<研究ノート>マーケティング科学とマーケティンク
理論(2)
著者
中山 隆満
著者別名
Nakayama Takamitsu
雑誌名
経営論集
巻
45
ページ
111-114
発行年
1997-03-25
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005649/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja( 研 究 ノ ー ト)
マ ーケティン グ科学 と マ ーケティン グ理論(2)
中 山 隆 満
5 。適 切な マ ーケテ4 ン グ理論を 構築 す るのに 役立 つ と思 われる 他の 領域の 知 識を 検討す るこ とか ら、 何を学 こ と ができ るのか ?6. マ ーケテ ィン グ科学 の発展 の 次の段 階 とは何か 。 本稿 は イ経 営論 集」 第43号(1996年3 月) の 「マ ー ケテ4 ン グ科 学 とマ ーケテ ィ ン グ理 論 」(149頁 から154頁 )の続き であ る。第43 号の 最初 に6 つ の問題 を提 起し 、そ の1 から4 まで の問 題に 対す る解 答を 述べ た が、 本稿 で は残 りの5 と6 に つ いて 述べ る。 ここに 提 起し た6 つ の問題につ い て は、 さ らに 詳 細な 検討を 試 み る必要 があ るが 、そ れ につ いて は、 いず れ 機会 を改め て述 べ たい と思 ってい る。 5. 適 切 な マ ー ケ テ ィ ン グ 理 論 を 構 築 す る の に 役 立 つ と 思 わ れ る 他 の 領 域 の 知 識 を 検 討 す る こ と か ら 、 何を 学 ぶ こ と が で き る の か ? 本 研 究の主 要 目的 は、 マ ーヶテ ィヅ グとそ の 関 連 のあ る 現実 の 領域に おけ る 理論 の 状況 を 分析 す るこ とに あ る。 マ ーケテ ィン グの文 献 自 体を 分 析す る と、 マ ーケティ ン グ領域 にお け る 包括 的 な理 論構 築を し よう とする試 みはほ とん どな さ れて こ なか っ たが 、マ ーケテ ィン グ・ シ ステ ムの側面 の 活動 のい くつ かにつ い て の特定 の記述 論 の多 い こ と が明ら か にな る。 こ れら の記述 論 の多 くは、 検 証で きない ほ ど一 般的 な も のである か、 あ るい は 意味 の ない ような繰 り返 しで あ る。 変化 する条 件 に絶 え ず適 応 す る市場 制度 の傾向につ い て の 記述 論 は前 者 の例 である のに 対し て、 十 分に 管 理 さ れ、 工夫 を こら し た販 売 コツ テ ストは通常 成 功 す る、 とい う主 張 は後 者 の例 である。 マ ーケテ ィ ン グ文 献 の重 要 な理 論的 成果 は、 考 慮すべ 重 要な 問 題を 提 起し てい る ことで あ り、 またそ れら の 解答 にお け る 以前 の試 み におけ る 不十 分さを 指 摘し て い るこ とで あ る。 犬 マ ーケテ ィン グに 関す る文 献に加 え て、 法 学や 経 済学を 含 む 商 学 関 連 の文 献 に つ い て 、 マ ー ケ テ ィン グ科学 の基礎 にな り うる内 容、方 法 論 、お よび 構想に つい て の利 用価 値を 調 べ て みた が、 そ の大 部分 は経 営 管理 者に 対 して特定 の 問題 を 提 起し 、特 定 のヶ − スに 適 用す る と思 わ れ る解 答を 述 べて い るレ そ こに は一般 化 し ようとす る試 みは ほ とん どない し 、 また特 定 の問題 の解 答を よ り一 般 的 な モデ ルに お こ うとす る 試 みもほ とん ど ない。 商業 の分 野に おけ る これに 対 す る例 外 は、 原 理 と 知 識 の 体系化 に 長い 歴史 を もつ2 つ の領 域 、 すな わち 法 律 と経 済学 の文 献 に 見出 さ れる 、経 済 学は、112 経 営 論 集 第45 号 (1997 年3 月 ) 大部 分多 くの単位を 含 む集 合 体 の行 動に つい て の規 範的 問題 にか かわ って き た が、 最 近に な って 小 さな ミク ロシステ ムが 実際 に ど の ように機 能 す る めかに つい て記 述にそ の注 意を 向 け る よ うにな っ てき た。 