保 育 園 の 入 園などの行政手続きなど当然ですが高校中退者な ども多いので、なかなか行政支援を使うところに た ど り 着 く こ と が で き ま せ ん 。 自 分 の 状 況 を 適 切 に話すには、「○○を話さないと伝わらなよ」「○ ○を話たらいいのではないの」というような10代 親 と 行 政 担 当 者 の 間 を 通 訳 的 に 繋 ぎ ア ド ポ ケ イ ト す る 人 が 必 要 に な っ て い き ま す 。 ま た 、 面 倒 な こ とは回避していく、見ないようにしていく傾向が あります。その結果、自分たちがやれること、自 分がやれることっていうことで暮らしを調整して い き ま す の で 、 具 体 的 に は キ ャ バ ク ラ や 夜 の 仕 事 へ の ハ ー ド ル が 非 常 に 低 く な っ て い っ て し ま い ま す。そこで今は何とか暮らしていくのだけれども、 数 年 経 つ と 、 な ん と か 回 わ っ て い た 子 育 て や 家 族 の暮らしが、夫が遊び始めたとか、失業したとか、 暮 ら す 場 が な く な っ た と か が 発 生 し て 、 離 婚 や 、 別居、DVなどが発生してしまうことになります。 先 ほ ど 中 島 先 生 の 話 の 中 で も あ り ま し た が 、 重 要 な こ と は い ろ ん な 支 援 機 関 の ネ ッ ト ワ ー ク が 重 要であるということと、軽い子育て支援からより 重 い 保 護 的 な 支 援 ま で を 用 意 し て い く こ と が 重 要 です。先ほど中島先生のお話しに生活保護世帯の 相 談 者 が 非 常 に 少 な い と い う 話 が あ り ま し た が 、 10代のママたちに聞きますと、多くの子が、「役所 に な ん か 行 か な い 。 相 談 に 乗 っ て く れ る わ け な い から」と言います。 ある自治体で今ちょうど生活保護を受給してい る 母 子 家 庭 の 自 立 支 援 の シ ス テ ム の 開 発 研 究 を し ているのですが、外部委託して生活保護から自立 しようと考えている人たちのための相談機関をつ くってみたけれども半年経っても1人しか相談に 来 な い と い う 状 況 に あ る こ と を 聞 き ま し た 。 対 象 を限定した事業では、なかなかハードルが高くて 入 れ な い の か も し れ ま せ ん 。 け れ ど も 大 勢 の 事 業 の 中 で は 周 り と の 関 係 が 取 れ な い の で 行 か な い と も い い ま す 。 ど こ で 出 会 い 、 ど の よ う に 支 援 を す れ ば 安 心 し た 関 係 が 形 成 で き る の か と い う こ と が 課 題 な の で し ょ う 。 寄 り 添 っ て い く と い う こ と な のですが、一体、地域で誰がどのように継続的に 寄 り 添 っ て い く の か 、 イ ン フ ォ ー マ ル と フ ォ ー マ ル を 含 め て 地 域 で こ う し た 仕 組 み を 作 り 出 し て い く の は 重 要 で あ る が 、 難 し い 問 題 だ と 思 っ て い ま す。以上です。 小 林 : あ り が と う ご ざ い ま し た 。 先 ほ ど の 中 島 先 生 の お 話 と マ ッ チ す る 論 点 も 幾 つ か 出 て き た と 思 います。続きまして、林先生、お願いします。 林 : 林 で す 。 よ ろ し く お 願 い い た し ま す 。 先 ほ ど 自 己 紹 介 を し た 際 に も お 話 し し ま し た よ う に 、 私 は、ずっと大学時代から、1994年く、らいからです けれども、子どもの権利条約の普及・推進活動に 20年近く関わっていて、大学を出たあとも子ども 系のNPOに携わっていました。地元は私、東京都 町田市で、町田市は障害児・者を学校の中で受け 入 れ る と い う こ と を や っ て い る 自 治 体 で す 。 大 学 卒業後は、障害児を受け入れるための仕事として、 障 害 児 介 助 員 と し て 3 年 間 働 き ま し た 。 私 は 車 椅 子の子を4,5,6年と受け持ちました。受け持っ た子は小児マヒで肢体が不自由なだけで、体が小 さかっただけなので、6年生のときには児童会長 をやっていました。(障害児介助員は)結局は学校 の 中 に エ レ ベ ー タ ー と か エ ス カ レ ー タ ー を 設 置 す るく、らいだったら、マンパワーを1人雇って教室

(8)

