日 本 リ モ ー ト セ ン シ ン グ 学 会 誌 Vol.13 No.4 (1993) pp.29-40
論
文
ア マ ゾ ン の 熱 帯 雨 林 を用 い たJERS-1
SAR
ア ン テ ナ パ タ ー ン の 推 定
島
田 政
信
An Estimation
of the JERS-1's
SAR Antenna
Elevation
Pattern
based
on the Amazon
Rain Forest
Images
Masanobu SHIMADA
Abstract
It is well known that the radar backscattering characteristics of the tropical rain forest show very small dependencies on the incidence angle for wide range of the radar frequencies through several experiments1•`3). Based on this fact, an estimation of the SAR antenna elevation pattern for the JERS-1 satellite was conducted through two steps, (1) the statistical screening of the SAR data over the tropical rain forest to obtain the same characterized uniform images , and (2) the application of the correlated SAR image model including the noise bias, which should be considered for more correct estimation of the antenna beam width, to the screened SAR images by means of the least square method. Finally, one way antenna elevation pattern was obtained to 5.44 degree in terms of 3 dB down beam width, with the accuracy of 0.17 degree. It was also estimated that the beam width did not change between before and after launch so much, but, SAR off nadir angle is 34 .905 degree, which is 0.3 degree smaller than the original angle of SAR antenna deployment .
1.ま え が き 衛 星 搭 載 用 合 成 開口 レ ー ダ(以 下,SAR)の 利 点 は地 表 の 観 測 が 天 候 や 昼 夜 の 別 に さ ほ ど左 右 され ず,ほ ぼ 直 接 的 に,又 一 定 の 周 期 で 行 な え る こ と に あ る 。 近 年 の 地 球 環 境 監 視 の 動 きの 中 に あ っ て,地 表 の 特 性 を 表 現 す る指 標 と して,SARで は 規 格 化 後 方 散 乱 断 面 積 (NRCS, Normalized Radar Cross Section)が 用 い ら れ,そ れ に 変 換 さ れ たSAR成 果 物 の 絶 対 校 正 が 重 要 とな っ て き た 。NRCSは 処 理 済 み画 像 を レ ー ダ ー 方 程 式 及 び 処 理 の 応 答 特 性 を考 慮 した 変 換 モ デ ル に 代 入 し て 求 め る が,こ の モ デ ル の な か で 唯 一 距 離 の 関 数 と な る の が ア ン テ ナ エ レ ベ ー シ ョ ンパ タ ー ン(以 下AEP と 言 う)で あ り,こ の 精 度 が 校 正 精 度 を 左 右 す る 。 とい う の は,一 般 に,SARは ア ン テ ナ を軌 道 上 で 展 開 し て 長 さ 約12メ ー トル,幅 約2メ ー トル の大 型 構 造 物 と す る た め に,打 ち 上 げ前 に そ のAEPを 完 全 に 把 握 す る の は 困 難 で あ る し,又,打 ち上 げ 時 の 振 動 や 展 開 時 の ア ン テ ナ パ ドル の た わ み,そ して 軌 道 上 で の 衛 星 運 動 に 伴 う特 性 の 変 化 等 の た め に,打 ち 上 げ後 のAEPを (1993.6.28受 付 ・1993.8.27改 訂 受 理) 宇 宙 開 発 事 業 団 地 球 観 測 セ ン タ ー 〒350-03埼 玉 県 比 企 郡 鳩 山 町 大 橋 沼 の 上1401 Copyright (c) 1993 RSSJ
Earth Observation Center , National Space Develop-ment Agency of Japan
1401 Numanoue, Ohashi, Hatoyama-machi , Hiki-gun, S aitama-ken, 350-03, Japan
ア マ ゾ ン の 熱 帯 雨 林 を用 い たJERS-1SARア ン テ ナ パ ター ン の 推 定 推 定 す る こ とが 必 須 だ か らで あ る。 これ ま で に 打 ち 上 げ ら れ たSARに 対 し て AEPの 推 定 方 法 が 幾 つ か 紹 介 さ れ た 。 そ の 方 法 と して,(1)一 様 な 散 乱 特 性 を 示 す 自然 の 対 象 物,例 え ば,ア マ ゾ ンの 熱 帯 雨 林 を用 い る 方 法,(2)地 表 に そ の 反 射 特 性 が既 知 で あ る コ ー ナ ー 反 射 鏡 を複 数 設 置 す る 方 法 が あ る。 前 者 の 例 と し て Mooreな ど は ア マ ゾ ン の 熱 帯 雨 林,イ リ ノ イ州 の 農 業 地 帯 を観 測 したSIR-Bデ ー タ を用 い てAEPを 求 め そ れ が 理 論 的 な 特 性 よ り も 広 い こ と を 示 し た4,5)。又, LaurもERS-1に 搭 載 さ れ たAMIのAEPを ア マ ゾ ン の 熱 帯 雨 林 を 用 い て 求 め た6)。更 に,Hawkinsは カ ナ ダ の 森 林 地 帯 のSAR画 像 を 用 い て,航 空 機 搭 載 用 SARのAEPを 求 め る こ とに 成 功 した7)。これ ら は,い ず れ も精 度 が1dB以 内 で 達 成 さ れ た も の で あ る。 後 者 の 例 と して,Dobsonが あ る8)。し か し,そ の 標 準 偏 差 は前 者 に 比 べ れ ば 大 き い 。 これ ら の 研 究 か ら熱 帯 雨 林 の 方 が よ り正 確 な推 定 結 果 を与 え る 。 これ は,散 乱 体 の 個 数 が 前 者 の 方 が 後 者 よ り も圧 倒 的 に 大 き く,推 計 的 誤 差 を小 さ くす るの に 有 効 だ か らで あ る。 又,ア マ ゾ ンの 熱 帯 雨 林 の 後 方 散 乱 係 数{NRCS/cos(入 射 角)で 定 義}は 入 射 角 に ほ とん ど依 存 し な い 為 に取 り扱 い が 容 易 で あ る 。 本 研 究 で は,既 に 開 発 し たSIR-BのAEP推 定 法9} を 基 に し て,一 部 相 関 電 力 モ デ ル にJERS-1のSAR (以 下JSAR)の 受 信 特 性 を 考 慮 し た 変 更 を 加 え, JSARの 取 得 し た 合 計17シ ー ン の ア マ ゾ ン 熱 帯 雨 林 の デ ー タ を 用 い てAEPを 求 め た。 こ の と き の 仮 定 と し て,観 測 幅 内 で の 散 乱 係 数 の 変 化 は無 し と した 。 本 研 究 の 特 徴 は,観 測 画 像 を テ ク ス チ ャ ー 解 析 に 基 づ く ス ク リー ン処 理 を行 な い,同 じ1シ ー ン 内 で 同 じ分 布 関 数 に属 す る 散 乱 体 だ け を 取 り上 げ る こ と と,相 関 電 力 モ デ ル をAEPと 受 信 機 及 びAD変 換 機 内 で 発 生 す る雑 音 電 力 で 表 現 し た こ と に あ る。
Fig. 1 A block diagram of the JERS-1 SAR.