こ の面 で の最 も興 味あ る成 果 は 、経 済 学 と〇・R の結合し た ゲ ーム の理 論 で あ る。 法律 の 理 論家 た ちは、 価 値 と意思 決定 の一 般 論 が、 どの よ うに 特定 め ケ ース・に 適 用し うる の かに か かわ っ てき たし、 また商業 とマ ー ケテ ィン グが ど の よ うに 機能 してい る のか とい うこ とに よ りも、 どの よ うに機 能 すべ きか とい うこ とに 重点 を おい て 研 究し てき た。 ま た社 会科学 と 行動 科学 の文 献に つ い て も、 マ ーケテ ィン グ科学 に対 す る可 能 性 のあ る貢献を 再 検 討し て みた。 社 会科学 は長 期 に わ たっ て発 展し て きたし 、当 然莫 大な 研 究成 果 も存 在す る ので、 心 理学 、 社会学 、政 治学 、人 類 学、 言語学 な ど の文献 を 詳細に 検討 す るこ とは 不 可 能 であ り、 適切 な こ とで はない だろ う。 こ れら の科 学 の多 くは、 マ ーケテ ィン グの科学 に特 定 の内 容 と方 法論を 提 供 して く れる とと もに 刺 激を も与え て く れる が、 理論 的 ・概念 的 レベル にお い て は マ ーケテ ィン グ 自身 よりは るかに 超 えて充 実 し た も のに な っ ては いな い。 し か し な が ら 、 こ れ ら の 科 学 は マ ー ケ テ ィン グ問題を 考 察す る 視野を 拡 大 し、 お そら くそ れら の問題を 解 決す る であ ろ う統 合さ れ たアプp ―チを 提供 し て くれる だろ う。 検討 した最 後 の グル ープ の文献 は 管 理科 学 であ る。 管 理科学 の主 要な 貢献 は 、 技 法 と方 法論 にあ り、 ま た問題 に( 系統 立 て て述 べ る) 形式 を 与え る 明確 な配慮 にあ る。 マ ーケ テ ィン グ科 学 の理論 的な 基 礎 の構成に 最 も直 接的 に 関 連す る資 料 は、 科学 そ れ自 身の原 理や 方法 論 に 関 す る文 献に 見 出 さ れる はず であ る。 こ れら の領 域は 、 理論 と そ の適用 範 囲を定 め る基準 を 問題 とし 、 また 綿密 に ま と めら れる論 述 と適切 に 推論 さ れ る結 論を 導 び くル ールを 問題 とす る。 科学 の 内容 が 経験 の結 果 と し て存 在す る と同様に 、 科学 の形 式主 義 が 見 出さ れる はず であ る とい う こ とは こ こ にあ る。 科 学は デ ータ のみ では 発展 さ れえ ない の と同 様に、 抽象的 形式 主義 だけ でも発 展 され え な い。 6. マ ー ケ テ ィ ン グ 科 学 の 発 展 の 次 の 段 階 と は 何 か 。 犬 犬 ト マ ー ケ テ ィ ン グ 科 学 の 発 展 に は 地 域 社 会 全 体 の マ ー ケテ ィ ン グ が 責 任 を 持 ち 、 ま た1 つ の 単 位 と し て の 地 域 社 会 の そ れ ぞ れ が 果 す べ き ユ ニ ー タ な 役 割 を 持 っ て お り 、 そ れ が 貢 献 し な け れ ば な ら な い ユ ニ ー クな も の を 持 っ て い る 。 こ れ ら の 地 域 社 会 の マ ー ケ テ ィ ン グ の 単 位 と は 、(1) 市 町 村 、 県 、 国 、 及 び 国 際 的 レ ベ ル に お い て 公 共 政 策 に 含 ま れ る 人 々 、(2 )企 業 の 経 営 者 と そ の マ ー ケ テ ィ ン グ 職 能 を 担 当 す る 管 理 者 、(3 )商 業 、 工 業 、 及 び 流 通 経 路 の 実 務 専 門 家 、(4 )マ ー ケ:テ ィ ン グ の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ・ シ ス テ ムに 関 係 し て い る 人 々- マ う ケ テ ィ ン グ に 関 す る 論 文 、 雑 誌 の 記 事 、 単 行 本 の著 者 と 出 版 者 、 な ら び に マ ー ケ テ ィ ン グを 教 え 、 マ ー ケ テ ィ ン グ の 原 理 を 探 究 す る 研 究 者 な ど ー で あ る 。 。。 し ニ ダ