第9回大会の記録(2013年8月)/シンポジウム「社会的弱者と自立支援をめぐって」 移動させたほうが安いだろうというような位置づ けだと思いますが、そのときでも40人<、らいの同 じような立場の方が市内の公立小中学校にいまし た。基本的にそういう意味では、私は、ずっと外 で と い う か 、 中 で 研 究 す る と い う よ り は 、 チ ャ イ ル ド ラ イ ン も そ う で す が 、 基 本 的 に 現 場 で い ろ い ろ と 活 動 す る こ と ば か り で し た 。 そ う し た 中 、 文 部科学省が、ちょうど官民連携をやりたいという ことで、2011年の民主党政権になったあとの流れ の中で、官民連携、NPOの立場から、初めて外部 の立場で、生涯学習政策局に専門職という形で文 部科学省に入りました。ちょうど震災が起こった 時期であり、被災地でNPOと教育委員会、学校と かと、どう繋ぐ、のかというところの調整役や、ま たは現地のNPO、東京とか被災地以外のNPOと現 場をどう繋ぐ、のかということを基本的にはずっと や っ て い ま し た 。 そ う い う 意 味 で は 、 結 構 、 現 場 系をメーンにしてやっていましたたので、今回、 研究という慣れないところに足を踏み入れたとい うところもあります。そのため、どうくらい専門 的 に お 伝 え で き る か ど う か は 定 か で は あ り ま せ ん が、今回、子ども・若者のところで「貧困」をキーワー ドにした現状の課題といったところを少しお話し させていただこうと思います。ちょうど先日の6月 に、内閣府が、この「子ども・若者白書』を出し ましたので、この資料を基に「困難を有する子ども・ 若者の現状」といったところを見ていきたいと思っ ております。まずは最初、子どもの現状の話です。 先ほどの森田先生の話の中でも自己肯定感の話と か が 出 て き て い ま す し た が 、 子 ど も の 置 か れ て い る状況として、毎日1.4人の子どもが自殺し、虐待 で3日に1人亡くなっている。孤独を感じている 子どもが3人に1人いて、自己肯定感が低いとい う子どもが他の国と比べて非常に多いということ は従前から言われており、皆さんもご承知のこと だと思っています。その中でいろいろと子ども達 を 取 り 巻 く 環 境 は 貧 困 問 題 も そ う で す し 、 世 代 間 格差、この間の参院選やその前の総選挙でも貧困 の問題、多少争点にはなりつつも民主党政権に対 するいろんな批判も含めて、どうしても自民党の ほうが勝つという流れの中では、まだまだ子ども 施 策 と い う も の が 、 全 然 重 要 視 さ れ て い な い と 言 えます。その中で子ども・若者の貧困の実態ですが、 今日お配りさせていただいている資料の16,17, 18ページにグラフと簡単な説明が書いてあります の で 、 そ ち ら も 併 せ て 見 て い た だ け れ ば と 思 い ま す。子どもの相対的貧困率ですが、1990年代半ば から上昇傾向にあります。2009年には15.7%という こ と で 全 体 の 貧 困 率 に ほ ぼ 近 い と い う か 重 な り つ つ あ り ま す 。 そ の 中 で 更 に 子 ど も が い る 現 役 世 代 の全体の相対的貧困率は14.6%ですが、そのうち の大人1人の子どもを養育している家庭の貧困率、 「ひとり親家庭」と言われているところの相対的貧 困率は50.8%ということで、大人が2人以上、お父 さん、お母さんの2人いる、または祖父母がいらっ しゃるというところの貧困率と比較すると、ひと り親家庭は経済的に困窮するということが、ここ のグラフからも見て取ることができます。また、 その中で子どもの貧困率ですが、日本の子どもの 相対的貧困率は、OECDに加盟している30カ国の 中では12番目に非常に高く、OECD平均を若干上 回 っ て お り ま す 。 子 ど も が い る 現 役 世 帯 の う ち 大 人が1人の世帯相対的貧困率もOECD加盟国中、 最 も 高 い と い う こ と で 、 ち ょ っ と 図 が 見 に く く て 申し訳ありませんが、子どもがいる、ひとり親家 庭の相対的貧困率は58.7%ということになっていま す。日本に続いて相対的貧困率が高いのはアメリ カで47.5%、平均が30.8%ということです。ちなみ に相対的貧困率が低い国はデンマークが1位です。 そ し て 、 ノ ル ウ ェ ー と か ス ウ ェ ー デ ン と い う 北 欧 の国は相対的貧困率が非常に低い。子どもの貧困 率のほうも低いということを見て取ることができ ま す 。 こ こ ま で が 一 通 り 貧 困 の 話 に な り ま す が 、 それとともに貧困家庭の話で、先ほどの中島先生 の話の中でも就学援助の件とかも触れられていま したけれども、経済的な理由によって就学困難と 認められて就学援助を受けている小学生・中学生 は、10年間で年々増加をしております。就学援助 率は右側にありますように、2010年で15.3%とい うように、この10年間ぐらい比較する中でも、5 ポイント以上増えてきております。これは今、少 子化と言われていて子どもの数が減っている中で、 就 学 援 助 率 が 高 ま っ て い る と い う こ と は 、 そ れ だ け子育てしている家庭の経済的状況が非常に課題

(9)