2.SAR受 信 電 力 の モ デ ル 化 と ア ン テ ナ パ タ ー ン の推 定 2.1受 信 電 力 に つ い て JSARの 受 信 機 に は,75kmの 観 測 幅 か ら受 信 さ れ る 信 号 が3ビ ッ トのAD変 換 器 の ダ イ ナ ミ ッ ク レ ン ジ 内 に 均 等 に 収 ま る よ う に360ksec(地 上 距 離 に換 算 し て 約75kmに 相 当)の 受 信 窓 の 中 で 利 得 が 時 間 と共 に 変 化 し,ア ン テ ナ パ タ ー ン を 相 殺 す る よ う な利 得 補 償 特 性 を 有 す る。これ をSTC, Sensitivity Time Cont-rol10,11)と い い,こ の 要 素 を考 慮 す れ ばAD変 換 器 の 出 力 端 で の 電 力 は以 下 で 表 現 さ れ る。Fig.1にSAR受 信 機 の ブ ロ ッ ク 図 を 示 す 。 〓〓こ こ に,PADC(R):AD変 換 出 力 の 二 乗 平 均 値,R: ス ラ ン トレ ン ジ,Pr(R):受 信 電 力(LNAの 入 力 端 で 規 定),GLNA:LNAの 利 得,Pn,REC:受 信 機 で 発 生 す る 雑 音 電 力(主 に,LNAで 発 生 す る),GSTC(R):STCの 利 得 変 化 特 性,GACC:AGCの 利 得 特 性,PR,ADC:AD 変 換 器 の 雑 音 特 性(飽 和 お よ び ビ ッ ト冗 長 性 に よ る雑 音),G0:ア ン テ ナ 最 大 利 得(片 道),Pt:送 信 電 力, Gele (R):ア ン テ ナ エ レベ ー シ ョ ン相 対 利 得,λ:マ イ ク ロ波 の 波 長,γ:後 方 散 乱 係 数(σ0/COSθ:nci),Binci: 入 射 角,C:光 速,τ:パ ル ス 幅,β:ア ン テ ナ の ア ジ マ ス 方 向 半 値 幅,σ0:規 格 化 後 方 散 乱 断 面 積(NRCS) ア マ ゾ ン等 平 坦 地 の 熱 帯 雨 林 は 地 上 高 約60mま で
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日本 リモ ー トセ ン シ ン グ学 会 誌 Vol.13 No.4 多 種 多 様 な樹 種 に覆 わ れ て お り入 射 す る レ ー ダ ー 波 を, そ の 位 相 を ラ ン ダ ム に 変 換 し て 体 積 散 乱 す る た め に, そ の γ は一 定 値 を持 つ と仮 定 で き る。 この よ う な 観 測 対 象 か らの 反 射 信 号 は 木 の 葉,枝,幹 等 の 微 小 な 点 源 か ら の 反 射 信 号 の ベ ク トル 和 で 近 似 で き る こ とか ら分 布 タ ー ゲ ッ トと呼 ば れ る。又,NASA-JPLの 航 空 機 用 AIRSARの 熱 帯 雨林 に 対 す るLバ ン ドHH偏 波 デ ー タ は γ は入 射 角 に依 存 しな い こ と を示 す9)。 従 っ て,本 解 析 で は「 ア マ ゾ ン の 熱 帯 雨 林 の 後 方 散 乱 係 数 γ は 入 射 角 度 に依 存 しな い 」 と す る。 又,特 に 断 ら な い か ぎ り熱 帯 雨 林 の デ ー タ を 扱 う も の と す る。 2.2相 関 電 力 につ い て JSAR生 デ ー タ の相 関 処 理 に つ い て 考 え る 。JSAR 生 デ ー タで あ る3ビ ッ ト変 換 信 号 を構 成 す る2つ の成 分,つ ま り地 上 か ら の 反 射 信 号 及 びSAR内 部 の 雑 音 信 号 は,共 にガ ウ ス分 布 す る と見 な せ るた め に,相 関 処 理 の 利 得 は共 に同 じ値 を もち,相 関 電 力 は生 デ ー タ の 電 力 に相 関 処 理 の 利 得 が 単 純 に積 算 され た もの とな る。但 し,STCの 急 峻 な変 化 は レ ン ジ相 関 の 中 で 相 関 長 に 渡 っ て の 移 動 平 均 と で き る。JERS-1の 取 得 す る SARデ ー タ の 処 理 運 用 は 宇 宙 開 発 事 業 団/地 球 観 測 セ ン タ ー(EOC)で 定 常 的 に 行 な わ れ て い る が,EOCの SAR処 理 設 備 で は ア ジ マ ス 分 解 能 を ス ラ ン ト レ ン ジ に よ らず 一 定 値 に 保 つ 様 に し て お り,ア ジ マ ス合 成 開 口 長 は ス ラ ン ト レ ン ジ に比 例 す る。 従 っ て,参 考 文 献 12)を 参 照 す る と,相 関 処 理 画 像 の 電 力 は 以 下 で 表 現 さ れ る。 〓〓こ こ に,Gproc(R):相 関 処 理 電 力 利 得,Nrg:レ ン ジ 相 関 長,fsampte:サ ン プ リ ン グ 周 波 数(17.076MHz), PRF:パ ル ス 繰 り 返 し 周 波 数,Vg:衛 星 の 対 地 速 度, τ:パ ル ス 幅(35μsec) 結 局(1)-(4)を 整 理 し,Gsrc(R)をGSTC(R)で 置 き 換 え る と,相 関 電 力PCORR(R)は 以 下 で 表 現 さ れ る 。