こ れら の グル ープの人 たち は、 マ ー ケテ ィン グ行 為 とマ ーケ テ ィング教 育に 対 す る よ り適 切 な 概 念的 ・理 論的 基 礎 の究 明を 促進 うるた めに は 、 ど の よ うに し てそ の時 々 の行動 を変 えなけ れ ばなら ない の だろ うか。 な され るこ とは、 大別し て3 つ に な る。 第1 は本質 的 な もの であ り、 第2 は方 法 論 的 な も のであ り、そ し て第3 は相 互作用 的 な も ので あ るノ 他 の諸 科 学 の発 展 過程を 歴 史的 に 考察 す る と、 リサ ーチ と概 念化 につ いて あ る特 定 の パタ ーンが 明ら かに なるム こ のパ タ ーンは、研 究 され てい る シ ス テ ムの中 の基 本的 要 素 の持続 的 とら え 方 の改 良か ら 生 じて い る。化 学 で は元素 から原 子 構 造へ 、そ し て 原子 を 構成 する 陽子 ・電 子 な ど の素 粒 子 の構 造 へ と極 小 の研 究 が進 められ てい る。 言 語学 で は、 言 語 の基 本的 単位 が形 態素 ( 意 味 のあ る 最 小 の言 語 単位 ) や 音素、 さ らに よ り小 さ な言 語 の要 素 に 分る と き 、 は じ め て 言 葉 の ア イ デ ン テ ィ テ ィが わ か る。 遺 伝学 では 、RNA ( リポ核 酸) やDNA ( デ オ キシ リボ核 酸) の 分子 構 造 と原 子 構 造に 重 点を お い てい るこ とは、 遺 伝学的 分析 の基 礎 とし て形 質 特 性 の着想 から 大 き な進 歩を 遂げ た 遺伝 子 とい う比 較的 新し い 概念 を も とに進 歩 を しる し てい る。 従 って、 マ ー ケテ ィン グ科 学を 発 展 さ せ る本 質的 な段 階 とし て、わ れわ れが 研 究す る マ ー ケテ ィン グ事 象を 形 成 する 必 須 の要 素 とそ れら の要 素 の相互 の関 連性を 識別す る こ とに 注 意が 向け ら れなけ れば なら ない。 そ れは あ ま りに も 動き が 早す ぎ る の で、 マ ーケ ティy グの基 本 的 な要 素が 何 であ る のだろ うかを 推 測 する こ と さしえ で きない 。 現在 の と ころ では 、 マーケ テ ィン グの 基本的 要 素 とし て 取引 、交 換、 顧 客、 価 格、 製 品 の 動 き、 所 有 使 用 な どの よ うな物 事 の考察 が 存 在し てい る。 こ れら のい くつ かに よっ て 観察 可能 な 複雑 な 行 動を 説 明 する 相互 作用を 記述 し よ うと す るさ まざ まな試 み がな さ れて きた。 しか し な がら 、 わ れわ れが マ ーケテ ィン グ行 動 の よ り容易 な 観察 可能 な 側面 に注 意を 集中 す る限 り、主 要 な 概念 的 前 進を なし とげ る こ とは で きそ うに 亀 ない 。 他 の科学 に よ って 明ら か に され た パ タ ーンは 、 通常 不 明 確で はあ るが基 本的 要 素 の発 見 に関 連 し た進歩 を示 し て きた。1 つ の 例 とし て 言語を 用 い る には 、 ど んな言 語に も多 く の言 葉 があ るが 、 世 界の す べて の人 夕 の言語 パ タ ーンを 適 切に表 わす た めに は 約48の 音素 だけ を 取 りあげ る。 言 語学 の主 要 な 貢献 は、 音 素の 識別 と言 語 の発 生 とそ の利 用 に 関す る ル ール であ る。 マ ー ケテ ィ ン グに おけ る必須 の リサ ーチ は、 最 大 限の 制御 さ れた 想像 力 と創 造力 を 結 合し 、 マ ー ケテ ィン グ の技 術 と科 学 の方 法論の 高い 能力 を 要 求し てい る。 想像 力 のない 技 術は 不毛 であ り、 ま た 押え ら れ ない 独 創的 想 像力 は空想 であ る。 過 去 に おい て 、そ れら が一 緒 に機 能し て きた と きに は、 制 御さ れ た 想 像力 と 創造力 は 、七 ば し ば よ り深 み のあ る有 用な 科 学的 進歩 へ と導い て きた。 マ ー ケ テ ィン グ科 学 の発 展 のた めに 必要 とさ れ る方 法 論的 条件 は 、 繰 り返し 起 る典型 的マ ーケテ ィン グ問 題 の解決 が 、 た んに 適切 な当 面 する問 題 の解 決を 要 求 す るとい うより も、 よ り高い レ ベル で デ ザイ ン、 測定 、 或 は 分析 と共 に 企 てられ る場 合に のみ 満 たさ れる。 市場 調 査、 分析 、或 は 意 思 決定 の1