東洋大学社会福祉研究第7号(2014年8月) に な っ て い る と い う こ と で す 。 こ の 就 学 援 助 を 受 けている家庭は全部で155万人ということになりま す。あとは今、子どもの就学中の小中学生の「小」 の 部 分 を 見 て い ま し た け れ ど も 、 更 に そ れ よ り も 少し上の年代の子ども・若者の貧困の実態のとこ ろを見ていきますと、まずは15∼34歳までです。 い わ ゆ る 「 ニ ー ト 」 と 呼 ば れ て い る 若 年 無 業 者 は 63万人となっております。15∼34歳の人口に占め る割合が2.3%で、今、緩やかに上昇をしていると 言 わ れ て い ま す 。 こ ち ら に 足 せ ば よ か っ た ん で す けれども、一番左側の棒グラフのところの中で、 平成24年、2012年のときのそれぞれのニートの割 合が書いてあるんですけれども、一番上の21になっ ているオレンジ色の部分、定義上はl5∼34歳を若 年無業者としていて、35∼39歳は、そこには含ま れてはいないんですけれども、参考値として入っ ています。と言いますのは、平成24年で21%、一 番 上 の と こ ろ が 若 年 無 業 者 な ん で す け れ ど も 、 要 は1年ごとに歳を取っていくということですので、 この15∼34歳も、ある意味、5年前の2007年のと こ ろ に な る と 、 そ の と き 、 緑 色 の 棒 グ ラ フ の と こ ろの割合に入ります。そうすると、その当時2007 年の時点での30∼35歳ですが、つまり、2012年の 35∼39歳の無業者の割合は19%になります。19% が21%に2ポイント上がっています。同じように、 緑色の18ポイントになっている30∼34歳は、5年 前は18ポイントでしたので、ここはあまり変わり ません。その次の20∼24歳は、18ポイントのとこ ろが、5年前は16ポイントで、18のところがl6zif イントです。オレンジ色、20は飛ばします。25 29歳の18ポイントが、5年前は16ポイントです。 そして、オレンジ色、20∼24歳の今17ポイントが、 5年前は9ポイントというように、大体5年前と 比 べ れ ば 、 そ の 世 代 が 歳 を 取 る ご と に 、 無 業 者 の 割合というのが増えていると思います。更にそれ を5年、更に10年前、15年前を見てみると増えて いるのが年々、その世代の無業者の割合が増えて い る と い う の が 見 て 取 れ ま す が 、 こ れ だ け 経 済 状 況 の 子 ど も が 減 っ て い る と か 言 わ れ て い る 中 で 、 その割合が増えているというところの背景はどこ にあるんだろうなと感じられています。それとと もに15∼34歳のフリーターが、先ほど中島先生の 話にありましたけれども、フリーターの数が180万 人で、15∼34歳の人口に占める割合が6.6%とい うことです。フリーターは今まで景気の悪化を背 景に増加傾向にあり、24年以降は減ってはいます けれども、25∼34歳のフリーターの層が2009年以 降増加をしているというところも言われています。 そうした中、2000年代後半においてニートやフリー ターの数が引き続き高水準で増えていくというと こ ろ や 、 子 ど も や 若 者 の 抱 え る 様 々 な 問 題 が 相 互 に影響し合って複雑化しているのではないかとい うところの中で、子どもへ及ぼすいろいろな影響 を危'│具する声が聞かれるようになり、2008年には 「青少年育成支援大綱」というものが策定されまし た。その策定後にできたのが「子ども・若者育成 推進法」で、2010年4月に施行されています。こ の 中 で 、 子 ど も ・ 若 者 サ ポ ー ト ス テ ー シ ョ ン の 件 は、また後ほどお話をしますけれども、今までニー ト と か 、 フ リ ー タ ー と か が 、 き ち ん と 盛 り 込 ま れ ることがなかった中で、若者推進法の中で総合的 に 推 進 し て い こ う と な り 、 ま た 、 社 会 生 活 が 円 滑 に 進 む 上 で 要 す る 、 そ う い っ た 子 ど も ・ 若 者 を 支 援するためのネットワークの関係諸機関を連携し て、福祉の分野は、どうしても厚労省管轄が非常 に多かったところの中で、それではだけではなく て学校であったり、文部科学省として枠組みを使っ た り 、 更 に は 、 そ の 外 側 で 活 動 し て い る い ろ ん な 団体とかNPOというところを巻き込んでいくと いうのが大きなところだったんだろうなと思いま す。私は元々の分では詳しくはわかりませんが、 厚生労働省の中でも厚生分野と労働分野が一致連 携するというところも、厚生省と労働省のところ の中で、省庁再編のところで一緒になってはいる ものの、そこの垣根を超えて一緒にやるというと ころの意味は非常に大きいのではないかなと感じ ています。そういう方針を国としては立ててはい て 、 そ れ を ど う 地 域 の 中 で 生 か し て い る の か と い うところが今後の大きな課題にはなってくるので は な い か な と 思 っ て い ま す 。 そ の 中 で 最 近 、 子 若 法を受けて、先ほど中島先生の話の中で出ていた の で は 、 社 会 保 障 審 議 会 の 「 生 活 困 窮 者 の 生 活 支 援の在り方に関する特別議会」の話がありました が、第2次安倍内閣の流れの中での話ですが、稲

(10)