•¬•¬ Fig. 2 A comparison of the AD noise and receiver noise. 〓〓γ は 定 数 と仮 定 し た の で,(5)の 右 辺 第 一 項 は, α π(R)とGene(R)2が ほ ぼ相 殺 し,全 体 と し てR2に 逆 比 例 す る。一 方,第2項 のB(R)は(7)に 示 す よ う に 受 信 雑 音 とAD変 換 器 の 雑 音 の 和 で 表 現 さ れ る が,一 部Gsrc(R)に 比 例 す る項 が 含 ま れ て い る こ と,AD雑 音 は 入 力 電 力 に 依 存 し そ の 変 化 が 複 雑 な こ と等 か ら, 実 デ ー タ の 評 価 で そ の 大 小 関 係 を調 べ る。 Fig.2に ア マ ゾ ン の 熱 帯 雨 林 に対 す る受 信 電 力 パ タ ー ン(Curve 1)と,ほ とん ど受 信 雑 音 と見 な せ る海 面 に 対 す る 電 力 パ タ ー ン(Curve 2)を 示 す 。JSARに 備 え ら れ た 受 信 機 利 得 自動 調 節 機 能 は観 測 対 象 物 の 明 る さ に 応 じ て 受 信 機 の 減 衰 器 を変 化 さ せ て,受 信 機 が 最 適 感 度 で 動 作 す る よ う に す る 。 こ の と き の 減 衰 器 の 値 は AGC値 と し て 地 上 に送 られ る。 図 中,ア マ ゾ ン,海 面 のAGC値 は そ れ ぞ れ4dB,0dBで あ り,海 面 が4dB のAGCで 運 用 さ れ た と き に は,Curve 2は 全 体 に4 dBだ け 小 さ くな る。 参 考 文 献13,14)に よ る と,生 デ ー タ の 電 力 が5-10dBの 場 合 に はAD変 換 誤 差 は0 . 45dBで あ る。 こ れ は,4dB下 げ たCurve2よ り もは る か に 大 き い。こ れ よ り,B(R)は 観 測 幅 を 通 し て 一 定 と見 な せ る。結 局,(5)が 相 関 電 力 とAEP,そ の 他 の 係 数 を結 ぶ 関 係 で あ る 。
ア マ ゾ ン の 熱 帯 雨 林 を用 い たJERS-1 SARア ン テ ナ パ ター ン の 推 定
Fig. 3 A procedure to estimate the Antenna pattern by rain forest data.
2.3 Maximum Likelihood Estimation に よ る AEPの 推 定 詳 細 は第4節 で 述 べ る が,今,相 関 処 理 画 像 の 中 か ら類 似 な γ を有 す る領 域 をFig.3−(2)に 示 す 様 に抽 出 で き た とす る(図 中 で,黒 い 領 域 を除 く短 冊 状 の 白 い 領 域 に対 応)。 更 に,各 々 の 短 冊 は そ れ ぞ れ 平 均 化 さ れ た 相 関 画 像 電 力,入 射 角,ス ラ ス ト レ ン ジ 等 を 有 す る と す る 。i番 目 の 短 冊 の 平 均 化 相 関 画 像 電 力 をPiで,そ れ に対 応 す る 相 関 電 力 モ デ ル(5)を〓 で 表 現 す る と,AEPは 以 下 で 定 義 さ れ るx2パ ラ メ タ を 最 小 に す る こ とで 求 ま る 。 この 場 合,aはAEPの 近 似 モ デ ル を 定 め る パ ラ メ タ セ ッ トで あ る。AEPと し て は 幾つ か の モ デ ル が 考 え られ るが,(9)に 示 す よ う に,SIR-Bで 一 番 い い 結 果 を 示 し た4次 近 似 モ デ ル を 用 い る9)。 〓こ こ に,aは(φ0,a,b,C)を 意 味 し,ビ ー ム 中 心 の オ フ ナ デ ィ ア 角 度,未 知 数 を意 味 す る。σiは:Piの 標 準 偏 差 で あ る。 更 に,bはPcorr(R)のAに 対 応 させ る。 AEPは オ フ ナ デ ィ ア 角 度(φ)の 関 数 で あ り,短 冊 毎 に φ を求 め る。 ス ラ ン トレ ン ジ 画 像 で は,各 画 素 毎 に 衛 星 か らの 距 離 が 求 ま り(こ れ を,Riと す る),CCT内 の 衛 星 の 位 置(x,y,Z)と 観 測 領 域 の 測 地 緯 度(ψ)を 用 い て,i番 目 の 短 冊 に対 す る オ フ ナ デ ィ ア 角 度(φi)が 求 め られ る。(Fig.4参 照) 〓〓こ こ に,Ret,Re,fは そ れ ぞ れ,評 価 す るSAR画 像 の 位 置 で の 地 球 半 径,地 球 の 赤 道 半 径,偏 平 率 で あ る 。 結 局,未 知 数aは 以 下 の 式 の 解 で あ る。 〓こ こ に,Lは 未 知 数 の 最 大 数 で あ る。 本 式 は非 線 形 で あ り,収 束 演 算 で解 を 求 め る。 こ こ で は二 階 微 分 係 数 を 必 要 と し な いLevenberg-Marquardtを 採 用 し た 。
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日本 リモ ー トセ ン シ ン グ学 会 誌 Vol.13 No.4
Fig. 4 A coordinate of the SAR observation, where SAR is moving from the top to the behind of the paper.
