妊娠分娩時に於けろ礪盗血華
東京女子讐學二目學校産婦入科教室(主任堤教授)一 鰭
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工 き 潴溢血が元來女子に比し男子,殊に比較的高年者に多く襲病する事は統計の示す所 である。從って妊産褥婦に合併する臓盗血症例は比較的稀有とせられて居る。西敏に ては一八七七年Ahlfeld の一例を噛矢とし,本邦にては昭和三年厚木學氏の一例を 先駆として,是が報告相踵いで稜表せられたるも其敷筒十数例に過ぎない。而して各 報告を通覧するに多くの場合に於て出1血竈比較的小にして臨床症状も輕度である。・併 し叉臨床症歌重篤にして途に死の縛麟をとり,剖見によりて大なる出血竃を認めたる ものもある。當教室に於ては最近数年間に三例を維験せるを以て,その輕過を報告す ることNした。昆 臨 床下験倒
第 一 例 患 者 片○ツ〇 三十・.ヒ年 五位維産婦 家族歴 母親は臓盗血.にて死亡せ夢。 既往症 生來健康にして著患なし。月維初経十五歳,順調,持績三日間
結婚及分娩 二十四歳にして健康男子と結婚し初産二十五歳より第五同分娩三十五 歳迄に正常産五同を維過せり。見は何れも健康なり。 現病歴 絡経昭和七年八月二十日より三日間通常の如き経血を見てより閉維,妊娠 経過順調なるも,分娩豫定目に至るも分娩開始せす。六月初旬より頭痛肩凝を訴へ且 右上肢の重感あり。六月十一日右手にて艦を支へんとして力入らす倒れて以來,輕度 の言語障害を來せり。翌十二昼には右上肢,爾下肢に輕度の蓮動麻痺起れる爲入院せ り。一第7岱247一
60 西村・吉田=妊娠分娩時に於ける臓浴血例 入院後の経過 入院時意識明瞭痙攣なし, 尿蛋白中等度陽性。血Pt一一二〇一八五mm Hg. 瞳孔左右同大 甥光反鷹 迅速。 右上肢及左右下肢に蓮動麻痺,輕度の言語障害あり。子宮底創歌突起下三横指,見 頭は骨盤入口上に浮動し見心音左膀棘線上に著明。内診するに子宮口二指開:大,卵胞 形成せるも緊張せす。六月+三日午前四時陣痛開始し,麻痺症朕や玉増悪せり,伍っ て午前十時牛帝王切開術を行ひ生兇を得たり。後出1血も多量ならす。術後の経過良好 なるも,言語障害の輕翻するに係はらす蓮動障害増加して自動蓮動は全く不可能とな. れり。爾後内科的治療を行ひ入院後六十日にして退院せり。 第 二 例 慮,者 杉○リ〇 四+四年 +圃経産 家族歴 特記すべきものなし。 既往症 第九同着産褥子虫に罹患せり。 月 経 初頭不明 持綾四日聞 結婚及分娩 二十歳にして健康男子に嫁し九同正常産,第九同目は産褥子癒に罹患、 せるも他に異常なし。 現病歴 絡維昭和八年六月三十日より四日間ありて閉経せり。妊娠経過順調なるも 後面期に入りてより浮腫を認めたり。三月借一日何等の原因なくして突然左側牛身の・ 旧邸不能となり四月五日當院に入院せり。 入院後の維過 八三大意識明瞭瞳孔左右同大欝光反癒迅速。舌は左右何れにも偏せ す。血屋二〇〇=一四〇尿蛋白中等度陽性4%沈澄物に白血球(十)赤血球及上皮,園 柱(一)子宮底は肋骨弓下縁に蓬し免心音は左至急線上に明瞭に鍵取され,児頭は骨盤 入口に進入せるも尚可動性あり。全身殊に下肢には中等度の浮腫を認む。直に薦血五 〇c.e.利尿剤強心割を與へて,経過を齪察せるに四月七日午前三時破水と同時に死見を 自然分娩す。以後血屋徐々に下降し尿所見も良好となりなほ僅に小量の蛋白尿と麻痺: 症歌とを残して退院せり。 第 三 例 患 者 猿Cせ〇 四十五年 十二同経産 家族歴 論及同胞の一入が購溢血にて死亡せる他特記すべき事なし。 既往症 第十一同目分娩野畑出血の爲帝王切開術を受く,叉毎同妊娠腎に罹患す。. 月 経 初纏十四歳,持綾五日順調中等量 一州 7 薙i≒ 248一