第9回大会の記録(2013年8月)/シンポジウム「社会的弱者と自立支援をめく、って」 田再チャレンジ担当大臣を担当大臣として、若者・ 女性活躍推進フォーラムというものが昨年の5月 に「我が国の若者・女性の活躍推進のための提言」 というものを出していて、そこが1つまとめたも のが、このポンチ絵になります。我が国の若者・ 女性の活躍推進フォーラムは、むしろ「女性手帳」 の ほ う で 話 題 に な っ て い た の で 、 こ こ の 部 分 は あ まり取り上げられることはありませんでした。こ この中の右側の3のところの「企業ニーズに合っ た社会人学び直しの推進」というところがありま す 。 こ の タ イ ト ル か ら す る と 読 み 取 る こ と が 非 常 にできにくいのですが、これを受けてつくられて いるのが、今年の6月14日に、日本経済再生本部か ら「日本再興戦略ジャパン企画」というものです。 そこの中での学び直しのスキームにおいて、ニー ト、フリーターの学び直しというものが一応盛り 込 ま れ て い ま す 。 そ こ の 中 で は 若 者 ハ ロ ー ワ ー ク の充実とか、地域レベル、産学官コンソーシアム の卒業生による就職活動を高める訓練コースとか、 フリーター等の正規雇用化の支援とか、ニートの 就労支援を実施するということであったり、再雇 用戦略の、36ページのほうで、若者等の学びの諸 支援のための奨学金制度の弾力的運用や雇用保険 制度の見直し等を行うというように、ニート、フ リーターの人を対象とした学び直しのことについ て、政策としてまめることが全省庁的なものとし て今進められているところであります。そういう 意味では、今年の社会福祉審議会の話では、どう しても厚労省のスキームになってしまうのですが、 そこから出たところに省庁を超えた枠組みとして 第1次安倍内閣時代の再チャレンジと、今回のこ こで言う我が国の若者・女性の活躍推進のための 提言というものが関連しているのかどうかは、ま だ 定 か で は な い と 聞 い て い ま す 。 高 校 中 退 で あ っ たり、大学に行ったけれども、大学を中退してい る 人 、 ま た は 就 職 が う ま く い か な く て ニ ー ト と か フ リ ー タ ー に な っ て い る と い う 方 に 対 し て の 学 び 直しの部分を、一応、国としては、政策の中では 各省で検討を進めるように、という指示で行われ ています。そして、先ほど中島先生の話にもあり ました地域若者サポートステーション事業という ものも、学校といかにして連携をするかというと ころが今言われています。全国に今160ケ所、地域 若 者 サ ポ ー ト ス テ ー シ ョ ン が 北 海 道 か ら 沖 縄 ま で あって、東京は10ヶ所〈、らいあり、活動しています。 その中での相談支援事業としてはキャリアコンサ ルタントによる専門の相談であったり、職業的自 立 支 援 プ ロ グ ラ ム の 作 成 と か 、 そ の た め の プ ロ グ ラ ム の 実 施 と い う も の 、 ま た は サ ポ ス テ と 学 校 連 携推進というものを行うということやってきてい ます。または若年労働者向けの集中訓練というも のの合宿等も行われていますが、地域若者サポー トステーションも昔の事業仕分けの影響を受けて、 合 宿 が 中 心 に な っ て 、 効 果 は 計 り に く い 、 単 年 度 で 合 宿 に 3 ヶ 月 間 参 加 し た か ら と い っ て 、 半 年 後 に 全 員 が 就 職 で き る か と い う と 結 構 難 し い と は 思 います。そこの部分は丁寧に時間を掛けてやって い か な け れ ば い け な く て 、 そ れ は 教 育 効 果 も 常 に そうですけれども、教育の効果を計るにはそんな 1年後に、ただのペーパーテストでの点数とは違 い ま す の で 、 非 常 に 難 し い の で す が 、 こ こ で 丁 寧 に 活 動 し て い る 部 分 は 大 丈 夫 だ な と 思 っ て お り ま す。ただ、ここの中でも学校と地域若者サポート ス テ ー シ ョ ン と の 連 携 と 書 い て あ り ま す が 、 そ も そも高校中退する子どもとかもいる中で、学校に 行 っ て い る 間 は 、 ま だ 学 校 の 先 生 と の 繋 が り が あ る ん で す け れ ど も 、 学 校 を 出 て し ま う と 、 そ の 子 との連絡手段も全然取れなくなってしまうという の が 非 常 に 大 き な 課 題 で 、 逆 に ど う や っ て そ こ と 連 携 し て い っ た ら い い の か と い う と こ ろ が 1 つ あ ります。また、学校側としても進路指導とかする 中で就職率とか進学率は出すけれども、要は卒業 す る ま で の 間 な の で す 。 卒 業 し て し ま っ た ら 、 卒 業 生 に 対 し て も そ こ の 連 携 は 取 れ な く な っ て い ま す の で 、 学 校 は ど う し て も 年 度 で 動 く と い う と こ ろ の 中 で は 、 卒 業 す る と 卒 業 生 の 後 追 い が で き な い、繋がりを継続していくのが難しいということ が言われています。そういう意味では今、NPOが 学校の中に入って、先ほど中島先生の話にあった 職員室の中でNPOが机を隣に置いて、その窓口を 行 う と い う こ と が あ り ま す が 、 高 校 に 進 学 し た 1 年生の時点でNPOの方、キャリアコンサルトとい うよりは就職支援の進路指導のような話を学校の 先 生 以 外 の 人 と 話 を す る こ と に よ っ て 、 例 え 高 校

(11)