114 経 営 論 集 第45 号 (1997 年3 月 ) つ1 つ に おい て、 広範 囲 なマ ーケテ ィン グの専 門 性 の基 礎 がは ぐく まれ る よ うに、 一 般 化 と技術 的 進歩 に は 特別 の要 素 が若干 あ るは ず で あ る。 真 の 科学 者 は、 与え ら れた 状況 に おい て 、 た んに通 り一 遍 の技 術 では、 ほ と ん ど満 足 し ないし 、 常 に そ れを 向上 さ せ る ようそ の限 界 ま で 自分 の技 術的 能 力を 高 めてい る。 こ れ は す べて そ の応用 に お い て マ ーケテ ィン グ活動 の方 法 を 改 良す る のに 役立 つ 基 礎研 究の知 識 の蓄 積 に な って い る。 マ ー ケテ ィン グ科学 に とっ て の第3 の必 要条 件 は、 マ ー ケテ ィン グ の 職 業 専 門 家 の 間 、 お よ び マ ー ケテ ィン グ業 界 とそ の 他の業 界 や 学 界と の 間の コ ミ ュニ ケ ーシ ョ ンが大 い に 改善 さ れ なげ れば なら ない こと であ るレ マ ーケテ ィン グの文 献 は単 行本 、 月 刊誌、 期 間誌 とし て 数多 く公 刊 されて い るし 、 ま た準 公刊 の文 献 もた く さん あ り、 そ れら を すぐ に 入手 する こ とは不 可 能に な っ てい る。 情 報 探 索 と 抽出 シ ステ ムお よび 情報 処 理 シ ステ ムに な れる こ とは 必要 であ り、 望 まし い 。 科 学ぱひ と つ の社 会 的活動 で あ り、そ の成否 は 自 由に 、 ま た頻繁 に 意 思疎通 す るそ の メ ンバ ーの能 力に 依存 し てい る 。 こ のよ うな 意思 疎通 は、 科 学を 継 続し て発展 さ せ るた めの 必要条 件 で あ る ばか りでな く、 そ の生 成 のた めに も 必要 であ る。 〔 参 考 文 献 〕 犬 荒 川 祐 著 「 商 学 原 理 」, 中 央 経 済 社 ,1994 久 保 村 ・ 荒 川 編 「商 業 学 」, 有 斐 閣 ,1994 深 見 義 一 編 「 マ ー ケ テ ィ ン グ 編 」, 有 斐 閣 ,1993 田 村 勉 著 「 マ ー ケ テ ィ ンif ■ブ リ ー フ 」, 税 務 経 理 協 会 ,1992 堀 田 一 善 編 著 「 マ ― ケ テ ィ ン グ 研 究 の方 法 論 土, 中 央 経 済 社 ,1994 光 憚 滋 朗 著 「 マ ー ケ テ ィ ン グ の 源 流 」, 千 倉 書 房 ,1992Cox,Reavis,andAlderson,Wroe(eds.),TheoyinMarketing,Homewood,III;RichardD.Irwin,Inc.,1950.Lazer,WilliamandKelly,EngeneJ.ManagerialMarketing:PerspectivesandViewpoints,HomewoodIII. 犬RichardD.Irwin ,Inc.,1962.Hise,RichardT.,Gillett,PeterandRayands,Jr.,JohnK.BasicMarketing,Mass,winthropPublishers,Inc1979.Baker,Michea にJ.(ed.),TheMarketingBook,London:InstituteofMarketing,1987.O'Shaughnessy,John.CompetitineMarketing,LondonandNewYork:UnwinHyman ,1992 。 ニ(1997 年2 月8 日 受 理)