2.4受 信 電 力 モ デ ル の 未 知 量Bの 決 定 上 の 推 定 演 算 でBを 推 定 パ ラ メ タ の 一 つ に す る こ と も可 能 で あ る が,そ の 場 合 の 推 定 精 度 は 悪 い9)。従 っ て,Bを 推 定 作 業 の 前 に決 定 して お く。第S番 目 か ら E番 目 ま で の 短 冊 に 亘 っ て,相 関 電 力(5)を 積 分 す る こ と に つ い て 考 え る(Fig.3参 照)。 この 積 分 値 をPtota l で 表 現 す る と,以 下 の3表 現 を 得 る。 〓こ こ に,Pint(a)は(13)の 右 辺 積 分 記 号 内 の 第 一 項 で あ る 。更 に,こ の 積 分 領 域 のSNRを 用 い る と,(13-1) は(13-2)と な り,最 後 に ス ク リ ー ン 処 理 さ れ た デ ー タ に 対 し て(13-3)を 得 る 。 Auto-correlation 395-307 DistanceinPixel
Fig. 5 An example of the autocorrelation func-tion for Amazon 395-307.
こ こ に,Ri:i番 目 の 短 冊 の ス ク リー ン処 理 さ れ た 相 関 処 理 電 力,△R:レ ン ジ 分 解 能(8.78m),Rfar.i,Rnear, i:i量番 目の 短 冊 の 開 始 の ス ラ ン トレ ン ジ,終 了 の ス ラ ン トレ ン ジ,SNR:生 デ ー タ の 周 波 数 解 析 で 求 ま る 。 結 局,未 知 数Bは 以 下 で 与 え ら れ る。 〓 Table1に 評 価 さ れ た シ ー ン毎 のBを 示 す 。 3.誤 差 限 界 3.1AEP推 定 に使 用 す る デ ー タ の 誤 差 限 界 本 節 で は,第2節 で 求 め たAEP推 定 法 に 適 用 す る 平 均 相 関 画 像 電 力 の も つ べ き誤 差 の 限 界 と,そ の デ ー タ の 取 得 方 法 に つ い て 考 え る 。 デ シ ベ ル で 表 現 さ れ た AEPの 推 定 値Gete(φ)と 測 定 値Gele,(φ)の 差 と し て 定 義 す るAEP誤 差 △Geleにつ い て,そ の 誤 差 限 界 を SIR-C,SIR-B等 の 例 に基 づ い て 以 下 と設 定 す る15)。 〓(5)を デ シ ベ ル 表 現 し た 後,両 辺 を偏 微 分 し,右 辺 の 誤 差 要 素 のRSSを 求 め る。この と き右 辺 の 第2項 は第 1項 よ り も小 さ い た め に 考 慮 し な い 。 この 解 析 で は △(FTC,△R,△cotθinclは そ の他 の 項 {△A,△Gele}よ り も変 化 が 小 さ い た め に 無 視 す る。△A に 含 まれ る 幾 つ か の 項 の う ち γ の 変 動 だ け を考 慮 す れ ば よ い 。Lバ ン ドの ア マ ゾ ン デ ー タ(SIR-B,AIR-SAR)は γ は ほ ぼ 一 定 値 で あ る こ と を示 し て い る理 由
ア マ ゾ ン の 熱 帯 雨 林 を用 い たJERS-1 SARア ン テ ナ パ タ ー ン の 推 定 で 本 解 析 か ら 外 す 。 そ の 結 果,上 式 は 簡 略 化 き れ る 。 又,(15)の も とでAEP推 定 に使 用 す る 相 関 画 像 電 力 と し て もつ べ き精 度 と し て(17)を 得 る。 〓〓 3.2平 均 化 に 用 い る デ ー タ個 数 平 均 相 関 画 像 電 力 の 誤 差 が(17)を 満 た す た め に 必 要 な デ ー タ個 数 に つ い て 考 え る。 平 均 化 に 用 い る デ ー タ は全 て 独 立 で あ る こ とが 理 想 で あ る。しか し,Fig.5に 自 己 相 関 関 数 の 一 例 を 示 す よ う に,た とえ 条 件 の 良 い ア マ ゾ ン の 熱 帯 雨 林 の デ ー タ と言 え ど も この 条 件 を満 た す の は困 難 で あ る(こ れ は,処 理 設 備 の 処 理 方 法 に も 一 部 依 存 す る)。今,標 準 偏 差 σ を有 す る母 集 団 デ ー タ か ら,サ ン プ ル をDピ ク セ ル 毎 に抜 き 出 し,合 計Nデ ー タ に つ い て 平 均 化 を行 な っ た とす る 。 その場 合得 ら れ る 平 均 化 デ ー タ の 標 準 偏 差σzは 以 下 で 与 え られ る。 〓こ こ に,ρ1,ρ2は そ れ ぞ れ ピ ク セ ル 距 離D及 び2D の 点 で の 自 己 相 関 係 数 で あ る。 更 に,デ シ ベ ル で 表 現 され た 受 信 電 力 の 標 準 偏 差(σp,dB)を求 め て,(18)の 右 辺 σ に 代 入 し,(17)と 比 較 す る と,満 足 す る デ ー タ 個 数Nは 次 で 与 え られ る。 