東洋大学社会福祉研究第7号(2014年8月) を 中 退 し た あ と で も 、 そ の N P O と 繋 が れ る き っ か けとか、そういう存在がいるんだよということを 高 校 に い る 間 か ら 持 っ て い る こ と が 大 事 だ な と い うことを今言われており、結構そういう取組を都 立 高 校 で 、 例 え ば 、 立 川 の 秋 留 台 高 校 っ て あ り ま す が 、 そ こ は 「 育 て 上 げ 」 ネ ッ ト と 一 緒 に 入 り 込 んでやっています。ただ、そういう活動をやって いても、NPOに出るお金にもすごく制約があって、 ほぼボランティアでやらざるを得ない部分があり、 すごく難しいのですが、まずは受け入れてくれる 学校がどこまであるのかというところが今課題に なっています。社会保障審議会の特別部会の中で、 そ う い っ た 形 の 中 で 学 校 教 育 段 階 か ら 、 貧 困 家 庭 の子どもについては学校教育の段階からアプロー チ を し て い く と 。 教 育 分 野 、 精 神 保 健 分 野 、 労 働 分 野 、 福 祉 分 野 が 一 体 化 と な っ て 取 り 組 む こ と が 重 要 で す よ と ・ 若 者 に 対 す る 相 談 支 援 、 就 労 支 援 は重点的に取り組むことが必要ということが言わ れているところです。そういう意味では、何度も 言 い ま す け れ ど 、 厚 労 省 だ け の 枠 組 み で や る の で は な く て 、 社 会 全 体 が 総 掛 か り と し て 取 り 込 む こ とが、この分野はどうしても必要になってきてい ま す し 、 そ の 中 で ど う し て も 脆 弱 な 体 制 に な っ て いるNPOがどう入って一緒にやっていくことがで き る の か と い う 部 分 は こ れ か ら の 課 題 で 、 そ こ に 対して、こういった学会も含めて、どうやって後 押しをしていけばいいのかということを、今後は 私 自 身 も 研 究 し て い き た い な と 思 っ て い ま す 。 あ りがとうございます。 司 会 : あ り が と う ご ざ い ま し た 。 林 先 生 か ら は 、 教 育 と 福 祉 の 間 の 硬 く な っ て し ま っ て い る 垣 根 を どうやって崩していくか、ネットワーク化するか という課題があると思いました。では続きまして、 後藤先生お願いします。 後 藤 : 日 本 大 学 の 後 藤 で す 。 今 日 は 報 告 の 機 会 を い た だ き ま し て 、 あ り が と う ご ざ い ま す 。 先 ほ ど 中島先生のご報告がありましたけれども、基本的 に私も生活困窮者自立支援法に絡めて報告をした いと思っていますが、生活困窮者支援法というの は 、 先 ほ ど の 報 告 を 聞 い て い た だ く と わ か り ま す ように、ある種、予防的なプログラムなわけです。 私の今回のテーマは、「ホームレスと自立支援」と いうことで、そういった予防的な機能が働かずに ホームレスになってしまった人達を対象にしてい ます。そういった人達の自立をどう支援していく かということになりますので、若干切り口が違う と い う こ と を お 断 り し て お き た い と 思 い ま す 。 そ れ か ら 、 先 ほ ど 森 田 先 生 が 地 域 福 祉 の 中 に 子 ど も の こ と が 全 く 含 ま れ て こ な か っ た と お っ し ゃ っ て い ま し た け れ ど も 、 そ れ 以 上 に お そ ら く 、 ホ ー ム レスの人達というのは地域福祉から排除されてい ま し て 、 町 内 会 で も ホ ー ム レ ス が い る ん だ け ど ど うしょうみたいな、どうやって排除しようみたい な、そういった議論がずっと続いていて、今も、 も し か し た ら あ る か も し れ な い ん で す け れ ど も 、 や っ と 地 域 福 祉 と い う 観 点 か ら ホ ー ム レ ス も 含 め た 生 活 困 窮 者 を ど う 支 援 し て い く か と い う こ と が 議論され始めた段階なんだろうと思っています。 今日の私の報告は、社会的弱者とカテゴライズき れ る 人 々 の 中 で も ホ ー ム レ ス と 呼 ば れ る 人 々 に 焦 点を当てて、彼らがその存在から「脱却」.自立 を し て い く た め に 求 め ら れ る 視 点 及 び そ の 支 援 の 方法について検討するというのが目的です。本報 告では以下の構成によって報告を進めていきたい と思います。1番目は、ホームレス問題の概容と 支 援 の 課 題 に つ い て 整 理 を し た い と 思 い ま す 。 2 番目は、ホームレス問題とその「脱却」を捉える 視点及び支援の方法について検討します。3番目 の内容は、この2番目の内容を踏まえまして、私 が関わってきました民間支援団体の取組の事例を 検討して、ホームレス状態を「脱却」した人々の 支援の在り方について示唆を得るというのが内容 になります。4番目の内容は、社会的弱者への自 立 支 援 の 在 り 方 に つ い て 、 1 , 2 , 3 の 議 論 を 敷 桁(ふえん)して検討するというのが最後のまと めになります。それでは、1番目の内容に入って い き た い と 思 い ま す 。 ま ず は 、 ホ ー ム レ ス 問 題 の 概容と支援の課題について整理をしたいと思いま す。ホームレス自立支援法という言葉が先ほどか ら ず っ と 出 て お り ま し た け れ ど も 、 ホ ー ム レ ス の 自立支援等に関する特別措置法というのは2002年 に成立しまして、これは、議員立法による10年間

(12)