西村・吉田”妊娠分娩時に於ける脳温」血例 61 結婚及分割 十八歳にして健康男子に嫁し十九歳より四十一歳迄に十二同分娩せ り。第十一軽目は性器出血の爲帝王切開術を受け,他は正常産なるも妊娠腎を併酸 せり見は三人健在にして他は皆死亡せ’り。 現病歴絡経昭和九年四月下旬に五日間,通常量の維血を見てより閉経。その後十 一月上旬より頭重と,下肢に浮腫を認めたるも,醤治を受けす。十二月二日午後十時 突如身膿の運動不能及言語障害を饗し直に入院す。 入院時現症 艦博大,肥許可。榮養佳良。 舌は僅に右に偏す。瞳孔左右同大樹光反射やs鈍。膝蓋腱反射梢昇進,パビンスキ ー オツペンハイム(+)湿潤二〇〇==夢判〇mmHg. 尿所見 褐色透明蛋白3%沈渣物に硝子様及顯澄明圓柱小量,白血球(+)赤並L球痕 跡。子宮底は脳と挙状突起の艶聞にあり珊:骨壁際上縁よりこ二八糎,腹園九〇糎,兇心 音領導棘線上に明瞭に聴取され,見頭は骨盤入口上に浮動せり。 腹壁及下肢に浮種高度なり。言語障害華壇孚身に挙動麻痺及知毘麻痺を認む。 入院後の経過 姑息的療法を行ひて維過を観察せるも血.墜下降せす,尿量も減少の 傾向あり一般状態良好ならざる爲十二月七日途に帝王切開術を行ふ。児は八ケ月の早 薩児にし℃第一露草死の早態なりしも,閥もなく元氣よく暗事せり。子宮牧縮は術中 かなり良好,出血も多からす。病床に移して約一年号後弛緩性扇町を起し約一五〇〇 C.C.の出血あり。膣及子宮腔は凝血を以て充され,:是を取去リマツ‘V’ ・一ジを行ひ,一方 ゼカコル=ン,ギネルゲン等の注射叉勝心剤ブドウ糖液の劇画内注射により一時止 血,中耳せるも,再び弛緩し約三〇〇鵠の出血を來ぜる,よりてモンブルビ氏騙血帯を かけて一時1ヒ血せしめ急遽第二同の手衛に着手せり。賑搏は細小頻数。血墜は六五一。 ボルロー氏手術によりて型の如く子宮膿を切除する一方,あらゆる補血強心剤を注射 せり師ちヴイタカンフアー七eO,ヂギフオリン,ヂキタミン各一。豆アクト=t e一ルニC.e., エフエドリンー一’c.u.,安那明応。.e.,カンフルrd1200.e.,五%ブドウ糖二〇〇αo静脹内注入。 術後脹搏は殆んど箕箒し得す 血墜も測定し能はす。同夜は徹轡彊心剤の注射,左 側正中即下を皮膚切開を行ぴて露串して,再々輸血及びリンゲル氏液5%葡萄糖液の 静注を行ひ夜に入りてやうやく脹搏緊張し規則正しくなり血墜も一三〇一九〇を算す るtc到れり。輸血量二二〇c.c・,リンゲル葡萄糖静注量一二〇〇c鳳に及ぶ。 以後順調に快方に向ひ尿量増加し,血墜も下降ぜるも尿蛋白は筒陽性にして,外來 治療を受ける事を約して十二月揖日手爾後升卜四日目に退院せり。 見は二重ニー二〇瓦なりしも哺乳力なくして種々の哺育の効無く生後二十こ二日二重 一一第 7 巻 249一一
62 西村・吉田=:妊娠分i娩時に於ける臓盗血例 一四八五瓦に滅少し死亡せり。 三 二
二
一.素因 一般臓溢血と同じく或程度迄素因が認められると構せられ,殊に妊娠と 臓盗血.との合併が遺傳的に讃明さるN事ありと云ふ。(Jreland) 當教室例に於ても三例中二例に隅盗血の家族歴を認む。 二.頻度,妊娠に俘ふ鵬盗血温の一般妊娠にi財する比叉は女子臓盗血患者に饗する 比に饗しては確かなる統計的激字を見出し得ざるも,一一Mltic稀有の事とせらる。子瘤叉は腎臓疾患と何等かの關係を有すと云ふ。(Jaffe. J. Novak, P. Zweifel)