〓 Table 1に〓,Nmin(最 少 のNを 表 す)を 示 す 。 概 ね,ア マ ゾ ン デ ー タ はNminと し て460を も つ。 4.分 布 タ ー ゲ ッ トに 対 す る ス ク リー ニ ン グ 処 理 4.1ス ク リー ン処 理 に つ い て こ の 解 析 で 使 用 し たSAR画 像 の 大 部 分 は 肉 眼 で も 分 布 タ ー ゲ ッ トと判 断 で き,定 性 的 に も上 で 述 べ た 条 件 を満 た す こ とが 予 想 さ れ る 。 しか し,注 意 深 く見 る と,森 林 伐 採 地 や 川 等 の 暗 い領 域 や,山 肌 等 明 る い領 域 が 見 られ る 。(Fig.8-1に ア マ ゾ ン395-308を 示 す) 画 像 か ら,非 一 様 な 領 域 を 除 去 す る こ と は 推 定 結 果 の 信 頼 性 を 向 上 させ る。 こ の た め に類 似 性 を 確 認 す る テ ス トが 有 効 で あ る 。Fig.6に 示 す よ う に画 像 を ア ジ マ ス 方 向,レ ン ジ 方 向 に各 々NazとNrgの 大 き さ を も つ 多 くの 小 さ い 矩 形 の セ ル に 分 割 す る。 こ こ で,小 さ く分 割 さ れ た セ ル の ア ド レ ス をCellと す る。 この と き,iは レ ン ジ 方 向 の 短 冊 に 対 応 す る も の で あ り,jは 同 じ短 冊 上 の セ ル の 番 地 で あ る。 相 関 電 力 モ デ ル は連 続 関 数 のAEPをSTCが ほ ぼ相 殺 す る 形 状 を と っ て い る もの の,STC変 化 の 刻 み が1dBの た め に全 体 と し て 段 々 状 に変 化 す る。 そ の た め に,Nrgは 相 関 電 力 とAEPが 無 相 関 と な る よ う に設 定 さ れ な け れ ば な ら な い 。そ し て 最 後 に,こ の 短 冊 の な か でx2テ ス トに よ り非 一 様 な セ ル を除 去 す る こ とが で き る。 4.2x2テ ス トに よ る画 像 の 類 似 性 確 認 x2テ ス トに基 づ く類 似 性 テ ス トは 「2つ の 分 布 関 数 は異 な っ た も の か ど う か を判 定 す る」16,17)。今,〓 と 〓 を そ れ ぞ れCelli,jとi番 目 の 短 冊 領 域 の 平 均 化 さ れ た ヒス トグ ラ ム と す る(Cij=Cli,j)。 も し 以 下 で 定 義 さ れ るX2パ ラ メ タがXa以 下 で あ れ ば,「 二 つ の分 布 関 数 は α%の 信 頼 率 で 異 な る 」 と結 論 付 け られ る。 〓こ こ に,〓 は ガ ンマ 関 数,γ は 自 由 度 で あ る。Xa は(21)が α に 等 し くな る と き の 積 分 上 限 で あ る。以 下 の 解 析 で は,参 考 文 献9)の 結 果 に も とず き99%の 信 頼 率(α)で 議 論 す る 。 4.3Nrgの 決 定 今,〓 と〓 を そ れ ぞ れi番 目 とi+L 番 目 の ア ジ マ ス ラ イ ン上 の ヒ ス トグ ラ ム とす る 。x2パ 〓
Fig. 6 A general
of the screening
processing
and
its similarity
test.
日 本 リモ ー トセ ン シ ン グ学 会 誌 Vo1.13 No.4
Fig. 7 Averaged similarity over range direction
for Amazon data (ID(L)).
ラ メ タ を これ ら 二 つ の 異 な る デ ー タ セ ッ トに 対 し て 求 め る。 も し も類 似 性 が 確 認 さ れ れ ば そ の 結 果 と し て0 を,そ う で な け れ ば1を 与 え る 。 更 に,そ れ を レ ン ジ 方 向 に平 均 化 した 類 似 係 数 と し てID(L)を 定 義 す る。 ア マ ゾ ン の3シ ー ン(シ ー ン1,2,3)に つ い て 得 ら れ た ID(L)の 変 化 をFig.7に 示 す 。 そ の 結 果, 1)そ れ 以 下 で は,デ ー タ に相 関 性 が 無 い と解 釈 で き る平 均 化 係 数ID(L)に 対 す る し き い 値 を5%と 設 定 す る と,そ れ に対 応 す るア ジ マ ス ラ イ ン の 差 は20な い し 50が 妥 当 で あ る。従 っ て,実 験 的 に20をNrgと し て 設 定 す る。 これ は 参 考 文 献9)の 結 果 と類 似 す る 。 4.4NazとIaの 決 定 Nazと 全 画 像 の お お き さIaを 以 下 の 条 件 に し た が Table 1 A summary of the images evaluated.