第9回大会の記録(2013年8月)/シンポジウム「社会的弱者と自立支援をめく、って」 の 時 限 立 法 で す 。 先 ほ ど 中 島 先 生 の 報 告 に あ り ま し た よ う に 、 こ れ は 、 5 年 間 の 延 長 が 決 定 し て お ります。この法律がなぜできたのかというのは、 当 然 の こ と な が ら ホ ー ム レ ス の 人 達 が 増 加 し て き た と い う こ と で し て 、 グ ラ フ を 見 ま す と 、 ト ッ プ は2003年で25,296人であります。ここから、急激に 人 数 が 減 っ て い き ま す 。 た だ 、 こ の グ ラ フ を 見 る と き 注 意 し な け れ ば な ら な い の は 、 ホ ー ム レ ス と い う 言 葉 の 定 義 に な り ま す 。 ホ ー ム レ ス と い う 言 葉は、多くの方が路上生活をしている方を指すも のと捉えがちで、実際ホームレス自立支援法の中 でもそのように定義をされています。ただし、家 を 失 っ た 人 と い う の は 路 上 に 寝 て い る 人 だ け に 限 ら ず 、 最 近 だ と ネ ッ ト カ フ ェ 難 民 で あ る と か 脱 法 ハ ウ ス な ん て 言 葉 が あ り ま す け れ ど も 、 ゼ ロ ゼ ロ 物件もそうですけれど、そのようなところに住ま わ ざ る を 得 な い 居 住 が 不 安 定 な 人 達 も 含 ま れ る わ け で す 。 日 本 は 、 な ぜ か ホ ー ム レ ス を 路 上 生 活 者 に 限 定 し て 定 義 し て し ま っ た が た め に 、 こ の グ ラ フ は 路 上 生 活 者 の 数 だ け を 示 す も の に な っ て い ま す 。 そ の よ う な 問 題 は あ り ま す が 、 本 日 は そ れ は そ れ と し て お 話 を 進 め て い き た い と 思 い ま す 。 も う1点、注意しなければならないのは、全国的に 調査方法を統一して調査をしたのは2003年以降で、 それ以前というのは自治体によって調査方法がバ ラ バ ラ で す 。 な の で 、 東 京 都 の デ ー タ を 見 る と わ かるように、4,300,5,800,5,600という区切りのい い数が出ています。ホームレス支援法が2002年に で き た わ け で す け れ ど も 、 ホ ー ム レ ス 対 策 が こ れ 以 降 本 格 化 し て い き ま す 。 自 立 支 援 セ ン タ ー と い うのが大阪や東京といった大都市につくられ始め たのが2000年以降のことですし、ホームレス支援 に お い て は 生 活 保 護 が 大 き な 比 重 を 占 め て い る わ け で す け れ ど も 、 運 用 が 改 善 さ れ ま し た 。 契 機 と しては、2008年12月から2009年1月にかけていわ ゆ る 「 派 遣 村 」 が あ り 、 こ の あ と 立 て 続 け に 厚 生 労働省のほうから2つの通達が出されます。この ことをふまえてグラフをみますと、2008年以降に ホ ー ム レ ス が 急 減 し て い る こ と が わ か り ま す 。 そ れから、東京都の自治体での取組を見てみますと、 地域生活移行支援事業と呼ばれる、ホームレスの 方に3,000円で2年間アパートを貸しますという事 業、そして先ほど報告にありました、TOKYOチャ レンジネットというものが自治体レベルで行われ て い ま し て 、 こ う い っ た こ と の 取 組 に よ り 、 先 ほ ど の グ ラ フ に 見 ら れ る よ う に 、 ホ ー ム レ ス の 数 が 減 少 し て き た と い う の が 、 こ の 間 の 成 果 で あ り ま す。ただ、この間、ホームレス支援が拡充してきて、 あ る い は 改 善 し て き た こ と に よ っ て 、 ホ ー ム レ ス 対策は新たな課題に直面することになっています。 そ れ は 何 か と 言 い ま す と 、 ホ ー ム レ ス 状 態 を 「 脱 却 」 し た あ と の 生 活 を ど う 支 え る か と い う こ と で す 。 ホ ー ム レ ス 支 援 と い う の は 、 路 上 か ら 畳 に 上 げ る と い う こ と を も っ て ゴ ー ル と 考 え ら れ が ち で す け れ ど も 、 私 の 支 援 の 経 験 か ら 言 い ま す と 、 そ こ か ら が 勝 負 で 、 先 行 研 究 に も あ り ま す よ う に 様々な生活上の課題を抱えられているにも関わら ず 地 域 の 中 で 孤 立 し て い る 人 が た く さ ん い る わ け で す 。 こ う い っ た 状 況 が 何 を 引 き 起 こ す か と 言 い ますと、1つの帰結として再ホームレス化に至る と い う こ と が あ り ま す 。 具 体 的 な デ ー タ を 見 て み ますと、自立支援センター退所者の19.3%が再ホー ム レ ス 化 し て い る と い う デ ー タ が あ り ま す 。 そ れ から、これは東京ですけれども、自立支援センター の 退 所 者 の 4 割 が 行 方 不 明 に な っ て い る と い う 報 告 も あ り ま す 。 先 ほ ど 紹 介 し た 東 京 都 が 過 去 に 行った地域生活移行支援事業、3,000円で2年間ア パ ー ト を 貸 し ま す と い う 事 業 だ っ た ん で す け れ ど も、結果を調べてみると13.4%の人が再ホームレス 化しています。こうしたことを考えますと、ホー ム レ ス 状 態 を 「 脱 却 」 し た 人 々 に 対 す る 自 立 支 援 というのが非常に大きな課題となっているという ことがわかります。それでは2番目の内容ですが、 ホームレス問題と「脱却」を捉える視点及び支援 の方向について検討するということです。ここで は こ の ホ ー ム レ ス 状 態 を 「 脱 却 」 し た 人 々 の 何 人 か が 再 ホ ー ム レ ス 化 し て い る と い う こ と を ど う 捉 えるのか、そこにどういう理由があるのかという のを検討するために、ちょっと遠回りかもしれま せんが、貧困概念というものの捉え方をここでお さ ら い を し て お き た い と 思 い ま す 。 リ ス タ ー と い う人は、「貧困は不利で不安定な経済状態としてだ け で な く 屈 辱 的 で 人 々 を 蝕 む よ う な 社 会 関 係 と し ても理解されなくてはならない」と述べています。

(13)