二期室における三例も皆妊娠腎に擢憎し,且一例は子瘤の既往症あり。 三.年齢及妊娠三章との關係 一般脳濫血は老人病と稔せられ,五十歳以上の者に 多けれども,妊娠に合併するものは,妊娠可能年齢より考へてもかNる高年者に來ら ざる事は馬瀬である。Hδsslinに依ればご十七例の妊娠卒中に於て,十八歳乃至三十 歳のもの十二例,三十一歳乃至四十八族のもの十五例なりきと云ふ。又妊娠同数を重 ねるに從ぴ素因を工むと云ふ者もあり,必ずしも然らすと爲す者もある。當教室の三 例は何れも妊婦としては比較的高年者にして,然も多産婦なりき。 四・妊娠月数との關係 Ahlfeldが妊娠第一ケ月に護作を起せる一例を報告せる如 く前軍期に駆る事も無きにはあらざれども,多くは黙黙期殊に分娩時に起るものにし て,本邦にては六ケ月及七ケ月は石渡氏の各一例,八ケ月は厚木,小笠原雨雫の各一 例,九グ月は森本,長谷川,小泉,岩田四氏の各一例,十ケ月は三原,長谷川爾氏の 各一例なり,當教室に於ける例も叉十ケ月二例,八ケ月一例なり。 五,贋盗血の妊娠に及ぼす影響E.Siemerlin9の蓮ぶる如く腸盗血そのものは妊娠 分娩並びに胎児畿育に帯しては何等の悪影響を及ぼさざるもの玉如し,然れども當教 室第二例の如く嚢聖母六日目には見心音明瞭なりしに第七艮に至って死兇を分娩せる が如き例もあり。恐らく同時に存在せる腎臓炎:のためならんか。 六.妊娠の脹1盗血に及ぼす影響 一般に臓盗血の三生原因としては,主因として謄 内血管の粟粒動輪瘤,アテローム攣性,動脹硬化症等あり叉誘因として拶實質の軟化症 頭蓋外傷殊に血墜上昇を來すべき総てのモメンhが掲げらる。斯くの如き血管壁の攣 三三血屡上昇に謝して,妊娠が果してそれを誘嚢するや否やの問題に回し的確なる關 係を見出す事は至難なり。E. Siemerlin9は妊娠時の自家中毒によりて血管壁に悪影 響を及ぼし出血素因を高め,‘特に徹毒性憂化ある血管にては分娩のみによりても血管 一側 7 谷 250一
西村・吉田=妊娠分娩時に於ける騰溢」血例 6c3 破綻を來す事あり,細細鋼筆,精神興奮も叉誘因となり得と読けり。 0.Pankow によれば学事血管を有する多産婦,早期硬化症叉は微細を有する婦人 ならすして,若年且一見認むべき攣化を有せざる婦入に至る妊娠卒中は稀有のものと して認め是が原因を妊娠中毒によるML管壁の攣化が,妊娠殊に分娩時における血歴上 昇に耐へ得すして破壊さるNによると想像せり。J. Novakは妊娠卒中が子猿合併症 として起ると否とを問はす,妊娠による血管壁の攣化が本質的の根底となりそれに妊 娠殊に分娩時に健康妊婦におV・ても急に上昇する所の血墜が誘因となりて,脳盗血を 起し易からしむと博せり。 其他妊娠中は毛細管壁に種々なる攣化を來すものなりとせられ,即ち血管内膜の灘 合質は逼過性を増加し,妊娠毒素甲状腺肥大等め内分泌障害と封侯iつて,循環系統に 官能的障害を及ぼし心臓及末梢部血管の痙攣を來すものなりと云ふ者あり。 叉頻岡の妊娠によりて血管壁に退行性攣性を幽し早期動朕硬化症を起すとも云ふ。 妊娠時心筋肥大を劃す事は生理的に認められたる事實なるもWieselによれば末梢 血.管壁の筋暦に所謂Herdf6rmigの肥大を生じ,妊娠末期にはすでに脂肪攣性に陥る ものなりと稽せられ,J. Novakは是を以て若年性卒中の原因と見なしたり。 妊娠時に於ける動脹血墜は報告者によIJて攣化甚しきも一一ma妊娠六ケ月頃迄は攣化 なく,それ以後は輕度の上昇を示すも正常の上界に達するのみにして,それ以上に及 ぶ事なし,輕産婦は初産婦よりも高しと。(中山琴之助氏)分娩時には血歴攣動著しく 見通娩画期に最高に達し分娩完了と共に急激に下降す。 妊娠時血管蓮動紳経興奮歌態にありて,毛細管には痙攣が起ってるて Zange