っ て 定 め る 。 {1}相 関 画 像 電 力 の 平 均 値 を 求 め る 際 の 間 引 き デ ー タ総 数 はNminよ り も大 き い 。(Dは 間 引 き 間 隔) {2}あ る短 冊 上 に 含 まれ るセ ル の 半 数 以 上 が 類 似 性 の あ る セ ル 群 と判 定 さ れ た と き は そ の 短 冊 を平 均 画 像 電 力 計 算 の 対 象 とす る 。 {3}各 セ ル に含 ま れ る間 引 き 画 像 の 総 デ ー タ 数 は 類 似 性 テ ス トに使 用 で き る に た る 数 が 必 要 で あ る。 し か し,こ の 数 に つ い て は 明 確 な規 定 が な い の で こ こで は 55を 設 定 す る。 結 局,{1},{2}はIa{3}はIazに 以 下 を与 え る 。 〓そ の結 果 をTable 1に 示 す 。 大 部 分 の 画 像 の 大 き さ Iaは1200と な る 。 こ れ はJSARの レベ ル1.1成 果 物 の 画 像 の ア ジ マ ス 方 向 の 大 き さ(8448)よ り大 き く,こ の 条 件 を満 足 す る。 4.5類 似 性 テ ス トの 方 法 各 ス トラ イ プ 領 域 に はMaz個(=Ia/NAZ)の セ ル が あ る。 そ れ ら の 中 か ら同 じ ヒス トグ ラ ム を有 す るセ ル の 選 択 の 方 法 を 以 下 の 手 順 で行 な う。(Fig.6参 照) (1)各 セ ル 毎 の そ の 画 像 強 度 の ヒ ス トグ ラ ム 〓 と,そ の 平 均 値〓 を 求 め る。 (2)各 セ ル毎 にx2パ ラ メ タ を計 算 す る 。 (3)も し も,x2パ ラ メ タ がXα よ り も小 さ い と き に は,そ の セ ル は そ れ が 属 す る短 冊 領 域 の 支 配 的 な ヒ ス トグ ラ ム と信 頼 率 α(99)%の も と で 類 似 性 を 有 す る と し0を 与 え る 。 そ う で な け れ ば,1を 与 え る。 (4)も し も,対 象 の ス トラ イ プ が 複 雑 な 領 域,例 え ば 森 林 と低 い輝 度 の 領 域,例 え ば 河 川 や 広 範 囲 な伐 採 領 域 で 構 成 さ れ る場 合 に は, 〓 は 平 均 的 な ヒ ス トグ ラ ム と な り最 終 的 に 選 択 し た 領 域 の ヒス トグ ラ ム と異 な る こ とが あ る 。 これ に対 して は,そ の 短 冊 中 で,類 似 性 が あ っ た と判 定 さ れ た 小 セ ル の 個 数 が Maz/2以 上 で か っ,以 下 の 条 件 式 を満 た す と き に は そ の 短 冊 の 中 で 選 別 され た セ ル は有 効 と し て そ の 平 均 値 と そ の 他 の 付 属 パ ラ メ タ (例 え ば,入 射 角,電 力 等)を 求 め る。 も し そ れ ら の 条 件 を満 た さ な い場 合 に は そ の ス トラ
ア マ ゾ ン の 熱 帯 雨 林 を 用 い たJERS-1 SARアンテナパターンの推 定
Fig. 8-1
Amazon SAR image acquired
on May 17 '92 , GRS=395-308
(C) MITI-NASDA
Fig. 8-2 An example of the screening processing for the Amazon SAR image, GRS=395-308. White area is recognized nonsimilar, and looks same to the darker area in Fig. 8-1.
日本 リモ ー トセ ン シ ン グ 学 会 誌 Vol.13 No.4 イ プ は以 降 の 処 理 に は考 慮 し な い 。 こ の ス ク リ ー ニ ン グ 処 理 を ア マ ゾ ン画 像(395-308) に 適 用 し た 結 果 をFig.8-2に 示 す 。 両 者 を比 較 す る と 非 一 様 な 領 域(白 で 表 現)はFig.8-1の 左 上 の 葉 脈 上 の 領 域 と良 く一 致 して お り,こ の 処 理 が 非 一 様 領 域 の 除 去 に有 効 な こ とが 確 認 さ れ る。 5.AEP推 定 5.1AEP推 定 の 手 順 Fig.3にAEPの 推 定 手 順 を整 理 す る。 (1)シ ー ン の選 定 を行 な う。ア マ ゾ ン の 熱 帯 雨 林 を 優 先 的 に選 ぶ 。 (2)x2検 定 で ス ク リ ー ン処 理 を行 な い,得 られ た 一 様 分 布 領 域 に対 し て 受 信 電 力 ,入 射 角 等 を求 める 。 (3)最 尤 推 定 法 に よ り,雑 音 除 去,AEP推 定 を行 な う 。 5.2AEP推 定 に使 用 し た デ ー タ 1992年2月11日 に 打 ち 上 げ ら れ たJERS-1は4月 13日 以 降,JSARに 電 源 が 入 っ て お り,と くに4月23 日 と5月17日 に ア マ ゾ ン を 観 測 す る こ と に 成 功 した 。 共 に,約6分 間 の運 用 を行 な っ て お り,そ れ ぞ れ,30 シ ー ン分 の デ ー タ が 得 ら れ た 。 こ の 画 像 の 中 か ら評 価 に必 要 な デ ー タ を 以 下 の 基 準 で 抜 き 出 した 。 (1)AGCが1シ ー ン を 通 し て 同 じ で あ る こ と: AGCは360μsecの デ ー タ の 受 信 窓 の う ち,最 初 か ら 22.4secに お け る 受 信 電 圧 を サ ン プ ル ホ ー ル ド し, 64パ ル ス あ る い は128パ ル ス 分 の 加 算 に よ り受 信 機 の 利 得 を定 め る10,11)。しか し,AD変 換 器 の 非 線 形 性 の た め,AGCの 完 全 な 補 正 は 困 難 で あ る。 そ の た め に, 評 価 に 使 用 す る画 像 はAGCが1シ ー ン 全 体 を 通 して 変 化 しな い も の と した 。 (2)STCの 開 始 時 刻 が1シ ー ン を 通 し て 同 じ で あ る こ と:STCの 開 始 時 刻 はSARの ア ン テ ナ の ボ ア サ イ ト方 向 が 常 に デ ー タ 受 信 窓 の ほ ぼ 中 心 に な る よ う に 調 整 さ れ る も の で あ る。 こ れ は,地 球 の 形 状 が 回 転 惰 性 体 の た め にJSARが 衛 星 位 置 を 考 慮 し な が ら調 整 す る もの で あ る 。 尚,STCは10μsec単 位,つ ま り ス ラ ス ト レ ン ジ換 算 で1.5Km毎 に変 化 す る も の で あ り,こ の 計 算 で もデ ー タ の 信 頼 性 を 考 慮 して,1シ ー ン を通 し て 同 じ開 始 時 刻 を有 す る もの に 限 定 し た 。 これ ら の2条 件 を満 足 す る デ ー タ は 全 部 で17シ ー