東洋大学社会福祉研究第7号(2014年8月) このように近年、貧困概念は社会的排除という観 点 か ら 捉 え ら れ る よ う に な っ て い ま す 。 そ の 中 で 阿 部 彩 先 生 が 実 証 研 究 を し て る の で す が 、 そ こ で わ か っ た こ と は 、 経 済 的 な 排 除 、 経 済 的 な 理 由 以 外で排除されていることが多い次元の排除、例え ば、社会関係の欠如や社会参加の欠如等が重なっ て生じている場合、経済的な排除への対応、つま り 、 所 得 の 保 障 を し た と し て も 、 そ れ 以 外 の 次 元 の 排 除 へ の 対 応 と は な ら な い と 述 べ て い ま す 。 つ まり、貧困対策というのは単なる所得の保障に留 ま ら ず 、 同 時 に 関 係 的 な 側 面 へ の 支 援 が 求 め ら れ ているということになります。こうした観点から 先 ほ ど の ホ ー ム レ ス 状 態 を 「 脱 却 」 し た 人 々 の 少 なくない人が再ホームレス化ということを捉える と 、 所 得 の 保 障 だ け で は な く て 、 そ う い っ た 人 達 に 関 係 的 な 側 面 の 支 援 が 求 め ら れ て い る と い う こ とになります。それからホームレス問題を捉える ときにもう1つ大事なことは、自分自身の排除で す。我が国のホームレスの多くはホームレスになっ た理由として自分自身の失敗をあげます。つまり、 自 分 が 悪 か っ た か ら ホ ー ム レ ス に な っ た ん だ と 捉 え て い る と い う こ と で す 。 こ れ と 同 時 に 、 貧 困 や ホームレスに注がれる社会からの非難のまなざし が、彼らへ自身にも内面化しているということを 岩 田 正 美 と い う 人 は 言 っ て い ま す 。 つ ま り 、 ホ ー ム レ ス 問 題 と い う の は 所 得 の 保 障 プ ラ ス の 人 間 関 係 的 な 側 面 へ の 援 助 、 プ ラ ス 自 分 自 身 の 排 除 と い う 側 面 に 対 し て の 支 援 を し て い か な け れ ば な ら な いともいうことになります。以上の議論をまとめ ましたのがこの図です。ホームレス状態というの は今ここ(真ん中)にあるんですけれども、まず、 ホ ー ム レ ス 状 態 に 至 る プ ロ セ ス で は 、 職 業 ・ 住 居 の喪失があります。それと同時に、社会の構成員 としての存在証明から排除されているという側面 があります。多くの場合は、ホームレス問題とい うのは、ここの部分でしか見られないのです。ただ、 再 ホ ー ム レ ス 化 と い う 現 象 を 解 く た め に は 、 こ こ だけを分析していてはだめで、親密な人間関係か ら排除され、または離脱していくという側面や自 尊感情を喪失して自分自身を排除していくという 側 面 を み て い く こ と が 不 可 欠 と な り ま す 。 こ れ ら の問題が複雑に絡み合ってホームレス状態という の に 陥 っ て い る と い う こ と で す 。 結 論 的 に 言 い ま すと、今までここの部分(職業・住居の喪失)し かホームレス対策というのは見てこなかったので、 ここの部分(親密な人間関係からの排除、自分自 身からの排除)をきちんと支援していくことによっ て 再 ホ ー ム レ ス 化 と い う の は 防 げ る の で は な い か というのが仮説として言えるわけです。今からお 見せするデータは、ここの部分のデータです。ホー ム レ ス 状 態 に あ る 人 が 親 密 な 人 間 関 係 か ら 排 除 ・ 離 脱 し て い く と い う 側 面 を 示 す も の で 、 簡 単 な グ ラ フ で す け れ ど も 、 こ れ は ホ ー ム レ ス の 家 族 へ の 連絡の有無を見たものです。全国調査は2003年、 2007年、2012年の3回行われていますが、ホーム レスの家族の連絡の有無を見ますと80%弱の人が 家族の連絡がないと答えています。ここで注意し なければならないのは、家族から排除された人と、 顔向けができないから家族から自ら離れてきた人 がいるということです。自分から排除、自分から 関係を絶ってきているというような人達もいると いうことです。いずれにせよ、8割弱の人達が家 族 と の 人 間 関 係 が な く な っ て い る 。 そ れ か ら 、 こ れは住居不安定就労者(ネットカフェ難民)のデー タ で す け れ ど も 、 悩 み ご と を 相 談 で き る 人 は い ま すかという質問に対して、年齢が上がるにつれて 相談できる人はいないと答える人が多くなってい ます。35歳以上ですと5割弱の人が相談できる人 はいないと答えています。私が行った調査の中で は 、 ホ ー ム レ ス 状 態 を 「 脱 却 」 し た 人 々 が 以 下 の ようなことを言っています。「僕なんかがそうなん だけれども、仕事がなくて毎日こうやって生活し ていたら何のために生活しているんだろうという ふうに疑問になる人がいると思うんです。ただ生 かされているだけという感じで」。何が言いたいか というと、ホームレス状態を捉えるというのは、 こ の 3 つ の 側 面 を 同 時 に 捉 え な け れ ば い け な い 、 社会的に排除されたこの3つの側面を捉えなけれ ばいけないということです。そのように考えます と、ホームレス状態から「脱却」するというのは、 第1段階として公的な施策による支援、就労や居 住、社会制度による収入を確保して、フォーマル な社会の構成員として資格を回復していくという 側面、これは「形式的な脱却」の支援になります。

(14)