meister lは之を妊娠性血管痙攣と白し,後にWeisser. Kylin・Hinselmann等が毛細 管顯微蟹隈査により實際の現象を認め,血墜上昇もこ玉に由良するとさへ読明せり。 要之妊娠時には種々の原因によりて心臓血管系統に或る種の攣化叉は反鷹を來して その抵抗力を減弱せしめ,加ふるに分娩時及妊娠末期に於ける血肝充進及その動揺著 しき事と相侯って購盗血Lを招興せしめ得るものならんと推察せらる。 七.豫後療虞置 母罷の豫後は勿論出血竃の部位及大小によりて一様ならざる事は 一般騒親骨と同様なり。中置も叉一般騎盗血におけると同様なり。問題は分娩を如何 なる時期に如何なる方法によりて行はしむべきかの黙なり。一般に分娩時に於けるも のは妊娠時に於けるものよりは豫後不良なりとせらるXは血駆の充進血歴振幅の大に して急激なる事,及び絶謝安静の即断し難き事等の爲なるべし。 子二叉は妊娠腎患者中二三を得はざる者百例の中五例には臓盗血を磯したるも,潟 一町 7 巻 251wh
64 西村・吉田=妊娠鈴三時に於ける隅浴血例
血.を行へる者にては七五〇飴例の中に一例も取止血を軽せる者なしと鼓ふZang・e ’meisterの報告は豫防の一方法を示すものなり。
妊娠商品盗血を併爽せる場合直に妊娠中絶を行ふべきや否やに就いては議論匝々た
る厨なIL)。L, Seitz. E Siemerling等によれぽ分娩時尊霊の恐れなきが故に,人工妊娠
中絶を濫用すべからすとなし,0.Pankow. Plaezek等によれば群盗血患者の妊娠せ る場合は常に再獲の危瞼を俘ふが故に必ず人工中絶をなし,叉進みて避妊法を講ずべ しと沸けり。諸家の読に鑑みるに,母膿の生命の危瞼なき時は急速逮娩の必要を認めす, もし症状悪化の兆あるに當って,胎児の生育可能なる時には帝王切開術を行ふ可く,殊 に健存兇多数にして將來の分娩を希望せざる者に甥しては,弛緩性出血豫防の意味に てポルロー氏手術を行ふべきなりと思考す。分娩時旛盗血を合併せ・る場合は迅速重着i 護的に分娩せしむる爲,時期に観じて,帝王切開,鉗子術,廻傳娩出術を施行すべし。
四 総
括 最近當教室において観察ぜる妊娠に俘ふ謄盗血の三例にして,何れも多産にして比 較的高年なる婦入に起り,一例は妊娠八ケ月末期,他は妊娠十ケ月に量れるものにし て,然も三例とも妊娠腎を俘へり。その臓内出血による臨床症状は何れも輕度且比較 的徐々に磯來せるものなり。その原因的聞係は明瞭ならざるも,頻同の妊娠分娩に加 ふるに腎臓疾患の合併あるが爲心臓血管系統に文賦に見る如き攣性を來し,それが爲 に高血墜に得耐へすして遽に血管破裂に倒れるものなるべし。幸にして出血竈は小, 且重要画龍を犯さざりし爲麻痺症朕輕度なりき。一例は自然分娩,他は帝王切開術中 一例は弛緩性出血の爲更にポルロー氏手術を行ぴて母膿の危急を救ひ得たるものなり 終りに臨みて御懇篤なる御指導と安比闊とを賜はりし堤教授に深く感謝す。 交 勲1) E. Siemerlieing D6dierleins Handbuch. d. g H. B D. R S−386. 763 L’) J. Novak Handbuch−Seitz Biologie u. 1’ath. d Weibes Bd V Z[eil. S 1412. t3) O. Pankow HandbUch−Seitz Biologie U Path d Weibes Bd M S 874. 4>, RUdolf Jaffe Zbl f.
gyn・1927 Nr,22 5)厚木學 妊娠末期に於ける阿智1血に就いて 診i寮1巻1漉 6)小 冷暖 妊娠と臓溢血との合併に就いて 近畿婦入科學會雑誌第14岱 7.)長谷川敏雄 肥 後面 妊娠に合併せる臓盗血 診療大忌第1巻第3號108 8)鈴木途 岩田正道 妊娠九ケ 月妊婦に護ぜる廣汎なる謄盗血 東西讐學第3巷第1號 9)石渡宜郎 妊娠に獲生ぜる謄 盗血の二例 産科と婦人科 第3岱第3號 10)小泉伸策 妊娠と合併せる謄盗血の一例 臨床産科婦入科 第10巻第11號 11)中由岐之助 妊娠と循環系血液及造血臓器との關係 特に妊娠時に合併せる此等の諸疾患に就いて 診断と治療第23巻第《號 一興 7 巻 252一