Table 2 A summary of antenna patterns obtained by 17 Amazon images. ン あ り,そ の 計 算 結 果 をTable2に 示 す 。 5.3AEPの 推 定 結 果 と考 察 5.3.1AEPの 最 適 モ デ ル の 決 定,及 び 打 ち 上 げ AEPと の 比 較:こ れ らの17シ ー ン分 の デ ー タ を 平 均 処 理 す る こ とで 最 適AEPと して 以 下 の 係 数 を 得 た 。 a=-0.39971(標 準 偏 差 は0.0372) c=-0.00133(標 準 偏 差 は0.0072) φ0=34.905度(標 準 偏 差 は0.160度) (9)に 用 い た 係 数bを 定 め て い な い の は以 下 の 理 由 に よ る 。 演 算 の 過 程 で はbは 得 られ るが,そ れ は シ ー ン毎 に γ に依 存 して 一 定 で な い 。又,AEPはJSAR処 理 済 み 画 像 の 相 対 校 正 を 目 的 とす る もの で あ り,b決 定 に 関 す る 絶 対 校 正 は 地 上 に設 置 し た コ ー ナ ー 反 射 鏡 を 用 い て 合 わ せ 込 み を す る の が 最 も正 しい か らで あ る。 次 にFig.9-1,9-2に 代 表 的 な シ ー ン に つ い て 推 定 さ れ た 相 関 電 力 モ デ ル と平 均 画 像 電 力 の 一 致 具 合 を示 す 。 これ ら は そ れ ぞ れ,GRS=395-305,415-313に 対 応 す る も の で あ る 。 図 中 ○ は ス ク リー ン処 理 さ れ た も の(meaで 表 示),● は 推 定 さ れ た 相 関 処 理 電 力 モ デ ル (modで 表 示)で あ る。図 中 ○ が 途 切 れ て い る の は ス ク リー ン処 理 の過 程 で 類 似 性 の 見 られ な か っ た 短 冊 に対 応 し て い る。 図 よ り,推 定 処 理 は 良好 に行 な わ れ て い る こ と が わ か る。 又,打 ち 上 げ 前 に 取 得 し たAEPと 本 研 究 で得 られ たAEPの 比 較 を行 な う(Fig.10参 照)。 打 ち上 げ前 の
ア マ ゾ ン の 熱 帯 雨 林 を用 い たJERS-1 SARア ン テ ナ パ タ ー ン の 推 定
Fig. 9-1 An example of the modeled Pcorr and screened Pcorr for Amazon 395-305.
Fig. 9-2 An example of the modeled Pcorr and screened Pcorr for Amazon 415-313. AEPはSARを 構 成 す る8枚 の サ ブ パ ドル の う ち の 一 枚 を測 定 し,そ れ を ア ン テ ナ ア レー 理 論 に基 づ い て 合 成 し た も の で あ る。 この 結 果,打 ち上 げ 前 の 値 と ほ ぼ 同様 な 結 果 を得 る こ とが で き,ア ン テ ナ は 打 ち 上 げ 前 と同 様 な 特 性 を持 つ こ とが 確 認 で き た 。 ア ン テ ナ 半 値 幅 の 平 均 値 は5.44度(0.17度 の 標 準 偏 差)と な り,打 ち 上 げ 前 の 値(5.4度)と 比 較 し て もほ とん ど差 が な い 。 こ こで 得 た 結 果 はJSARの 比 較 的 小 さ なSNRを 考 慮 し て え られ た もの で あ る 。し か し,考 慮 し な くて も大 差 は な い(ち な み に,同 じ推 定 計 算 を雑 音 除 去 し な い で 行 な う と,半 値 幅,オ フ ナ デ ィ ア 角 は 5.51度,35.021度 で あ っ た)。 又,ア ン テ ナ 半 値 幅 は シ ー ン に依 存 せ ず 均 等 に 分 布 す る こ とか ら推 定 演 算 は
Fig. 10 A comparison of the estimated antenna elevation pattern and the ground based
measurement. 正 し く行 な わ れ た もの と思 わ れ る 。 平 均 残 差 は デ シベ ル 表 現 の 相 関 電 力 モ デ ル と平 均 画 像 電 力 値 の 差 を 平 均 処 理 した も の で あ り,全 体 と し て, 0.104dBを 得 る(Fig.11参 照)。 そ の 最 大 値,最 小 値 は そ れ ぞ れ0.184dB,0.061dBで あ る 。これ は(17)の 条 件 を 一 応 満 足 して い るが,SIRBで えた0.01dBに は 程 遠 い 。そ の 理 由 に つ い て 以 下 の よ う に考 え る 。JSAR 受 信 機 内 のSTCは1dB単 位 で1か ら5dBま で 変 化 す る 。 しか し,受 信 機 内 の こ の 変 化 がAD変 換 器 の 出 力 段 で は そ の 量 子 化 雑 音,飽 和 雑 音 の た め に 失 わ れ1 dB以 下 と な る。 こ の 失 わ れ た 情 報 を 処 理 設 備 で は 完 全 に 補 正 で きな い た め に,ス ク リー ン処 理 を行 な っ て も,STC変 化 点 で ジ ャ ン プ が 発 生 す る か ら で あ る13,14)。 5.3.2.繰 り返 し測 定 精 度:以 下 で 定 義 す る繰 り返 し誤 差(E)は 最 終 的 に 得 ら れ たAEPが 各 シ ー ン毎 の AEPと 比 較 して 妥 当 な もの で あ る か 否 か を 調 べ る も の で あ る 。 〓(23) こ こ に,△Gref:参 照AEPの 標 準 偏 差(0.104dB), △Citarget:評 価 対 象 のAEP標 準 偏 差,Crref:参 照AEP (-3dB),Gtarget:評 価 対 象 のAEP(参 照AEPが―3 dBを 持 つ 角 度 で の 値)
Table2に 全 体 シー ン を通 して の 繰 り返 し誤 差 の 分 布 を 示 す が,シ ー ン11を 除 け ば ほ とん ど繰 り返 し誤 差
日本 リ モ ー トセ ン シ ン グ学 会 誌 Vol.13 No.4
•œ standard dev.