第9回大会の記録(2013年8月)/シンポジウム「社会的弱者と自立支援をめぐって」 プ ラ ス 日 常 生 活 に お け る 親 密 な 人 間 関 係 の 形 成 を して、更に自尊感情を回復していくというような 視 点 が 求 め ら れ る 。 そ の た め に 必 要 な の は 、 私 が 着目するこの「場」というものです。親密な人間 関係が形成できて、そこに対する帰属意識を醸成 し て 、 自 尊 感 情 を 回 復 し て い く よ う な 「 場 」 を 提 供 す る と い う よ う な 支 援 が 必 要 と な っ て く る と 思 い ま す 。 こ れ を 形 式 的 な 脱 却 の 支 援 と 対 比 き せ て 「実質的な脱却」の支援になります。ホームレスの 自 立 支 援 と い う の は 、 こ こ ま で や っ て 初 め て ゴ ー ル に な る と い う の が 私 の 主 張 で す 。 そ れ で は 3 番 目 の 内 容 で す 。 2 を 踏 ま え ま し て 民 間 支 援 団 体 の 取組の事例を検討して、今後のホームレス支援の 在り方について示唆を得たいと思います。私がずっ と 活 動 し て き ま し た の は 、 山 谷 に あ り ま す 認 定 N PO山友会という団体で、山友会の事業としては 以 下 の も の が あ り ま す 。 ホ ー ム レ ス 状 態 に な る 、 もしくは「脱却」した人々に対して山友クリニック、 ボランティアの医師による無料医療の提供。私が 勤 め て い ま し た の は 相 談 員 に よ る 生 活 相 談 支 援 を 行う部署で、それ以外にも炊き出し・アウトリーチ、 食事類の日用品等の提供、無料低額宿泊所を行っ ています。それから、これらの活動をするにあたっ てホームレス状態を「脱却」した人々をボランティ ア と し て 受 け 入 れ て い ま す 。 こ の こ と は 、 あ と で かなり重要になってきますので覚えておいていた だ け れ ば と 思 い ま す 。 こ れ が 写 真 で 、 こ こ は 入 口 で す け れ ど も 、 こ の 前 に 椅 子 が ズ ラ ッ と 並 べ ら れ ていまして、元ホームレスの方もいれば現役のホー ムレスの方もいます。今、隣の建物を買いまして 無 料 で 集 え る 場 所 を つ く っ て い ま す 。 山 谷 に は 現 在約3,000人の人が生活保護を受けて生活をしてい る ん で す が 、 自 由 に こ こ に 来 て お 茶 を 飲 ん だ り し て い ま す 。 椅 子 が 並 べ ら れ て 、 誰 で も 気 軽 に 立 ち 寄 ら れ る よ う な ス ペ ー ス を 確 保 し て い ま し て 、 現 に ホ ー ム レ ス 状 態 で あ る 人 々 と か ホ ー ム レ ス 状 態 を脱却した人々らとともに、山友会のスタッフや ボ ラ ン テ ィ ア が 日 々 交 流 し て い ま す 。 こ の 空 間 を 中心とした山友会全体を「場」として捉えています。 次に当事者の語りから見る山友会という「場」の 意味付けなんですけれども、2008年<、らいにこの ような調査をしました。山友会を利用するホーム レ ス 状 態 を 「 脱 却 」 し た 人 々 に 対 し て 行 っ た イ ン タビュー調査と参与観察。それから、インタビュー の 対 象 に な っ た 人 々 の 日 々 の 支 援 活 動 の 記 録 の 収 集 。 そ れ か ら 、 他 地 域 で 「 場 」 を 提 供 し て い る 民 間 支 援 団 体 の ヒ ア リ ン グ で す 。 調 査 の 結 果 と し て わ か っ た こ と は ど う い う こ と か と 言 い ま す と 、 別 紙 の と お り で す 。 こ こ で は 、 山 友 会 と い う 「 場 」 の意味付けというところを見ていきたいと思いま すけれども、例えば、このAさんは山友会という 「場」をどういうふうに意味付けているかというと、 「誰かと話をできる人がいれば、同じような境遇の 人がいるし、多少は気分が違いますから、みんな 形だけでも仲間の輪みたいなのがあると、和らぐ、 ん じ ゃ な い で す か 」 と か そ ん な ふ う に 意 味 づ け て い ま す 。 そ れ か ら 、 こ の B さ ん の と こ ろ は 、 こ の 山 友 会 の 意 味 付 け の と こ ろ が 2 段 に な っ て い ま す け れども、この2段になっている人は山友会でボラ ン テ ィ ア 活 動 を し て い る 人 で 、 そ の 意 味 付 け を 2 段 目 に 記 し て い ま す 。 ボ ラ ン テ イ ア を ど の よ う に 意味づけているかというと、「少しでも役に立ちた い な ん て い う 思 い が あ る し 、 そ う い う の が あ る と 生活にも張りにもなる」と述べています。Cさんも 「生活に張りができるし、いろんな人と知り合いに な れ る じ ゃ な い で す か 、 少 し は 役 に 立 っ て い る か なという感覚ですし、ありがとうっていうのが気 持 ち い い 」 と 述 べ て い ま す 。 エ ビ デ ン ス と し て は 十 分 で は な い か も し れ ま せ ん け れ ど も 、 調 査 結 果 を 見 ま す と 、 山 友 会 と い う 「 場 」 で 当 事 者 同 士 の 距 離 を 置 い た 親 密 な 人 間 関 係 が 形 成 さ れ て い る と い う こ と が 言 え る の で は な い か と 思 い ま す 。 そ れ か ら 、 山 友 会 と い う 「 場 」 で 他 者 と と も に ボ ラ ン ティアという役割を持つことによって、ある種の 自尊感情の回復がもたらされているということが 言えるのではないかと思います。これらの結果を まとめますと、ホームレス状態の「脱却」の段階 が、「場」を利用することによって進みつつあると いうことを示しているというふうに考えられます。 つまり、実質的な脱却が実現できているというふ うに考えることができるのではないかと思います。 最 後 に 、 ま と め に な り ま す け れ ど も 、 社 会 的 弱 者 への自立支援の在り方について、これまでの議論 を敷延して検討するということなんですが、社会

参照

関連したドキュメント

[r]

特許権は,権利発生要件として行政庁(特許庁)の審査が必要不可欠であ

今回のわが国の臓器移植法制定の国会論議をふるかぎり,只,脳死体から

これに対し,わが国における会社法規部の歴史は,社内弁護士抜きの歴史

2保険約款の制定・改廃は,主務大臣の認可をえて定められるもので

106-7頁;舟本信光「欠陥車事故訴訟の問題点」自動車事故民事責任の構造37-8

成人刑事手続で要請されるものを少年手続にも適用し,認めていこうとす

多くは現在においても否定的である。 ノミヅク・ロスと物理的 イギリスにあっては製品 また,生命自体・財産に しかし,