Scene ID
Fig. 11 A distribution of the mean residual errors for all the evaluated images.
•œ off nadir(deg)
Scene ID
Fig. 12 A distribution of the off-nadir angles for the evaluated images.
は0.2dB以 内 に 収 ま る こ と が 確 認 さ れ た 。0.2dBは 参 照 とな るAEPが0.1dBを す で に 有 す る こ と か ら お お む ね 悪 くは ない 数 値 で あ る 。ま た シ ー ン11は お の お の の 標 準 偏 差 は悪 くな い も の の モ デ ル が 参 照 関 数 よ り も大 き くは ず れ て い る た め に こ の よ う な偏 移 を示 し た もの と思 わ れ る。 5.3.3オ フナ デ ィ ア 角 度 の 安 定 性:オ フ ナ デ ィ ア 角 度 は34.7度 か ら35.2度 の範 囲 で 分 布 し,大 部 分 が 35度 近 辺 に分 布 し て い る よ う に見 受 け ら れ る 。そ の 平 均 値 と標 準 偏 差 を 求 め る と そ れ ぞ れ34.905度,0.17 度 と な る 。 これ よ り,JSARア ン テ ナ は 予 定 の35.2度 よ り も小 さ め の オ フ ナ デ ィ ア 角 度 で 展 開 を し て お り, 予 定 よ り も衛 星 直 下 点 側(約4km内 側)を 観 測 す る こ とが 推 測 さ れ る 。当 初,JSARア ン テ ナ は35.2度 に展 開 ラ ッチ す る こ とが 予 定 さ れ て い た が,ま だ,衛 星 か ら は そ の 確 認 信 号 は得 られ て い な い 。SARア ン テ ナ 展 開 後 オ フ ナ デ ィ ア 角 度 の 推 定 値 が 衛 星 姿 勢 変 動 の デ ー タ を 用 い て 発 表 され た が,本 検 討 は そ の 結 果 を裏 付 け る もの で あ る。 次 に,パ ス 番 号395(ID=1-10に 対 応)と415(ID= 11-17に 対 応)を 比 較 す る と,そ れ ぞ れ,(1)二つ は異 な る グ ル ー プ と見 な せ る こ と,(2)北 か ら南 に 移 る につ れ て(Rowが 大 き くな る)若 干 大 き くな っ て い る こ と,の 傾 向 が あ る(Fig.12)。 前 者 に つ い て はSAR送 信 機 の 特 性 と関 係 が あ る と思 わ れ る 。SARに は合 計3台 の 送 信 機 が 搭 載 され て お り,通 常 は そ の 内 の2台 を組 み 合 わ せ て 運 用 さ れ る こ と と な っ て い た 。しか し,2台 を組 み 台 わ せ た 時 に は ア ン テ ナ 内 部 で 放 電 が 発 生 しSAR 画 像 の 品 質 が 劣 化 し た た め に,現 在 は1台 の 送 信 機 を 使 用 し て 運 用 を行 な っ て い る 。 従 っ て,(1)に つ い て は,パ ス395,415は そ れ ぞ れ 2台,1台 の 送 信 機 に 対 応 した も の で エ レベ ー シ ョ ン特 性 に も差 が で た も の と思 わ れ る。一 方,(2)に つ い て は 不 明 で あ り,詳 細 は 今 後 の 解 析 が 待 た れ る。 6.ま と め JERS-1に 搭 載 さ れ たSARの ア ン テ ナ パ タ ー ン を, 後 方 散 乱 係 数 が 入 射 角 に 依 存 し な い ア マ ゾ ン の 熱 帯 雨 林 の観 測 画 像 を用 い て 求 め た 。 先 ず,相 関 処 理 画 像 を ス ク リ ー ン処 理 し森 林 伐 採,河 川 等 の 非 一 様 な 領 域 を 除 去 し,次 に ア ン テ ナ エ レ ベ ー シ ョ ンパ タ ー ン と受 信 機,AD変 換 器 の 雑 音 で モ デ ル 化 し た 相 関 処 理 電 力 モ デ ル を この 画 像 に 推 計 的 に適 用 す る こ とで 求 め た 。 そ の 結 果,3dB半 値 幅 は 打 ち 上 げ 前 の 公 称 値 とほ ぼ 同 じ 5.44度 が 得 られ た 。これ に よ り,SAR処 理 成 果 物 の 絶 対 校 正 の 足 掛 が で き た 。 一 方 同 時 に 得 られ た オ フ ナ デ ィ ア 角 度 は予 定 の 角 度 よ り も0.3度 小 さ い34.905度 と な り,SARア ン テ ナ が 予 定 よ り も小 さ く展 開 し て い る こ とが 観 測 画 像 か ら も確 認 で き た 。
ア マ ゾ ン の 熱 帯 雨 林 を用 い たJERS-l SARア ン テ ナ パ ター ン の 推 定 謝 辞 本 成 果 は 宇 宙 開 発 事 業 団 と通 商 産 業 省 の 共 同 プ ロ ジ ェ ク トで あ るJERS-1に 関 し て え ら れ た もの で あ る 。 本AEPの 計 算 に お い て,多 数 の ア マ ゾ ン シ ー ン の 画 像 処 理 を 行 な っ て くだ さ っ たNEC,RESTECの 方 々 に感 謝 い た し ま す 。
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